特許第6363520号(P6363520)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6363520
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】光学ユニットおよび変位計測装置
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/38 20060101AFI20180712BHJP
   G01B 11/00 20060101ALI20180712BHJP
   G01B 9/02 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
   G01D5/38 A
   G01B11/00 G
   G01B9/02
【請求項の数】11
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-11272(P2015-11272)
(22)【出願日】2015年1月23日
(65)【公開番号】特開2016-136106(P2016-136106A)
(43)【公開日】2016年7月28日
【審査請求日】2017年1月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100117330
【弁理士】
【氏名又は名称】折居 章
(74)【代理人】
【識別番号】100160989
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 正好
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100168745
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 彩子
(74)【代理人】
【識別番号】100170346
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 望
(74)【代理人】
【識別番号】100176131
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】小山 勝弘
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 冬樹
(72)【発明者】
【氏名】萩原 康仁
(72)【発明者】
【氏名】浜本 貴樹
(72)【発明者】
【氏名】松田 勲
【審査官】 岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】 特開平4−184218(JP,A)
【文献】 特開平4−27870(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/047100(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/26− 5/38
G01B 9/00−11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの光が入射する第1回折格子と、
前記第1回折格子から出射した回折光が入射することにより干渉光を生成する第2回折格子と、
対向する平行な一対の反射面とを有し、前記第1回折格子から出射した複数次数の回折光のうち特定の一の次数の回折光である±m次回折光(mは自然数)を、前記一対の反射面でそれぞれ反射させて前記第2回折格子に導くように構成された導光部材と、
前記導光部材の外部に設けられ、前記光源からの光を前記導光部材に導くように反射し、かつ、前記第1回折格子から出射した0次光を、前記第2回折格子の位置とは異なる位置に導くように反射する反射部材と
を具備する光学ユニット。
【請求項2】
請求項に記載の光学ユニットであって、
前記導光部材は、前記一対の反射面以外の一側面を有し、
前記反射部材は、前記導光部材の前記一側面に取り付けられることで前記導光部材と一体で設けられ
光学ユニット。
【請求項3】
請求項1または2に記載の光学ユニットであって、
前記第1回折格子は、反射型の回折格子であり、
前記第2回折格子は、透過型の回折格子である
光学ユニット。
【請求項4】
請求項1に記載の光学ユニットであって、
前記第1回折格子および前記第2回折格子は、反射型の回折格子であり、
前記導光部材と前記第2回折格子との間に配置され、前記第2回折格子からの前記干渉光を、該干渉光を検出する検出器に導くように反射する第2の反射部材をさらに具備する
光学ユニット。
【請求項5】
光源からの光が入射する第1回折格子と、
