(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
表面に突出部が設けられたベース部材と、前記突出部の突出高さに比べて厚み寸法が小さくかつ前記突出部を挿通させる挿通孔が形成されたプレート部材とを備える乗物用部品の製造方法であって、
前記プレート部材をその厚み方向で前記ベース部材と重ね合わせるとともに、前記ベース部材の前記突出部を前記プレート部材の前記挿通孔に挿通させる挿通工程と、
前記プレート部材の前記挿通孔の周縁と、前記突出部の前記挿通孔からの露出部とが重なり合う重合部を形成するように、前記挿通孔から露出した前記突出部の露出部を変形させる変形工程と、を備え、
前記挿通工程で用いる前記ベース部材は、予め定められた抜き方向に相対的に移動可能な2つの分割体を有する成形型を用い、前記抜き方向に対して傾斜する傾斜面を有するように成形され、前記突出部は、前記傾斜面の法線方向に前記傾斜面から突出して前記傾斜面の傾斜方向に沿って長手方向が設定された細長形状に形成されている、乗物用部品の製造方法。
前記長手方向は、前記傾斜面と、前記抜き方向に垂直な仮想平面との交線方向から見て、前記傾斜面の傾斜方向に平行に設定されている、請求項1に記載の乗物用部品の製造方法。
前記挿通工程で用いる前記ベース部材の前記突出部は、前記長手方向の一方の側縁部が、前記傾斜面から前記法線方向に遠ざかるにつれて、前記長手方向の一方側に向かって傾斜して延びる形状に形成されている、請求項1または2に記載の乗物用部品の製造方法。
前記挿通工程で用いる前記ベース部材の前記突出部は、前記長手方向の両側の側縁部の各々が前記抜き方向に沿って延びる形状に形成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の乗物用部品の製造方法。
前記変形工程は、前記突出部の前記長手方向の一方側から他方側に向けて、前記突出部の前記露出部に工具を押し付けて前記露出部を熱変形させる第1変形工程と、前記第1変形工程後に、前記傾斜面に近づくように前記突出部の前記露出部に前記工具を押し付けて前記露出部をさらに熱変形させる第2変形工程とを有する、請求項3または4に記載の乗物用部品の製造方法。
前記ベース部材は、前記突出部を複数有し、前記複数の突出部は、前記長手方向が互いに平行となるように延び、かつ前記長手方向に直交する方向に並んで前記傾斜面上に配置されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の乗物用部品の製造方法。
前記ベース部材は、乗物の一部を構成する部材であり、前記ベース部材の前記傾斜面とは反対側の面が、前記乗物の外側に露出する露出面である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の乗物用部品の製造方法。
前記挿通工程で用いる前記ベース部材は、前記傾斜面としての第1傾斜面と、前記第1傾斜面と前記抜き方向に垂直な仮想平面との間の角度に比べて、前記抜き方向に垂直な仮想平面との間の角度が小さい第2傾斜面を更に有し、前記第1傾斜面上に前記突出部としての複数の第1突出部が設けられ、前記第2傾斜面上に複数の第2突出部が設けられ、
前記第2突出部は、長手方向を有する形状に形成され、前記第2傾斜面と、前記抜き方向に垂直な仮想平面との交線方向から見て、前記第2傾斜面の傾斜方向とは異なる方向に長手方向が設定されている、請求項1〜8のいずれか1項に記載の乗物用部品の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したボルトの締結によるものとは異なるカバー部材の固定構造として、ベース部材を部分的に変形させてカバー部材に抜け止めを施す構造がある。このようなベース部材は、例えば樹脂材料を用い、変形部分に突出部を設けるように所定の成形型で成形されるが、突出部が大きくなると、成形後の収縮によってベース部材の表面に成形不良(以下、「ヒケ」という)が生じうる。プレート部材の成形型の抜き方向と突出部の突出方向とが異なる場合には、比較的大きな突出部を形成する場合があるが、このような場合に成形不良が生じ易くなる。
【0005】
そこで本発明は、成形型の抜き方向に対して傾斜して突出する突出部を有するベース部材をヒケの発生を抑制しながら成形するとともに、前記突出部を用いてプレート部材をベース部材に結合できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、表面に突出部が設けられたベース部材と、前記突出部の突出高さに比べて厚み寸法が小さくかつ前記突出部を挿通させる挿通孔が形成されたプレート部材とを備える乗物用部品の製造方法であって、前記プレート部材をその厚み方向で前記ベース部材と重ね合わせるとともに、前記ベース部材の前記突出部を前記プレート部材の前記挿通孔に挿通させる挿通工程と、前記プレート部材の前記挿通孔の周縁と、前記突出部の前記挿通孔からの露出部とが重なり合う重合部を形成するように、前記挿通孔から露出した前記突出部の露出部を変形させる変形工程と、を備え、前記挿通工程で用いる前記ベース部材は、予め定められた抜き方向に相対的に移動可能な2つの分割体を有する成形型を用い、前記抜き方向に対して傾斜する傾斜面を有するように成形され、前記突出部は、前記傾斜面の法線方向に前記傾斜面から突出して前記傾斜面の傾斜方向に沿って長手方向が設定された細長形状に形成されている。
