特許第6363553号(P6363553)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6363553
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】流体状態検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/18 20060101AFI20180712BHJP
   G01N 27/04 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
   G01N27/18
   G01N27/04 Q
【請求項の数】3
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-79442(P2015-79442)
(22)【出願日】2015年4月8日
(65)【公開番号】特開2016-200456(P2016-200456A)
(43)【公開日】2016年12月1日
【審査請求日】2017年8月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】山下 雅広
(72)【発明者】
【氏名】北野谷 昇治
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 昌哉
【審査官】 小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−41055(JP,A)
【文献】 特開2002−162272(JP,A)
【文献】 特開2004−144617(JP,A)
【文献】 特開2005−308665(JP,A)
【文献】 特開平10−19626(JP,A)
【文献】 特開2012−198093(JP,A)
【文献】 特開2008−20416(JP,A)
【文献】 米国特許第5804703(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/56−1/90
G01N 25/00−27/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検出雰囲気内に配置されて、検出対象の流体状態に応じて抵抗値が変化する発熱抵抗体と、
前記発熱抵抗体と第1抵抗部とが直列に接続された第1辺と、第2抵抗部と第3抵抗部とが直列に接続された第2辺と、が並列に接続されたホイートストンブリッジ回路と、
電源装置から前記ホイートストンブリッジ回路への通電状態を制御するブリッジ制御部と、
前記発熱抵抗体の抵抗値を用いて前記被検出雰囲気内における前記流体状態を演算する演算部と、
を備える流体状態検出装置であって、
前記ブリッジ制御部は、
出力端子および2つの入力端子を有する演算増幅器と、
前記演算増幅器の出力に従って、前記演算増幅器の2つの入力端子間の電位差がゼロとなるように前記ホイートストンブリッジ回路への通電状態を制御する通電制御部と、を備え、
前記ホイートストンブリッジ回路は、
前記第1辺と前記第2辺との接続点のうちの一方が、前記ブリッジ制御部による印加電圧の低電位側に接続される基準点となり、
前記第1辺と前記第2辺との接続点のうちの他方が、前記ブリッジ制御部による前記印加電圧の高電位側に接続される高電位点となり、
前記第1抵抗部と前記発熱抵抗体との接続点が前記演算増幅器の一方の入力端子に接続される第1電位点となり、前記第2抵抗部と前記第3抵抗部との接続点が前記演算増幅器の他方の入力点に接続される第2電位点となるよう構成され、
前記高電位点の電位と予め定められた電圧上限判定値との比較結果、および、前記第1電位点の電位から前記第2電位点の電位を差し引いた差分値と予め定められた故障判定値との比較結果に基づいて、前記高電位点の電位が前記電圧上限判定値以上であり、かつ、前記差分値が前記故障判定値以上である場合に、前記ホイートストンブリッジ回路が前記電源装置への短絡故障状態であると判定する故障判定部を備える、
流体状態検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の流体状態検出装置であって、
前記演算部は、前記流体状態として、水素ガス濃度を演算する、
流体状態検出装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の流体状態検出装置であって、
前記電源装置を一体に備える、
流体状態検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検出雰囲気内における流体状態を検出する流体状態検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被検出雰囲気内における流体状態(ガス濃度、ガス流量、液体流量、温度など)を検出する流体状態検出装置がある。
被検出雰囲気内における流体状態を検出する流体状態検出装置としては、検出対象の流体状態に応じて抵抗値が変化する発熱抵抗体を備えたものが知られている。この流体状態検出装置は、例えば、発熱抵抗体から検出対象流体に奪われる熱量を測定することにより、検出対象流体の熱伝導率の変化を算出して流体状態(例えば、水素濃度など)を求めることができる。
【0003】
そして、発熱抵抗体から検出対象流体に奪われる熱量を測定するにあたり、発熱抵抗体を4個の抵抗部の1つとして備えるホイートストンブリッジ回路(以下、ブリッジ回路ともいう)を用いる構成の流体状態検出装置が知られている。
【0004】
このようなブリッジ回路を用いる構成の流体状態検出装置においては、演算増幅器の反転入力端子とブリッジ回路との間のオープン故障や、演算増幅器の出力端子のオープン故障が発生することがある。
【0005】
これに対して、上記オープン故障発生時における演算増幅器の出力値が、正常時における演算増幅器の出力範囲を逸脱するように、ブリッジ回路を構成する抵抗部の抵抗値を適宜設定することで、オープン故障を検出するように構成された流体状態検出装置が提案されている(特許文献1)。
【0006】
なお、近年、環境保護や自然保護などの社会的要求から、高い効率を有し、かつ、環境への負荷が少ないエネルギー源として、燃料電池の研究が活発に行われている。燃料電池の中で、固体高分子型燃料電池(PEFC)が、作動温度が低く出力密度が高いなどの利点により、家庭用のエネルギー源、または、車載用のエネルギー源として着目されている。固体高分子型燃料電池は、他の燃料と比較して漏れが発生しやすい水素を燃料として用いている。そのため、固体高分子型燃料電池を実用化するためには、水素漏れを検出する流体状態検出装置が必要になると考えられている。
【0007】
また、固体高分子型燃料電池と同様に、水素を燃料とした環境への負荷が少ないエネルギー源として、水素内燃機関の研究も活発に行われている。水素内燃機関についても、実用化するためには、水素漏れを検出する流体状態検出装置が必要になると考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2012−198093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上述の流体状態検出装置においては、ブリッジ回路における電源装置への短絡故障が発生した場合(例えば、電源装置からブリッジ回路への通電電流を制御する通電制御部で短絡故障が生じた場合)、その短絡故障の検出が困難である。