前記第1回折格子から出射した回折光が入射することにより干渉光を生成する第2回折格子と、
対向する平行な一対の反射面とを有し、前記第1回折格子から出射した複数次数の回折光のうち特定の一の次数の回折光である±m次回折光(mは自然数)を、前記一対の反射面でそれぞれ反射させて前記第2回折格子に導くように構成された導光部材と、
前記導光部材の外部に設けられ、前記第1回折格子から出射した0次光を、前記第2回折格子の位置とは異なる位置に導くように反射し、かつ、前記第2回折格子からの前記干渉光を、該干渉光を検出する検出器に導くように反射する反射部材と
を具備する光学ユニット。
【請求項6】
請求項に記載の光学ユニットであって、
前記導光部材は、前記一対の反射面以外の一側面を有し、
前記反射部材は、前記導光部材の前記一側面に取り付けられることで前記導光部材と一体で設けられ
光学ユニット。
【請求項7】
請求項5または6に記載の光学ユニットであって、
前記第1回折格子は、透過型の回折格子であり、
前記第2回折格子は、反射型の回折格子である
光学ユニット。
【請求項8】
請求項5から7のうちいずれか1項に記載の光学ユニットであって、
前記第2回折格子は、反射型の回折格子であり、
前記反射部材は、
前記0次光を反射する第1の面と、
前記第1の面の反対側に設けられ、前記干渉光を反射する第2の面と
を有する
光学ユニット。
【請求項9】
光源からの光が入射する第1回折格子と、
前記第1回折格子から出射した回折光が入射することにより干渉光を生成する第2回折格子と、
対向する平行な一対の反射面を有し、前記第1回折格子から出射した特定の一の次数の回折光である±m次回折光(mは自然数)のうち、+m次回折光を一対の反射面で反射させ、かつ、−m次回折光を前記一対の反射面の間を通して、これら±m次回折光を前記第2回折格子に導くように構成された光学手段と
を具備する光学ユニット。
【請求項10】
光源と、
前記光源からの光が入射する第1回折格子と、
前記第1回折格子から出射された回折光が入射することにより干渉光を生成する第2回折格子と、
対向する平行な一対の反射面を有し、前記第1回折格子から出射した複数次数の回折光のうち特定の一の次数の回折光である±m次回折光(mは自然数)を、前記一対の反射面でそれぞれ反射させて前記第2回折格子に導くように構成された導光部材と、
前記導光部材の外部に設けられ、前記光源からの光を前記導光部材に導くように反射し、かつ、前記第1回折格子から出射した0次光を、前記第2回折格子の位置とは異なる位置に導くように反射する反射部材と、
前記干渉光を検出する検出器と、
前記検出器により得られる信号に基づき、前記第1回折格子および前記第2回折格子の相対変位を演算する演算部と
を具備する変位計測装置。
【請求項11】
光源と、
前記光源からの光が入射する第1回折格子と、
前記第1回折格子から出射された回折光が入射することにより干渉光を生成する第2回折格子と、
対向する平行な一対の反射面を有し、前記第1回折格子から出射した複数次数の回折光のうち特定の一の次数の回折光である±m次回折光(mは自然数)を、前記一対の反射面でそれぞれ反射させて前記第2回折格子に導くように構成された導光部材と、
前記干渉光を検出する検出器と、
前記導光部材の外部に設けられ、前記第1回折格子から出射した0次光を、前記第2回折格子の位置とは異なる位置に導くように反射し、かつ、前記第2回折格子からの前記干渉光を前記検出器に導くように反射する反射部材と、
前記検出器により得られる信号に基づき、前記第1回折格子および前記第2回折格子の相対変位を演算する演算部と
を具備する変位計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、干渉光を発生する光学ユニット、およびその干渉光を検出して変位を計測する変位計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、光干渉を利用した測長装置が開示されている。この測長装置では、光源から出射されてハーフミラーを透過した平行ビームが、回折格子に入射することにより、回折格子を透過する0次光と、±p次の回折光と分かれる。これら0次光および±p次回折光は、所定の位置に配置されたそれぞれのミラーで反射される。反射されたそれぞれの光は、ハーフミラーで反射されて受光素子によって受光される(例えば、特許文献1の明細書段落[0036]、[0037]、図1参照)。
【0003】
なお、特許文献2には、一対の回折格子の相対変位を計測する変位計測装置が開示されている。この変位計測装置では、一対の回折格子の相対変位が、一対の回折格子のうち一方の回折格子から出射される、回折光同士の干渉光の強度に対応している。したがって、その強度を検出することにより変位計測が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-356509号公報
