(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
二つの回路接続部材同士を接続する接点を両端に有する差動伝達用の差動ペア線路が絶縁板に保持され、該差動ペア線路が互いに交差することのない二つの線路で形成されるストレートペアと、線路中間位置で互いに非接触で交差する交差点を含む交差域をもつクロスペアとが並設されている接続ブレードにおいて、
クロスペアは、該クロスペアの線路全長のうちの少なくとも一部に面して上記絶縁板よりも低い誘電率で形成された調整域と接しており、該調整域の範囲及び誘電率が、クロスペアとストレートペアとの間の信号伝達時間差を減ずるように選定されていることを特徴とする接続ブレード。
二つの回路接続部材同士を接続する接点を両端に有する差動伝達用の差動ペア線路が絶縁板に保持され、該差動ペア線路が互いに交差することのない二つの線路で形成されるストレートペアと、線路中間位置で互いに非接触で交差する交差点を含む交差域をもつクロスペアとが並設されている接続ブレードの製造方法において、
クロスペアの一方の線路材とストレートペアの両方の線路材とがキャリアで支持されているキャリア付の第一素材と、クロスペアの他方の線路材がキャリアで支持されているキャリア付の第二素材とを用意し、
上記キャリア付の第二素材の上記他方の線路材をキャリアから分離して第一素材の一方の線路材と交差域を形成する所定位置へ配して該第一素材のキャリアに取り付けた後、クロスペアの線路全長のうち少なくとも一部に面して絶縁板よりも低い誘電率の調整域を設けるようにして、上記クロスペアの両方の線路材そしてストレートペアの両方の線路材を絶縁板との一体モールド成形により保持し、しかる後に、キャリアを切断除去することを特徴とする接続ブレードの製造方法。
調整域は、クロスペアの一部を露呈させるように絶縁板に形成された凹部または孔部であり、該凹部または孔部内を、絶縁板との一体モールド成形時の金型の一部がクロスペアの線路材を保持するための空間として使用し、金型除去後に上記凹部または孔部に空気層を形成する請求項4に記載の接続ブレードの製造方法。
請求項1ないし請求項3のうちの一つに記載の複数枚の接続ブレードが間隔をもってハウジングにより保持され、該ハウジングは上記接続ブレードの接点が位置する両端側で開口されていて、相手コネクタが該接点で接続ブレードと接続可能に、上記ハウジングへ嵌合可能となっていることを特徴とする接続ブレードを有する電気コネクタ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1がかかえている課題を解決しようとしている特許文献2にあっても、本来ストレートであるストレートペアに疑似交差域を設ける結果、ストレートペアの形状が複雑になり、この形状を得るための金型の製作費が嵩む。さらには、一旦決定してしまったストレートペアの形状でも完全に信号伝達時間差をなくすことができない場合、僅かながらでも上記疑似交差域でのストレートペア自体の形状や寸法を変更して製作することは、ストレートペアそして打抜き金型の全体形状に影響を及ぼすので、打抜き金型形状の変更が大がかりになり容易ではない。
【0007】
本発明は、ストレートペアに疑似交差域等の形状複雑化を伴うことなく、ストレートペアはストレートにしたまま、クロスペアで簡単にストレートペアとの間のスキューを低減させ、さらには、一旦形状を決定したクロスペアでも、信号伝達時間差がなくならないことが判明したときには、クロスペア自体の形状や寸法を変更せずに、換言すると、打抜き金型は変更せずに、絶縁板との一体成形のための成形金型のごく一部を変更するだけでよく、従来の変更に比しきわめて簡単に再調整できる接続ブレード及びその製造方法、接続ブレードを有する電気コネクタを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
<接続ブレード>
本発明に係る接続ブレードは、二つの回路接続部材同士を接続する接点を両端に有する差動伝達用の差動ペア線路が絶縁板に保持され、該差動ペア線路が互いに交差することのない二つの線路で形成されるストレートペアと、線路中間位置で互いに非接触で交差する交差点を含む交差域をもつクロスペアとが並設されている。
