(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、シリンダ内に複数の圧縮室が形成される往復動圧縮機では、一の部材からシリンダを形成しようとすると加工が困難となる。そこで、シリンダを複数の分割体により形成することが考えられる。
【0005】
しかし、シリンダを複数の分割体にて形成しようとすると、各分割体の内径及び外径のばらつきを考慮してシリンダが組み立てられるため、組立後のシリンダの先端側においてピストンの外周面とシリンダの内周面との間に形成される微小な隙間(以下、「微小隙間」という。)の幅を小さくすることが困難となる。ピストンも複数の分割体にて形成される場合には、上記微小隙間の幅を小さくすることがより困難となる。
【0006】
一方で、高圧のガスが導入される圧縮室(以下、「高圧圧縮室」という。)では、低圧のガスが導入される圧縮室に比べてガスが漏出しやすいことから、高圧圧縮室における上記微小隙間の幅を非常に小さくすることが求められる。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、シリンダ要素と加圧部との間の微小隙間の幅を小さくすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための手段として、本発明は、圧縮機であって、クランクシャフトと、ガスを圧縮する第1圧縮部と、前記第1圧縮部から吐出されたガスをさらに圧縮する第2圧縮部と、を備え、前記第1圧縮部が、前記クランクシャフトに接続されており当該クランクシャフトの回転に伴って直線状に往復運動する第1往復動変換部と、前記第1往復動変換部に接続されておりガスを圧縮可能な第1加圧部と、前記第1加圧部を収容する第1シリンダ体と、を備え、前記第1シリンダ体が、前記第1加圧部の移動方向に沿って並んだ状態で互いに嵌合される複数のシリンダ要素を有し、前記複数のシリンダ要素に前記第1加圧部によるガスの圧縮が行われる複数の圧縮室が設けられ、前記第2圧縮部が、前記クランクシャフトに接続されており当該クランクシャフトの回転に伴って直線状に往復運動する第2往復動変換部と、前記第2往復動変換部に接続されておりガスを圧縮可能な第2加圧部と、前記第2加圧部を収容する第2シリンダ体と、を備え、前記第2シリンダ体が、前記第2加圧部の移動方向に沿って並んだ状態で互いに嵌合される複数のシリンダ要素を有し、前記複数のシリンダ要素に前記第2加圧部によるガスの圧縮が行われる複数の圧縮室が設けられ、前記第2シリンダ体のシリンダ要素の数が、前記第1シリンダ体のシリンダ要素の数よりも少ない、圧縮機を提供する。
【0009】
本発明では、高圧のガスが導入される第2圧縮部のシリンダ要素の数を低圧のガスが導入される第1圧縮部のシリンダ要素の数よりも少なくすることにより、第2圧縮部において、先端側のシリンダ要素と加圧部との間の微小隙間の幅を小さくすることができる。
【0010】
この場合において、前記第1圧縮部は、前記複数のシリンダ要素の内周面と前記第1加圧部との間に設けられる複数の第1リング部材群をさらに備え、前記第2圧縮部は、前記複数のシリンダ要素の内周面と前記第2加圧部との間に設けられる複数の第2リング部材群をさらに備えることが好ましい。
【0011】
このようにすれば、各圧縮室からのガスの漏出が抑制される。
【0012】
さらにこの場合において、前記第2加圧部のストロークが前記第1加圧部のストロークよりも小さく設定されていることが好ましい。
【0013】
この態様では、第2加圧部のストロークを第1加圧部よりも小さくして第2リング部材群の磨耗を低減することにより、第1リング部材群よりも高圧のガスに曝される第2リング部材群からのガスの漏出をより低減することができる。
【0014】
また、本発明において、前記複数の第1リング部材群は、前記第1加圧部の外周面に形成された複数の環状の溝部に嵌め合わされ、前記複数の第2リング部材群は、前記第2加圧部の外周面に形成された複数の環状の溝部に嵌め合わされることが好ましい。
【0015】
このようにすれば、リング部材群がシリンダ要素側に取り付けられる場合に比べて当該リング部材群の摩耗が低減される。
【0016】
また、本発明において、前記第2圧縮部の前記複数の圧縮室の数が2であることが好ましい。
【0017】
このようにすれば、高圧のガスを圧縮する第2圧縮部における上記微小隙間の幅をより確実に小さくすることができる。
【0018】
また、本発明において、ガスは水素であることが好ましい。