【特許文献2】国際公開第2011/043354号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の装置は、±p次回折光による干渉光以外に、0次光(0次回折光)や、±p次以外の次数の回折光が発生して、これを受光素子が受光してしまうおそれがある。これら計測に必要のない次数の回折光の受光は、計測精度の低下または誤計測の要因となる。
本発明の目的は、検出器に不要な光が入射すること抑制し、計測精度を高めることができる変位計測装置およびこれに含まれる光学ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る光学ユニットは、第1回折格子と、第2回折格子と、光学手段とを具備する。
前記第1回折格子には、光源からの光が入射する。
前記第2回折格子は、前記第1回折格子から出射した回折光がこの第2回折格子に入射することにより干渉光を生成する。
光学手段は、対向する平行な一対の反射面を有する。光学手段は、前記第1回折格子から出射した複数次数の回折光のうち特定の一の次数の回折光である±m次回折光(mは自然数)を、前記一対の反射面でそれぞれ反射させて前記第2回折格子に導くように構成される
本発明では、対向する平行な一対の反射面により±m次回折光がそれぞれ反射させられ、第2回折格子に導かれる。したがって、±m次以外の次数の回折光は、一対の反射面により反射されない光路を通るか、または、たとえ反射されたとしても第2回折格子に入射しない光路を通る。このように、変位計測に不要な次数の回折光が、第2回折格子の後段に設けられる検出器に入射することを抑制できるので、計測精度を高めることができる。
【0007】
前記光学手段は、前記一対の反射面を含む導光部材を有していてもよい。
すなわち、一対の反射面が導光部材と一体で構成されている。これにより、この一対の反射面を含む導光部材の製造が容易になり、また、一対の反射面の相対的の位置決めが容易になる。
【0008】
前記光学ユニットは、前記第1回折格子から出射した0次光を、前記第2回折格子の位置とは異なる位置に導くように反射する反射部材をさら具備してもよい。
これにより、計測に不要な0次光が検出器に入射されないので、計測精度を高めることができる。
前記光学ユニットは、前記導光部材と一体で設けられ、前記第1回折格子から出射した0次光を、前記第2回折格子の位置とは異なる位置に導くように反射する反射部材をさらに具備してもよい。
これにより、導光部材および反射部材の製造が容易になり、それらの相対的の位置決めが容易になる。
【0009】
前記第1回折格子は、反射型の回折格子であり、前記第2回折格子は、透過型の回折格子であってもよい。
【0010】
前記第1回折格子は、透過型の回折格子であり、前記第2回折格子は、反射型の回折格子であってもよい。
【0011】
前記第1回折格子および第2回折格子は、透過型の回折格子であってもよい。
【0012】
前記第2回折格子は、反射型の回折格子である場合、前記反射部材は、前記0次光を反射する第1の面と、前記第1の面の反対側に設けられ、前記第2回折格子により生成された前記干渉光を反射する第2の面とを有していてもよい。
第1回折格子からの0次光を反射する機能、および第2回折格子からの干渉光を反射する機能を、1つの反射部材で兼用でき、光学ユニットの小型化に寄与する。
【0013】
本発明の他の形態に係る光学ユニットは、上述の第1回折格子および第2回折格子と、以下の光学手段を具備する。
前記光学手段は、対向する平行な一対の反射面を有する。前記光学手段は、前記第1回折格子から出射した特定の一の次数の回折光である±m次回折光(mは自然数)のうち、+m次回折光を一対の反射面で反射させるように構成される。また、前記光学手段は、−m次回折光を前記一対の反射面の間を通して、これら±m次回折光を前記第2回折格子に導くように構成される。
【0014】
本発明の一形態に係る変位計測装置は、光源と、上述した光学ユニットと、検出器と、演算部とを具備する。
前記検出器は、前記干渉光を検出する。
前記演算部は、前記検出器により得られる信号に基づき、前記第1回折格子および前記第2回折格子の相対変位を演算するように構成される。
【発明の効果】
【0015】
以上、本発明によれば、検出器に不要な光が入射すること抑制し、計測精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の第1の実施形態に係る光学ユニットを備える変位計測装置を示す斜視図である。
図2図2は、図1においてz軸方向から見た変位計測装置を示す。
