特許第6363572号(P6363572)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6363572非加熱調味コンニャク包装食品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6363572
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】非加熱調味コンニャク包装食品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 19/00 20160101AFI20180712BHJP
【FI】
   A23L19/00 102A
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-180198(P2015-180198)
(22)【出願日】2015年9月11日
(65)【公開番号】特開2017-51170(P2017-51170A)
(43)【公開日】2017年3月16日
【審査請求日】2016年5月11日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515253588
【氏名又は名称】三和罐詰 株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083437
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 實
(72)【発明者】
【氏名】伊 藤 哲 夫
【審査官】 太田 雄三
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭64−047356(JP,A)
【文献】 プライベートブランド食品を徹底解析してみた[オンライン],2014年12月10日,[検索日2017年4月18日],URL,http://okashi.hatenablog.com/entry/2014/12/10/111531
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 5/00−35/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
DWPI(Thomson Innovation)
FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンニャク塊の複数個を80〜100℃の温水にて5〜15分間ボイルする一方、40℃の温水に砂糖およびゲル化剤を攪拌した砂糖・ゲル化剤水溶液、イカエキス、塩を温水に溶解したイカエキス・塩水溶液、および醤油を、85℃・10分間の条件にて加熱、攪拌して調味液とし、当該茹でコンニャク塊所定個数の水切りしたものと、該調味液の適量とが、重量比において4:1〜1:2となるようにして樹脂製密閉容器に充填・密閉した上、金属探知、重量検査を行い、121℃・20〜60分間の加熱殺菌、X線異物検査を行った後、各種ラベル貼着および印刷の少なくとも何れか一方を施し、密閉包装後から開封までの間に、非加熱条件下にて経時的に調味液の少なくとも一部を各茹でコンニャク塊に浸透させるようにしてなるものとしたことを特徴とする非加熱調味コンニャク包装食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、調理済み包装食品を提供する技術に関連するものであり、特に、開封後に調理や調味などを要さず、そのまま食することができるコンニャク包装食品を製造、提供する分野は勿論のこと、その輸送、保管、組み立ておよび設置に必要となる設備、器具類を提供、販売する分野から、それら資材や機械装置、部品類に必要となる素材、例えば、木材、石材、各種繊維類、プラスチック、各種金属材料等を提供する分野、それらに組み込まれる電子部品やそれらを集積した制御関連機器の分野、各種計測器の分野、当該設備、器具を動かす動力機械の分野、そのエネルギーとなる電力やエネルギー源である電気、オイルの分野といった一般的に産業機械と総称されている分野、更には、それら設備、器具類を試験、研究したり、それらの展示、販売、輸出入に係わる分野、将又、それらの使用の結果やそれを造るための設備、器具類の運転に伴って発生するゴミ屑の回収、運搬等に係わる分野、それらゴミ屑を効率的に再利用するリサイクル分野などの外、現時点で想定できない新たな分野までと、関連しない技術分野はない程である。