【0019】
本発明では、分子量が小さく圧縮室から漏出しやすい水素を効率よく圧縮することができる。
【0020】
また、本発明において、前記第1シリンダ体の前記複数のシリンダ要素及び前記第2シリンダ体の前記複数のシリンダ要素は、前記クランクシャフトを基準として同じ方向に向かって並ぶように配置されていることが好ましい。
【0021】
このようにすれば、第1圧縮部の複数の圧縮室のうち最も高圧となる圧縮室と第2圧縮部の複数の圧縮室のうち最も低圧となる圧縮室とを接続する配管を短くすることができる。
【0022】
また、本発明において、前記第1加圧部は、前記第1シリンダ体の前記複数のシリンダ要素に対応して設けられ、互いに嵌合される複数のピストンを有し、前記第2加圧部は、前記第2シリンダ体の前記複数のシリンダ要素に対応して設けられ、互いに嵌合される複数のピストンを有し、前記第2加圧部のピストンの数が前記第1加圧部のピストンの数よりも少ないことが好ましい。
【0023】
このようにすれば、加圧部が複数のピストンにより形成されることにより、加圧部の製造を容易に行うことができる。また、第2加圧部のピストンの数を第1加圧部のピストンの数よりも少なくすることにより、第2圧縮部において、先端側のシリンダ要素とピストンとの間の微小隙間の幅を小さくすることができる。
【発明の効果】
【0024】
以上のように、本発明によれば、シリンダ要素と加圧部との間の微小隙間の幅を小さくすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の一実施形態の圧縮機1について、
図1から
図4を参照しながら説明する。
【0027】
図1に示すように、圧縮機1は、クランクシャフト10と、クランクケース20と、ガスを圧縮する第1圧縮部100と、第1圧縮部100で圧縮されたガスをさらに圧縮する第2圧縮部200と、を備えている。本実施形態では、圧縮対象のガスは水素である。
【0028】
クランクケース20は、クランクシャフト10が特定の回転中心軸J0回りに回転可能となるように当該クランクシャフト10を保持している。本実施形態では、クランクケース20は、クランクシャフト10を保持するとともに
図1の上向きに開口する箱状の本体22と、本体22の開口を塞ぐ形状の蓋部24と、を有している。なお、
図1の上下方向は重力方向に対応する。
【0029】
クランクケース20の外側におけるクランクシャフト10の端部には、プーリ30が接続されている。プーリ30は、ベルト等の伝達部材を介して駆動源としてのモータ(図示略)と接続されている。
【0030】
第1圧縮部100は、第1往復動変換部110と、第1シリンダ体120と、第1加圧部130(
図2を参照)と、複数の第1リング部材群140(
図2を参照)と、を備えている。
【0031】
第1往復動変換部110は、第1コネクティングロッド112と、第1クロスヘッド114と、第1ピストンロッド116と、を有する。
【0032】
第1コネクティングロッド112は、クランクシャフト10に対して相対回転可能に接続される第1円環部113を有している。第1コネクティングロッド112は、第1円環部113の中心がクランクシャフト10の回転中心軸J0から偏倚した状態でクランクシャフト10に接続されている。
【0033】
第1クロスヘッド114は、第1コネクティングロッド112のうち第1円環部113とは反対側の端部に接続されている。第1クロスヘッド114は、クランクシャフト10の回転時に当該クランクシャフト10の回転中心軸J0と直交する方向(
図1における上下方向)に直線運動するようにクランクケース20にガイドされる形状に形成されている。つまり、第1コネクティングロッド112及び第1クロスヘッド114は、クランクシャフト10の回転運動を直線状の往復運動に変換する。第1コネクティングロッド112及び第1クロスヘッド114は、クランクケース20の本体22に収容されている。
【0034】
第1ピストンロッド116は、円柱状の部材であり、第1クロスヘッド114に接続されている。このため、第1ピストンロッド116も、クランクシャフト10の回転に伴って直線状に往復運動する。第1ピストンロッド116はクランクケース20の蓋部24を貫通しており、当該第1ピストンロッド116の上端部はクランクケース20の上方に位置している。
【0035】
