特許第6363534号(P6363534)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社NTTドコモの特許一覧

特許6363534経路探索装置、経路探索システム、経路探索方法及びプログラム
<>
  • 特許6363534-経路探索装置、経路探索システム、経路探索方法及びプログラム 図000002
  • 特許6363534-経路探索装置、経路探索システム、経路探索方法及びプログラム 図000003
  • 特許6363534-経路探索装置、経路探索システム、経路探索方法及びプログラム 図000004
  • 特許6363534-経路探索装置、経路探索システム、経路探索方法及びプログラム 図000005
  • 特許6363534-経路探索装置、経路探索システム、経路探索方法及びプログラム 図000006
  • 特許6363534-経路探索装置、経路探索システム、経路探索方法及びプログラム 図000007
  • 特許6363534-経路探索装置、経路探索システム、経路探索方法及びプログラム 図000008
  • 特許6363534-経路探索装置、経路探索システム、経路探索方法及びプログラム 図000009
  • 特許6363534-経路探索装置、経路探索システム、経路探索方法及びプログラム 図000010
  • 特許6363534-経路探索装置、経路探索システム、経路探索方法及びプログラム 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6363534
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】経路探索装置、経路探索システム、経路探索方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/26 20060101AFI20180712BHJP
   G01C 21/34 20060101ALI20180712BHJP
   G06Q 50/30 20120101ALI20180712BHJP
【FI】
   G01C21/26 P
   G01C21/34
   G06Q50/30
【請求項の数】6
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-42686(P2015-42686)
(22)【出願日】2015年3月4日
(65)【公開番号】特開2016-161501(P2016-161501A)
(43)【公開日】2016年9月5日
【審査請求日】2017年8月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】392026693
【氏名又は名称】株式会社NTTドコモ
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】特許業務法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤田 将成
(72)【発明者】
【氏名】清水 強
(72)【発明者】
【氏名】山本 浩之
【審査官】 吉村 俊厚
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−058157(JP,A)
【文献】 特開2009−271019(JP,A)
【文献】 特開2012−189438(JP,A)
【文献】 特開2014−016808(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/26
G01C 21/34
G06Q 50/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交通ネットワークを構成する複数のノード及び複数のリンクのデータを記憶する記憶手段と、
出発地を示す出発地情報及び目的地を示す目的地情報を取得する取得手段と、
前記取得手段が取得した前記出発地情報が示す出発地から前記目的地情報が示す目的地までの経路を、前記記憶手段に記憶されているデータに基づいて複数探索する探索手段と、
前記探索手段で探索された経路について、当該経路の途中から目的地まで別経路で移動するときのリスクを評価する評価手段と、
前記評価手段の評価結果に基づいて前記探索手段で探索された複数の経路から少なくとも一の経路を選択する選択手段と、
前記選択手段が選択した経路を示す情報を出力する出力手段と、
を備える経路探索装置。
【請求項2】
前記探索手段は、前記複数のノードにおいて、ノードへの到達予想時刻において乗車可能な確率が閾値以上となる車両がある場合、当該ノードと、当該ノードから到着可能な他のノードまでのリンクを、前記出発地から前記目的地までの経路を構成するリンクとし、
前記車両には乗客に応じた目的地へ移動する車両が含まれる
請求項1に記載の経路探索装置。
【請求項3】
前記評価手段は、前記探索手段で探索された経路について、移動時間、料金、ユーザーへの負担、リスクで評価する
請求項1又は請求項2に記載の経路探索装置。
【請求項4】
出発地を示す出発地情報及び目的地を示す目的地情報を送信する送信手段と、
前記出発地から前記目的地までの経路を示す情報を取得する取得手段と、
を有する端末装置と、
交通ネットワークを構成する複数のノード及び複数のリンクのデータを記憶する記憶手段と、
前記送信手段が送信した出発地情報及び目的地情報を取得する取得手段と、
前記取得手段が取得した前記出発地情報が示す出発地から前記目的地情報が示す目的地までの経路を、前記記憶手段に記憶されているデータに基づいて複数探索する探索手段と、
前記探索手段で探索された経路について、当該経路の途中から目的地まで別経路で移動するときのリスクを評価する評価手段と、
前記評価手段の評価結果に基づいて前記探索手段で探索された複数の経路から少なくとも一の経路を選択する選択手段と、
前記選択手段が選択した経路を示す情報を前記端末装置へ出力する出力手段と、
を有する経路探索装置と、
を備える経路探索システム。
【請求項5】
出発地を示す出発地情報及び目的地を示す目的地情報を取得する取得ステップと、
前記取得ステップで取得した前記出発地情報が示す出発地から前記目的地情報が示す目的地までの経路を、交通ネットワークを構成する複数のノード及び複数のリンクのデータを記憶する記憶手段に記憶されているデータに基づいて複数探索する探索ステップと、
前記探索ステップで探索された経路について、当該経路の途中から目的地まで別経路で移動するときのリスクを評価する評価ステップと、
前記評価ステップの評価結果に基づいて前記探索ステップで探索された複数の経路から少なくとも一の経路を選択する選択ステップと、
前記選択ステップで選択された経路を示す情報を出力する出力ステップと、
を備える経路探索方法。
【請求項6】
コンピュータを、
出発地を示す出発地情報及び目的地を示す目的地情報を取得する取得手段と、
