特許第6363498号(P6363498)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6363498
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】放射線管理システム及び放射線管理方法
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/00 20060101AFI20180712BHJP
   G01T 7/00 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
   G01T1/00 D
   G01T7/00 A
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-264440(P2014-264440)
(22)【出願日】2014年12月26日
(65)【公開番号】特開2016-125832(P2016-125832A)
(43)【公開日】2016年7月11日
【審査請求日】2017年7月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】特許業務法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平山 周作
(72)【発明者】
【氏名】倉橋 和信
【審査官】 右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭58-39974(JP,A)
【文献】 特開2000-162368(JP,A)
【文献】 特開2000-221292(JP,A)
【文献】 特開2004-251728(JP,A)
【文献】 特開2004-264161(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/00
G01T 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線管理区域内での作業時間、作業区域、作業種別を設定した作業予定情報と、作業実施後の作業時間、作業区域、作業種別の作業実績情報とを入力する作業計画収集部と、
作業者毎の個人被ばく線量値情報を入力する個人被ばく線量値収集部と、
前記個人被ばく線量値情報及び前記作業実績情報を入力し、作業区域毎の個人被ばく線量値の総和を集計して区域別被ばく線量総計値情報として出力する被ばく線量集計部と、
前記区域別被ばく線量総計値情報及び前記作業実績情報を入力し、作業区域及び作業種別毎に単位時間、単位人数あたりの被ばく線量値を算出して区域別被ばく線量実績値情報として出力する区域別被ばく線量単位化部と、
前記作業予定情報に基づく作業時間と前記区域別被ばく線量実績値情報の被ばく線量値とから作業予定の作業区域及び作業種別毎の被ばく線量値を算出して区域別被ばく線量予測値情報として出力する予測被ばく線量演算部と、
を備えることを特徴とする放射線管理システム。
【請求項2】
前記区域別被ばく線量実績値情報を入力し、区域毎の単位時間あたりの被ばく線量を区域別予測被ばく線量情報として前記予測被ばく線量演算部に出力する予測被ばく線量設定部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の放射線管理システム。
【請求項3】
前記区域別被ばく線量予測値情報を入力し、作業予定における作業区域毎の全作業者の予測被ばく線量値を総計演算し、予測被ばく線量総計値情報として出力する予測被ばく線量集計部と、
前記予測被ばく線量総計値情報を入力し、予測被ばく線量総計値の大きい区域順に各作業区域を序列化し、高被ばく区域序列情報として出力する高被ばく区域序列化部と、
前記区域別被ばく線量実績値情報、前記区域別被ばく線量予測値情報、及び前記高被ばく区域序列情報を表示する表示部と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の放射線管理システム。
【請求項4】
前記区域別被ばく線量単位化部は、あらかじめ指定した期間中の前記区域別被ばく線量総計値情報の被ばく線量総計値を作業時間総計により商計算処理し、単位時間、単位人数あたりの被ばく線量値を作業区域及び作業種別毎に区域別被ばく線量実績値として算出し、前記区域別被ばく線量実績値情報としたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の放射線管理システム。
