(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
イヌリンアセテート(InAc)のマイクロ粒子またはナノ粒子と活性抗原薬剤とを含み、水相/油相/水相のエマルジョンによって製造される組成物であって、前記活性抗原薬剤が、個々のマイクロ粒子またはナノ粒子中に含まれているか物理的に結合されている、組成物。
1または複数の免疫変調成分をさらに含んでおり、前記1または複数の免疫変調成分が、リンフォカイン、サイトカイン、胸腺細胞刺激物質、単球もしくはマクロファージ刺激物質、エンドトキシン、またはそれらの組合せである、請求項1に記載の組成物。
免疫反応をインビボまたはインサイチュ(in situ)で刺激し、前記免疫反応がTh1(IgG−2a)もしくはTh2(IgG−1)タイプの免疫反応、またはそれらの組合せを含む、請求項1に記載の組成物。
イヌリンアセテート(InAc)粒子と活性抗原薬剤とを含んでいる組成物であって、前記活性抗原薬剤が、InAcの個々の前記粒子中に含まれているかInAcの前記粒子と物理的に結合されており、前記組成物が、水相/油相/水相のエマルジョンによって製造され、ヒトまたは動物において前記活性抗原薬剤に対する免疫反応を刺激する、組成物。
感染症、自己免疫疾患、遺伝性疾患、アレルギー、糖尿病、免疫不全疾患、腫瘍性疾患、退行性または老齢疾患の治療において使用するための、イヌリンアセテート(InAc)のマイクロ粒子またはナノ粒子と活性抗原薬剤とを含んでいる組成物であって、前記組成物が、水相/油相/水相のエマルジョンによって製造され、前記活性抗原薬剤が、個々のマイクロ粒子またはナノ粒子中に含まれている、組成物。
前記活性抗原薬剤が、細菌性もしくはウイルス性病原体の溶菌液、癌細胞、または病原体または疾病と関連するその他の生物学的成分を含む、請求項20に記載のキット。
【発明を実施するための形態】
【0033】
定義
本明細書において使用される場合、列挙される用語は、次の意味を有する。この明細書において使用されている全てのその他の用語および語句は、当業者であれば理解するはずのそれらの普通の意味を有する。そのような普通の意味は、専門辞典、例えば、R.J.LewisによるHawley’s Condensed Chemical Dictionary,14th Edition、John Wiley & Sons、New York、N.Y.、2001年、などを参照することによって得ることができる。
【0034】
本明細書における「一実施形態(one embodiment)」、「1つの実施形態(an embodiment)」などと言うのは、記載されている実施形態が、特定の態様、特徴、構造、部分、または特色を含むことができるが、全ての実施形態が必ずしもその態様、特徴、構造、部分、または特色を含むのではないことを示唆する。さらに、そのような語句は、明細書の他の部分で言及された同じ実施形態を指すことができるが、必ずしもそうではない。さらにまた、特定の態様、特徴、構造、部分または特色が、1つの実施形態に関連して記載されているとき、はっきりと記載されていなくても、そのような態様、特徴、構造、部分または特色を、他の実施形態に影響を及ぼし、または関連付けることは当業者の認識の範囲内である。
【0035】
単数形の「a」、「an」、および「the」は、文脈からそうでないことがはっきりと指示されない限りは複数の言及を含む。したがって、例えば、「a compound」と言えば、複数のそのような化合物を含み、そのため、a compound Xは、複数の化合物Xを含む。特許請求の範囲は、どんな随意的要素も排除するように起草され得ることがさらに留意される。そのようなものとして、この記述は、特許請求の範囲の要素の列挙または「否定的な」限定の使用に関連して、排他的用語、例えば、「solely(もっぱら)」、「only(唯一の)」などの使用のための先行詞として寄与することが意図される。
【0036】
用語「および/または」は、この用語が関連付けられる事項の任意の1つ、事項の任意の組合せ、または事項の全てを意味する。語句「1つ(種)または複数」は、当業者には、特にそれが使用される文脈内において読まれるときは容易に理解される。例えば、1つ(種)または複数の任意成分が、特定の製剤中に含められ得るとは、それ故、1つ(種)または複数は、1つ(種)から約4つ(種)、または1つ(種)から約5つ(種)、または同じ数(種)だけの成分が特定の製剤中に要求されることを意味することができる。
【0037】
用語「約」は、特定された値の±5%、±10%、±20%、または±25%の変動を指すことができる。例えば、「約50」パーセントは、いくつかの実施形態において、45から55パーセントまでの変動を含むことができる。整数範囲に対して、用語「約」は、範囲の各末端において挙げられた整数より大きいおよび/または小さい1つまたは2つの整数を含むことができる。本明細書に別なふうに示されていない限り、用語「約」は、個々の成分、組成物、または実施形態の機能に関して同等である挙げられた範囲に最も近い値、例えば、重量パーセントを含むことを目的としている。
【0038】
当業者には理解されるように、成分の量、分子量のような特性、反応条件その他を表すものを含めた全ての数字は、近似値であり、全ての場合に用語「約」によって随意的に修正されるものと理解される。これらの値は、本明細書に記述されている教示を利用する当業者によって得られることが求められる望ましい特性によって変動し得る。また、そのような値は、それらのそれぞれの試験測定において見出される標準偏差に必然的に起因する変動性を本質的に含むことが理解される。
【0039】
当業者によって理解されるように、任意のそして全ての目的に対して、特に明細書を提供することに関して、この中に列挙される全ての範囲は、任意のそして全ての可能な部分的範囲およびそれらの部分的な範囲の組合せ、ならびにその範囲を構成している個々の値、特に整数値を同様に含む。列挙される範囲(例えば、重量パーセントまたは炭素基)としては、それぞれの特定値、整数、小数、またはその範囲に入る一体性が挙げられる。リストアップされたどの範囲も、その同じ範囲が、少なくとも同等の半分、3分の1、4分の1、5分の1、または10分の1に分解されることを十分に説明することおよび可能にすることが容易に認められ得る。非限定の例として、ここで論じられている各範囲は、下部の3分の1、中央部の3分の1および上部の3分の1などに容易に分解され得る。当業者には同様に理解されるように、「up to(最大で)」、「at least(少なくとも)」、「greater than(〜より大きい)」、「less than(〜未満の)」、「more than(〜より多い)」、「or more(〜以上)」などのような全ての言語は、挙げられている数を含み、そのような用語は、上で論じた部分的な範囲にその後分解され得る範囲を指している。同様に、ここに挙げられている全ての比率もまた、より広い比率の範囲に含まれる全ての部分的な比率を含む。それ故、ラジカル、置換基、および範囲に対して挙げられる特定値は、単に説明のためだけであり、それらはその他の規定値またはラジカルおよび置換基に対して定義された範囲内のその他の値を排除しない。
【0040】
当業者は、部材が、一般的なやり方で、例えばマーカッシュ群におけるように、一緒にされる場合、その発明は、全体としてリストアップされた全体の群だけでなく、その群の各部材も個別に、および主となる群の全ての可能な亜群も含むことを同様に躊躇なく認めるであろう。さらに、全ての目的に対して、本発明は、主要な群だけでなく、主要な群ではない1つ(種)または複数の群部材もまた含む。本発明は、それ故に、列挙された群の任意の1つ(種)または複数の部材の明確な排除を考える。
【0041】
したがって、但書は、任意の開示されるカテゴリーまたは実施形態に利用することができ、それによって列挙される成分、種、または実施形態の任意の1つまたは複数は、例えば明白な消極的な限定において使用されるようなカテゴリーまたは実施形態から排除され得る。
【0042】
用語「接触」は、細胞または分子の段階を含めて、触れさせ、接触させ、または直接もしくは緊密に接近させて、例えば、生理的反応、化学反応、または物理的変化を、例えば、溶液中、反応混合物中、インビトロ、またはインビボでもたらす行為を指す。
【0043】
「有効量」とは、疾病、障害、および/または健康状態を治療するため、または列挙した効果をもたらすために有効な量を指す。例えば、有効量は、治療される健康状態または症状の進行または重症度を緩和するために有効な量であり得る。
【0044】
治療効果のある量の決定は、当業者の能力の範囲内である。用語「有効量」は、例えば、ホストにおいて、疾病または障害を治療または予防するため、または疾病または障害の症状を治療するために有効である本明細書に記載されている化合物の量、または本明細書に記載されている化合物の組合せの量を含むことが意図されている。したがって、「有効量」とは、望ましい効果を提供する量を一般に意味する。
【0045】
用語「treating(治療する)」、「treat(治療する)」および「treatment(治療)」は、(i)疾病、病的または医療状態が起こることを防ぐこと(例えば、予防);(ii)疾病、病的または医療状態を抑制することまたはその進行を抑制すること;(iii)疾病、病的または医療状態を軽減すること;および/または(iv)疾病、病的または医療状態と関連する症状を減少させることを含む。したがって、用語「treat(治療する)」、「treatment(治療)」および「treating(治療する)」は、予防にまでおよび、治療される状態または症状の進行または重症度を、prevent(防ぐ)、prevention(予防)、preventing(防ぐ)すること、低下すること、停止することまたは逆進させることを含む。そのようなものとして、用語「treatment(治療)」は、適宜、医療、治療のための投与、および/または予防的投与の両方を含む。
【0046】
用語「inhibit(抑制する)」、「inhibiting(抑制する)」、および「inhibition(抑制)」は、疾病、感染症、健康状態、または細胞群の成長または発展を遅くする、停止させる、または逆進させることを指す。この抑制は、治療または接触がなくて起こる成長または進行と比較して、例えば、約20%、40%、60%、80%、90%、95%、または99%を超えることが可能である。
【0047】
用語「イヌリン」は、当技術分野では周知であり、α−G−グルコピラノシル−[α−D−フルクトフラノシル](n−1)−D−フルクトフラノシド、線状β−D(2→1)ポリフルクトフラノシルα−D−グルコースのファミリーからなる多糖であり、一般的に最大約100のフルクトース部分の分枝していない鎖(n=植物由来の物質については約5から約100、そして微生物由来の物質については約5から約100,000)が、単一の末端グルコースユニットに連結されている。
【0049】
イヌリンは植物由来の多糖であり、比較的疎水性のポリオキシエチレンのような主鎖を有する。この構造およびそのイオン化されない性質は、再結晶および非常に純粋な状態での調製を可能にする。イヌリンは、最大約16kDaの分子量の分子的多分散物として調製され得る。適切なイヌリン粒子(例えば、本明細書に記載されているβ−InおよびInAc粒子)は、約2kDaから約12kDa、約3kDaから約8kDa、約4kDaから約6kDa、または約5kDaの分子量を有する原料イヌリンから調製され得る。
【0050】
イヌリンは、キク科(CompositaeまたはAsteraceae)の貯蔵炭水化物として作用し、ダリアの塊茎から高い分子量の状態で得られる。イヌリンはさまざまな供給業者、例えばSigma(ミズーリ州、セントルイス)などから商業的に入手され得る。イヌリンは、α、β、γ、δ、およびεの形を含めたいくつかの異形(多形体)の状態で存在する(例えば、国際公開第2011/032229号(Petrovskyら)参照)。これらの形は、それらの溶解パラメーターによって区別され得る。アルファイヌリン(α−In)およびベータイヌリン(β−In)は、それぞれ水およびエタノールからの沈殿によって調製され得る。αおよびβイソ型は、両方とも37℃の水に実質的に溶解する。ガンマイヌリン(γ−In)は、37℃の水には溶解しないが、高濃度(>50mg/ml)で70〜80℃では水に溶解する。β−多形相または何らかの水溶性の形の状態のイヌリンは、アジュバント/免疫増強効果を有することが示されたことは断じてない。
【0051】