図2に示すように、第1シリンダ体120は第1シリンダ要素121と、第2シリンダ要素122と、第3シリンダ要素123とを備える。第1シリンダ要素121、第2シリンダ要素122及び第3シリンダ要素123は互いに嵌合され、重力方向(すなわち、第1加圧部120の移動方向)に沿って順に並ぶ。第1シリンダ要素121の内側には第1圧縮室121Sが形成される。第2シリンダ要素122の内側には第2圧縮室122Sが形成される。第3シリンダ要素123の内側には第3圧縮室123Sが形成される。第1圧縮部100では、第1圧縮室121S、第2圧縮室122S及び第3圧縮室123Sの順にガスの吸込時における容積が小さくされる。
【0036】
第1シリンダ要素121は筒状の部材であり、第1圧縮部100の中心軸J1と直交する方向の断面が円形となる内周面121aを有している。
図1に示すように、第1シリンダ要素121の下端部がクランクケース20の蓋部24に設けられた孔部に挿入され、ボルト等の締結具124により蓋部24に固定される。
【0037】
図2に示すように、第2シリンダ要素122は筒状の部材であり、中心軸J1と直交する方向の断面が円形となる内周面122aを有している。第2シリンダ要素122には下方に突出する円筒状の突出部122bが設けられる。突出部122bは第1シリンダ要素121の上部に挿入される。中心軸J1に垂直な方向において突出部122bと第1シリンダ要素121の内周面121aとが当接する。第2シリンダ要素122はボルト等の締結具125により第1シリンダ要素121に固定される。
【0038】
第3シリンダ要素123は筒状の部材であり、中心軸J1と直交する方向の断面が円形となる内周面123aを有している。第3シリンダ要素123には、下方に突出する円筒状の突出部123bが設けられる。突出部123bは第2シリンダ要素122の上部に挿入される。中心軸J1に垂直な方向において突出部123bと第2シリンダ要素122の内周面122aとが当接する。第3シリンダ要素123はボルト等の締結具126により第2シリンダ要素122に固定される。
【0039】
以上のように、第1圧縮部100は、上側のシリンダ要素が下側のシリンダ要素に挿入される構造であるため、第1シリンダ要素121の内径よりも第2シリンダ要素122の内径の方が小さく、第2シリンダ要素122の内径よりも第3シリンダ要素123の内径の方が小さい。
【0040】
第1加圧部130は第1ピストン131と、第2ピストン132と、第3ピストン133とを備える。第1ないし第3ピストン131〜133は重力方向における上側に向かって順に並んだ状態で互いに嵌合される。第1ないし第3ピストン131〜133は第1ないし第3シリンダ要素131〜133に対応して設けられており、第1ピストン131は第1シリンダ要素121内に配置される。第2ピストン132は第2シリンダ要素122内に配置される。第3ピストン133は第3シリンダ要素123内に配置される。
【0041】
第1ピストン131は円筒面である外周面131aを有する。第1ピストン131は第1ピストンロッド116の上端部に接続される。第1ピストン131の上端部、すなわち、第1ピストン131の先端部には、凹部131bが形成される。
【0042】
図3に示すように、第1ピストン131の外周面131aと第1シリンダ要素121の内周面121aとの間には微小な隙間(以下、「微小隙間C1」という。)が形成される。微小隙間C1には複数のリング部材により構成された第1リング部材群140が設けられる。第1リング部材群140は第1ピストン131の外周面131aに形成された複数の環状の溝部5に嵌め合わされる。
図2に示すように、第1リング部材群140が設けられることにより、第1圧縮室121Sに導入されたガスが微小隙間C1から漏出してしまうことが防止される。
【0043】
第2ピストン132は円筒面である外周面132aを有する。外周面132aの径は第1ピストン131の円筒面131aの径よりも小さい。第2ピストン132の下端部は第1ピストン131の凹部131bに挿入される。第2ピストン132の上端部には、凹部132bが形成されている。
【0044】
第2ピストン132の外周面132aと第2シリンダ要素122の内周面122aとの間に微小隙間C2が形成される。微小隙間C2には、微小隙間C1と同様に、複数のリング部材により構成された第1リング部材群140が設けられる。当該第1リング部材群140は第2ピストン132の外周面132aに形成された複数の環状の溝部5に嵌め合わされる。これにより、第2圧縮室122Sに導入されたガスが微小隙間C2から漏出してしまうことが防止される。
【0045】
