(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
中性子密封線源が設置された際に、前記中性子密封線源から発せられた1つの中性子によって核分裂計数管で検出される中性子信号を中性子データとして記録する第1記録部と、
記録された複数の前記中性子データを用いて、設定された入射中性子計数率に対応する模擬波形データを生成する模擬波形生成部と、を備えることを特徴とする中性子測定装置の調整装置。
前記模擬波形データを電気信号に変換した中性子模擬信号を出力する模擬信号出力部と、をさらに備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の中性子測定装置の調整装置。
前記模擬波形生成部は、設定された前記入射中性子計数率になるように、任意に選択された前記中性子データを任意の時間に重畳して前記模擬波形データを生成することを特徴とする請求項1に記載の中性子測定装置の調整装置。
前記模擬波形生成部は、設定された前記入射中性子計数率になるように、任意に選択された前記中性子データを前記バックグランドデータの任意の時間に重畳して前記模擬波形データを生成することを特徴とする請求項2に記載の中性子測定装置の調整装置。
前記模擬波形生成部は、設定された前記入射中性子計数率になるように、任意に選択された前記中性子データを前記バックグランドデータの任意の時間に重畳して前記模擬波形データを生成することを特徴とする請求項2に記載の中性子測定装置の調整装置。
前記模擬波形生成部は、設定された前記入射中性子計数率になるように、任意に選択された前記中性子データを、乱数が適用された前記中性子信号の発生確率に基づいて計算された前記バックグランドデータの時間に重畳して前記模擬波形データを生成することを特徴とする請求項2に記載の中性子測定装置の調整装置。
前記模擬波形生成部は、設定された前記入射中性子計数率になるように、前記中性子データにおける波高の最大値に正規分布に基づく乱数を乗じたデータ値を、前記バックグランドデータの任意の時間に重畳して前記模擬波形データを生成することを特徴とする請求項2に記載の中性子測定装置の調整装置。
所定の範囲内で変化させた前記入射中性子計数率を自動で設定する入射計数率自動設定部をさらに備えることを特徴とする請求項3から請求項8のいずれか一項に記載の中性子測定装置の調整装置。
前記入射中性子計数率に対応する前記中性子模擬信号が入力された中性子測定装置において測定された中性子計数率をそれぞれ取得して、前記入射中性子計数率と測定された前記中性子計数率との関係に基づいて前記中性子測定装置が有する補正係数を算出する補正係数計算部をさらに備えることを特徴とする請求項9に記載の中性子測定装置の調整装置。
中性子密封線源が設置された際に、前記中性子密封線源から発せられた1つの中性子によって核分裂計数管で検出される中性子信号を中性子データとして複数記録する第1記録ステップと、
記録された複数の前記中性子データを用いて、設定された入射中性子計数率に対応する模擬波形データを生成する模擬波形生成ステップと、を含むことを特徴とする中性子測定装置の調整方法。
前記模擬波形データを電気信号に変換した中性子模擬信号を出力する出力ステップと、をさらに含むことを特徴とする請求項12または請求項13に記載の中性子測定装置の調整方法。
所定の範囲で変化させた前記入射中性子計数率を自動で設定する自動設定ステップをさらに含むことを特徴とする請求項12から請求項14のいずれか1項に記載の中性子測定装置の調整方法。
前記入射中性子計数率に対応する前記中性子模擬信号が入力された中性子測定装置において測定された中性子計数率をそれぞれ取得して、前記入射中性子計数率と測定された前記中性子計数率との関係に基づいて前記中性子測定装置が有する補正係数を算出する算出ステップをさらに含むことを特徴とする請求項14または請求項15のいずれか1項に記載の中性子測定装置の調整方法。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
(第一実施形態)
まず、
図1を用いて本実施形態に適用される中性子計測装置10の構成を説明する。
中性子計測装置10は、核分裂計数管11と、前置増幅器12と、信号処理部13と、を備えている。
【0018】
核分裂計数管11は、中性子が入射すると負の極性をもつパルス状の中性子信号を出力するものである。核分裂計数管11から出力された中性子信号は、前置増幅器12により増幅される。信号処理部13は、増幅された中性子信号から中性子計数率を測定する。