【背景技術】
【0002】
(着目点)
一般的なコンニャクは、洗浄し薄皮を剥いたコンニャク芋を蒸し、破砕機に投入して粉砕した上、ペースト状に摺り下ろし、コンニャク糊とした後、水酸化カルシウムや炭酸ナトリウムなどの凝固剤を加え、成型装置に流し込み、所望形状に成型した上、湯の中を通して固め、一定時間湯の中に入れて熟成させ、樹脂フィルム製袋などに密閉包装し、加熱殺菌して完成する食べ物であり、このようにして製造した、例えば玉コンニャクは、消費者が店頭で購入し、帰宅後に包装を開封、取り出した後に塩もみしてから塩を洗い流し、熱湯に浸けるなどして灰汁抜きをした上で鍋に入れ、被るくらいに水および調味液を適量ずつ加えて加熱し、玉コンニャクの中まで色が染み込むまで約4時間程度煮込む必要があった。
【0003】
このように長時間を掛けて煮込む調理は、現代社会の省エネ志向や忙しい生活スタイルに次第に馴染まなくなってきており、したがって、スーパーマーケットで調理済みの惣菜としての玉コンニャクや玉コンニャクの入った弁当を購入したり、コンビニエンスストアーなどのおでんとしての玉コンニャクを購入したりすること以外に玉コンニャクを賞味する機会が少なくなり、玉コンニャクを購入して来て家庭で加熱・調理することが減ってしまっているというのが現状である。
【0004】
(従来の技術)
こうした状況を反映し、その打開策となるような提案もこれまでに散見されない訳ではない。
例えば、下記の特許文献1(1)ないし(3)に提案されているものに代表されるように、プラスチック容器にコンニャクと中和に必要な量の有機酸と調味液の三者を予めテストして決めた重量比で充填・シールし、次いで加熱処理を行ってコンニャクの中和と調味成分の浸透を完了させるようにし、この簡単な製法によって連続的な自動製造を容易にし、しかも香味の優れた多品種の調味コンニャクを得ることができるようにしたものや、同特許文献1(2)に見られるような、コンニャクと、調味成分がコンニャク内部に浸透したときのPH3〜7になるように酸で調整した調味料との組み合わせからなり、電子レンジ加熱調理対応とした調味コンニャク素材、また、同特許文献1(3)のような、コンニャクに、表面に開口した多数の細孔を設け、これを酸性調味液と混合して減圧下に温度70℃以上、1時間以内の間加熱する減圧加熱処理により調味成分を迅速にコンニャク内部に浸透させるようにした調味コンニャク加工品の製造法などが散見される。
【0005】
しかし、前者特許文献1(1)に示されているような包装容器内においける調味コンニャクの製造技術は、包装容器中に、コンニャクのアルカリ成分を中和する有機酸を添加する必要があり、コンニャクの調味や食感などに適する有機酸の選択、および、製造や調達などの手間を要するものとなり、製造コストの増加を招く虞があり、特許文献1(2)の調味コンニャク素材のように、コンニャク内部に浸透したときにPH3〜7になるように酸で調整した調味料を添加した調味コンニャク素材は、電子レンジなどによる加熱調理を必須とするものであり、包装を開封してそのまま食することができるものとはなっておらず、また、特許文献1(3)に代表する調味コンニャク加工品の製造技術は、コンニャクに空気が混じらないようにして200〜250℃の過熱蒸気を1〜5分間当てて加熱処理することにより、ポーラスな表面にするという表面改質を行うようにした食品加工方法や、コンニャク固形物に剣山様の器具類や細い金属などで一定間隔の孔をあけるようにして、コンニャクへの調味液の浸透効率を高めたものとしているが、コンニャク塊の表面に万遍なく過熱蒸気を当ててポーラス状の細孔を造る工程や、剣山用の器具類を使用して多数の細孔を加工する工程などには、夫々の作業に適すると共に、作業の安全を充分に確保できる専用の調理器具を必要とするから、製造コストの高騰を招く虞があるという欠点があった。
【特許文献1】(1)特開2003−102405号公報 (2)特開2006−67876号公報 (3)特開2013−172652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
(問題意識)