【0007】
一般に、傾斜面の法線方向に突出する突出部を有する部材を成形型で成形する際、成形型から部材を離間し易くするために、傾斜面の傾斜方向に沿って、突出部に傾斜面の根元部分から突出方向の先端部分にかけて、抜き勾配と称される先細りの勾配が設けられる。この抜き勾配を形成すると、突出部の根元部分が幅広になることで、突出部の体積が増加する。
【0008】
上記製造方法によれば、傾斜面の傾斜方向に沿って長手方向が設定された細長形状に突出部を形成する。抜き勾配の形成による突出部の体積の増加は、傾斜面の傾斜方向と直交する方向の突出部の幅に比例して大きくなるが、傾斜方向に対して垂直な方向の突出部の幅を小さく抑えることにより、突出部の幅方向に形成される抜き勾配のための根元部分の体積を低減できる。これにより、ベース部材を成形する際のヒケの発生を抑制できる。また、傾斜面の傾斜方向に沿って長手方向を設定して突出部を形成するので、プレート部材の挿通孔の周縁と、前記突出部の前記露出部との重合部を傾斜面の傾斜方向に沿って広く形成でき、ベース部材にプレート部材を高い強度で結合できる。
【0009】
前記長手方向は、前記傾斜面と、前記抜き方向に垂直な仮想平面との交線方向から見て、前記傾斜面の傾斜方向に平行に設定されていてもよい。
【0010】
上記製造方法によれば、突出部の抜き勾配の体積を一層抑制できるので、ベース部材におけるヒケの発生を抑制できる。
【0011】
前記挿通工程で用いる前記ベース部材の前記突出部は、前記長手方向の一方の側縁部が、前記傾斜面から前記法線方向に遠ざかるにつれて、前記長手方向の一方側に向かって傾斜して延びる形状に形成されていてもよい。
【0012】
上記製造方法によれば、突出部の法線方向への突出高さを抑えることで突出部の体積を抑制でき、ベース部材におけるヒケの発生を抑制できる。また、挿通孔よりも突出部の長手方向一方側において、挿通孔から露出する突出部の露出部の体積を増大させることで、挿通孔の周縁と良好に重合する重合部を形成できる。
【0013】
前記挿通工程で用いる前記ベース部材の前記突出部は、前記長手方向の両側の側縁部の各々が前記抜き方向に沿って延びる形状に形成されていてもよい。
【0014】
上記製造方法によれば、突出部の法線方向への突出高さを抑えつつ、なるべくプレート部材から露出する突出部の露出部を増やして、前記挿通孔の周縁と前記突出部の前記露出部との重合部を形成し易くできる。
【0015】
前記変形工程は、前記突出部の前記長手方向の一方側から他方側に向けて、前記突出部の前記露出部に工具を押し付けて前記露出部を熱変形させる第1変形工程と、前記第1変形工程後に、前記傾斜面に近づくように前記突出部の前記露出部に前記工具を押し付けて前記露出部をさらに熱変形させる第2変形工程とを有してもよい。
【0016】
上記製造方法によれば、突出部をその長手方向の一方側から他方側に向けて徐々に変形でき、過度の変形を防止しながら前記挿通孔の周縁と前記突出部の前記露出部との重合部を効率よく形成し、かつ、突出部の余分な高さを抑制して変形部を形成できる。
【0017】
前記ベース部材は、前記突出部を複数有し、前記複数の突出部は、前記長手方向が互いに平行となるように延び、かつ前記長手方向に直交する方向に並んで前記傾斜面上に配置されていてもよい。
【0018】
上記製造方法によれば、複数の突出部が長手方向に直交する方向に並んで傾斜面上に配置され、各突出部が互いに離隔されるので、ベース部材の成形後における各突出部の熱収縮による影響が分散される。よって、ベース部材におけるヒケの発生を抑制できる。
【0019】
前記ベース部材は、乗物の一部を構成する部材であり、前記ベース部材の前記傾斜面とは反対側の面が、前記乗物の外側に露出する露出面であってもよい。また、前記ベース部材は、乗物の外郭を構成する板状の樹脂部材であってもよい。
【0020】
上記製造方法のように、ベース部材の表面を、乗物の外側に露出する露出面として用いると、ベース部材の表面状態が美観に影響し易いが、上記いずれかの態様の車両用部品の製造方法によれば、ベース部材におけるヒケの発生が抑制されるので、前記露出面の美観を保つことができる。また、ベース部材におけるヒケの発生を抑制できるので、ベース部材をある程度薄肉に形成することもできる。
【0021】
前記挿通工程で用いる前記ベース部材は、前記傾斜面としての第1傾斜面と、前記第1傾斜面と前記抜き方向に垂直な仮想平面との間の角度に比べて、前記抜き方向に垂直な仮想平面との間の角度が小さい第2傾斜面を更に有し、前記第1傾斜面上に前記突出部としての複数の第1突出部が設けられ、前記第2傾斜面上に複数の第2突出部が設けられ、前記第2突出部は、長手方向を有する形状に形成され、前記第2傾斜面と、前記抜き方向に垂直な仮想平面との交線方向から見て、前記第2傾斜面の傾斜方向とは異なる方向に長手方向が設定されていてもよい。
【0022】