【0010】
つまり、ブリッジ回路における電源装置への短絡故障発生時における演算増幅器の出力値は、正常時における演算増幅器の出力範囲に含まれるため、上述のようなブリッジ回路を構成する抵抗部の抵抗値を適宜設定する手法では、故障を検出することが難しい。
【0011】
例えば、検出対象の流体状態によって発熱抵抗体の抵抗値が低い値となる場合には、演算増幅器によるフィードバック制御により通電制御部からブリッジ回路への通電電流が最大値(または、印加電圧が最大値)に制御される。これは、流体状態の検出結果による制御状態であり、流体状態検出装置としては、正常な制御状態である。
【0012】
他方、通電制御部(例えば、トランジスタ)が短絡故障状態になり、ブリッジ回路が電源装置への短絡故障状態になると、電源装置からブリッジ回路への通電電流を制御できず、ブリッジ回路への通電電流が最大値(または、印加電圧が最大値)となる。これは、通電制御部の短絡故障に起因しており、流体状態検出装置としては異常状態(故障状態)になる。
【0013】
このように、発熱抵抗体の抵抗値が低い値となる正常状態と、通電制御部の短絡故障状態(換言すれば、ブリッジ回路における電源装置への短絡故障状態)とは、いずれもブリッジ回路への通電電流が最大値(または、印加電圧が最大値)となり、演算増幅器の出力値が同等の値となるため、演算増幅器の出力値に基づいて両者を識別することは困難である。
【0014】
本発明は、ホイートストンブリッジ回路における電源装置への短絡故障が生じた場合に、その短絡故障を検出できる流体状態検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の1つの局面における流体状態検出装置は、発熱抵抗体と、ホイートストンブリッジ回路と、ブリッジ制御部と、演算部と、を備える。ブリッジ制御部は、演算増幅器と、通電制御部と、を備えている。さらに、流体状態検出装置は、故障判定部を備えている。
【0016】
発熱抵抗体は、被検出雰囲気内に配置されて、検出対象の流体状態に応じて抵抗値が変化する抵抗体である。ホイートストンブリッジ回路は、発熱抵抗体と第1抵抗部とが直列に接続された第1辺と、第2抵抗部と第3抵抗部とが直列に接続された第2辺と、が並列に接続されて構成されている。ブリッジ制御部は、電源装置からホイートストンブリッジ回路への通電状態を制御する。演算部は、発熱抵抗体の抵抗値を用いて被検出雰囲気内における流体状態を演算する。
【0017】
演算増幅器は、出力端子および2つの入力端子を有する。通電制御部は、演算増幅器の出力に従って、演算増幅器の2つの入力端子間の電位差がゼロとなるようにホイートストンブリッジ回路への通電状態を制御する。
【0018】
ホイートストンブリッジ回路は、第1辺と第2辺との接続点のうちの一方が、ブリッジ制御部による印加電圧の低電位側に接続される基準点となり、第1辺と第2辺との接続点のうちの他方が、ブリッジ制御部による印加電圧の高電位側に接続される高電位点となるよう構成されている。また、ホイートストンブリッジ回路は、第1抵抗部と発熱抵抗体との接続点が演算増幅器の一方の入力端子に接続される第1電位点となり、第2抵抗部と第3抵抗部との接続点が演算増幅器の他方の入力点に接続される第2電位点となるよう構成されている。
【0019】
演算部は、少なくとも第1電位点の電位に基づき検出される発熱抵抗体の両端電圧を用いて、被検出雰囲気内における流体状態を演算してもよい。なお、発熱抵抗体の両端電圧は、発熱抵抗体の抵抗値に応じて変化するため、発熱抵抗体の抵抗値に相当する状態量として利用できる。
【0020】
故障判定部は、高電位点の電位と予め定められた電圧上限判定値との比較結果、および、第1電位点の電位から第2電位点の電位を差し引いた差分値と予め定められた故障判定値との比較結果に基づいて、ホイートストンブリッジ回路における電源装置への短絡故障(例えば、通電制御部の故障など)を判定するように構成されている。詳細には、故障判定部は、高電位点の電位が電圧上限判定値以上であり、かつ、差分値が故障判定値以上である場合に、ホイートストンブリッジ回路が電源装置への短絡故障状態であると判定する。
【0021】
なお、電圧上限判定値は、ブリッジ制御部による制御状態が、電源装置からホイートストンブリッジ回路へ最大電流値の電流を通電する状態(あるいは、最大電圧値の電圧を印加する状態)である場合に、高電位点に生じる電位(最大通電時電位)に基づいて、値が決定される。例えば、電圧上限判定値には、最大通電時電位と同じ値、あるいは最大通電時電位よりもわずかに小さい値などが予め設定されている。
【0022】
また、故障判定値は、ホイートストンブリッジ回路が電源装置への短絡故障状態であるときに差分値が示す値と、検出対象の流体状態によって発熱抵抗体の抵抗値が低い値となるときに差分値が示す値と、で挟まれる数値範囲内のうち、任意の値が予め設定されている。
【0023】
流体状態検出装置において、ホイートストンブリッジ回路が電源装置への短絡故障状態である場合には、ホイートストンブリッジ回路に対して電源装置の出力電圧が直接印加される状態となる。そして、発熱抵抗体に対するこのような電圧印加状態が継続すると、発熱抵抗体の温度が上昇するとともに発熱抵抗体の抵抗値が上昇して、発熱抵抗体の両端電圧が上昇する。なお、ホイートストンブリッジ回路の基準抵抗として備えられる第1抵抗部、第2抵抗部および第3抵抗部は、発熱抵抗体に比べて、温度変化に対する抵抗値変化量が小さい。このため、発熱抵抗体の両端電圧が上昇すると、第1電位点が第2電位点よりも高電位となる傾向が強くなる。
【0024】
他方、流体状態検出装置において、検出対象の流体状態によって発熱抵抗体の抵抗値が低い値となる状態が継続すると、ブリッジ制御部は、発熱抵抗体の抵抗値を上昇させるために、電源装置からホイートストンブリッジ回路への通電状態を、最大電流値の電流を通電する状態(あるいは、最大電圧値の電圧を印加する状態)に制御する。このとき、発熱抵抗体の抵抗値は、検出対象の流体状態によって低下するため、発熱抵抗体の両端電圧は低下する。このように発熱抵抗体の両端電圧が低下することにより、第1電位点が第2電位点よりも低電位となる傾向が強くなる。
【0025】
このことから、第1電位点の電位から第2電位点の電位を差し引いた差分値は、「ホイートストンブリッジ回路における電源装置への短絡故障状態」と「検出対象の流体状態によって発熱抵抗体の抵抗値が低い値となる状態」とで、それぞれ異なる値を示す。このため、故障判定値を上述のように設定した上で、差分値と故障判定値との比較結果を用いることで、「ホイートストンブリッジ回路における電源装置への短絡故障状態」と「検出対象の流体状態によって発熱抵抗体の抵抗値が低い値となる状態」とを識別することが可能となる。
【0026】
なお、第1電位点の電位から第2電位点の電位を差し引いた差分値は、通電制御部が正常状態の場合にも値が変動することから、差分値に加えて、高電位点の電位も用いて判定することで、通電制御部の短絡故障状態であるか否かを判定することができる。
【0027】
これらのことから、「高電位点の電位が電圧上限判定値以上であり、かつ、差分値が故障判定値以上である場合」には、ホイートストンブリッジ回路が電源装置への短絡故障状態であると判定できる。また、「高電位点の電位が電圧上限判定値以上であり、かつ、差分値が故障判定値以上ではない場合」には、検出対象の流体状態によって発熱抵抗体の抵抗値が低い値となる状態であると判定できる。