上述したとおり、従前までに提案のある各種の調味コンニャクの製造技術などは、何れも、コンニャクに含まれるアルカリ成分を中和可能とする有機酸の添加や、包装開封後に加熱調理を要するものなどが殆どであり、また、コンニャクに多数の細孔を、表面に開口するよう加工したものとするには、専用の調理器具や穿孔器具類を要し、製造コストの高騰を招く虞があるなどの欠点を残すものであり、こうした状況にあって、本願発明者兼出願人は、永年、様々な消費者ニーズに対し、柔軟に対応して高品質な食品の開発、提供に携わる中、それらから得られた様々な知見や顧客らの情報などに基づき、開封後、全く調理および調味せずに、そのまま美味しく食すことができるコンニャク食品の提供を実現化するための構成について、新たな開発の必要性を痛感するに至ったものである。
【0007】
(発明の目的)
そこで、この発明は、衛生的に包装され、開封後に調味および調理を一切必要とせずに、そのまま美味しく食することができる新たな非加熱調味コンニャク包装食品技術の開発はできないものかとの判断から、逸速くその開発、研究に着手し、長期に渡る試行錯誤と幾多の試作、実験とを繰り返してきた結果、今回、遂に新規な構造の非加熱調味コンニャク包装食品の新規な製造方法を実現化することに成功したものであり、以下では、図面に示すこの発明を代表する実施例と共に、その構成を詳述することとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の構成)
図面に示すこの発明を代表する実施例からも明確に理解されるように、この発明の非加熱調味コンニャク包装食品の新規な製造方法は、基本的に次のような構成から成り立っている。
即ち、コンニャク塊の複数個を80〜100℃の温水にて5〜15分間ボイルする一方、40℃の温水に砂糖およびゲル化剤を攪拌した砂糖・ゲル化剤水溶液、イカエキス、塩を温水に溶解したイカエキス・塩水溶液、および醤油を、85℃・10分間の条件にて加熱、攪拌して調味液とし、当該茹でコンニャク塊所定個数の水切りしたものと、該調味液の適量とが、重量比において4:1〜1:2となるようにして樹脂製密閉容器に充填・密閉した上、金属探知、重量検査を行い、121℃・20〜60分間の加熱殺菌、X線異物検査を行った後、各種ラベル貼着および印刷の少なくとも何れか一方を施し、密閉包装後から開封までの間に、非加熱条件下にて経時的に調味液の少なくとも一部を各茹でコンニャク塊に浸透させるようにしてなるものとした構成を要旨とする非加熱調味コンニャク包装食品の製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
以上のとおり、この発明の非加熱調味コンニャク包装食品の製造方法によれば、従前までのものとは違い、上記したとおりの固有の特徴ある構成から、衛生的な密閉包装によって安全且つ効率的に保管・輸送および展示・販売することができると共に、密閉包装後、非加熱条件下にて調味液を各茹でコンニャク塊に浸透させてなるものとしてあるから、密閉容器を開封するだけで、調味や加熱などの調理作業を一切要せず、そのまま食することができるものとなり、従前までの加熱による灰汁抜きに続き、調味料を用いた煮込みなどの複雑な作業を行わなければならない従来型の蒟蒻包装食品に比較して、より一段と簡単に美味しく食することができるものとなり、外出先や屋外、行楽地などの加熱調理が困難な場所であっても、気軽に購入し、開封してそのまま食べることができるという、優れた利便性を発揮し、家庭に持ち帰って調理しなければならない一般的な蒟蒻商品よりも市場を格段に拡大することができるという秀でた特徴が得られるものである。
【0010】
加えて、この発明の製造方法に従って製造した非加熱調味コンニャク包装食品は、コンニャク塊を80〜100℃望ましくは96℃の温水にて5〜15分間ボイルした茹でコンニャク塊を用いたものとするから、購入者が、密閉容器を開封した後、灰汁抜き処理の必要がなく、さらに、該茹でコンニャク塊を、40℃の温水に砂糖およびゲル化剤を攪拌した砂糖・ゲル化剤水溶液、イカエキス、塩を温水に溶解したイカエキス・塩水溶液、および、醤油を、85℃・10分間の条件にて加熱、攪拌した調味液に浸漬するよう充填・密閉包装したものとなるから、従来型の蒟蒻包装食品に比較して、調理作業を大幅に簡素化、簡単化、迅速化することができるものとなり、しかも茹でコンニャク塊および調味液の重量比を4:1〜1:2望ましくは3:2としてなるものは、茹でコンニャク塊に対して調味液を過不足無く、程よいバランスで充填してなるものとすることとなり、開封までの時間が長期化した場合であっても、味付けが過剰に濃くなってしまうのを未然に防ぎ、一段と安定した味付けを維持することができるものとなり、より一層品質の安定化を達成できるものとなる。