上記製造方法によれば、第1傾斜面は、第2傾斜面よりも抜き方向に垂直な仮想平面に対して急斜面であるため、第1突出部に設ける抜き勾配が第2突出部に設ける抜き勾配よりも大きくなり易いが、第1傾斜面に対してその傾斜方向に長手方向を設定するように各第1突出部を設けることで、各第1突出部の形成に伴うベース部材のヒケの発生を抑制できる。また、第2傾斜面は、抜き方向に垂直な仮想平面に対し、第1傾斜面よりも傾斜が緩やかであり、各第2突出部の長手方向は、前記第2傾斜面と、前記抜き方向に垂直な仮想平面との交線方向から見て、前記第2傾斜面の傾斜方向とは異なる方向に設定されるので、第2傾斜面上に各第2突出部を設ける際の設計自由度を高めることができる。
【0023】
本発明の一態様に係る乗物用部品は、表面に突出部が設けられたベース部材と、前記突出部の突出高さよりも厚み寸法が小さくかつ前記突出部を挿通可能な挿通孔が形成されたプレート部材とを備え、前記プレート部材は、その厚み方向で前記ベース部材と重ね合わせられ、前記突出部が前記挿通孔に挿通され、前記挿通孔から露出した前記突出部の露出部は、前記プレート部材の前記挿通孔の周縁と重なる重合部を有し、前記ベース部材は、予め定められた抜き方向に相対的に移動可能な2つの分割体を有する成形型で、前記抜き方向に対して傾斜する傾斜面を有するように成形され、前記突出部は、前記傾斜面の法線方向に前記傾斜面から突出して前記傾斜面の傾斜方向に沿って長手方向が設定された細長形状に形成されている。
【0024】
上記構成によれば、突出部を斜面の傾斜方向に沿って長手方向が設定された細長形状に形成することで、傾斜方向に対して垂直な方向の突出部の幅を小さく抑え、突出部の抜き勾配の体積を抑制できる。このため、ベース部材を成形する際のヒケの発生を抑制できるとともに、傾斜面の傾斜方向で、前記プレート部材の前記挿通孔の周縁と前記突出部の前記露出部との重合部を広く形成でき、ベース部材に高い強度でプレート部材を結合できる。
【発明の効果】
【0025】
上記した本発明の各態様によれば、成形型の抜き方向に対して傾斜した傾斜面と、この傾斜面より突出する突出部を有するベース部材をヒケの発生を抑制しながら成形するとともに、前記突出部を用いてプレート部材をベース部材に高い強度で結合できる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態を、各図面を参照しながら説明する。以下に記載する各方向は、鞍乗型車両の搭乗者から見た方向を基準とする。
【0028】
[鞍乗型車両]
図1は、実施形態に係る鞍乗型車両1の側面図である。
図1中、タンクカバーを実線で示し、タンクカバー以外の構成を二点鎖線で示す。
図1に示すように、鞍乗型車両1は、前方から後方に延びるフレーム部材2と、フレーム部材2に支持された車両走行用の駆動ユニット3と、駆動ユニット3の上方でフレーム部材2に支持される燃料タンク4と、燃料タンク4の後方でフレーム部材2に支持されるシート5とを備える。フレーム部材2の前部には、ステアリングシャフト6が軸支される。車両の側面中央付近では、車両の後方に延びるスイングアーム7が、上下に揺動可能にフレーム部材2に軸支される。
【0029】
ステアリングシャフト6には、一対のフロントフォーク8が接続され、一対のフロントフォーク8の下端には、前輪9が回転可能に軸支される。ステアリングシャフト6の上端には、ハンドル10が接続される。スイングアーム7の後端には、後輪11が回転可能に軸支される。燃料タンク4の前側には、燃料タンク4の前部と駆動ユニット3の上部とを覆うように、左右一対のタンクカバー12が設けられる。各タンクカバー12は、ベース部材13と、プレート部材14とを有する。フレーム部材2には、一対のフロントフォーク8の一部を覆うように、フロントカウル15が設けられる。フロントカウル15の上方には、ウインドシールド16が設けられる。
【0030】
[タンクカバー]
図2は、
図1に示した鞍乗型車両1のタンクカバー12の裏面側の構造を部分的に示す斜視図である。
図3は、ベース部材13とプレート部材14との分解図である。
図4は、第1傾斜面P1上に形成された第1突出部13dを示す斜視図である。
図5は、第1突出部13dと第2突出部13eとの断面図である。
図6は、第2傾斜面P2上に形成された第2突出部13eを示す斜視図である。
図3〜6では、変形部13f、13gの形成前の構造を示す。
図4及び6では、第1傾斜面P1、第2傾斜面P2を模式的な平面として示す。
図5では、第1突出部13dと第2突出部13eとを各々の長手方向に沿った断面で示す。
【0031】
図2に示すように、ベース部材13は、湾曲した表面を有するカバーであり、薄肉の板状の樹脂部材で構成される。ベース部材13は、一対の分割体101、102を有する射出成形金型100によって射出成形される(
図7参照)。ベース部材13は、一対の分割体101、102を所定の抜き方向Dに相対的に離間させることで取り出される。ベース部材13は、駆動ユニット3の上部と燃料タンク4の前部とを覆うことで、鞍乗型車両1の外郭を構成する。ベース部材13は、図示しないボルト等の締結部材を用いてフレーム部材2及び燃料タンク4に固定される。ベース部材13の一方の面は、鞍乗型車両1の外側に露出する露出面であり、ベース部材13の他方の面は、駆動ユニット3と対向する対向面である。