前記取得手段が取得した前記出発地情報が示す出発地から前記目的地情報が示す目的地までの経路を、交通ネットワークを構成する複数のノード及び複数のリンクのデータを記憶する記憶手段に記憶されているデータに基づいて複数探索する探索手段と、
前記探索手段で探索された経路について、当該経路の途中から目的地まで別経路で移動するときのリスクを評価する評価手段と、
前記評価手段の評価結果に基づいて前記探索手段で探索された複数の経路から少なくとも一の経路を選択する選択手段と、
前記選択手段が選択した経路を示す情報を出力する出力手段
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経路を探索する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車、鉄道、バスなどの複数の交通手段のそれぞれについて、複数のノードをリンクで結んだネットワークで表し、各ネットワークにおいて他の交通手段への乗り換え地点となるノードをリンクで結んだ多階層ネットワークを用いて、出発地から目的地までの経路を探索する経路探索装置が開示されている。この経路探索装置は、目的地までのリンクについて、交通手段毎にリンクコストを算出し、リンクコストの合計値を最少にする経路を探索する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−58157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
探索した経路での移動中においては、通行止めや事故、故障などが発生し、探索した経路のリンクが切れることが起こりえる。移動中にリンクが切れた場合、迂回して他の経路で目的地まで行くことになるが、移動中に探索した迂回の経路では、移動に係るコストが大きくなる場合がある。
【0005】
本発明は、上述した背景の下になされたものであり、経路の探索を行う際に、リンクが切断した場合に有用な経路を探索することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、交通ネットワークを構成する複数のノード及び複数のリンクのデータを記憶する記憶手段と、出発地を示す出発地情報及び目的地を示す目的地情報を取得する取得手段と、前記取得手段が取得した前記出発地情報が示す出発地から前記目的地情報が示す目的地までの経路を、前記記憶手段に記憶されているデータに基づいて複数探索する探索手段と、前記探索手段で探索された経路について、当該経路の途中から目的地まで別経路で移動するときのリスクを評価する評価手段と、前記評価手段の評価結果に基づいて前記探索手段で探索された複数の経路から少なくとも一の経路を選択する選択手段と、前記選択手段が選択した経路を示す情報を出力する出力手段と、を備える経路探索装置を提供する。
【0007】
本発明においては、前記探索手段は、前記複数のノードにおいて、ノードへの到達予想時刻において乗車可能な確率が閾値以上となる車両がある場合、当該ノードと、当該ノードから到着可能な他のノードまでのリンクを、前記出発地から前記目的地までの経路を構成するリンクとし、前記車両には乗客に応じた目的地へ移動する車両が含まれる構成としてもよい。
【0008】
また、本発明においては、前記評価手段は、前記探索手段で探索された経路について、移動時間、料金、ユーザーへの負担、リスクで評価する構成としてもよい。
【0009】
また、本発明においては、出発地を示す出発地情報及び目的地を示す目的地情報を送信する送信手段と、前記出発地から前記目的地までの経路を示す情報を取得する取得手段と、を有する端末装置と、交通ネットワークを構成する複数のノード及び複数のリンクのデータを記憶する記憶手段と、前記送信手段が送信した出発地情報及び目的地情報を取得する取得手段と、前記取得手段が取得した前記出発地情報が示す出発地から前記目的地情報が示す目的地までの経路を、前記記憶手段に記憶されているデータに基づいて複数探索する探索手段と、前記探索手段で探索された経路について、当該経路の途中から目的地まで別経路で移動するときのリスクを評価する評価手段と、前記評価手段の評価結果に基づいて前記生成手段で生成された複数の経路から少なくとも一の経路を選択する選択手段と、前記選択手段が選択した経路を示す情報を前記端末装置へ出力する出力手段と、を有する経路探索装置と、を備える経路探索システムを提供する。
【0010】
また、発明は、出発地を示す出発地情報及び目的地を示す目的地情報を取得する取得ステップと、前記取得ステップで取得した前記出発地情報が示す出発地から前記目的地情報が示す目的地までの経路を、交通ネットワークを構成する複数のノード及び複数のリンクのデータを記憶する記憶手段に記憶されているデータに基づいて複数探索する探索ステップと、前記探索ステップで探索された経路について、当該経路の途中から目的地まで別経路で移動するときのリスクを評価する評価ステップと、前記評価ステップの評価結果に基づいて前記探索ステップで探索された複数の経路から少なくとも一の経路を選択する選択ステップと、前記選択ステップで選択された経路を示す情報を出力する出力ステップと、を備える経路探索方法を提供する。
【0011】
また、本発明は、コンピュータを、出発地を示す出発地情報及び目的地を示す目的地情報を取得する取得手段と、前記取得手段が取得した前記出発地情報が示す出発地から前記目的地情報が示す目的地までの経路を、交通ネットワークを構成する複数のノード及び複数のリンクのデータを記憶する記憶手段に記憶されているデータに基づいて複数探索する探索手段と、前記探索手段で探索された経路について、当該経路の途中から目的地まで別経路で移動するときのリスクを評価する評価手段と、前記評価手段の評価結果に基づいて前記探索手段で探索された複数の経路から少なくとも一の経路を選択する選択手段と、前記選択手段が選択した経路を示す情報を出力する出力手段として機能させるためのプログラムを提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、経路の探索を行う際に、リンクが切断した場合に有用な経路を探索することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る装置を示した図。
図2】端末装置20のハードウェア構成を示した図。
図3】情報処理装置50のハードウェア構成を示した図。
図4】経路探索装置10のハードウェア構成を示した図。
図5】経路探索装置10の機能ブロック図。
図6】経路探索装置10が行う処理の流れを示したフローチャート。
図7】交通ネットワークの一例を示した図。
図8】端末装置20の表示されるウェブページの一例を示した図。
図9】出発地から目的地までの各リンクの評価結果の一例を示した図。
図10】出発地から目的地までの各リンクのR(pn)の演算結果の一例を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[実施形態]