【0028】
このため、流体状態検出装置は、上述の故障判定部を備えることで、ホイートストンブリッジ回における電源装置への短絡故障状態であるか、検出対象の流体状態によって発熱抵抗体の抵抗値が低下した状態であるかを、識別することができる。
【0029】
よって、この流体状態検出装置によれば、ホイートストンブリッジ回路における電源装置への短絡故障が生じた場合に、その短絡故障を検出できる。
なお、流体状態検出装置は、故障判定部において、高電位点の電位が電圧上限判定値よりも小さいと判定されるか、または、差分値が故障判定値よりも小さいと判定される場合には、演算部による流体状態の演算を実行することで、流体状態を検出できる。
【0030】
また、故障判定部において、高電位点の電位が電圧上限判定値以下と判定され、かつ、差分値が故障判定値よりも小さいと判定される場合には、検出対象の流体状態によって発熱抵抗体の抵抗値が低下した状態であると判定するとともに、さらに、演算部にて、被検出雰囲気内における流体状態を演算して流体状態を検出してもよい。
【0031】
次に、上述の流体状態検出装置においては、演算部は、流体状態として水素ガス濃度を演算してもよい。
検出対象である水素ガス濃度が高濃度になる状態は、発熱抵抗体の抵抗値を低下させる状態であり、この状態が継続すると、ブリッジ制御部は、発熱抵抗体の抵抗値を上昇させるために、電源装置からホイートストンブリッジ回路への通電状態を、最大電流値の電流を通電する状態(あるいは、最大電圧値の電圧を印加する状態)に制御する。
【0032】
このため、流体状態検出装置は、上述の故障判定部を備えることで、ホイートストンブリッジ回路における電源装置への短絡故障状態であるか、検出対象である水素ガス濃度が高濃度状態であるかを、識別することができる。
【0033】
よって、この流体状態検出装置によれば、水素ガス濃度を検出する用途において、ホイートストンブリッジ回路における電源装置への短絡故障が生じた場合に、その短絡故障を検出できる。
【0034】
なお、故障判定部において、高電位点の電位が電圧上限判定値以下と判定され、かつ、差分値が故障判定値よりも小さいと判定される場合には、水素濃度が高濃度状態であると判定するとともに、さらに、演算部にて、被検出雰囲気内における水素濃度を演算して水素濃度を検出してもよい。
【0035】
次に、上述の流体状態検出装置においては、電源装置を一体に備えてもよい。
流体状態検出装置における電源装置との接続形態としては、例えば、外部に設けられた電源装置に接続される形態や、一体に備えられる電源装置に接続される形態などが挙げられる。このうち、電源装置を一体に備える構成の流体状態検出装置は、ホイートストンブリッジ回路と電源装置とがブリッジ制御部(通電制御部)を介して常に接続されているため、接続状態を点検することが難しく、短絡異常の発見が困難となる可能性がある。
【0036】
このような構成の流体状態検出装置に対して、上述の故障判定部を用いてホイートストンブリッジ回路における電源装置への短絡故障を判定することで、ホイートストンブリッジ回路における電源装置への短絡故障が生じた場合に、その短絡故障を検出することが可能となる。
【発明の効果】
【0037】
本発明の流体状態検出装置によれば、ホイートストンブリッジ回路への通電電流を制御する通電制御部に短絡故障が生じた場合に、その短絡故障を検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】可燃性ガス検出装置の全体構成を説明する図である。
図2】ガス検出素子の構成を説明する図である。
図3】発熱抵抗体の端子間電圧の時間変化、および、発熱抵抗体の温度の時間変化を説明するグラフである。
図4】ガス濃度演算処理の処理内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
尚、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採り得ることはいうまでもない。
【0040】
[1.第1実施形態]
[1−1.全体構成]
第1実施形態として、被検出雰囲気に含まれる可燃性ガスである水素ガスの濃度を検出する可燃性ガス検出装置1について説明する。
【0041】
可燃性ガス検出装置1は、熱伝導式のガス検出器であり、例えば、燃料電池自動車の客室内に設置されて、水素の漏れを検出する目的等に用いられる。可燃性ガス検出装置1は、検出したガス濃度を外部機器(例えば、エンジン制御装置など)に対して送信する。
【0042】
図1は、可燃性ガス検出装置1の全体構成を説明する図である。
可燃性ガス検出装置1は、水素ガス濃度を検出するガス検出素子10と、ガス検出素子10を制御する制御部20と、ガス検出素子10の出力信号に基づいて水素ガス濃度を演算する処理を少なくとも実行する演算部30と、制御部20および演算部30に電力を供給する直流電源40と、を主に備えている。
【0043】
なお、直流電源40は、可燃性ガス検出装置1の各部に対して、駆動電圧Vcc(5[V])を供給する。
ガス検出素子10は、図2(a)の平面視図、および、図2(b)のA−A線矢視断面図に示すように、平板状に形成された基部11と、基部11の一方の面(以下、「表面」と表記する。)に配置された複数の電極12と、他方の面(以下、「裏面」と表記する。)に形成された凹部13と、を主に備えている。
【0044】
基部11は、ガス検出素子10の本体を構成するものであり、シリコンを主体とする矩形状の板部材である。基部11は、縦横ともに数mm程度の大きさ(本実施形態では、3mm×3mm程度の大きさ)に形成された矩形状の板部材である。基部11に対して複数の電極や凹部13などを形成する技術としては、シリコン基板に対して行われるマイクロマシニング技術(マイクロマシニング加工)などを例示することができる。
【0045】
基部11は、シリコンを主体に形成されたシリコン基板111と、シリコン基板111の表面に形成された絶縁層112と、を備えて構成されている。シリコン基板111の中央には、平面視においてシリコン基板111をほぼ正方形に除去した凹部13が形成されている。シリコン基板111の裏面においては、凹部13を介して絶縁層112が露出している。言い換えると、基部11は、シリコン基板111を枠体とし、絶縁層112を薄膜とするダイヤフラム構造で形成されている。
【0046】
絶縁層112のうち凹部13に対応する領域には、線状の発熱抵抗体15が渦巻き状に埋設されている。また、絶縁層112のうち周縁部のうち図2(a)の上側領域には、被検出雰囲気の温度を測定する測温抵抗体16が埋設されている。
【0047】
基部11は、上述のような凹部13を備えて、発熱抵抗体15が設けられる絶縁層112の下方を空間部とすることにより、発熱抵抗体15が周囲(シリコン基板111など)と熱的に絶縁され、昇温、降温を短時間で行うことができ、発熱抵抗体15の消費電力を低減することができる。
【0048】
なお、絶縁層112は、単一の材料で形成されてもよいし、異なる材料を用いて複数層を成すように形成されていてもよい。また、絶縁層112を構成する絶縁性材料としては、例えば、酸化ケイ素(SiO)や窒化珪素(Si)を挙げることができる。