【0032】
図3に示すように、ベース部材13の中央付近の部分は、鞍乗型車両1の内側に窪み、この窪んだ部分に厚み方向に貫通する開口13aが形成される。ベース部材13の裏側から開口13aとその周縁を見た場合、開口13aの周縁には、開口13aから遠ざかるにつれて下り勾配となる傾斜領域が形成される。この傾斜領域は、タンクカバー12がフレーム部材2及び燃料タンク4に固定された状態において、開口13aよりも上方に位置し、かつ第1傾斜面P1を有する第1領域13bと、開口13aよりも下方に位置し、かつ第2傾斜面P2を有する第2領域13cとを有する。開口13aの周縁は、第1領域13bと第2領域13cとに取り囲まれている。
【0033】
図4に示すように、第1領域13bの第1傾斜面P1は、抜き方向Dに垂直な仮想平面Vと角度θ1で交差するように傾斜する。第1傾斜面P1上には、複数の第1突出部13dが設けられる。以下、第1突出部13dの構成について断りの無い限り、後述する変形部13fの形成前の構成を説明する。第1突出部13dは細長形状に形成され、その長手方向は、第1傾斜面P1と仮想平面Vとの交線方向(
図4中の矢印X1の方向)から見て、第1傾斜面P1に沿う方向(以下、傾斜方向L1という)に平行に設定される。本実施形態では、傾斜方向L1は、第1傾斜面P1において傾斜勾配が最も急な方向である。第1突出部13dは、傾斜方向L1に沿った長辺を有する細長い略平行四辺形状の板面を有する。第1突出部13dの幅(厚み)d1は、第1突出部13dの根元部分における長手方向の長さW1に比べて十分に小さい。第1突出部13dの幅(厚み)d1は適宜設定できるが、例えば1mm程度以下に設定される。また、長さW1も適宜設定できるが、例えば15mm程度以下に設定される。
【0034】
図5に示すように、第1突出部13dは、第1傾斜面P1の法線方向N1に第1傾斜面P1から突出する。第1突出部13dの長手方向の両側の側縁部13d1、13d2は、大略的に、抜き方向Dに平行に延びる。傾斜方向L1の一方側L1aの側縁部13d1と、他方側L1bの側縁部13d2とには、前記交線方向から見て、抜き方向Dに若干先細りとなるように、抜き勾配13hがそれぞれ形成されている(
図7参照)。側縁部13d1、13d2のそれぞれが延びる方向と、抜き方向Dとは、第1突出部13dに抜き勾配13hを形成するため、若干ずれている。一例として、側縁部13d1、13d2のそれぞれが延びる方向と、抜き方向Dとの間の各々の角度αは、数°以上十数°以下である。側縁部13d1は、第1傾斜面P1から法線方向N1に遠ざかるにつれ、開口13aに近接する第1突出部13dの長手方向の一方側(ここでは傾斜方向L1の一方側L1a)に向かって傾斜して延びる。
【0035】
第1突出部13dの各々は、長手方向が平行に延び、かつ長手方向に直交する方向に並んで第1傾斜面P1上に配置される。第1突出部13dの各々は、開口13aから遠ざかる方向に板面が延びるように配置される(
図3参照)。
【0036】
図5に示すように、第1突出部13dは、ベース部材13にプレート部材14が重ねられた際に先端部13d3が露出するように、プレート部材14の厚み分の高さよりも高い突出高さ(具体的には、法線方向N1における寸法)H1を有する。突出高さH1は適宜設定できるが、変形部13f(
図2参照)を形成するために十分な高さに設定される。第1実施形態では、突出高さH1は、第1突出部13dの長手方向でほぼ一定に設定される。これにより、第1突出部13dの突出量を抑えつつ、その体積が十分に確保されている。
【0037】
第1突出部13dの突出方向の先端部13d3は、傾斜方向L1に平行に形成される。この先端部13d3は、第1挿通孔14bに挿通されて外部に露出する露出部となる。この先端部13d3の露出部は、熱カシメにより変形されて変形部13fとなる。変形部13fの一部は、プレート部材14の第1挿通孔14bの周縁と重ね合わされる重合部13f1、13f2(
図8(d)参照)となる。
【0038】
図6に示すように、第2領域13cの第2傾斜面P2は、仮想平面Vに対して角度θ1よりも小さい角度θ2で交差するように傾斜し、仮想平面Vに対して第1傾斜面P1よりも緩やかに傾斜している。第2傾斜面P2上には、複数の第2突出部13eが設けられる。以下、第2突出部13eの構成について断りの無い限り、後述する変形部13gの形成前の構成を説明する。第2突出部13eは細長形状に形成され、その長手方向は、第2傾斜面P2と仮想平面Vとの交線方向(
図6中の矢印X2の方向)から見て、第2傾斜面P2に沿う方向(以下、傾斜方向L2という)と異なる方向に設定される。第2突出部13eは、傾斜方向L2に沿った長辺を有する細長い略長方形状の板面を有し、幅(厚み)d2は、第2突出部13eの長手方向の長さW2に比べて十分に小さい。幅(厚み)d2は適宜設定できるが、例えば1mm程度以下に設定される。
【0039】