用語「イヌリンアセテート」(InAc)は、アセチル化されたイヌリンを指す。一般的にはイヌリンの利用できるヒドロキシル基の少なくとも約90%がアセチル化され、しばしば、少なくとも約95%または少なくとも約98%がアセチル化される。複数の実施形態において、より少ない程度までアセチル化されたイヌリン、例えば、利用できるヒドロキシル基の少なくとも約10%がアセチル化されているイヌリンなどが使用され得る。複数の実施形態において、利用できるヒドロキシル基の少なくとも約25%、少なくとも約50%、または少なくとも約75%が、さまざまなイヌリンアセテート製剤のためにアセチル化され得る。複数の実施形態において、アセチル化イヌリンは、その赤外スペクトルのヒドロキシルピークが消えてアセチルピークが現れるとき、イヌリンアセテートであると考えられる。イヌリンアセテートは、水には高温であってさえも溶解しないが、さまざまな有機溶剤、例えば、アセトン、酢酸エチル、クロロホルム、ジクロロメタンおよび同類のものなどには溶解する。
【0052】
イヌリンアセテートは、補体の第二経路(APC)を活性化せず、InAcは、抗原と一緒に注射されるときワクチンアジュバントとして機能しない。InAcは、生理食塩水中に容易に分散できる。抗原は、ワクチンアジュバントとして機能するために、InAc粒子の内側に封入されているか、またはInAc粒子と物理的に結びつけられていなければならない。InAcマイクロ粒子およびナノ粒子は、その抗原の取り込みを高め、その封入された抗原を活性化のために免疫細胞の関連する部分に送達することによってワクチンアジュバントとして機能することができる。InAcは、また、ここで初めて示される新しいTLRアゴニストである。理論に縛られるわけではないが、これは、InAcがアセチル化されていないイヌリンの形とは異なる機構によるワクチンアジュバントとして機能することを示唆している。
【0053】
他のイヌリン誘導体が、イヌリンアセテートに加えて、またはその代わりに使用され得る。一つのイヌリン誘導体は、イヌリンのヒドロキシル基が、アルキル、アリール、またはアシル基による化学的置換によるか、または既知の方法による酸化もしくは還元によって変性されたイヌリンであり得る。例えば、Greg T.Hermansonにより、Bioconjugate Techniques、Academic Press、San Diego、CA(1996)、に記載されている技術を参照されたい。
【0054】
イヌリン誘導体には、エステル連鎖、エーテル連鎖、アミド連鎖、カルバメート連鎖、イヌリンおよびそれら誘導体の酸化または還元型、イヌリンのカチオン/アニオン/非イオン変態(アニオン:O−(カルボキシメチル)イヌリン、カチオン:Inutec H25P)、およびイヌリンまたはその酸化/還元型の他の薬剤との錯体形成(例えば、酸化されたイヌリンの銅、亜鉛、カドミウム、または同種のもの等の重金属との錯体形成)が含まれる。
【0055】
「イヌリンエステル」または「エステル化イヌリン」とは、カルボン酸のようなエステル形成性の基との縮合によりまたはカルボン酸無水物、または同種のもののような基によるアシル化によってヒドロキシル基のところでエステル化されたイヌリンを指す。イヌリンエステルの例としては、イヌリンプロパノイレート(propanoylate)、イヌリンブタノイレート(butanoylate)、イヌリンホスフェートなどが挙げられるがこれらに限定されない。
【0056】
「イヌリンエーテル」または「エーテル化イヌリン」とは、ハロゲン化物、酸ハロゲン化物などの適切な離脱基を有している基のようなエーテル形成性の基によって、ヒドロキシル基のところでエーテル化されたイヌリンを指す。イヌリンエーテルの例としては、メチル化イヌリン(例えばイヌリンペルメチルエーテル)、エチル化イヌリンなどが挙げられるがこれらに限定されない。
【0057】
イヌリンおよびそれらの誘導体の酸化または還元型の例としては、イヌリンカーボネート、ジアルデヒドイヌリンなどが挙げられる。使用され得るその他のイヌリン誘導体としては、シアノエチルイヌリン、アミノ−3−オキソプロピル−イヌリン、カルボキシエチルイヌリン、ヒドロキシアミノ−3−アミノプロピルイヌリン、イヌリンカルバメート(例えば、Inutec SPI)、またはそれらの組合せが挙げられる。
【0058】
これらイヌリン誘導体は、カーゴ分子(例えば抗原)が粒子中に封入されているか、あるいは粒子にコートまたは接合されている粒子製剤の形をしていることができる。イヌリンの利用できるヒドロキシル基の修飾は、イヌリンアセテートのアセチル化について上で説明したような程度までであり得る。
【0059】
「活性薬剤」または「活性な」とは、薬、免疫学的薬剤(例えば、抗原)、またはβ−イヌリンもしくはInAc粒子に封入もしくは物理的に結合されたその他のカーゴ分子を指す。「物理的に結合された」とは、ポリマーに対する、もしくは粒子に対する親水性、疎水性相互作用、または水素結合を含めた静電的相互作用による結合を指す。「粒子と物理的に結合された」とは、粒子が薬剤によって被覆されていることのほかに粒子がその薬剤に共有結合的に接合されていることを指すことができる。
【0060】
接合の方法は、当技術分野では周知であり、いくつかの技術が、Greg T.Hermansonにより、Bioconjugate Techniques、Academic Press、San Diego、CA(1996年)、に記載されている。活性薬剤は、粒子とカーゴ分子および/または物理的に結合された分子全てを含めたものの約1重量%から約25重量%、約1重量%から約10重量%、または約1重量%から約5重量%で、粒子中に充填することができる。
【0061】
「抗原」とは、適切な条件下で、特定の免疫反応を誘発することおよびその反応の生成物と、即ち、特定の抗体または特異的に感作されたTリンパ球あるいは両方と反応することができる任意の物質を指す。用語「抗原」、「免疫原」、および「活性薬剤」は、この文書の至るところで互換的に使用され得る。抗原類は、毒素および自己もしくは異種タンパク質/ペプチドのような可溶性物質、またはバクテリア、ウイルス、および組織細胞のような粒子状物質であり得、しかしながら、抗原決定基またはエピトープとして知られるタンパク質または多糖分子のごく一部のみがリンパ球上の特異受容体によって認識される。同様に、その反応によって生じた抗体またはエフェクターリンパ球は、1つの抗原決定基のみと結合する。細菌性細胞または巨大タンパク質は、何百もの抗原決定基を有することができ、そのいくつかは感染防御免疫において他よりもより重要である。
【0062】
本明細書において提供されるアジュバントと共に使用され得る既知の抗原の一部のリストは、以下の通りである:同じ種の全ての個体ではないがいくらかの個体で発生する、同種異系抗原、例えば、かつては同種抗原と呼ばれた組織適合抗原および血液型抗原;細菌性抗原;赤血球の表面に存在し、同じ種の個体の間で変化し、血液型の判定のための基礎として使用される、抗原;莢膜抗原;K、LおよびV抗原;癌胎児性抗原(CEA);腫瘍胎児抗原;2種以上の異なる抗原分子中に存在する抗原決定基およびそれらの間の交差反応のための基礎である、共通抗原;これは、免疫反応の刺激と、その反応の生成物、例えば、抗体との反応の両方を行う抗原である、完全抗原;合成抗原;ハプテン;異なるけれども関連する抗原に応じて、抗原決定基の類似性、または2種の細菌の菌株中の同一抗原のせいで、1つの菌株に対して生成した抗体が他の抗体と反応するように生成された抗体と結合する抗原である、交差反応抗原;イヌの赤血球で見出された抗原であり、種において異なる血液型を区別するために使用される、イヌ赤血球抗原(DEA);環境抗原、花粉、菌類、ハウスダスト、食物および動物の鱗屑中に見出されるもの;ネコ白血病ウイルスに感染したネコにおいて細胞膜に存在する腫瘍特異性抗原である、ネコオンコルナウイルス細胞膜抗原(FOCMA);鞭毛抗原;細菌鞭毛に発生する抗原である、HまたはHauch抗原;ノミの唾液のいくつかの成分、その上ノミの抽出物を含む、ノミ抗原;フォルスマン抗原;さまざまな関係のない種において、主として赤血球ではなく臓器において、または赤血球のみにおいて、あるいは時々、臓器と赤血球の両方において発生するそのような抗原である、異好性抗原;特定の生物群、例えば、連鎖球菌、オンコルナウイルスに共通している、群特異的(gs)抗原;異種遺伝子型抗原;異種抗原;異好性抗原;他の動物または植物からの組織と反応する抗体の生成を刺激することができる抗原を含む、異種抗原;循環リンパ球に、例えば、中枢神経組織、精巣組織および特定の細胞内成分中には通常さらされない抗原であり、したがって、それらは免疫反応を通常は引き起こさない、隠された抗原;組織適合抗原;細胞膜の組織適合抗原である、H−Y抗原;Bリンパ球、Tリンパ球、皮膚、および特定のマクロファージに位置づけられる主要組織適合遺伝子複合体(MHC)のI領域によって支配される組織適合抗原である、Ia抗原;同じ種の遺伝的に異なる個体においては免疫反応を引き出すことができるがそれを持っている個体においてはできない同じ近交系の個体またはメンバーによって保有される抗原である、同質遺伝子的抗原;K抗原;細菌性莢膜抗原;大腸菌の莢膜抗原である、L抗原;Ly1,Ly2およびLy3として分類されるTリンパ球の亜母集団の抗原細胞表面マーカーである、Ly抗原、;リンパ球限定(LD)抗原;リンパ球、マクロファージ、上皮細胞および精子中に見出される、クラスII抗原;細胞壁に主として位置づけられるようであり、化膿連鎖球菌の毒性が付随している型特異性の抗原である、M抗原;マレック病、ヘルペス・ウイルスによって感染された細胞の表面に見出される、マレック腫瘍特異抗原(MATSA);死滅しており、乾燥してひいて粉末にした結核菌からアセトンおよびメチルアルコールを用いて調製した抗原である、Negre抗原;細胞核の成分であり、抗核抗体がそれと反応する、核抗原;バクテリアの細胞壁において発生する、0抗原;胎児の発達中に発現されるが、成人の特殊組織中で抑止され、特定の癌によっても発生される遺伝子産物であり、αフェトプロテインおよび癌胎児性抗原を含む、腫瘍胎児抗原;特定臓器中で独占的に発生する任意の抗原であり、他の臓器からそれを区別する働きをする、臓器特異抗原;部分抗原;植物の花粉の本質的なポリペプチドである、花粉抗原、;低頻度の血液型の抗原である、私有抗原;個体がすでにそれに感作されており、超過敏反応を引き出すための負荷用量としてその後投与される抗原である、リコール抗原;胚発生中に免疫システムから解剖学的に隔絶され、したがって、「自己」として認められないと考えられ、そのような抗原は成人期中に免疫システムにさらされるはずであり、自己免疫反応が引き出される特定の抗原である、隔絶抗原;特異抗血清の使用によって特定可能な主要組織適合複合体のクラスI抗原である、血清学的規定(SD)抗原;微生物抗原またはその他の抗原に見出される配列に基づいて、化学的に合成されるかまたは組換えDNA技術、ポリマーの合成によって製造される、合成抗原、;T依存性抗原(ほとんどの抗原の免疫反応は、Tヘルパー(Th)リンパ球を必要とし、Tリンパ球によって生じたリンフォカインは、生成した抗体の特徴を決定し、それは免疫反応中に変化し得る);免疫反応が起こることができる前にTリンパ球の関与を必要とする抗原である、胸腺依存性抗原;Tリンパ球の関与なしで抗体反応を引き出す抗原である、胸腺非依存性抗原;免疫寛容原性の抗原;腫瘍細胞中のみに見出される抗原である、腫瘍特異性抗原(TSA);バクテリアの嚢内に含まれており、その毒性の一因となると考えられる抗原である、V抗原、Vi抗原;1つの種のメンバーに共通するが、その他の種のメンバーには共通しない、異種遺伝子型抗原とも呼ばれる異種抗原。
【0063】
「補体経路」とは、不活性な酵素前駆体の形で通常存在する多数の血清糖タンパク質でできている複雑な酵素カスケードを指す。この系は、3つの個別経路:「古典経路」、「代替経路」および「レシチン経路」を有する。この補体系の古典経路は、ヒト免疫反応の体液性分岐部の主要なエフェクターである。この古典経路に対するトリガーは、抗原に結合されたIgGまたはIgM抗体のいずれかである。抗体の抗原への結合は、第1の補体成分、Cl、に対する結合部位である抗体上の部位をさらす。
【0064】
「補体第二経路」すなわちAPCは、その活性化のために抗体を必要としない。それどころか、細菌性リポ多糖(LPS)およびウイルスの成分等のさまざまな抗原、ならびにその他の病原体は、この経路を活性化する能力を有する。理論に縛られるのではなく、古典的な補体経路より早く展開したことが考えられ、それは比較的最近発展した抗体分子に依存している。古典的経路のように、代替経路は、C3およびC5転換酵素の両方を生成し、それはC5bの生成および次いで細胞膜傷害複合体(MAC)の形成をもたらす。けれども、特定の分子プレイヤーおよびその経路に沿った通路は、しかしながら、古典補体経路のそれと異なる。
【0065】
各経路に対する刺激因子は、はっきりと区別できるが、それぞれの因子は、細胞膜傷害複合体(MAC)、さまざまな細胞表面に穴をあける酵素複合体、を作り出す類似の末端配列を有する。加えて、その代替および古典経路は両方とも、それらの副産物として炎症反応の一因となるいくつかのアナフィラトキシン−低分子ペプチドを有する。
【0066】