【0049】
発熱抵抗体15は、自身の温度変化により抵抗値が変化する材料であって、温度抵抗係数が大きな導電性材料で形成されている。測温抵抗体16は、電気抵抗が温度に比例して変化する導電性材料で形成されており、本実施形態では、温度の上昇に伴って抵抗値が増大する導電性材料で形成されている。
【0050】
発熱抵抗体15および測温抵抗体16は、同じ材料で形成されていてもよく、本実施形態では発熱抵抗体15および測温抵抗体16が白金(Pt)で形成されている。
測温抵抗体16は、一定電流の通電時において温度に応じた抵抗値が変化した場合には、自身の両端電圧(両端電位差)が変化する。そして、測温抵抗体16の両端電圧を増幅した電圧は、後述する温度検出信号VTとして出力される。この温度検出信号VTは、ガス検出素子10が晒される被検出雰囲気の温度が予め設定された基準温度の時に、所定の電位差である基準値となる。
【0051】
電極12は、基部11の表面のうち矩形の4つの頂点のそれぞれの近傍に形成された4個の電極であり、例えばアルミニウム(Al)または金(Au)を用いて形成されている。電極12のうち、図2(a)における下側の2つの頂点に配置された2つが第1電極121、第1接地電極122であり、図2(a)における上側の2つの頂点に配置された2つが第2電極123、第2接地電極124である。
【0052】
なお、第1電極121は、後述する通電制御回路21の接続点P+に接続され、第2電極123は、後述する温度調整回路25の接続点P−に接続されている。第1接地電極122および第2接地電極124は、いずれも制御部20と共通のグランドラインに接続されている。
【0053】
基部11の内部(詳細には絶縁層112の内部)には、配線17および配線膜18が設けられている。配線17および配線膜18は、発熱抵抗体15と、第1電極121および第1接地電極122と、を電気的に接続するものである。基部11の表面に形成される第1電極121および第1接地電極122と、絶縁層112の内部に形成される配線膜18とは、導電性を有するコンタクトホールによって電気的に接続されている。言い換えると、発熱抵抗体15は、一端において第1電極121と導通可能に接続され、他端において第1接地電極122と導通可能に接続されている。
【0054】
なお、配線17および配線膜18を構成する材料としては、発熱抵抗体15を構成する材料と同じ材料を用いることができる。
また、絶縁層112の内部には、測温抵抗体16と、第2電極123および第2接地電極124と、を電気的に接続する配線膜(図示せず)も設けられている。言い換えると、測温抵抗体16は、一端において第2電極123と導通可能に接続され、他端において第2接地電極124と導通可能に接続されている。
【0055】
なお、測温抵抗体16と第2電極123とを電気的に接続する配線膜や、測温抵抗体16と第2接地電極124とを電気的に接続する配線膜を構成する材料としては、測温抵抗体16を構成する材料と同じ材料を用いることができる。
【0056】
[1−2.制御部]
図1に戻り、制御部20には、通電制御回路21と、温度調整回路25と、が設けられている。
【0057】
通電制御回路21は、発熱抵抗体15への通電制御を行う。また、通電制御回路21は、演算部30に対して、各種信号(検出信号V1、TOP電圧信号V2、中間電位信号V3)を出力する。検出信号V1は、発熱抵抗体15の両端電圧(端子間電圧)に対応する信号であり、TOP電圧信号V2は、第1ブリッジ固定抵抗211と第2ブリッジ固定抵抗212との接続端部PVの電位に対応する信号であり、中間電位信号V3は、第2ブリッジ固定抵抗212と可変抵抗部213との接続点P−の電位に対応する信号である。なお、検出信号V1は、第1ブリッジ固定抵抗211と発熱抵抗体15との接続点P+の電位に対応する信号にも相当する。
【0058】
温度調整回路25は、測温抵抗体16への通電を行う。また、温度調整回路25は、演算部30に対して、被検出雰囲気の温度に係る温度検出信号VTを出力する。
また、後述するように、第1ブリッジ固定抵抗211と発熱抵抗体15との接続点P+と、第2ブリッジ固定抵抗212と可変抵抗部213との接続点P−とは、増幅回路220および電流調整回路230によるフィードバック制御によって、それぞれの電位が同電位となるように制御されている。
【0059】
通電制御回路21は、発熱抵抗体15の温度を一定温度に保つ回路である。通電制御回路21には、発熱抵抗体15を含むホイートストンブリッジ回路であるブリッジ回路210と、ブリッジ回路210で検出される電位差を増幅する増幅回路220と、増幅回路220の出力に従ってブリッジ回路210に流れる電流を増減調整する電流調整回路230と、が設けられている。
【0060】
ブリッジ回路210は、発熱抵抗体15と、第1ブリッジ固定抵抗211と、第2ブリッジ固定抵抗212と、抵抗値を切替可能な可変抵抗部213と、を備えるホイートストンブリッジ回路である。ブリッジ回路210は、発熱抵抗体15と第1ブリッジ固定抵抗211とが直列に接続された第1辺と、第2ブリッジ固定抵抗212と可変抵抗部213とが直列に接続された第2辺と、が並列に接続されて構成されている。
【0061】
第1ブリッジ固定抵抗211は、発熱抵抗体15と直列接続されている。発熱抵抗体15の端部のうち、第1ブリッジ固定抵抗211との接続端部とは反対側の端部PGは、グランドに接地されている。第1ブリッジ固定抵抗211の端部のうち、第2ブリッジ固定抵抗212との接続端部PVは、電流調整回路230(詳細には、定温度制御回路231)に接続されている。なお、発熱抵抗体15の一端が基準点(グランド)に接続される場合には、発熱抵抗体15の一端の電位は基準点の電位となることから、発熱抵抗体15の他端(本実施形態では、接続点P+)の電位は、発熱抵抗体15の両端電圧に相当する。
【0062】
また、第2ブリッジ固定抵抗212は、可変抵抗部213と直列接続されている。可変抵抗部213の端部のうち、第2ブリッジ固定抵抗212との接続端部とは反対側の端部PGは、グランドに接地されている。第2ブリッジ固定抵抗212の端部のうち、第1ブリッジ固定抵抗211との接続端部PVは、電流調整回路230(詳細には、定温度制御回路231)に接続されている。
【0063】
第1ブリッジ固定抵抗211と発熱抵抗体15との接続点P+は、第1固定抵抗222を介して演算増幅器221の非反転入力端子に接続されている。接続点P+の電位は、検出信号V1として演算部30に供給されている。また、第2ブリッジ固定抵抗212と可変抵抗部213との接続点P−は、第2固定抵抗223を介して演算増幅器221の反転入力端子に接続されている。接続点P−の電位は、中間電位信号V3として演算部30に供給されている。
【0064】
可変抵抗部213は、自身の抵抗値を切り替え可能に構成されており、ブリッジ回路210のバランスを変化させるために備えられている。図1に示すように、可変抵抗部213は、第1固定抵抗214、第2固定抵抗215、切替スイッチ216を備えている。
【0065】
第1固定抵抗214および第2固定抵抗215は、互いに抵抗値の異なる抵抗素子で構成されている。切替スイッチ216は、第1固定抵抗214および第2固定抵抗215のうちいずれか一方を、第2ブリッジ固定抵抗212と発熱抵抗体15との間に接続するための切替スイッチである。切替スイッチ216は、演算部30から出力された切替信号CG1に従って切り替え動作を行う。