【0009】
かかる接続ブレードにおいて、本発明では、クロスペアは、該クロスペアの線路全長のうちの少なくとも一部に面して上記絶縁板よりも低い誘電率で形成された調整域と接しており、該調整域の範囲及び誘電率が、クロスペアとストレートペアとの間の信号伝達時間差を減ずるように選定されていることを特徴としている。
【0010】
このような構成の本発明の接続ブレードによると、ストレートペアはストレートのままでよく、特許文献1におけるような波形形状部分や特許文献2におけるような疑似交差域を設ける必要がなく、きわめて簡単な形状となる。したがって、その打抜きのための金型も単純、したがって安価となる。
【0011】
一方、クロスペアは、その一部が絶縁板よりも誘電率の低い調整域と接していることで、ストレートペアとの信号伝達時間差をなくす方向に調整されている。このように、信号伝達時間差は、クロスペアの側で、しかもクロスペア自体ではなく、クロスペアが接している部分、例えば、クロスペアを支持している絶縁板の側で容易に調整でき、しかも、そのために、上述のように、ストレートペアはストレートのままにしておくことができる。
【0012】
調整域は、絶縁板がクロスペアを支持している一部を該絶縁板よりも低い誘電率としてクロスペアに接触するようにすることで形成される。例えば、絶縁板の上記一部を空気層とすることである。あるいは、上記一部を絶縁板よりも低い他の絶縁材料とすることもできる。
【0013】
調整域を一度設定した後に、再調整が必要なときは、ストレートペアは勿論のことクロスペアについても打抜き金型を変更せずに、絶縁板とのモールド一体成形用の金型を該調整域に対応する部分だけ交換可能としておけば調整域の大きさを変えることで容易に対応できる。
【0014】
本発明において、調整域は、クロスペアの一部を露呈させるように絶縁板に形成された凹部または孔部であり、該凹部または孔部内を空気層とすることができる。調整域の調整は凹部または孔部でのクロスペアの露呈の範囲の大きさの変更によりなされる。
【0015】
本発明において、調整域は、クロスペアの交差域に形成されているようにすることができる。
【0016】
<接続ブレードの製造方法>
本発明の接続ブレードの製造方法は、二つの回路接続部材同士を接続する接点を両端に有する差動伝達用の差動ペア線路が絶縁板に保持され、該差動ペア線路が互いに交差することのない二つの線路で形成されるストレートペアと、線路中間位置で互いに非接触で交差する交差点を含む交差域をもつクロスペアとが並設されている接続ブレードの製造方法において、クロスペアの一方の線路材とストレートペアの両方の線路材とがキャリアで支持されているキャリア付の第一素材と、クロスペアの他方の線路材がキャリアで支持されているキャリア付の第二素材とを用意し、上記キャリア付の第二素材の上記他方の線路材をキャリアから分離して第一素材の一方の線路材と交差域を形成する所定位置へ配して該第一素材のキャリアに取り付けた後、クロスペアの線路全長のうち少なくとも一部に面して絶縁板よりも低い誘電率の調整域を設けるようにして、上記クロスペアの両方の線路材そしてストレートペアの両方の線路材を絶縁板との一体モールド成形により保持し、しかる後に、キャリアを切断除去することを特徴としている。
【0017】
このような製造方法によると、ストレートペアの線路材とクロスペアの一方の線路材を有する第一素材と、クロスペアの他方の線路材を有する第二素材を別箇に用意することで、この第二素材に関して他方の線路材を密なピッチで打抜き成形できるので、無駄部分が少なく、材料の歩留りが向上する。
【0018】
本発明において、調整域は、クロスペアの一部を露呈させるように絶縁板に形成された凹部または孔部であり、該凹部または孔部内を、絶縁板との一体モールド成形時の金型の一部がクロスペアの線路材を保持するための空間として使用し、金型除去後に上記凹部または孔部に空気層を形成することができる。