【0019】
信号処理部13は、パルス計測部14と、キャンベル計測部15と、計数率演算部16と、補正係数格納部17と、電源供給部18と、を備えている。電源供給部18は、前置増幅器12に電力を供給し、前置増幅器12を介して核分裂計数管11に高電圧を供給している。
【0020】
パルス計測部14は、前置増幅器12で増幅された中性子信号のパルス数を計数するものである。一方、キャンベル計測部15は、前置増幅器12で増幅された中性子信号のゆらぎ(変動)成分の2乗平均値(分散)を測定するものである。
【0021】
補正係数格納部17は、各計測系(パルス計測及びキャンベル計測)における測定結果の直線性を保持させるための補正係数を、計測系ごとに少なくとも1つ格納している。
【0022】
計数率演算部16は、各計測系での測定値に補正係数を乗じて中性子計数率を演算する。そして、中性子計数率の低い領域では、パルス計測系から得られた中性子計数率を測定結果とし、中性子計数率の高い領域では、キャンベル計測系から得られた中性子計数率を測定結果とする。
【0023】
第一実施形態に係る中性子計測装置10の調整装置20は、
図2に示すように、中性子密封線源19が設置された際に、中性子密封線源19から発せられた1つの中性子によって核分裂計数管11で検出される中性子信号を中性子データとして記録する第1記録部21と、中性子信号が発生していない状態で核分裂計数管11において検出される信号をバックグランドデータとして記録する第2記録部22と、記録された複数の中性子データとバックグランドデータとを用いて、設定された入射中性子計数率に対応する模擬波形データを生成する模擬波形生成部23と、模擬波形データを電気信号に変換した中性子模擬信号を信号処理部13に出力する模擬信号出力部24と、を備える。なお、中性子計測装置10と調整装置20とは、調整を実施する際に電気的に接続される。
【0024】
調整装置20は、各計測系(パルス計測及びキャンベル計測)における補正係数を調整するために、設定された入射中性子計数率に対応する中性子模擬信号を生成して中性子計測装置10に出力するものである。
【0025】
ここで、調整装置20を用いて補正係数を決定し、補正係数格納部17(
図1)に格納されている補正係数を調整する流れを簡単に説明する。
【0026】
調整装置20は、所定の範囲(例えばキャンベル計測を用いる中性子計数率の高い範囲)で設定変更された入射中性子計数率に対応する中性子模擬信号をそれぞれ生成して、中性子計測装置10に出力する。
【0027】
中性子計測装置10の信号処理部13は、入力した中性子模擬信号から中性子計数率をそれぞれ測定する。作業員は、測定された中性子計数率と入射中性子計数率との関係に基づいて測定中性子計数率の傾きを導出し、この傾きから補正係数を決定する。
そして、補正係数格納部17に格納されている補正係数は、この決定された補正係数に調整される。
【0028】
続けて、具体的な構成について説明する。
中性子密封線源19は、1つの中性子によって核分裂計数管11で検出される中性子信号を第1記録部21で記録するために用いるものであり、自発核分裂により中性子を発するカルホルニウム等の放射性同位体を用いた密封線源である。中性子密封線源19は、中性子計測装置10の近傍に設置される。
【0029】
核分裂計数管11は、中性子密封線源19の中性子が入射するとパルス状の中性子信号を出力する。なお、核分裂計数管11をポリエチレン等で覆うことで、計数管内で効率よく核分裂反応を発生させることができる。
【0030】
核分裂計数管11から出力されたパルス状の中性子信号は、前置増幅器12を介して増幅されて、第1記録部21に入力される。
【0031】
第1記録部21は、1つの中性子により検出された中性子信号を中性子データとして記録する。そして、第1記録部21は、一定の時間幅の中性子データを複数記録していく。
【0032】
図3(A)は、第1記録部21(
図2)に記録される中性子データの一例を示しており、第1記録部21には1つの中性子によって核分裂計数管11(
図2)で検出される中性子信号が時間幅T
dで記録される。
【0033】
なお、第1記録部21は、
図3(B)に示されるような、時間幅T
dにおいて、複数の中性子が検出された場合における中性子データは記録対象から除外する。時間幅T
dは、中性子計測装置10でのキャンベル計測における演算周期以上に設定される。
【0034】
一方、第2記録部22は、中性子信号が発生していない状態で核分裂計数管11において検出される信号、すなわちα線や計測系によるノイズ信号(ホワイトノイズ)等を含んだ信号をバックグランドデータとして記録する。
