(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
測定対象ガスに含まれる特定成分に応じた起電力を生じる検知セルと、ポンプ電流に応じて酸素の汲み入れまたは汲み出しを行う酸素ポンプセルと、を有するガスセンサを制御するセンサ制御装置であって、
前記検知セルの前記起電力のアナログ信号をデジタル値に変換するアナログデジタル変換部と、
前記起電力のデジタル値に基づいて、前記酸素ポンプセルに通電する前記ポンプ電流の通電制御値をデジタル制御で演算する通電制御値演算部と、
前記ポンプ電流の前記通電制御値を示すデジタル信号に基づいて、前記酸素ポンプセルに対して通電するポンプ電流を生成するデジタルアナログ変換部と、
を備えており、
前記ポンプ電流の前記通電制御値を示すデジタル信号から予め定められた第1遮断周波数よりも高い周波数成分を減衰させてなる第1フィルタ信号をデジタル演算により抽出する第1フィルタ部と、
前記第1フィルタ部で抽出された前記第1フィルタ信号から予め定められた第2遮断周波数よりも高い周波数成分を減衰させてなる第2フィルタ信号をデジタル演算により抽出する第2フィルタ部と、
を備え、
前記デジタルアナログ変換部は、前記第1フィルタ信号に基づいて前記ポンプ電流を生成し、
前記第2フィルタ部は、前記第2フィルタ信号を、前記測定対象ガスに含まれる前記特定成分を検出するためのポンプ電流信号として外部に出力すること、
を特徴とするセンサ制御装置。
測定対象ガスに含まれる特定成分に応じた起電力を生じる検知セルと、ポンプ電流に応じて酸素の汲み入れまたは汲み出しを行う酸素ポンプセルと、を有するガスセンサと、
前記ガスセンサを制御するセンサ制御装置と、
を備えるガス検知システムであって、
前記センサ制御装置として、請求項1または請求項2に記載のセンサ制御装置を備えること、
を特徴とするガス検知システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、上述のようなガスセンサを用いたガス検出においては、より迅速な応答が要求されており、デジタル制御部を用いたセンサ制御装置におけるデジタル信号のサンプリング周期を高速化した場合に、デジタルPID制御におけるノイズ成分(微分ノイズ)が増大する可能性がある。
【0011】
つまり、センサ制御における高周波応答の要求に応えるためにデジタル信号のサンプリング周期を高速化した場合には、サンプリング周期の高速化に伴い、微分演算での内部演算値(ゲイン)を大きく設定する必要があり、この結果、デジタル信号における微分ノイズが増大する可能性がある。
【0012】
そこで、デジタル信号のサンプリング周期を高速化した場合であっても、ノイズ成分の増大を抑制できるセンサ制御装置およびガス検知システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の局面におけるセンサ制御装置は、検知セルおよび酸素ポンプセルを有するガスセンサを制御するセンサ制御装置であって、アナログデジタル変換部と、通電制御値演算部と、デジタルアナログ変換部と、第1フィルタ部と、第2フィルタ部と、を備えている。
【0014】
ガスセンサの検知セルは、測定対象ガスに含まれる特定成分に応じた起電力を生じるセルであり、ガスセンサの酸素ポンプセルは、ポンプ電流に応じて酸素の汲み入れまたは汲み出しを行うセルである。
【0015】
アナログデジタル変換部は、検知セルの前記起電力のアナログ信号をデジタル値に変換する。
通電制御値演算部は、起電力のデジタル値に基づいて、酸素ポンプセルに通電するポンプ電流の通電制御値をデジタル制御で演算する。デジタルアナログ変換部は、ポンプ電流の通電制御値を示すデジタル信号に基づいて、酸素ポンプセルに対して通電するポンプ電流を生成する。
【0016】
第1フィルタ部は、ポンプ電流の通電制御値を示すデジタル信号から予め定められた第1遮断周波数よりも高い周波数成分を減衰させてなる第1フィルタ信号をデジタル演算により抽出する。第2フィルタ部は、第1フィルタ部で抽出された第1フィルタ信号から予め定められた第2遮断周波数よりも高い周波数成分を減衰させてなる第2フィルタ信号をデジタル演算により抽出する。
【0017】
そして、デジタルアナログ変換部は、第1フィルタ信号に基づいてポンプ電流を生成する。また、第2フィルタ部は、第2フィルタ信号を、測定対象ガスに含まれる特定成分を検出するためのポンプ電流信号として外部(例えば、ポンプ電流信号を用いて、測定対象ガスに含まれる特定成分の濃度を演算する特定成分演算部)に出力する。
【0018】
第1フィルタ信号は、ポンプ電流の通電制御値を示すデジタル信号から第1遮断周波数よりも高い周波数成分(ノイズ成分)が減衰された信号であるため、ポンプ電流の通電制御値を示すデジタル信号であって、通電制御値演算部でのデジタル演算で重畳されたノイズ成分が減衰されたデジタル信号である。このため、デジタル信号のサンプリング周期を高速化した場合であっても、デジタル信号における微分ノイズ成分の増大を抑制できる。
【0019】
また、第2フィルタ信号は、第1フィルタ信号から第2遮断周波数よりも高い周波数成分(ノイズ成分)が減衰された信号であるため、第1フィルタ信号からさらにノイズ成分(通電制御値演算部でのデジタル演算で重畳されたノイズ成分)が減衰されたデジタル信号である。
