特許第6363506号(P6363506)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6363506
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】シクロスポリンA2型の懸濁剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/13 20060101AFI20180712BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20180712BHJP
   A61P 27/14 20060101ALI20180712BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20180712BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20180712BHJP
   A61K 47/14 20060101ALI20180712BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20180712BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20180712BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20180712BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20180712BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
   A61K38/13ZNA
   A61P27/02
   A61P27/14
   A61K9/10
   A61K47/10
   A61K47/14
   A61K47/02
   A61K47/26
   A61K47/34
   A61K47/38
   A61K47/32
【請求項の数】16
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-542400(P2014-542400)
(86)(22)【出願日】2012年11月14日
(65)【公表番号】特表2014-533302(P2014-533302A)
(43)【公表日】2014年12月11日
(86)【国際出願番号】US2012065011
(87)【国際公開番号】WO2013074625
(87)【国際公開日】20130523
【審査請求日】2015年11月16日
(31)【優先権主張番号】61/559,866
(32)【優先日】2011年11月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591018268
【氏名又は名称】アラーガン、インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ALLERGAN,INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100170944
【弁理士】
【氏名又は名称】岩澤 朋之
(72)【発明者】
【氏名】アヌラダ・ブイ・ゴア
(72)【発明者】
【氏名】プレム・スワループ・モハンティ
(72)【発明者】
【氏名】イー・クイン・ファーネス
【審査官】 上條 肇
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−211598(JP,A)
【文献】 特表2004−529934(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/141586(WO,A2)
【文献】 国際公開第2011/049958(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/13
A61K 9/06 − 9/133
A61K 47/00 − 47/69
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シクロスポリンA2型と、
ビヒクルと
を含む製剤であって、
前記シクロスポリンA2型は、(2θ):7.5、8.8、10.2、11.3、12.7、13.8、14.5、15.6および17.5の主ピークを有するX線粉末回折パターンを有する、前記製剤。