補体系に含まれる分子は、名称「C」と次に数字、例えば、「C1」が一般に与えられる。その数字は、それらがそのカスケード中で作用する順番を示すものではなく、それらが発見された順番を指している。補体タンパク質は、酵素前駆体の形で通常は存在し、さまざまな分子の継続的な開裂によって連続して活性化される。補体タンパク質が裂かれるとき、一般に「a」および「b」と呼ばれる2つの断片が形成される。補体分子C5は、例えば、断片C5aおよびC5bに開裂される。
【0067】
オボアルブミン、または「ova」は、水溶性アルブミンであり、鶏卵の白味の主成分である。卵の白身中のタンパク質全体のほぼ60〜65%はオボアルブミンである。オボアルブミンは、貯蔵タンパク質として作用することができ、鶏卵のオボアルブミンは被験者におけるアレルギー反応を刺激する抗原として使用され得る。
【0068】
ここで使用される用語「動物」とは、1)セルロース壁のない細胞を有しており、2)葉緑素および光合成のための能力に欠けており、3)より複雑な食品材料、例えばタンパク質を必要とし、4)より高度の複雑さまで組織化されており、そして5)刺激に対する自発運動および素早い運動反応の能力を有している一般的に植物とは異なる多細胞生物、および単細胞生物を含めた動物界のメンバーを含むがこれらに限定されない任意の生物界を指す。ここで使用される用語の動物とは、任意の動物界の大規模な区分または亜界、およびそれらの下の主要な種類をも指し、以下に限定されないが:哺乳類または哺乳動物を含み、アイ類(Ayes)または鳥類、爬虫類、両生類、魚類、嚢鰓類(Marsipobranchiata(Craniota))、およびナメクジウオ綱(無頭類)を含めた脊椎動物;サルバ綱、およびAscidioideaまたはホヤ類を含む被嚢動物亜門;昆虫綱、多足類、Malacapoda、蛛形綱、ウミグモ類、節口綱、甲殻綱(節足動物門)、およびGehyrea(Anarthropoda)を含む有関節綱またはAnnulosa;輪虫綱、毛顎動物門、Nematoidea、鉤頭虫類、紐型動物、渦虫類、吸虫綱、条虫綱、中生動物を含む蠕虫類(Helminthesまたはvermes);腕足類およびコケムシ類を含む擬軟体動物;頭足綱、腹足綱、翼足目、堀足綱、
弁さい類または無頭類を含む軟体動物門;ナマコ類、ウニ綱、ヒトデ綱、クモヒトデ類、およびウミユリ綱を含む棘皮動物門;花虫綱またはポリプを含む腔腸動物;有櫛動物門およびヒドロ虫綱またはハチクラゲ類;海綿動物を含むSpongiozoaまたは海綿動物門;および滴虫類および根足虫類を含む原生動物が挙げられる。ここで使用される用語の動物とは、以下の非限定の例をさらに指す:ヒト、霊長類、イヌ、ネコ、乳牛、子羊、ブタ、雄ブタ、家禽、ウマ、雌馬、ラバ、雄ロバ、雌ロバ、雄子ウマ、子ウシ、当歳馬、種ウシ、雄ウシ、ヒツジ、ヤギ、ラマ、バイソン、バッファロー、子羊、子ヤギ、子ブタ、めんどり、ニワトリ、シチメンチョウ、アヒル、ガチョウ、ダチョウ、その他の鳥類または野鶏、ウサギ、野ウサギ、モルモット、ハムスターマウス、ラット、その他のげっ歯類、魚およびその他の水生動物種、ならびに両生類。ここで使用される用語「動物」は、遺伝子導入動物をさらに指す。
【0069】
本明細書で使用される用語の「対象」とは、医学的または科学的研究の目的物である動物を意味する。
【0070】
ビシンコニン酸(BCA)タンパク質測定は、溶液中のタンパク質の全体濃度(例えば0.5μg/mLから1.5mg/mL)を測定するための生化学的分析である。全体のタンパク質濃度は、試料溶液のタンパク質濃度に比例する緑から紫への色の変化によって示され、それはそのとき、比色分析技術を用いて測定することができる。
【0071】
1926年以来、米国においてはミョウバンがヒトへの使用に対して認可された唯一のアジュバントであったが、それは体液性免疫反応(Th2タイプ)を生ずるのみである。その上、ミョウバンアジュバント・ワクチンは通常の凍結乾燥および冷凍の際の有効性の喪失を含めた多くの不都合を有する(Maaら、J.Pharm.Sci.2003年;92(2):319〜32頁)。今日利用できる多数のワクチンの低温保存は、特に開発途上国において製薬会社および供給者にとっての重大な関心事である。
【0072】
本明細書に記載されている実施形態において提供されるのは、体液性(細胞外病原体に対する)および細胞性(細胞内病原体に対する)を含む免疫システムの両方のアームを刺激することができる効果的なアジュバント製剤である。さらに、本開示は、周囲温度において物理的に安定であり、凍結−乾燥法に適しており、それ故コールドチェーン保存に対する必要性を取り除くことができるワクチンおよび送達製剤を提供する。その上、イヌリンアセテートは、新しいTLRアゴニストであり、粒子として製剤化されたとき免疫システムを刺激する。InAcをワクチンアジュバントとして使用する多くのその他の利点のいくつかが本明細書に提供される。
【0073】
下に提供されている開示は、イヌリン(β−In)の水溶性のβ多形相およびその合成誘導体イヌリンアセテート(InAc)のナノ粒子およびマイクロ粒子製剤の調製ならびにこれらの製剤の免疫増強物質としての用途について詳しく述べる。オボアルブミン(ova)は、モデル抗原として使用され得る。ovaを含有しているβ−InまたはInAcマイクロ粒子は、二重エマルジョン−溶媒蒸発法によって調製され得る。インビトロの遊離試験は、組み込まれたovaの殆ど(>95%)がβ−In粒子およびInAc粒子からそれぞれ16時間および528時間(22日)のうちに遊離されることを示す。
【0074】
マウスにおける免疫調査は、β−Inマイクロ粒子中に封入されたovaが封入されていない(遊離の)ovaよりも強い抗体反応を生じた(Th2タイプのみ)ことを示している。この結果は、アジュバントとしてミョウバン(唯一のFDA認可のアジュバント)が使用される場合の群と比較して反応の型が似ており強度はより大きかった。例えば、その反応の強度は、ミョウバンがアジュバントとして使用される場合の群の反応の強度の最大で約4倍、または約2倍から約4倍であり得る。また一方、ovaを含んでいるInAcマイクロ粒子は、ミョウバンに結合したovaよりも著しく高い抗体反応を生じた。
【0075】
例えば、ovaを含んでいるInAcマイクロ粒子を受けるマウスにおける全体のIgG反応は、ミョウバンに結合したovaを受けるマウスにおけるより最大約90倍大きい。その上、ovaを含んでいるInAcマイクロ粒子を受けるマウスにおけるIgG1反応は、ミョウバンに結合したovaを受けるマウスにおけるより最大約75倍大きかった。さらにまた、ovaを含んでいるInAcマイクロ粒子を受けるマウスにおけるIgG2a反応は、ミョウバンに結合したovaを受けるマウスにおけるより最大約1200倍大きかった。それ故、ovaを取り込んだInAc粒子は、ovaに結合したその他のアジュバントより著しく高い抗体反応を生ずることができる。例えば、ovaを取り込んだInAc粒子は、ミョウバンに結合したovaより以下のように著しく高い力価を生ずることができる:全体のIgGは、少なくとも約5〜100倍高く、少なくとも約10〜150倍高く、または少なくとも約10〜200倍高い;IgG1は、少なくとも約10〜100倍高く、少なくとも約15〜85倍高く、または少なくとも約20〜80倍高い;そしてIgG2aは、少なくとも約2〜1500倍高く、少なくとも約100〜1500倍高く、または少なくとも約500〜1500倍高い。
【0076】
意義深くも、InAcマイクロ粒子は、現代のワクチン送達技術において求められるTh1およびTh2タイプの両方の免疫反応を発生させた。開示された実施例が、皮内(i.d.)ルートによって行われた事実は、ワクチン供給技術、例えば、極微針またはi.d.ルートを使用するその他の送達方法などにおけるアジュバントとしてのInAc粒子の使用の可能性をさらに際立たせる。
【0077】
本開示は、また、投与量、粒径(ナノ粒子対マイクロ粒子)および投与ルートを調節することによって操作され得る免疫反応の程度を明らかにする。InAc粒子のさまざまな大きさは、緩衝剤、界面活性剤、溶媒およびその他の賦形剤の精選された組合せの使用によって調製され得る。これらの複合的な製剤は、それらの免疫活性化作用のおかげで、幅広い使用の可能性を有する。本明細書に記載されている組成物は、著しく高い(細胞性のおよび体液性の)免疫反応特性および改善された安全性プロフィールを備えた新規なそして費用効率が高いワクチンアジュバントを提供するために使用され得る。
【0078】
本明細書に記載されているアジュバント製剤は、アジュバントとしてのミョウバンより強い免疫反応を提供する。本発明のこのアジュバント製剤は、体液が媒介となる免疫性(Th2;細胞外病原体に対する)および細胞が媒介となる免疫性(Th1;細胞内病原体に対する)の両方の産生を刺激し、このことはミョウバンを含めたその他のアジュバントを超える大きな利点である。さらに、現行のワクチンは、従来続けられている凍結乾燥および冷凍保存の際に有効性を失い得る。開示されているワクチンおよび送達製剤は、周囲温度で物理的に安定であることができ、冷凍乾燥に適しており、それ故コールドチェーン保存または保存料の添加に対する必要性を取り除くことができる。
【0079】
本明細書で提供されるアジュバント製剤は、生体適合性であり、生分解性である。イヌリンは、無毒性のプロフィールを有する利点によりヒトにおける安全な使用の長い歴史を有する。イヌリンの代謝産物は、フルクトースおよびグルコースであり、これらは容易に排泄され得る。イヌリンは、無毒であると報告されており、食品添加物として使用されてきている。
【0080】
本明細書に記載されているアジュバント製剤は、植物から得られる。それらが植物を起源とするために、InAcを含めたこれらのアジュバント製剤は、普遍的に使用され得る。このことは、菜食主義者によって使用または消費されない動物に由来する物質とは際立って対照的である。その上、それらは植物から得られるために、ここで提供されるアジュバント製剤は、動物からの微生物または血液汚染の危険を伴うことはない。
【0081】
ここに記載されているアジュバント製剤は、現在利用できる選択肢を超える高められた安定性を提供する。市販ワクチンは、低温貯蔵を必要とし、それは、ワクチンの低温の貯蔵および輸送に付随する高いコストおよび増加する物流手配をもたらす。アジュバントとしてのInAcマイクロ粒子またはナノ粒子の使用は、周囲温度で物理的に安定であるほかに冷凍乾燥後も物理的に安定であるワクチン製剤を提供する。
【0082】
この増加した安定性は、コールドチェーンモニタリングおよび貯蔵に対して費用がかかる複雑な要件を取り除く。γ−イヌリン等の特定のアジュバントは、免疫アジュバント効果のために抗原溶液の同時注入を必要とする。この抗原とアジュバントの同時注入は、その抗原を凝集または分解しやすくすることができる。光、酸素または湿気に対してそれらを不安定にする特性を有する抗原は、InAcマイクロ粒子またはナノ粒子アジュバント中への封入によって保護されて保存寿命を改善することもできる。
【0083】
本明細書に記載されているアジュバント製剤は、産生するのに費用効率が高い。InAcは、市販の未加工のイヌリンを含めた任意の形のイヌリンから調製され得る。本明細書に記載されているアジュバント製剤は、その他の洗練されたワクチン供給システムより著しく低いコストで調製され得る。本明細書で提供されるInAcを準備することによって、さまざまな形のイヌリンを調製する複雑な手順は避けることができ、いろいろなイソ型の間の多様な形を持つ転化は懸案事項ではない。InAc調製の収率は、際立って100%近くであり、これはγ−イヌリン調製の10〜50%の収率と比較して非常に好都合である。
【0084】
本明細書に記載されているアジュバント製剤は、優れた分散性および動態ならびに均一な粒径を提供する。分散性は、ワクチン製剤の調製、取扱い、および複数の投与バイアルからの投与に対してその重要な特性である。InAcマイクロ粒子またはナノ粒子は、適切な界面活性剤および抗凍結剤を使用することによって容易な再分散性に向けて最適化された。それ故、ここで提供されるInAc製剤は、水性溶媒または緩衝液中で均一に分散され得る。このInAcマイクロ粒子またはナノ粒子は、振盪時に水溶液中に均一に分散させることができ、それ故それらは、複数の投与バイアルから標準操作手順を用いて容易に投与することができる。
【0085】
本明細書に記載されているアジュバント製剤は、抗原の持続放出を提供する。抗原は、本明細書に記載されているInAc製剤から長期間(1〜2ヶ月、2〜3ヶ月、またはそれ以上を含むがこれらに限定されない)にわたって放出され得る。長期間にわたる抗原放出のために、本発明の製剤は、追加抗原投与の必要性なしでの、シングル・ショット・ワクチンとして使用され得る。ワクチンの反復投与の必要性を取り除くことによって、本明細書に記載されている製剤は、コストの著しい削減を提供し、患者および医療提供者にとってより好都合である。1回を超えるワクチンの注射に対する必要性の排除によって引き起こされるその他の利点が存在する。例えば、患者コンプライアンスが増すと、予防接種キャンペーンはより支持され得る。さらにまた、本明細書に記載されている製剤の粒子の大きさは、操作する(ナノ粒子対マイクロ粒子)ことができるので、患者における望ましい送達先も、選択することができ、それは、言い換えると、結果として得られる免疫反応におけるより大きな正確さを可能にする。