【請求項5】
前記予測被ばく線量値演算部は、前記作業予定情報が示す予定作業区域、予定作業種別から該当する区域別被ばく線量増加係数を選択し、予定作業時間と前記区域別被ばく線量増加係数とを積計算処理し、予定作業における被ばく線量値を区域別被ばく線量予測値として算出し、前記区域別被ばく線量予測値情報としたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の放射線管理システム。
【請求項6】
作業計画収集部が、放射線管理区域での作業時間、作業区域、作業種別を設定した作業予定情報と、作業実施後の作業時間、作業区域、作業種別の作業実績情報とを入力する作業計画収集工程と、
個人被ばく線量値収集部が、作業者毎の個人被ばく線量値情報を入力する個人被ばく線量値収集工程と、
被ばく線量集計部が、前記個人被ばく線量値情報及び前記作業実績情報を入力し、作業区域毎の個人被ばく線量値の総和を集計して区域別被ばく線量総計値情報として出力する被ばく線量集計工程と、
区域別被ばく線量単位化部が、前記区域別被ばく線量総計値情報及び前記作業実績情報を入力し、作業区域及び作業種別毎に単位時間、単位人数あたりの被ばく線量値を算出して区域別被ばく線量実績値情報として出力する区域別被ばく線量単位化工程と、
予測被ばく線量演算部が、前記作業予定情報に基づく作業時間と前記区域別被ばく線量実績値情報の被ばく線量値とから作業予定の作業区域及び作業種別毎の被ばく線量値を算出して区域別被ばく線量予測値情報として出力する予測被ばく線量演算工程と、
を有することを特徴とする放射線管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、原子力発電プラント等の原子力施設において放射線管理業務の支援機能を備えた放射線管理システム及び放射線管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電プラント等の原子力施設では、放射線管理システムが導入されている。この放射線管理システムは、原子力施設内の放射線管理区域における作業者個人の被ばく、作業者の出入り、作業者の汚染の情報を、それぞれ個人被ばく線量計、出入管理装置、汚染モニタ等の測定装置により測定し、この測定結果をディジタル情報として収集している。これにより、作業者の被ばく線量値を可能な限り正確に、かつ漏れなく集計して管理することが可能になっている。
【0003】
上記のように作業者個人の被ばく、作業者の出入り、作業者の汚染の情報を収集して管理するには、原子力施設内の放射線管理区域と非管理区域との境界に設置された上記各種測定装置が用いられている。これらの各種測定結果の情報は、放射線管理システムに伝送される。この放射線管理システムでは、各種測定結果の情報を集約して表示部に画面表示するとともに、帳票印字出力等の出力表示を行っている。
【0004】
上記放射線管理システムでは、作業者個人の被ばくを管理する場合、安全管理者もしくは安全管理者の指導を受けたシステム管理者により、上記作業者個人の被ばく、作業者の出入り、作業者の汚染の情報に基づいて実施される。そして、日々の放射線管理情報、累積される放射線管理情報が所定の値を超えないように管理が実施されている。
【0005】
このような放射線管理システムは、原子力施設の各放射線管理区域の境界に設置される各種測定装置から測定情報を収集する。また、想定されている運用状態としては、通常時、つまり定期検査、プラント起動又は停止、通常運転のような運転時の異常な過渡変化をカバーしている。
【0006】
その一方で、重大事故等の発生により高線量環境となった作業区域内で、短期間に多数の人員が作業する緊急時の作業においても、作業者の被ばく線量値の確実な管理と、被ばくを低減するための管理を行う必要がある。この場合には、作業者の被ばく線量値を把握し、抑制する計画を立案するために必要な情報を提供する手段が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−281339号公報
【特許文献2】特開平4−134287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した重大事故等の発生時に放射性物質の拡散により作業区域が高線量の放射線管理区域となる場合には、作業者を含む全ての従事者に対して線量限度値への到達を想定した監視が必要となる。
【0009】