【請求項2】
シクロスポリンA2型と、
ビヒクルと
を含む製剤であって、
前記シクロスポリンA2型は、以下:
空間群:P2111(No.19)
格子パラメータ:a=12.6390Å、b=19.7582Å、c=29.568Å セルの含量:Z=4
を満たす、前記製剤。
【請求項3】
前記ビヒクルが、少なくとも1つの界面活性剤および少なくとも1つの安定剤を含む、請求項1または2に記載の製剤。
【請求項4】
シクロスポリンA2型が、約0.01〜約10%の濃度で存在する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項5】
前記ビヒクルが、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート、ポリエチレングリコール660ヒドロキシステアレート、ポリオキシエチレン(40)ステアレート、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、およびグリコール酸ナトリウムからなる群からそれぞれ選択される、1、2、3、4、5、または6つの界面活性剤を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項6】
前記ビヒクルが、約0.1〜約5%(w/v)の濃度のポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート、約0.1〜約5%(w/v)の濃度のポリエチレングリコール660ヒドロキシステアレート、約0.1〜約5%(w/v)の濃度のポリオキシエチレン(40)ステアレート約0.1〜約5%(w/v)の濃度のポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール、約0.1〜約5%(w/v)の濃度のポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、および約0.1〜約5%(w/v)のグリコール酸ナトリウムからなる群からそれぞれ選択される、1、2、3、4、5、または6つの界面活性剤を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項7】
前記ビヒクルが、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、およびカルボキシメチルセルロースからなる群からそれぞれ選択される、1、2、3、または4つの安定剤を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項8】
前記ビヒクルが、約0.1〜約5%(w/v)の濃度のヒドロキシプロピルセルロース、約0.1〜約5%(w/v)の濃度のヒドロキシプロピルメチルセルロース、約0.1〜約5%(w/v)の濃度のヒドロキシエチルセルロース、約0.1〜約5%(w/v)の濃度のポリビニルピロリドン、および約0.1〜約5%(w/v)の濃度のカルボキシメチルセルロースからなる群からそれぞれ選択される、1、2、3、または4つの安定剤を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項9】
前記ビヒクルが、さらに、グリセリン、マンニトール、アクリル酸およびC10−C30アクリル酸アルキルの架橋コポリマー、クエン酸ナトリウム二水和物、塩化カリウム、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム十水和物、並びに水から選択される、1、2、3、4、5、6、7、またはの成分を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項10】
前記ビヒクルが、さらに、約1.0〜約2.2%の濃度のグリセリン、約0.5%の濃度のマンニトール、約0.01〜約0.1%の濃度のアクリル酸およびC10−C30アクリル酸アルキルの架橋コポリマー、約0.4%の濃度のクエン酸ナトリウム二水和物、約0.14%の濃度の塩化カリウム、約0.25%の濃度のホウ酸、約0.41%の濃度のホウ酸ナトリウム十水和物、並びに水から選択される、1、2、3、4、5、6、7、またはの成分を含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項11】
シクロスポリンの製剤を調製する方法であって、
請求項1または2で定義されるシクロスポリンA2型をビヒクルと混合して懸濁剤を形成する工程、および