図3図3、第1回折格子および第2回折格子の構造として、格子溝の深さと、回折効率との関係を示すシミュレーションによるグラフである。
図4図4は、図3のうち、0次光のみの回折効率を示すミュレーションによるグラフである。
図5図5Aは、第2の実施形態に係る光学ユニットにおける第2の回折格子の格子パターン領域を示す。図5Bは、第2の実施形態に係るPDの受光領域を示す。
図6図6は、PDにより得られる検出信号(電圧信号)の実測のグラフである。
図7図7は、比較例に係る変位計測装置え得られる3相の検出信号(電圧信号)の実測のグラフである。
図8図8は、本発明の第3の実施形態に係る光学ユニットを備える変位計測装置を示す斜視図である。
図9図9は、本発明の第4の実施形態に係る変位計測装置の光学ユニットの構成を示す。
図10図10は、本発明の第5の実施形態に係る光学ユニットを備える変位計測装置の構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0018】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る光学ユニットを備える変位計測装置を示す斜視図である。図2は、図1においてz軸方向から見た変位計測装置を示す。この変位計測装置100Aは、光源12、光学ユニット50、およびPD(光検出器:Photo Detector(または、Photo Diode))40を備える。図2では、光源12、コリメートレンズ14およびアパーチャ部材16の図示が省略されている。
【0019】
光源12は、LD(Laser Diode)またはLED(Light Emitting Diode)であり、図示しないドライバにより駆動される。光源12は、例えば400nm〜900nmで設定される中心波長を持つレーザ光を発生する発光素子であるが、もちろんこのような構成に限られない。
【0020】
光学ユニット50は、例えば、コリメートレンズ14、アパーチャ部材16、第1回折格子21、プリズムミラー35、光学部材30、および第2回折格子22を備える。光学部材30は、「光学手段」の一部または全部を構成する。
【0021】
コリメートレンズ14は、光源12から出射された光を平行光にする。少なくともこれら光源12およびコリメートレンズ14により、平行光を発生する光学系が構成される。アパーチャ部材16は、コリメートレンズ14から出射された光のビーム径を所定のビーム径に絞る機能を有する。コリメートレンズ14やアパーチャ部材16は、原理的には無くても構わない。
【0022】
第1回折格子21および第2回折格子22は、共に、同じピッチP(図2参照)で同じ向きに形成された複数の格子線(格子溝)21a、22aを有する。各第1回折格子21および第2回折格子22は、格子線21a、22aの配列方向(図ではx方向)に相対的に変位することが可能に構成されている。この変位計測装置100Aは、その相対変位を計測する。
【0023】
第1回折格子21は反射型の回折格子である。第1回折格子21は、プリズムミラー35で反射された、アパーチャ部材16からの光を受け、回折光を出射する。この回折光には、複数の次数の回折光、つまり±1次、±2次、・・・±n(nは自然数)次の各回折光が含まれる。また、この回折光には、第1回折格子21で正反射で発生する0次回折光(以下、0次光と言う。)26も含まれる。
【0024】
説明の便宜上、図2を参照してy軸に沿う線であって、第1回折格子21および第2回折格子22の中心を通る軸線に対して、図中右側に発生する回折光を正(+)の回折光とし、左側に発生する回折光を負(−)の回折光とする。
【0025】
光学部材30は、第1回折格子21から出射された各次数の回折光のうち、特定の一の次数の回折光である±m次回折光23を反射して、第2回折格子22に導くように構成されている。±m次回折光23は、典型的には±1次回折光であるが、例えば±2次、またはそれ以降の他の回折光であってもよい。
【0026】
光学部材30は、例えば直方体形状の導光部材31と、これに接続されたプリズムミラー35とを有する。すなわち、導光部材31とプリズムミラー35とは一体で設けられている。
【0027】
プリズムミラー35は、例えば導光部材31のy方向の一側面に取り付けられている。プリズムミラー35は、図1に示すように、透明部材の内部にz軸に対して例えば45°に配置されたミラー部35aを有する。したがって、プリズムミラー35は、上述したように、アパーチャ部材16から出射された光を第1回折格子21に向けて直角に反射する機能を有する。また、プリズムミラー35は、第1回折格子21から出射された0次光26を第2回折格子22へ導かないように、第2回折格子22の位置とは異なる位置、ここではアパーチャ部材16側へ戻すように反射する反射部材として機能する。