【0019】
<接続ブレードを有する電気コネクタ>
前述の接続ブレードが複数枚間隔をもってハウジングにより保持され、該ハウジングは上記接続ブレードの接点が位置する両端側で開口されていて、相手コネクタが該接点で接続ブレードと接続可能に、上記ハウジングへ嵌合可能として電気コネクタを形成することで、回路基板に接続されたコネクタと、他の回路基板に接続された他のコネクタとを上記接続ブレードの両端側の接点にそれぞれ接続することで、本発明の電気コネクタは、上記一方の回路基板と他方の回路基板とを接続するための中間コネクタとして機能する。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、ストレートペアとクロスペアの差動ペア線路が絶縁板で保持された接続ブレード及びその製造方法、接続ブレードを有する電気コネクタにおいて、クロスペアは、該クロスペアの線路全長のうちの少なくとも一部に面して上記絶縁板よりも低い誘電率で形成された調整域と接しており、該調整域の範囲及び誘電率が、クロスペアとストレートペアとの間の信号伝達時間差を減ずるように選定されていることとしたので、ストレートペアをストレートのままとし、クロスペア自体も変更することなく該クロスペアに接する調整域を設けることで、ストレートペアとの信号伝達時間をなくす方向に簡単な形状かつ容易な方法で設定でき、そして設定後も調整域のみの変更で再設定できる。その結果、ストレートペアのみならずクロスペアの打抜き金型が簡単な形状となり、絶縁板のモールド一体成形金型を、しかもその一部を変更するだけなので、モールド成形金型も簡単化され、製造コストが低減される。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面にもとづき、本発明の実施の形態を説明する。
【0023】
図1は、本発明の接続ブレード20を複数有し、絶縁保持体11で保持している中間接続電気コネクタ10と、これと接続される二つの回路接続部材としての相手コネクタ30,40とを接続前の状態で示す斜視図である。
【0024】
中間接続電気コネクタ10は、後述の複数の接続ブレード20から成る接続ブレード群をそれらの板面が平行となるようにして、
図1に見られるように、四角筒状のハウジングとして絶縁保持体11をなす上保持体11Aと下保持体11Bとにより上下から位置決めされ保持されている。これらの上保持体11Aと下保持体11Bのそれぞれは、一枚の接続ブレードを収容保持する上下貫通の保持孔12A(下保持体11Bの保持孔は
図1にて表われず)が形成されたブロック体11A−1が複数結合して形成されている。上保持体11Aと下保持体11Bとで成る絶縁保持体11は、各ブロック体11A−1の保持孔12Aそしてブロック体11B−1の保持孔にて上下に開口していて、それぞれで相手コネクタ30と相手コネクタ40の嵌合部分を嵌合受入れして結合し、両コネクタ30,40の端子(接触部)と上記接続ブレード20の接点と接触接続するようになっている。相手コネクタ30と相手コネクタ40とは、ほぼ同じ形態に作られており、
図1では上下が互いに逆向きに位置している。一方、相手コネクタ30,40は、中間接続電気コネクタ10に向く側に、接続ブレード群をなす上記絶縁保持体11の数だけ、スリット開口41(相手コネクタ30のスリット開口は下方を向いているために見えない)が形成されており、また、逆側の面には端子に付けられた半田ボール32,42が設けられている。両相手コネクタ30,40は半田ボールにて、それぞれの対応回路基板(図示せず)の対応回路部に半田接続されて使用される。かくして、両相手コネクタ30,40は、それぞれ対応回路基板に取り付けられた状態で、
図1のごとく対向して、上記中間接続電気コネクタ10を介して接続される。
【0025】
接続ブレード20は、
図2(A)そして絶縁板21を省略した
図2(B)に示されるごとく、電気絶縁材料である絶縁板21によるモールド一体成形で該絶縁板21により保持されている信号線路としてのストレートペア22をなす一対の線路23とクロスペア24をなす一対の線路25とさらにはグランド線路26とを有している。