前記懸濁剤を砕粉する工程
を含む、方法。
【請求項12】
前記懸濁剤を、約10分〜約120分間砕粉する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記懸濁剤を、約60分間砕粉する、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
シクロスポリンA2型が、平均粒径(d90)が約10μm未満である粒子である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項15】
前記粒子の平均粒径が、約1μm未満である、請求項14に記載の製剤。
【請求項16】
ドライアイ、眼瞼炎、マイボーム腺疾患、角膜知覚障害、アレルギー性結膜炎、アトピー性角結膜炎、春季カタル、および翼状片から選択される状態を治療するための、請求項1〜10、14、および15のいずれか1項に記載の製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2011年11月15日出願の米国仮特許出願第61/559,866号の優先権を主張し、この出願の内容全体は、参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
本発明は、ナノテクノロジーおよび薬剤配合技術に関する。
【0003】
シクロスポリンAは、ドライアイ疾患を治療するために使用される薬剤であるRestasis(登録商標)の活性成分である。シクロスポリンAは、水に溶けにくく、現在は、油中に薬剤を溶解させてエマルジョンを形成するか、または薬剤を高レベルの界面活性剤および/または溶解剤と混合して水性溶液を形成することのどちらかにより配合される。本発明者らは、1マイクロメートル以下(この数字を比較すると、ヒトの髪の平均厚が約100μメートルである)の平均寸法を有するシクロスポリンAの粒子を含むナノ懸濁剤を調製するための、新規結晶多形のシクロスポリンAを使用するシクロスポリンAの製剤を発見した。
【0004】
シクロスポリンAのナノ懸濁剤は、眼に局所的に送達される際、以下の、
・懸濁剤と比較して、溶解に有利なより大きな表面積によるより高い生物学的利用率と、
・生物学的利用率のさらなる改善につながる、より小さな粒子による眼でのより長い保持期間と、
・異物感または粒子の刺激が起こるより低い可能性により、涙が低減し、眼からの製剤の排出が低減することと、
・製剤の界面活性剤および溶解剤のレベルが低くなることによる、薬剤の耐性および生物学的利用率の改善と
を含む1つ以上の利点を有し得る。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】砕粉前の懸濁剤と比較した、高圧ホモジナイザーを使用して調製したシクロスポリンA2型ナノ懸濁剤の粒度分布を示す。
図2】異なる界面活性剤および安定剤を使用して調製したシクロスポリンA2型ナノ懸濁剤の粒度分布を比較する。
図3】Na CMCを含むビヒクル中に希釈した製剤の粒度分布を示す。
図4】マイクロフルイダイザーを使用した砕粉の後に、シクロスポリン2型を使用したナノ懸濁剤と比較した、シクロスポリンA3型を使用したナノ懸濁剤の平均粒径を示す。2型は、ナノ懸濁剤(粒径<1μm)を形成するのに対して、3型はナノ懸濁剤を形成しない。
図5図5〜13は、メスのNZWラビットに本発明による4つの異なる製剤(表2に要約される)およびRestasis(登録商標)を単一局所用量で投与(合計2匹のラビット、1つの眼あたり1つの製剤を投与)した際の結果を示す。 図5は、角膜中の濃度を示す。
図6】薬物動態データをまとめる。
図7】眼球結膜中の濃度を示す。
図8】眼瞼結膜中の濃度を示す。
図9】眼球結膜および眼瞼結膜の薬物動態データをまとめる。
図10】眼球結膜中の濃度を示す。
図11】眼瞼結膜中の濃度を示す。
図12】涙腺中の濃度を示す。
図13】涙腺の薬物動態データをまとめる。
図14】新規の結晶形(本明細書に2型として示される)、正方晶形(本明細書に1型として示される)、および斜方晶形(本明細書に3型として示される)のCsAの特徴的な粉末X線回折(XRPD)パターンを表す。
図15】CsA結晶2型のXRPD回折を表す。
図16】CsA2型の水吸着/脱着プロファイルを表す。
図17】1%のPS80を有する0.04%製剤から収集したCsA2型のMDSC解析を表す。
図18】シクロスポリンAの形態のシミュレーションされたXRPDパターンを示す。
