特許第6363500号(P6363500)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6363500
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】ガスセンサ制御装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/416 20060101AFI20180712BHJP
【FI】
   G01N27/416 331
【請求項の数】3
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2014-266161(P2014-266161)
(22)【出願日】2014年12月26日
(65)【公開番号】特開2016-125889(P2016-125889A)
(43)【公開日】2016年7月11日
【審査請求日】2017年3月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】若園 知宏
(72)【発明者】
【氏名】中川 将生
【審査官】 黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−072478(JP,A)
【文献】 特開2000−121604(JP,A)
【文献】 特開2009−069140(JP,A)
【文献】 特開平11−118759(JP,A)
【文献】 特開2001−183337(JP,A)
【文献】 特開2013−148358(JP,A)
【文献】 特開2007−010564(JP,A)
【文献】 特開2008−191043(JP,A)
【文献】 特開2008−026299(JP,A)
【文献】 特開2001−141690(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0097553(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/416
G01N 27/419
G01N 27/41
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三つ以上のセラミック層を積層してなるガスセンサ素子であり、
三つ以上の前記セラミック層のうち、二つのセラミック層の層間に形成されると共に、外部から被測定ガスが導入される第1測定室と、
前記第1測定室を形成する前記層間とは異なる二つのセラミック層の層間に形成されると共に、前記第1測定室と少なくとも一部が積層方向に重なり合う第2測定室と、
前記第1測定室と前記第2測定室との間に配置されるセラミック層を前記積層方向に貫くと共に、前記第1測定室と前記第2測定室とを連通する導入路と、
前記第1測定室内の前記被測定ガスに含まれる酸素をポンピングする第1ポンプセルであり、前記第1測定室に隣接するセラミック層と、該セラミック層上に設けられ、前記第1測定室内に晒される第1内側電極と、該第1内側電極と対をなす第1対電極とを備える第1ポンプセルと、
前記第1ポンプセルより前記被測定ガスの導入方向下流側に配置され、前記被測定ガス中の酸素濃度を測定する酸素濃度検知セルであり、前記第1測定室に隣接するセラミックと、該セラミック層上に設けられ、前記第1測定室内に晒された検知電極と、該検知電極と対をなす基準電極とを備える酸素濃度検知セルと、
前記酸素濃度検知セルより前記被測定ガスの導入方向下流側に配置され、前記第2測定室内における被測定ガス中の特定ガス濃度に応じた電流が流れる第2ポンプセルであり、前記第2測定室に隣接するセラミック層と、該セラミック層上に設けられ、前記第2測定室内に晒される第2内側電極と、該第2内側電極が設けられた前記セラミック層の同一面上に設けられ、該第2内側電極と対をなす第2対電極とを備える第2ポンプセルと
を有するガスセンサ素子と、
前記酸素濃度検知セルの内部抵抗に基づき、前記ガスセンサ素子の温度を制御する制御部と、
を有するガスセンサ制御装置であって、
前記酸素濃度検知セルは、前記検知電極と前記基準電極との少なくとも一部が、前記セラミック層を介して対向しており、
前記第2ポンプセルの前記第2内側電極及び前記第2対電極のそれぞれの少なくとも一部は、前記ガスセンサ素子を前記積層方向に見た場合に、前記検知電極と前記基準電極との対向する対向領域の最外周に取り囲まれる特定領域に重なるように配置されており、
且つ、前記基準電極と前記第2対電極とは、基準ガスが導入される基準ガス導入部内に配置されていることを特徴とするガスセンサ制御装置。
【請求項2】
前記ガスセンサ素子を前記積層方向に見た場合に、前記検知電極及び前記基準電極は、それぞれ、少なくとも前記導入路よりも前記被測定ガスの導入方向上流側及び前記被測定ガスの導入方向下流側の前記セラミック層上に、前記導入路を囲むように設けられていると共に、前記導入路は、前記特定領域と少なくとも一部が重なるように設けられていることを特徴とする請求項1に記載のガスセンサ制御装置。
【請求項3】
被測定ガスに含まれる特定ガスを検出するガスセンサ素子を有するガスセンサを備えたガスセンサ制御装置であって、
前記ガスセンサ素子として、請求項1又は請求項2に記載のガスセンサ素子を備えることを特徴とするガスセンサ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象ガス(被測定ガス)中に含まれる特定ガスを検出するためのガスセンサ素子と、そのガスセンサ素子の温度を制御する制御部とを備えたガスセンサ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被測定ガス(例えば排気ガス等)に含まれる特定ガス(例えばNOx等)を検出するためのガスセンサ素子、およびそのようなガスセンサ素子を備えるガスセンサが知られている。
【0003】
このガスセンサ素子としては、板型の固体電解質体と、固体電解質体の外面に形成される一対の電極と、を有するセルを複数備えているものがある(特許文献1参照)。
例えば、図14(a)に示すように、NOxを検出するガスセンサ素子は、セルとして、第1ポンプセル901、酸素濃度検知セル902、第2ポンプセル(NOx検知セル)903などを備えており、それらは、絶縁層910、920等を介して積層されている。
【0004】
このうち、第1ポンプセル901は、被測定ガス(排気ガス等)における酸素の汲み入れおよび汲み出し(ポンピング)を行い、被測定ガスの酸素濃度を調整する。酸素濃度検知セル902は、第1ポンプセル901によって調整された測定対象の酸素濃度を検知する。第2ポンプセル903には、酸素濃度が調整された被測定ガスに含まれるNOx濃度に応じた第2ポンピング電流が流れる。この第2ポンピング電流に基づいて被測定ガスにおけるNOx濃度を検出できる。
【0005】
また、これとは別に、酸素濃度検知セルに配置された検知電極と基準電極との間に、所定の電流値の電流を流し、このときの検知電極と基準電極との間の電圧値と前記電流値とに基づいて、検知電極と基準電極との間の抵抗値(即ち酸素濃度検知セルの内部抵抗)を求め、この抵抗値に基づいて酸素濃度検知セルの温度を検知する技術が開示されている(特許文献2参照)。
【0006】
この技術では、酸素濃度検知セルの温度に基づいて、ヒータへの印加電圧を制御して、ガスセンサ素子の温度をガス検知に好適な温度、即ち第1、第2ポンプセルや酸素濃度検知セルが機能を発揮できる活性化温度に制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−122187号公報
【特許文献2】特開2003−185626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、上述したヒータの温度制御を行う従来技術においては、温度を測定する位置とNOx濃度を検出する位置とが、ガスセンサ素子の長手方向に異なる場合には、ガスセンサの測定精度が低下することがあった。
【0009】