(全体構成)
図1は、本発明の一実施形態に係る装置と、各装置間で行われるデータ通信を中継する通信網2を例示した図である。通信網2は、データ通信のサービスを提供する通信網である。通信網2は、インターネットや固定電話網、移動体通信網などを含む。本実施形態においては、端末装置20のユーザーが出発地から目的地への経路探索を経路探索装置10へ要求すると、経路探索装置10は、ユーザーが設定した出発地から目的地への経路を探索し、探索した経路をユーザー提示する。
【0015】
端末装置20は、本実施形態においてはスマートフォンであり、通信網2を介してデータ通信を行う。なお、本実施形態においては、端末装置20はスマートフォンであるが、スマートフォンに限定されるものではなく、タブレットPC(Personal Computer)、フィーチャーフォン又はPDA(Personal Digital Assistant)など、通信網2を介してデータ通信を行う機能を備えているコンピュータ装置であればよい。
端末装置20は、ユーザーの操作に応じて出発地を示す情報及び目的地を示す情報を経路探索装置10へ送信し、出発地から目的までの経路探索を経路探索装置10へ指示する。また、端末装置20は、経路探索装置10が探索した経路を示す情報を受信し、受信した情報が示す経路を表示する。なお、端末装置20は、多数存在するが、図面が繁雑になるのを防ぐために、図1においては一つの端末装置20のみを示している。
【0016】
経路探索装置10は、出発地から目的地までの経路を探索する装置である。経路探索装置10は、出発地を示す情報及び目的地を示す情報を端末装置20から取得する。経路探索装置10は、取得した情報が示す出発地から目的地への経路を、予め定められたアルゴリズムに従って探索し、探索した経路を示す情報を端末装置20へ送信する。
車両40は、本実施形態ではタクシー、ハイヤー、バス、電車などであり、情報処理装置50を備えている。情報処理装置50は、衛星測位システムを利用して車両40の位置を計測し、計測した位置を経路探索装置10へ送信する。
【0017】
(端末装置20の構成)
図2は、端末装置20のハードウェア構成を示した図である。記憶部22は、不揮発性メモリを有しており、オペレーティングシステムのプログラムや複数のアプリケーションプログラムなどを記憶する。本実施形態においては、記憶部22は、アプリケーションプログラムとして、ウェブブラウザの機能を実現するアプリケーションプログラムを記憶する。
【0018】
制御部21は、CPU(Central Processing Unit)やRAM(Random Access Memory)、ブートローダーを記憶したROM(Read Only Memory)を備えている。制御部21のCPUがROMに記憶されているブートローダーを実行すると、記憶部22に記憶されているオペレーティングシステムのプログラムが実行され、端末装置20は、音声通信やデータ通信を行うことが可能となる。また、制御部21がオペレーティングシステムのプログラムを実行すると、アプリケーションプログラムを実行することが可能となる。ユーザーの操作に応じて制御部21がウェブブラウザのアプリケーションプログラムを実行すると、端末装置20は、ウェブブラウザの機能により経路探索装置10と通信を行い、経路探索装置10との間でデータ通信を行う。
【0019】
通話部29は、マイクとスピーカ(いずれも図示略)を有している。通話部29は、マイクに音声が入力されると、入力された音声を表す音声信号を通信部28へ出力する。また、通話部29では、通信部28から音声信号が供給されると、この音声信号がアナログ信号に変換されてスピーカへ出力され、スピーカから音声が出力される。
通信部28は、通信網2が備える無線基地局(図示略)と無線通信を行うインターフェースとして機能する。通信部28は、制御部21により制御され、図示を省略したアンテナを介して、無線通信によって音声通信やデータ通信を行う。通信部28は、無線基地局から音声通信に係る音声信号を受信すると、受信した音声信号を通話部29へ出力し、無線基地局からデータ通信に係るデータ信号を受信すると、受信したデータ信号を制御部21へ出力する。また、通信部28は、制御部21からデータ通信に係るデータ信号を取得すると、このデータ信号を無線基地局へ送信し、通話部29から音声通信に係る音声信号を取得すると、この音声信号を無線基地局へ送信する。
【0020】
タッチパネル23は、表示装置(例えば液晶ディスプレイ)と、表示装置の表示面において指の接触を検出するセンサーとを組み合わせた装置であり、ユーザーにより操作される操作部の一例である。タッチパネル23は、文字やGUI(Graphical User Interface)などを液晶表示パネルに表示する。また、タッチパネル23は、ユーザーが指で触れた位置をセンサーで検出する。制御部21は、タッチパネル23が検出した位置と、タッチパネルに表示されている画面に応じてユーザーの操作を特定し、特定した操作に応じて各部の制御や各種処理を実行する。
【0021】
操作部24は、端末装置20を操作するための複数のボタンを有している。ユーザーが、操作部24のボタンを操作すると、操作されたボタンを示す信号が操作部24から制御部21へ出力される。制御部21は、操作部24が出力した信号を取得すると、操作されたボタンを取得した信号に基づいて特定し、特定したボタンに応じて各部を制御する。
【0022】
測位部27は、人工衛星を用いた衛星測位システムを利用して端末装置20の位置を測位する。測位部27は、衛星測位システムの人工衛星から発信される位置測定用の電波を受信すると、それぞれの人工衛星から発信される電波の位相差を基にして端末装置20の位置の緯度および経度を演算する。測位部27は、演算により得られた緯度および経度を表す位置情報を生成する。なお、測位部27は、車載用のナビゲーション装置のように、さらにジャイロセンサーや加速度センサーの測定結果も利用して位置を測位する構成であってもよい。
【0023】
(情報処理装置50の構成)
図3は、情報処理装置50のハードウェア構成を示した図である。測位部57は、人工衛星を用いた衛星測位システムを利用して車両40の位置を測位する。測位部57は、衛星測位システムの人工衛星から発信される位置測定用の電波を受信すると、それぞれの人工衛星から発信される電波の位相差を基にして車両40の位置の緯度および経度を演算する。測位部57は、演算により得られた緯度および経度を表す位置情報を生成する。なお、測位部57は、車載用のナビゲーション装置のように、さらにジャイロセンサーや加速度センサーの測定結果も利用して位置を測位する構成であってもよい。
【0024】
記憶部52は、不揮発性メモリを有しており、オペレーティングシステムのプログラムや複数のアプリケーションプログラムなどを記憶する。本実施形態においては、記憶部52は、測位部57が生成した位置情報を経路探索装置10へ予め定められた周期で送信する機能を実現するアプリケーションプログラムを記憶する。