【発明を実施するための形態】
【0006】
シクロスポリンA
シクロスポリンA(CsA)は、以下の化学構造:
【化1】
を有する環状ペプチドである。
【0007】
当該物質の化学名は、シクロ[[(E)−(2S,3R,4R)−3−ヒドロキシ−4−メチル−2−(メチルアミノ)−6−オクテノイル]−L−2−アミノブチリル−N−メチルグリシル−N−メチル−Lロイシル−L−バリル−N−メチル−L−ロイシル−L−アラニル−D−アラニル−N−メチル−L−ロイシル−N−メチル−L−ロイシル−Nメチル−L−バリル]である。また、シクロスポリン(cyclosporine)、シクロスポリンA、シクロスポリン(ciclosporin)、およびシクロスポリンA(ciclosporin A)としても知られている。これは、Restasis(登録商標)(アラガン、カリフォルニア州アーバイン)の活性成分であり、Restasisは、0.05%(w/v)のシクロスポリンを含むエマルジョンである。Restasis(登録商標)は、乾性角結膜炎に関連する眼の炎症により涙の産生が抑制されていると考えられる患者の涙の産生を増加させるため、米国で承認されている。
【0008】
シクロスポリンA2型
シクロスポリンAは、非晶質形、液晶形、正方晶形(1型)および斜方晶形(3型)で存在することが知られている。新規の結晶形である、シクロスポリンA2型は近年発見された。
【0009】
CsA2型のXRPDパターンは、正方晶形および斜方晶形と顕著に異なる(図14)。CuKα照射、λ=1.54Å、30kV/15mAをX線源としX線解析計によりスキャンした際、CsA2型の主要な結晶ピークは:7.5、8.8、10.2、11.3、12.7、13.8、14.5、15.6および17.5(2θ)(図15において、それぞれ約11.8、10.0、8.7、7.8、7.0、6.4、6.1、5.6および5.1Åでの結晶格子中の面間隔d)に現れる。これらの主要なピークは、バックグラウンドの5倍以上の強度を有するピークであると共に、斜方晶形または正方晶形と比べ2型に特有であることが示される。
【0010】
一実施形態において、CsAの新規の結晶形(2型)は、シクロスポリンAの不定比水和物である。別の実施形態において、この結晶2型は、式:
【化2】
により表され、式中、
Xは、水分子の数であり、0〜3の値をとる。一実施形態において、上記の式中のXは2である。
【0011】
2型は、水性懸濁剤中で、CsAの速度論的に安定な形として存在する。2型を含む懸濁剤は、保存する際に他の知られている多形体または仮晶体に変換しない。1型および非晶形は、水の存在下で2型へと変換することが見いだされている。
【0012】
CsA2型の水和物形の単結晶構造が決定されており、この結晶構造パラメータを表2に挙げる。これらの結果から、2型は他の知られているシクロスポリンAの結晶形と比較して独特であることが示される。
【表1】
【0013】
CsA2型の非対称単位は、1つのシクロスポリンA分子と2つの水分子とを含む。水に水素結合できる任意の小分子が、空間充填剤の役割を果たすことにより、斜方晶二水和物から歪められた単斜晶系二水和物にわたる潜在的な構造範囲を与える可能性がある。この単結晶構造から計算されたXRPDパターンを図8に示すが、このパターンは図2に示される実験のパターンと一致した。これらの一致したパターンは、2型がシクロスポリンAの独特かつ純粋な結晶形であることをさらに裏付ける。
【0014】
理論に拘束されるものではないが、KF滴定および蒸気収脱着解析(VSA)と組み合わせた熱重量解析は、CsA2型が、CsAの不定比水和物であることを示唆している。シクロスポリン2型の蒸気収着解析は、図16に示されるように、新規の結晶形内の水含量が、相対湿度により可逆的に変動することを示す。正方晶と同様に、新規のCsA形は、モジュレイテッド示差走査熱量測定(MDSC)解析により示されるように、融点より前の124.4℃で、液晶または非晶形への相転移を起こす(図17)。
【0015】
シクロスポリンA2型は、0.05%の非晶質シクロスポリン(w/v)を1%のポリソルベート80中に懸濁し、65℃までこの溶液を加熱し、その温度で24時間保存し、それから真空濾過により沈殿を回収することにより得られてもよい。その後、さらなる量を調製するために、シクロスポリンA2型を種晶として使用して、シクロスポリンA2型を得ることができる。この方法では、約30gのシクロスポリンAを1%(w/v)のポリソルベート80を含む900mlの水に懸濁し、この溶液を65℃まで加熱し、それからそれを0.2gのシクロスポリンA2型と共に52℃で仕込む。その後、この溶液を、61℃〜65℃で約22時間撹拌し、その結果として得られる沈殿を回収する。