【0086】
本開示は、β−イヌリンおよびイヌリンアセテートを新たな毒性のない生体適合性のワクチンアジュバントおよび送達製剤として提供する。イヌリンは、ヒトでの安全な使用の長い歴史を有しており、その代謝産物(フルクトースおよびグルコース)は容易に排泄される。予備的な観察は、マウスにおける注射の部位でInAcおよびInAc製剤と関連する目に見えるまたは組織学的な毒性は示さない。ヒトにおいて注射の部位で何らかの局所炎症または刺激が現れる場合は、組み込まれるアジュバントの量を減らすことによってこの問題は実質的に回避される。減少された量のβ−イヌリンまたはInAc粒子における必要な抗原用量に適応させるために、その抗原負荷は、そのナノ/マイクロ粒子を調製する間に、その製剤およびプロセスパラメーターを操作することによって増加させることができる。
【0087】
いくつかの方法が、溶媒/無溶媒、単一エマルジョンおよび二重エマルジョン準備技術を含めて使用され得る。二重エマルジョン法によって調製されたマイクロ/ナノ粒子は、試験された類似の製剤条件の下で、高い抗原負荷、低いバースト放出(最初の30分間に粒子から放出される抗原の割合)、および持続放出の増加の有利な組合せを有することが見出された。しかしながら、製剤パラメーターを変化させることによって、その抗原の負荷は、任意の既知の方法で達成される負荷を超えてさらに高めることができた。InAcマイクロ/ナノ粒子中への抗原の負荷は、その負荷条件を、約100mgのInAcポリマー当たり約100μgの抗原から約100mgのInAcポリマー当たり約20mgの抗原まで増やすことにより、その製剤中の抗原:ポリマー比を増やす(0.4μg/mg粒子から51μg/mg粒子)ことによって、さらに増やすことができる。この比率は、最適化された処方因子により、約75μg/mgのInAc粒子または約100μg/mgのInAc粒子まで増やすことができる。ナノ/マイクロ粒子の内側の抗原の負荷は、装填手順において抗原と共にマンニトールを組み込むことによってさらに高めることができる。最大約100μg/mgのInAc粒子の抗原量が、マンニトールの存在下で装填され得る。同様に、その他の炭水化物または親水性物質(例えば、トレハロース)を、マイクロ/ナノ粒子の内側の抗原の負荷を高めるために製剤中に加えることができる。
【0088】
β−イヌリン中への抗原装填効率は、著しく高い。1mg当たり抗原最大約500μg(例えば、抗原100μg、200μg、300μg、400μg、または500μg/mg(β−イヌリン))の抗原の装填が達成され得る。それ故に、ここで提供される製剤は、治療の目的、抗原の特殊性、および/または患者の独特の必要性に合うように、必要に応じて抗原の送達を調整する能力を与える。
【0089】
下記事項は、本発明の組成物および製剤のいくつかの研究および商業的応用の非限定の例として提供される。
【0090】
イヌリンおよびInAc粒子は、ワクチン送達系およびワクチンアジュバントの両方として機能する。強力で安全なワクチンアジュバントはまれである。非限定の例として、癌ワクチンならびに細胞外の病原体および細胞内病原体(例えば、ウイルスおよび寄生虫など)に対するワクチンが、本発明の製剤の使用がTh1およびTh2タイプの両方の免疫反応を活性化するために有益であるごくわずかのワクチンの例である。この発明において提供される技術は、免疫反応の両腕を刺激することにおける既存の技術(ミョウバン)よりも優れており安全なやり方を提供する。この発明の組成物および製剤は、種々のそして非常に広範囲の疾病および健康状態に対するヒトまたは動物のワクチンアジュバントとして利用され得る。
【0091】
本明細書に記載されているアジュバント製剤は、他の免疫賦活性および/または免疫調節性の薬剤、例えば、サイトカインなど、もしくはリンフォカインおよびインターロイキンを含むがこれらに限定されないその他の調節タンパク質、または免疫系細胞もしくはその他の細胞の産物、ならびに免疫反応のような反応の変調における細胞内媒介物として作用する免疫系細胞もしくはその他の細胞の産物、あるいは病原体関連分子パターン(PAMS)またはパターン認識受容体(PRR)のための任意の配位子のような免疫システムを非特異的に刺激する病原体の産物と混合することができる。適切な例としては、CpG、またはその他のTLRアゴニスト、インターロイキンIL−1からIL−35およびその他、インターフェロン(タイプ1およびタイプ2を含めた全てのタイプ)が挙げられル画これらに限定するものではなく、これらは、免疫反応をさらに調節し、高めるために、本明細書に記載されているアジュバント製剤と共に使用され得る。
【0092】
本明細書に記載されているアジュバント製剤は、患者における薬物または薬剤の送達のために他の治療法と組み合わせることができる。例えば、アジュバント製剤は、癌治療のためには化学療法剤(例えば、ブレオマイシン、ドキソルビシン、パクリタキセル、5−フルオロウラシル、ビンクリスチンなど)、アルツハイマーの治療のためには、ドネペジル、ガランタミン、メマンチン、リバスティグミン、またはタクリン等の薬物と、またはその他の治療のためには、光線力学療法および/または栄養補助食品(例えば、クルクミン、ω−3脂肪酸、ビタミンCなど)と組み合わせて投与することができる。
【0093】
本明細書に記載されているアジュバント製剤は、ワクチンの目的で使用されて、さまざまな抗原の送達を提供することができる。本明細書に記載されている組成物および製剤は、ウイルス抗原、サブユニット・ワクチン、腫瘍抗原、アレルギー抗原(allergies as antigens)、DNAまたはRNAワクチンを含めた核酸ワクチン、組換えタンパク質および組換え抗原、ならびにタンパク質/炭水化物/多糖抗原を含むがこれらに限定されない抗原を送達するために使用され得る。
【0094】
本明細書に記載されているアジュバント製剤は、幅広い種類の病気および健康状態の治療および予防のために、抗原、調合薬またはタンパク質、あるいは任意のその他の治療化合物または製剤と共に使用され得る。本明細書に記載されている新規な組成物および製剤は、ヒト、哺乳類およびその他の動物、ならびにその他の生物に影響を及ぼす状態に対する治療法、予防法、またはワクチンとして使用され得る。
【0095】
本発明の組成物および製剤は、抗原、他の薬剤、調合薬、タンパク質、または任意のその他の適切な化合物もしくは製剤と組み合わせて、マラリア、インフルエンザAおよびB、その他のインフルエンザおよびそれらの変種、例えば、季節性インフルエンザ、ブタインフルエンザ、パラインフルエンザ、汎発性インフルエンザ、抵抗性汎発性インフルエンザ、トリインフルエンザなど、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、炭疽、ジフテリア、ヘモフィルスインフルエンザb菌(Hib)、エイズ、脳炎、日本脳炎(JE)、ライム病、マラリア、マールブルグ病、麻疹、サル痘、流行性耳下腺炎、百日咳、風疹、灰白髄炎(ポリオ)、狂犬病、ロタウイルス、天然痘、破傷風(開口障害)、結核、腸チフス、黄熱病、熱帯病、寄生虫症、リーシュマニア症、コンフォメーション障害、肉胞子虫感染症、慢性疲労症候群、出血熱、レプトスピラ症、ボツリヌス中毒症、デング熱、Q熱、バベシア症、レジオネラ症、トリパノソーマ症、ハンセン病、ライム病、およびロッキー山紅斑熱が挙げられるがこれらに限定されない疾病に対する治療、予防またはワクチンとして使用することができる。
【0096】
本発明の組成物および製剤は、抗原、他の薬剤、調合薬、タンパク質、または任意のその他の適切な化合物もしくは製剤と組み合わせて、疾病のための治療または予防あるいはワクチンとして使用することができ、そのような疾病または健康状態としては、限定はされないが、ジアルジア種、連鎖球菌種、ブドウ球菌種、エシェリキア種、腸内細菌科種、腸球菌種、ヘモフィルス種、マイコバクテリウム種、粘液細菌種、ナイセリア種、プラスモジウム種、シュードモナス種、サルモネラ種、シゲラ種、髄膜炎菌種、レプトスピラ種、カンジダ種、コポデラ(Copodella)種、酵母種、真菌種、クリプトコッカス種、バルトネラ種、リケッチア種、ボレリア種、トリパノソーマ種、カンピロバクター種、ロタウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、エイズ、トリインフルエンザウイルス、帯状疱疹(Herpes zoster)およびHSV(単純疱疹ウイルス)を含めたヘルペス・ウイルス、ヒトパピローマウイルス(HPV)、ヘンドラウイルス、ヒト・メタニューモウイルス、ライノウイルス、ボカウイルス、コロナウイルス、浸潤性サフォルドウイルス、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、ハンタウイルス、出血熱ウイルス、ワクシニアウイルス、SARSウイルス、ウエスト・ナイル・ウイルスによって引き起こされるもの;ウシ海綿状脳炎(BSE)およびニパウイルス、ブルセラ症、狂犬病ならびに嚢虫症/条虫症およびエキノコックス症/包虫症を含むがこれらに限定されない寄生虫症、動物インフルエンザ、無視された人獣共通感染症、を含むがこれらに限定されない人獣共通感染症疾患、反芻動物疾患、ブタ生殖器呼吸器症候群(PRRS)、ブタ流行性下痢、エーリキア症、ブルータング病、慢性消耗病、ブタコレラ、ウマ伝染性子宮炎、ウマヘルペスウイルス、ウマ伝染性貧血、ウマピロプラズマ病、ウマウイルス性動脈炎、口蹄疫、ヨーネ病、ピロプラズマ症、仮性狂犬病、スクレピー、春のウイルス血症コイ、水疱性口内炎;食品媒介疾患、プリオンによって引き起こされる疾患、クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)および変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vJD)、コクサッキーウイルス種;ダニ媒介疾患、蚊媒介性疾患、コウモリ媒介性疾患、げっ歯類媒介性疾患、トリ媒介性疾患、ならびに抗真菌薬および抗菌薬に耐性を示す疾患、が挙げられる。
【0097】
さらに、本明細書に記載されているアジュバント製剤は、抗原、他の薬剤、調合薬、タンパク質、または任意のその他の適切な化合物もしくは製剤と組み合わせて、癌の予防または治療のため、または癌症状および副作用の緩和のために使用することができ、例えば、自己免疫の不調および疾患、認知症およびアルツハイマー病を含むがこれらに限定されない記憶に影響を及ぼす疾患、運動機能に影響を及ぼす疾患、クローン病、消化管の疾患、ならびに遺伝的障害および疾患などの状態の治療においてなどで使用することができる。本明細書に記載されている製剤および組成物は、癌および/またはその他の悪性腫瘍の治療のため、あるいはその同じものと関連する症状および副作用の緩和のためにその腫瘍と関連する抗原を送達するために使用され得る。組換えDNA抗原は、有力なワクチン製剤として本発明の製剤および組成物と共に首尾よく送達することができる。
【0098】
本発明の組成物、製剤および方法は、1つまたは複数のヒトまたは動物における1つの免疫反応または複数の免疫反応の産生において使用され得る。これら組成物および方法は、研究、商品、分析試料、医薬および医療、ワクチン、およびその他の関心領域において使用するための、動物から、または動物の産物(例えば卵)、または動物の構成成分(例えば、血液、リンパ液、組織、細胞および動物から生じるその他の構成成分)からの多数の抗体の産生において使用され得る。これら組成物および方法は、また、例えば、モノクロナール抗体、ポリクローナル抗体、および抗血清、ならびに免疫システムまたは免疫細胞の任意のその他の望ましい産物の産生においても使用され得る。
【0099】
本発明のアジュバント製剤は、投与のさまざまなルートを可能にする。本発明の組成物および製剤は、非経口(例えば、皮下(SC)、筋肉内(IM)、または静脈内(IV))、経皮(TD)、直腸内(IR)、鼻腔内(IN)、肺、眼球内(IO)、胃内(IG)、膣内(IVG)、気管内(IT)、舌下、頬側、および/または経口を含めた投与のさまざまな異なるルートによって投与され得る。
【0100】
β−イヌリンおよびイヌリンアセテートマイクロ粒子およびナノ粒子
本明細書に記載されている組成物は、注射に適した形態、または経口、直腸、膣、局所、鼻、肺、または眼球投与に適した形態の薬剤的に受け入れられる担体、希釈剤または賦形剤中で処方することができる(例えば医薬品組成物)。これら組成物は、1または複数の、例えばワクチン接種抗原(組換え抗原を含む)、抗原ペプチド配列、または免疫グロブリンのような活性薬剤を含むことができる。
【0101】