例えば、図14(a)に示すように、温度を測定する位置(例えば酸素濃度検知セル902の検知電極902aと基準電極902bとが対向する位置)P1と、NOx濃度の検出に寄与する位置(例えばNOx濃度の検出のために被測定ガスに接触する第2内側電極
903aの位置)P2とが、ガスセンサ素子の長手方向(同図左右方向)に異なるガスセンサがある。
【0010】
このガスセンサを、例えば排気管等に取り付けて、排気ガス中の例えばNOx濃度を検出する場合には、ガスセンサの主体金具の影響や排気ガスの流速の影響等によって、図14(b)に示すように、ガスセンサ素子の先端側から後端側における温度勾配の傾きが変化することがある。
【0011】
この図14(b)は、ガスセンサ素子の位置によるガスセンサ素子の温度勾配を示したものであり、図面左側がガスセンサ素子の先端側、図面右側がガスセンサ素子の後端側を示している。そして、○、△、◇は、それぞれ同じガスセンサ素子を示しており、例えば、あるガスセンサ素子の温度勾配が○でありながら、ガスセンサの主体金具の影響や排気ガスの流速の影響の度合の違いなどにより、位置P1を中心に温度勾配が△や◇のように変化することがあった。
【0012】
つまり、図14(b)に示すように、位置P1では、酸素濃度検知セル902の温度に基づいて、ガスセンサ素子の温度を制御しているため、それぞれ、○、△、◇のガスセンサ素子の温度は略同じ温度となっているにも関わらず、ガスセンサの主体金具の影響や排気ガスの流速の影響の度合の違いなどにより、ガスセンサ素子の先端側から後端側における温度勾配の傾きが変化し、位置P2においては、ガスセンサ素子の温度がばらつくことがある。
【0013】
つまり、温度を測定する位置P1とNOx濃度の検出に寄与する位置P2とが、ガスセンサ素子の長手方向に異なる場合には、NOx濃度の検出に寄与する位置P2の温度が目的とする温度からばらつくことがある。
【0014】
このNOx濃度の検出に寄与する位置P2の温度ばらつき、即ち、固体電解質体及び一対の電極からなる第2ポンセル(NOx検知セル)903の温度ばらつきは、電極活性、被測定ガス内の特定ガス以外のガス解離量、固体電解質体の内部抵抗などのばらつきを引き起こすことがあり、それによって、第2ポンピング電流がばらつくことがある。その結果、NOx濃度の検出精度の低下に繋がる恐れがある。
【0015】
そこで、本発明は、特定ガスの検出精度の高いガスセンサ素子を備えたガスセンサ制御装置を提供すること、および、そのようなガスセンサ素子を有するガスセンサを備えたガスセンサ制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
(1)本発明の第1局面におけるガスセンサ制御装置は、ガスセンサ素子と制御部とを有する。このうち、ガスセンサ素子は、三つ以上のセラミック層を積層してなり、第1測定室と、第2測定室と、導入路と、第1ポンプセルと、酸素濃度検知セルと、第2ポンプセルとを有する。
【0017】
第1測定室は、三つ以上のセラミック層のうち、二つのセラミック層の層間に形成さており、外部から被測定ガスが導入される。
第2測定室は、第1測定室を形成する層間とは異なる二つのセラミック層の層間に形成されており、第1測定室と少なくとも一部がセラミック層の積層方向に重なり合う。
【0018】
導入路は、第1測定室と第2測定室との間に配置されるセラミック層を積層方向に貫いており、第1測定室と第2測定室とを連通する。
第1ポンプセルは、第1測定室に隣接するセラミック層と、該セラミック層上に設けら
れ、第1測定室内に晒される第1内側電極と、第1内側電極と対をなす第1対電極とを備えている。この第1ポンプセルは、第1測定室内の被測定ガスに含まれる酸素をポンピングする。
【0019】
酸素濃度検知セルは、第1ポンプセルより被測定ガスの導入方向下流側に配置されている。この酸素濃度検知セルは、第1測定室に隣接するセラミック層と、該セラミック層上に設けられ、第1測定室内に晒される検知電極と、検知電極と対をなす基準電極とを備えている。この酸素濃度検知セルは、被測定ガス中の酸素濃度を測定する。
【0020】
第2ポンプセルは、酸素濃度検知セルより被測定ガスの導入方向下流側に配置されている。この第2ポンプセルは、第2測定室に隣接するセラミック層と、該セラミック層上に設けられ、第2測定室内に晒される第2内側電極と、第2内側電極が設けられたセラミック層の同一面上に設けられ、第2内側電極と対をなす第2対電極とを備えている。この第2ポンプセルは、第2測定室内における被測定ガス中の特定ガス濃度に応じた電流(第2ポンピング電流)が流れる。
【0021】
一方、制御部は、酸素濃度検知セルの内部抵抗に基づき、ガスセンサ素子の温度を制御する。
また、前記酸素濃度検知セルは、検知電極と基準電極との少なくとも一部が、セラミック層を介して対向しており、第2内側電極及び第2対電極のそれぞれの少なくとも一部は、ガスセンサ素子を積層方向に見た場合に、検知電極と基準電極との対向する対向領域の最外周に取り囲まれる特定領域に重なるように配置されている。更に、基準電極と第2対電極とは、基準ガスが導入される基準ガス導入部内に配置されている。
【0022】
このように、第1局面のガスセンサ制御装置では、(特定ガスの検出に用いられる)第2ポンプセルの第2内側電極少なくとも一部及び第2対電極の少なくとも一部は、ガスセンサ素子を積層方向に見た場合に、(ガスセンサの温度の制御に用いられる内部抵抗が検出される)酸素濃度検知セルの検知電極と基準電極との対向する対向領域の最外周に取り囲まれる特定領域に重なるように配置されているので、被測定ガス中の特定ガスの検出精度が高いという効果がある。
【0023】
つまり、第1局面のガスセンサ制御装置では、特定ガスを検出する第2内側電極及び第2対電極の配置された位置(以下ガス検出位置と称することもある)を、酸素濃度検知セルの内部抵抗を検出する位置(以下温度制御位置と称することもある)と重ねることで、ガス検出位置では、従来のようなガスセンサ素子の温度ばらつきの影響を受けにくい。
【0024】
すなわち、特定ガスの検出を行う場合には、温度制御位置にて検出された内部抵抗に基づくガスセンサ素子の温度を用いて、ガス検出位置にて特定ガス等の反応(特定ガスを検知する反応)が生じるとして、第2ポンプセルに流れる電流に基づいて特定ガスを検出するが、第1局面のガスセンサ制御装置では、温度制御位置とガス検出位置とが近接しているので、特定ガスを検出する際に温度ばらつきの影響を受けにくい。つまり、第2ポンピング電流のばらつきが生じにくいので、被測定ガス中の特定ガスの検出精度が高いという顕著な効果を奏する。
【0025】
特に、特定ガスの検出に用いられる第2内側電極と第2対電極との間に流れる第2ポンピング電流は、μAオーダーの微小な電流であることもあるので、わずかな温度ばらつきによる誤差でも、特定ガスの検出に与える影響は大きい。よって、上述した温度制御位置とガス検出位置の配置は重要である。
【0026】
また、第1局面のガスセンサ素子では、基準電極と第2対電極とは、互いに基準ガスが導入される基準ガス導入部内に配置されているので、その点からも特定ガスの検出精度が
高いという利点がある。
【0027】
つまり、酸素濃度の検知に用いられる基準電極と特定ガスの検出に用いられる第2対電極とは、共に、同じ基準ガス導入部内の基準ガス(即ち酸素濃度が同じガス)に接するので、その点からも、検出精度が高いという利点がある。
【0028】
ここで、「特定ガスの検出」とは、特定ガスの有無の検出又は特定ガスの濃度の検出を含むものである。
また、酸素濃度検知セルは、検知電極の全てと基準電極の全てとが対向していてもよいし、検知電極の一部と基準電極の一部とが対向していてもよい。さらに、第2内側電極の全てと第2対電極の全てとが、それぞれ特定領域に重なっていてもよいし、第2内側電極の一部と基準電極の一部とが、それぞれ特定領域に重なっていてもよい。
【0029】
(2)本発明の第2局面のガスセンサ制御装置では、ガスセンサ素子を積層方向に見た場合に、検知電極及び基準電極は、それぞれ、少なくとも導入路よりも被測定ガスの導入方向上流側及び被測定ガスの導入方向下流側のセラミック層上に、導入路を囲むように設けられていると共に、導入路は、特定領域と少なくとも一部が重なるように設けられていてもよい。