【0016】
CsA2型に関するさらなる詳細は、米国特許出願第13/480,710号に記載されており、その全内容は、参照により本明細書に援用される。
【0017】
シクロスポリンA2型の懸濁剤
本発明の組成物は、眼科的に許容可能なシクロスポリンA2型の懸濁剤である。「眼科的に許容可能な」とは、本発明では、ヒトなどのほ乳類の眼に投与される際に非刺激性となるように、懸濁剤を製剤化することを意味する。一実施形態において、本組成物は懸濁剤であり、すなわち、これらの懸濁剤は、約1μm超の平均粒径を有し液体ビヒクル中に分散されるシクロスポリンA2型を含む。別の実施形態において、この組成物は、ナノ懸濁剤であり、すなわち、これらの懸濁剤は、約1μm未満の平均粒径を有し液体ビヒクル中に分散されるシクロスポリンA2型を含む。
【0018】
一実施形態において、本懸濁剤は、約0.001%〜約10%(w/v)の濃度のシクロスポリンA2型を含む。一実施形態において、この懸濁剤は、約0.001%〜約0.01%(w/v)、約0.001〜約0.04%(w/v)、約0.001%〜約0.03%(w/v)、約0.001〜約0.02%(w/v)、または約0.001%〜約0.01%(w/v)の濃度でシクロスポリンA2型を含む。別の実施形態において、この懸濁剤は、約0.01%〜約0.05%(w/v)、約0.01%〜約0.04%(w/v)、約0.01%〜約0.03%(w/v)、約0.01%〜約0.02%(w/v)、または約0.01%〜約0.01%(w/v)の濃度のシクロスポリンA2型を含む。別の実施形態において、この懸濁剤は、約0.01%〜約0.1%(w/v)、約0.1%〜約0.5%(w/v)、約0.01%〜約1%(w/v)、または約1%〜約10%(w/v)の濃度のシクロスポリンA2型を含む。
【0019】
たとえば、本懸濁剤は、約0.001%(w/v)、約0.002%(w/v)、約0.003%(w/v)、約0.004%(w/v)、約0.005%(w/v)、約0.006%(w/v)、約0.007%(w/v)、約0.008%(w/v)、約0.009%(w/v)、約0.01%(w/v)、約0.015%(w/v)、約0.02%(w/v)、約0.025%(w/v)、約0.03%(w/v)、約0.035%(w/v)、約0.04%(w/v)、約0.045%(w/v)、約0.05%(w/v)、約0.055%(w/v)、約0.06%(w/v)、約0.065%(w/v)、約0.07%(w/v)、約0.075%(w/v)、約0.08%(w/v)、約0.085%(w/v)、約0.09%(w/v)、約0.095%(w/v)、約0.1%(w/v)、約0.15%(w/v)、約0.2(w/v)、約0.25%(w/v)、約0.3%(w/v)、約0.35%(w/v)、約0.4%(w/v)、約0.45%(w/v)、約0.5%(w/v)、約0.55%(w/v)、約0.6%(w/v)、約0.65%(w/v)、約0.7%(w/v)、約0.75%(w/v)、約0.8%(w/v)、約0.85%(w/v)、約0.9%(w/v)、約0.95%(w/v)、または約1.0%(w/v)のシクロスポリンA2型を含んでもよい。
【0020】
一実施形態において、本懸濁剤は界面活性剤を含む。一実施形態において、この界面活性剤は、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート(ポリソルベート80)、ポリエチレングリコール660ヒドロキシステアレート(Solutol)、ポリオキシエチレン(40)ステアレートMyrj52(POE−40−Stearate)、プルロニックF68(Polaxamer188)、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(ポリソルベート20)、およびグリコール酸ナトリウム(NaGC)から選択される。本ビヒクルは、これら全ての界面活性剤、または上記界面活性剤の内の1、2、3、4、または5つを含んでもよい。
【0021】