【0020】
第1フィルタ信号は、第2フィルタ信号と比べて、フィルタ処理の回数が少ないため、ポンプ電流の通電制御値を示すデジタル信号であって、検知セルの起電力における直近の変化状態が相対的に大きく反映されたデジタル信号となる。このようなデジタル信号は、酸素ポンプセルのフィードバック制御に適した信号となる。このため、第1フィルタ信号に基づいて生成したポンプ電流を酸素ポンプセルに対して通電することで、検知セルの起電力における直近の変化状態に応じて、酸素ポンプセルによる酸素のポンピング(汲み出し、汲み入れ)を適切に実行できる。
【0021】
また、第2フィルタ信号は、第1フィルタ信号と比べて、フィルタ処理の回数が多いため、ポンプ電流の通電制御値を示すデジタル信号であって、検知セルの起電力における長期間の変化状態が相対的に大きく反映されたデジタル信号となる。このようなデジタル信号は、測定対象ガスに含まれる特定成分の検出に適した信号となる。このため、第2フィルタ信号を測定対象ガスに含まれる特定成分を検出するための信号として用いることで、検知セルの起電力における長期間の変化状態に基づいて、測定対象ガスに含まれる特定成分を検出することが可能となる。
【0022】
これにより、例えば、ポンプ電流信号を用いて測定対象ガスに含まれる特定成分濃度を演算する特定成分演算部が、第2フィルタ部から第2フィルタ信号を受信した場合には、特定成分演算部における特定成分濃度の演算精度を向上でき、測定対象ガスに含まれる特定成分の検出精度を向上できる。
【0023】
よって、本発明のセンサ制御装置によれば、デジタル信号のサンプリング周期を高速化した場合であっても、ノイズ成分の増大を抑制できる。また、本発明のセンサ制御装置によれば、酸素ポンプセルによる酸素のポンピングを適切に実行できるとともに、測定対象ガスに含まれる特定成分の検出精度を向上できる。
【0024】
なお、第2フィルタ信号は、第1フィルタ信号と比べてフィルタ処理回数が多くなることで上記の効果が得られるため、第1遮断周波数と第2遮断周波数との関係は、同じであってもよいし、第1遮断周波数が第2遮断周波数よりも高い周波数であってもよい。
【0025】
次に、上述のセンサ制御装置においては、第1遮断周波数は第2遮断周波数よりも高い周波数であってもよい。
この場合、第1フィルタ信号は、第2フィルタ信号と比べて、広い周波数帯域成分を含んだデジタル信号となり、ポンプ電流の通電制御値を示すデジタル信号であって、検知セルの起電力における直近の変化状態が相対的に大きく反映されたデジタル信号となる。このため、第1フィルタ信号に基づいて生成したポンプ電流を酸素ポンプセルに対して通電することで、検知セルの起電力における直近の変化状態に応じて、酸素ポンプセルによる酸素のポンピングを適切に実行できる。
【0026】
また、第2フィルタ信号は、第1フィルタ信号と比べて、狭い周波数帯域成分を含んだデジタル信号となり、ポンプ電流の通電制御値を示すデジタル信号であって、検知セルの起電力における長期間の変化状態が相対的に大きく反映されたデジタル信号となる。このため、第2フィルタ信号を測定対象ガスに含まれる特定成分を検出するための信号として用いることで、検知セルの起電力における長期間の変化状態に基づいて、測定対象ガスに含まれる特定成分を検出できるため、特定成分の検出精度を向上できる。
【0027】
次に、上述のセンサ制御装置においては、検知セルの起電力を少なくとも含む複数のアナログ信号が入力されて、複数のアナログ信号を1つずつ予め定められた順に出力するマルチプレクサを備えてもよい。
【0028】
なお、アナログデジタル変換部は、マルチプレクサから出力されたアナログ信号をデジタル値に変換する。
そして、マルチプレクサは、複数のアナログ信号を1つずつ予め定められた順で出力するにあたり、全てのアナログ信号が出力される全信号出力期間において2回以上出力される頻度高信号と、信号出力期間において1回出力される頻度低信号と、に分類して複数のアナログ信号を出力する。また、頻度高信号には、少なくとも検知セルの起電力が含まれる。
【0029】
つまり、このセンサ制御装置におけるマルチプレクサは、複数のアナログ信号を全て同じ頻度で出力するのではなく、出力頻度の高い頻度高信号と、出力頻度の低い頻度低信号と、に分類して信号出力することで、頻度高信号のサンプリング周波数を高めることができる。
【0030】
そして、頻度高信号には、少なくとも検知セルの起電力が含まれることから、アナログデジタル変換部(ADコンバータ)の性能を向上させることなく、検知セルの起電力のサンプリング周波数を高めることができる。
【0031】
よって、本発明のセンサ制御装置によれば、アナログデジタル変換部のコスト増大を抑えつつ、ガスセンサから検出した検知セルの起電力に関するアナログ信号のデジタル値へのAD変換におけるサンプリング周波数を高めることができる。
【0032】
次に、上述のマルチプレクサを備えるセンサ制御装置においては、マルチプレクサは、検知セルの起電力としての頻度高信号を一定周期で出力してもよい。