【0030】
第2局面のガスセンサ制御装置では、酸素濃度検知セルの検知電極及び基準電極の位置(温度制御位置)と、被測定ガスが導入される導入路と、第2ポンプセルの両電極が、近い位置に設定されていることにより、一層温度ばらつきなどの影響を受けにくく、被測定ガスの特定ガス中の検出精度が高いという効果がある。
【0031】
その上、導入路に導入される被測定ガスは、検知電極と接する位置(例えば導入路の開口部の周囲)などによって、第2測定室に導入される被測定ガス中に含まれる特定ガスの割合がばらつくことがある。それに対して、第2局面のガスセンサ制御装置では、両電極のうちの検知電極は、少なくとも導入路よりも被測定ガスの導入方向上流側及び被測定ガスの導入方向下流側のセラミック層上に、導入路を囲むように配置されているので、第2測定室に導入される被測定ガス中に含まれる特定ガスの割合のばらつきを抑制し、特定ガスの濃度を精度良く検出することができる。
【0032】
なお、各電極が導入路を囲む範囲としては、多い方が望ましいが、少なくとも前記導入路よりも被測定ガスの導入方向上流側(つまり第1ポンプセル側)及び被測定ガスの導入方向下流側を含むことが好適である(以下同様)。
【0033】
(3)本発明の第3局面のガスセンサの制御装置は、被測定ガスに含まれる特定ガスを検出するガスセンサ素子を有するガスセンサを備えたガスセンサ制御装置であって、前記ガスセンサ素子として、第1または第2局面のガスセンサ素子を備える。
【0034】
このように、上述のいずれかのガスセンサ素子を備えるガスセンサの制御装置は、特定ガスの検出精度が高いという効果がある。
【発明の効果】
【0035】
本発明のガスセンサ制御装置によれば、被測定ガス中の特定ガスの検出精度が高いという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】第1実施形態のNOxセンサを軸方向に沿って破断した状態を示す断面図である。
図2】第1実施形態のガスセンサ素子の外観を示す斜視図である。
図3】第1実施形態のガスセンサ素子を分解して示す斜視図である。
図4】第1実施形態のガスセンサ素子の一部を示す平面図である。
図5】第1実施形態のガスセンサ素子の導入路の近傍の構成を、Z軸方向に沿って破断し拡大して模式的に示す断面図である。
図6】第1実施形態のガスセンサ素子における酸素濃度検知セル及び第2ポンプセルの各電極の配置を、Z軸方向に見たように重ね合わせて示す平面図である。
図7】第1実施形態のガスセンサ素子をY軸方向に沿ってZ軸方向に破断し、その先端側における内部構造と制御部の構成とを模式的に示す説明図である。
図8】第1実施形態のガスセンサ素子の成形体の製造方法に関する説明図である。
図9】(a)第2実施形態のガスセンサ素子の導入路の近傍の構成を、Z軸方向に沿って破断し拡大して模式的に示す断面図、(b)はその酸素濃度検知セル及び第2ポンプセルの各電極の配置を、Z軸方向に見たように重ね合わせて示す平面図である。
図10】(a)第3実施形態のガスセンサ素子の導入路の近傍の構成を、Z軸方向に沿って破断し拡大して模式的に示す断面図、(b)はその酸素濃度検知セル及び第2ポンプセルの各電極の配置を、Z軸方向に見たように、重ね合わせて示す平面図である。
図11】第4実施形態のガスセンサ素子を分解して示す斜視図である。
図12】第4実施形態のガスセンサ素子の一部を示す平面図である。
図13】第4実施形態のガスセンサ素子の導入路の近傍の構成を、Z軸方向に沿って破断し拡大して模式的に示す断面図である。
図14】(a)は従来のガスセンサ素子の断面図、(b)はそのガスセンサ素子の長手方向における温度ばらつきを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
なお、以下に示す実施形態では、ガスセンサの一種であるNOxセンサを備えたガスセンサ制御装置を例に挙げる。具体的には、自動車や各種内燃機関における排気管に装着されるガスセンサを備えたガスセンサ制御装置であって、測定対象となる排気ガス中の特定ガス(窒素酸化物:NOx)を検出するガスセンサ素子(検出素子)が組み付けられて構成されるNOxセンサを備えたガスセンサ制御装置を例に挙げて説明する。
【0038】
[1.第1実施形態]
[1−1.NOxセンサの全体構成]
まず、第1実施形態のガスセンサ素子が使用されるNOxセンサの全体の構成について、図1に基づいて説明する。
【0039】
図1に示す様に、第1実施形態におけるNOxセンサ1は、排気管に固定するためのネジ部3が外表面に形成された筒状の主体金具5と、軸線O方向(NOxセンサ1の長手方向:図1の上下方向)に延びる板状形状のガスセンサ素子7と、ガスセンサ素子7の径方向周囲を取り囲むように配置される筒状のセラミックスリーブ9と、軸線O方向に貫通する貫通孔11の内壁面がガスセンサ素子7の後端部の周囲を取り囲む状態で配置される第1セパレータ13と、ガスセンサ素子7と第1セパレータ13との間に配置される6個(図1には2個のみ図示)の接続端子15、を主に備えている。
【0040】
ガスセンサ素子7は、後に詳述する様に、長手方向に伸びる直方体形状(板型形状)に形成されており、その先端側に、被測定ガスに含まれる特定ガス(ここではNOx)を検出する検知部17を備える。また、ガスセンサ素子7は、後端側(図1の上方:長手方向後端部)の外表面のうち表裏の位置関係となる第1主面21および第2主面23に、電極パッド25,26,27,28,29,30(詳細は、図2図3参照)が形成されている。
【0041】
接続端子15は、ガスセンサ素子7の電極パッド25,26,27,28,29,30にそれぞれ電気的に接続されるとともに、外部からNOxセンサ1の内部に配設されるリード線35にも電気的に接続されている。これにより、リード線35が接続される外部機器と電極パッド25,26,27,28,29,30との間に流れる電流の電流経路が形成される。
【0042】
主体金具5は、軸線O方向に貫通する貫通孔37を有し、貫通孔37の径方向内側に突出する棚部39を有する略筒状形状に構成されている。この主体金具5は、検知部17を貫通孔37の先端よりも先端側に配置し、電極パッド25,26,27,28,29,30を貫通孔37の後端よりも後端側に配置する状態で、貫通孔37に挿通されたガスセンサ素子7を保持するよう構成されている。
【0043】
また、主体金具5の貫通孔37の内部には、ガスセンサ素子7の径方向周囲を取り囲む状態で、環状形状のセラミックホルダ41、滑石リング43,45、及び上述のセラミックスリーブ9が、この順に先端側から後端側にかけて積層されている。
【0044】
このセラミックスリーブ9と主体金具5の後端部47との間には、加締パッキン49が配置され、一方、セラミックホルダ41と主体金具5の棚部39との間には、滑石リング43,45やセラミックホルダ41を保持するための金属ホルダ51が配置されている。なお、主体金具5の後端部47は、加締パッキン49を介して、セラミックスリーブ9を先端側に押し付けるように、加締められている。
【0045】
更に、主体金具5の先端部53の外周には、ガスセンサ素子7の突出部分を覆う金属製(例えば、ステンレスなど)の二重構造とされたプロテクタ55が溶接等によって取り付けられている。
【0046】
一方、主体金具5の後端側外周には、外筒57が固定されており、外筒57の後端側の開口部には、グロメット59が配置されている。このグロメット59には、各電極パッド25,26,27,28,29,30とそれぞれ電気的に接続される6本のリード線35(図1では2本が図示)が挿通されるリード線挿通孔61が形成されている。
【0047】
なお、第1セパレータ13の外周には、鍔部63が形成されており、鍔部63は、保持部材65を介して外筒57に固定されている。また、第1セパレータ13の後端側には、第1セパレータ13とグロメット59に狭持される第2セパレータ67が配置されており、接続端子15の後端側が第2セパレータ67内に挿入されている。