【0025】
制御部51は、CPUやRAM、ブートローダーを記憶したROMを備えている。制御部51のCPUがROMに記憶されているブートローダーを実行すると、記憶部52に記憶されているオペレーティングシステムのプログラムが実行されてデータ通信の機能が実現し、情報処理装置50は、データ通信を行うことが可能となる。また、制御部51がオペレーティングシステムのプログラムを実行すると、アプリケーションプログラムを実行することが可能となる。制御部51がアプリケーションプログラムを実行すると、情報処理装置50は、経路探索装置10と通信を行い、情報処理装置50を一意に識別する識別子と、測位部57が生成した位置情報を経路探索装置10へ予め定められた周期で送信する。
【0026】
通信部58は、通信網2が備える無線基地局(図示略)と無線通信を行うインターフェースとして機能する。通信部58は、制御部51により制御され、図示を省略したアンテナを介して、無線通信によってデータ通信を行う。通信部58は、無線基地局からデータ通信に係るデータ信号を受信すると、受信したデータ信号を制御部51へ出力する。また、通信部58は、制御部51からデータ通信に係るデータ信号を取得すると、このデータ信号を無線基地局へ送信する。
【0027】
タッチパネル53は、表示装置(例えば液晶ディスプレイ)と、表示装置の表示面において指の接触を検出するセンサーとを組み合わせた装置であり、ユーザーにより操作される操作部の一例である。タッチパネル53は、文字やGUIなどを液晶表示パネルに表示する。また、タッチパネル53は、ユーザーが指で触れた位置をセンサーで検出する。制御部51は、タッチパネル53が検出した位置と、タッチパネルに表示されている画面に応じてユーザーの操作を特定し、特定した操作に応じて各部の制御や各種処理を実行する。
【0028】
操作部54は、情報処理装置50を操作するための複数のボタンを有している。ユーザーが、操作部54のボタンを操作すると、操作されたボタンを示す信号が操作部54から制御部51へ出力される。制御部51は、操作部54が出力した信号を取得すると、操作されたボタンを取得した信号に基づいて特定し、特定したボタンに応じて各部を制御する。
【0029】
(経路探索装置10の構成)
図4は、経路探索装置10のハードウェア構成を例示したブロック図である。通信部18は、データ通信を行うための通信インターフェースである。通信部18は、図示を省略した通信ケーブルにより通信網2に接続されている。操作部14は、ユーザーにより操作されるキーボード(図示略)およびマウス(図示略)を有している。経路探索装置10は、キーボードやマウスに行われた操作に応じて動作する。表示部13は、液晶ディスプレイを有しており、経路探索装置10を操作するための画面や記憶部12に記憶されている情報などを表示する。
【0030】
記憶部12は、データを永続的に記憶する装置(例えばハードディスク装置)を有しており、オペレーティングシステムのプログラムや複数のアプリケーションプログラムなどを記憶する。記憶部12は、出発地を示す情報と目的地を示す情報とを取得し、出発地から目的地までの経路を探索し、探索した経路を示す情報を端末装置20へ送信する機能を実現する経路探索プログラムを記憶している。
【0031】
また、記憶部12は、交通ネットワークのデータを蓄積したネットワークデータベース12Aを記憶している。ネットワークデータベース12Aは、鉄道、バス、タクシー、徒歩などの各交通手段に係るデータを蓄積したデータベースである。ネットワークデータベース12Aは、各種交通手段について、交通ネットワークに含まれる車両のデータや、複数のノード及びノード間を結ぶリンクのデータなどを蓄積している。
また、記憶部12は、情報処理装置50から送信される識別子と位置情報を、位置情報を受信した日時と対応付けて記憶する。また、記憶部12は、各ノードに対応付けて、交通ネットワークを走行する車両40がノードに存在したときの時刻と車両の識別子の組を記憶する。
【0032】
制御部11は、CPU、ブートローダーを記憶したROM及びRAMを備えている。制御部11のCPUがROMに記憶されているブートローダーを実行すると、CPUは、記憶部12に記憶されているオペレーティングシステムのプログラムを実行する。CPUがオペレーティングシステムのプログラムを実行すると、経路探索装置10は、クライアントサーバーシステムのサーバーとしての機能し、端末装置20や情報処理装置50とデータ通信を行うことが可能となる。また、制御部11がオペレーティングシステムのプログラムを実行すると、アプリケーションプログラムを実行することが可能となる。制御部11が経路探索プログラムを実行すると、端末装置20から送られた情報に応じて出発地から目的地までの経路を探索し、探索した経路を示す情報を端末装置20へ送信する機能が実現する。
【0033】
図5は、経路探索装置10において実現する機能の構成を示した機能ブロック図である。取得部101は、端末装置20が送信した出発地情報、目的地情報及び出発日時情報を取得する。経路探索部102は、取得部101が取得した情報と、ネットワークデータベース12Aに蓄積されているデータに基づいて、出発地情報が示す出発地から目的地情報が示す目的地までの経路を複数探索する。評価部103は、経路探索部102が探索した複数の経路のそれぞれを予め定められたアルゴリズムで評価する。選択部104は、評価部103の評価結果に応じて、経路探索部102が探索した経路の中から端末装置20のユーザーへ提示する経路を選択する。出力部105は、選択部104が選択した経路を示すウェブページのデータを生成し、生成したデータを端末装置20へ送信する。
【0034】
(実施形態の動作例)
図7は、ネットワークデータベース12Aに蓄積されたデータで表される交通ネットワークの一部を例示した図である。図7においては、ノードn1、n5、n6は、路線バスの停留所を表し、ノードn4は、鉄道の駅を表し、ノードn2、n3は、路線バスの停留所及び鉄道の駅を表している。ノードn2、n3は、バスと鉄道の乗り換えが可能なノードである。また、図7において、実線、破線及び一点鎖線は、路線バスのノード(停留所)を結ぶリンクを表している。図7においては、路線バスの三つの系統が示されており、第1の系統に係るリンクを実線で表し、第2の系統に係るリンクを破線で表し、第3の系統に係るリンクを一点鎖線で表している。また、平行な2本の実線に複数の直線を等間隔で交差させた線は、電車のノード(駅)を結ぶリンクを表している。
【0035】
また、図7においては、交通ネットワーク上に存在する交通手段を示している。車両M1_m1は、第1の系統を走行するバスを表し、車両M4_m10は、第2の系統を走行するバスを表し、車両M3_m8は、第3の系統を走行するバスを表している。車両M3_m3及び車両M3_m5は、ノードn2、n3、n4を走行する電車を表しており、車両M2_m2、車両M2_m4、車両M2_m6、車両M2_m7及び車両M2_m9は、タクシーを表している。