【0035】
図3(C)は、第2記録部22に記録されるバックグランドデータの一例を示しており、所定の時間幅Tでバックグランドデータが記録される。なお、バックグランドデータの時間幅Tは、中性子データの時間幅T
dよりも十分に長い、T≫T
dを満たすように設定される。
【0036】
模擬波形生成部23(
図2)は、第1記録部21から複数の中性子データを入力し、第2記録部22からバックグランドデータを入力する。そして、記録された複数の中性子データとバックグランドデータとを用いて、設定された入射中性子計数率Nに対応する模擬波形データの生成を行う。なお、入射中性子計数率Nは、調整装置20のユーザインターフェース(図示省略)等を介して作業員により入力設定される。
【0037】
図4(A)〜(D)を用いて模擬波形データを生成する方法を具体的に説明する。
ここでは、
図4(A)に示すように、第1記録部21においてm個の中性子データが時間幅T
dで記録されたものとする。なお、データ数mは、十分に多いものとする。
【0038】
模擬波形生成部23は、m個の中性子データのうちから、任意に1つの中性子データを選択する。さらに、バックグランドデータ内の時間(t=0,1,2,,,T)のうちから任意の時間tを選択する(
図4(B))。そして、バックグランドデータ内の時間tに選択した中性子データを重畳させる(
図4(C))。
【0039】
そして、重畳により生成される波形データが入射中性子計数率Nの波形データになるまで、バックグランドデータへの中性子データの重畳を繰り返して模擬波形データを生成する(
図4(D))。入射中性子計数率Nにするために必要な重畳回数kは下記の式(1)で表される。
【0040】
k=N×T・・・式(1)
k:重畳回数
N:入射中性子計数率[cps]
T:バックグランドデータの時間幅[s]
【0041】
このように、任意に選択した中性子データをバックグランドデータの任意の時間に重畳することで、一様な確率分布を有する入射中性子計数率Nの模擬波形データが生成される。
【0042】
模擬信号出力部24(
図2)は、生成された模擬波形データを電気信号に変換する。そして、変換した電気信号を中性子模擬信号として信号処理部13に出力する。
【0043】
なお、模擬波形生成部23は、模擬波形データを生成する際に、バックグランドデータに中性子データを重畳させて生成する必要は必ずしも無く、単に所定の時間幅の間に中性子データを重畳させて生成しても良い。
【0044】
この場合の模擬波形生成方法を、
図5(A)〜(D)を用いて具体的に説明する。なお、
図4(A)と同様に、第1記録部21においてm個の中性子データが時間幅T
dで記録されたものとする(
図5(A))。
【0045】
模擬波形生成部23は、m個の中性子データのうちから、任意に1つの中性子データを選択する((
図5(B))。そして、時間幅Tのうちから任意の時間tを選択して、時間tに選択した中性子データを挿入する(
図5(C))。
【0046】
そして、重畳により生成される波形データが入射中性子計数率Nの波形データになるまで、中性子データの重畳を繰り返して模擬波形データを生成する(
図5(D))。このようにすることで、バックグランドデータを取得する必要が無いため、簡易に模擬波形データを生成できる。
【0047】
図6は、中性子模擬信号を出力する動作を示すフローチャートである(適宜、
図2参照)。
【0048】
第1記録部21は、中性子密封線源19が設置された際に、中性子密封線源19から発せられた1つの中性子によって核分裂計数管11で検出される中性子信号を中性子データとして記録する(S10)。
【0049】
一方、第2記録部22は、中性子信号が発生していない状態で核分裂計数管11において検出される信号をバックグランドデータとして記録する(S11)。
【0050】
ユーザインターフェースを介して作業員により入射中性子計数率Nが設定される(S12)。そして、模擬波形生成部23は、入射中性子計数率Nに対応する模擬波形データを生成する(S13)。
【0051】
図7は、模擬波形データの生成動作を示すサブルーチンである。
まず、模擬波形生成部23は、重畳の試行回数iを初期値:0に設定する(S15)。
【0052】
模擬波形生成部23は、複数の中性子データのうちから、任意に1つの中性子データを選択して(S16)、バックグランドデータ内の任意の時間に選択した中性子データを重畳させる(S17)。
【0053】