【0066】
なお、第1固定抵抗214は、発熱抵抗体15が第1設定温度CH(高温側設定温度。例えば、400℃。)となる抵抗値を有するものである。また、第2固定抵抗215は、発熱抵抗体15が第1設定温度CHより低く設定された第2設定温度CL(低温側設定温度。例えば、300℃。)となる抵抗値を有するものである。
【0067】
つまり、ブリッジ回路210は、可変抵抗部213の抵抗値を切り替えることで、発熱抵抗体15の設定温度を、第1設定温度CHまたは第2設定温度CLのいずれかに切り替え可能に構成されている。
【0068】
なお、第1設定温度CHに設定する場合には、切替スイッチ216によって、第1固定抵抗214が第2ブリッジ固定抵抗212と発熱抵抗体15との間に接続される。このときの発熱抵抗体15の両端電圧が、高温時電圧VHである。
【0069】
また、第2設定温度CLに設定する場合には、切替スイッチ216によって、第2固定抵抗215が第2ブリッジ固定抵抗212と発熱抵抗体15との間に接続される。このときの発熱抵抗体15の両端電圧が、低温時電圧VLである。
【0070】
なお、本実施形態では、第1設定温度CH(高温側設定温度)と第2設定温度CL(低温側設定温度)との温度差が100℃以上であるため、高温時電圧VHと低温時電圧VLとの比率における分解能を高めることができる。つまり、第1設定温度CHと第2設定温度CLとの温度差を50℃以上として、被検出雰囲気の湿度Hを精度良く算出することで、高温時電圧VHと低温時電圧VLとの比率における分解能を高めることができる。
【0071】
図1に示すように、増幅回路220は、差動増幅回路であって、演算増幅器221と、第1固定抵抗222と、第2固定抵抗223と、第3固定抵抗224と、コンデンサ225と、を備える。第1固定抵抗222は、演算増幅器221の非反転入力端子と接続点P+との間に接続されている。第2固定抵抗223は、演算増幅器221の反転入力端子と接続点P−との間に接続されている。第3固定抵抗224およびコンデンサ225は、演算増幅器221の反転入力端子と出力端子との間に並列接続されている。
【0072】
増幅回路220は、演算増幅器221における非反転入力端子の入力電圧が反転入力端子の入力電圧より大きい場合には、出力である調整信号Cの値を大きくするように動作し、演算増幅器221における非反転入力端子の入力電圧が反転入力端子の入力電圧より小さい場合には、調整信号Cの値を小さくするように動作する。
【0073】
電流調整回路230(詳細には、定温度制御回路231)は、調整信号Cに応じてブリッジ回路210に流れる電流を増減調整するものであり、調整信号Cが大きくなるほどブリッジ回路210に流れる電流を減少させ、調整信号Cが小さくなるほどブリッジ回路210に流れる電流を増加させる。
【0074】
つまり、演算増幅器221における非反転入力端子の入力電圧が反転入力端子の入力電圧より大きい場合には、ブリッジ回路210に流れる電流が減少し、逆に、演算増幅器221における非反転入力端子の入力電圧が反転入力端子の入力電圧より小さい場合には、ブリッジ回路210に流れる電流が増大する。
【0075】
電流調整回路230は、定温度制御回路231と、スイッチング回路232と、を備える。
スイッチング回路232は、ブリッジ回路210に駆動電圧Vccを供給する電源ラインと、電流調整回路230の通電状態を変化させる制御ラインCL1との間に接続されている。スイッチング回路232は、演算部30からの作動許可信号S1に従ってオン,オフ動作するトランジスタを備えて構成されており、このトランジスタがオンしている所定期間には、起動信号S11を制御ラインCL1に出力するように構成されている。なお、トランジスタがオンする所定期間は、調整信号Cの出力を妨げないように予め設定されている。
【0076】
定温度制御回路231は、駆動電圧Vccを供給する電源ラインとブリッジ回路210(詳細には、接続端部PV)との間に接続されている。定温度制御回路231は、制御ラインCL1を流れる信号に従って通電状態(オン抵抗)が変化するトランジスタを備えて構成されている。具体的には、定温度制御回路231は、スイッチング回路232の出力である起動信号S11に従って、ブリッジ回路210へ電流供給を開始する。そして、定温度制御回路231は、ブリッジ回路210への電流供給が開始されると、増幅回路220の出力である調整信号Cに従って、調整信号Cが大きいほどオン抵抗が大きくなってブリッジ回路210に流れる電流を減少させ、逆に、調整信号Cが小さいほどオン抵抗が小さくなってブリッジ回路210に流れる電流を増大させるように構成されている。
【0077】
上述の構成を有する通電制御回路21においては、直流電源40からブリッジ回路210への通電が開始されると、増幅回路220および電流調整回路230は、接続点P+と接続点P−との間に生じる電位差がゼロになるようにブリッジ回路210に流れる電流を調整するフィードバック制御を行う。これにより、発熱抵抗体15の抵抗値(言い換えると発熱抵抗体15の温度)が、可変抵抗部213によって決まる一定値(言い換えると、第1設定温度CHまたは第2設定温度CL)に制御される。
【0078】
具体的には、被検出雰囲気中の可燃性ガスの濃度が変化することにより、発熱抵抗体15から可燃性ガスに奪われる熱量が、発熱抵抗体15において発生する熱量より大きくなった場合には、発熱抵抗体15の温度が低下して、発熱抵抗体15の抵抗値が減少する。逆に、発熱抵抗体15から可燃性ガスに奪われる熱量が、発熱抵抗体15において発生する熱量より小さくなった場合には、発熱抵抗体15の温度が上昇して、発熱抵抗体15の抵抗値が増大する。
【0079】
上述のように発熱抵抗体15の抵抗値が減少すると、増幅回路220および電流調整回路230は、ブリッジ回路210に流れる電流、言い換えると、発熱抵抗体15において発生する熱量を増大させる。逆に、発熱抵抗体15の抵抗値が増大すると、ブリッジ回路210に流れる電流、言い換えると、発熱抵抗体15において発生する熱量を減少させる。このようにして、増幅回路220および電流調整回路230は、発熱抵抗体15の抵抗値(言い換えると発熱抵抗体15の温度)を一定の値に近づけるフィードバック制御を行う。
【0080】
接続点P+の電位を表す検出信号V1を測定することにより、発熱抵抗体15に流れる電流の大きさが判るとともに、発熱抵抗体15の温度(言い換えると抵抗値)を一定に保つために必要な熱量が判る。これにより、発熱抵抗体15から可燃性ガス(水素ガス)へ奪われる熱量がわかり、奪われる熱量は水素ガスの濃度に依存するため、検出信号V1を測定することにより、水素ガス濃度が判る。
【0081】
[1−3.温度調整回路]
次に、温度調整回路25について説明する。
温度調整回路25には、測温抵抗体16を含むホイーストーンブリッジであるブリッジ回路250と、ブリッジ回路250から得られる電位差を増幅する増幅回路260と、が設けられている。
【0082】
ブリッジ回路250は、測温抵抗体16、第1ブリッジ固定抵抗251、第2ブリッジ固定抵抗252、第3ブリッジ固定抵抗253を備えるホイートストンブリッジ回路である。
【0083】
第1ブリッジ固定抵抗251は、測温抵抗体16と直列接続されている。測温抵抗体16の端部のうち第1ブリッジ固定抵抗251との接続端部とは反対側の端部は、接地されている。第1ブリッジ固定抵抗251の端部のうち第2ブリッジ固定抵抗252との接続端部は、駆動電圧Vccを供給する電源ラインに接続されている。