以下においては、経路探索装置10が行う処理の流れを示した図6のフローチャートを参照し、図7に示した交通ネットワークにおいて出発地Sから目的地Gまでの経路を探索する場合を例にして、動作例の説明を行う。
【0036】
端末装置20のユーザーが、端末装置20においてウェブブラウザを起動させる操作を行った後、経路探索装置10へアクセスする操作を行うと、端末装置20と経路探索装置10とが互いに通信を行い、経路探索を行うためのウェブページが端末装置20へ送られる。端末装置20が、このウェブページを受信し、受信したウェブページに基づいてタッチパネル23を制御すると、出発地及び目的地を入力するためのウェブページ(図8)がタッチパネル23に表示される。
【0037】
端末装置20のユーザーは、出発地Sから目的地Gまでの経路を探索する場合、図8に例示したウェブページにおいて、出発地Sの位置を表す文字列をテキストボックスBX1に入力し、目的地Gの位置を表す文字列をテキストボックスBX2に入力する。ここでユーザーは、テキストボックスBX1及びテキストボックスBX2に、例えば、地名、住所又は緯度及び経度などを入力する。また、ユーザーは、出発地から移動を開始するときの出発日時を、表示されたウェブページにあるコンボボックスBX3〜BX6で入力する。
【0038】
ユーザーが、出発地、目的地及び出発日時を入力した後、表示されているウェブページにある検索ボタンB1をタップする操作を行うと、端末装置20は、テキストボックスBX1に入力された文字列を、出発地を表す出発地情報として経路探索装置10へ送信し、テキストボックスBX2に入力された文字列を、目的地を表す目的地情報として経路探索装置10へ送信する。また、端末装置20は、コンボボックスBX3〜BX6で入力された出発日時を、出発日時情報として経路探索装置10へ送信する。
【0039】
経路探索装置10(取得部101)は、端末装置20が送信した出発地情報、目的地情報及び出発日時情報を取得する。経路探索装置10(経路探索部102)は、出発地情報及び目的地情報を取得すると、経路探索の対象となるノードを特定する(図6:ステップSA1)。具体的には、経路探索装置10は、出発地情報が表す位置から目的地情報が表す位置までの距離を演算する。次に経路探索装置10は、出発地情報が表す位置を中心とし、演算で得られた距離のn倍の距離を半径とする円内に含まれるノード及びリンクを、ネットワークデータベース12Aに蓄積されている情報に基づいて特定する。なお、nの値は、1以上の値が予め設定されている。ここで、この特定したノード群を特定ノードセットと呼称する。
【0040】
次に経路探索装置10(経路探索部102)は、出発地Sから目的地Gまでの経路を探索し、経路グラフを作成する(ステップSA2)。ここで、経路探索装置10は、まず、出発地Sから出発地Sの近傍のノード(図7のノードn1)への移動時間を演算する。近傍のノードの候補として、前述の特定ノードセットから選ぶことで計算処理を効率化することができる。経路探索プログラムにおいては、あるノードから別のノードまでに移動するときにかかる時間を返す関数DM(ta,nb,nc,md)が定義されている。この関数DM(ta,nb,nc,md)において、taは、移動を開始するときの時刻、nbは、移動の始点のノード、ncは、移動の終点のノード、mdは、移動手段を示す。関数DM(ta,nb,nc,md)は、交通ネットワークに存在する車両のプローブデータ(車両の識別子、車両の位置情報、位置情報を取得したときの時刻)の時系列データを利用し、時系列解析モデル(一般線形化モデル、状態空間モデル、多重線形回帰モデル、ARMAモデルなど)などを基にした数理モデルにより実現できる。数理モデルの決定やパラメータ推定については、例えば、ネットワークデータベース12Aに蓄積される車両のプローブデータや交通ネットワークの運行状況(工事や事故、渋滞)、行事などのイベント情報、気温や天気などの環境情報を観測変数とし、ある時刻にあるノードに位置し、一定時間後/一定時間内に他のノードにいた車両の到着時刻を目的変数として、前述の時系列解析モデルによる機械学習により実現する。機械学習によりパラメータ推定された数理モデルの妥当性確認として予測精度の評価については、実データ(車両のプローブデータ)を利用して、適合度や再現性についてクロスバリデーション等により行うことができる。
【0041】
経路探索装置10は、taを、出発日時情報が示す日時、nbを出発地S、ncをノードn1、移動手段を徒歩又はタクシーに設定し、出発地Sからノードn1までの移動に要する時間tdm0を、前述の関数DM(ta,nb,nc,md)により求める。
【0042】
次に経路探索装置10は、出発日時+時間tdm0の日時(以下、ノード1到着時刻とする)に到達するノードn1において、ノード1到着時刻に乗車可能な確率が予め定められた閾値以上の車両(タクシー、ハイヤー、バス、電車等)を抽出する。具体的には、経路探索プログラムにおいては、指定された車両について、指定された時刻において指定されたノードでの乗車可能な確率を返す関数TM(id,ct,cp,tt,tid)が定義されている。idは、確率を求める車両の識別子、ctは、現在時刻、cpは、idで特定される車両の現在時刻における位置、tidは、ユーザーが到達するノードの識別子、ttは、tidのノードにおいてユーザーが車両に乗車する日時(乗車予想時刻)を示す。この関数TM(id,ct,cp,tt,tid)は、交通ネットワークに存在する車両のプローブデータ(車両識別子と各データ収集時刻とGPSで取得した位置情報の時系列データ)を利用して、数理モデルにより実現できる。例えば、関数TM(id,ct,cp,tt,tid)は、ロジスティック回帰モデルにより実現できる。
ロジスティック回帰モデルによる数理モデルの実現については、例えば、入力データとして、ある車両があるノードに存在した毎に記録した、「車両の識別子」、「ノードの識別子」、「車両がノードに存在した時刻」の3つの組の時系列データを入力として用いる。本実施形態では、この3つの組の時系列データをレコードとする。また、モデル式として、「Logit(pid_n)=a*x1_n+b*x2_n+c*x3_n+d」のロジット関数を定義する。
ここでパラメータの機械学習処理について説明する、pid_nは、全レコードのうち、n番目のレコードより(tt−ct)後の時刻に最も近いレコードのノード識別子がtidに一致していたら1、一致していなかったら0をとる変数、x1_nは、n番目のレコードに含まれている時刻、x2_nは、n番目のレコードの曜日が平日なら1、祝日なら0の値をとる変数、x3_nは、n番目のレコードの時刻が通勤時間帯である7時〜9時又は範囲内と17時〜20時の範囲内であれば1、範囲外であれば0をとる変数である。本実施形態では、観測変数としてx1〜x3までを設定したが、その他に季節や天気、気温、車両種類、及び外部システムから取得した道路状況、事故情報等を変数として加える構成も精度向上のため可能である。