検知セルの起電力としての頻度高信号が一定周期で出力されることで、検知セルの起電力が不規則なタイミングで出力される場合に比べて、通電制御値演算部での演算処理(検知セルの起電力に基づく通電制御値の演算処理など)を簡素化でき、通電制御値を迅速に演算することが可能となる。
【0033】
よって、このセンサ制御装置によれば、通電制御値を迅速に演算することができ、ガスセンサを用いたガス検出において迅速な応答を実現できる。
次に、上述のマルチプレクサを備えるセンサ制御装置においては、頻度低信号には、酸素ポンプセルの両電極端子および検知セルの両電極端子のうちの少なくとも1つの電極端子の電位と、センサ制御装置の基準電位との間の電位差に関する信号が含まれてもよい。
【0034】
つまり、酸素ポンプセルの両電極端子および検知セルの両電極端子のうちの少なくとも1つの電極端子の電位と、センサ制御装置の基準電位との間の電位差を表すアナログ信号が頻度低信号に含まれることで、センサ制御装置は、複数のアナログ信号のうち、頻度高信号(検知セルの起電力)よりも頻度は下がるものの、上記の電位差を表すアナログ信号を、アナログデジタル変換部を介して取得することができる。
【0035】
これにより、センサ制御装置は、頻度低信号としての上記の電位差を表すアナログ信号を用いて、例えば、酸素ポンプセルおよび検知セルにおける少なくともいずれかの電極端子の異常状態(電極端子の電源電位短絡異常、基準電位短絡異常、断線異常など)を検知することや、上記の電位差を表すアナログ信号を外部装置に対して出力することなどを、検知セルの起電力を表すアナログ信号のAD変換におけるサンプル周波数を高めた状態でも、実行することが可能となる。
【0036】
なお、頻度低信号には、酸素ポンプセルの両電極端子および検知セルの両電極端子のうち少なくとも1つの電極端子の電位と、センサ制御装置の基準電位との電位差に関する信号が含まれればよい。つまり、頻度低信号は、酸素ポンプセルまたは検知セルにおける特定の1つの電極端子の電位とセンサ制御装置の基準電位との電位差に関する単一の信号であってもよいし、あるいは、酸素ポンプセルおよび検知セルの全ての電極端子の各々と基準電位との電位差に関する複数の信号であってもよい。
【0037】
ただし、複数の信号を頻度低信号として出力する場合には、頻度低信号としての各信号は、1つずつ予め定められた順序で、且つ、頻度高信号の出力順序をも考慮してマルチプレクサから出力されるものとする。
【0038】
次に、本発明の他の局面におけるガス検知システムは、検知セルおよび酸素ポンプセルを有するガスセンサと、ガスセンサを制御するセンサ制御装置と、を備えるガス検知システムであって、センサ制御装置として、上述のいずれかのセンサ制御装置を備える。
【0039】
ガスセンサの検知セルは、測定対象ガスに含まれる特定成分に応じた起電力を生じるセルであり、ガスセンサの酸素ポンプセルは、ポンプ電流に応じて酸素の汲み入れまたは汲み出しを行うセルである。
【0040】
このガス検知システムは、上述のいずれかのセンサ制御装置を備えることから、上述したセンサ制御装置と同様に、デジタル信号のサンプリング周期を高速化した場合であっても、ノイズ成分の増大を抑制できる。
【発明の効果】
【0041】
本発明のセンサ制御装置およびガス検知システムによれば、デジタル信号のサンプリング周期を高速化した場合であっても、ノイズ成分の増大を抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
尚、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採り得ることはいうまでもない。
【0044】
[1.第1実施形態]
[1−1.全体構成]
図1は、本発明が適用された実施形態としてのガス検知システム1の全体構成図である。
【0045】
ガス検知システム1は、例えば、内燃機関の排気ガス中の特定ガス(本実施形態では、酸素)を検出する用途に用いられる。
ガス検知システム1は、酸素を検出するガスセンサ8と、ガスセンサ8を制御するセンサ制御装置2と、を備えている。ガス検知システム1は、検出した酸素濃度をエンジン制御装置(図示省略)に通知する。
【0046】
エンジン制御装置は、内燃機関を制御するための各種制御処理を実行するマイクロコントローラであり、各種制御処理の1つとして、ガス検知システム1で検出した酸素濃度を用いて内燃機関の空燃比制御を行う。
【0047】
ガスセンサ8は、内燃機関(エンジン)の排気管に設けられて、排気ガス中の酸素濃度を広域にわたって検出するものであり、リニアラムダセンサとも呼ばれる。ガスセンサ8は、センサ素子9と、ヒータ26と、を備えて構成されている。
【0048】
センサ素子9は、ポンプセル14と、起電力セル24と、を備えて構成されている。
ポンプセル14は、部分安定化ジルコニア(ZrO
2 )により形成された酸素イオン伝導性の固体電解質体15と、その表面と裏面のそれぞれに主として白金で形成された一対の多孔質電極16と、を有している。起電力セル24は、部分安定化ジルコニア(ZrO
2 )により形成された酸素イオン伝導性の固体電解質体25と、その表面と裏面のそれぞれに主として白金で形成された一対の多孔質電極28と、を有している。
【0049】