【0048】
[1−2.ガスセンサ素子の構成]
次に、ガスセンサ素子7の構成について、図2図6に基づいて説明する。
なお、図2において、長手方向がガスセンサの軸線O方向に沿う形態となる。また図2のZ軸方向は、長手方向に垂直な積層方向(以下平面視と称することもある)であり、X軸方向は、長手方向及び積層方向に垂直な幅方向である。また、図3図4において、左方向がガスセンサ素子7の先端側であり、右方向がガスセンサ素子7の後端側である。
【0049】
<ガスセンサ素子の全体構成>
図2に示す様に、ガスセンサ素子7は、長手方向(Y軸方向)に延びる長尺で、直方体形状の板材である。
【0050】
このガスセンサ素子7は、長手方向に伸びる板状の素子部71と、同じく長手方向に延びる板状のヒータ73とが、積層されて構成されている。また、ガスセンサ素子7は、そ
の先端側に、被測定ガスに含まれる特定ガスを検出する検知部17を備える。
【0051】
つまり、ガスセンサ素子7は、図3に示すように、積層方向(図3の上下方向)の一方の側(図3の上側)に配置されて、長手方向に伸びる板状の素子部71と、素子部71の反対側(裏側)に配置されて、同じく長手方向に延びる板状のヒータ73とを備える。
【0052】
素子部71は、後述するように、第1ポンプセル75と、酸素濃度検知セル77と、第2ポンプセル79とを備える。
<素子部及びヒータの構成>
素子部71は、第1絶縁層81、第1セラミック層83、第2絶縁層85、第2セラミック層87、第3絶縁層89、第3セラミック層91を、この順に積層した構造を有する。また、ヒータ73は、第4絶縁層93、第5絶縁層95をこの順に積層した構造を有する。
【0053】
また、第1〜第3セラミック層83,87,91は、ガスセンサ素子7の長手方向に延びる板状である。
第1セラミック層83と第2セラミック層87との間には、第1測定室97が形成されている。第1測定室97の先端側領域は、2つの拡散抵抗体99を介して外部に繋がっており、拡散抵抗体99を介して外部から外気である被測定ガス(排気ガス)がガスセンサ素子7の内部に導入される。第1測定室97は、その後端側領域において、第2セラミック層87に形成される導入路101を介して、第3絶縁層89に形成される第2測定室103に繋がっている。
【0054】
なお、導入路101の形状は、積層方向に見て(即ち積層方向と同じ方向で見た場合(平面視で))例えば円形である。つまり、導入路101は、円柱状の空間として形成されている。
【0055】
第4、第5絶縁層93,95の間には、タングステン等の導体によって形成された発熱抵抗体105が備えられている。発熱抵抗体105は、ヒータ73の一部として備えられている。
【0056】
ヒータ73は、外部から供給された電力によって発熱抵抗体105が発熱することで、ガスセンサ素子7(特に、素子部71)を所定の活性温度に昇温し、固体電解質体の酸素イオンの伝導性を高めて動作を安定化させるために用いられる。
【0057】
なお、前記第1〜第3セラミック層83、87、91は、それぞれ、酸素イオン伝導性を有する固体電解質である例えばジルコニアを主成分に用いて形成されている。また、第1〜第5絶縁層81、85、89、93、95は、電気絶縁材料である例えばアルミナを主成分に用いて形成されており、気体等の流体の透過(流通)を防止できる程度に密に形成されている。拡散抵抗体99は、アルミナ等の多孔質物質を用いて形成され、気体の流通が可能になっている。
【0058】
ここで、主成分とは「セラミック層中の主材料の含有量が50wt%以上であること」を指し、例えば、第1〜第3セラミック層83、87、91は、ジルコニアが50wt%以上含有されている。
【0059】
<各セルの構成>
図3及び図4に示すように、素子部71は、第1ポンプセル75と、酸素濃度検知セル77と、第2ポンプセル79とを有している。
【0060】
第1ポンプセル75は、固体電解質体からなる第1セラミック層83と、これを挟持するように配置された一対の矩形状の電極、即ち第1内側電極111及び第1対電極113とを備えている。第1内側電極111は、第1測定室97に面している。
【0061】
第1対電極113は、第1絶縁層81のうちの第1対電極113と対向する部分(開口部115)に埋め込まれた多孔質部117(例えば、アルミナ)により覆われている。多孔質部117は、ガス(例えば、酸素)が通過可能に構成されている。
【0062】
酸素濃度検知セル77は、固体電解質体からなる第2セラミック層87と、これを挟持するように配置された円環状の一対の電極、即ち検知電極119及び基準電極121とを備えている。また、第2セラミック層87には、検知電極119及び基準電極121の中心(平面視)に、第2セラミック層87を厚み方向に貫通する導入路101が設けられている。なお、導入路101は、平面視で円形である。
【0063】
第3絶縁層89のうち、基準電極121に接する部分には、第3絶縁層89の厚さ方向に貫通する空間部分としての基準酸素室123が形成されている。この基準酸素室123内には、第3セラミック層91側に多孔質部125(図7参照)が配置され、第2セラミック層87側は空間となっている。なお、基準酸素室123は、平面視で例えば1箇所が欠けた円環状(即ちC字状)に形成されている。
【0064】
また、第3絶縁層89のうち、基準酸素室123の中央(平面視)には、第3絶縁層89の厚さ方向に貫通する空間部分としての第2測定室103が形成されている。なお、第2測定室103は、平面視で円形である。
【0065】
なお、円環状の基準酸素室123と円形の第2測定室103とは、環状隔壁127を介して同心状に形成されており、環状隔壁127は、基準酸素室123を横断するようにして設けられた直線状隔壁129により、基準酸素室123の外周側と接続されている(図4(d)参照)。
【0066】
前記酸素濃度検知セル77については、予め定められた微弱な一定値の電流を流すことにより、酸素が酸素濃度検知セル77を介して第1測定室97から基準酸素室123に送り込まれる。そして、基準酸素室123の酸素濃度は、所定の濃度に維持される。これにより、基準酸素室123は、酸素濃度の基準として利用される。
【0067】
第2ポンプセル79は、固体電解質からなる第3セラミック層91と、第3セラミック層91のうち、第2測定室103に面した表面に配置された第2内側電極131と、基準酸素室123に面した表面に配置された第2対電極133とを備えている。
【0068】
このうち、第2内側電極131は、平面視で円形であり、導入路101と重なる位置(即ち導入路101の直下に:図5参照)配置されている。また、第2対電極133は、第2内側電極131の外周側を囲むように配置された、一部が欠けた円環状(即ちC字状:図4(c)参照)であり、第2対電極133の表面は、前記多孔質部125により覆われている(図7参照)。
【0069】
また、第1絶縁層81の後端側外表面には、3つの電極パッド25,26,27が形成されており、第5絶縁層95の後端側外表面にも、3つの電極パッド28,29,30が形成されている。
【0070】
なお、前記各電極111,113,119,121,131,133及び電極パッド25,26,27,28,29,30は、いずれも白金を主成分として形成されている。ま
た、各電極111,113,119,121,131,133は、電極反応を良好に維持するために、気体を内部に流通可能な程度の多孔質状に形成されている。すなわち、被測定ガスの気体(酸素やNOx等の気相)と電極(触媒相)と固体電解質(酸素イオン伝導相)とが接する三相界面を良好に形成する程度の多孔質状に形成されている。
【0071】
また、図3に示すように、各電極111,113,119,121,131,133および発熱抵抗体105は、配線ユニットL1,L2,L3,L4,L5,L6によって、対応する電極パッド25,26,27,28,29,30と電気的に接続されている。
【0072】