第3ピストン133は円筒面である外周面133aを有する。外周面133aの径は第2ピストン132の外周面132aの径よりも小さい。第3ピストン133の下部には突出部133bが形成される。突出部133bは第2ピストン132の凹部132bに挿入される。第3ピストン133の外周面133aと第3シリンダ要素123の内周面123aとの間に微小隙間C3が形成される。微小隙間C3には、微小隙間C1,C2と同様に第1リング部材群140が設けられる。第1リング部材群140は第3ピストン133の外周面133aに形成された複数の環状の溝部5に嵌め合わされる。第1リング部材群140により第3圧縮室123Sに導入されたガスが微小隙間C3から漏出してしまうことが防止される。第3シリンダ要素123の上部には、連結部材127が取り付けられる。
【0046】
第1圧縮部100では、第1シリンダ体120が3つのシリンダ要素121〜123により形成されるため、一の部材にてシリンダ体が形成される圧縮部に比べて、第1シリンダ体120を精度よく、かつ、容易に製作することができる。同様に、第1加圧部130が3つのピストン131〜133により形成されるため、一の部材にて加圧部が形成される圧縮部に比べて、第1加圧部130を精度よく、かつ、容易に製作することができる。
【0047】
図1に示すように、第2圧縮部200は、第2往復動変換部210と、第2シリンダ体220と、第2加圧部230(
図4を参照)と、複数の第2リング部材群240(
図4を参照)と、を備えている。
【0048】
第2往復動変換部210の構造は、基本的に第1往復動変換部110のそれと同じである。すなわち、第2往復動変換部210は、クランクシャフト10に接続される第2円環部213を有する第2コネクティングロッド212と、第2コネクティングロッド212に接続される第2クロスヘッド214と、第2クロスヘッド214に接続される第2ピストンロッド216と、を有している。
【0049】
第2コネクティングロッド212は、クランクシャフト10の軸方向について第1コネクティングロッド112から離間した位置でクランクシャフト10に接続されている。第2円環部213の中心とクランクシャフト10の回転中心軸J0との距離D2は、第1円環部113の中心とクランクシャフト10の回転中心軸J0との距離D1よりも小さく設定されている。つまり、第2往復動変換部210のストロークは、第1往復動変換部110のそれよりも小さく設定されている。
【0050】
図4に示すように、第2シリンダ体220は第4シリンダ要素224と、第5シリンダ要素225とを備える。第5シリンダ要素225及び第4シリンダ要素224は互いに嵌合され、重力方向(すなわち、第2加圧部220の移動方向)に沿って順に並ぶ。第4シリンダ要素224の内側には第4圧縮室224Sが形成される。第5シリンダ要素225の内側には第5圧縮室225Sが形成される。第2圧縮部200では、第2シリンダ体220のシリンダ要素の数は、第1シリンダ体120のシリンダ要素の数よりも少ない。すなわち、第2圧縮部200の圧縮室224S,225Sの数が第1圧縮部100の圧縮室121S〜123Sの数よりも少ない。第2圧縮部200では、第4圧縮室224S及び第5圧縮室225Sの順にガスの吸込時における容積が小さくされる。
【0051】
第4シリンダ要素224は筒状の部材であり、第2圧縮部200の中心軸J2と直交する方向の断面が円形となる内周面224aを有している。
図1に示すように、第4シリンダ要素224の下端部がボルト等の締結具226によりクランクケース20の蓋部24に固定される。
【0052】
図4に示すように、第5シリンダ要素225は筒状の部材であり、中心軸J2と直交する方向の断面が円形となる内周面225aを有している。第5シリンダ要素225には、下方に突出する円筒状の突出部225bが設けられる。突出部225bは第4シリンダ要素224の上部に挿入される。中心軸J2に垂直な方向において突出部225bと第4シリンダ要素224の内周面224aとが当接する。第5シリンダ要素225はボルト等の締結具227により第4シリンダ要素224に固定される。
【0053】
第2圧縮部200は、第1圧縮部100と同様に上側のシリンダ要素が下側のシリンダ要素に挿入される構造であるため、第4シリンダ要素224の内径よりも第5シリンダ要素225の内径の方が小さい。
【0054】