【0026】
信号用である差動ペア線路としての上記ストレートペア22、クロスペア24、さらにグランド線路26は、例えば、シートメタルを帯状に打ち抜き、部分的に屈曲されて作られており、上記絶縁板21により、
図2(B)に見られるように、グランド線路26、クロスペア24、グランド線路26そしてストレートペア22と、順に繰り返し配されており、いずれも、絶縁板21の両端(図にて上下端)の縁部まで延びていて、両端には、接点23Aと接点25Aそして接点26Aとをそれぞれ有している。
【0027】
ストレートペア22を形成する一対の線路23は、
図3(A)に見られるように、互いに左右対称でかつ上下対称である。既述のように、線路23は両端に接点23Aを有し、長手方向(上下方向)で中央位置A0に対し上下で近接した二つの中央寄位置A1と、接点23Aに近接した二つの端部寄位置A2と、中央寄位置A1と端部寄位置A2の間の二つの中間位置A3で側縁が若干突出して幅広部23−1,23−2,23−3を形成しているものの、両端の接点23A間はほぼ同幅で直線形状をなしている。幅広部23−1,23−2は、
図3に見られるように、一対の線路23がストレートペア22として配置された状態では、幅方向で外側に位置しているが、幅広部23−3は内側に位置している。
【0028】
次に、クロスペア24を形成する一対の線路25は、両端に接点25Aを有するとともに
図3(B)に見られるように、長手方向で中央位置B0(ストレートペア22における長手方向の各位置A0〜A3に対応する各位置をAに代えBを付すことでクロスペア24に採用する。なお、グランド線路26についても同様でAに代えCを付す。)とその近傍の交差域BXを除外したときの形態は、ストレートペア22の線路23と同形状をなし、上記交差域BXで一方の線路25と他方の線路25とが板厚方向で離間する方向に屈曲されることにより非接触で交差している(交差域を拡大して示す
図3(D)参照)。長手方向での中央位置B0、中央寄位置B1、端部寄位置B2、中間位置B3でのそれぞれの幅広部25−1,25−2,25−3もストレートペア22の線路23と同様に形成されている。
【0029】
グランド線路26は、
図3(C)に見られるように、両端に接点26Aを有するとともに、ストレートペア22の線路23やクロスペア24の線路25よりも幅広の帯体を形成されていて、長手方向で中央位置C0の両側となる中央寄位置C1で幅狭部26−1が、端部寄位置C2で幅広部26−2が形成されている。グランド線路26では、中間位置C3がストレートペア22における中間位置A3やクロスペアにおける中間位置B3よりも中央位置C0に寄って位置しており、該中間位置C3に図示しないグランド板との接続用の接続孔26−3が形成されている。
【0030】
このように、
図3(A)〜(C)のごとくに形成されたストレートペア22の線路23、クロスペア24の線路25、そしてグランド線路26は、
図2(B)のごとくに配置された状態で、
図2(A)のごとく樹脂等の絶縁材料で一体モールド成形されることで該絶縁板21により保持されて、全体として接続ブレード20が形成される。
【0031】
図2(A)に見られるごとく、接続ブレード20は、ストレートペア22の線路23の両端に設けられた接点23A、クロスペア24の線路25の両端に設けられた接点25A、そしてグランド線路26の両端に設けられた接点26Aが、絶縁板21の上下の両端縁から突出している。
【0032】
絶縁板21は、
図2(A),(C)に見られるように、突出露呈している接点23A,25A,26Aを除いて、
図2(A),(C)にて紙面に対して手前側の面及び背面側の面は、ストレートペア22とクロスペア24とを殆どの部分で埋没保持し、グランド線路26に対しては、該グランド線路26の側縁を部分的に埋没し、殆どの面を露呈するようにして該側縁のみで保持している。該グランド線路26は、
図3(C)にて示されている中央寄位置C1で幅狭部26−1が形成されているので、該幅狭部26−1では絶縁板21によって保持されていない。