詳細には、第1電極パッド25は、第1配線ユニットL1によって第1対電極113と電気的に接続される。第2電極パッド26は、第2配線ユニットL2によって基準電極121と電気的に接続される。第3電極パッド27は、第3配線ユニットL3によって第1内側電極111、検知電極119、第2内側電極131に電気的に接続される。第4電極パッド30は、第4配線ユニットL4によって第2対電極133に電気的に接続される。
【0073】
第1ヒータ用電極パッド28は、第1ヒータ用配線ユニットL5によって発熱抵抗体105に電気的に接続される。第2ヒータ用電極パッド29は、第2ヒータ用配線ユニットL6によって発熱抵抗体105に電気的に接続される。
【0074】
そして、前記各配線ユニットL1,L2,L3,L4,L5,L6のうち、第1配線ユニットL1は、第1リード部L1aと第1スルーホール導体部L1bとを有する。第1スルーホール導体部L1bは、貫通孔H1によって形成される。第1スルーホール導体部L1bは、貫通孔H1の内表面に導体を形成することで作成される(なお、他のスルーホール導体部の導体の形成も同様である)。
【0075】
第2配線ユニットL2は、第2リード部L2aと、第2スルーホール導体部L2bとを有する。第2スルーホール導体部L2bは、各貫通孔H2,H3,H4,H5によって形成される。
【0076】
第3配線ユニットL3は、第3aリード部L3aと、第3bリード部L3bと、第3cリード部L3cと、第3スルーホール導体部L3dとを有する。第3スルーホール導体部L3dは、各貫通孔H6,H7,H8,H9,H10によって形成される。
【0077】
上記のように、第1内側電極111、検知電極119、第2内側電極131は、共通の第3電極パッド27に電気的に接続されている。
第4配線ユニットL4は、第4リード部L4aと、第4スルーホール導体部L4bとを有する。第4スルーホール導体部L4bは、各貫通孔H11,H12,H13によって形成される。
【0078】
第1ヒータ用配線ユニットL5は、第1ヒータ用リード部L5aと、第1ヒータ用スルーホール導体部L5bとを有する。第1ヒータ用スルーホール導体部L5bは、貫通孔H14によって形成される。
【0079】
第2ヒータ用配線ユニットL6は、第2ヒータ用リード部L6aと、第2ヒータ用スルーホール導体部L6bとを有する。第2ヒータ用スルーホール導体部L6bは、貫通孔H15によって形成される。
【0080】
なお、各配線ユニットL1〜L6は、白金を主成分とし、セラミック(例えばアルミナ)を含む材料から構成されている。
<導入路の周囲の構成>
次に、本実施形態の要部である導入路101の周囲における各電極119、121、131、133の配置について、図5及び図6に基づいて、詳細に説明する。
【0081】
図5及び図6に示すように、第2セラミック層87の上面には、導入路101を囲むように、円環状の検知電極119が配置されており、第2セラミック層87の下面には、導入路101を囲むように、円環状の基準電極121が配置されている。
【0082】
検知電極119の幅は、基準電極121の幅より大きいので、平面視で、基準電極121は検知電極119の範囲内にて、重なるように配置されている。つまり、基準電極121は検知電極119の投影領域内に配置され、所定の円環状の対向領域R1(即ち基準電極121と一致する領域)にて重なっている。
【0083】
また、第3絶縁層89には、導入路101の直下(図5の下方)に、円形の第2測定室103が設けられており、その外周側には、基準酸素室123がC字状(図4(c)参照)に設けられている。
【0084】
更に、第3セラミック層91の上面には、導入路101の直下に、円形の第2内側電極131が、第2測定室103内に配置されると共に、第2内側電極131の外周側には、C字状の第2対電極133が、基準酸素室123内に配置されている。
【0085】
特に、第1実施形態では、平面視で、基準電極121の円環状の外周(後述する最外周)GSより内側の範囲(特定領域R2:図6の点線で囲まれる範囲内)に、第2内側電極131及び第2対電極133の全体が配置されている。
【0086】
つまり、第1実施形態では、第2内側電極131の少なくとも一部及び第2対電極133の少なくとも一部が、検知電極119と基準電極121との対向する対向領域R1の最外周(ここでは、基準電極121の外周GSと同じ)に取り囲まれる特定領域R2に重なるように配置されている。また、基準電極121と第2対電極133とは、基準ガスが導入される基準酸素室123内に配置されている。
【0087】
更に、検知電極119及び基準電極121は、それぞれ導入路101の周囲に(即ち導入路の外周側を全て囲むよう)設けられていると共に、導入路101は、特定領域R2と少なくとも一部が重なるように設けられている。なお、導入路101の直下に(即ち導入路101の軸方向に)第2内側電極131が配置されている。
【0088】
[1−3.ガスセンサ制御装置の構成]
次に、ガスセンサ制御装置の全体構成について、図7に基づいて説明する。
図7に示すように、第1実施形態のガスセンサ制御装置141は、上述したガスセンサ素子7と、ガスセンサ素子7の動作を制御する制御部143とを備えている。
【0089】
制御部143は、マイクロコンピュータ145、電気回路部147等を有している。
マイクロコンピュータ145は、各種演算を実行するCPU149と、演算結果等が記憶されるRAM151と、CPU149が実行するプログラム等を記憶するROM153とを備えている。また、A/Dコンバータ155と、そのA/Dコンバータ155を介して電気回路部147と接続されると共に、電子制御装置(以下、ECUと記載する)157と通信するための信号入出力部159と、図示しないタイマクロック等を備えている。
【0090】
電気回路部147は、基準電圧比較回路161、Ip1ドライブ回路163、Vs検出回路165、Icp供給回路167、Rpvs検出回路169、Ip2検出回路171、Vp2印加回路173、ヒータ駆動回路175から構成され、マイクロコンピュータ14
5による制御を受けて、ガスセンサ素子7を用いて排気ガス中のNOx濃度の検出を行う。
【0091】
尚、第1ポンプセル75の第1測定室97側の第1内側電極111、酸素濃度検知セル77の第1測定室97側の検知電極119、第2ポンプセル79の第2測定室103側の第2内側電極131は、基準電位に接続されている。
【0092】
Icp供給回路167は、酸素濃度検知セル77の検知電極119と基準電極121との間に電流Icpを供給し、第1測定室97内から基準酸素室123内への酸素の汲み出しを行う。
【0093】
Vs検出回路165は、検知電極119と基準電極121との間の電圧Vsを検出するための回路であり、その検出結果を基準電圧比較回路161に対し出力している。
基準電圧比較回路161は、Vs検出回路165により検出された検知電極119と基準電極121との間の電圧Vsを、基準となる基準電圧(例えば425mV)と比較するための回路であり、その比較結果をIp1ドライブ回路163に対し出力している。
【0094】
Ip1ドライブ回路163は、第1ポンプセル75の第1内側電極111と第1対電極113との間に電流(第1ポンピング電流)Ip1を供給するための回路である。電流Ip1の大きさや向きは、基準電圧比較回路161による検知電極119と基準電極121との間の電圧の比較結果に基づいて、検知電極119と基準電極121との間の電圧が予め設定された基準電圧と略一致するように調整されている。
【0095】
その結果、第1ポンプセル75により、第1測定室97内からガスセンサ素子7外部への酸素の汲み出し、或いはガスセンサ素子7外部から第1測定室97内への酸素の汲み入れが行われる。換言すると、第1ポンプセル75は、検知電極119と基準電極121との間の電圧が一定値(基準電圧の値)に保たれるように、第1測定室97内における酸素濃度の調整を行っている。
【0096】
また、Vp2印加回路173は、第2ポンプセル79の第2内側電極131と第2対電極133との間へ電圧Vp2(例えば450mV)を印加するための回路であり、これにより、第2測定室103内から基準酸素室123への酸素の汲み出しが行われる。
【0097】