【0011】
そして、この発明の非加熱調味コンニャク包装食品の製造方法によれば、コンニャク塊をボイルする工程によって灰汁抜きした後、醤油を含む調味液の適量と共に、密閉容器に充填・密閉するようにしたから、密閉容器に充填した直後から、金属探知や重量検査、X線異物検査などの各種検査や、加熱殺菌、ラベル表示などの各種処理工程を経る間にも、調味液が次第に茹でコンニャク塊に浸透して行くこととなり、出荷、輸送を経て店頭に陳列される段階には、各茹でコンニャク塊が充分に調味された状態となり、消費者が店頭購入後、直ちに開封した場合であっても、そのまま食べることができるよう調理済み品質を確保することができるものとなり、生産効率を格段に高め、従来型の製造方法による蒟蒻製品に比較して、弁当や中食への利用範囲が広がり、より広範な市場に提供することができるものになるという大きな効果を奏することになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
上記したとおりの構成からなるこの発明の実施に際し、その最良もしくは望ましい形態について説明を加えることにする。
コンニャク塊は、この発明の最も特徴的要素となる茹でコンニャク塊(茹でずにそのまま食することができるコンニャク食品)の主要部分となる機能を担い、コンニャクイモに含まれるコンニャクマンナン(多糖:グルコマンナン)を糊化し、凝固成分(アルカリ液、水酸化カルシウム水溶液(消石灰)など)を加えてゲル状に凝固させたものであり、換言すると、ボイル済みの板こんにゃく、突きこんにゃく、玉こんにゃく、糸こんにゃく(しらたき)、刺身こんにゃく、ねじりこんにゃく、ねじり糸こんにゃく、結び糸こんにゃく、手綱こんにゃく、氷こんにゃく、コンニャクゼリー、コンニャク麺、その他、様々な形状のこんにゃく、別の表現で示すと、白こんにゃく、黒こんにゃく、生芋こんにゃく、その他、様々な食材を混合、添加したこんにゃくとすることができる。
【0013】
そして、この発明の茹でコンニャク塊は、製造工程の初期において、所定条件下にてボイル済み含水状態としたものとしなければならず、コンニャク塊を80〜100℃望ましくは96℃の温水にて5〜15分間ボイルし、水切りしたものとすべきであり、後述する実施例にも示すとおり、96℃温水中に投入し、96℃に再昇温後10分間ボイルした後、冷却槽に移し10分間冷却し、さらに、5分間水切りして計量するという工程で製造したものとするのが望ましく、次工程に以降するまでの保管は、離水防止のため浸る程度の水に入れておくのがよい。
【0014】
甘味料・ゲル化剤水溶液は、この発明の非加熱調味コンニャク包装食品を実現化するのに最も肝要な成分ということができ、甘味料は、ゲル化剤水溶液に甘み成分を与える機能を担うものであり、表現を変えると、砂糖、その他の甘味料ということができ、より具体的なものとして例示するならば、ザラメ糖(白双糖、中双糖、グラニュー糖など)、車糖(上白糖、三温糖など)、加工糖(角砂糖、氷砂糖、粉砂糖、顆粒状糖など)、液糖(ブドウ糖果糖液糖、果糖ブドウ糖液糖、高化糖液糖、砂糖混合異性化液糖など)、精製糖、黒糖、加工黒糖、テンサイ糖、黒砂糖、白下糖、カソナード(赤砂糖)和三盆などの含蜜糖、粗糖、分蜜糖、ぶどう糖、果糖、麦芽糖、ショ糖、オリゴ糖、蜂蜜、メープルシロップ、アガベシロップ、パームシュガー、モラセス(糖蜜)、水飴、ブドウ糖果糖液糖、トレハロース、マルチトール、キシリトール、ソルビトール、甘草抽出物、ステビア加工甘味料、羅漢果抽出物、ソーマチ、グリセリン、クルクリン、モネリン、モナチン、ミラクリン、エリトリトール、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、サッカリン、ネオテーム、中さら糖、赤ザラメ、ブラウンシュガー、その他の甘味料、または、それらの組み合わせからなるものなどと言うことができる。
【0015】
