特許第6363531号(P6363531)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6363531
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】ポリカーボネート樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 69/00 20060101AFI20180712BHJP
   C08L 33/12 20060101ALI20180712BHJP
   C08L 51/04 20060101ALI20180712BHJP
   C08K 5/101 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
   C08L69/00
   C08L33/12
   C08L51/04
   C08K5/101
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-31312(P2015-31312)
(22)【出願日】2015年2月20日
(65)【公開番号】特開2016-153443(P2016-153443A)
(43)【公開日】2016年8月25日
【審査請求日】2017年9月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】501041528
【氏名又は名称】ダイセルポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100098408
【弁理士】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】外崎 一平
【審査官】 三原 健治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−320365(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/011804(WO,A1)
【文献】 特開2012−251084(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
C08K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)芳香族ポリカーボネート樹脂 50〜95質量%および
(B)重量平均分子量5,000〜30,000のメチルメタクリレート単位を含む重合体 50〜5質量%の合計100質量部に対して、
(C)ジエン単位を含むメチルメタクリレート系共重合体 1〜10質量部、
(D)炭素数16〜22の飽和アルコールと、炭素数16〜22の飽和脂肪酸からなるエステル化合物 0.75〜2.0質量部を含むポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項2】
(B)成分が、メチルメタクリレート単位20〜95質量%および芳香族(メタ)アクリレート単位5〜80質量%であるメチルメタクリレート単位を含む重合体である、請求項1記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項3】
(C)成分が、メチルメタクリレートーブタジエンースチレン共重合体である、請求項1記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項4】
(D)成分が、パルミチルステアレート、パルミチルベヘネート、ステアリルステアレート、ステアリルベヘネートから選ばれるものである、請求項1記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項5】
さらに(E)着色剤01〜30質量部を含有する請求項1記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項記載のポリカーボネート樹脂組成物から得られる成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐傷つき性(スクラッチ性)と耐衝撃性に優れた成形体が得られるポリカーボネート樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂は、その成形体表面は表面硬度が低く、耐傷つき性(スクラッチ性)に劣る。
成形体表面の滑り性を高めて耐傷つき性(スクラッチ性)を付与する技術として、滑り性をよくする添加剤や離型剤を樹脂に練り込む方法がある。
【0003】
特許文献1には、ポリカーボネート、(メタ)アクリレート共重合体、リン系安定剤および離型剤を含有する芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が記載されており、その成形体は透明性を維持しつつ表面硬度が良好であると記載されている。
特許文献2、3には、ポリカーボネートと表面硬度向上剤となる芳香族(メタ)アクリレート単位とメチルメタクリレート単位を含む共重合体を含むポリカーボネート樹脂組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5447249号公報
【特許文献2】特開2014−51539号公報
【特許文献3】特開2014−62148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、成形時の金型汚染が小さく、耐傷つき性(スクラッチ性)、耐衝撃性および発色性に優れた成形体が得られるポリカーボネート樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、(A)ポリカーボネート樹脂 50〜95質量%および(B)重量平均分子量5000〜30000のメチルメタクリレート単位を含む重合体 50〜5質量%の合計100質量部に対して、
(C)ジエン単位を含むメチルメタクリレート系共重合体 1〜10質量部、
(D)炭素数16〜22の飽和アルコールと、炭素数16〜22の飽和脂肪酸からなるエステル化合物 0.5〜2.0質量部を含むポリカーボネート樹脂組成物を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物によれば、成形時の金型汚染が小さく、耐傷つき性(スクラッチ性)、耐衝撃性および発色性に優れた成形体が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(A)成分のポリカーボネート樹脂は公知ものであり、特開2010−235650号公報の段落0020〜0026に記載されたものを使用することができる。