第2加圧部230は第4ピストン234と第5ピストン235とを備える。第4ピストン234及び第5ピストン235は重力方向における上側に向かって順に並んだ状態で互いに嵌合される。第4及び第5ピストン234,235は第4及び第5シリンダ要素224,225に対応して設けられており、第4ピストン234は第4シリンダ要素224内に配置される。第5ピストン235は第5シリンダ要素225内に配置される。
【0055】
第4ピストン234は円筒面である外周面234aを有する。第4ピストン234の下端部は第2ピストンロッド216の上端部に接続される。第4ピストン234の上端部、すなわち、第4ピストン234の先端部には、凸部234bが形成されている。
【0056】
第4ピストン234の外周面234aと第4シリンダ要素224の内周面224aとの間に微小隙間C4が形成される。微小隙間C4は第1圧縮部100の微小隙間C3よりも小さい。微小隙間C4には、複数のリング部材により構成された第2リング部材群240が設けられる。第2リング部材群240は第4ピストン234の外周面234aに形成された複数の環状の溝部5に嵌め合わされる。第2リング部材群240が設けられることにより、第4圧縮室224Sに導入されたガスが微小隙間C4から漏出してしまうことが防止される。
【0057】
第5ピストン235は円筒面である外周面235aを有する。外周面235aの径は第4ピストン234の外周面234aの径よりも小さい。第5ピストン235の下端部には凹部235bが形成される。第4ピストン234の凸部234bは凹部235bに挿入される。
【0058】
第5ピストン235の外周面235aと第5シリンダ要素225の内周面225aとの間に微小隙間C5が形成される。微小隙間C5には、複数のリング部材により構成される第2リング部材群240が設けられる。第2リング部材群240は第5ピストン235の外周面235aに形成された複数の環状の溝部5に嵌め合わされる。第2リング部材群240により、第5圧縮室225Sに導入されたガスが微小隙間C5から漏出してしまうことが防止される。第5シリンダ要素235の上部には、閉塞部材228が取り付けられる。
【0059】
第2圧縮部200では、第2シリンダ体220が2つのシリンダ要素224,225により形成されるため、第2シリンダ体220を精度よく、かつ、容易に製作することができる。同様に、第2加圧部230が2つのピストン234,235により形成されるため、第2加圧部230を精度よく、かつ、容易に製作することができる。
【0060】
圧縮機1では、第1シリンダ体120の複数のシリンダ要素121,122,123及び第2シリンダ体220の複数のシリンダ要素224,225が、クランクシャフト10を基準として同じ方向に向かって(重力方向の上向きに)並ぶように配置される。これにより、第1圧縮部100の第3圧縮室123Sと第2圧縮部200の第4圧縮室224Sとを接続する配管を短くすることができる。
【0061】
圧縮機1の駆動時には、
図2に示す第1圧縮室121Sで第1ピストン131により圧縮されたガスが、第1シリンダ体120の外部に設けられた図示略の配管を通じて第2圧縮室122Sに流入する。第2圧縮室122Sで第2ピストン132により圧縮されたガスは、第1シリンダ体120の外部に設けられた図示略の配管を通じて第3圧縮室123Sに流入する。第3圧縮室123Sで第3ピストン133により圧縮されたガスは、連結部材127内に形成された流路及びこの流路に接続された配管128を通じて第2圧縮部200に送られる。第1圧縮部100では、高圧のガスを圧縮しようとすると圧縮室からガスが漏出しやすくなるため、第1圧縮室121Sの微小隙間C1、第2圧縮室122Sの微小隙間C2及び第3圧縮室123Sの微小隙間C3の順に中心軸J1に垂直な方向における幅が小さくされる。
【0062】
図4に示すように、第3シリンダ要素123の第3圧縮室123Sで圧縮されたガスは、第2シリンダ体220の外部に設けられた図示略の配管を通じて第4圧縮室224Sに流入する。第4圧縮室224Sで第4ピストン234により圧縮されたガスは、第2シリンダ体220の外部に設けられた図示略の配管を通じて第5シリンダ要素225の第5圧縮室225Sに流入する。第5圧縮室225Sで第5ピストン235により圧縮されたガスは、図示略の配管を通じて外部に供給される。
【0063】
第2圧縮部200においても、高圧のガスを圧縮しようとすると圧縮室からガスが漏出しやすくなるため、第4圧縮室224Sの微小隙間C4及び第5圧縮室225Sの微小隙間C5の順に中心軸J2に垂直な方向における幅が小さくされる。また、第2圧縮部200では、第1圧縮部100よりも高圧のガスが圧縮されるため、第5圧縮室225S及び第4圧縮室224Sの微小隙間C4,C5の幅は、第1ないし第3圧縮室121S〜123Sの微小隙間C1〜C3の幅よりも小さくされる。