ゲル化剤水溶液は、甘味料を液状化し、および、粘度を与えてゲル状とし、さらに、粘度を調整可能とする機能を担い、例えば、ペクチン、グァーガム、キサンダンガム、タマリンドガム、カラギナン、プロピレングリコール、カルボキシメチルセルロース、その他の増粘安定剤、またはそれらの組み合わせからなり、所定割合の水を加えてなるものとすることが可能である。
【0016】
天然調味料・塩水溶液は、この発明の茹でコンニャク塊に、浸透力をもって旨味を与える成分としての機能を担っており、天然調味料は、この発明の茹でコンニャク塊に、天然素材由来の旨味成分を与える機能を担い、例えば、魚介類エキス、動物類エキス、植物類エキス、ペプチドエキス、その他エキスの組み合わせからなるものということができ、さらに具体的に示すと、イカエキス、フグエキス、ウナギエキス、アナゴエキス、アミエビエキス、ウニエキス、タラコエキス、焼アゴエキス、タコエキス、その他の魚介類エキスの組み合わせからなるものなどとすることができ、塩水溶液は、この発明の茹でコンニャク塊に、天然調味料の旨味成分に塩味を加えると共に、浸透を促すよう濃度調整可能とする機能を担い、塩は、塩味に調味し、浸透圧を調整する機能を担うものであり、岩塩、天日塩、せんごう塩、換言すると、精撰特急塩、特急塩、精製塩、食塩、並塩、白塩、天日塩、湖塩、岩塩、焼塩、海洋深層水塩、旨味成分(干椎茸、昆布、干帆立貝柱、鰹節、その他)をそれら何れかに添加した塩、その他の塩、それらの何れか1種か、または、それらの組み合わせからなる塩とすることが可能であり、水は、塩を水溶液化可能とする機能を担い、飲料水、または、飲料可能な各種水溶液としなければならず、天然水、ミネラルウォーター、浄水、蒸留水、純水などとするのが良いと言える。
【0017】
醤油は、この発明の茹でコンニャク塊、および、調味液に風味を与える機能を担うものであり、めんつゆ、わさび醤油、酢醤油、砂糖醤油、その他の各種醤油加工品、またはそれらを組み合わせたもの、または、梅酢、ドレッシング、タレ、ソース、魚醤など、またはそれらを組み合わせたものへの置き換え、さらにまた、塩、胡椒、唐辛子その他の調味料、またはそれらを組み合わせたものへの置き換えが可能であり、望ましくは、濃口醤油、淡口醤油、再仕込み醤油、溜醤油、白醤油、換言すれば、本醸造、混合醸造、混合の夫々の製造方法による醤油とするのが好都合である。
【0018】
調味液は、この発明の茹でコンニャク塊と共に、密閉容器中に充填・密閉し、非加熱条件下にて各茹でコンニャク塊に浸透し、賞味可能とする機能を担い、茹でコンニャク塊に対して適度の浸透力を有し、旨味を伴って定着可能なものとしなければならず、甘味料・ゲル化剤水溶液、天然調味料・塩水溶液、および、醤油を加熱、攪拌してなるものとすべきであり、後述する実施例にも示すように、40℃の温水に砂糖およびゲル化剤を攪拌した砂糖・ゲル化剤水溶液、イカエキス、塩を温水に溶解したイカエキス・塩水溶液、および、醤油を、85℃・10分間の条件にて加熱、攪拌したものとするのが望ましい。
【0019】
密閉容器は、この発明の茹でコンニャク塊、および調味液とを1つの容器中に衛生的に保存、輸送可能とする機能を担うものであり、充分な耐久性をもって密閉包装可能なものとしなければならず、展示、販売に適した形状や材質からなるものとすべきであり、例えば、瓶、缶、プラスチック容器、トレー容器、カップ容器、ポリチャック容器、注ぎ口キャップ付き袋容器、アセプティック容器、オレフィン積層ボトル、レトルトパウチ、透明レトルトパウチ、レンジ対応包装、湯殺菌包装などとすることが可能である。
【0020】
この発明の非加熱調味コンニャク包装食品の製造方法は、コンニャク塊の複数個を80〜100℃望ましくは96℃の温水にて5〜15分間ボイルする工程が、コンニャク塊の過剰な凝固成分を取り除くと共に、臭い成分を取り除く加工・処理を行うものとしているが、ボイルする外、中和剤や中和液(例えば食酢など)に浸すなどして略同様の作用を得るものとすることができ、さらに、ボイルおよび中和剤類に浸すよう作業することが可能である外、灰汁抜き処理を終えた後には、後述する実施例にも示すように、短時間の中に冷却、水切りを行い、その後、使用するまでの間、浸る程度の水に入れて離水を防止するよう保管するのが望ましい。
【0021】