ヒータ26は、外部からの通電により発熱する発熱抵抗体を備えて構成されている。ヒータ26は、ポンプセル14および起電力セル24を加熱して、ポンプセル14および起電力セル24を活性化状態にするために備えられる。
【0050】
なお、ガスセンサ8は、ポンプセル14と起電力セル24との間に、ガスセンサ8の内部に設けられた測定室(図示省略)を備えている。測定室には、外部から多孔質拡散層(図示省略)を介して測定対象ガス(本実施形態では、排気ガス)が導入される。
【0051】
ガスセンサ8は、起電力セル24を用いて、測定室の酸素濃度(換言すれば、多孔質拡散層を介して測定室内に導入された測定対象ガスの酸素濃度)に応じた起電力(検知電圧Vs)が発生する。具体的には、起電力セル24には、表面の多孔質電極28と裏面の多孔質電極28との酸素濃度差に応じた検知電圧Vsが発生する。つまり、起電力セル24の検知電圧Vsは、測定室の酸素濃度に応じて変化する。
【0052】
そして、起電力セル24の検知電圧Vsが所定の基準値(例えば、450mV)となるように、ポンプセル14を用いて、測定室の測定対象ガスに含まれる酸素の汲み入れおよび汲み出しを行う。具体的には、ポンプセル14の表面の多孔質電極16と裏面の多孔質電極16とにポンプ電流Ipを流して、測定室内の酸素の汲み入れおよび汲み出しを行い、測定室の酸素濃度の調整を行う。
【0053】
つまり、ガスセンサ8は、測定室の酸素濃度が所定の目標濃度(例えば、理論空燃比相当の酸素濃度)になるように、ポンプセル14に流したポンプ電流Ipに基づいて、測定対象ガスに含まれていた酸素濃度を検出する用途に用いられる。
【0054】
センサ制御装置2は、ガスセンサ8を駆動制御して排気ガス中の酸素濃度を検出し、検出した酸素濃度をエンジン制御装置(図示省略)に通知する。
センサ制御装置2は、AD変換部31(アナログデジタル変換部31)、デジタル演算部33、電流DA変換部35(電流デジタルアナログ変換部35)、ガス濃度演算部37、検出信号発生部42、バッファ44、演算増幅器46、基準電圧発生部48、マルチプレクサ50、Rpvs演算部51、ヒータ発熱量演算部53、PWM生成部55、ヒータドライバ57、を備えている。
【0055】
検出信号発生部42は、ガスセンサ8の起電力セル24の内部抵抗値を検出するためのインピーダンス検出信号Saを、ガスセンサ8の起電力セル24に対して入力する。具体的には、検出信号発生部42は、デジタル演算部33からの指令に基づいて、インピーダンス検出信号Saとしての定電流を起電力セル24に対して通電する。
【0056】
バッファ44は、起電力セル24の両端電圧をハイインピーダンスで検出し、マルチプレクサ50に対してローインピーダンスで出力する。なお、起電力セル24の両端電圧は、インピーダンス検出信号Saの未入力時には、測定室の酸素濃度に応じて変化するセンサ出力信号Vs1(検知電圧Vs)となり、インピーダンス検出信号Saの入力時には、起電力セル24の内部抵抗値に応じて変化する応答信号Vs2となる。
【0057】
演算増幅器46は、ポンプセル14と起電力セル24とが接続される共通端子COMの電位を所定電位に設定するものである。具体的には、グランド電位GNDを基準として、基準電圧発生部48の出力電圧(本実施形態では、2.5V)に基づき定められる電位を、共通端子COMの電位に設定している。なお、本実施形態では、グランド電位GNDがセンサ制御装置2の基準電位に相当する。
【0058】
マルチプレクサ50は、複数のアナログ信号が入力されて、複数のアナログ信号を1つずつ予め定められた順に出力する。
本実施形態では、マルチプレクサ50に入力される複数のアナログ信号には、「起電力セル24のVs+端子と共通端子COMとの間の電圧」(Vs+−COM間電圧)、「ポンプセル14のIp+端子とグランド電位GNDとの間の電圧」(Ip+−GND間電圧)、「共通端子COMとグランド電位GNDとの間の電圧」(COM−GND間電圧)、「起電力セル24のVs+端子とグランド電位GNDとの間の電圧」(Vs+−GND間電圧)が含まれている。なお、Vs+端子および共通端子COMが、起電力セル24の両電極端子に相当し、Ip+端子および共通端子COMが、ポンプセル14の両電極端子に相当する。
【0059】
マルチプレクサ50(以下、MUX50ともいう)は、入力される複数のアナログ信号のいずれか1つを、AD変換部31に対して出力する。マルチプレクサ50は、デジタル演算部33からの指令に基づいて、いずれのアナログ信号を出力するのかを決定する。
【0060】
マルチプレクサ50は、複数の入力端子と1つの出力端子との接続経路上に設けられる複数の切替スイッチ部(図示省略)を備えており、複数の切替スイッチ部の各状態(ON状態、OFF状態)がデジタル演算部33からの指令に基づいて設定されることで、複数のアナログ信号のうちいずれか1つを出力可能に構成されている。
【0061】
AD変換部31は、マルチプレクサ50から出力されるアナログ信号をデジタル値に変換し、そのデジタル値をデジタル演算部33およびRpvs演算部51に通知する。
デジタル演算部33は、センサ制御処理、ポンプ電流制御処理などの演算制御処理や、マルチプレクサ50の動作を制御するための信号切替制御処理などを実行する。信号切替制御処理およびポンプ電流制御処理については、後述する。