【0033】
このように、ストレートペア22とクロスペア24を絶縁板21で保持している接続ブレード20には、本実施形態では、上述の図示しないグランド板が表裏両面に取り付けられている。一方(例えば
図2にて紙面に対し手前側)のグランド板にはグランド線路26の露呈部分に接触するリブが形成されており絶縁板21に設けられた後述の突部29により保持され、他方(
図2にて紙面に対し背面側)のグランド板には板面から起立する突起が設けられていて、グランド線路26に形成された既述の接続孔26−3を貫通して上記一方のグランド板と接触するようになっている。
【0034】
ストレートペア22を覆う埋没帯27そしてクロスペア24を覆う埋没帯28には、
図2(A),(C)に見られるように、長手方向(図にて上下方向)の複数位置に、絶縁板21のモールド成形時にストレートペア22そしてクロスペア24を押さえて支持する金型の押え部分がモールド成形後に抜出された結果として切欠部や窓部が形成されている。先ず、ストレートペア22を覆う埋没帯27の側縁部には、ストレートペア22の中央寄位置A1に対応する位置で長い切欠部27−1と中間位置A−3に対応する位置で短い切欠部27−3が形成され、埋没帯27の幅方向中央には、端部寄位置A2に対応する位置で窓部27−2が形成されている。上記中央寄位置A1、端部寄位置A2そして中間位置A3には、それぞれストレートペア22の線路23の幅広部23−1,23−2,23−3が位置しており、上記金型の押え部分が幅広部23−1,23−2,23−3の拡幅された分に相当する僅かな側縁部分をモールド成形時に押えるようになる。したがって、幅広部23−1,23−2,23−3に関しては、モールド成形後に金型を抜出しても、ストレートペア22は、実質的には接点23Aを除いた殆どの部分が絶縁板21に埋没している。次に、クロスペア24を覆う埋没帯28の側縁部には、クロスペア24の中央寄位置B1に対応する位置で長い切欠部28−1と中間位置B−3に対応する位置で短い切欠部28−3が形成され、埋没帯28の幅方向中央には、端部寄位置B2に対応する位置で窓部28−2が形成されている。上記中央寄位置B1、端部寄位置B2そして中間位置B3には、それぞれクロスペア24の線路25の幅広部25−1,25−2,25−3が位置しており、上記金型の押え部分が幅広部25−1,25−2,25−3の拡幅された分に相当する僅かな側縁部分をモールド成形時に押えるようになる。したがって、幅広部25−1,25−2,25−3に関しては、モールド成形後に金型を抜出しても、クロスペア24は、実質的に接点23Aを除いた殆どの部分が絶縁板21に埋没している。
【0035】
クロスペア24を覆う埋没帯28には、さらに、該クロスペア24の中央位置B0に位置する交差域BXを露呈させる窓状の調整域28−0が形成されている。クロスペア24の交差域BXがこの窓状の調整域28−0で露呈しているので、この調整域28−0の範囲で、クロスペア24を支持している絶縁板21に絶縁材不在の空気層が形成されることとなり、かかる調整域を有していないストレートペア22に対してクロスペア24は、線路長がストレートペア22よりも交差域BXで長くなっていても、空気層は絶縁板に比し誘電率が低いのでそれだけ信号伝達速度が高まり、ストレートペア22との信号伝達時間差を減小でき、調整域28−0の大きさの設定次第で上記信号伝達時間差をなくすことができる。このような窓状の調整域28−0は、上記切欠部28−1,28−3や窓部28−2と同様に、モールド成形の金型の押え部分を位置させることで形成することができる。
【0036】
グランド線路26は接続孔26−3の近傍の長手方向二箇所で、板厚方向に突出している突部29が形成されており、該突部29は、既述のグランド板(図示せず)が取り付けられる前の状態で、
図2(C)にて紙面に直角方向(手前方向)短角柱状に突出して形成されており、この突部29へグランド板に形成された対応孔で該グランド板が取り付けられた後に、上記突部29が溶融状態で圧潰されて広がり