しかしながら、通常時の運用を想定した従来の放射線管理システムは、長期間かつ非高線量環境での作業者の被ばく線量値を確認し、管理するシステムである。そのため、従来の放射線管理システムは、短期間の高線量環境作業によって線量限度値へ到達することを想定していない。
【0010】
したがって、緊急時の高線量環境下では、一度の作業で被ばくする線量が高く、その累積線量を確認することのできる個人線量計が普及していない。そのため、作業後に被ばく線量限度値を超過したことが判明するといった問題や、作業計画の中途で作業者が線量限度値に到達することで人員の不足等により作業計画を進行することができないといった問題の発生が予想される。
【0011】
このような問題に対して、予定作業開始前に被ばく線量値を予測し、線量限度値を超えない作業計画や、防護及び除染等の被ばく抑制計画を策定して実施することが必要となる。
【0012】
上記のように被ばく線量値を予測するに際し、サーベイメータ(放射線測定器)により得られる空間線量値を用いて予測する手法が存在する。しかしながら、原子力施設内の放射線管理区域においては、膨大な地点での空間線量値の測定を実施する必要があり、また風雨等の環境作用や防護及び除染等の被ばく低減対策の結果により空間線量値が変化する。そのため、上記の手法では、高い頻度で空間線量値の見直し、再測定が必要となり、測定に伴う労力が多大になるという課題があった。
【0013】
本発明の実施形態が解決しようとする課題は、予定作業開始前に被ばく線量値を予測することができる放射線管理システム及び放射線管理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本実施形態に係る放射線管理システムは、放射線管理区域内での作業時間、作業区域、作業種別を設定した作業予定情報と、作業実施後の作業時間、作業区域、作業種別の作業実績情報とを入力する作業計画収集部と、作業者毎の個人被ばく線量値情報を入力する個人被ばく線量値収集部と、前記個人被ばく線量値情報及び前記作業実績情報を入力し、作業区域毎の個人被ばく線量値の総和を集計して区域別被ばく線量総計値情報として出力する被ばく線量集計部と、前記区域別被ばく線量総計値情報及び前記作業実績情報を入力し、作業区域及び作業種別毎に単位時間、単位人数あたりの被ばく線量値を算出して区域別被ばく線量実績値情報として出力する区域別被ばく線量単位化部と、前記作業予定情報に基づく作業時間と前記区域別被ばく線量実績値情報の被ばく線量値とから作業予定の作業区域及び作業種別毎の被ばく線量値を算出して区域別被ばく線量予測値情報として出力する予測被ばく線量演算部と、を備えることを特徴とする。
【0015】
本実施形態に係る放射線管理方法は、作業計画収集部が、放射線管理区域での作業時間、作業区域、作業種別を設定した作業予定情報と、作業実施後の作業時間、作業区域、作業種別の作業実績情報とを入力する作業計画収集工程と、個人被ばく線量値収集部が、作業者毎の個人被ばく線量値情報を入力する個人被ばく線量値収集工程と、被ばく線量集計部が、前記個人被ばく線量値情報及び前記作業実績情報を入力し、作業区域毎の個人被ばく線量値の総和を集計して区域別被ばく線量総計値情報として出力する被ばく線量集計工程と、区域別被ばく線量単位化部が、前記区域別被ばく線量総計値情報及び前記作業実績情報を入力し、作業区域及び作業種別毎に単位時間、単位人数あたりの被ばく線量値を算出して区域別被ばく線量実績値情報として出力する被ばく線量単位化工程と、予測被ばく線量演算部が、前記作業予定情報に基づく作業時間と前記区域別被ばく線量実績値情報の被ばく線量値とから作業予定の作業区域及び作業種別毎の被ばく線量値を算出して区域別被ばく線量予測値情報として出力する予測被ばく線量演算工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の実施形態によれば、予定作業開始前に被ばく線量値を予測することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】一実施形態の放射線管理システムを示すブロック構成図である。
図2図1の作業実績情報及び個人被ばく線量値情報を示す説明図である。
図3図1の被ばく線量集計部の処理を示す説明図である。
図4図1の区域別被ばく線量単位化部の処理を示す説明図である。
図5図1の予測被ばく線量設定部及び作業予定情報の処理を示す説明図である。
図6図1の予測被ばく線量演算部の処理を示す説明図である。