【0062】
なお、センサ制御装置2は、図示しないEEPROMおよびRAMを備えている。
EEPROMは、演算制御処理の内容や演算制御処理に用いる各種パラメータなどを記憶する記憶部である。また、EEPROMは、制御対象となるガスセンサ8の種類や特性に応じて定められる各種情報(ポンプセル14の許容最大電流など)を記憶している。これらの情報は、センサ制御装置2の製造段階でEEPROMに記憶される。
【0063】
RAMは、各種演算制御処理に用いられる制御データ等を一時的に記憶する記憶部である。
電流DA変換部35は、デジタル演算部33で演算されたポンプ電流Ipの通電制御値の情報が含まれるDAC制御信号S1に基づいて、DA変換を行い、ポンプセル14に対してポンプ電流Ipを通電する。
【0064】
電流DA変換部35は、デジタル演算部33で演算されたポンプ電流Ipの通電制御値の情報(通電方向、電流値)が含まれるDAC制御信号S1を受信し、受信したデジタル情報についてDA変換を行い、DAC制御信号S1に基づき定められるポンプ電流をポンプセル14に対して通電する。
【0065】
ガス濃度演算部37は、デジタル演算部33で演算されたポンプ電流Ipの通電制御値の情報が含まれるガス検出信号S2に基づいて、排気ガス中の特定ガス(本実施形態では、酸素)の濃度を演算する。
【0066】
つまり、ガス濃度演算部37は、測定室の酸素濃度が所定の目標濃度(例えば、理論空燃比相当の酸素濃度)になるようにポンプセル14に流したポンプ電流Ipに基づいて、測定対象ガスに含まれていた酸素濃度を演算する。
【0067】
Rpvs演算部51は、AD変換部31から通知された応答信号Vs2及びセンサ出力信号Vs1に基づいて、起電力セル24の内部抵抗値Rpvsを演算する。
ヒータ発熱量演算部53は、デジタル演算により、Rpvs演算部51で演算された内部抵抗値Rpvsに基づいてガスセンサ8温度を演算し、演算された温度をセンサ目標温度に近づける、あるいは維持するために必要なヒータ発熱量を演算する。
【0068】
PWM生成部55は、ヒータ発熱量演算部53で演算されたヒータ発熱量に基づいて、ヒータ26に供給する電力のDUTY比率を演算して、そのDUTY比率に応じたPWM制御信号を生成する。
【0069】
ヒータドライバ57は、電源装置59から供給される電力を用いて、PWM生成部55からのPWM制御信号に基づいてヒータ26への通電制御を行う。これにより、ヒータ26の発熱量は、ガスセンサ8の温度をセンサ目標温度に近づける、あるいは維持するために必要な発熱量となる。
【0070】
[1−2.信号切替制御処理]
デジタル演算部33で実行される各種制御処理のうち、マルチプレクサ50の動作を制御するための信号切替制御処理について説明する。
【0071】
信号切替制御処理では、マルチプレクサ50に入力される4つのアナログ信号を、予め定められた順番で1つずつ出力するように、マルチプレクサ50の動作を制御する。
本実施形態では、信号切替制御処理を実行するデジタル演算部33は、Vs+−COM間電圧のアナログ信号(信号1)、Ip+−GND間電圧のアナログ信号(信号2)、COM−GND間電圧のアナログ信号(信号3)、Vs+−GND間電圧のアナログ信号(信号4)の4つのアナログ信号を、
図2に示すような順番で出力するように、マルチプレクサ50の動作を制御する。
【0072】
つまり、デジタル演算部33からの指令を受けたマルチプレクサ50は、「信号1、信号2、信号1、信号3、信号1、信号4」のような順番で、各アナログ信号を出力する。また、デジタル演算部33からの指令を受けたマルチプレクサ50は、「信号1、信号2、信号1、信号3、信号1、信号4」の出力期間を1周期として、複数のアナログ信号を繰り返し出力している。なお、1つの信号の出力期間は、50μsであり、1周期は300μsである。
【0073】
マルチプレクサ50がこのような順番で4つのアナログ信号を出力することで、全てのアナログ信号が出力される全信号出力期間(1周期)において、信号1は、2回以上出力されるのに対して、信号2〜信号4は、1周期において1回出力される。
【0074】
このように、信号切替制御処理は、マルチプレクサ50の動作を制御するにあたり、1周期において2回以上出力される頻度高信号と、1周期において1回出力される頻度低信号と、に分類して複数のアナログ信号を出力するように、マルチプレクサ50の動作を制御する。
【0075】
つまり、マルチプレクサ50は、複数のアナログ信号を全て同じ頻度で出力するのではなく、出力頻度の高い頻度高信号と、出力頻度の低い頻度低信号と、に分類して信号出力することで、頻度高信号となる信号1(Vs+−COM間電圧のアナログ信号)のサンプリング周波数を高めることができる。
【0076】
そして、信号1(Vs+−COM間電圧のアナログ信号)は、起電力セル24の起電力を表すアナログ信号である。
このことから、センサ制御装置2は、信号1〜信号4を同じ頻度で出力するマルチプレクサを備える構成と比べて、AD変換部31の性能を向上させることなく、起電力セル24の起電力のサンプリング周波数を高めることができる。