第2突出部13eは、第2傾斜面P2の法線方向N2に第2傾斜面P2から突出する。第2突出部13eの長手方向の両側の側縁部13e1、13e2には、抜き勾配がそれぞれ形成されている。この抜き勾配は、第1突出部13dの側縁部13d1、13d2に形成される抜き勾配13hに比べて小さい。側縁部13e1、13e2のそれぞれが延びる方向と、抜き方向Dとは、第2突出部13eに前記抜き勾配を形成するため、若干ずれている。一例として、側縁部13e1、13e2のそれぞれが延びる方向と、抜き方向Dとの間の各々の角度βは、数°以上十数°以下である。
【0040】
第2突出部13eの長手方向は、傾斜方向L2と異なる方向に設定されるので、傾斜方向L2に制約されずに設定される。具体的に、第2突出部13eの各々は、第2傾斜面P2上において、長手方向が開口13aの周方向に延び、かつ開口13aの周方向に並んで配置される(
図3参照)。
【0041】
第2突出部13eは、ベース部材13にプレート部材14が重ねられた際に、抜き方向Dにおいて、プレート部材14の厚み分の高さよりも高い突出高さH2を有する(
図5参照)。角度θ2が角度θ1よりも小さいので、第2突出部13eの突出高さH2をそれほど高くしなくても、プレート部材14から第2突出部13eの先端部13e3が露出部として露出し、変形部13gが形成される。従って、第2突出部13eの突出高さH2は、第1突出部13dの突出高さH1より低く設定される。
【0042】
第2突出部13eの突出方向の先端部13e3は、プレート部材14の第2挿通孔14cに挿通されて外部に露出する露出部となる。この先端部13e3の露出部は、熱カシメにより変形されて変形部13gとなる(
図2参照)。変形部13gの一部は、プレート部材14の第2挿通孔14cの周縁と重ね合わされる重合部となる。
【0043】
ベース部材13の材質としては、第1突出部13d及び第2突出部13eが加熱により軟化して変形し、かつ温度が下がると凝固するものを適宜選択できる。本実施形態では、ベース部材13の材質は、熱軟化性を有する合成樹脂(例えばABS樹脂)である。
【0044】
プレート部材14は、表面に多数の貫通孔14aが形成された薄板部材である(
図3参照)。プレート部材14は、その厚み方向で、ベース部材13に対して開口13aとその周囲を覆うように重ね合わされる。第1突出部13dの各々に対応するプレート部材14の領域には、第1挿通孔14bが設けられる。第2突出部13eの各々に対応するプレート部材14の領域には、第2挿通孔14cが設けられる。第1挿通孔14b及び第2挿通孔14cの各周縁形状は、第1突出部13d及び第2突出部13eがそれぞれ挿通可能な形状(ここではスリット状)に形成される。ベース部材13とプレート部材14とを近接して重ね合わせるために、第1挿通孔14bの大きさは、法線方向N1に垂直な断面における第1突出部13dの根元寸法よりも大きく形成される。また、第2挿通孔14cの大きさは、法線方向N2に垂直な断面における第2突出部13eの根元寸法よりも大きく形成される。これにより、プレート部材14に対する第1突出部13d及び第2突出部13eが干渉するのを防止し、第1傾斜面P1及び第2傾斜面P2の各領域にプレート部材14を面接触させることができる。第1突出部13dの長手方向における第1突出部13dと第1挿通孔14bとの間隙S1と、第2突出部13eの長手方向における第2突出部13eと第2挿通孔14cとの間隙S2とは、なるべく小さく設定される。
【0045】
プレート部材14の材質は、金属または樹脂のいずれでもよく、適宜選択できる。本実施形態では、プレート部材14の材質は、金属(例えばステンレス)である。プレート部材14の板厚は、適宜設定できるが、第1突出部13d及び第2突出部13eが、プレート部材14の厚み方向に挿通可能な板厚に設定される。
【0046】
[ベース部材及びプレート部材の結合工程]
以下、タンクカバー12の製造時におけるベース部材13及びプレート部材14の結合工程を説明する。
図7は、ベース部材13の成形工程を示す図であり、第1突出部13dの抜き勾配13hを網掛けで模式的に示している。
図8は、ベース部材13とプレート部材14との結合工程を示す図である。
図8(a)は、挿通工程を示す図である。
図8(b)は、挿通工程後を示す図である。
図8(c)は、変形工程の第1変形工程を示す図である。
図8(d)は、変形工程の第2変形工程を示す図である。ベース部材13及びプレート部材14の結合工程は、以下に示すように、準備工程と、挿通工程と、変形工程とを備える。
【0047】
(準備工程)
まず、上記した所定形状のベース部材13を準備する。
図7に示すように、一例として射出成形金型100を用い、予め定められた抜き方向Dに相対的に離間可能な2つの分割体101、102の間に溶融樹脂材料を射出して成形し、ベース部材13を得る。
【0048】
このベース部材13の成形工程を行う際、第1傾斜面P1に設ける第1突出部13dを、第1傾斜面P1から法線方向N1に突出し、かつ傾斜方向L1に長手方向が設定された細長形状を有するように形成する。第1突出部13dの幅(厚み)d1を、第1突出部13dの長手方向の長さW1に比べて十分に小さくし、第1突出部13dの長手方向を傾斜方向L1に設定することで、第1突出部13dの側縁部13d1、13d2に形成される抜き勾配13hの体積を抑制できる。これにより、ベース部材13におけるヒケの発生を抑制できる。以下、このようにヒケの発生を抑制できる理由を具体的に説明する。