複数の実施形態において、例えば、感染症、自己免疫疾患、免疫不全障害、腫瘍性疾患、変性疾患、または老齢疾患を予防、治療、または抑制することを目的として、患者における免疫反応を刺激する方法であって、患者に、本明細書に記載されている製剤の有効量を投与するステップを含む方法が開示される。
【0102】
複数の実施形態において、例えば、感染症、自己免疫疾患、免疫不全障害、腫瘍性疾患、または変性疾患、あるいは老齢疾患を予防、治療、または抑制することを目的として、患者における免疫反応を高める方法であって、患者に、本明細書に記載されている製剤の有効量を投与するステップを含む方法が開示される。
【0103】
本明細書で使用されている用語「十分に精製された」とは、他の多糖および/または他の外因的な生物学的物質(例えば、微生物または植物由来の物質)が本質的に含まれていないイヌリン製剤を指すと理解されるべきである。本明細書に記載されている製剤は、一般的には精製されまたは実質的に精製される。そのような製剤は、約10%未満(重量で)または約5%未満(重量で)の外因性生物学的物質を含み、チコリーからのイヌリンの商業生産において採用されている周知の温水抽出および精製プロセスを含めた当業者にはよく知られている任意の方法によって調製され得る(Stephen,A.M.ら、(編者)、Food Polysaecharides and their Applications、第2編、CRC Press、Boca Raton、FL(2006年))。
【0104】
これら組成物は、さまざまな活性薬剤、例えば、ワクチン接種抗原、抗原ペプチド配列、免疫グロブリン、またはそれらの組合せなどを含むことができる。そのほかに、またはさらに、この活性薬剤は、リンフォカインまたはサイトカイン、胸腺細胞刺激物質、マクロファージ刺激物質、内毒素、ポリヌクレオチド分子(例えば、ワクチン接種剤をコード化する)、CpG、または組換えウイルス・ベクター、微生物全体(例えば、細菌溶解物)、ウイルス全体(例えば、不活性化されたまたは弱毒化されたウイルス)、またはそれらの組合せであり得る。本明細書に記載されている組成物は、活性成分として不活性化/弱毒化したウイルス全体と共に使用され得る。本明細書で提供される組成物と組み合わせることができる薬剤のさらなる例は、上でおよびこの文書を通して提供される。本明細書に記載されている組成物への包含に適する有利なワクチン接種抗原としては、バクテリア、ウイルス、酵母、菌類、原虫およびその他の微生物、またはヒト、動物もしくは植物起源の病原体ならびに花粉およびその他のアレルゲン、例えば、毒液(例えば、ハナバチおよびスズメバチの毒液)および喘息誘発アレルゲン、例えば、イエダニ、ネコまたはイヌのふけの全てまたは抗原部分が挙げられる。
【0105】
さらなる有利なワクチン接種抗原としては、上文に提供されているものならびに:赤血球凝集素タンパク質のようなインフルエンザウイルスのウイルス抗原(例えば季節性の不活性化インフルエンザウイルスの菌株、組換え型のHA抗原、および季節性のHI、H3BまたはパンデミックなH5抗原)、およびインフルエンザ核タンパク質、ロタウイルスの外側のカプシドタンパク質の抗原、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)のgp120タンパク質のようなHIV抗原、呼吸器多核体ウイルス(RSV)の表面タンパク質、ヒトパピローマウイルス(HPV)の抗原E7、単純ヘルペス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス(例えば、HBsAg)、C型肝炎ウイルス(HCV)の表面タンパク質、不活化日本脳炎ウイルス、リッサウイルスの表面タンパク質(狂犬病の原因となる)、ならびに、赤痢菌、ポルフィロモナス・ジンジバリス(例えば、プロテイナーゼおよびアドヘシンタンパク質)、ヘリコバクターピロリ(例えば、ウレアーゼ)、リステリア菌、ヒト型結核菌(例えばBCG)、マイコバクテリウム・アビウム(例えば、hsp65)、クラミジア・トラコマチス、カンジダ・アルビカンス(例えば、カンジダ・アルビカンスの外膜タンパク質)、肺炎連鎖球菌、髄膜炎菌(例えば、クラス1外側タンパク質)、炭疽菌(炭疽病の原因となる)、Q熱コクシエラ(Q熱の原因となるが、自己免疫性糖尿病(即ち、1型糖尿病)に対する長期保護を誘発することもできる)およびマラリア病原性の原虫(例えば、熱帯熱マラリア原虫および三日熱マラリア原虫など)などを含むがこれらに限定されない微生物からの抗原が挙げられる。
【0106】
そのほかの有利な抗原は、癌抗原(即ち、1または複数の癌と関連する抗原)、例えば:癌胎児性抗原(CEA)、ムチン−1(MUC−1)、上皮腫瘍抗原(ETA)、p53およびrasの異常産物、およびメラノーマ関連抗原(MAGE)である。そのほかの有利な抗原としては、免疫療法によってアレルギーを治療するためのアレルゲン(例えば、花粉、イエダニ、草の花粉、ピーナツアレルギー、および同類のもの)が挙げられる。
【0107】
本明細書に記載されている組成物がワクチン接種抗原を含む場合、その組成物は、また、抗原結合担体物質、例えば、マグネシウム、カルシウムまたはアルミニウムのリン酸塩、硫酸塩、水酸化物あるいはそれらの水和物(例えば、水酸化アルミニウムおよび/または硫酸アルミニウム)のような1または複数の金属塩または沈殿物など、および/または1または複数のタンパク質、脂質、硫酸化もしくはリン酸化多糖(例えば、ヘパリン、デキストランまたはセルロース誘導体)を含む有機酸、キチン(ポリN−アセチルグルコサミン)などの有機塩基およびそれの脱アセチル化誘導体または塩基性セルロース誘導体、および/またはその他の抗原も含むことができる。この抗原結合担体物質は、そのような物質の難溶性の粒子(例えば、水酸化アルミニウム(ミョウバン)ゲルまたはそれらの水和した塩錯体の粒子)を含むことができる。有利には、この抗原結合担体物質は、凝集する傾向はなく、および/または凝集を避けるために処理され得る。いくつかの実施形態において、この抗原結合担体物質は、水酸化アルミニウム(ミョウバン)ゲル、リン酸アルミニウムゲルまたはリン酸カルシウムゲルであり得る。
【0108】
本明細書に記載されている組成物がワクチン接種抗原を含むとき、その組成物は、薬剤的に受け入れられるビヒクルを含むこともできる。抗原のそのような組成物および製剤は、少なくとも0.1%の活性薬剤(例えば、本明細書に記載されているβ−InまたはInAc組成物の抗原)を包含すべきである。その組成物および製剤中の活性薬剤の割合は、勿論、変化させることができ、都合よくは、与えられた単位投薬形態の重量の約1%から約60%、約1%から約10%、または約2%から約5%までであり得る。そのような治療的に役立つ組成物中の活性化合物の量は、有効量のレベルが得られるようなものである。
【0109】
抗原結合担体物質が組成物中に存在するとき、それは、例えばそのような物質との共結晶のように、β−InまたはInAcと本質的に結びついた形で存在することができる。β−InまたはInAcと金属塩のような抗原と結合している担体物質との微粒子型の共結晶は、例えば、
【0110】
(a)β−In粒子を水中で加熱することによってイヌリン溶液を準備し、
【0111】
(b)その溶液に1または複数の金属塩の一定量を添加し、
【0112】
(c)溶液からβ−Inを再結晶させて、β−Inの金属塩との共結晶を提供し、
【0113】
(d)形成されたβ−Inの1または複数の金属塩との共結晶を単離する
ことによって調製することができる。その金属塩は、例えば、マグネシウム、鉄、カルシウム、アルミニウム、または同種のもののリン酸塩、硫酸塩、水酸化物、または水和物であり得る。
【0114】
金属塩等の抗原結合担体物質と組み合わされているβ−Inの粒子の直径は、約10nmから5μm、または約150nmから約30mmであり得る。より大きい粒子(例えば、直径が約2μmより大きい)は、ゲル等の製剤中で使用され得る。抗原結合担体物質と組み合わされているβ−Inの粒子は、イヌリン材料対抗原結合担体物質の相対量(重量で)を約1:20から約200:1の比率で含むことができる。
【0115】
複数の実施形態において、例えば、感染症、自己免疫疾患、免疫不全疾患、腫瘍性疾患、変性または加齢疾患を予防、治療、または阻止するために、患者において免疫反応を刺激する、または患者において免疫反応を高める、引き出す、あるいは減少するまたは防止する方法が開示され、その方法は、本明細書に記載されている有効量の製剤を患者に投与することを含む。本明細書で提供される製剤は、上文で提供された抗原またはその他の化合物と組み合わされると、患者において免疫能力を生み出し、抗原またはその他の化合物の免疫認識を生み出し、ならびに患者の免疫システムの抗原またはその他の化合物に対する感受性を増すことができる。
【0116】
用語「有効量」とは望ましい効果を提供するために、無毒であり、しかし、十分な量の製剤/免疫組成物を一般的には指す。正確な必要量は、処理される種類、患者の年齢および全身状態、処理される状態の重症度、投与される特定の製剤/免疫組成物、および投与方法などによって患者ごとに変動し得る。したがって、正確な「有効量」を特定することは常に可能とは限らない。しかしながら、任意の与えられた場合に対して、しかるべき「有効量」は当業者によってルーチン的に決められ得る。
【0117】
約2〜5ミクロンの粒径を有するマイクロ粒子、および約100〜400nmの粒径を有するナノ粒子は、本明細書の実施例に開示されるように一般的には調製され得る。しかしながら、本明細書に記載されているInAcマイクロ粒子についての粒径範囲は、約1μmから約30μm、または約1.5μmから約25μmであり得、本明細書に記載されているInAcナノ粒子についての粒径範囲は、約10nmから約1000nm、15nmから約950nm、または20nmから約900nmであり得る。
【0118】
本明細書に記載されている方法は、免疫反応を誘発または調節するために、ヒトまたはヒトでない動物の患者における単核免疫細胞(例えば、単球、マクロファージ、および/または樹枝状細胞)機能および/または補体経路の活性化または調節によって、患者において免疫反応を引き起こし、刺激し、引き出し、高め、増大し、生み出し、ブーストし、または改善することができる。この免疫反応の誘発または調節は、例えば、バクテリア、マイコプラズマ、真菌、ウイルス、原生動物またはその他の微生物による感染の、あるいは虫もしくは寄生虫または任意の上記の抗原もしくは病原体による寄生の、処置、抑制、または防止のため、あるいはそのような感染によって引き起こされた免疫病理を処理、抑制、または防止するため;免疫障害、例えば、アレルギー性もしくはリウマチ性疾患、自己免疫疾患、免疫不全症、または免疫システムの機能障害と関係する神経、皮膚、腎、呼吸または胃腸障害などの治療または抑制;あるいは腫瘍または癌細胞の処置または抑制、あるいはアルツハイマー病のような神経変性疾患におけるタンパク質凝集の防止または排除のためであり得る。そのようなものとして、本発明は、患者における癌を治療し、抑制し、または防止する方法であって、患者に本明細書に記載されている製剤の有効量を投与するステップを含む方法にまでおよぶことも理解されるべきである。
【0119】
以下の実施例は、上記の発明を説明することを意図し、その範囲を狭めるものとして解釈すべきではない。当業者であれば、これら実施例が本発明を実行し得る多くのその他の方法を示唆することを容易に認識するであろう。本発明の範囲から逸脱することなく多数の変形および変更を行い得ることを理解すべきである。
実施例
【実施例1】
【0120】
イヌリン調製
1.1.β−イヌリン(β−In)の調製。β−イヌリンは、原料イヌリンからエタノール沈殿法によって調製された。ダリア塊茎から得られた市販の原料イヌリン(Thermo Fisher Scientific、USA)をエタノール中に懸濁させ、4℃で一晩そのまま放置した。翌日、沈殿したβ−イヌリンを遠心分離後分離し、凍結乾燥した。その乾燥したβ−イヌリンは、その後下記のさらなる調査のために使用された。
【0121】
1.2.イヌリンアセテート(InAc)の合成。2グラムのβ−イヌリンを15mLのジメチルホルムアミド(DMF)に加えて溶液を形成し、β−イヌリンの完全な溶解のために撹拌させた。次いで25mLの無水酢酸を加え、アセチル化反応を、窒素下の40℃で24時間行った。酢酸ナトリウム(0.1%,w/v)をその反応のための触媒として使用した。24時間後、InAcが大過剰の冷水中で沈殿させられ、濾過後集められた。InAcをさらに2回水で洗浄して未反応のβ−イヌリンの痕跡を除去し、そのまま一晩乾燥させた。その調製されたInAcは、下記のさらなる調査のために使用された。
【実施例2】
【0122】
抗原負荷(loaded:ロードされた)マイクロ粒子の調製