約0.001%(w/v)〜約5%(w/v)の界面活性剤を使用することができる。一実施形態において、本懸濁剤は、約0.001%(w/v)〜約1%(w/v)、約0.001%(w/v)〜約0.1%(w/v)、約0.01%(w/v)〜約0.1%(w/v)、または約0.1%(w/v)〜約1%(w/v)の界面活性剤を含む。たとえば、この懸濁剤は、約0.001%(w/v)、約0.002%(w/v)、約0.003%(w/v)、約0.004%(w/v)、約0.005%(w/v)、約0.006%(w/v)、約0.007%(w/v)、約0.008%(w/v)、約0.009%(w/v)、約0.01%(w/v)、約0.02%(w/v)、約0.03%(w/v)、約0.04%(w/v)、約0.05%(w/v)、約0.06%(w/v)、約0.07%(w/v)、約0.08%(w/v)、約0.09%(w/v)、約0.1%(w/v)、約0.2%(w/v)、約0.3%(w/v)、約0.4%(w/v)、約0.5%(w/v)、約0.6%(w/v)、約0.7%(w/v)、約0.8%(w/v)、約0.9%(w/v)、約1%(w/v)、約2%(w/v)、約3%(w/v)、約4%(w/v)、または約5%(w/v)の界面活性剤を含む。
【0022】
2種類以上の界面活性剤を使用する際、本懸濁剤は、この界面活性剤それぞれを同一量または異なる量で含んでもよい。
【0023】
界面活性剤に加えて、本懸濁剤は安定剤を含んでもよい。一実施形態において、この安定剤は、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、Pemulen(登録商標)、およびPemulen(登録商標)TR−2から選択される。Pemulen(登録商標)は、Lubrizol Corpにより生産される高分子量の、アクリル酸およびC10−C30アクリル酸アルキルの架橋コポリマーの商標名である。Pemulen(登録商標)TR−2は、他のPemulen(登録商標)ポリマーよりも高いレベルの疎水基を含むC10−C30アクリル酸アルキルクロスポリマーである。ビヒクルは、これらすべての安定剤を含んでもよく、または全く含まなくてもよく、あるいは、このうちの1、2、3、4、または5つを含んでもよい。
【0024】
約0.01%(w/v)〜約10%(w/v)の安定剤を使用することができる。一実施形態において、本懸濁剤は、約0.01%(w/v)〜約1%(w/v)、約0.01%(w/v)〜約0.1%(w/v)、または約0.1%(w/v)〜約1%(w/v)の安定剤を含む。たとえば、本懸濁剤は、約0.01%(w/v)、約0.02%(w/v)、約0.03%(w/v)、約0.04%(w/v)、約0.05%(w/v)、約0.06%(w/v)、約0.07%(w/v)、約0.08%(w/v)、約0.09%(w/v)、約0.1%(w/v)、約0.2%(w/v)、約0.3%(w/v)、約0.4%(w/v)、約0.5%(w/v)、約0.6%(w/v)、約0.7%(w/v)、約0.8%(w/v)、約0.9%(w/v)、約1%(w/v)、約2%(w/v)、約3%(w/v)、約4%(w/v)、約5%(w/v)、約6%(w/v)、約7%(w/v)、約8%(w/v)、約9%(w/v)、または約10%の安定剤を含んでもよい。
【0025】
2種類以上の界面活性剤を使用する際、本懸濁剤は、この界面活性剤それぞれを同一量または異なる量で含んでもよい。
【0026】
界面活性剤に加えて、本ビヒクルはまた、グリセリン、マンニトール、クエン酸ナトリウム二水和物、塩化カリウム、ホウ酸、およびホウ酸ナトリウム十水和物から選択される浸透圧調整剤を含んでもよい。この浸透圧調整剤は、望ましい浸透圧を得る必要がある際に添加され、ビヒクルは、これら全ての浸透圧調整剤を含んでもよく、または浸透圧調整剤を全く含まなくてもよく、またはこれら浸透圧剤の内、1、2、3、4、または5つを含んでもよい。一実施形態において、浸透圧調整剤は、約0.1%(w/v)〜約10%(w/v)の量で存在する。2つ以上の浸透圧調整剤を使用する際、本懸濁剤は、この浸透圧調整剤それぞれを同一量または異なる量で含んでもよい。
【0027】
本懸濁剤は、通常、本懸濁剤を眼に投与するために適した状態にするために望ましいpH、浸透圧、および他の特徴を提供するのに十分な量の水を含む。
【0028】
シクロスポリンA2型の懸濁剤を調製する方法