【0049】
図9は、第1突出部13dの外観図である。第1突出部13dにおいて、その長手方向一方側(傾斜方向L1の一方側L1a)の側縁部13d1と、その長手方向他方側(他方側L1b)の側縁部13d2との各抜き勾配13hは、長手方向両側の側面13h1を斜面とし、かつ傾斜方向L1に沿った幅Wsが抜き方向Dに向けて狭くなる形状を有する。従って、各抜き勾配13hのおよその体積V1は、V1=(Ws×d1×H1)/2として算出される。
【0050】
図10は、比較例の突出部13xの外観図である。突出部13xは、傾斜面P1上において、第1突出部13dと同一の突出高さH1を有し、かつ傾斜方向L1に直交する方向に長さd0にわたって延びるように形成される。突出部13xにおいて、傾斜方向L1の一方側L1aの側縁部13x1と、他方側L1bの側縁部13x2とには、傾斜方向L1に沿った幅Wsを有する抜き勾配13yがそれぞれ形成される。各抜き勾配13yのおよその体積V2は、抜き勾配13hの体積V1と同様の算出方法により、V2=(Ws×d0×H1)/2として算出される。
【0051】
このように、突出部13d、13xの抜き勾配13h、13yの体積は、突出部13d、13xの傾斜方向L1と直交する方向における長さに比例する。そこで第1実施形態では、第1突出部13dの長手方向を傾斜方向L1に沿って設定し、第1突出部13dの傾斜方向L1と直交する方向における長さもしくは幅(ここでは幅d1)を抑制することにより、抜き勾配13hの体積V1を低減させる。これにより、ベース部材13のヒケの発生を抑制できる。具体的に、第1突出部13dの幅d1が例えば突出部13xの長さd0の1/20である場合には、第1突出部13dに形成される抜き勾配13hの合計体積2V1を、突出部13xに形成される抜き勾配13yの合計体積2V2の1/20程度にまで抑制できる。
【0052】
準備工程では、複数の第1突出部13dを、長手方向が互いに平行になるように形成し、かつ複数の第1突出部13dの長手方向に直交する方向に並んで第1傾斜面P1上に配置する(
図3参照)。これにより、各第1突出部13dが互いに離隔され、ベース部材13の成形後における各第1突出部13dの熱収縮の影響を分散できる。よって、ベース部材13の成形後の熱収縮が局所的に集中するのを防止でき、ベース部材13におけるヒケの発生を抑制できる。
【0053】
また、第1突出部13dの長手方向の両側の側縁部13d1、13d2を、第1傾斜面P1から抜き方向Dに延びるように形成することで、法線方向N1への第1突出部13dの高さを抑えながら、変形部13fを形成するために十分な大きさの第1突出部13dを形成できる。また、第1突出部13dに抜き勾配13hが形成されているので、分割体101、102からベース部材13を良好に抜くことができ、ベース部材13の成形性を向上できる。
【0054】
また、第1突出部13dの側縁部13d1を、第1傾斜面P1から法線方向N1に遠ざかるにつれて、長手方向の一方側(ここでは開口13aに近接する傾斜方向L1の一方側L1a)に向かって傾斜して延びるように形成することにより、法線方向N1における第1突出部13dの高さを抑えられる。また、これによりベース部材13におけるヒケの発生を抑制し、開口13aに近接するプレート部材14の第1挿通孔14bの周縁に、重合部13f1(
図8(c)参照)を形成し易くすることができる。
【0055】
また、ベース部材13の成形を行う際、第2傾斜面P2に設ける第2突出部13eを、突出高さH2が第1突出部13dの突出高さH1よりも低くなるように形成する。これにより第2突出部13eの体積を抑制でき、ベース部材13におけるヒケの発生を抑制できる。また、第2突出部13eの長手方向は、第2傾斜面P2の傾斜方向L2に制約されずに設定できるので、第2傾斜面P2上に形成する第2突出部13eの設計自由度を高めることができる。本実施形態では、第2傾斜面P2において、長手方向が開口13aの周方向に延び、かつ開口13aの周方向に各第2突出部13eを並べて配置する。これにより、後述する変形工程において、少数の第2突出部13eで、第2傾斜面P2のベース部材13の開口13aの周縁にプレート部材14を効率よく結合できる。
【0056】
(挿通工程)
図8(a)に示すように、挿通工程として、プレート部材14をその厚み方向にベース部材13に近接させる。
図8(b)に示すように、その後、プレート部材14をベース部材13に重ね合わせる。このとき、プレート部材14の第1挿通孔14bに第1突出部13dを根元部分まで挿通させるとともに、第2挿通孔14cに対し、第2突出部13eを根元部分まで挿通させる。これにより、プレート部材14をベース部材13の表面に密着させて良好に重ねることができる。
【0057】
プレート部材14において、間隙S1、S2ができるだけ小さくなる大きさで第1挿通孔14b及び第2挿通孔14cをそれぞれ形成しておくことで、第1突出部13dを第1挿通孔14bに挿通し、第2突出部13eを第2挿通孔14cに挿通することにより、ベース部材13とプレート部材14との相対的な位置決めを適切に行える。また、間隙S1、S2を小さくすることで、変形部13f、13gを形成するために必要な第1突出部13d及び第2突出部13eの各体積を低減して、第1突出部13d及び第2突出部13eをそれぞれ小型にできる。