図7図1の予測被ばく線量演算部において同作業区域で集計する処理を示す説明図である。
図8図1の予測被ばく線量集計部の処理を示す説明図である。
図9図1の高被ばく区域序列化部の処理を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明に係る放射線管理システム及び放射線管理方法の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0019】
(一実施形態)
(構 成)
図1は一実施形態の放射線管理システムを示すブロック構成図である。
【0020】
図1に示すように、本実施形態における放射線管理システムSは、作業計画策定部1及び個人線量計測部3から出力される情報を入力する。放射線管理システムSは、概ね作業計画収集部2と、個人被ばく線量値収集部4と、被ばく線量実績評価部7と、被ばく線量予測部10と、高被ばく区域予測部13と、表示部14と、を備える。被ばく線量実績評価部7、被ばく線量予測部10、及び高被ばく区域予測部13は、CPU(中央情報処理装置)及びソフトウェアで実現されている。また、作業計画収集部2、個人被ばく線量値収集部4は、メモリやHDD(Hard disk drive)等の記憶装置を備えている。
【0021】
被ばく線量実績評価部7は、被ばく線量集計部5と、区域別被ばく線量単位化部6と、を有する。被ばく線量予測部10は、予測被ばく線量設定部8と、予測被ばく線量演算部9と、を有する。高被ばく区域予測部13は、予測被ばく線量集計部11と、高被ばく区域序列化部12と、を有する。
【0022】
作業計画策定部1は、放射線管理区域における作業計画を策定、記録、蓄積、及び出力する。具体的には、作業計画策定部1は、人間系処理又はプログラム等により定められた処理により、予定作業種別(作業項目)毎に予定作業時間、予定作業区域(放射線管理区域)、予定作業人数等の作業予定情報を設定するとともに、作業実施後の実績作業時間、実績作業区域、実績作業人数等の作業実績情報を記録、蓄積、及び出力する。
【0023】
作業計画収集部2は、作業計画策定部1から予定作業時間、予定作業区域、予定作業種別等の作業予定情報と、実績作業時間、実績作業区域、実績作業種別等の作業実績情報を入力する。具体的には、作業計画収集部2は、インターフェイスの機能を有し、作業計画策定部1から出力された作業予定情報及び作業実績情報を入力し、作業予定情報を被ばく線量予測部10に出力する一方、作業実績情報を被ばく線量実績評価部7に出力する。
【0024】
個人線量計測部3は、放射線管理区域に入域して作業を行い退域するまでの個人被ばく線量値を計測する。具体的には、個人線量計測部3は、作業者個人が携帯し放射線量の累積を測定する放射線モニタや放射線管理区域の出口で作業者個人の放射線量を測定する放射線ゲートモニタ等の線量計測器により、各作業者個人が入域して作業を行い退域するまでの個人被ばく線量値を計測し、個人被ばく線量値情報として出力する。
【0025】
個人被ばく線量値収集部4は、インターフェイスの機能を有し、個人被ばく線量値情報を入力し、この個人被ばく線量値情報を被ばく線量実績評価部7の被ばく線量集計部5に出力する。
【0026】
被ばく線量集計部5は、個人被ばく線量値情報及び作業実績情報を入力し、あらかじめ定められた期間における作業区域毎及び作業種別毎の全作業者の個人被ばく線量値の総和を、区域別被ばく線量総計値として集計し、この区域別被ばく線量総計値情報を区域別被ばく線量単位化部6に出力する。なお、予め定められた期間は、管理者によって適宜変更可能である。
【0027】
区域別被ばく線量単位化部6は、区域別被ばく線量総計値情報を入力し、作業区域毎及び作業種別毎に単位時間、単位人数あたりの被ばく線量値を区域別被ばく線量実績値として算出し、この区域別被ばく線量実績値情報を被ばく線量予測部10の予測被ばく線量設定部8及び表示部14に出力する。
【0028】
被ばく線量実績評価部7は、被ばく線量集計部5及び区域別被ばく線量単位化部6の入出力情報を制御する。
【0029】
予測被ばく線量設定部8は、区域別被ばく線量実績値情報を入力し、作業区域毎の単位時間あたりの被ばく線量を区域別予測被ばく線量として設定し、区域別予測被ばく線量情報として予測被ばく線量演算部9に出力する。
【0030】
予測被ばく線量演算部9は、作業予定情報と、区域別予測被ばく線量情報を入力し、作業予定情報に基づく作業時間と、区域別予測被ばく線量情報の区域別予測被ばく線量を掛け合わせることで、予定作業における作業区域及び作業種別毎の被ばく線量値を区域別被ばく線量予測値情報として高被ばく区域予測部13の予測被ばく線量集計部11及び表示部14に出力する。