そして、模擬波形生成部23は、重畳の試行回数iが必要な重畳回数kに一致したか否かを判定する(S18)。一致しない場合は、試行回数iを1つ増加させて、S16、S17を実行してバックグランドデータに中性子データを重畳させる(S18:NO、S19)。
【0054】
一方、重畳を繰り返して、試行回数iが必要な重畳回数kと一致した場合は、模擬波形データの生成動作を終了する(S18:YES)。
【0055】
ここで、模擬波形データを作成する他の方法について説明する。
ランダムな中性子信号の発生はポアソン過程に従うため、ある中性子信号の発生時刻T
n−1と次の中性子信号の発生時刻T
nの差がΔt以下となる発生確率P{T
n−T
n−1≦Δt}は、入射中性子計数率Nとした場合、次式(2)で表される。
【0057】
模擬波形生成部23は、式(2)の発生確率Pに一様な確率分布をもつ乱数を与えることでΔtを決定する。そして、バックグランドデータ内の時間t=0から時間Δtだけ進んだ時間t=t+Δtに、任意に選択した中性子データを重畳する。
【0058】
同じように、発生確率Pに一様な確率分布をもつ乱数を与えてΔtを決定して、バックグランドデータ内でさらに時間Δtだけ進んだ時間t=t+Δtに、任意に選択した中性子データを重畳する。
【0059】
そして、バックグランドデータ内の時間tが、バックグランドの時間幅Tを超えるt>Tとなるまで重畳を繰り返して、模擬波形データを生成する。
【0060】
図8は、中性子信号の発生確率に乱数を適用して模擬波形データを生成する方法を説明する説明図である。
【0061】
バックグランドデータ内の時間t
n−1において、発生確率Pに一様な確率分布をもつ乱数を与えることでΔtを決定する。バックグランドデータ内の時間t
n−1から時間Δtだけ進んだ時間t
n=t
n−1+Δtに、任意に選択した中性子データを重畳する。
【0062】
同様に、バックグランドデータ内の時間t
nにおいて、発生確率Pに一様な確率分布をもつ乱数を与えることでΔtを決定する。バックグランドデータ内の時間t
nから時間Δtだけ進んだ時間t
n+1=t
n+Δtに、任意に選択した中性子データを重畳する。
【0063】
そして、バックグランドデータ内の時間tが、バックグランドの時間幅Tを超えるt>Tとなるまで重畳を繰り返す。このように、中性子データがバックグランドの時系列に沿って重畳されて模擬波形データが生成される。
【0064】
図9は、模擬波形データの生成動作を示すサブルーチンである(第2の生成方法)。
まず、模擬波形生成部23(
図2)は、バックグランドデータ内の時間tを初期値:0に設定する(S20)。
【0065】
模擬波形生成部23は、中性子信号の発生確率Pを一様乱数としてΔtを決定して(S21)、Δtだけ進んだバックグランドデータ内の時間t=t+Δtを計算する(S22)。
【0066】
そして、模擬波形生成部23は、バックグランドデータ内の時間tと時間幅Tとを比較する(S23)。バックグランドデータの時間tが時間幅T以下の場合には、任意に中性子データを選択して、バックグランドデータ内の時間tに選択した中性子データを重畳させる(S23:NO、S24、S25)。
【0067】
重畳を繰り返して、バックグランドデータ内の時間tが時間幅Tより大きくなった場合には、模擬波形データの生成動作を終了する(S23:YES)。
【0068】
さらに、第1記録部21(
図2)で記録された中性子データの個数が少ない場合において、模擬波形データを生成する方法について説明する。
【0069】
中性子信号の波高分布は正規分布となることが知られている。この性質を利用して、記録されている中性子データにおける波高の最大値に正規分布に基づく乱数を乗じたデータ値を、バックグランドデータの任意の時間に重畳する。そして、入射中性子計数率Nになるように、k回重畳(式(1)参照)を繰り返して模擬波形データを生成する。
【0070】
これにより、中性子データの個数が少ない場合であっても、一様な確率分布を有する入射中性子計数率Nの模擬波形データが生成できる。
【0071】
図6に示すフローチャートに戻って説明を続ける。
模擬信号出力部24は、生成された模擬波形データを電気信号に変換した中性子模擬信号を信号処理部13に出力する(S14)。
【0072】
中性子計測装置10の信号処理部13は、出力された中性子模擬信号から中性子計数率を測定する。また、模擬波形生成部23における入射中性子計数率Nの設定を変更することで、入射中性子計数率に対応する中性子模擬信号がそれぞれ出力され、信号処理部13において中性子計数率が測定される。
【0073】