【0077】
ここで、
図4に、信号1〜信号4を同じ頻度で出力するマルチプレクサでのアナログ信号の出力順序を表す説明図を示す。
図4に示すような順序で出力されるアナログ信号(信号1〜4)は、いずれもサンプリング周期が200μsで、サンプリング周波数が5kHzである。
【0078】
これに対して、本実施形態のマルチプレクサ50から出力されるアナログ信号(信号1〜4)に関しては、
図2に示すように、信号1は、サンプリング周期が100μsで、サンプリング周波数が10kHzであり、信号2〜4は、サンプリング周期が300μsで、サンプリング周波数が3.3kHzである。
【0079】
このことから、本実施形態のマルチプレクサ50は、信号1〜信号4を同じ頻度で出力するマルチプレクサと比べて、信号1のサンプリング周波数を5kHzから10kHzに高めることができる。
【0080】
次に、マルチプレクサ50が出力する頻度低信号には、信号2、信号3、信号4が、それぞれ含まれている。
信号2は、Ip+−GND間電圧(詳細には、Ip+端子の電位と基準電位であるグランド電位GNDとの間の電位差)のアナログ信号であり、ポンプセル14のうち電流DA変換部35に接続される端部の電位を示すアナログ信号である。信号3は、COM−GND間電圧(詳細には、共通端子COMの電位と基準電位であるグランド電位GNDとの間の電位差)のアナログ信号であり、共通端子COMの電位を示すアナログ信号である。信号4は、Vs+−GND間電圧(詳細には、Vs+端子の電位と基準電位であるグランド電位GNDとの間の電位差)のアナログ信号であり、起電力セル24のうちバッファ44に接続される端部の電位を示すアナログ信号である。
【0081】
つまり、ポンプセル14および起電力セル24の各電極端子(Ip+端子、COM端子、Vs+端子)の電位と、センサ制御装置2の基準電位(GND電位)との電位差を表すアナログ信号が頻度低信号に含まれる。このため、センサ制御装置2は、複数のアナログ信号のうち、頻度高信号(起電力セル24の起電力)よりも頻度は下がるものの、上記の電位差を表すアナログ信号(信号2,3,4)を、AD変換部31を介して取得することができる。
【0082】
これにより、センサ制御装置2は、頻度低信号としての上記の電位差を表すアナログ信号(信号2,3,4)を用いて、例えば、ポンプセル14および起電力セル24における各電極端子(Ip+端子、共通端子COM、Vs+端子)の異常状態(電源電位短絡異常、基準電位短絡異常、断線異常など)を、デジタル演算部33や他の機器で検知することや、これらのアナログ信号(信号2,3,4)を外部装置に対して出力することなどが可能となる。
【0083】
また、
図2から分かるように、マルチプレクサ50は、1周期の期間内にかかわらず、複数の周期を含めた期間においても、常に信号1(Vs+−COM間電圧のアナログ信号)を一定周期で出力している。
【0084】
起電力セル24の起電力としての信号1が一定周期で出力されることで、起電力セル24の起電力としての信号1が不規則なタイミングで出力される場合に比べて、デジタル演算部33での演算処理(起電力セル24の起電力に基づくポンプ電流Ipの通電制御値の演算処理など)を簡素化でき、通電制御値を迅速に演算することが可能となる。
【0085】
[1−3.ポンプ電流制御処理]
次に、デジタル演算部33で実行される各種制御処理のうち、ポンプ電流制御処理について説明する。
【0086】
ポンプ電流制御処理は、起電力セル24の検知電圧Vsが目標制御電圧(本実施形態では、例えば450mV)となるように、ポンプセル14に通電するポンプ電流Ipを制御するための演算制御処理である。
【0087】
ここで、ポンプ電流制御処理を実行する際のデジタル演算部33の機能ブロック図を
図3に示す。
ポンプ電流制御処理を実行する際のデジタル演算部33は、PID演算部61、第1フィルタ部63、第2フィルタ部65の各機能を有している。
【0088】
このうち、PID演算部61は、目標制御電圧(450mV)と起電力セル24の検知電圧Vs(起電力セル24の起電力)との偏差ΔVsに基づいてPID演算し、偏差ΔVsが0に近づくように(換言すれば、検知電圧Vsが目標制御電圧に近づくように)ポンプセル14に通電するためのポンプ電流Ipの通電制御値(通電制御電流Tip)を演算する。
【0089】
第1フィルタ部63は、PID演算部61で演算された通電制御電流Tipを表すデジタル信号から予め定められた第1遮断周波数(本実施形態では、100Hz)よりも高い周波数成分を減衰させてなるDAC制御信号S1(第1フィルタ信号S1)をデジタル演算により抽出する。
【0090】
DAC制御信号S1は、ポンプ電流Ipの通電制御電流Tipを示すデジタル信号から第1遮断周波数よりも高い周波数成分(ノイズ成分)が減衰された信号であるため、ポンプ電流Ipの通電制御電流Tipを示すデジタル信号であって、PID演算部61でのデジタル演算で重畳されたノイズ成分が減衰されたデジタル信号である。このため、ポンプ電流Ip(デジタル信号)のサンプリング周期を高速化した場合であっても、ポンプ電流Ipにおける微分ノイズ成分の増大を抑制できる。
【0091】