【0028】
導光部材31のx方向の両側面は、対向する平行な一対の反射面33、33として設けられている。この一対の反射面33、33に、第1回折格子21で生成された+m次回折光23Aおよび−m次回折光23Bがそれぞれ入射し、一対の反射面33、33はそれらの回折光を第2回折格子22に導く。
【0029】
一対の反射面33、33は、第1回折格子21からの±m次回折光23を全反射してもよいし、部分反射してもよい。全反射するか否かは、光の波長、回折格子の構造、各光学部品の配置設計などによる。あるいは、一対の反射面33、33には、例えば金属膜で構成される反射膜がそれぞれ形成されていてもよい。
【0030】
導光部材31の透明材本体が無く、一対の反射面は物理的に独立した2つのミラーであってもよい。しかし、導光部材31の両側面が一対の反射面33、33として利用され、つまり導光部材31と一対の反射面33、33とが一体で設けられることにより、この一対の反射面33、33を含む導光部材31の製造が容易になる。また、一対の反射面33、33の相対的な位置決めが容易になる。
【0031】
これと同様に、導光部材31とプリズムミラー35とは別体であってもよいが、これらが一体で設けられることにより、光学部材30の製造が容易になり、また、導光部材31およびプリズムミラー35の相対的な位置決めが容易になる。
【0032】
導光部材31を構成する材料は、例えば石英ガラスである。しかし、他のガラスや、ガラス以外の透明材料であってもよい。例えば樹脂材料から成る透明材料が選択できる。反射面33、33の面精度は、光源12が出射する光の中心波長をλ(例えばλ=633nm)とすると、λ/4以下とされることが好ましい。これら反射面33、33の面精度が低い場合、所望の形態の干渉光27(後述)を得ることができず、計測精度が低下するおそれがある。
【0033】
また、反射面33、33の平行度(角度)は、1分以下とされ、好ましくは30秒以下とされる。反射面33、33の平行度も、所望の形態の干渉光27を得るための重要な要素である。
【0034】
図1に示すように、導光部材31の反射面33、33の、第1回折格子21および第2回折格子22が配列される方向(y方向)の長さa、および、それに直交する方向(z方向)の長さbは、特に限定されない。例えばa=5mm〜10mm、b=2mm〜5mmとされ、寸法公差は±0.1mmとされる。この場合、第1回折格子21および第2回折格子22の格子線のピッチは、1μm〜5μmとされ、好ましくは1.5μm〜4μm、より好ましくは2μmとされる。cは、光の波長、回折格子の構造、各光学部品の配置設計などによって設定される。
【0035】
第2回折格子22は透過型の回折格子である。第2回折格子22には、光学部材30から出射された±m次回折光23が入射することにより、干渉光27を生成して出射する機能を有する。具体的には、図2に示すように、+m次回折光23Aが第2回折格子22に入射することにより、そのまま直進する0次光28Aと、±p次回折光(pはmを含む自然数)とが生成される。−m次回折光23Bも第2回折格子22に入射することにより、同じく、そのまま直進する0次光28Bと、±p次回折光とが生成される。
【0036】
なお、反射型の第1回折格子21は、主材料が透明材料で構成される回折格子の格子パターン領域の表面に金属膜が形成されるように構成されていてもよいし、または、主材料が金属で構成されていてもよい。
【0037】
図2では、第2回折格子22から出射する0次光28(28A、28B)以外の回折光としての±p次回折光のうち−m'次回折光25(25A、25B)のみを示している。この「m'」は、一対の反射面33、33で反射された回折光の次数である「m」と同じ次数を意味する。説明をわかり易くするため、第1回折格子21から出射する回折光の次数に対して、第2回折格子22から出射する回折光の次数に「'」に形式的に付しているが、これらの次数は同じである。
【0038】
具体的には、第1回折格子21からの+m次回折光23Aが、図2中、第2回折格子22により時計回り方向に折れて+m'次回折光25Aが生成される。また、第1回折格子21からの−m次回折光23Bが、図2中、第2回折格子22により反時計回り方向に折れて、−m'次回折光25Bが生成される。+m'次回折光25Aと−m'次回折光25Bとは、同じ光路(例えばy方向)で生成される。言い換えると、導光部材31の一対の平行な反射面33、33によって第1回折格子21からの±m次回折光23がそれぞれ反射されることにより、第2回折格子22では±m'次回折光25がy方向に沿って生成される。
【0039】