2.1 オボアルブミン(ova)負荷β−イヌリンマイクロ粒子の調製。β−イヌリンマイクロ粒子が、片面(油中水滴型)エマルジョンナノ沈殿法によって調製された。β−イヌリン(100mg)およびova(10mg)が、10mLの10mMでpH7.4のリン酸緩衝液(水相)中に溶解された。フルオレセインイソチオシアネート(FITC)標識付きのovaが、ovaの負荷および放出特性を判断するためにマイクロ粒子調製におけるovaの代わりに使用された。水相が、安定な油中水滴型(w/o)エマルジョンを得るために、界面活性剤として1%w/vのTween−80を含んでいる連続的に撹拌されている(1000rpm)30mlの軽油中に滴下方式で加えられた。そのエマルジョンは、4時間にわたって撹拌され、次いで30mLのアセトンを滴下方式で加えてβ−イヌリンマイクロ粒子を沈殿させた。そのエマルジョンは一晩中撹拌されたままにされ、β−イヌリンマイクロ粒子が、4℃での3000g、30分の遠心分離により集められた。そのペレット化されたova負荷β−イヌリンマイクロ粒子は、次にn−ヘキサンで2回洗浄され、−80℃に1時間保たれ、48時間にわたって凍結乾燥された。
【0123】
2.2.オボアルブミン負荷InAcマイクロ粒子の調製。ova負荷InAcマイクロ粒子が、二重(w/o/w)エマルジョン溶媒蒸発法によって調製された。手短に言えば、200μLの50mg/mLのova溶液が、水相(W1)としての10mMのリン酸緩衝液(pH7.4)中で50μLの10mg/mLのPluronic F−68溶液(界面活性剤)と共に混合された。この水相は、100mgのInAcを含んでいる油相(O)としての5mLのジクロロメタン(DCM)と共に乳化され、初期(w/o)エマルジョンの形成をもたらした。この初期エマルジョンは、次に界面活性剤として0.5%w/vのポリビニルアルコール(PVA)を含んでいる別の水(W2)相(30mLの水)中に連続的撹拌(800rpm)と共に滴下方式で加えられ、二重(w/o/w)エマルジョンの形成をもたらした。その撹拌は、有機溶媒の完全な蒸発のために一晩中続けられた。その後、マイクロ粒子は、4℃での30分間にわたる50,000gでの遠心分離により集められた。その上澄み液は廃棄され、ペレット化されたova負荷InAcマイクロ粒子は、100mMのクエン酸塩緩衝液pH7.4中に再び懸濁され、−80℃で1時間にわたって保たれ、その後48時間にわたって凍結乾燥された(VirTis、Gardiner、NY)。
【0124】
2.3.オボアルブミン負荷InAcナノ粒子の調製。ova負荷InAcナノ粒子が、二重(w/o/w)エマルジョン溶媒蒸発法によって調製された。手短に言えば、200μLの50mg/mLのova溶液が、水相としての10mMのリン酸緩衝液(pH7.4)中で50μLの10mg/mLのPluronic F−68溶液(界面活性剤)と共に混合された。 この水相は、100mgのInAcを含んでいる油相としての5mLのジクロロメタン(DCM)と共に、10Wで20秒間プローブ超音波処理(Sonics Vibracell、ニュータウン、コネティカット州)を用いることで乳化され、初期(w/o)エマルジョンの形成をもたらした。この初期エマルジョンは、次に界面活性剤として3.0%w/vのポリビニルアルコール(PVA)を含んでいる別の水相(30mLの水)と共に50Wで120秒間プローブ超音波処理を用いることで乳化され、二重(w/o/w)エマルジョンの形成をもたらした。その二重エマルジョンは、有機溶媒の完全な蒸発のために一晩中、撹拌(800rpm)されるまま放置された。ova負荷InAcナノ粒子は、次に、4℃での30分間にわたる50,000gでの遠心分離により集められた。その上澄み液は廃棄され、ペレット化されたナノ粒子は、100mMのクエン酸塩緩衝液pH7.4中に再び懸濁され、−80℃で1時間にわたって保たれ、その後48時間にわたって凍結乾燥された(VirTis、Gardiner、NY)。
【0125】
2.4.粒径およびオボアルブミン負荷。粒子は、10mMのクエン酸塩緩衝液(pH7.4)中に分散され、それは0.22μmの細孔の大きさのフィルターを通してあらかじめ濾過され、粒径測定のために適切に希釈される。粒径は、サイズおよびゼータ電位アナライザー(Nicomp 360 ZLS、Santa Barbara、CA)を用いる動的光散乱法により測定された。ova負荷β−イヌリンマイクロ粒子は、1.74±0.14μmのサイズであり、ova負荷InAcマイクロ粒子は、約2lamのサイズであった(表1)。
【0126】
β−イヌリンマイクロ粒子中のova負荷を測定するために、既知量のFITC−ova負荷β−イヌリンマイクロ粒子を1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)溶液中に溶解した。ova含量は、励起−490nmおよび発光−530nmにおけるFITC−ovaの蛍光値を計測することによって測定された。ova濃度は、既知濃度のFITC−ovaを加えられたブランクのβ−イヌリンマイクロ粒子を用いて準備された標準曲線から計算された。このova負荷は、β−イヌリンマイクロ粒子のmgごとに存在する(w/w)ovaのラグとして報告した。オボアルブミン負荷は、75.3%±4のカプセル化効率を伴って、75.9±2.7μg/mgであった(表1)。
【0127】
InAcマイクロまたはナノ粒子中のova負荷を測定するために、 既知量のova負荷InAcマイクロまたはナノ粒子が、アセトンに溶解され、次いで沈殿したタンパク質が1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)溶液により抽出された。その抽出物中のオボアルブミン量は、ビシンコニン酸(BCA)タンパク質定量法により測定された。そのova濃度は、アセトンに溶解され、既知濃度のovaが加えられ、それが1%SDS溶液中でさらに抽出され、BCAタンパク質定量法により分析されたブランクのInAcマイクロまたはナノ粒子を用いて用意された標準曲線から計算された。この方法によって測定されたova負荷は、InAcマイクロまたはナノ粒子のmgごとに存在する(w/w)オボアルブミンのラグとして報告した。ovaの負荷は、およそ20.0±5.4μg/mgであった(表1)。
【0128】
【表1】
【0129】
いくつかの異なるサイズの粒子が調製された。プロセスおよび配合パラメーター、例えば、必要とされる超音波処理エネルギー、超音波処理の時間、界面活性剤のタイプ、界面活性剤濃度、相体積比、抗原の量などを変化させ、最適化させることによって、およびその他の成分の添加によって、異なるサイズ、異なる負荷および異なるバースト放出量(最初の30分間に放出される抗原の割合)のナノおよびマイクロ粒子が調製された。約100nmから1000nm、または約220nmから800nmのナノ粒子は、さまざまな修正された条件を使用して調製され得る。粒子のサイズおよび多分散性もまた、マイクロ粒子またはナノ粒子調製の修正された条件によって制御され得る。
【0130】
InAcマイクロ粒子は、超音波処理エネルギーのない中および低濃度の界面活性剤の存在下で製造された。界面活性剤の濃度は、界面活性剤のタイプおよび所望されるマイクロ粒子のサイズに依存し得る。およそ800rpmの撹拌スピードを用いる0.5%のポリビニルアルコールにより、得られたInAcマイクロ粒子のサイズは約2〜3μmであった。そのサイズは、界面活性剤のタイプ、界面活性剤の濃度、相体積比、溶媒蒸発時間および撹拌速度を変えることによって変動され得る。
【0131】
約100μmから約200μmの粒子は、成分のゆっくりの撹拌(例えば、約60rpm)により容易に調製され得る。界面活性剤の使用は、形成された粒子の凝集を減らすかまたは防ぐ助けとなり得る。したがって、重量で約0.05%から約3%の界面活性剤が、配合物を調製するために使用され得る。いくつかの配合物において、一定量のPVAなどの界面活性剤は、一旦形成された粒子中に留まることができる。抗凍結剤(例えば、マンニトールまたはトレハロース)が、粒子を凍結乾燥させるために使用され得る。
【0132】
界面活性剤の濃度を増すことにより、および粒子を破壊する超音波処理エネルギーを提供することにより、ナノメートルサイズ(200〜600nm)のInAc粒子を発生させることができる。この範囲は、提供される超音波処理エネルギーの量、超音波処理の時間、使用される界面活性剤のタイプと濃度、相体積比、溶媒蒸発速度および配合物の撹拌速度によって変動し得る。第2のエマルジョン中のより長い時間(最大5分までが試験された)にわたるより高い超音波処理エネルギー(最大50ワットまでが試験された)は、より小さい粒径を生じた。評価したいくつかの界面活性剤の中では、PVA(3%)の使用が、小さい粒子、直径260±26nm、をもたらした。
【実施例3】
【0133】
インビトロ遊離試験
FITC−ova負荷β−イヌリンマイクロ粒子(10mg)が、1mLの100mMリン酸緩衝液(pH7.4)中に分散され、37℃において100rpmで振盪しながらインキュベートされた。所定時間間隔で試験管が取り出され、20,000gで10分間4℃において遠心分離された。上澄み液の50μLのアリコートを遊離したFITC−ovaの測定のために採取し、同量の新たな緩衝液と置き換えた。上澄み液中の遊離したova濃度は蛍光分析によって測定された。このインビトロ遊離試験は、90%を上回るオボアルブミンが16時間内に遊離されたことを示した(
図6)。
【0134】
ova負荷InAcマイクロまたはナノ粒子(10mg)が、1mLの100mMリン酸緩衝液(pH7.4)中に分散され、37℃において100rpmで振盪をしながらインキュベートされた。所定時間間隔で試験管が取り出され、20,000gで10分間4℃において遠心分離された。上澄み液の50μLのアリコートを遊離したovaの測定のために採取し、同量の新たなリン酸緩衝液と置き換えた。上澄み液中のova濃度はBCA分析により測定された。このインビトロ遊離試験は、ova遊離が20日間を上回って持続されることを示した(
図2)。負荷されたovaの90%を上回って遊離するためにはβ−イヌリンの場合の16時間と比較して20日間を上回ることを必要とした。
【実施例4】
【0135】
免疫付与試験:ワクチンアジュバントおよび送達システムとしてのova負荷粒子。
イヌリンの不溶性のイソ型(γ、δおよびε)がワクチンに対するアジュバントとして試験された。しかしながら、β−多形相のようなその水溶性の形のイヌリンは、アジュバント/免疫増強効果を有することを示されることは決してなかった。以下の試験においては、ova負荷β−イヌリンまたはInAcマイクロ粒子およびナノ粒子の免疫増強能力が評価された。以下の免疫付与試験は、雄のBalb/Cマウス(n=群当たり4〜5、6〜8週を経たもの)を使用して実施された。
【0136】
4.1.ova負荷β−イヌリンマイクロ粒子免疫付与試験。マウスが、皮内(i.d.)ルートによって、以下の群:i)リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中のova(マウス当たり100ラグ);ii)PBS中のova(マウス当たり100ラグ)およびブランクのβ−イヌリンマイクロ粒子の物理的混合物;iii)PBS中の200μgのミョウバン(水酸化アルミニウム)と一緒の100ラグのova;およびiv)PBS中のova負荷β−イヌリンマイクロ粒子(100μgのovaと同等)により免疫付与された。
【0137】
ワクチン製剤は、標準的な使い捨ての27 1/2ゲージのシリンジを用いてマウスの毛を剃った背中の皮膚の2つの異なる部位に投与された(各部位で50μL)。目に見える隆起した皮膚の腫脹、成功したi.d.投与に対する証拠とみなされた。免疫手順の通り、マウスは「1日目」に一次投与量により、続いて「21日目に」追加投与量によりワクチン接種された。血液試料は、一次投与および追加投与後第1週目および第3週目に後眼窩叢から血清ゲル試験管中に集められた。試料は30分間3000gで遠心分離され、血清は、さらなる分析まで−80℃で保存された。
【0138】
ova負荷β−イヌリンマイクロ粒子により生じた抗体力価(IgG全体、IgG−1およびIgG2a)は、追加免疫付与後、ミョウバンがアジュバント作用をしたova群よりも著しく高かった(p<0.05)(
図5)。β−イヌリンマイクロ粒子は、ミョウバンより大きいIgG2a免疫反応を生じた(
図5C)。
【0139】
4.1.1.樹枝状細胞による抗原(ova)の取り込み。樹枝状細胞(DC2.4)が、37℃で、溶液中でFITC−ovaと共に1時間培養され、またはβ−イヌリンマイクロ粒子内部に入れられた。1時間の培養後、細胞は、徹底的に洗浄され、4%(w/v)パラホルムアルデヒド中に固定され、DC2.4細胞によるFITC−ovaの摂取を測定するために、フローサイトメトリーを用いて分析された(
図3(A))。同様の結果が、蛍光顕微鏡検査法により示された。DAPIは、細胞の核染色を示している(
図3(B))。このデータの数量化は表2に示されている。
【0140】
【表2】
【0141】