【0031】
被ばく線量予測部10は、予測被ばく線量設定部8及び予測被ばく線量演算部9の入出力情報を制御する。
【0032】
予測被ばく線量集計部11は、区域別被ばく線量予測値情報を入力し、作業予定における作業区域毎の全作業者の予測被ばく線量値を総計演算し、予測被ばく線量総計値情報として高被ばく区域序列化部12に出力する。
【0033】
高被ばく区域序列化部12は、予測被ばく線量総計値情報を入力し、予測被ばく線量総計値の大きい順に各作業区域を序列化し、その序列を高被ばく区域序列情報として表示部14に出力する。
【0034】
高被ばく区域予測部13は、予測被ばく線量集計部11及び高被ばく区域序列化部12の入出力情報を制御する。
【0035】
表示部14は、区域別被ばく線量単位化部6から出力された区域別被ばく線量実績値情報、予測被ばく線量演算部9から出力された区域別被ばく線量予測値情報、及び高被ばく区域序列化部12から出力された高被ばく区域序列情報を入力し、その旨を表示する。
【0036】
次に、図2図4を用いて被ばく線量実績評価部7の作業区域、作業種別毎の被ばく線量実績評価手法について具体的に説明する。図2図1の作業実績情報及び個人被ばく線量値情報を示す説明図である。図3図1の被ばく線量集計部の処理を示す説明図である。図4図1の区域別被ばく線量単位化部の処理を示す説明図である。なお、以下に説明する図2及び図3図5図8において、○の中にA〜Eを記載した符号は、情報の流れの対応関係を示している。
【0037】
被ばく線量集計部5は、図2及び図3に示すように作業実績情報及び個人被ばく線量値情報に基づき、放射線管理区域内のあらかじめ定められた作業区域、作業種別において、あらかじめ指定した期間中に対象となる作業者の個人被ばく線量及び作業時間を作業区域別、作業種別毎に和計算処理し、指定した期間における区域別被ばく線量総計値情報を区域別被ばく線量単位化部6に出力する。
【0038】
具体的には、図2に示すようにA月a日には、作業者aは、作業区域1−1、作業種別がE作業を300分行い、A月c日に作業者xが作業区域1−1、作業種別がE作業を350分行った場合は、被ばく線量集計部5は、図3に示すように作業区域毎の被ばく線量を総計し、区域別被ばく線量総計値情報とする。
【0039】
区域別被ばく線量単位化部6は、図4に示すように指定した期間中の区域別被ばく線量総計値情報を作業時間総計により商計算処理し、指定した期間における単位時間、単位人数あたりの区域別被ばく線量実績値を区域別被ばく線量実績値情報として被ばく線量予測部10の予測被ばく線量設定部8及び表示部14に出力する。
【0040】
具体的には、図4に示すように作業区域を指定し作業種別がE作業の場合、指定した期間▲月●日〜△月○日の作業時間、作業人数あたりの被ばく線量を区域別被ばく線量実績値情報とする。
【0041】
次に、図5及び図6を用いて被ばく線量予測部10の作業区域、作業種別毎の被ばく線量予測手法について具体的に説明する。図5図1の予測被ばく線量設定部及び作業予定情報の処理を示す説明図である。図6図1の予測被ばく線量演算部の処理を示す説明図である。
【0042】
図5に示すように、予測被ばく線量設定部8は、あらかじめ定められた期間の各作業区域、作業種別における単位時間あたりの個人被ばく線量実績値を示す区域別被ばく線量実績値情報を入力する。予測被ばく線量設定部8は、各作業区域、作業種別おいて、単位時間あたりに作業者が被ばくすることが予測される線量を区域別予測被ばく線量情報として設定する。例えば、作業種別がE作業の場合、作業区域1−1の区域別被ばく線量が2(mSv/h)である。
【0043】
予測被ばく線量演算部9は、図5に示す作業予定情報及び区域別予測被ばく線量情報に基づき、各作業者の予定作業区域、予定作業種別から該当する区域別予測被ばく線量を選択し、予定作業時間を積計算処理する。これにより、予定作業を実行した際に被ばくすることが予測される線量値を作業者毎に計算し、区域別被ばく線量予測値情報として出力する。
【0044】