【0064】
以上、圧縮機1について説明したが、複数のシリンダ要素が互いに嵌合される構造のシリンダ体の場合、各シリンダ要素の内径及び外径のばらつきを考慮してシリンダ体が組み立てられるため、組立後のシリンダ体の上部において微小隙間の幅を小さくすることが困難となる。加圧部が複数のピストンにより形成される場合においても同様である。
【0065】
これに対し、圧縮機1では、高圧のガスが導入される第2圧縮部200のシリンダ要素224,225の数が低圧のガスが導入される第1圧縮部100のシリンダ要素121〜123の数よりも少なくされる。その結果、第2圧縮部200において、第5シリンダ要素225よりも下方に配置されるシリンダ要素の数が抑制され、第5シリンダ要素225と第5ピストン235との間の微小隙間C5の幅を小さくすることが可能となる。そして、微小隙間C5の幅が、ガスの漏出を防止する、あるいは、第2リング部材群240に作用する過度の力を抑制するという観点で設定される許容範囲内とされる。
【0066】
同様に、第2加圧部230のピストン234,235の数が第1加圧部130のピストン131〜133の数よりも少なくされる。その結果、第2圧縮部200において、第5ピストン235よりも下方に配置されるピストンの数が抑制されることにより、微小隙間C5の幅を小さくすることができる。微小隙間C5の幅が小さくされることにより第2リング部材群240の磨耗が抑制される。
【0067】
ところで、第5圧縮室のみを有する圧縮部を別途設けようとすると、圧縮機の各種機器が大型化し、設置面積の確保が困難となる。これに対し、圧縮機1では、設置面積を抑えつつ微小隙間を適切に設けることができる。
【0068】
また、圧縮機1では、第2加圧部230のストロークが第1加圧部130のそれよりも小さくされるため、第2加圧部230の第2リング部材群240の磨耗をより抑制することができる。
【0069】
第1リング部材群140が第1加圧部130に嵌め合わされ、第2リング部材群240が第2加圧部230に嵌め合わされるので、各リング部材群140,240が各シリンダ要素の内面に取り付けられる場合に比べて当該リング部材群140,240の摩耗が低減される。
【0070】
以上、本発明の実施形態について説明したが、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0071】
例えば、上記実施形態では、第1圧縮部100及び第2圧縮部200が水平方向に配置されてもよい。この場合であっても、第2圧縮部200のシリンダ要素の数が第1圧縮部100のシリンダ要素の数よりも少なくされることにより、第2圧縮部200の先端側において、シリンダ要素と加圧部との間の微小隙間の幅を小さくすることができる。さらに、第1圧縮部100及び第2圧縮部200がクランクシャフト10を基準として互いに異なる方向に配置されてもよい。
【0072】
上記実施形態の第1圧縮部100では、先端の圧縮室、すなわち、クランクシャフト10から最も遠い圧縮室からクランクシャフト10に近い圧縮室に向かうに従ってガスが漸次昇圧される構造とされてもよい。第2圧縮部200においても同様である。
【0073】
各第1リング部材群140は、第1シリンダ要素121の内周面121a、第2シリンダ要素122の内周面122a及び第3シリンダ要素123の内周面123aにそれぞれ嵌め合わされてもよい。各加圧部130,230は、ピストンではなくプランジャにより構成されてもよい。
【0074】
上記実施形態では、6以上の圧縮室が設けられる場合には3以上の圧縮部が設けられてもよい。この場合、2以上のシリンダ要素を有する1つの圧縮部と、2以上のシリンダ要素を有し、当該1つの圧縮部から吐出されたガスをさらに圧縮する次の圧縮部との間の関係が、上述の第1圧縮部100と第2圧縮部200との間の関係と同じとされることが好ましい。すなわち、当該次の圧縮部のシリンダ要素の数が、当該1つの圧縮部のシリンダ要素の数よりも少なくされることにより、当該次の圧縮部においてシリンダ要素とピストンとの間の微小隙間の幅を小さくすることができる。
【0075】
圧縮機1は、分子量が小さく圧縮室から漏出しやすい水素を効率よく圧縮することができるが、水素以外のガスの圧縮に利用することもできる。