この機械学習においては、車両の識別子とノードの識別子毎に、ロジスティック回帰モデルの学習処理を行い、入力データに対して最尤推定を行い、ロジット関数のパラメータであるa〜dを決定する。
機械学習によって得たパラメータによる数理モデルの利用においては、決定したパラメータをモデル式に設定し、id(車両の識別子)及びtid(ユーザーが到達するノードの識別子)に求めたい(指定された)値(ID)を設定し、x1_nをct(現在時刻)としてx2_nとx3_nを設定し、指定された車両について、指定された時刻において指定されたノードでの乗車可能な確率を計算する。
【0043】
まず、経路探索装置10は、ノードn1で乗車可能な車両を特定する。例えば、ノードn1は、バスの停留所であるため、例えば、第1の経路を走行する複数のバスが特定される。次に経路探索装置10は、特定した車両のそれぞれについて、ノードn1において乗車可能な確率を関数TM(id,ct,cp,tt,tid)により演算し、得られた確率が予め定められた閾値以上の車両を抽出する。ここでは、演算を行う際には、idは、ノードn1で乗車可能な車両の識別子、ttは、出発日時+時間tdm0の日時、tidは、ノードn1のidとなる。
【0044】
なお、経路探索装置10は、乗車する人の目的地へ移動するタクシーやハイヤー等に搭載されている情報処理装置50から送られた位置情報の履歴を記憶している。経路探索装置10は、タクシーについて、あるノード及びある時刻における乗車可能な確率を予測する数理モデルを、タクシーの位置情報の履歴を利用した時系列解析モデルで実現し、出発日時+時間tdm0の日時においてノードn1で乗車可能な車両を抽出する際に、タクシーを含めるようにしてもよい。
【0045】
経路探索装置10は、ノードn1で乗車可能な確率が閾値以上の車両を抽出すると、ノードn1への到達予想時刻、ノードn1の識別子、ノードn1へ移動するのに用いる交通手段の識別子及び抽出した車両の識別子を対応付けて記憶する。例えば、出発日時+時間tdm0の時刻にノードn1において乗車可能な車両として車両M1_m1が抽出された場合、経路探索装置10は、ノードn1に関して、「(出発日時+時間tdm0、ノードn1の識別子、出発地Sからノードn1へ移動するのに用いた交通手段の識別子、車両M1_m1の識別子)」の形で各種情報が組にして記憶する。記憶される情報は、出発地Sから目的地Gへ移動するときに移動するノードの情報及び移動に用いる交通手段の情報を含み、出発地Sから目的地Gまでのノード及びリンクを繋ぐ経路グラフを構成する情報(経路グラフ情報)となる。
【0046】
次に、経路探索装置10は、次のノードへの移動時間を演算する。例えば、ノードn1は、リンクでノードn2と接続されているため、経路探索装置10は、ノードn1からノードn2へ移動するのに要する時間tdm1を上述した関数DMにより演算する。また、経路探索装置10は、出発日時+時間tdm0+時間tdm1の日時に到達するノードn2において乗車可能な確率が予め定められた閾値以上となる車両を、上述した関数TM(id,ct,cp,tt,tid)を用いて抽出する。ここでは、演算を行う際には、idは、ノードn2で乗車可能な車両の識別子、ttは、出発日時+時間tdm0+時間tdm1の日時、tidは、ノードn2のidとなる。
【0047】
経路探索装置10は、ノードn2で乗車可能な確率が閾値以上の車両を抽出すると、ノードn2への到達時刻、ノードn2の識別子、ノードn2へ移動するのに用いる交通手段の識別子及び抽出した車両の識別子を対応付けて記憶する。例えば、ノードn2に関して、出発日時+時間tdm0+時間tdm1において乗車可能な確率が閾値以上の車両として、車両M3_m5と、車両M4_m10が抽出された場合、経路探索装置10は、「(出発日時+時間tdm0+時間tdm1、ノードn2の識別子、車両M1_m1の識別子、(車両M3_m5の識別子、車両M4_m10の識別子))」の形で各種情報を組にして記憶する。記憶される情報は、出発地Sから目的地Gへ移動するときに移動するノードの情報及び移動に用いる交通手段の情報を含み、出発地Sから目的地Gまでの経路グラフを構成する情報(経路グラフ情報)となる。
【0048】
次に、経路探索装置10は、ノードn2で乗車可能な確率が閾値以上の車両として、車両M3_m5と車両M4_m10があるため、車両M3_m5により次のノードn3へ移動した場合について、次のノードへの移動時間の演算、次のノードで乗車可能な確率が閾値以上の車両の抽出及び経路グラフ情報の記憶を行い、また、車両M4_m10によりノードn6へ移動した場合について、次のノードへの移動時間の演算、次のノードで乗車可能な確率が閾値以上の車両の抽出及び経路グラフ情報の記憶を行う。
【0049】
以後、経路探索装置10は、次のノードへの移動時間の演算、次のノードで乗車可能な確率が閾値以上の車両の抽出及び経路グラフ情報の記憶を順次行い、目的地Gまでの経路グラフ情報の記憶が終了すると、記憶した経路グラフ情報に基づいて、出発地Sから目的地Gまでの経路グラフを作成する。具体的には、経路探索装置10は、経路グラフ情報の4項目にある車両の識別子を、3項目に含む経路グラフ情報を特定し、特定した経路グラフ情報を紐付ける。上述したように、「(出発日時+時間tdm0、ノードn1の識別子、出発地Sからノードn1へ移動するのに用いた交通手段の識別子、車両M1_m1の識別子)」の経路グラフ情報と、「(出発日時+時間tdm0+時間tdm1、ノードn2の識別子、車両M1_m1の識別子、(車両M3_m5の識別子、車両M4_m10識別子))」の経路グラフ情報が記憶されている場合、一方の経路グラフ情報の4項目にある車両M1_m1の識別子が、他方の経路グラフ情報の3項目にあるため、これらの経路グラフ情報が紐付けられる。経路探索装置10は、この紐付けの処理を、紐付ける経路グラフ情報がなくなるまで繰り返す。経路探索装置10は、経路グラフ情報の紐付けが終了すると、紐付けられた経路グラフ情報に含まれているノードの識別子を結ぶことにより、経路グラフを作成する。
【0050】
例えば、本動作例では、図7の交通ネットワークで経路グラフの作成を行った場合、経路A(出発地S→ノードn1→ノードn2→ノードn3→ノードn5→目的地G)、経路B(出発地S→ノードn1→ノードn2→ノードn3→ノードn4→目的地G)、経路C(出発地S→ノードn1→ノードn2→ノードn6→目的地G)の3つの経路グラフが作成される。
なお、出発地Sから目的地Gへ至る経路については、周知の幅優先探索、深さ優先探索、ランダムリスタートなどで求めてもよい。また、経路の探索を行う際には、ノード数、時間、料金、ユーザーへの負担、乗り換え失敗のリスクなどをもとにして経路を絞り込むようにしてもよく、例えば、ノード数が少ない順から所定数の経路を選択したり、所要時間が少ない順から所定数の経路を選択したりしてもよい。