4.1.2.抗原提示細胞(APC)に対するトール様受容体(TLR)の刺激。Th1およびTh2反応を実証することに加えて、さまざまなポリマーが、APCに対してのTLRを刺激する候補を特定するためにふるいにかけられる。TLRは、パターン認識受容体(PRR)の群であり、病原体関連分子パターン(PAMPS)を通じて病原体によって活性化されると、Th1およびTh2タイプの方へ免疫反応を推進するいくつかのサイトカインを分泌する/放出する。TLR活性化(TLR3を除く)は、TNF−αのようなサイトカインを放出するためにMyD88またはMalと呼ばれるアダプター分子を必要とする。
【0142】
4.1.2.1.イヌリンアセテート(InAc)はTLR−4アゴニストである。野生型マウスのマクロファージ細胞およびMal/MyD88細胞(1×10
5細胞/ウェル)が、さまざまな製剤と共に12時間にわたって培養された。その後、培養上清中のTNF−αの濃度がELISAによって測定された(
図4(A)参照)。InAcは、My88マクロファージからのサイトカインTNF−αの放出を刺激したが、MalおよびMy88を欠いているマクロファージからのTNF−αの放出を刺激することはできなかった。TLR4(1×10
5細胞/ウェル)受容体が安定して移入されたHEK細胞が、さまざまな配合物:培地のみ、InAcマイクロ粒子(250μg/ml)、LPS(1μg/ml)およびザイモサン(1μg/ml)、と共に培養された。細胞上清が、刺激作用の16時間後に3つの部分からなるウェル中でのELISAによってIL−8分泌物について分析された(
図4(B)参照)。
【0143】
このデータからわかるように、InAcは、抗原提示細胞(APC)を刺激してサイトカインを放出させる(
図4(A))。さらに、InAcは、TLRを通して、特にTLR4受容体の活性化を通して、APCを活性化するようである(
図4(B))。InAcマイクロ粒子は、通例(明白なMyD88アダプタータンパク質)のマクロファージ細胞から著しく高められたTNF−αの分泌をもたらした。この分泌は、TLRアダプタータンパク質MyD88が同じ細胞から除去されたとき消滅された(
図4(A))。このことは、InAcがTLRの助けによって免疫細胞を活性化することをはっきりと示唆している。複数のTLR受容体が存在する。InAcは、特にTLR−4と相互作用することが見出された(
図4(B))。これはInAcがTLR−4と相互作用することによって先天性免疫反応を活性化することを示した最初である。可溶性β−イヌリンまたはγ−イソ型のいずれもTLRを活性化することはできなかった。ガンマイヌリンは、補体活性化第2経路(APC)を通して免疫システムを活性化することが知られている。APC活性化のアッセイは、健康人の血清中に存在するAPCの活性化に基づいてウサギの赤血球(RBC)の溶解を測定する。本明細書に示されているように、β−イヌリンまたはInAcのマイクロもしくはナノ粒子のいずれもが、APCを活性化することはできなかった。しかしながら本明細書に示されているように、γ−イヌリンおよびザイモサンは、APCを活性化した(
図16参照)。
【0144】
これらのデータに基づいて、β−イヌリン/InAc(マイクロまたはナノ粒子)は、免疫反応を活性化するアジュバントとして機能することにおいて、γ−イヌリンとは異なるメカニズムによって作用している可能性がある。さらに、TLR−4アゴニスト(InAc)を使用することによって、微粒子(ナノ/マイクロ)のワクチン送達システムが、確認され試験されており、そのシステムは、動物(例えばマウス)の免疫システムを刺激する能力を有する。主要な発見は、送達システムをつくるために使用されるポリマーが、それ自体TLRアゴニストであることである。この送達システムは、免疫反応を高めるためのその他のPAMPSを加える必要がない。免疫システムについて、InAcに基づく微粒子送達システムは、病原体と、それらが微粒子であり、多糖に基づく疎水性表面からなり、多数の抗原を封入するために使用され得、そしてPAMPシグナル伝達を提供することによってTLRを通してAPCを活性化する(自然疫反応)という点で類似している。
【0145】
4.2.この試験の結果は、ova負荷β−イヌリンマイクロ粒子が16時間の間封入された抗原(オボアルブミン)を放出し、FDA認可のミョウバンよりも著しく高い抗体力価(IgG全体およびIgG−1)を生じたことを示した。
【0146】
次の試験においては、水不溶性のβ−イヌリン誘導体のイヌリンアセテート(InAc)が使用された。この試験の目的は、抗原をInAcマイクロ粒子中に封入することによって長期間にわたる抗原の放出をさらに維持すること、ならびにそれらの免疫を強化する能力を評価し、InAcを体液性および細胞性の両方の免疫応答を刺激する新たなTLR4アゴニストとして使用することであった。体液性応答は、細胞外の病原体を取り除くために必要であり、細胞性応答は細胞内病原体に対して必要である。
【0147】
InAcの構造において、β−イヌリンのヒドロキシル基は、アセチル基によって置換されている。InAcのFTIRスペクトルにおけるβ−イヌリンのOHストレッチバンド(〜3326cm
−1)の消失、およびカルボニルバンド(C=0〜1743cm
−1)の出現は、β−イヌリンからの酢酸エステルInAcの合成を裏付けている(
図6)。カルボニルバンドに加えて、イヌリンアセテートは、アセテートC−Oバンド(〜1224cm
−1)および−CH
3バンド(〜1369cm
−1)の出現によっても特徴づけられる。マウス(n=群ごとに4〜5)が、以下の群:i)リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中のova(マウスあたり100ラグ);ii)PBS中のova(マウス当たり100μg)およびブランクのInAcマイクロ粒子の物理的混合物;iii)PBS中の200μgのミョウバン(水酸化アルミニウム)と一緒の100μgのova;およびiv)PBS中のova負荷InAcマイクロ粒子(100μgのovaに相当)を、皮内(i.d.)ルートにより、1日目および21日目に、一次および追加の免疫付与として注射された。血清は、間接的なELISA法を用いるIgG力価の分析のために一次および追加の免疫付与の1週間後および3週間後に採取された。使用された免疫手順の残りは、4.1項に記載されているものと同じであった。
【0148】
ova負荷InAcマイクロ粒子は、ミョウバンに結合したovaよりも著しく高い(p<0.001)抗体反応を生じた(全体のIgG、12〜87倍;IgG1、25〜60倍;IgG2a、7〜1000倍)。
図7は、免疫性を与えられたマウス血清中のova特異性のIgG全体、IgG−1およびIgG−2aの抗体力価を描いている。最も興味深いのは、InAcマイクロ粒子が、最新のワクチンで必要とされるTh1(IgG−2a)およびTh2(IgG−1)タイプの両方の免疫反応を発生させたことである。ovaのInAcマイクロ粒子中への封入は、高められた免疫反応をもたらした。ovaがブランクのInAcマイクロ粒子またはナノ粒子と単に混注されたとき、ovaに対する免疫反応の高まりは観察されなかった。しかしながら、従来技術のγ−イヌリンまたはその他の水不溶性の形のイヌリンは、アジュバントとして抗原と混注されると高められた免疫反応を提供するが、β−イヌリンまたはイヌリンアセテートとの混注は、高められた免疫反応を提供しなかった。
【0149】
4.3.ova負荷InAcマイクロまたはナノ粒子の免疫付与試験:ワクチンアジュバントおよび送達システムとしての評価。この試験は、使用されるInAc粒子の粒径(マイクロ対ナノ)および抗原(オボアルブミン)の投与量(100、10または1μg)の免疫反応の発現に対する効果を評価するために実施された。さまざまな粒径およびさまざまなova負荷を有する製剤が準備された。以下の製剤およびプロセスパラメーターが変更される要因設計手法を用いる最適化試験が実施された。
【0150】
1)InAcマイクロまたはナノ粒子調製の最初の乳化ステップ中に使用される抗原(ova)の量。ova負荷(μg/mg)は、粒子調製中に使用されるovaの量を増すことによって(100mgのポリマー当たり500μgから20mg)0.5μg/mgから50μg/mgまで増加された。しかしながら、バースト放出もより高い(50μg/mg)ova負荷において増加した。
【0151】
2)InAcマイクロ粒子またはナノ粒子の調製において第2の水相量を45mLに増加することによって、バースト放出が約20%まで制限された。
【0152】
3)InAc粒子のサイズを小さくするために、超音波処理エネルギーが使用された。超音波処理の時間およびエネルギーを含めたプロセスパラメーターが、望ましい負荷(例えば、InAc粒子については10μgから約100μg/mgそしてβ−イヌリン粒子については約10μg/mgから約500μg/mg)および制限されたバースト放出(投与後最初の30分において、約30%未満、または約20%未満)を有するナノメートルの粒径範囲の粒子(およそ100〜600nm)を提供するために最適化された。
【0153】
これらの3つのパラメーターを最適化することによって、さまざまなサイズ(ナノ粒子についてはほぼ100nm〜1000nm、そしてマイクロ粒子についてはほぼ1μm〜30μm)および負荷を有する望ましい製剤が首尾よく調製され得る。
【0154】
刺激される免疫反応に対する粒径の効果を調査するために、多様な用量のovaを有するova負荷InAcマイクロ粒子(おおよそのサイズ:2μm)またはナノ粒子(おおよそのサイズ:250nm)によりマウスが免疫付与された。マウスは、以下の群:i)PBS中のova(マウス当たり100、10または1μg);ii)100μmのCFAエマルジョンを含むova(マウス当たり100、10または1μg);およびiii)PBS中のova負荷InAcマイクロまたはナノ粒子(100、10または1μgのovaに相当する)、により皮下(s.c.)ルートによって免疫付与された。免疫手順の残りは、4.1項に記載されているものと同じであった。
【0155】
図11は、免疫性を与えられたマウス血清におけるova特異性IgG全体力価の発現に対するイヌリンアセテート粒子の大きさの影響を示している。マウス(n=群当たり4〜5)は、1日目および21日目に、一次および追加の免疫付与として、ova(100、10または1μg)が単独でまたはCFAと共に、あるいはInAcマイクロ粒子またはナノ粒子中に充填されて皮下に注射された。血清は、間接的なELISA法を用いるIgG全体力価の分析のために一次および追加の免疫付与の1週間後および3週間後に採取された。CFAが陽性対照(最強のアジュバント)として使用された。
【0156】
図12は、免疫性を与えられたマウスの血清における血清ova特異性IgG−1力価の発現に対するイヌリンアセテート粒子の大きさの影響を示している。マウス(n=群当たり4〜5)は、1日目および21日目に、ova(100、10または1μg)が単独でまたはCFAと共に、あるいはInAcマイクロ粒子またはナノ粒子中に充填されて皮下に注射された。血清は、間接的なELISA法を用いるIgG−1力価の分析のために一次および追加の免疫付与の1週間後および3週間後に採取された。
【0157】
図13は、免疫性を与えられたマウスの血清におけるova特異性IgG−2a力価の発現に対するイヌリンアセテート粒子の大きさの影響を示している。マウス(n=群当たり4〜5)は、1日目および21日目に、ova(100、10または1μg)が単独でまたはCFAと共に、あるいはInAcマイクロ粒子またはナノ粒子中に充填されて皮下に注射された。血清は、間接的なELISA法を用いるIgG−2a力価の分析のために一次および追加の免疫付与の1週間後および3週間後に採取された。
【0158】
InAcマイクロ粒子は、ovaの100および10ラグ投与量においてナノ粒子より高い抗体力価を生じ、その抗体力価は、陽性対照のCFAアジュバントを施した群よりさらに高かった。しかしながら、ナノ粒子は、1μg投与量の抗原で、マイクロ粒子より高い抗体力価を生じた(
図11、12および13)。このデータは、InAcマイクロ粒子が10および100μgの抗原の投与量での免疫反応の発現においてCFAより効能があることを示している。
【0159】
抗原の投与量の影響を調査するために、InAcマイクロまたはナノ粒子中に充填した100、10または1μgのオボアルブミンによりマウスに免疫付与した。
図14は、免疫付与されたマウス血清中のova特異性IgG力価の発現に対するInAcマイクロ粒子中に充填した抗原の量の影響を示している。マウス(n=群当たり4〜5)は、1日目および21日目に、ova(100、10または1μg)が単独でまたはCFAと共に、あるいはInAcマイクロ粒子中に充填されて皮下に注射された。血清は、間接的なELISA法を用いるIgG全体、IgG−1およびIgG−2a力価の分析のために一次および追加の免疫付与の1週間後および3週間後に採取された。