図2(A)に見られるごとく、角板状をなしてリベットのごとくグランド板を固定するようになる。したがって、グランド線路26は、この突部29が存在する、きわめて狭い箇所でのみ絶縁板に埋没されていることになる。なお、
図2(A)は固定されたグラント板の図示を省略している。
【0037】
次に、このような接続ブレード20の製造方法について説明する。
【0038】
先ず、後にストレートペア22の線路23、クロスペア24の一方の線路25そしてグランド線路26となる各部分がキャリアC1によって連結保持された第一素材M(
図4(A)参照)と、後にクロスペア24の他方の線路25となる部分がキャリアC2により連結保持された第二素材N(
図4(B)参照)とを金属板の打抜き加工により用意する。ここで、上記各部分は、第一素材Mにおいては、例えばストレートペア22についてはストレートペア部分M22、その線路23については線路材部分M23等のように名称に「部分」そして符号に「M」を付して表わし、同様に第二素材Nにおいては、クロスペアの他方の線路材部分N25のように名称に「部分」そして符号に「N」を付して表わすことで、一つの部分が接続ブレードの部材となる前なのか接続ブレードの部分を形成するようにとなった後なのかの区別を容易としている。
【0039】
上記第一素材Mは、
図4(A)に見られるように、各部分の配置が異なる区分Iと区分IIの二種の区分が交互に存在している。区分Iは、
図2(A)そして
図2(B)に示される配列順で、左方からグランド線路材部分M26、クロスペア部分のうちの一方の線路材部分M25、グランド線路材部分M26、ストレートペア部分M22の一対の線材部分M23という配列(配列パターン)を三回繰り返した後に右端にグランド線路材部分M26を配している。区分IIは、この区分IIを紙面内で180°回転させると、区分Iと同じとなる配列形態をなしている。一つの区分は一つの接続ブレードに要する数だけの各部分を有していて、各区分同士、すなわち区分Iと区分IIとはその間でキャリアC1が絶縁板21の成形後に切断されることで一つの接続ブレードに供せられ、両区分間には一つだけ線路材部分を設けていない抜け部分となっている。抜け部分は区分間ごとに、一方の線路材部分25と一対の線路材部分M23とが交互に位置するようになっている。キャリアC1での切断後は、区分IIは接続ブレード形成後に上述のごとく180°回転させることで、区分Iと全く同じ配列形態をなし、同形態の接続ブレードとなる。かくして、上記配列バターンの第一素材Mにおいて、最小の抜け部分となるようにして素材を有効利用している。上記第一素材Mは、
図4(A)に見られるごとく、グランド線路材部分M26とストレートペア部分M22さらにはクロスペアのうちの一方の線路材部分M25とをそれぞれ二箇所にて連結部M31,M32により連結されている。この連結部M31,M32は、各線路部材を絶縁板21との一体モールド成形が完了するまでの間、所定位置に維持するためのものであり、モールド成形後には、後述のように切断され、各線路部材は非導通となる。
【0040】
一方、第二素材Nは、クロスペア部分の他方の線路材部分N25のみが連続してキャリアC2により配列保持されている。この第二素材Nは、上記線路材部分N25のみを密に配置しているので、第一素材Mのような区分、区分間の抜け部分などは存在しない。
【0041】
接続ブレードの製造の際は、上記第一素材Mは各区分毎に、
図4(A)で示す一点鎖線の位置で一つの単位をなすが、第二素材Nは、各線路材部分N25を分離するようにキャリアC2が
図5のごとく切断され、第一素材Mの一つの区分に対し第二素材Nの分離後の線路材部分N25は第一素材Mの一つの区分におけるクロスペアの一方の線路材部分M25の数だけ使用される。
【0042】
このような第一素材Mと第二素材Nとを用意し、次の手順で接続ブレードの製造工程が進められる。
【0043】
(1)
図4(A)のごとくの第一素材Mを用意すると共に、
図4(B)の第二素材Nの各線路材部分N25を、
図5のごとくキャリアC2で切断することにより分離する。なお、
図5では、線路材部分N25は第一素材Mの区分I、IIに対応した位置で示されている。