【0058】
また、第1傾斜面P1では、傾斜方向L1に長手方向を沿わせて並設された各第1突出部13dが各第1挿通孔14bの周縁と接触することにより、ベース部材13がプレート部材14とある程度係合する。よって、各第1突出部13dを各第1挿通孔14bに挿通させた後には、プレート部材14がベース部材13から脱落するのを防止できる。
【0059】
(変形工程)
次に、変形工程として、第1挿通孔14bから露出した先端部13d3を変形させ、第1挿通孔14bの周縁と、先端部13d3との重合部を形成する。また、第2挿通孔14cから露出した先端部13e3を変形させ、第2挿通孔14cの周縁と、先端部13e3との重合部を形成する。
【0060】
この変形工程では、一例として、先端部13d3にカシメ工具(ヒーターチップ)110を押し付けて先端部13d3を熱変形させ、熱カシメする。この場合の変形工程は、例えば、以下に示す第1変形工程と第2変形工程とを順に経て実施する。
【0061】
図8(c)に示すように、第1変形工程として、第1突出部13dの長手方向の一方側から他方側(ここでは、側縁部13d1側から側縁部13d2側)に向けて、カシメ工具110を先端部13d3に押し付ける。これにより、側縁部13d1から側縁部13d2に向けて、先端部13d3を徐々に熱変形させる。このとき、側縁部13d1付近の先端部13d3の部分を、開口13aに近接する第1挿通孔14bの周縁と重なるように変形させて、重合部13f1を形成する。熱変形された部分は、冷めると変形状態のままで固化する。このように重合部13f1を形成することで、プレート部材14がベース部材13に仮止めされ、その後の変形工程を実施し易くなる。ここで、例えば重合部13f1を、第1挿通孔14bの周縁に広く重ならせるように形成すると、前記仮止めの効果が増大し、プレート部材14をベース部材13に一層安定して結合できると思われる。
【0062】
第1変形工程で、側縁部13d2付近の先端部13d3の部分を、開口13aに対して遠位にある第1挿通孔14bの周縁と重ならせるように変形させて、重合部13f2を形成する。このように、先端部13d3をその長手方向の一方側から他方側に徐々に変形させることで、先端部13d3が過度に熱変形するのを防止できる。また、側縁部13d1、13d2の各々が、第1傾斜面P1から法線方向N1に遠ざかるにつれて抜き方向Dに延びているので、プレート部材14から先端部13d3を大きく露出させることができる。このため、変形部13fとプレート部材14との重なりを広く形成しながら重合部13f1、13f2を形成できる。重合部13f1、13f2が固化することで、重合部13f1、13f2とベース部材13の表面とでプレート部材14が挟まれた状態が維持される。
【0063】
図8(d)に示すように、第1変形工程後に、第2変形工程として、法線方向N1からカシメ工具110を第1傾斜面P1に近づくように先端部13d3に押し付け、先端部13d3をさらに熱変形させる。これにより、第1突出部13dの余分な突出高さH1を低くし、かつ重合部13f1、13f2の形状を整える。この第2変形工程を実施することで、変形部13fを形成する。
【0064】
なお、図示しないが、
図8(c)に示した第1変形工程と同様の工程を実施し、カシメ工具110を用い、第2突出部13eの長手方向一方側から他方側(ここでは、側縁部13e1側から側縁部13e2側)に向けて、先端部13e3を徐々に熱変形させる。次に、
図8(d)に示した第2変形工程と同様の工程を実施し、第2突出部13eの余分な突出高さH2を低くして重合部の形状を整え、変形部13gを形成する。各第1突出部13dに変形部13fを形成し、各第2突出部13eに変形部13gを形成することで、ベース部材13の開口13aの周縁において、プレート部材14がベース部材13に結合される。以上で、タンクカバー12が完成する。このように、変形部13gを形成してプレート部材14をベース部材13に結合する方法は、熱溶着によりプレート部材14をベース部材13に結合する方法に比べ、ベース部材13への入熱温度が低くてすむので、例えばベース部材13の表面に熱の影響が及ぶのを低減できる。また、接着または熱溶着によりプレート部材14をベース部材13に結合する方法に比べ、より確実にプレート部材14をベース部材13に結合できる。
【0065】
なお、第2突出部13eは第1突出部13dよりも小さいため、変形工程では、カシメ工具110を第2傾斜面P2に近づく方向に先端部13e3に押し付け、1回のプロセスで変形部13gを形成してもよい。
【0066】
以下、本発明のその他の実施形態について、第1実施形態との差異を中心に説明する。
【0067】
<第2実施形態>