【0009】
(B)成分のメチルメタクリレート単位を含む重合体は、重量平均分子量5,000〜30,000の重合体であり、好ましくは重量平均分子量10,000〜25,000の重合体である。
重量平均分子量は、テトラヒドロフラン溶媒を用いたGPC測定により求めた標準ポリスチレン換算値とする。
【0010】
(B)成分は、メチルメタクリレート単位を20質量%以上含有するものが好ましく、40質量%以上含有するものがより好ましく、60質量%以上含有するものがさらに好ましい。本発明では、前記割合は原料基準値と実測値のいずれも同じとする。
【0011】
(B)成分を共重合体にするときの共重合成分としては、
メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ブチルアクリレート、アミルアクリレート、ヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート、オクタデシルアクリレート、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレートなどのアクリル酸エステル、
エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、アミルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、オクタデシルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレートなどのメタクリル酸エステルが挙げられ、これらから選ばれる1または2以上を使用することができる。
これらの中でもフェニルメタクリレート、フェニルアクリレート、ベンジルメタクリレート、ベンジルアクリレートなどの芳香族(メタ)アクリレートが好ましい。
【0012】
(B)成分は、メチルメタクリレート単位と芳香族(メタ)アクリレート単位を含む共重合体が好ましく、メチルメタクリレート単位の割合は、20〜95質量%が好ましく、40〜95質量%がより好ましく、60〜95質量%がさらに好ましく、芳香族(メタ)アクリレート単位の割合は、5〜80質量%が好ましく、5〜60質量%がより好ましく、5〜40質量%がさらに好ましい。
【0013】
(B)成分は、ガラス転移点(Tg)が90〜120℃のものが好ましく、90〜110℃のものがより好ましい。
ガラス転移点(Tg)は、示差走査熱量計(DSC)を用い、窒素気流下、昇温速度20℃/分の条件で測定した値を示す。
(B)成分は、特開2010−116501号公報の特許請求の範囲および実施例などにおいて表面硬度向上剤として記載されている共重合体を使用することができる。
【0014】
(A)成分と(B)成分の合計量中の割合は、
(A)成分50〜95質量%であり、50〜90質量%が好ましく、55〜80質量%がより好ましく、
(B)成分50〜5質量%であり、50〜10質量%が好ましく、45〜20質量%がより好ましい。
【0015】
(C)成分のジエン単位を含むメチルメタクリレート系共重合体は、ジエン単位を有する重合体に対して、メチルメタクリレート、必要に応じて他の共重合可能な他のモノマーをグラフト重合して得られるものである。
ジエン単位は、ブタジエン、イソプレン、クロロプレンなどのジエンに由来する単位である。
【0016】
共重合成分となる他のモノマーとしては、
メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ブチルアクリレート、アミルアクリレート、ヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート、オクタデシルアクリレート、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレートなどのアクリル酸エステル、
エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、アミルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、オクタデシルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレートなどのメタクリル酸エステル、
N-フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、などのマレイミド化合物、スチレン、アクリロニトリルなどが挙げられる。
【0017】
(C)成分は、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体(MBS)、メチルメタクリレート−アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(MABS)などが好ましい。
【0018】
(C)成分の含有量は、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して、1〜10質量部、好ましくは3〜10質量部、より好ましくは6〜9質量部である。
1質量部より少ないと、成形体の衝撃強度が低い。
10質量部より多いと、成形体に濁りやくすみが確認され、着色剤を配合した着色成形体において発色性が劣る。
【0019】
(D)成分のエステル化合物は、炭素数15〜19の飽和アルコールと炭素数16〜22の脂肪酸からなるものである。
【0020】
飽和アルコールは、炭素数15〜19の一価の飽和アルコールが好ましい。
パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコールが好ましく、ステアリルアルコールがより好ましい。
【0021】
脂肪酸は、炭素数16〜20の一価の飽和脂肪酸が好ましい。
パルミチン酸、ステアリン酸、ベへニン酸が好ましく、ステアリン酸がより好ましい。
【0022】
(D)成分のエステル化合物は、パルミチルステアレート、パルミチルベヘネート、ステアリルステアレート、ステアリルベヘネートが好ましく、ステアリルステアレートがより好ましい。
【0023】
(D)成分の含有量は、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して、0.5〜2.0質量部、好ましくは1〜2質量部、より好ましくは1.5〜2質量部である。