第2フィルタ部65は、第1フィルタ部63で抽出されたDAC制御信号S1を表すデジタル信号から予め定められた第2遮断周波数(本実施形態では、50Hz)よりも高い周波数成分を減衰させてなるガス検出信号S2(第2フィルタ信号S2)をデジタル演算により抽出する。
【0092】
ガス検出信号S2は、DAC制御信号S1から第2遮断周波数よりも高い周波数成分(ノイズ成分)が減衰された信号であるため、DAC制御信号S1からさらにノイズ成分(PID演算部61でのデジタル演算で重畳されたノイズ成分)が減衰されたデジタル信号である。
【0093】
そして、DAC制御信号S1は、ガス検出信号S2と比べて、フィルタ処理の回数が少ないため、ポンプ電流Ipの通電制御電流Tipを示すデジタル信号であって、起電力セル24の起電力における直近の変化状態が相対的に大きく反映されたデジタル信号となる。このようなデジタル信号は、ポンプセル14のフィードバック制御に適した信号となる。このため、DAC制御信号S1に基づいて生成したポンプ電流Ipをポンプセル14に対して通電することで、起電力セル24の起電力における直近の変化状態に応じて、ポンプセル14による酸素のポンピング(汲み出し、汲み入れ)を適切に実行できる。
【0094】
なお、第1フィルタ部63は、通電制御電流Tipを表すデジタル信号から抽出したDAC制御信号S1を電流DA変換部35に対して送信する。DAC制御信号S1は、ポンプ電流Ipの通電制御値の電流値および通電方向(正方向、逆方向)に関する情報を含んだデジタル信号である。
【0095】
そして、上述したように、DAC制御信号S1を受信した電流DA変換部35は、受信したデジタル情報についてDA変換を行い、DAC制御信号S1に基づき定められるポンプ電流をポンプセル14に対して通電する。
【0096】
次に、ガス検出信号S2は、DAC制御信号S1と比べて、フィルタ処理の回数が多いため、ポンプ電流Ipの通電制御電流Tipを示すデジタル信号であって、起電力セル24の起電力における長期間の変化状態が相対的に大きく反映されたデジタル信号となる。このようなデジタル信号は、測定対象ガス(排気ガス)に含まれる特定成分(酸素)の検出に適した信号となる。
【0097】
このため、ガス検出信号S2を排気ガスに含まれる酸素濃度を検出するための信号として用いることで、起電力セル24の起電力における長期間の変化状態に基づいて、排気ガスに含まれる酸素濃度を検出することが可能となる。これにより、酸素濃度の検出精度を向上できる。
【0098】
なお、第2フィルタ部65は、DAC制御信号S1から抽出したガス検出信号S2をガス濃度演算部37に対して送信する。ガス検出信号S2は、ポンプ電流Ipの通電制御値の電流値および通電方向(正方向、逆方向)に関する情報を含んだデジタル信号である。
【0099】
そして、上述したように、ガス検出信号S2を受信したガス濃度演算部37は、デジタル演算部33で演算されたポンプ電流Ipの通電制御値の情報が含まれるガス検出信号S2に基づいて、排気ガス中の特定ガス(本実施形態では、酸素)の濃度を演算する。
【0100】
次に、センサ制御装置2においては、第1フィルタ部63の第1遮断周波数は第2フィルタ部65の第2遮断周波数よりも高い周波数である。
この場合、DAC制御信号S1(第1フィルタ信号)は、ガス検出信号S2(第2フィルタ信号)と比べて、広い周波数帯域成分を含んだデジタル信号となり、ポンプ電流Ipの通電制御電流Tipを示すデジタル信号であって、起電力セル24の起電力における直近の変化状態が相対的に大きく反映されたデジタル信号となる。
【0101】
このため、DAC制御信号S1に基づいて生成したポンプ電流Ipをポンプセル14に対して通電することで、起電力セル24の起電力における直近の変化状態に応じて、ポンプセル14による酸素のポンピングを適切に実行できる。
【0102】
また、ガス検出信号S2は、DAC制御信号S1と比べて、狭い周波数帯域成分を含んだデジタル信号となり、ポンプ電流Ipの通電制御電流Tipを示すデジタル信号であって、起電力セル24の起電力における長期間の変化状態が相対的に大きく反映されたデジタル信号となる。
【0103】
このため、ガス検出信号S2を排気ガスに含まれる酸素濃度を検出するための信号として用いることで、起電力セル24の起電力における長期間の変化状態に基づいて、排気ガスに含まれる酸素濃度を検出できるため、酸素濃度の検出精度を向上できる。
【0104】
[1−4.効果]
以上説明したように、本実施形態のガス検知システム1においては、センサ制御装置2が、マルチプレクサ50と、AD変換部31と、デジタル演算部33と、電流DA変換部35と、を備えている。
【0105】
そして、上述したように、ポンプ電流制御処理を実行する際のデジタル演算部33は、PID演算部61、第1フィルタ部63、第2フィルタ部65の各機能を有している。
このうち、PID演算部61は、目標制御電圧と起電力セル24の検知電圧Vs(起電力セル24の起電力)との偏差ΔVsに基づいてPID演算し、偏差ΔVsが0に近づくように(換言すれば、検知電圧Vsが目標制御電圧に近づくように)ポンプセル14に通電するためのポンプ電流Ipの通電制御値(通電制御電流Tip)を演算する。
【0106】