【0084】
また、第2ブリッジ固定抵抗252は、第3ブリッジ固定抵抗253に直列接続されている。第3ブリッジ固定抵抗253の端部のうち第2ブリッジ固定抵抗252との接続端部とは反対側の端部は、接地されている。第2ブリッジ固定抵抗252の端部のうち第1ブリッジ固定抵抗251との接続端部は、駆動電圧Vccを供給する電源ラインに接続されている。
【0085】
第1ブリッジ固定抵抗251と測温抵抗体16との接続点P−は、第2温調抵抗263を介して演算増幅器261の反転入力端子に接続されている。第2ブリッジ固定抵抗252と第3ブリッジ固定抵抗253との接続点P+は、第1温調固定抵抗262を介して演算増幅器261の非反転入力端子に接続されている。また、演算増幅器261の出力は、温度検出信号VTとして演算部30に供給されている。
【0086】
増幅回路260は、差動増幅回路であって、演算増幅器261と、第1温調固定抵抗262と、第2温調抵抗263と、第3固定抵抗264と、コンデンサ265と、を備える。第1温調固定抵抗262は、演算増幅器261の非反転入力端子と接続点P+との間に接続されている。第2温調抵抗263は、演算増幅器261の反転入力端子と接続点P−との間に接続されている。第3固定抵抗264およびコンデンサ265は、演算増幅器261の反転入力端子と出力端子との間に並列接続されている。
【0087】
[1−4.演算部]
演算部30は、温度調整回路25から出力される温度検出信号VTと、通電制御回路21から出力される検出信号V1に基づき水素ガス濃度を演算するものである。演算部30は、直流電源40から給電が開始されて起動するものであり、起動後、演算部30は各部を初期化してガス濃度演算処理を開始するものである。
【0088】
演算部30には、ガス濃度演算処理などの各種の演算処理を実行する中央演算装置(CPU)や、CPUで各種の演算処理を実行させる各種のプログラムやデータなどを格納するROMやRAMなどの記憶装置や、各種信号を入出力するためのIOポートや、計時用タイマー等が設けられている(図示省略)。
【0089】
上述の記憶装置には、温度換算データと、湿度換算データと、濃度換算データと、が少なくとも記憶されている。
温度換算データとしては、被検出雰囲気の環境温度Tと温度検出信号VTでもある温度電圧VTとの相関関係を表す温度換算データが含まれる。
【0090】
湿度換算データとしては、被検出雰囲気内の湿度Hと高温時電圧VH、低温時電圧VLおよび温度電圧との相関関係を表す湿度換算データが含まれる。
濃度換算データとしては、高温時電圧VHまたは低温時電圧VLと可燃性ガスのガス濃度Xとの相関関係を表す濃度換算データが含まれる。
【0091】
なお、本実施形態は、高温時電圧VHと水素ガスのガス濃度Xとの相関関係を表す濃度換算データを用いる構成である。なお、各換算データは、換算用マップデータや換算用計算式等で構成されるものであり、実験等により得られたデータに基づいて予め作成されたものである。
【0092】
上述の湿度換算データには、環境温度T(ひいては温度電圧VT)と後述する電圧比VC(0)との相関関係を表す電圧比換算用マップデータ、および、後述する電圧比差ΔVCと湿度Hとの相関関係を表す湿度換算用マップデータが含まれている。
【0093】
上述の濃度換算データには、温度電圧VTと後述する高温時電圧VH(0)との相関関係を表す高温時電圧換算用マップデータ、高温時電圧VHおよび湿度Hと後述する高温時電圧変化ΔVH(H)との相関関係を表す湿度電圧変化換算用マップデータ、および、温度電圧VTおよび高温時電圧VHと後述するガス感度G(VT)との相関関係を表すガス感度換算用マップデータが含まれている。
【0094】
[1−5.水素ガス濃度の検出方法]
次に、本実施形態の可燃性ガス検出装置1による水素ガス濃度の検出方法について説明する。水素ガス濃度を検出する際には、可燃性ガス検出装置1は、図3(a)および図3(b)に示すように、一定の周期時間tの間(以下「低温期間t」と表記する。)に発熱抵抗体15の設定温度を低温側の第2設定温度CLに保持する制御処理と、一定の周期時間tの間(以下「高温期間t」と表記する。)に高温側の第1設定温度CHに保持する制御処理と、を交互に繰り返し行う。
【0095】
具体的には、可燃性ガス検出装置1の演算部30が切替信号CG1を出力することにより、低温期間tの間、ブリッジ回路210の抵抗値、即ち、発熱抵抗体15の端子間電圧を低温時電圧VLに保持する制御処理と、高温期間tの間、発熱抵抗体15の端子間電圧を高温時電圧VHに保持する制御処理と、を交互に繰り返し行う。
【0096】
本実施形態では、低温期間tおよび高温期間tは、それぞれ同一長さであり、具体的には、200msである。なお、低温期間tおよび高温期間tを合計した1サイクルである2tの長さは、長くても5秒以下であることが望ましい。1サイクルの長さが長くなると、環境変化に対する出力の追従性、言い換えると出力の精度が悪くなるためである。
【0097】
そして、演算部30は、ガス検出時に実行するガス濃度演算処理などの各種制御処理を実行する。
ここで、ガス濃度演算処理について説明する。
【0098】
ガス濃度演算処理は、可燃性ガス検出装置1によるガス検出時に実行される制御処理であって、可燃性ガス濃度を演算するための制御処理である。なお、可燃性ガス検出装置1が起動されると、演算部30にてガス濃度演算処理が開始される。図4は、ガス濃度演算処理の処理内容を示すフローチャートである。
【0099】
ガス濃度演算処理が起動されると、まず、S110(Sはステップを表す。以下同様。)では、装置内の各部への通電を開始する。具体的には、通電制御回路21による発熱抵抗体15への通電や、温度調整回路25による測温抵抗体16への通電を開始する。
【0100】
次のS120では、通電制御回路21から低温時電圧VL,高温時電圧VH,トップ電位V21、検出電位V11、中間電位V31を取得し、温度調整回路25から温度電圧VTを取得する。
【0101】
なお、トップ電位V21は、このときに検出されるTOP電圧信号V2の電位であり、検出電位V11は、このとき検出される検出信号V1の電位であり、中間電位V31は、このとき検出される中間電位信号V3の電位であり、温度電圧VTは、このとき検出される温度検出信号VTの電圧である。
【0102】
次のS130では、トップ電位V21が予め定められた第1判定値Vth1以上であるか否かを判定しており、肯定判定するとS230に移行し、否定判定するとS140に移行する。
【0103】
なお、第1判定値Vth1には、増幅回路220および電流調整回路230による制御状態が、直流電源40からブリッジ回路210へ最大電流値の電流を通電する状態(あるいは、最大電圧値の電圧を印加する状態)である場合に、接続端部PVに生じる電位(最大通電時電位)に基づいて予め設定されている。本実施形態では、駆動電圧Vcc(5[V])から定温度制御回路231での電圧降下分(約0.6[V])を差し引いた値が最大通電時電位である。本実施形態では、第1判定値Vth1には、最大通電時電位と同じ値(具体的には、4.4[V])が予め設定されている。
【0104】