Ip2検出回路171は、第2内側電極131から第2対電極133に流れた電流(第2ポンピング電流)Ip2の値の検出を行う回路である。
Rpvs検出回路169は、前記酸素濃度検知セル77の検知電極119と基準電極121と間に瞬間的に電流Irを供給し、供給された電流Irによって発生した検知電極119と基準電極121と間の電圧Vrを検出する。この検出された電圧Vrはマイクロコンピュータ145に出力される。
【0098】
なお、マイクロコンピュータでは、前記電流Irと電圧Vrとに基づいて、酸素濃度検知セル77の内部抵抗Rpvs(パルス抵抗)を算出する。この内部抵抗Rpvsは、酸素濃度検知セル77の温度と対応しているので、周知のように、内部抵抗Rpvsから、酸素濃度検知セル77の温度を求めることができる。
【0099】
ヒータ駆動回路175は、CPU149により制御され、ヒータ95の発熱抵抗体105へ電圧を印加し、第1ポンプセル75、酸素濃度検知セル77、第2ポンプセル79(即ち各セル75、77、79の固体電解質)の加熱を行うと共に、それらの固体電解質の温度を所定の温度に保たせるための回路である。
【0100】
[1−4.ガスセンサ素子の動作]
次に、ガスセンサ素子7の動作の一例について説明する。
まず、エンジンの始動によって制御部143が起動すると、制御部143は、ヒータ73に電力を供給する。ヒータ73は、第1ポンプセル75、酸素濃度検知セル77、第2ポンプセル79を活性化温度まで加熱する。
【0101】
ここで、ヒータ73の制御について説明する。
上述したように、マイクロコンピュータ149では、酸素濃度検知セル77の内部抵抗Rpvsから求めた酸素濃度検知セル77の温度に基づいて、ヒータ駆動回路175の動作を制御して、第1ポンプセル75、酸素濃度検知セル77、第2ポンプセル79の加熱を行って、各セル75、77、79の温度を所定の温度に制御する。
【0102】
つまり、ヒータ駆動回路175では、各セル75、77、79の固体電解質(本第1実施形態では、具体的に酸素濃度検知セル77の固体電解質)が狙いとする温度になるように、発熱抵抗体105をPWM通電制御して当該発熱抵抗体105に電圧を印加する制御を行う。
【0103】
そして、上述したヒータ73の制御によって、各セル75、77、79が活性化温度まで加熱されると、制御部143は、第1ポンプセル75に電流(第1ポンピング電流)Ip1を流す。これにより、第1ポンプセル75は、固体電解質を介して第1内側電極111と第1対電極113との間で酸素を移動させることで、第1測定室97に流入した被測定ガス(排気ガス)における酸素の汲み入れおよび汲み出しを行う。
【0104】
制御部143は、酸素濃度検知セル77の電極間電圧(端子間電圧)が一定電圧V1(例えば425mV)になるように、第1ポンプセル75に通電する第1ポンピング電流Ip1を制御する。酸素濃度検知セル77の電圧は、基準酸素室123の酸素濃度を基準として、検知電極119における酸素濃度に応じた値となる。この制御によって、第1測定室97の内部の酸素濃度は、NOxが分解しない程度に調整される。
【0105】
第1測定室97にて酸素濃度が調整された被測定ガスは、酸素濃度検知セル77の導入路101を介して、第2測定室103に向かってさらに流れる。
制御部143は、第2ポンプセル79に電極間電圧(端子間電圧)を印加する。この電圧は、被測定ガス中のNOxガスが酸素と窒素ガスに分解する程度の一定電圧に設定されている(酸素濃度検知セル77の制御電圧の値より高い電圧、例えば450mV)。これにより、被測定ガス中のNOxが、窒素と酸素に分解される。
【0106】
制御部143は、NOxの分解により生じた酸素を第2測定室103から汲み出すように、第2ポンプセル79に電流(第2ポンピング電流)Ip2が流れる。第2ポンピング電流Ip2とNOx濃度の間には比例関係があるので、第2ポンピング電流Ip2の電流値を検出することによって被測定ガス中のNOx濃度を検出することができる。
【0107】
なお、ガスセンサ素子7は、接続端子15およびリード線35を介して、外部機器(EUC157)に接続される。制御部143は、ヒータ73に発熱用の電力を供給するとともに、素子部71の各セル(第1ポンプセル75,酸素濃度検知セル77,第2ポンプセル79)との間で信号を送受信することによって、ガスセンサ素子7を制御する。
【0108】
[1−5.ガスセンサの製造方法]
次に、第1実施形態のNOxセンサ1の製造方法について、前記図3及び図8を用いて説明する。
【0109】
ガスセンサ素子7を製造する場合、まず、公知のガスセンサ素子7の材料を作製する。
具体的には、素子部71の各セル75、77、79の固体電解質体となる未焼成固体電解質シート、素子部71の第1絶縁層81となる未焼成絶縁シート、素子部71の第2、第3絶縁層85、89となる未焼成絶縁部(スクリーン印刷により形成される未焼成絶縁部)の材料、ヒータ73の第4、第5絶縁層93、95となる未焼成絶縁シートなどを作製する。
【0110】
これらのうち、例えば、未焼成固体電解質シートを形成する場合、まず、ジルコニアを主体とするセラミック粉末に対して、アルミナ粉末やブチラール樹脂などを加えて、さらに混合溶媒(トルエン及びメチルエチルケトン)を混合して、スラリーを生成する。そして、このスラリーをドクターブレード法によりシート状とし、混合溶媒を揮発させることで未焼成固体電解質シートが作製される。
【0111】
また、未焼成絶縁シートを形成する場合、まず、アルミナを主体とするセラミック粉末に対して、ブチラール樹脂とジブチルフタレートとを加えて、更に混合溶媒(トルエン及びメチルエチルケトン)を混合して、スラリーを生成する。そして、このスラリーをドクターブレード法によりシート状とし、混合溶媒を揮発させることで未焼成絶縁シートが作製される。なお、未焼成絶縁部の材料として、未焼成絶縁シートを形成する材料と同様なスラリーを作製する。
【0112】
さらに、焼成後に、拡散抵抗体99、多孔質部117、多孔質部125になる未焼成の多孔質部を形成する場合、まず、アルミナ粉末100質量%、加熱焼失材(例えば、カーボンなど)及び可塑剤を湿式混合により分散した多孔質用のスラリーを生成する。可塑剤はブチラール樹脂及びDBPを有する。
【0113】
そして、これらのシートや材料を用いて、従来と同様に、例えば下記の手順で、焼成後にガスセンサ素子7となる未圧着積層体を作製する。
例えば、図3の下側の層から順に積層する場合には、まず、第5絶縁層95となる未焼成絶縁シートを配置し、その上面に、発熱抵抗体105となる白金ペーストをスクリーン印刷してヒータパターンを形成する。
【0114】
次に、第5絶縁層95となる未焼成絶縁シートの上面に、ヒータパターンを覆うように、第4絶縁層93となる未焼成絶縁シートを積層する。
次に、第4絶縁層93となる未焼成絶縁シートの上面に、第3セラミック層91となる未焼成固体電解質シートを積層する。
【0115】
次に、第3セラミック層91となる未焼成固体電解質シートの上面に、白金のメタライズインクを用いたスクリーン印刷によって、第2内側電極131及び第2対電極133となる電極パターンを形成する。また、白金にアルミナを加えたペーストを用いたスクリーン印刷によって、第3cリード部L3c及び第4リード部L4aとなるリードパターンを形成する。
【0116】
次に、第3セラミック層91となる未焼成固体電解質シートの上面に、未焼成絶縁部のスラリーを用いてスクリーン印刷して、第3絶縁層89となる未焼成絶縁部を形成する。この未焼成絶縁部の基準酸素室123内には、多孔質部125となる多孔質用のスラリーを充填し、その上に、カーボンペーストを充填する。
【0117】
次に、第3絶縁層89となる未焼成絶縁部の上面に、第2セラミック層87となる未焼成固体電解質シートを積層する。この未焼成固体電解質シートには、予め、導入路101となる貫通孔を開けておく。また、未焼成固体電解質シートの上面及び下面に、予め、基
準電極121及び検知電極119となる電極パターンを前記と同様に形成し、第2リード部L2a及び第3bリード部L3bとなるリードパターンを前記と同様に形成する。
【0118】