【0051】
経路探索装置10(評価部103)は、経路グラフの作成を終了すると、各経路グラフのリンクのそれぞれについて、リンクを移動するのに用いる車両に応じた早さ、安さ、楽さ、乗り換えリスクなどの各種パラメータを設定する(ステップSA3)。ここで、早さは、例えばリンクの移動に要する移動時間であり、安さは、リンクの移動に要する料金である。また、楽さは、ユーザーへの負担を表す値である。また、乗り換えリスクは、リンクの終点ノードに至る移動手段の遅延等による、リンクの終点ノードにおける乗り換え失敗程度や、リンクの終点ノードからの次のノードへの移動手段への乗り換え失敗程度などである。
【0052】
次に、経路探索装置10(評価部103)は、作成した経路グラフを構成する各リンクを、移動時間、料金、ユーザーへの負担、乗り換え失敗による経路変更などの観点で評価する(ステップSA4)。具体的には、経路探索プログラムにおいては、経路の評価を行う評価関数S(pn)が定義されている。評価関数S(pn)は、移動時間、料金、ユーザーへの負担、乗り換え失敗による経路変更などの観点から経路を評価する関数であり、上記の観点で優れた経路ほど高い値を返す。
【0053】
本実施形態においては、経路探索プログラムにおいて、S(pn)=T(pn)+C(pn)+E(pn)−R(pn)と定義されている。評価関数S(pn)において、pnは、経路グラフを構成する個々のリンクの識別子である。T(pn)は、リンクの移動時間を評価する関数である。T(pn)は、pnで特定されるリンクに設定された上記のパラメータ(早さ)を用いてリンクの移動時間を演算する。T(pn)は、pnで識別されるリンクを移動するときの移動時間が短いほど高い値を返す。C(pn)は、リンクを移動するときにかかる料金を評価する関数である。C(pn)は、pnで特定されるリンクに設定された上記のパラメータ(安さ)を用いて移動に係る料金を演算する。C(pn)は、pnで識別されるリンクを移動するときにかかる料金が低いほど高い値を返す。E(pn)は、リンクを移動したときにユーザーに係る負担を評価する関数である。E(pn)は、リンクに設定されたパラメータ(楽さ)を用いてユーザーに係る負担を演算する。E(pn)は、pnで識別されるリンクを移動したときにユーザーに係る負担が小さいほど高い値を返す。R(pn)は、リンクに紐付けられた車両への乗車の失敗やリンクでの移動が不可となったこと(つまり、リンクが切断されたこと)により迂回するときのリスクを評価する関数である。
本実施形態では、「R(pn)=(リンクの終点ノードに至る移動手段の遅延等による、リンクの終点ノードにおける乗り換え失敗程度)+(リンクの終点ノードからの次のノードへの移動手段への乗り換え失敗程度)*(リンクの終点ノードからの、他の最適経路スコア)」と定義されている。ここで、迂回するときに用いる経路の評価値については、評価関数S(pn)により再帰的に評価する。R(pn)は、リンクに設定されたパラメータ(乗り換えリスク)を用いて演算を行い、迂回によるリスクが大きいほど高い値を返す。なお、R(pn)は、関数TMが返した確率を100%から引いた値としてもよい。
なお、出発地Sから最初のノードまでのリンク、目的地Gの一つ前のノードから目的地Gまでのリンク及び同じ車両に継続して乗車する場合のリンクについては、R(pn)は値として0を返す。
【0054】
経路探索装置10は、ステップSA4においては、各経路グラフのリンクを、まず、評価関数S(pn)からR(pn)の項を除いた関数で評価する。ここで、上述した経路A〜Cについて、R(pn)の項を除いて評価関数S(pn)で経路A〜Cの各リンクを評価した場合、各リンクの評価結果の値は、例えば、図9に示したものとなる。
【0055】
次に経路探索装置10(評価部103)は、各経路グラフのリンクについて、R(pn)の項を演算する。経路A〜Cの各リンクのR(pn)を演算した場合、各リンクのR(pn)の演算結果の値は、例えば、図10に示したものとなる。
R(pn)の計算式は、上述したように、「R(pn)=(リンクの終点ノードに至る移動手段の遅延等による、リンクの終点ノードにおける乗り換え失敗程度)+(リンクの終点ノードからの次のノードへの移動手段への乗り換え失敗程度)*(リンクの終点ノードからの、他の最適経路スコア)」と定義されている。この「乗り換え失敗程度」については、移動に利用する車両について、前述の指定された時刻において指定されたノードでの乗車可能な確率を返す関数TM(id,ct,cp,tt,tid)の返り値を使い、1.0(100%)から除算した値を利用する方法がある。R(pn)の算出においては、他の最適経路を決定するために再帰計算相当が必要になり、計算をノード毎を起点として行うため、他の経路の計算処理結果をキャッシュとして利用して計算を高速化する構成とすることも可能である。
【0056】
ここで、経路AについてのR(pn)の計算について説明する。出発地Sから最初のノードまでについては、上述したように、R(pn)は、「0」を返すため、出発地Sとノードn1を結ぶリンクL1に係るR(pn)は、0となる。また、ノードn1からノードn2に至るリンクL2に係るR(pn)については、ノードn2からの移動先であるノードn3への移動が不可となって当該リンクL2の終点であるノードn2から迂回するときに用いる経路を元に計算する。この迂回経路については、ノードn2を出発地とし、ノードn2からノードn3のリンクが「ない」場合のグラフを入力として、ステップSA3以降の処理を行い最良の経路を決定することで選ぶ。つまり、迂回する場合に最良の経路を再帰計算により選ぶ。ただし、本動作例の場合は、他の候補がなく、ノードn2→ノードn6→目的地Gが迂回経路となるため、R(pn)における「リンクでの移動が不可となって当該リンクの終点から迂回するときに用いる経路の評価値」の項は、リンクL5の評価値である4.5とリンクL9の評価値である2を加算した値となり、ノードn1からノードn2までについては、R(pn)は、(0.1+0.01)*(4.5+2)=0.715となる。
【0057】
ここで、0.1は、「リンクの終点ノードであるノードn2に至る移動手段の、乗り換えに失敗する程度」である。これは、車両M1_m1に乗車するため、関数TM(id,ct,cp,tt,tid)に対して、ノードn1を起点として関数DM(ta,nb,nc,md)で得た値を出発時刻に足して得たノードn2からの乗車予想時刻をttとし、idは車両M1_m1、ctは現在時刻、cpは車両M1_m1の現在位置、tidは、ノードn2として得た結果を、1.0から減算した値である。
また、0.01は、「リンクの終点であるノードn2からの次のノードn3への移動手段の乗り換えに失敗する程度」であり、車両M3_m3に乗車するため、関数TM(id,ct,cp,tt,tid)について、先ほど算出したノードn2の到着予想時刻に対して、関数DM(ta,nb,nc,md)を利用して得たノードn2からノードn3の移動時間を加算して得た乗車予想時刻をttとし、あとは前述と同様にパラメータを設定して得た値を1.0から減算した値である。
