【実施例】
【0012】
(1)分離防止剤の添加量、および分離防止剤における消泡剤の配合率
(a)試料
それぞれ決められた単位量のセメント、水、砂に対し、分離防止剤の添加量と、その分離防止剤における消泡剤の配合率とをそれぞれ変えて試料1〜32を作成し、各試料について28日強度(キロニュートン毎平方メートル(キロパスカル))、空気量(%)、およびブリーディング率(%)を測定した。測定したこれらの結果に基づいて、流動化処理土として好適な強度およびブリーディング率を実現するために必要な分離防止剤の添加量、および分離防止剤における消泡剤の配合率の範囲を求めた。
【0013】
分離防止剤にはヒドロキシアルキルセルロースとして、関東化学株式会社製のメチルセルロースを用いた。このメチルセルロースは、1%希釈率における粘性が1200ミリパスカル秒以上、かつ、5500ミリパスカル秒以下の範囲内にあるヒドロキシアルキルセルロースの一例である。なお、本発明のヒドロキシアルキルセルロースは、メチルセルロースに限られず、例えばヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシジエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどが適用される。
また、分離防止剤には消泡作用を実施する材料として、試料1〜16では、信越工業株式会社製のシリコン系消泡剤No.3を用い、試料17〜32では、関東化学株式会社製のポリエーテル系消泡剤を用いた。
その他、実験上では、性能の結果に表れない分離防止剤に対して0.2%の市販の防腐剤、防錆剤をそれぞれ添加して用いた。
【0014】
セメントは、高炉B種を用いた。水は真水を用いた。セメントの単位量は60キログラム毎立方メートル、砂の単位量は1120キログラム毎立方メートル、水の単位量は550キログラム毎立方メートルとした。
【0015】
(b)試験方法
28日強度は、JISのA1216−2009「土の一軸圧縮試験方法」に定める「一軸圧縮強さ」を材齢28日の試料に対して行うことで測定した。
【0016】
空気量は、コンクリート標準示方書[規準編]土木学会規準および関連規準(2010年制定)に示す水中不分離性混和剤規格JSCE−D104−2007に準じて試験を実施した。
【0017】
ブリーディング率は、JSCE−F522−2007規格に準じて測定した。
【0018】
試料は、上述した3つの測定結果により流動化処理土として使用可能なものを「可」として、使用不可能なものを「不可」として評価した。流動化処理土として使用可能と評価する条件は、28日強度が200キロニュートン毎平方メートル以上、かつ、600キロニュートン毎平方メートル未満であり、空気量が4.5%未満であり、ブリーディング率が1.0%未満であることとした。なお空気量の条件(4.5%未満)はJSCE−D104−2007の空気量に準じて設定した。
【0019】
(c)結果
表1は、消泡剤としてシリコン系消泡剤を用いた試料1〜16についての測定結果を示す表である。試料1、7、12は28日強度が200キロニュートン毎平方メートル未満であり、空気量が4.5%を超えたため不可と評価した。試料6は、ブリーディング率が1.0%以上となったため不可と評価した。
【表1】
【0020】
表2は、消泡剤としてポリエーテル系消泡剤を用いた試料17〜32についての測定結果を示す表である。試料17、23、28は28日強度が200キロニュートン毎平方メートル未満であり、空気量が4.5%を超えたため不可と評価した。試料22は、ブリーディング率が1.0%以上となったため不可と評価した。
【表2】
【0021】
表1および表2の結果から、分離防止剤の添加量1.2キログラム毎立方メートル以上、かつ、1.8キログラム毎立方メートル以下が望ましいことがわかった。また、分離防止剤における消泡剤の配合率は、分離防止剤の全重量に対する重量百分率として3%以上、かつ、15%以下であることが望ましいことが分かった。
【0022】
(2)セメント材料の配合設計
(a)試料
セメントを構成する各材料の配合を変えて試料33〜51および試料52〜73を作成し、各試料についてSS(suspended solids)値(ミリグラム毎リットル)、28日強度(キロニュートン毎平方メートル)、およびフロー値(ミリメートル)を測定した。測定したこれらの結果に基づいて、流動化処理土として好適な不分離度、懸濁物質量、およびフロー値を実現するために必要なセメント材料の配合設計を求めた。なお、試料34〜36は、本発明に必要としない物質として、ベントナイトおよび消石灰を配合した試料である。このベントナイトには、榛名を用いた。
【0023】
また、上述した試験の結果を受けて、ここでは分離防止剤における消泡剤の配合率を、分離防止剤の全重量に対する重量百分率として15%とした。消泡剤には、上述した信越工業株式会社製のシリコン系消泡剤No.3を用いた。ヒドロキシアルキルセルロースには、関東化学株式会社製のメチルセルロース(試薬品)を用いた。
【0024】
(b)試験方法
SS値は、財団法人沿岸技術研究センターの発行となる「軽量混合処理土工法技術マニュアル」に従った方法で測定した。28日強度は、上述のマニュアルにしたがって測定した。フロー値は、日本道路公団規格JHS313−1999「エアモルタル及びエアミルクの試験方法」に定めるシリンダー法によって測定した。
【0025】
試料は、上述した3つの測定結果により流動化処理土として使用可能なものを「可」として、使用不可能なものを「不可」として評価した。流動化処理土として使用可能と評価する条件は、SS値が100ミリグラム毎リットル未満であり、28日強度が200キロニュートン毎平方メートル以上、かつ、600キロニュートン毎平方メートル未満であり、フロー値が140ミリメートル以上、かつ、220ミリメートル未満であることとした。
【0026】
(c)結果
表3は、試料33〜41および試料52〜58についてのSS値の測定結果と、流動化処理土としての評価を示す表である。SS値に関する評価では、試料35が不可となった。
【表3】
【0027】
表4は、試料33、42〜46、および試料59〜66についての28日強度の測定結果と、流動化処理土としての評価を示す表である。試料42〜46および試料59〜65の28日強度は、いずれも上述した範囲内であったため、流動化処理土としての評価は可となったが、分離防止剤を用いずにセメント量を増やした試料33では、28日強度が14000キロニュートン毎平方メートル程度となったため、流動化処理土としての評価は不可となった。また、150キログラム毎立方メートルを超える200キログラム毎立方メートルにセメント量を増やした試料66では、28日強度が690キロニュートン毎平方メートルとなったため、流動化処理土としての評価は不可となった。
【表4】
【0028】
表5は、試料34〜36、47〜51、および試料67〜77についてのフロー値の測定結果と、流動化処理土としての評価を示す表である。ベントナイトや消石灰などの無機材料を用いた試料34〜36では、硬化後に硬くなり過ぎてフロー値が100ミリメートル程度となったため、流動化処理土としての評価は不可となった。ベントナイトや消石灰などの無機材料を用いていない試料47〜51においても、分離防止剤の添加量を1.8キログラム毎立方メートルとした試料49では、フロー値が140ミリメートル未満となり、施工性の低下が示唆されたため、流動化処理土としての評価は不可となった。その他の試料47,48,50,51についてのフロー値は140ミリメートル以上、かつ、220ミリメートル未満であったため、流動化処理土としての評価は可となった。
一方、試料67〜77については、分離防止剤の添加量を1.8キログラム毎立方メートルとした試料67,70,73のうち、試料70を除いてフロー値が140ミリメートル未満となったため、流動化処理土としての評価は不可となった。しかし、分離防止剤の添加量を1.7キログラム毎立方メートルとした試料74〜77については、いずれもフロー値が140ミリメートル以上、かつ、220ミリメートル未満であったため、流動化処理土としての評価は可となった。
【表5】