S130で肯定判定されてS230に移行すると、S230では、検出電位V11と中間電位V31との差分値D1(=V11−V31)が予め定められた第2判定値Vth2以上であるか否かを判定しており、肯定判定するとS240に移行し、否定判定するとS140に移行する。
【0105】
第2判定値Vth2には、定温度制御回路231が短絡状態であるときに差分値D1が示す値と、水素が高濃度である状態(発熱抵抗体15の抵抗値が低下した状態)であるときに差分値D1が示す値と、で挟まれる数値範囲内のうち任意の値が予め設定されている。本実施形態では、第2判定値Vth2には、5.0[mV]が設定されている。
【0106】
S230で肯定判定されてS240に移行すると、S240では、ブリッジ回路210において直流電源40への短絡故障が発生している(換言すれば、定温度制御回路231にショート故障(短絡故障)が発生している)と判定する。このとき、演算部30の内部フラグの1つである短絡故障フラグF1をリセット状態からセット状態に設定変更するとともに、可燃性ガス検出装置1に接続される外部機器(例えば、エンジン制御装置など)に対して、短絡故障が発生したことを通知する。
【0107】
S130で否定判定されるかS230で否定判定されてS140に移行すると、S140では、高温時電圧VHおよび低温時電圧VLに基づいて、電圧比VCを演算する。具体的には、[数1]を用いて電圧比VCを演算する。
【0108】
【数1】
次のS150では、S120で取得した温度電圧VTおよび電圧比換算用マップデータに基づいて、環境温度Tひいては温度電圧VTにおけるガス濃度Xがゼロ、および、湿度Hがゼロのときの電圧比VC(0)を演算する。
【0109】
次のS160では、S140で得られた電圧比VC、および、S150で得られた電圧比VC(0)を、[数2]の入力値として、環境温度Tひいては温度電圧VTにおける電圧比差ΔVCを演算する。
【0110】
【数2】
次のS170では、S160で得られた電圧比差ΔVC、および、湿度換算用マップデータに基づいて、電圧比差ΔVCのときの湿度Hを演算する。
【0111】
次のS180では、S120で得られた高温時電圧VHと、S120で取得した温度電圧VTと、高温時電圧換算用マップデータと、に基づいて、環境温度Tひいては温度電圧VTにおけるガス濃度Xがゼロ、および、湿度Hがゼロのときの高温時電圧VH(0)を演算する。
【0112】
次のS190では、S120で得られた高温時電圧VHと、S170で得らえた湿度Hと、湿度電圧変化換算用マップデータと、に基づいて、高温時電圧VHのうちの湿度Hに起因する電圧変化分を表す高温時電圧変化ΔVH(H)を演算する。
【0113】
次のS200では、S120で得られた高温時電圧VH、S180で得られた高温時電圧VH(0)、S190で得られた高温時電圧変化ΔVH(H)を、[数3]の入力値として、高温時電圧VHのうちの可燃性ガスに起因する電圧変化分を表す高温時電圧変化ΔVH(G)を演算する。
【0114】
【数3】
次のS210では、S120で得られた高温時電圧VH、S120で得られた温度電圧VT、ガス感度換算用マップデータに基づいて、可燃性ガスに対する感度(単位はガス濃度Xの逆数)を表すガス感度G(VT)を演算する。
【0115】
次のS220では、S200において算出した高温時電圧変化ΔVH(G)、S210において算出したガス感度G(VT)を、[数4]の入力値として、可燃性ガス(水素)のガス濃度Xを演算する。
【0116】
【数4】
S220の完了後、再びS120に移行し、上述の処理を繰り返し実行する。
【0117】
このように、ガス濃度演算処理においては、S120,S140〜S220での処理によりガス濃度X(水素濃度)を演算する。また、ガス濃度演算処理では、ガス濃度を演算するにあたり、S130およびS230での判定処理により、トップ電位V21および差分値D1(=V11−V31)に基づいて、ブリッジ回路210において直流電源40への短絡故障が発生している(換言すれば、定温度制御回路231にショート故障(短絡故障)が発生している)か否かを判定する。
【0118】
ガス濃度演算処理において、ショート故障が発生していると判定した場合には、ガス濃度Xの演算を行わず、ショート故障と判定する(S240)。ガス濃度演算処理において、ショート故障が発生していないと判定した場合には、ガス濃度Xの演算を行う。
【0119】
[1−6.温度制御回路の故障判定]
可燃性ガス検出装置1において、ブリッジ回路210が直流電源40への短絡故障状態である場合(換言すれば、定温度制御回路231がショート故障(短絡故障)状態である場合)には、ブリッジ回路210に対して直流電源40の出力電圧(駆動電圧Vcc)が直接印加される状態となる。そして、発熱抵抗体15に対するこのような電圧印加状態が継続すると、発熱抵抗体15の温度が上昇するとともに発熱抵抗体15の抵抗値が上昇して、発熱抵抗体15の両端電圧が上昇する。なお、ブリッジ回路210の基準抵抗として備えられる第1ブリッジ固定抵抗211、第2ブリッジ固定抵抗212および可変抵抗部213は、発熱抵抗体15に比べて、温度変化に対する抵抗値変化量が小さい。このため、発熱抵抗体15の両端電圧が上昇すると、第1ブリッジ固定抵抗211と発熱抵抗体15との接続点P+は、第2ブリッジ固定抵抗212と可変抵抗部213との接続点P−よりも高電位となる傾向が強くなる。
【0120】
他方、可燃性ガス検出装置1において、検出対象である可燃性ガス(水素)によって発熱抵抗体15の抵抗値が低い値となる状態が継続すると、増幅回路220および電流調整回路230は、発熱抵抗体15の抵抗値を上昇させるために、直流電源40からブリッジ回路210への通電状態を、最大電流値の電流を通電する状態(あるいは、最大電圧値の電圧を印加する状態)に制御する。このとき、発熱抵抗体15の抵抗値は、検出対象である可燃性ガス(水素)によって低下するため、発熱抵抗体15の両端電圧は低下する。このように発熱抵抗体15の両端電圧が低下することにより、第1ブリッジ固定抵抗211と発熱抵抗体15との接続点P+は、第2ブリッジ固定抵抗212と可変抵抗部213との接続点P−よりも低電位となる傾向が強くなる。
【0121】
このことから、検出電位V11(接続点P+の電位)から中間電位V31(接続点P−の電位)を差し引いた差分値D1(=V11−V31)は、「ブリッジ回路210において直流電源40への短絡故障状態(換言すれば、定温度制御回路231のショート故障(短絡故障)状態)」と「可燃性ガス(水素)によって発熱抵抗体15の抵抗値が低い値となる状態」とで、それぞれ異なる値を示す。
【0122】
また、上述のように、第2判定値Vth2には、ブリッジ回路210が直流電源40への短絡故障状態であるとき(換言すれば、定温度制御回路231が短絡状態であるとき)に差分値D1が示す値と、水素が高濃度である状態(発熱抵抗体15の抵抗値が低下した状態)であるときに差分値D1が示す値と、で挟まれる数値範囲内のうち任意の値が予め設定されている。本実施形態では、第2判定値Vth2には、5.0[mV]が設定されている。
【0123】
このため、差分値D1と第2判定値Vth2との比較結果を用いることで、「ブリッジ回路210の直流電源40への短絡故障状態(換言すれば、定温度制御回路231のショート故障(短絡故障)状態)」と「可燃性ガス(水素)によって発熱抵抗体15の抵抗値が低い値となる状態」とを識別することが可能となる。
【0124】