具体的には、図6に示すように作業者a、予定作業区域が1−1、予定作業種別がE作業である場合の区域別予測被ばく線量を選択し、この区域別予測被ばく線量と予定作業時間を積計算処理する。これにより、A月A日は、作業者aの予定作業時間が300分(5時間)であるので、区域別被ばく線量が2(mSv/h)であり、2×5=10mSvとなる。この10mSvが個人被ばく線量予測値となる。A月B日は、作業者aの予定作業時間が60分(1時間)であるので、区域別被ばく線量が2(mSv/h)×1=2mSvとなる。A月C日は、作業者aの予定作業時間が120分(2時間)であるので、区域別被ばく線量が2(mSv/h)×2=4mSvとなる。
【0045】
次に、図7図9を用いて高被ばく区域予測部13の高被ばく区域序列予測手法について具体的に説明する。
【0046】
予測被ばく線量集計部11は、図7に示す区域別被ばく線量予測値情報に基づき、あらかじめ定められた期間、作業区域、作業種別の作業予定における全作業者の区域別被ばく線量予測値を和計算(総計演算)し、これを図8に示す予測被ばく線量総計値情報として出力する。図8では、作業区域が1−1の区域別被ばく線量予測値を和計算した場合を示している。
【0047】
高被ばく区域序列化部12は、図9に示すように区域別予測被ばく線量値総計の値が大きい順に順位を付けて評価し、その順位を高被ばく区域序列情報として出力する。図9において、区域別予測被ばく線量値総計の値は、作業区域4−1が最も大きく、作業区域3−2、2−7、2−6、1−4、2−2の順に小さくなっている。
【0048】
(作用及び効果)
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0049】
図1に示すように、まず作業計画策定部1は、作業種別毎に作業時間、作業区域、作業人数等の作業予定情報を設定し、作業実施後の作業時間、作業区域、作業人数等の作業実績情報を記録、蓄積、及び出力する。
【0050】
作業計画収集部2は、作業計画策定部1から出力された作業予定情報及び作業実績情報を入力し、作業実績情報を被ばく線量実績評価部7に出力する一方、作業予定情報を被ばく線量予測部10に出力する。
【0051】
個人線量計測部3は、各作業者が入域して作業を行い退域するまでの個人被ばく線量値を計測し、出力する。
【0052】
個人被ばく線量値収集部4は、個人線量計測部3から出力された個人被ばく線量値情報を入力し、この個人被ばく線量値情報を被ばく線量実績評価部7の被ばく線量集計部5に出力する。
【0053】
被ばく線量集計部5は、作業計画収集部2から出力された作業実績情報と、個人被ばく線量値収集部4から出力された個人被ばく線量値情報とを入力し、あらかじめ定められた期間における作業区域毎及び作業種別毎の全作業者の個人被ばく線量値の総和を示す区域別被ばく線量総計値情報を区域別被ばく線量単位化部6に出力する。この区域別被ばく線量単位化部6は、作業区域毎及び作業種別毎に、単位時間、単位人数あたりの被ばく線量値を示す区域別被ばく線量実績値情報を被ばく線量予測部10の予測被ばく線量設定部8及び表示部14に出力する。
【0054】
予測被ばく線量設定部8は、区域別被ばく線量単位化部6から出力された区域別被ばく線量実績値情報を入力し、作業区域毎の単位時間あたりの被ばく線量を示す区域別予測被ばく線量情報を予測被ばく線量演算部9に出力する。予測被ばく線量演算部9には、区域別予測被ばく線量報とともに、上記作業予定情報も入力し、予定作業における作業区域毎、作業種別毎の被ばく線量値を示す区域別被ばく線量予測値情報を高被ばく区域予測部13の予測被ばく線量集計部11及び表示部14に入力する。
【0055】
予測被ばく線量集計部11は、区域別被ばく線量予測値情報を入力し、作業予定おける作業区域毎の全作業者の予測被ばく線量総計値を示す予測被ばく線量総計値情報を高被ばく区域序列化部12に出力する。この高被ばく区域序列化部12は、予測被ばく線量総計値情報を入力し、各作業区域の予測被ばく線量総計値の大きさの順位を示す高被ばく区域序列情報を表示部14に入力する。
【0056】
表示部14では、区域別被ばく線量実績値情報、区域別被ばく線量予測値情報及び高被ばく区域序列情報を表示可能であり、ディジタル画面による表示やプリンタ等による印字出力により内容を確認することが可能である。
【0057】
このように本実施形態によれば、区域別被ばく線量予測値情報を得ることにより、作業開始前に至近の作業環境に対応した被ばく線量値を予測し、また被ばく線量値が高くなる区域を予測することで、被ばく線量限度値を超過させずに、作業計画の進行の妨げを防止することが可能となる。
【0058】