図10は、入射中性子計数率と中性子計測装置10で測定された中性子計数率との関係を示したグラフである。ここでは、入射中性子計数率Nとして、キャンベル計測を用いる中性子計数率の高い範囲における入射中性子計数率を3点設定して、中性子計測装置10での測定中性子係数率の結果をプロットしている。
【0074】
入射中性子計数率Nと測定中性子計数率の関係から、測定中性子計数率の直線性が確認できる。そして、最小二乗法等の直線近似を行うことで、測定中性子計数率の傾きS
Bが求まる。
【0075】
これにより、キャンベル計測における補正係数(1/S
B)を決定することが可能となる。そして、中性子計測装置10の補正係数格納部17に格納されている補正係数は、この決定された補正係数に調整される。
【0076】
このように、中性子密封線源19を用いて検出される中性子データとバックグランドデータとに基づいて模擬波形データを生成し、中性子模擬信号を中性子計測装置10に出力することにより、実験原子炉を使用することなく、簡易に中性子計測装置10の補正係数を調整することが可能となる。
【0077】
さらに、中性子密封線源19から検出される中性子信号を用いて中性子模擬信号を出力するため、実験原子炉で検出される中性子信号に即した模擬信号の出力が可能となるため、高い精度で補正係数を調整することが可能となる。
【0078】
(第二実施形態)
図11は、第二実施形態に係る調整装置20の構成図を示している。なお、第一実施形態と重複する構成、動作については説明を省略する。
【0079】
第一実施形態と異なる点は、所定の範囲内で変化させた入射中性子計数率を自動で設定する入射計数率自動設定部25と、入射中性子計数率に対応する中性子模擬信号から測定された中性子計数率をそれぞれ取得して、入射中性子計数率と測定された中性子計数率との関係に基づいて補正係数を算出する補正係数計算部26と、をさらに備える点にある。
【0080】
入射計数率自動設定部25は、所定の範囲、例えばキャンベル計測を用いる中性子計数率の高い範囲である(N
L〜N
H)について、下限のN
Lから上限のN
Hまで一定の計数率間隔ΔNで変化させていく。そして、変化させた入射中性子計数率Nを模擬波形生成部23に自動で設定する。
【0081】
模擬波形生成部23は、自動で設定された入射中性子計数率Nに対応する模擬波形データを生成する。そして、模擬信号出力部24は、模擬波形データを電気信号に変換した中性子模擬信号を信号処理部13に順次出力する。信号処理部13は、各中性子模擬信号から中性子計数率を測定する。
【0082】
補正係数計算部26は、信号処理部13で測定された中性子計数率を取得する。そして、入射中性子計数率Nと測定中性子計数率との関係から測定中性子計数率の傾きを求めて、補正係数を算出する。
【0083】
図12は、自動で設定された入射中性子計数率と中性子計測装置10で測定された中性子計数率との関係を示すグラフである。
【0084】
入射中性子計数率Nは下限のN
Lから上限のN
Hまで一定の計数率間隔ΔNで設定され、各入射中性子計数率Nに対応して中性子計測装置10で測定された中性子計数率がプロットされている。
【0085】
補正係数計算部26は、最小二乗法等の直線近似を行うことで測定中性子計数率の傾きS
Bを求めて、補正係数(1/S
B)を算出する。
【0086】
図13は、入射中性子計数率を自動で変化させて、補正係数を算出する動作を示すフローチャートである(適宜、
図11参照)。なお、S30、S31は、
図6のS10、S11と同一の動作となるため説明を省略する。
【0087】
まず、入射計数率自動設定部25は、入射中性子計数率Nを初期値:N
Lに設定する(S32)。
【0088】
模擬波形生成部23は、入射中性子計数率Nに対応する模擬波形データを生成する(S33)。そして、模擬信号出力部24は、生成された模擬波形データを電気信号に変換した中性子模擬信号を信号処理部13に出力する(S34)。補正係数計算部26は、信号処理部13で測定された中性子計数率を取得する(S35)。
【0089】
入射計数率自動設定部25は、入射中性子計数率Nが上限のN
Hと一致するか否かを判定する(S36)。一致しない場合(S36:NO)、入射中性子計数率NをΔNだけ増加させて模擬波形生成部23に設定して(S37)、S33〜S35を実行する。
【0090】
一方、一致する場合には、補正係数計算部26は入射中性子計数率と取得した測定中性子計数率との関係に基づいて補正係数を算出する(S36:YES、S38)。
【0091】