他のリンクについても同様に計算すると、経路Aの各リンクのR(pn)の演算結果の値は、図10に示したものとなる。
【0058】
次に経路探索装置10は、経路毎に各リンクのS(pn)の値を合計する(ステップSA5)。評価関数S(pn)による経路Aの評価結果は、前述で計算した各リンクにおけるT(pn)+C(pn)+E(pn)の合計値に対して、R(pn)の値を減算することで計算することができるため、(4−0)+(8−0.715)+(6−1.785)+(5−22.95)+(4−0)=1.55となる。
【0059】
また、評価関数S(pn)による経路Bの評価結果は、(4−0)+(8−0.715)+(6−0)+(6−7.65)+(2.5−0)=18.135となり、評価関数S(pn)による経路Cの評価結果は、(4−0)+(8−1.595)+(4.5−38)+(2−0)=−21.095となる。
この評価結果のうち、評価結果の値が最も大きいのは経路Bであるため、経路探索装置10(選択部104)は、乗り換えに失敗した場合に有用な経路として、経路Bを選択する(ステップSA6)。
【0060】
経路探索装置10(出力部105)は、乗り換えに失敗した場合に有用な経路を選択すると、選択した経路を示すウェブページを生成し、生成したウェブページのデータを端末装置20へ送信する(ステップSA7)。
端末装置20は、経路探索装置10が送信したウェブページのデータを受信すると、受信したデータが示すウェブページを表示する。
【0061】
以上説明したように、本実施形態によれば、乗り換えに失敗して経路グラフのリンクが切れた場合にも有用な経路を、出発地から目的地への移動前に探索することができる。また、本実施形態では、乗り換えに失敗して経路のリンクが切れた場合に有用な経路をユーザーに提示するため、ユーザーにとっては、経路を選ぶときに経路の選択の幅が広がることとなり、乗り換えの失敗を避けることを重視する場合に適した経路を選択することが可能となる。
【0062】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、他の様々な形態で実施可能である。例えば、上述の実施形態を以下のように変形して本発明を実施してもよい。なお、上述した各実施形態及び以下の変形例は、一つ又は複数を適宜組み合わせて実施してもよい。
【0063】
上述した実施形態においては、T(pn)、C(pn)、E(pn)、R(pn)のそれぞれについて、経路を選択するときの重要度に応じて重み付けの係数を乗じるようにしてもよい。また、早さ、料金、負担、経路変更するときのコストの中で優先度の高いものをユーザーに選択させ、ユーザーが選択したものに応じて、重み付けの係数を変更するようにしてもよい。
【0064】
上述した実施形態においては、情報処理装置50は、車両40のOBD2のコネクターから車両40の各種情報を取得し、取得した情報を経路探索装置10へ送信し、経路探索装置10は、送信された情報を記憶するようにしてもよい。また、タクシーについて、あるノード及びある時刻における乗車可能な確率を予測する数理モデルを実現する際に、OBD2から得られた情報を含めて、数理モデルを実現するようにしてもよい。
【0065】
上述した動作例の説明では、交通ネットワークは、タクシーやバス、電車を含むものとなっているが、交通ネットワークには、空路や航路などを含めるようにしてもよい。
上述した実施形態においては、端末装置20のユーザーは、出発地から移動を開始するときの出発日時を、端末装置20に表示されたウェブページに入力する構成となっているが、構成に限定されるものではない。例えば、経路探索装置10は、出発地情報及び目的地情報を受信した日時を、ユーザーは、出発地から移動を開始するときの出発日時としてもよい。
【0066】
上述した実施形態においては、経路グラフを作成する際には、幅優先探索や深さ優先探索など既知の方法で経路の候補を複数探索し、探索で得られた経路について、評価関数S(pn)で評価を行うようにしてもよい。
【0067】
上述した実施形態においては、乗り換えに失敗した場合に有用な経路を一つ選択しているが、複数の経路を選択し、選択した経路をウェブページにより端末装置20のユーザーへ提示するようにしてもよい。
【0068】
上述した実施形態においては、乗り換えに失敗した場合に有用な経路を選択し、選択した経路をユーザーに提示しているが、この構成に限定されるものではない。本発明においては、乗り換えに失敗しない場合の経路を選択し、選択した経路をユーザーに提示するようにしてもよい。
なお、乗り換えに失敗しない場合に有用な経路を選択する評価値の計算を行う際には、周知の幅優先探索、深さ優先探索、Random walk with restart(RWR)などに基づく方法でホップ数、コスト、早さ、楽さの一つもしくは複数組み合わせた指標により、上位K等に一次フィルタリングして経路を絞ることで計算コストを下げる構成としてもよい。
また、R(pn)を除いた評価関数S(pn)で評価し、評価値が上位K件等、予め定められた数に一次フィルタリングして経路を絞ってもよい。
【0069】
上述した実施形態においては、経路グラフを作成する際に、ノードで乗車可能な確率が閾値以上の車両を抽出するが、タクシーの利用に適したノードである否かの設定など、予め行われた設定に応じて、抽出する車両にタクシーを含めるか否かを決定するようにしてもよい。
また、上述した実施形態においては、経路グラフを作成する際に、ノードへの到着時刻において、ノードで乗車可能な確率が閾値以上の車両を抽出するが、ノードへの到着時刻については、乗り換え時間等を考慮して前後に一定の幅を持たせるようにしてもよい。
【0070】
各装置のプログラムは、磁気記録媒体(磁気テープ、磁気ディスク(HDD(Hard Disk Drive)、FD(Flexible Disk))など)、光記録媒体(光ディスクなど)、光磁気記録媒体、半導体メモリなどのコンピュータ読取り可能な記録媒体に記憶した状態で提供し、インストールしてもよい。また、通信回線を介してプログラムをダウンロードしてインストールしてもよい。
【符号の説明】
【0071】
10…経路探索装置、11…制御部、12…記憶部、12A…ネットワークデータベース、13…表示部、14…操作部、18…通信部、20…端末装置、21…制御部、22…記憶部、23…タッチパネル、24…操作部、27…測位部、28…通信部、29…通話部、40…車両、50…情報処理装置、51…制御部、52…記憶部、53…タッチパネル、54…操作部、57…測位部、58…通信部、101…取得部、102…経路探索部、103…評価部、104…選択部、105…出力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10