0.5質量部より少ないと、成形体の表面滑り性が十分でなく、耐傷つき性(スクラッチ性)が劣る。
2.0質量部より多いと、射出成形時に金型汚染され、得られた成形体表面の外観も劣る。
【0024】
本発明の組成物は、(E)成分として着色剤を含有することができる。
着色剤は、公知の樹脂添加用の顔料や染料を使用することができる。
着色剤の含有量は種類により異なるが、カーボンブラックの場合、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して01〜30質量部が好ましい。
【0025】
本発明の組成物は、リン系安定剤などの安定剤を配合することができ、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して、0.001〜0.3質量部配合することが好ましく、0.05〜0.2質量部配合することがより好ましい。
【0026】
本発明の組成物は、用途に応じて、慣用の添加剤、例えば、他の安定化剤(例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐光安定剤など)、着色剤(染料、顔料など)、帯電防止剤、難燃剤(リン系難燃剤、ハロゲン系難燃剤、無機系難燃剤など)、難燃助剤、架橋剤、補強材、核剤、カップリング剤、分散剤、消泡剤、流動化剤、ドリッピング防止剤、抗菌剤、防腐剤、粘度調整剤、増粘剤などを含んでいてもよい。
【0027】
本発明の組成物は、例えば、各成分をタンブラーミキサー、ヘンシェルミキサー、リボンミキサー、ニーダーなどの混合機を用いて乾式または湿式で混合して調製してもよい。
さらに、前記混合機で予備混合した後、一軸または二軸押出機などの押出機で混練してペレットに調製する方法、加熱ロールやバンバリーミキサーなどの混練機で溶融混練して調製する方法を適用することができる。
【0028】
本発明の組成物は、射出成形、押出成形、真空成形、異型成形、発泡成形、インジェクションプレス、プレス成形、ブロー成形、ガス注入成形などによって各種成形品に成形することができる。
【0029】
本発明の成形体は、例えば、OA・家電機器分野、電気・電子分野、通信機器分野、サニタリー分野、自動車などの輸送車両分野、家具・建材などの住宅関連分野、雑貨分野などの各パーツ、ハウジングなどに使用することができる。
【実施例】
【0030】
(A)成分
ポリカーボネート樹脂(S−2000F、三菱エンジニアリングプラスチック社製)
(B)成分
重量平均分子量14,000、Tg102℃、組成比メチルメタクリレート単位79質量%/フェニルメタクリレート単位21質量%(メタブレン H−880、三菱レイヨン(株)製)
組成比は、測定溶媒として重クロロホルム(CDCl3)を用いた13C−NMR法により測定した。
(C)成分
・MBS(メタブレン C−223A、三菱レイヨン(株)製)
比較用(C)成分
・EPR(エチレンプロピレンゴム、エンゲージ ENR7467、ダウ・ケミカル日本(株)製)
・ABS(セビアン300 ダイセルポリマー(株)製)
(D)成分
ステアリルステアレート(リケマールSL−800、理研ビタミン社(株))
その他成分
・リン系安定剤(IRGAFOS 168、BASFジャパン(株)製)
【0031】
実施例および比較例
表1に示す配合(質量%、質量部)で各成分を配合し、ヘンシェルミキサーで混合した。
その後、前記混合物を押出機に供給して250℃で溶融混練し、ペレットを得た。
このペレットを250℃で射出成形して各試験片を作製し、下記の各測定を実施した。結果を表1に示す。
【0032】
(射出成形条件)
成形機:三菱重工(株)社製 100MS-II(型締力100t)、シリンダー径36mm
成形温度:250℃、金型温度:60℃
【0033】
(金型汚染性)
金型汚染評価金型:円形形状(直径20mm)を使用し、成形温度250℃、金型温度60℃の条件で、1000ショット成形した後の金型表面を目視観察し、以下の判定基準で金型汚染性を評価した。
○:目視で汚れが確認できない。
×:エアーベント全体に付着した汚れが目視で確認できる。
【0034】
(熱安定性)
射出成形機内(250℃)に10分間滞留させた後、射出成形して得た成形品の外観を、目視で観察して下記判定基準により熱安定性を評価した。
○:成形品表面にシルバーが確認されない。
×:成形品表面にシルバーが確認されない。
【0035】
(シャルピー衝撃強度)(kJ/m2
ISO179/1eAに準拠して、ノッチ付きシャルピー衝撃強さを測定した。
【0036】
(耐傷つき性;スクラッチ性)
上記ペレットを使用して、射出成形により、縦90mm×横50mm×厚み3mmの平板試験片を作製した。
往復動摩擦摩耗試験機(AFT−15MS;株式会社オリエンテック製)を使用して、平板試験片の耐傷つき性を試験した。
試験は、往復動摩擦摩耗試験機に生地(綿100%の軍手生地)を両面テープで固定した円柱状の鋼材と平板試験片を取り付け、平板試験片の一面に前記生地面を押し当てて荷重をかけた状態で、円柱状の鋼材を1000回往復摺動させた。
荷重:円柱状の鋼材100g(直径10mm)
移動速度:50mm/sec
移動距離:25mm
【0037】
その後、平板試験片表面の傷付き状態を観察して、下記の判定基準で評価した。
◎:傷がまったく確認されない。
○:傷がほとんど確認されない。
×:摩擦面全体に傷が確認される。
【0038】
(引っかき硬度;鉛筆法)
JIS K5600 5−4に準拠して、試験片表面の鉛筆硬度を測定した。
【0039】
(MFR)
220℃、荷重10kgで測定した。
【0040】
(発色性;漆黒性)
表1に示す配合(質量%、質量部)に、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対してカーボンブラック(漆黒MB、レジノカラー工業(株)製)2.0質量部を配合して、ヘンシェルミキサーで混合した。
その後、混合物を押出機に供給して250℃で溶融混練してペレットを得た。このペレットを250℃で射出成形して、黒色成形体(縦90mm×横50mm×厚み3mm)を得た。
上記黒色成形体の表面外観を光源BOX内でD65光源の光の下で目視観察し、下記判断基準により漆黒性を評価した。
○:くすみや濁りが全く確認できず、カーボンブラックの黒色が鮮やかに発現されている(漆黒で深みのある黒が観察できる)。
×:くすみや濁りが全体的に確認できる(灰色がかった黒が観察できる)。
【0041】
【表1】
【0042】
実施例1〜7は、(A)〜(D)成分を含有することにより全ての試験で良い結果が得られた。比較例1〜7は、いずれかの試験結果が悪かった。