【0160】
図15は、免疫付与されたマウス血清中のova特異性IgG力価の発現に対するInAcnナノ粒子中に充填した抗原の量の影響を示している。マウス(n=群当たり4〜5)は、1日目および21日目に、ova(100、10または1μg)が単独でまたはCFAと共に、あるいはInAcナノ粒子中に充填されて皮下に注射された。血清は、間接的なELISA法を用いるIgG全体、IgG−1およびIgG−2a力価の分析のために一次および追加の免疫付与の1週間後および3週間後に採取された。
【0161】
ovaを充填したInAcマイクロ粒子は、免疫反応が、ovaの用量に依存し、100μg用量の抗原で最高の抗体力価であり、10μgおよび1μgの用量が後に続くことを示した(
図14)。ovaを充填したInAcナノ粒子もまた100μgの抗原において10μgおよび1μgの抗体と比較してより強い抗体力価を発生したが10μgと1μgの抗原用量においては抗体力価に著しい違いは見出されなかった(
図15)。
【0162】
4.4.酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)を用いる抗ova抗体の検出。免疫付与されたマウスからの血清が、ovaに対して発生した抗体(全体IgG、IgG1およびIgG2a)の存在について間接的ELISA検定法によって試験された。手短に言えば、96ウェルのELISAプレートが、pH9.6の炭酸塩緩衝液中でova(1μg/ウェル)により被覆され一晩4℃で培養された。そのプレートは、洗浄液(50mMのトリス、0.14MのNaCl、0.05%のTween20、pH8)により洗浄され、次いで200μLのブロッキング溶液(50mMのトリス、0.14MのNaCl、1%のBSA、pH8)により室温(−23℃)で30分間ブロックされた。洗浄緩衝液によりプレートを洗浄後、そのプレート中のウェルは試験血清のさまざまな希釈物(100μL)と共に室温で1時間培養された。そのプレートは洗浄され、その後100μLのペルオキシダーゼ接合ヤギ抗マウス抗体と共に室温で1時間培養された。培養後、そのプレートは洗浄され、着色のために、100μLの3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)基質溶液と共に室温で5分間培養された。その反応は2MのH
2SO
4を用いて停止され、光学密度(OD)が450nmで測定された。結果は、ODが平均のODプラスPBS対照の2つの標準偏差より大きい最終血清希釈の逆数(reciprocal end serum dilution)と定義される血清免疫グロブリンG(IgG)力価として表現された。
【0163】
4.5.脾細胞増殖アッセイ。メモリー応答の引き出しは、ワクチンが長続きする保護を与えるためである場合の本質的要素である。メモリー応答の発生を評価するために、追加の免疫付与の3週間後に、脾細胞がマウスの脾臓から準備された。
【0164】
追加の免疫付与に続く21日目に、マウスを屠殺し、脾臓を取り除いた。脾細胞の単細胞浮遊液が、完全RPMI培地(10%の加熱不活性化したウシ胎仔血清(FBS)、1%のペニシリン/ストレプトマイシン、1mMのピルビン酸ナトリウムおよび50μMの2−メルカプトエタノールが補充されたRPMI1640培地))中で調製された。その細胞浮遊液は、25℃で5分間、700gで遠心分離された。上澄み液を廃棄後、赤血球(RBC)は100mMのNH
4Clを用いて溶解された。その脾細胞は完全RPMI培地中に再懸濁され、細胞はCellometer(Nexcelom Bioscience、ロレンス、マサチューセッツ州)を用いるトリパンブルー抽出法によりカウントされた。脾細胞(10
6細胞/ウェル)は、96ウェルプレート中に蒔かれ、オボアルブミン(100μg/mL)またはコンカナバリンA(2.5μg/mL)を含んでいる200μLの完全RPMI 1640培地のみと共に培養された。培養の72時間後、その上澄み液は除去され、サイトカイン分析のために保存された。その細胞は、50μLの3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニル−テトラゾリウムブロミド(MTT)溶液(0.5mg/mL)と共に4時間にわたって培養された。最後に、そのプレートは、150μLのジメチルスルホキシド(DMSO)と共に37℃で10分間培養された。その後プレートは、紫外−可視分光光度計を用いて540nmで読み取られた。刺激指数(SI)は、カンカナバリンAまたはovaにより処理された細胞の吸光度値をRPMI処理した細胞の吸光度値で割ることによって計算された。
【0165】
データは、結果として生じる露出の間に、ovaを認識する記憶T細胞が、ovaを充填したInAcマイクロ粒子で処理したマウス中に著しく高い数で発生されることを示している(
図8)。分裂促進因子のコンカナバリンA(ConA)は、陽性対照として寄与し、それは全ての群において非特異的に刺激指数(S.I.)を高めた。
【0166】
4.6.サイトカイン分析:Th1(IFN−gおよびIL−2)およびTh2(IL−4およびIL−10)サイトカイン測定。ovaを充填したInAcマイクロ粒子が選択的に体液性の免疫反応(Th2)または細胞媒介性の免疫反応(Th1)を誘発したかどうかを評価するために、脾細胞培養液の上澄み中の隠されたTh1サイトカイン(IL−2およびIFNγ)およびTh2サイトカイン(IL−4およびIL−10)の存在がovaによる再刺激後にチェックされた。
【0167】
脾細胞は、ova単独、ミョウバンと一緒のova、またはovaを充填したInAcマイクロ粒子により免疫付与されたマウスから準備され、ova(100μg/mL)の存在する中で72時間にわたって培養された。72時間後、さまざまな処理群からの上澄み液が集められ、さまざまなサイトカインの濃度がサンドイッチELISA法を用いて測定された。
図9を参照。星印(*)は、その値がスチューデントのt検定を用いるova免疫付与群(P<0.001)と比較して著しく高いことを示している。
【0168】
抗体反応データ(IgG−1およびIgG−2aの両方の高いレベル)を支持して、高レベルの両タイプ(Th1およびTh2)のサイトカインが、ovaを充填したInAcマイクロ粒子により免疫付与されたマウスの脾細胞上澄み液中に観察された(
図9)。
【0169】
4.7.遅延型過敏症(DTH)反応。
DTH反応は、それぞれ免疫付与されたマウスの左の足蹠に5μgのovaを、同量のPBSを右の足蹠に注射することによって測定された。処置の24時間後の足蹠の腫脹度は、左の足蹠から右の足蹠の厚さを差し引くことによって測定された。
図10におけるデータは、各群の3〜4匹の免疫付与されたマウスの平均腫脹度+標準偏差を表す。星印(*)は、値がスチューデントのt検定を用いるova免疫付与群(P<0.001)と比較して統計的に重要であることを示している。
【0170】
DTH反応の分析は、Th1タイプの免疫反応の発生をさらに裏付けた。ovaを充填したInAcマイクロ粒子により免疫付与されたマウスは、ovaで免疫付与されたマウスより著しく高い(P<0.001)DTH反応を発生させた(
図10)。これらの結果は、ovaを充填したInAcマイクロ粒子により誘発されたTh1タイプの免疫反応をさらに支持する。
【0171】
4.8.補体の第二経路(APC)の活性化試験。イヌリンの不溶性多形体(γ−イヌリン)は、APCを活性化することによってワクチンアジュバントとして作用することが示されている(Silvaら、Immunol.Cell Biol.(2004)82、611〜616頁)。しかしながら、β−イヌリンは、ワクチンアジュバント/免疫増強物質として作用することは決して示されていない。β−イヌリン粒子、InAcマイクロ粒子およびInAcナノ粒子のAPCを活性化する可能性が、以下に記載されているように評価された。
【0172】
ヒト血清は、ウサギRBCの溶解を引き起こし、それ故、ヒト血清およびウサギ赤血球(RBC)は、APC活性化試験のために使用される。ウサギRBCは、APC緩衝液(ゼラチンベロナール緩衝液(GVB緩衝液)+5mMのエチレングリコール四酢酸(EGTA))を用いて洗浄された。APC活性化試験については、1mg/mLのイヌリン、β−イヌリン、γ−イヌリン、ザイモサン(APC活性化のための陽性対照)、InAcマイクロ粒子およびInAcナノ粒子を含んでいる100μLのヒト血清が、400μLのGVB緩衝液により希釈され、37℃で30分間培養され、遠心分離された。その上澄み液は、500μLのRBC(1×10
8細胞/mL)と共に37℃で45分間培養され、その後700nmにおけるOD値が観測された。RBC溶解パーセントが未処理のヒト血清についてのRBC溶解が100%とみなすことによって計算された。データは、%10溶解RBC(% 10 lysed RBC’s)として報告された。RBCと一緒の培養の際のGVB緩衝液中の希釈されたヒト血清は、100%のRBC溶解をもたらした。ザイモサンはAPCを活性化し、それ故ウサギのRBCの溶解を阻止した。
【0173】
APC活性化の検定は、正常なヒト血清中に存在する補体の第二経路の活性化状態でウサギの赤血球(RBC)の溶解を測定する。
図16に示されているデータは、β−イヌリン、InAcマイクロ粒子およびInAcナノ粒子が、γ−イヌリンおよびザイモサンとは違って、APCを活性化しなかったことを示している。それ故、β−イヌリン、InAcマイクロ粒子およびInAcナノ粒子は、γ−イヌリンとは異なるメカニズムによって作動する。
【実施例5】
【0174】
安全性
マウス組織が、さまざまなアジュバント系(InAcナノ粒子、InAcマイクロ粒子および完全フロイントアジュバント(CFA))による免疫付与後にヘマトキシンおよびエオシン(H&E)染色によって分析された。画像が、ワクチン投与後21日目に注射部位について現像された。InAcマイクロ粒子(直径2〜4ミクロン)の皮下注射は、注射の部位にミョウバンまたはCFAに似た局所デポーを形成し、抗原の放出を20日を越えて維持した。しかしながら、InAcナノ粒子(平均直径200〜300nm)は注射の部位から除去されおそらくリンパ系に向けられた。いずれの場合においても、炎症、組織の損傷または膿瘍形成は見られなかった(
図17(A))。
【0175】
強いアジュバント活性はしばしば毒性と関係がある。例えば、FDAに認可されているワクチンアジュバントのミョウバンも、注射部位に、疼痛、炎症、リンパ節症、壊死、および肉芽腫を引き起こす。ワクチン製剤の安全性は、マウスの皮膚の注射部位における全体の構造的な損傷を見つけ出すことによるなどで解析された。
【0176】
CFA処理とInAcマイクロ粒子との間の明らかな違いを見ることができる。ovaを充填したInAcマイクロ粒子により処理した部位は、CFA処理と比較して、非常に高い数の浸潤性の免疫細胞および皆無かそれに近い組織の損傷を注射部位に有する。予想通り、CFAの注射は、注射部位に重度の組織壊死をもたらした(黒の矢印で示されている)。それにひきかえ、InAcマイクロ粒子は、注射部位に際立った毒性は何ら引き起こさなかった。注射部位における浸潤性の免疫細胞(白い矢印で示されている)の数はCFA処理と比較してInAcマイクロ粒子でより大きいことが見出された。再び、これらのデータは、InAcマイクロ粒子が、よく効くワクチンアジュバントであるばかりでなく、良好な安全性プロフィールも示すことをはっきりと示唆している。
【実施例6】
【0177】
薬の剤形
以下の配合物は、本明細書に記載されているβ−イヌリンまたはInAc組成物、本明細書に特に開示されるβ−イヌリンまたはInAc組成物、または本明細書に記載されているその他の成分と組み合わされたβ−イヌリンまたはInAc組成物(以後「組成物X」と称する)の治療のためまたは予防的投与に使用され得る代表的な薬の剤形を説明している:
【0178】
【表3】
【0179】
これらの配合物は、製薬技術においては周知の従来の手順によって調製され得る。当然のことながら、上記の薬剤組成物は、周知の製薬技術に従って変化させ、活性成分「組成物X」の異なる量およびタイプに調整することができる。エーロゾル配合物(vi)は、標準的な計量式分配装置と連結して使用され得る。さらに具体的な成分および割合は、例証目的である。対象の剤形の望ましい特性に従って、成分は、適切な同等物と交換することができ、割合は変動させることができる。
【0180】
具体的な実施形態が開示された実施形態および実施例に関連して上文で説明されてきたが、そのような実施形態は単に説明のためであり本発明の範囲を限定することはない。以下の特許請求の範囲で明らかにされているそのより広い態様の中で本発明から逸脱することなく変化および修正が当技術分野の通常の技術によってなされ得る。
【0181】
全ての出版物、特許、および特許文献は、あたかも個々に参照によって組み込まれているかのように、本明細書に参照により組み込まれる。