本発明の製剤は、上述のように、懸濁剤を形成するために、適切な界面活性剤、安定剤、および浸透圧調整剤と、シクロスポリンA2型を混合することにより調製してもよい。微細な粒子状のシクロスポリンAが望ましい場合には、この懸濁剤を、マサチューセッツ州ニュートンのMicrofluidics Int’l Corp.から商業的に入手可能なもののような高圧ホモジナイザーを使用して砕粉する。シクロスポリンA2型の固有で驚くべき特性は、望ましい場合に砕粉することが可能であり、平均粒径(d90)1μm未満の懸濁剤を得られることである。このようなナノ懸濁剤中のシクロスポリンAは、溶解に有利なより広い表面積のため、他のシクロスポリンA(マクロ)懸濁剤と比較してより高い生物学的利用率を有する。粒子がより小さいことによりシクロスポリンAが眼により長く保持されるため、生物学的利用率がさらに高くなる。粒子のより小さいナノ懸濁剤により、本製剤を眼に滴下する際に対象が知覚する異物感または他の刺激を生じにくい製剤がもたらされる。また、粒子がより小さいため、これらは界面活性剤および安定剤とより容易に結びつき、これによりそれらをより低い濃度で使用することが可能となる。
【0029】
シクロスポリンA2型の懸濁剤を砕粉した後、この生成物は最終生成物を得るために希釈される。
【0030】
治療方法
本発明の組成物は、シクロスポリンA(Restasis(登録商標)など)での局所治療に適することが知られているいずれかの眼の状態を治療するために本明細書に記載される濃度で使用してもよい。たとえば、本発明の組成物を使用して、ドライアイを患う患者を治療し、眼瞼炎およびマイボーム腺疾患を治療し、眼の屈折矯正手術のために損なわれた角膜知覚を回復させ、アレルギー性結膜炎ならびにアトピー性角結膜炎および春季カタルを治療し、かつ翼状片(ptyregia)、結膜および角膜の炎症、角結膜炎、移植片対宿主病、移植後の緑内障、角膜移植、真菌性角膜炎、タイゲソン点状表層角膜炎、ブドウ膜炎、およびテオドール(Theodore)上輪部角結膜炎や、その他の状態を治療してもよい。
【0031】
国際ドライアイ研究会(DEWS)は、ドライアイを「涙液膜の浸透圧の増加および眼の表面の炎症を伴う、不快感、視覚障害、および眼の表面に対する潜在的な損傷を招く涙液膜の不安定性の症状を起こす涙および眼の表面の多因子性疾患」と定義する。この定義は、涙の不足または過度の涙の蒸発により引き起こされる乾性角結膜炎などの状態を含む。
【0032】
眼瞼炎は、皮膚および皮膚に関連する構造(髪および脂腺)、粘膜皮膚移行部、ならびにマイボーム腺を含む、前部および後部の瞼の境界の炎症を産生する慢性障害である。また、進行期では、結膜、涙液膜、および角膜表面に影響を与え、ドライアイに関連することもある。眼瞼炎は、一般的に前部眼瞼炎または後部眼瞼炎に分類され、前部眼瞼炎は瞼の睫毛固定領域に影響を与え、後部眼瞼炎は瞼板の腺開口部に影響を与える。
【0033】
マイボーム腺疾患は、原発性マイボーム腺炎、二次性マイボーム腺炎、およびマイボーム脂漏症といった3つの形の内の1つとして最もよく起こり得る。マイボーム脂漏症は、炎症の存在しない状態での過度のマイボーム腺の分泌(分泌過剰マイボーム腺疾患)により特徴付けられる。対照的に、原発性マイボーム腺炎は、停滞し濃縮したマイボーム腺分泌(妨害型分泌過剰マイボーム腺疾患)により区別される。二次性マイボーム腺炎は局所的な炎症応答を示し、マイボーム腺が、前部の眼瞼縁の眼瞼炎から斑状の形で二次的に炎症を起こす。
【0034】
角膜知覚障害は、多くはレーザー屈折矯正角膜切除術、レーザー照射による角膜上皮下の切除(LASEK)、EPI−LASEK、注文に応じた上皮の非接触式切除、または角膜の神経を断つ他の手順などの屈折矯正手術後に起こる。また、角膜知覚障害は、HSV−1、HSV−2、およびVZVウイルスなどのウイルス感染後に起こり得る。角膜知覚障害を有する患者は、涙の産生および蒸発は正常であるにも関わらず、しばしば眼の乾燥感を訴え、このことは、このような患者の「乾き」は、外科手術またはウイルス感染後の炎症により角膜の神経が切断される際に起こる角膜の神経障害の急性的な形態であることを示唆する。
【0035】
アレルギー性結膜炎は、1つ以上のアレルゲンに対する過敏症から生じる結膜の炎症であり、急性、断続性、または慢性であってもよい。それは季節的に、すなわち、1年のうちの一定期間起こるか、または常時、すなわち通年で慢性的に起こる。季節性および通年性のアレルギー性結膜炎の症状は、結膜の炎症に加えて、流涙、涙(tearing)、結膜の血管拡張、痒み、乳頭増殖、結膜浮腫、眼瞼浮腫、および眼脂を含む。この眼脂は、就寝後、眼の上方にかさぶたを形成してもよい。
【0036】