次に、第2セラミック層87となる未焼成固体電解質シートの上面に、未焼成絶縁部のスラリーを用いてスクリーン印刷して、第2絶縁層85となる未焼成絶縁部を形成する。
なお、この未焼成絶縁部のうち、拡散抵抗体99となる開口には、前記多孔質用のスラリーをスクリーン印刷する。また、第1測定室97となる開口には、カーボンペーストをスクリーン印刷する。
【0119】
次に、第2絶縁層85となる未焼成絶縁部の上面に、第1セラミック層83となる未焼成固体電解質シートを積層する。この未焼成固体電解質シートの上面及び下面には、予め、第1内側電極111及び第1対電極113となる電極パターンを前記と同様に形成し、第1リード部L1a及び第3aリード部L3aとなるリードパターンを前記と同様に形成する。
【0120】
次に、第1セラミック層83となる未焼成固体電解質シートの上面に、第1絶縁層81となる未焼成絶縁シートを積層する。この未焼成絶縁シートには、予め、開口部115となる貫通孔を空けおく。そして、この貫通孔に、多孔質部117となる多孔質用のスラリーをスクリーン印刷する。
【0121】
このようにして未圧着積層体が形成される。なお、この未圧着積層体には、電極パッド25,26,27,28,29,30となる未焼成電極パッドなどが形成されている。
そして、この未圧着積層体を1MPaで加圧することにより、図8に示す様な圧着された成形体181を得る。
【0122】
そして、加圧により得られた成形体181を、所定の大きさで切断することにより、ガスセンサ素子7と大きさが同等の複数(例えば10個)の未焼成積層体を得る。
その後、この未焼成積層体を樹脂抜きし、さらに焼成温度1500℃にて、1時間で本焼成して、図2に示す様なガスセンサ素子7を得る。
【0123】
このようにしてガスセンサ素子7を得た後、ガスセンサ素子7を主体金具5に組み付ける組付工程を行う。
即ち、この工程では、上記製造方法で作製されたガスセンサ素子7を金属ホルダ51に挿入し、さらにガスセンサ素子7をセラミックホルダ41、滑石リング43で固定し、組み立て体を作製する。その後、この組み立て体を主体金具5に固定し、ガスセンサ素子7の軸線O方向後端部側を滑石リング45、セラミックスリーブ9に挿通させつつ、これらを主体金具5に挿入する。
【0124】
そして、主体金具5の後端部47にてセラミックスリーブ9を加締め、下部組立体を作製する。なお、下部組立体には、あらかじめプロテクタ55が取付けられている。
一方、外筒57、セパレータ13、グロメット61などを組みつけ、上部組立体を作製する。そして、下部組立体と上部組立体とを接合し、NOxセンサ1を得る。
【0125】
[1−6.効果]
(1)第1実施形態のガスセンサ制御装置141では、NOxの検出に用いられる第2ポンプセル79の第2内側電極131及び第2対電極133のそれぞれの少なくとも一部は、ガスセンサ素子7を積層方向に見た場合に、酸素濃度検知セル77の検知電極119と基準電極121との対向する対向領域R1の最外周SGに取り囲まれる特定領域R2に重なるように配置されているので、排気ガス中のNOxの検出精度が高いという効果がある。
【0126】
つまり、NOxを検出する第2ポンプセル79の第2内側電極131及び第2対電極133の配置された位置(ガス検出位置)を、酸素濃度検知セル77の内部抵抗を検出する位置(温度制御位置)と重ねることで、ガス検出位置では、ガスセンサ素子7の長手方向における温度ばらつきの影響を受けにくい。
【0127】
すなわち、温度制御位置とガス検出位置とが近接している場合には、NOx濃度を検出する際に、第2ポンピング電流Ip2が温度ばらつきの影響を受けにくいので、NOxの検出精度が高いという顕著な効果を奏する。
【0128】
また、第1実施形態では、基準電極121と第2対電極133とは、互いに同じ基準酸素室123内に配置されているので、基準ガスが同じであり、その点からもNOxの検出精度が高いという利点がある。
【0129】
更に、導入路101の直下に、第2測定電極131が配置されているので、導入路101から導入された被測定ガスが第2測定電極に接触し易く、NOxの検出精度が高いという効果がある。
【0130】
(2)また、第1実施形態では、酸素濃度検知セル77の検知電極119及び基準電極121の位置と、導入路101と、第2ポンプセル79とが、近い位置(即ち積層方向に重なるような位置)に設定されているので、NOxの検出精度が高いという効果がある。
【0131】
その上、導入路101に導入される被測定ガスは、検知電極119と接する位置(例えば導入路101の開口部の周囲)などによって、第2測定室103に導入される被測定ガス中に含まれるNOxの割合がばらつくことがある。それに対して、第1実施形態では、検知電極119及び基準電極は、少なくとも被測定ガスの導入方向上流側及び被測定ガスの導入方向下流側の第2セラミック層87上に、導入路101を囲むように配置されているので、第2測定室103に導入される被測定ガス中に含まれるNOxの割合のばらつきを抑制し、NOxの濃度を精度良く検出することできる。
【0132】
[1−7.特許請求の範囲との対応関係]
ここで、特許請求の範囲と第1実施形態とにおける文言の対応関係について説明する。
NOxセンサ1、ガスセンサ素子7、第1ポンプセル75、酸素濃度検知セル77、第2ポンプセル79が、それぞれ、ガスセンサ、ガスセンサ素子、第1ポンプセル、酸素濃度検知セル、第2ポンプセルの一例に相当する。
【0133】
また、第1測定室97、導入路101、第2測定室103が、それぞれ、第1測定室、導入路、第2測定室の一例に相当する。
また、セラミック層83,87,91がセラミック層の一例に相当し、第1内側電極111、第1対電極113、検知電極119、基準電極121、基準酸素室123、第2内側電極131、第2対電極133が、それぞれ、第1内側電極、第1対電極、検知電極、基準電極、基準ガス導入部、第2内側電極、第2対電極の一例に相当する。
【0134】
[2.第2実施形態]
次に、第2実施形態のガスセンサ制御装置について説明するが、前記第1実施形態と同様な内容の説明は省略する。なお、第1実施形態と同様な構成の番号については、第1実施形態と同様な番号を使用する。
【0135】
第2実施形態のガスセンサ制御装置では、図9(a)に示すように、第1実施形態と同様に、上側(図9(a)の上側)より、酸素濃度検知セル77の第2セラミック層87、
第3絶縁層89、第2ポンプセル79の第3セラミック層91などが配置されている。
【0136】
また、第2セラミック層87の上面に、円環状の検知電極119が配置され、第2セラミック層87の下面に、同心状に円環状の基準電極121が配置されている。さらに、第3セラミック層91の上面に、円形の第2内側電極131及びC字状の第2対電極133が配置されている。なお、各電極119、121、131、133の形状は平面視のものである(以下同様)。
【0137】
なお、第2内側電極131は第2測定室103内に配置され、基準電極121及び第2対電極133は基準酸素室123内に配置されている。
第2実施形態においても、基準電極121は検知電極119の投影領域内に配置されており、基準電極121と検知電極119とは、平面視で所定の円環状の対向領域R1(即ち基準電極121と一致する領域)にて重なっている。また、導入路101の直下に、第2内側電極131が配置されている。
【0138】
更に、平面視で、基準電極121の外周(従って前記最外周)GSより内側の範囲(特定領域R2:図9(b)の点線で囲まれる範囲内)に、第2内側電極131及び第2対電極133が配置されている。
【0139】
第2実施形態では、平面視で、第2対電極133の外径が基準電極121の外径より大きいので、基準電極121の外周GSが、第2対電極133の内周と外周との間に位置している。
【0140】
第2実施形態においても、第1実施形態と同様な効果を奏する。
[3.第3実施形態]
次に、第3実施形態のガスセンサ制御装置について説明するが、前記第1実施形態と同様な内容の説明は省略する。なお、第1実施形態と同様な構成の番号については、第1実施形態と同様な番号を使用する。