このように、所定の範囲内で入射中性子計数率を自動で設定し、測定された中性子計数率に基づいて補正係数を自動で算出することにより、作業員が補正係数を求めること無く効率的に補正係数を算出することが可能となる。
【0092】
(第三実施形態)
図14は、第三実施形態に係る調整装置20の構成図を示している。なお、第二実施形態と重複する構成、動作については説明を省略する。
【0093】
第二実施形態と異なる点は、入射計数率自動設定部25は、予め設定されたプロファイルに基づいて変化させた入射中性子計数率を自動で設定し、入射中性子計数率に対応する中性子模擬信号から測定された中性子計数率をそれぞれ取得し、測定された中性子計数率がプロファイルに対して許容範囲内にあるか否かを判定する異常判定部27をさらに備える点にある。
【0094】
入射計数率自動設定部25は、計数率の設定情報であるプロファイルに応じて入射中性子計数率Nを変化させて、入射中性子計数率Nを模擬波形生成部23に自動で設定する。
【0095】
模擬波形生成部23は、自動で設定された入射中性子計数率Nに対応する模擬波形データを生成する。そして、模擬信号出力部24は、模擬波形データを電気信号に変換した中性子模擬信号を信号処理部13に順次出力する。信号処理部13は、各中性子模擬信号から中性子計数率を測定する。
【0096】
異常判定部27は、信号処理部13で測定された中性子計数率を取得する。そして、プロファイルに対して予め設定された許容範囲内に、信号処理部13の測定結果が包含されるか否かにより異常判定を行う。
【0097】
図15は、入射中性子計数率のプロファイル、このプロファイルに対して設定されている測定値の許容範囲、及びプロファイルに沿って測定された中性子計数率の測定波形を示したグラフである。
【0098】
図15に示されるように、プロファイルに沿って入射中性子計数率を設定することで、急峻な中性子計数率変化に対する応答性の確認を行うことができる。測定波形1では応答が早すぎることによるオーバーシュートとなっており、測定波形2では時間遅れにより性能を満足しないことが分かる。
【0099】
図16は、中性子計測装置10における測定異常を判定する動作を示すフローチャートである(適宜、
図14参照)。なお、S40、S41は、
図6のS10、S11と同一の動作となるため説明を省略する。
【0100】
まず、入射計数率自動設定部25は、入射中性子計数率Nをプロファイルの初期値に設定する(S42)。
【0101】
模擬波形生成部23は、入射中性子計数率Nに対応する模擬波形データを生成する(S43)。そして、模擬信号出力部24は、生成された模擬波形データを電気信号に変換した中性子模擬信号を信号処理部13に出力する(S44)。異常判定部27は、信号処理部13で測定された中性子計数率を取得する(S45)。
【0102】
入射計数率自動設定部25は、プロファイルの計数範囲について測定が完了したか否かを判定する(S46)。測定が完了していない場合(S46:NO)、入射計数率自動設定部25はプロファイルに沿って入射中性子計数率Nを設定して(S47)、S43〜S45を実行する。
【0103】
一方、測定が完了した場合(S46:YES)、異常判定部27は測定された中性子計数率がプロファイルに対して設定された許容範囲内にあるか否かを判定する(S48)。
【0104】
そして、異常判定部27は、測定された中性計数率が許容範囲に無い場合は、異常を出力する(S48:NO、S49)。一方、測定された中性計数率が許容範囲にある場合には終了する(S48:YES)。
【0105】
このように、プロファイルに沿って入射中性子計数率Nを設定し、測定された中性子計数率の異常判定を行うことで、実験原子炉で実施することなく、測定に係る応答性を確認することが可能となる。また、補正係数を決定した後に、その妥当性を確認する際にも利用することもできる。
【0106】
以上述べた各中性子計測装置の調整装置によれば、中性子密封線源を用いて検出される中性子データとバックグランドデータとに基づいて模擬波形データを生成し、中性子模擬信号を中性子計測装置に出力することにより、実験原子炉を使用することなく、簡易かつ高い精度で中性子計測装置を調整することができる。
【0107】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0108】
また、調整装置20の各構成要素はプロセッサにより実現可能であるが、第1記録部21及び第2記録部22は波形データを取得する性能を持つオシロスコープで代替しても良く、模擬信号出力部24は模擬波形データを読み込んで電気信号として出力できる汎用の任意波形発生器で代替しても良い。