典型的には、±m次回折光23が上記したように±1次回折光である場合、±m'次回折光25も±1次回折光である。これら+m'次回折光25Aおよび−m'次回折光25Bが干渉することで、干渉光27が生成される。
【0040】
PD40は、第2回折格子22から出射された干渉光27を検出する。第1回折格子21および第2回折格子22が相対的にx方向に移動するとき、PD40は、格子線21a(22a)のピッチごとに、明暗のセットを1周期とする周期性の光量(光強度に対応)を得る。その周期性を持つ波形は、典型的にはサインカーブとなる。PD40は、例えばその波形を持つ電圧信号を出力し、図示しない回路(演算部)に出力する。
【0041】
図示しない回路は、例えばAD変換器および演算回路を備える。演算回路は、上記電圧信号に応じた変位を出力するように構成される。AD変換器および/または演算回路は、PD40に一体に設けられていてもよい。
【0042】
以上のように、本実施形態に係る光学ユニット50を備えた変位計測装置100Aでは、導光部材31に設けられた対向する平行な一対の反射面33、33により特定次数の回折光であるm次回折光がそれぞれ反射させられ、第2回折格子22に導かれる。また、プリズムミラー35により0次光26がアパーチャ部材16側へ戻される。すなわち、実質的に±m次回折光23のみが第2回折格子22に入射し、0次光26を含む他の次数の回折光である変位計測に不要な光が機械的に遮断される。また、0次光28もy方向に対して斜めに進むのでPD40に入射しない。したがって、不要な光がPD40に入射することによるノイズの発生を実質的に無くすことができ、変位の計測精度を高めることができる。
【0043】
[上記特許文献2に記載の変位計測装置との第1の実施形態との比較]
ここで、上記特許文献2に記載の実施例1に係る変位計測装置では、0次光を含む不要な次数の回折光が第2回折格子から生成されるという課題があった。そこで、本発明者らは、第1回折格子および第2回折格子の構造を変えることで、その対策をしようとした。例えば、図3、4は、第1回折格子21および第2回折格子22の構造として、格子線21a、22aによる溝(格子溝)の深さD(図2参照)と、回折効率との関係を示すシミュレーションによるグラフである。
【0044】
縦軸の回折効率は、第2回折格子22に入射する光の強度を1とした場合の、第2回折格子22から出射される、0次を含む各次数の回折光の強度を表す。回折格子の格子線ピッチは4.8μmとされた。回折光の偏光方向(電場ベクトルの振動方向)は、格子線21a,22aに沿う方向に対して直交している。
【0045】
図3では、例えば±m次回折光23(および±m'次回折光25)として、±1次回折光を、干渉光27の生成に利用する場合を想定している。図3からわかるように、格子溝の深さDを調整しても、いずれか1つの深さDにおいて、0次光、2次回折光および3次回折光の回折効率を、原理上、すべて0にすることはできない。
【0046】
図4は、図3に示すグラフのうち、回折効率が0〜0.05の範囲の0次光に着目したグラフであって、かつ、その偏光方向が格子溝に直交するものと、格子溝に平行なものとの両方を示している。図4に示すように、たとえ格子溝の深さを適宜調整した場合であっても、0次光の回折効率を0にすることは、原理上、不可能である。
【0047】
これに対し、上記第1の実施形態に係る光学ユニット50によれば、変位計測に不要な光が機械的に遮断されるので、ノイズが発生せず、計測精度を高めることができる。
【0048】
なお、第1の実施形態に係る変位計測装置100Aが要求される計測精度に比べて低い計測精度で足りる場面では、特許文献2に開示された変位計測装置も、もちろん要求された計測精度の範囲内で使用可能である。
【0049】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。これ以降の説明では、上記第1の実施形態に係る変位計測装置100Aが含む部材や機能等について実質的に同様の要素については同一の符号を付し、その説明を簡略化または省略し、異なる点を中心に説明する。
【0050】
図5Aは、第2の実施形態に係る光学ユニットにおける第2の回折格子の格子パターン領域を示す。この光学ユニットの図示しない第1回折格子は、上記第1の実施形態に係る第1回折格子21と同一形態を有する。図5Bは、第2の実施形態に係るPDの受光領域を示す。
【0051】
図5Aに示すように、第2回折格子52は、例えばz方向に配列された3つの格子パターン領域521、522、523を有する。各格子パターン領域521、522、523では、格子線52aのピッチはそれぞれ同一である。しかし、この第2回折格子52は、格子線52aの配列(以下、格子線配列)が当該格子パターン領域ごとに格子線の配列方向(x方向)に1ピッチより小さい所定距離だけシフトされるように、構成されている。具体的には、格子線配列は、1ピッチの1/3ずつシフトされている。