図11(a)は、第2実施形態に係る第1突出部23dの長手方向断面図である。第1突出部23dは、ベース部材23の第1領域23bに対し、側縁部23d1と側縁部23d2とが2辺を構成する略三角形状の断面を有するように形成される。第1突出部23dは、傾斜方向L1の他方側L1bから一方側L1aに向かって突出高さH1が変化する(ここでは突出高さH1が増える)ように形成される。これにより、突出高さH1を低くした部分で第1突出部23dの体積を低減し、ヒケの発生を抑制できる。また、傾斜方向L1の一方側L1aに位置する側縁部23d1付近において形成される重合部(
図8(c)に図示した重合部13f1を参照)の厚みを、その他の領域の重合部の厚みよりも比較的厚く形成でき、プレート部材14とベース部材23とを良好に結合できる。
【0068】
<第3実施形態>
図11(b)は、第3実施形態に係る第1突出部33dの長手方向断面図である。第2実施形態との違いとして、第1突出部33dは、ベース部材33の第1領域33bに対し、四角形状の板面を有し、かつ傾斜方向L1の他方側L1bから一方側L1aに向かって突出高さH1が増加するように形成される。このような構成においても、第2実施形態と同様の効果を期待できる。また、側縁部33d2及び側縁部33d1の両方において、ある程度の突出高さH1を確保できるので、第1突出部33dの長手方向にわたって重合部を広く形成し、プレート部材14とベース部材33とを安定して結合できる。
【0069】
<第4実施形態>
図11(c)は、第4実施形態に係る第1突出部43dの長手方向断面図である。第3実施形態との違いとして、第1突出部43dは、ベース部材43の第1領域43bに対し、傾斜方向L1の他方側L1bから一方側L1aに向かって突出高さH1が減少するように形成される。これにより、第2実施形態と同様に、突出高さH1を低くした部分で第1突出部43dの体積を低減し、ヒケの発生を抑制できる。また、傾斜方向L1の他方側L1bにおいて、側縁部43d2とプレート部材14の第1挿通孔14bとの間に形成される間隙S1がある程度大きくなる場合には、側縁部43d2付近の突出高さH1を側縁部43d1付近の突出高さH1よりも高く設定することで、側縁部43d2とプレート部材14との間の空間を覆うように十分なサイズの重合部を形成できる。これにより、側縁部43d2付近においてもプレート部材14とベース部材43とを良好に結合できる。
【0070】
(その他)
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲でその構成を変更、追加、又は削除することができる。
【0071】
本発明の乗物用部品は、タンクカバー12に限定されない。例えば、前記乗物用部品は、フロントカウル15またはウインドシールド16であってもよいし、駆動ユニット3がエンジンを有する場合には、このエンジンを外部から保護するために用いられるエンジンスライダ(不図示)であってもよい。
【0072】
第1突出部13dの板面の形状は、略平行四辺形状に限定されず、例えば略三角形状でもよいが、第1突出部13dの長手方向に沿って、変形部13gを形成できる形状であることが望ましい。また、第2突出部13eの板面の形状は、略長方形状に限定されず、例えば、略平行四辺形状または略三角形状でもよいが、第2突出部13eの長手方向に沿って、変形部13gを形成できる形状であることが望ましい。
【0073】
第1突出部13dは、傾斜面P1の傾斜方向L1に沿って長手方向が設定されていればよく、長手方向が傾斜方向L1に平行に設定されていなくてもよい。すなわち、第1突出部13dの長手方向は、傾斜方向L1に対して若干(例えば数°以上十数°以下程度の範囲で)ずれて設定されていてもよい。
【0074】
第1挿通孔14b及び第2挿通孔14cの各開口形状は、第1挿通孔14b及び第2挿通孔14cに第1突出部13d及び第2突出部13eが挿通可能な形状であればよく、スリット状以外の形状であってもよいし、互いに異なる形状でもよい。また、第1挿通孔14bの開口形状は、第1傾斜面P1に沿った第1突出部13dの断面形状と異なっていてもよいし、第2挿通孔14cの開口形状も、第2傾斜面P2に沿った第2突出部13eの断面形状と異なっていてもよい。また、第1挿通孔14b及び第2挿通孔14cは、互いに連通していてもよい。
【0075】
第1傾斜面P1上に設ける第1突出部13dの数と、第2傾斜面P2上に設ける第2突出部13eの数とは、それぞれ複数に限定されず、1つであってもよい。また、第2突出部13eは必須ではなく、省略してもよい。ベース部材13の開口13aも必須ではなく、省略してもよい。
【0076】
第1実施形態において、側縁部13d1と抜き方向Dとの間の角度αと、側縁部13d2と抜き方向Dとの間の角度αとは、互いに異なる角度であってもよい。
【0077】
上記各実施形態では、車体に固定されるベース部材にプレート部材を結合した構成を例示したが、これに限定されず、車体にプレート部材を固定し、このプレート部材にベース部材を結合する構成であってもよい。
【0078】
本発明は、鞍乗型車両に適用する場合に限定されず、その他の各種の乗物、例えば、自動車、三輪車、小型滑走艇(PWC:Personal Water Craft)等のいずれかに適用することが可能である。乗物に搭載される駆動ユニットの駆動源は、エンジンに限定されず、エンジン及び電動モータの両方又は電動モータのみでもよい。