また、本実施形態によれば、作業者が放射線管理区域において作業を行った結果、作業区域、作業種別毎に単位時間あたりの個人あたりの被ばく線量実績値を区域別被ばく線量実績値情報から推定することが可能となる。また、膨大な回数の区間線量測定を行わなくとも、予定作業を実施した際にどの程度被ばくするのかを区域別被ばく線量予測値情報から予測することが可能となる。さらに、高被ばく区域序列情報に基づき、作業者の被ばく線量総計値が大となる作業区域を、その値の大きい順に把握することも可能となる。
【0059】
本実施形態では、被ばく線量集計部5及び区域別被ばく線量単位化部6を設けたことにより、作業者が放射線管理区域において作業を行った結果、実績値としての単位時間あたりの個人被ばく線量値を作業区域毎と作業種別毎に把握することが可能となる。また、個人線量計等の被ばく線量計測器を携帯していない作業者に対して、作業区域、作業種別から対応する区域別被ばく線量実績値を選択し、区域別被ばく線量実績値と作業時間を商計算処理することで、実績作業における被ばく線量値を推定することが可能となる。すなわち、各作業区域において作業者が被ばくした線量を個人換算した平均値を把握し、その値に実績作業時間を積計算することで、被ばくした線量値をユーザが推定することができる。
【0060】
本実施形態では、予測被ばく線量設定部8及び予測被ばく線量演算部9を設けたことにより、膨大な回数の空間線量測定を行わなくても、上記区域別被ばく線量実績値情報及び作業予定情報からどの程度被ばくする可能性があるかを示す区域別被ばく線量予測値情報を算出可能であり、予定作業を実施した際にどの程度被ばくするのか定量的な予測が可能となる。すなわち、予定作業を実施した際の定量的な被ばく線量予測値をユーザが確認することができる。
【0061】
また、至近の作業における個人被ばく線量値情報から算出した区域別被ばく線量実績値情報を予測計算に用いる場合には、現状の環境状況に応じた被ばく線量予測値を算出可能であり、風雨、除染作業等により変化した環境状況において空間線量の再測定等手間をかけずに被ばく線量の予測が可能となる。
【0062】
各作業者の実績値に作業予定情報に基づいた被ばく線量予測値を加えることで、被ばく線量限度値を超えるかどうか、超えるまでどのくらいの期間を要するか、を管理者は把握し、作業者に線量限度値を超えさせず、スケジュールの遅延等の作業への影響を抑える作業計画の策定が可能となる。
【0063】
さらに、本実施形態では、予測被ばく線量集計部11及び高被ばく区域序列化部12を設けたことにより、作業予定情報に基づき作業を実施した際に、作業者の予測被ばく線量値総計が大となる作業区域を、その値の大きい順に把握することが可能となる。そのため、予定作業実施時の被ばく線量値が高くなる区域を順位づけてユーザが確認可能となる。
【0064】
これにより、管理者は、放射線管理区域全体の被ばく線量総計値に対して高い割合で作業者に被ばくをさせる作業区域、つまり防護、除染計画等を実施した際に被ばく線量を大きく低減することができる作業区域を把握し、この区域に対して優先的に防護、除染等の被ばくを低減するための対策を策定し、実施することで、被ばくを効果的に低減し、高い安全性を得ることが可能となる。
【0065】
(その他の実施形態)
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0066】
なお、上記実施形態の放射線管理システムは、高被ばく区域予測部13及び表示部14を設置した例について説明したが、これら高被ばく区域予測部13及び表示部14を省略したとしても、被ばく線量限度値を超過させずに、作業計画の進行の妨げを防止することが可能となる。
【0067】
また、上記実施形態の放射線管理システムでは、予測被ばく線量設定部8に区域別被ばく線量実績値情報を入力するようにしたが、これに限らず区域別被ばく線量実績値情報を、予測被ばく線量設定部8を介さず、予測被ばく線量演算部9に直接入力するようにしてもよい。このように構成しても、同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0068】
1…作業計画策定部、2…作業計画収集部、3…個人線量計測部、4…個人被ばく線量値収集部、5…被ばく線量集計部、6…区域別被ばく線量単位化部、7…被ばく線量実績評価部、8…予測被ばく線量設定部、9…予測被ばく線量演算部、10…被ばく線量予測部、11…予測被ばく線量集計部、12…高被ばく区域序列化部、13…高被ばく区域予測部、14…表示部
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