【0044】
(2)第二素材Nを切断して分離した各線路材部分N25を、
図6に見られたように、第一素材Mの区分Iそして区分IIにおけるクロスペア部分の一方の線路材部分M25に対して、
図3(B)に見られるような中央位置B0で交差域BXを形成する位置に配置する。配置された線路材部分N25は、その両端で第一素材MのキャリアC1に対して溶着、かしめ等の適宜手段で取り付けられ、その位置が
図6のごとく固定される。
【0045】
(3)かくして、他方のグランド線路材部分N25が取り付けられた第一素材Mは、一区分毎、間欠的にモールド金型へもち込まれ、金型内で樹脂により一体モールド成形され、接続ブレード20がキャリアC1に支持された状態で得られる。
図7は、左方の区分Iそして中央の区分IIについて絶縁板21の一体モールド成形後の状態、そして右方の区分Iは一体モールド成形前の状態を示している。
【0046】
(4)しかる後、
図7にて、切断線Pにて、区分Iと区分IIの間でキャリアC1を切断するとともに切断線QにてキャリアC1を切り離し、さらには、すべての連結部M31,M32を切断して各線路部材を分離して非導通にして、一つの完成接続ブレード20を得る。
【0047】
次に、本実施形態における変形例を
図8にもとづき説明する。
【0048】
図8に示される例では、ストレートペア22の線路23と、ストレートペア22を覆う絶縁板21の埋設帯27の形態(形状・寸法)は
図2(A)〜(C)に示されたストレートペア22そして埋設帯27の場合と同じである。これに対し、クロスペア24の線路25と、クロスペア24を覆う絶縁板21の埋設帯28は、長手方向で中央寄位置B1における形態が
図2(A)〜(C)に示されたクロスペア24そして埋設帯28の場合とは異なっている。
【0049】
上記クロスペア24に対しては、中央寄位置B1で埋設帯28に形成された長い切欠部28−1は、ストレートペア22に形成された対応の切欠部27−1の上記長手方向での長さ寸法LAよりも長い寸法長い寸法LBとなっている。これに対応してクロスペア24の上記中央寄位置B1における幅広部25−1も、対応するストレートペア22の幅広部23−1よりも長く形成されている。したがって、上記クロスペア24における切欠部28−1では、ストレートペアにおける切欠部27−1よりも長い分、すなわち差分LB−LAが窓部としての調整域28−0に加えて追加的な調整域として機能することとなる。なお、本変形例では、上記切欠部28−1による追加的調整域を、必要に応じて設けることが重要なのであって、クロスペア24の線路25の幅広部25−1自体は、ストレートペア22の線路23の幅広部23−1と同じ長さであってもよい。
【0050】
また、本実施形態では、さらなる変形例として、
図9に示されるように、ストレートペア22に対する絶縁板21の埋設帯27そしてクロスペア24に対する絶縁板21の埋設帯28に
図2あるいは
図8に見られるような切欠部を一切設けないこととしてもよい。
【0051】
絶縁板21の一体モールド成形時に、モールド成形用の金型の押え部分が、接点23A,25Aそして端部寄位置A2,B2における窓部27−2,28−2で十分にストレートペア22の線路23そしてクロスペア24の線路25を押えることができて、金型への樹脂の流入によってもそれらの位置がずれることがなければ、上記切欠部は不要であり、
図9に示す形態が可能となる。この場合、クロスペア24における絶縁板21の調整域は、もっぱら中央位置B−0における窓部28−0の大きさにより調整そして決定される。その際、窓部や切欠部は、絶縁板よりも誘電率の低い絶縁材で充填されていても良い。
【0052】
本実施形態では、接続ブレードの線路によって接続される二つの回路接続部材がコネクタである形態について説明したが、これに代えて、二つの回路接続部材のうち少なくとも一方が、例えば回路基板であってもよい。この場合、接続ブレードの線路は、回路基板に接続される側の端部に形成される接点が、例えば、回路基板の対応回路部に対して半田接続されるようになっている。