【0052】
一方、図5Bに示すように、上記第2回折格子52の格子パターン領域521、522、523にそれぞれ対応するように、PD45も、複数の受光領域として、z方向に配列された3つの受光領域451、452、453を有する。
【0053】
第2回折格子52において、格子パターン領域ごとに格子線配列がシフトされているので、位相が異なる複数の干渉光が生成される。ここでは、第2回折格子52には、3つの格子パターン領域521、522、523が設けられ、格子線配列は1ピッチの1/3ずつシフトしている。したがって、第1回折格子21および第2回折格子52がx方向に相対的に移動するとき、第2回折格子52により、位相が120°ずつずれた3つの干渉光が生成される。PD45の受光領域451、452、453は、これら位相が異なる干渉光をそれぞれ受光する。
【0054】
図6は、このPD45により得られる検出信号(電圧信号)の実測のグラフである。位相が120°ずつずれた3相のきれいな形状の電圧信号が得られる。横軸は、第1回折格子および第2回折格子52の変位量を示す。
【0055】
図7は、比較例に係る変位計測装置え得られる3相の検出信号(電圧信号)の実測のグラフである。比較例として、上記特許文献2に記載された実施例1に係る変位計測装置の構造を有し、かつ、第2の回折格子およびPDが上記の第2回折格子52およびPD45に差し替えられた構造を有する変位計測装置を挙げる。ただしこの場合、第1の回折格子および第2の回折格子の相対変位の方向は、格子線の配列方向とされた。
【0056】
図7からわかるように、各相の信号について、1周期ごとの振幅がばらばらになっているので、第1、第2の実施形態と比較すると、高精度な変位計測を行うことができない。
【0057】
なお、この第2の実施形態に係る光学ユニットを含む変位計測装置が要求される計測精度に比べて低い計測精度で足りる場面では、特許文献2に開示された変位計測装置も、もちろん要求された計測精度の範囲内で使用可能である。
【0058】
また、第2回折格子の格子パターン領域およびPDの受光領域は、4つ以上設けられていてもよい。その場合、例えば4つ以上のパターン領域および受光領域は、マトリクス状に配置されていてもよい。
【0059】
また、第2回折格子が複数の格子パターン領域を有するのではなく、第1の回折格子がそれを有していてもよい。
【0060】
[第3の実施形態]
図8は、本発明の第3の実施形態に係る光学ユニット55を備える変位計測装置を示す斜視図である。
【0061】
この変位計測装置100Bの光学ユニット55は、透過型の第1回折格子21'と、反射型の第2回折格子22'とを備える。上記第1の実施形態では、第1回折格子21および第2回折格子22の配列方向がy方向であったが、第1回折格子21'および第2回折格子22'の配列方向がz方向とされている。
【0062】
光学部材30は、導光部材31と、導光部材31および第2回折格子22'の間に配置されたプリズムミラー35(反射部材)とを有する。プリズムミラー35は、例えば導光部材31に取り付けられ、一体で設けられている。導光部材31は、一対の反射面33、33を有し、第1回折格子21'から出射される±m次回折光23(23A、23B)を、一対の反射面33、33でそれぞれ反射させて第2回折格子22'へ導く。
【0063】
プリズムミラー35は、第1の面およびその反対側に設けられた第2の面を有する。第1の面は、第1回折格子21'を透過してz方向に沿って進行する0次光26を、第2回折格子22'の位置とは異なる位置、ここでは、y方向へ直角に反射し、PD40が配置される側とは逆側へ進行させる。第2の面は、第2回折格子22'で生成された±m'次回折光25(25A、25B)が干渉して得られる干渉光27を、y方向へ直角に反射し、PD40へ向けて進行させる。
【0064】
第2回折格子22'で生成された+m次回折光23Aによる0次光は、−m次回折光23Bが進行してきた光路を戻る。第2回折格子22'で生成された−m次回折光23Bによる0次光は、+m次回折光23Aが進行してきた光路を戻る。
【0065】
なお、プリズムミラー35とPD40との間には、例えば、PD40に集光させるコリメートレンズ18が設けられている。
【0066】
本実施形態によれば、上記実施形態と同様に、導光部材31の一対の反射面33、33が設けられることにより、変位計測に不要な光が機械的に遮断されるので、ノイズが発生せず、計測精度を高めることができる。また、第1回折格子21'からの0次光26を反射する機能、および第2回折格子22'からの干渉光27を反射する機能を、1つのプリズムミラー35で兼用でき、光学ユニット55の小型化に寄与する。