第1フィルタ部63は、PID演算部61で演算された通電制御電流Tipを表すデジタル信号からDAC制御信号S1(第1フィルタ信号S1)をデジタル演算により抽出する。DAC制御信号S1は、ポンプ電流Ipの通電制御電流Tipを示すデジタル信号であって、PID演算部61でのデジタル演算で重畳されたノイズ成分が減衰されたデジタル信号である。このため、ポンプ電流Ip(デジタル信号)のサンプリング周期を高速化した場合であっても、ポンプ電流Ipにおける微分ノイズ成分の増大を抑制できる。
【0107】
第2フィルタ部65は、第1フィルタ部63で抽出されたDAC制御信号S1を表すデジタル信号からガス検出信号S2(第2フィルタ信号S2)をデジタル演算により抽出する。ガス検出信号S2は、DAC制御信号S1からさらにノイズ成分(PID演算部61でのデジタル演算で重畳されたノイズ成分)が減衰されたデジタル信号である。
【0108】
そして、DAC制御信号S1は、ガス検出信号S2と比べて、フィルタ処理の回数が少ないため、ポンプ電流Ipの通電制御電流Tipを示すデジタル信号であって、起電力セル24の起電力における直近の変化状態が相対的に大きく反映されたデジタル信号となる。このようなデジタル信号は、ポンプセル14のフィードバック制御に適した信号となる。
【0109】
このため、DAC制御信号S1に基づいて生成したポンプ電流Ipをポンプセル14に対して通電することで、起電力セル24の起電力における直近の変化状態に応じて、ポンプセル14による酸素のポンピング(汲み出し、汲み入れ)を適切に実行できる。
【0110】
次に、ガス検出信号S2は、DAC制御信号S1と比べて、フィルタ処理の回数が多いため、ポンプ電流Ipの通電制御電流Tipを示すデジタル信号であって、起電力セル24の起電力における長期間の変化状態が相対的に大きく反映されたデジタル信号となる。このようなデジタル信号は、測定対象ガス(排気ガス)に含まれる特定成分(酸素)の検出に適した信号となる。
【0111】
このため、ガス検出信号S2を排気ガスに含まれる酸素濃度を検出するための信号として用いることで、起電力セル24の起電力における長期間の変化状態に基づいて、排気ガスに含まれる酸素濃度を検出することが可能となる。これにより、酸素濃度の検出精度を向上できる。
【0112】
よって、センサ制御装置2によれば、ポンプ電流Ip(デジタル信号)のサンプリング周期を高速化した場合であっても、ポンプ電流Ipにおける微分ノイズ成分の増大を抑制できる。また、センサ制御装置2によれば、ポンプセル14による酸素のポンピング(汲み出し、汲み入れ)を適切に実行できるとともに、測定対象ガス(排気ガス)に含まれる特定成分(酸素濃度)の検出精度を向上できる。
【0113】
[1−5.特許請求の範囲との対応関係]
ここで、特許請求の範囲と本実施形態とにおける文言の対応関係について説明する。
起電力セル24が検知セルの一例に相当し、ポンプセル14が酸素ポンプセルの一例に相当し、ガスセンサ8がガスセンサの一例に相当し、センサ制御装置2がセンサ制御装置の一例に相当する。起電力セル24におけるVs+端子および共通端子COMが、検知セルの両電極端子の一例に相当し、ポンプセル14におけるIp+端子および共通端子COMが、酸素ポンプセルの両電極端子の一例に相当する。
【0114】
マルチプレクサ50がマルチプレクサの一例に相当し、AD変換部31がアナログデジタル変換部の一例に相当し、デジタル演算部33のPID演算部61が通電制御値演算部の一例に相当し、電流DA変換部35がデジタルアナログ変換部の一例に相当する。
【0115】
信号1が頻度高信号の一例に相当し、信号2,3,4が頻度低信号の一例に相当し、「信号1、信号2、信号1、信号3、信号1、信号4」の出力期間である1周期が全信号出力期間の一例に相当する。
【0116】
デジタル演算部33の第1フィルタ部63が第1フィルタ部の一例に相当し、DAC制御信号S1が第1フィルタ信号の一例に相当し、デジタル演算部33の第2フィルタ部65が第2フィルタ部の一例に相当し、ガス検出信号S2が第2フィルタ信号の一例に相当し、ガス検知システム1がガス検知システムの一例に相当する。
【0117】
[2.他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、様々な態様にて実施することが可能である。
【0118】
例えば、マルチプレクサに入力されるアナログ信号は4個に限られることはなく、3個以上であればよい。また、マルチプレクサは、入力された複数のアナログ信号を、頻度高信号と頻度低信号とに分類して出力すればよい。
【0119】
第1フィルタ部の第1周波数および第2フィルタ部の第2周波数は、それぞれ上記数値に限られることは無い。また、第1フィルタ部の第1周波数は、第2フィルタ部の第2周波数よりも高い周波数に限られることはなく、第1周波数と第2周波数とが同じ周波数であっても良い。
【0120】
また、本発明は、内燃機関の排気ガス中の特定ガスを検出する用途に用いられるガス検知システムおよびセンサ制御装置に限定されることはなく、内燃機関への吸気ガス中の特定ガス(例えば、酸素)を検出する用途や、環境気体中の特定ガス(例えば、酸素)を検出する用途に用いるものであってもよい。