なお、検出電位V11から中間電位V31を差し引いた差分値D1(=V11−V31)は、定温度制御回路231が正常状態の場合にも値が変動することから、差分値D1に加えて、トップ電位V21も用いて判定することで、定温度制御回路231が短絡故障状態であるか否かを判定することができる。
【0125】
よって、ガス濃度演算処理におけるS130およびS230の判定処理を実行することで、トップ電位V21および差分値D1(=V11−V31)に基づいて、ブリッジ回路210において直流電源40への短絡故障が発生しているか否か(換言すれば、定温度制御回路231にショート故障(短絡故障)が発生しているか否か)を判定することが可能となる。
【0126】
[1−7.効果]
以上説明したように、本実施形態の可燃性ガス検出装置1は、ガス濃度演算処理において、トップ電位V21と第1判定値Vth1との比較結果(S130)、および差分値D1(=V11−V31)と第2判定値Vth2との比較結果(S230)に基づいて、ブリッジ回路210の直流電源40への短絡故障(換言すれば、定温度制御回路231の故障(詳細には、ショート故障))を判定するように構成されている。
【0127】
詳細には、トップ電位V21が第1判定値Vth1以上であり(S130で肯定判定)、かつ差分値D1(=V11−V31)が第2判定値Vth2以上である(S230で肯定判定)場合に、ブリッジ回路210において直流電源40への短絡故障が発生している(換言すれば、定温度制御回路231にショート故障(短絡故障)が発生している)と判定する(S240)。
【0128】
上述したように、検出電位V11から中間電位V31を差し引いた差分値D1(=V11−V31)は、「ブリッジ回路210の直流電源40への短絡故障状態(換言すれば、定温度制御回路231のショート故障(短絡故障)状態)」と「可燃性ガス(水素)によって発熱抵抗体15の抵抗値が低い値となる状態」とで、それぞれ異なる値を示す。このため、第2判定値Vth2を上述のように設定した上で、差分値D1と第2判定値Vth2との比較結果を用いることで、「ブリッジ回路210の直流電源40への短絡故障状態(換言すれば、定温度制御回路231のショート故障(短絡故障)状態)」と「可燃性ガス(水素)によって発熱抵抗体15の抵抗値が低い値となる状態」とを識別することが可能となる。
【0129】
なお、差分値D1(=V11−V31)は、定温度制御回路231が正常状態の場合にも値が変動することから、差分値D1に加えて、トップ電位V21も用いて判定することで、ブリッジ回路210が直流電源40への短絡故障状態であるか否か(換言すれば、定温度制御回路231が短絡故障状態であるか否か)を判定することができる。
【0130】
このため、可燃性ガス検出装置1は、ガス濃度演算処理におけるS130およびS230の判定処理を実行することで、トップ電位V21および差分値D1に基づいて、「ブリッジ回路210の直流電源40への短絡故障状態(換言すれば、定温度制御回路231のショート故障(短絡故障)状態)」であるか「可燃性ガス(水素)によって発熱抵抗体15の抵抗値が低い値となる状態」であるかを識別することができる。
【0131】
よって、可燃性ガス検出装置1によれば、ブリッジ回路210において直流電源40への短絡故障が生じた場合(換言すれば、ブリッジ回路210への通電電流を制御する定温度制御回路231のショート故障(短絡故障)が生じた場合)に、その短絡故障を検出できる。
【0132】
なお、可燃性ガス検出装置1は、トップ電位V21が第1判定値Vth1以上ではないと判定されるか(S130で否定判定)、差分値D1が第2判定値Vth2以上ではないと判定される(S230で否定判定)場合には、S120,S140〜S220での処理によりガス濃度Xを演算することで、水素濃度を検出できる。
【0133】
[1−8.特許請求の範囲との対応関係]
ここで、特許請求の範囲と本実施形態とにおける文言の対応関係について説明する。
可燃性ガス検出装置1が流体状態検出装置の一例に相当し、発熱抵抗体15が発熱抵抗体の一例に相当し、ブリッジ回路210がホイートストンブリッジ回路の一例に相当し、増幅回路220および電流調整回路230がブリッジ制御部の一例に相当し、ガス濃度演算処理におけるS120,S140〜S220を実行する演算部30が演算部の一例に相当する。
【0134】
第1ブリッジ固定抵抗211が第1抵抗部の一例に相当し、第2ブリッジ固定抵抗212が第2抵抗部の一例に相当し、可変抵抗部213が第3抵抗部の一例に相当する。演算増幅器221が演算増幅器の一例に相当し、定温度制御回路231が通電制御部の一例に相当し、直流電源40が電源装置の一例に相当する。
【0135】
発熱抵抗体15と可変抵抗部213との接続端部である端部PGが基準点の一例に相当し、第1ブリッジ固定抵抗211と第2ブリッジ固定抵抗212との接続端部である接続端部PVが高電位点の一例に相当する。第1ブリッジ固定抵抗211と発熱抵抗体15との接続点P+が第1電位点の一例に相当し、第2ブリッジ固定抵抗212と可変抵抗部213との接続点P−が第2電位点の一例に相当する。
【0136】
ガス濃度演算処理におけるS130,S230,S240を実行する演算部30が故障判定部の一例に相当し、第1判定値Vth1が電圧上限判定値の一例に相当し、第2判定値Vth2が故障判定値の一例に相当する。
【0137】
[2.他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、様々な態様にて実施することが可能である。
【0138】
例えば、第1判定値Vth1や第2判定値Vth2は、上記数値に限られることはなく、「ブリッジ回路210の直流電源40への短絡故障状態(換言すれば、定温度制御回路231のショート故障(短絡故障)状態)」であるか「可燃性ガス(水素)によって発熱抵抗体15の抵抗値が低い値となる状態」であるかを識別することが可能な値であれば、任意の値を設定してもよい。
【0139】
また、ガス濃度演算処理は、S230で否定判定された後に、水素濃度が高濃度状態(発熱抵抗体15の抵抗値が低下した状態)であると判定するステップ(抵抗値低下判定ステップ)を実行して、その後、S140に移行するように構成しても良い。この場合、抵抗値低下判定ステップでは、演算部30の内部フラグの1つである水素濃度高フラグ(あるいは、抵抗値低下フラグ)をリセット状態からセット状態に設定変更してもよい。また、抵抗値低下判定ステップでは、さらに、可燃性ガス検出装置1に接続される外部機器(例えば、エンジン制御装置など)に対して、水素濃度が高濃度状態(発熱抵抗体15の抵抗値が低下した状態)であることを通知しても良い。
【0140】
また、上記実施形態では、流体状態の検出に関する一例として、可燃性ガスの濃度を検出する例について説明したが、これに限られることはなく、ガスの流量、液体の流量などを検出するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0141】
1…可燃性ガス検出装置、10…ガス検出素子、15…発熱抵抗体、16…測温抵抗体、20…制御部、21…通電制御回路、25…温度調整回路、30…演算部、40…直流電源、210…ブリッジ回路、211…第1ブリッジ固定抵抗、212…第2ブリッジ固定抵抗、213…可変抵抗部、220…増幅回路、221…演算増幅器、230…電流調整回路、231…定温度制御回路。
図1
図2
図3
図4