【0141】
第3実施形態のガスセンサ制御装置では、図10(a)に示すように、第1実施形態と同様に、上側(図10(a)の上側)より、酸素濃度検知セル77の第2セラミック層87、第3絶縁層89、第2ポンプセル79の第3セラミック層91などが配置されている。
【0142】
また、第2セラミック層87の上面に、円環状の検知電極119が配置され、第2セラミック層87の下面に、同心状に円環状の基準電極121が配置されている。第3セラミック層91の上面に、円形の第2内側電極131及びC字状の第2対電極133が配置されている。
【0143】
なお、第2内側電極131は第2測定室103内に配置され、基準電極121及び第2対電極133は基準酸素室123内に配置されている。
第3実施形態においては、平面視で、基準電極121と検知電極119とは、所定の環状の対向領域R1にて重なっている。また、導入路101の直下に、第2内側電極131が配置されている。
【0144】
更に、平面視で、検知電極119の外周(従って前記最外周)GSより内側の範囲(特定領域R2:図10(b)の点線で囲まれる範囲内)に、第2内側電極131及び第2対電極133の少なくとも一部が配置されている。
【0145】
なお、第3実施形態では、平面視で、基準電極121の外径が検知電極119の外径よ
り大きいので、検知電極119の外周GSが基準電極121の内周と外周との間に位置している。
【0146】
第3実施形態においても、第1実施形態と同様な効果を奏する。
[4.第4実施形態]
次に、第4実施形態のガスセンサ制御装置について説明するが、前記第1実施形態と同様な内容の説明は省略する。なお、第1実施形態と同様な構成の番号については、第1実施形態と同様な番号を使用する。
【0147】
第4実施形態では、検知電極、基準電極、第2内側電極、第2対電極や、その近傍の構成が、第1実施形態と大きく異なっている。
<ガスセンサ素子の構成>
まず、第4実施形態のガスセンサ制御装置のうち、ガスセンサ素子7の構成について、図11及び図12に基づいて説明する。なお、ガスセンサ素子7以外は、第1実施形態と同様である。
【0148】
第4実施形態のガスセンサ素子7は、素子部71とヒータ73とを備えており、素子部71は、第1ポンプセル75と酸素濃度検知セル77と第2ポンプセル79とを備えている。
【0149】
このうち、第1ポンプセル75は、固体電解質体からなる第1セラミック層83の両側に、第1内側電極111と第1対電極113とを備えている。なお、第1ポンプセル75の上面側には、多孔質部117を有する第1絶縁層81を備えており、下面側には、第1測定室97を有する第2絶縁層85を備えている。
【0150】
酸素濃度検知セル77は、導入路101を有し固体電解質体からなる第2セラミック層87の両側に、検知電極119と基準電極121とを備えている。
第2ポンプセル79は、固体電解質体からなる第3セラミック層91の上面に、第2内側電極131と第2対電極133とを備えている。
【0151】
酸素濃度検知セル77と第2ポンプセル79との間には、上層89aと下層89bとからなる第3絶縁層89が配置されている。
詳しくは、図12に示すように、上層89aには、基準酸素室123の一部(図13の上部)を構成する円形の貫通孔123aが形成され、下層89bには、基準酸素室123の一部(図13の下部)を構成する円形の貫通孔123bが形成されている。
【0152】
また、上層89aには、第2測定室103の一部(図13の上部)を構成する矩形状の貫通孔103aが形成され、下層89bには、第2測定室103の一部(図13の下部)を構成する矩形状の貫通孔103bが形成されている。なお、下層89bの貫通孔103bは、上層89aの貫通孔103aよりも、先端側に長く延びるように構成されている。
【0153】
なお、ヒータ73は、第4絶縁層93と第5絶縁層95との間に、発熱抵抗体105を備えている。
<導入路の周囲の構成>
次に、第4実施形態の要部である導入路101の周囲の構成について、図12及び図13に基づいて、詳細に説明する。
【0154】
図12及び図13に示すように、酸素濃度検知セル77の検知電極119は矩形状であり、基準電極121は、矩形状の1箇所の角部が凹んだ形状である。
また、検知電極119と基準電極121とのガスセンサ素子7の長手方向(図12、図
13の左右方向)における寸法は同じであり、検知電極119と基準電極121との幅方向(図12の上下方向)における寸法は、検知電極119の方が基準電極121より長く設定されている。
【0155】
更に、検知電極119と基準電極121とは、平面視で、検知電極119の投影領域内に基準電極121が含まれているように配置されている。なお、図13では、基準電極121の外周(従って前記最外周)GSを点線で示してある。
【0156】
また、第2内側電極131と第2対電極133とは矩形状であり、ガスセンサ素子7の後端側(図13の右側)より順番に、幅方向に沿って平行に配置されている。
なお、平面視で、第2内側電極131は、第2測定室103の貫通孔103bの範囲内に形成されており、第2対電極133は、基準酸素室123全体を含むように形成されている。
【0157】
つまり、第4実施形態においては、平面視で、基準電極121と検知電極119とは、所定の対向領域R1(即ち基準電極121と同じ領域)にて重なっている。また、導入路101の直下に、第2内側電極131の一部が配置されている。
【0158】
更に、平面視で、基準電極121の外周GSより内側の範囲(特定領域R2:図12の点線で囲まれる範囲内)に、第2内側電極131の一部と第2対電極133の全体が配置されている。
【0159】
従って、ここでは、前記対向領域R1と前記特定領域R2とは同じ範囲となっている。
第4実施形態においても、実施例1と同様な効果を奏する。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、様々な態様にて実施することが可能である。
【0160】
(1)例えば、導入路の平面形状としては、円形が挙げられるが、それ以外の多角形や楕円形等の他の形状であってもよい。
(2)検知電極及び基準電極の平面形状としては、円環状が挙げられるが、それ以外の各種の環状の形状であってもよい。また、環状でなくてもよい。
【0161】
(3)第2内側電極の平面形状としては、円形が挙げられるが、それ以外の多角形や楕円形等の他の形状であってもよい。
(4)第2対電極の平面形状としては、一部が切り欠かれた円環状(例えばC字状)が挙げられるが、それ以外の各種の環状などの形状であってもよい。また、環状でなくてもよい。
【0162】
(5)基準酸素室の平面形状としては、一部が切り欠かれた円環状(例えばC字状)が挙げられるが、それ以外の多角形や楕円形等などの他の環状の形状であってもよい。
また、基準酸素室としては、周囲が密閉された空間を採用できるが、例えば大気と連通するように構成してもよい。
【0163】
(6)第1ポンプセル75は、上記各実施形態では、第1セラミック層83を用いて形成されていたが、例えば、第2セラミック層87を用いて形成してもよい。具体的には、第2セラミック層87の酸素濃度検知セル77よりも先端側に、第1ポンプセル75を配置してもよい。つまり、この場合には、第2セラミック層87は、第1ポンプセル75のセラミック層と酸素濃度検知セル77のセラミック層とを兼ねる。
【0164】
(7)上記実施形態では、ガスセンサとしてNOxセンサを例に挙げたが、本発明は、例えばアンモニアセンサ等の他のガスセンサにも適用することができる。
【符号の説明】
【0165】
1…ガスセンサ、7…ガスセンサ素子、75…第1ポンプセル、77…酸素濃度検知セル、79…第2ポンプセル、83、87、91…セラミック層、97…第1測定室、101…導入路、103…第2測定室、111…第1内側電極、113…第1対電極、119…検知電極、121…基準電極、123…基準酸素室、131…第2内側電極、133…第2対電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14