アトピー性角結膜炎は、しばしば視力障害を引き起こす、慢性的、重篤な形態のアレルギー性結膜炎である。症状は、痒み、炎症(burning)、疼痛、発赤、異物感、光知覚、およびかすみ目を含む。眼脂、特に、夜の睡眠から目覚める際の眼脂が症状として現れることが多い。この眼脂は、粘質であり、粘着性かつ粘液性であってもよい。下部の結膜は、しばしば上部の結膜よりも顕著に影響を受ける。この結膜は、蒼白、浮腫状、および無特徴から乳頭増殖、上皮下線維症、結膜円蓋短縮化(formix foreshortening)、睫毛乱生、眼瞼内反および睫毛欠損を含む、進行性疾患の特徴を有するまでの範囲であってよい。一部の患者では、この疾患は、点状上皮性角膜症(punctate epithelial erosions)、角膜血管新生、および視覚を損ない得る他の特性の角膜症へと進行する。概して、結膜の細胞増殖、上皮偽管状形成、および上皮中で脱顆粒する好酸球およびマスト細胞数の増加がある。CD25+Tリンパ球、マクロファージ、および樹状細胞(HLA−DR.sup., HLA−CD1+)が、角膜固有質で有意に増加する。
【0037】
アトピー性角結膜炎のように、春季カタルは、重篤な形のアレルギー性結膜炎であるが、下部結膜よりも上部結膜により顕著に影響を与える傾向がある。春季カタルは2つの形態で起こる。眼瞼形態では、四角状の、固く、平坦で密に固まった乳頭が存在し、眼球(角膜縁)形態では、角膜周囲の結膜が、肥大し、灰白色となる。両方の形態で、粘液分泌をしばしば伴う。角膜上皮の損失が、疼痛および羞明を伴って起こることがあり、同様に、中心の角膜プラーク形成およびトランタス点を伴うこともある。
実施例
【0038】
本発明は、以下の実施例によりさらに詳細に示される。
【0039】
実施例1
本発明者らは、以下の組成物を調製した。
【表2】

表1の製剤を、以下の工程により調製した。
1.濃縮型シクロスポリンAナノ懸濁剤の調製
a.シクロスポリンA懸濁剤を適切なビヒクルと混合して懸濁剤を形成する。この懸濁剤中のシクロスポリンAの濃度は、1〜10%の範囲である。
b.シクロスポリンA懸濁剤を高圧ホモジナイザー(Microfluidizer(登録商標)、マサチューセッツ州ニュートンのMicrofluidicsにより製造)またはボールミルを使用して粉砕して、d90<11Jmとなるようなナノ懸濁剤を得る。
c.ナノ懸濁濃縮物を調製するために使用されるビヒクルを表1に列挙する。
【0040】
2.最終生成物の調製
a.ステップ1において調製し、濃縮ナノ懸濁剤を、点眼投与に適したビヒクル中に希釈し、要求される有効成分用量のシクロスポリンAを備えた最終生成物を得る。希釈に適したビヒクルは、望ましい濃度のCsAを備えた最終製剤を得るために緩衝剤、安定剤、ゲル化剤および/または希釈物を含んでもよい。
b.このナノ懸濁濃縮物を希釈後調製したナノ懸濁製剤の組成物を表2に列挙する。
【0041】
異なる製剤の粒度分布を図1、2、および3に示す。
【0042】
図1は、砕粉前の懸濁剤と比較した、高圧ホモジナイザーを使用して調製したシクロスポリンA2型ナノ懸濁剤の粒度分布を示す。
【0043】
図2は、異なる界面活性剤および安定剤を使用して調製したシクロスポリンA2型ナノ懸濁剤の粒度分布を比較する。
【0044】
図3は、Na CMCを含むビヒクル(表2、ビヒクルA)で希釈した製剤の粒度分布を示す。ナノ懸濁濃縮物と比較して、2週間にわたり、希釈した製剤において粒径の変化は見られない。
【0045】
シクロスポリンA3型の平均粒径を図4に示す。シクロスポリンA2型は、ナノ懸濁剤(粒径<1μm)を形成するのに対し、3型はこれを形成しない。
【0046】
これらの実験は、2型が一貫して、他の結晶形のCsAよりも小さな粒径をもつナノ懸濁剤を生成したことを示す。より粒径が小さい2型ナノ懸濁剤は、他の型よりも有益である。他にも理由はあるが、溶解のためのより大きな表面積および眼におけるより長い保持期間により、物理的安定性が改善されると同時に、生物学的利用率がより高くなると予想される。
【0047】
実施例2
本発明者らは、以下の表2に列挙したシクロスポリンAナノ懸濁剤を調製した。
【表3】
【0048】
本発明者らは、メスのNZWラビットに上記の製剤を単一局所用量で投与した(合計2匹のラビット、1つの眼に1つの製剤)。この結果を図5〜13にまとめる。これらにより、製剤B1は、5倍低い用量のシクロスポリンA(0.01%対0.05%)を送達するが、0.05%のRestasis(登録商標)と比較可能な角膜への曝露を維持し、かつ、眼球結膜および眼瞼結膜への送達が改善することを示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18