【0067】
[第4の実施形態]
図9は、本発明の第4の実施形態に係る変位計測装置の光学ユニットの構成を示す。光源、PD等の図示は省略されている。
【0068】
この変位計測装置100Cの光学ユニットにおける第1回折格子21'および第2回折格子22は、両方とも透過型の回折格子である。導光部材31にはミラー37(反射部材)が一体に設けられている。第1回折格子21'から出射した0次光26は、第2回折格子22の位置とは異なる位置、ここでは、進行してきた光路を逆方向にこのミラー37によって反射させられる。
【0069】
第1回折格子21'から出射した±m次回折光23(23A、23B)は、導光部材31の平行な一対の反射面33、33によりそれぞれ反射させられ、第2回折格子22へ導かれる。第2回折格子22は、±m'次回折光25(25A、25B)の干渉光27を出射する。
【0070】
なお、ミラー37に代えて、上記各実施形態のように直角方向(z方向)に反射するプリズムミラーが設けられていてもよい。
【0071】
[第5の実施形態]
図10は、本発明の第5の実施形態に係る光学ユニットを備える変位計測装置の構成を示す。
【0072】
この変位計測装置100Dの光学ユニットは、反射型の第1回折格子21と、透過型の第2回折格子22とを有する。導光部材81(光学部材)は、一対の平行な反射面83、83を有するが、その四角形の頂角が非直角である。すなわちその形状は平行四辺形でなる。
【0073】
第1回折格子21で生成された0次光26は、z方向に沿って直進して光源12側に戻る。第1回折格子21で生成された±m次回折光23のうち一方、例えば−m次回折光23Bは、導光部材81の一対の反射面83、83のうち一方の反射面させられ、さらに、導光部材81内を通って他方の反射面で反射させられ、第2回折格子22に入射する。他方、+m次回折光23Aは、一対の反射面83、83の間の導光部材81内を通り、第2回折格子22に入射する。なお、0次光26を反射する反射部材または吸収部材が、導光部材81と一体または別体で設けられていてもよい。
【0074】
このような構成によっても、上記各実施形態と同様の効果が得られ、また、光源12およびPD40を近くに配置できるので、変位計測装置100Dの小型化を実現できる。
[他の種々の実施形態]
【0075】
本発明は、以上説明した実施形態に限定されず、他の種々の実施形態を実現することができる。
【0076】
例えば、上記第1の実施形態において、第2回折格子22を反射型の回折格子に置き換えてもよい。つまりこの形態は、第1および第2回折格子の両方が反射型とされる形態である。この場合、導光部材と第2回折格子との間に、プリズムミラーが設けられ(図参照)、このプリズムミラーにより、第2回折格子からの干渉光が直角に反射される。このような形態では、光源およびPDを近接して配置できるので、例えば共通の1つの実装基板上にそれら光源およびPDが実装される構成とすることができる。これにより、変位計測装置の小型化を実現できる。
【0077】
上記各実施形態では、計測対象となる変位方向は、第1回折格子21および第2回折格子22の格子線21a、22aの配列方向の相対移動方向であった。しかし、上記特許文献2の技術内容と同様に、第1回折格子および第2回折格子が配列される方向に相対移動することによっても、それに応じて干渉光の強度が変わる。したがってこの場合、変位計測装置は、その強度を検出することにより、その相対変位を計測することができる。
【0078】
上記各実施形態では、導光部材31(81)とプリズムミラー35(ミラー37)とが接続されて一体に設けられていたが、これらは別体であってもよい。
【0079】
プリズムミラー35およびミラー37に代えて、光を吸収できる吸収部材が、導光部材31と一体または別体で設けられてもよい。
【0080】
以上説明した各形態の特徴部分のうち、少なくとも2つの特徴部分を組み合わせることも可能である。例えば、第2の実施形態に係る第2回折格子52およびPD45が、第3または5の実施形態に適用されてもよい。
【符号の説明】
【0081】
12…光源
21、21'…第1回折格子
22、22'、52…第2回折格子
23…±m次回折光
23A…+m次回折光
23B…−m次回折光
25…±m'次回折光
25A…+m'次回折光
25B…−m'次回折光
26…0次光
27…干渉光
30…光学部材
31、81…導光部材
33、83…反射面
35…プリズムミラー
35a…ミラー部
37…ミラー
40、45…PD
50、55…光学ユニット
100A、100B、100C、100D…変位計測装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10