調味液を製造する工程は、コンニャク塊に相応しい味覚を与えるよう各種食品および調味料を調合するものであり、甘味料・ゲル化剤水溶液、天然調味料・塩水溶液、および、醤油を加熱、攪拌して製造するものとしなければならず、手作業によって攪拌、混合、加熱などの作業を行うようにすることが可能であり、また、調理用攪拌機、調理用高速攪拌タンク、ニーダー、調理用プロセッサー、調理用ミキサーなど、各種調理機器を用いて攪拌、混合、加熱などの加工、処理を行うようにするのが良く、後述する実施例にも示すとおり、40℃の温水に砂糖およびゲル化剤を攪拌した砂糖・ゲル化剤水溶液、イカエキス、塩を温水に溶解したイカエキス・塩水溶液、および、醤油を、85℃・10分間の条件にて加熱、攪拌してなるものとすることができ、茹でコンニャク塊に対して調味液を、重量比4:1〜1:2望ましくは3:2とするよう密閉包装するのが望ましく、茹でコンニャク塊の量(数、体積、質量など)に対し、調味液の量(容積、質量など)を過不足無く、バランス良く、しかも無駄無く充填してなるものとするのが望ましい。
【0022】
密閉容器に茹でコンニャク塊の所定個数と調味液の適量とを、充填・密閉した上、各種検査、加熱殺菌し、密閉包装後から開封までの間に、非加熱条件下にて経時的に調味液の少なくとも一部を各茹でコンニャク塊に浸透させるようにする工程は、開封後の調理を一切必要とせず、そのまま食することができるようにする機能を担うものであり、後述する実施例にも示すとおり、当該茹でコンニャク塊所定個数の水切りしたものと、該調味液とを適量ずつ、例えば、茹でコンニャク塊および調味液の重量比を4:1〜1:2望ましくは3:2とするよう、樹脂製密閉容器に充填・密閉した上、金属探知、重量検査を行い、121℃・20〜60分望ましくは45分間の加熱殺菌、X線異物検査を行った後、各種ラベル貼着および印刷の少なくとも何れか一方を施し、密閉包装後から開封までの間に、非加熱条件下にて経時的に調味液の少なくとも一部を各茹でコンニャク塊に浸透させるようにしてなるものとするのが望ましい。
以下では、図面に示すこの発明を代表する実施例と共に、その構造について詳述することとする。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図面は、この発明の非加熱調味コンニャク包装食品の製造方法に係わる技術的思想を具現化した代表的な幾つかの実施例を示すものである。
図1】非加熱調味コンニャク包装食品の製造方法を概略的に示すフローチャートである。
図2】非加熱調味コンニャク包装食品の製造方法をより具体的に示すフローチャートである。
図3】非加熱調味コンニャク包装食品の一例を示す斜視図である。
図4】非加熱調味コンニャク包装食品の他の一例を示す斜視図である。
【実施例1】
【0024】
図1に示す事例は、所定条件下にてボイル済み含水状態とした茹でコンニャク塊2の所定個数と、甘味料・ゲル化剤水溶液、天然調味料・塩水溶液、および、醤油を加熱、攪拌した調味液3の適量とを、密閉容器4に充填・密閉した上、各種検査、加熱殺菌し、密閉包装後、非加熱条件下にて調味液3の少なくとも一部を各茹でコンニャク塊2に浸透させてなるものとした、この発明の非加熱調味コンニャク包装食品における代表的な一実施例を示すものである。
以下では、この発明の製造方法の一例に従い順次、当該非加熱調味コンニャク包装食品1の構成を示して行くこととする。
【0025】
図1および図2に示すように、この発明の非加熱調味コンニャク包装食品は、成長した蒟蒻芋を洗浄し、破砕機を用いて細かく砕き、ペースト状の蒟蒻糊とした上、硬さ調整および素練りを行った蒟蒻糊に食品用水酸化カルシウムを練り合わせ、成型機に流し込み、複数個の球形コンニャク塊(玉コンニャク)2としてから、ボイルカゴに入れて96℃の温水に投入し(A)、96℃に再昇温後、5〜15分間にわたり加熱・攪拌しながらボイル(B)し、茹であがったコンニャク塊2は、冷却槽に移し10分間冷却し、さらに、5分間水切り・計量した後、離水を防止するよう浸る程度の水に没した状態に保管するようにし、茹でコンニャク塊2を得る(C)ものとする。
【0026】
該茹でコンニャク塊2を得る(C)作業工程と平行するように、40℃のイオン交換温水に砂糖およびゲル化剤を高速攪拌タンクに投入し、5分間攪拌して砂糖・ゲル化剤水溶液を造り(D)、また、イカエキス、塩を温水に溶解したイカエキス・塩水溶液を造り(E)、ニーダー(ニーディングマシン)に、当該砂糖・ゲル化剤水溶液、イカエキス・塩水溶液および醤油を共に投入し(F)、85℃・10分間の加熱・攪拌を行い、ゲージ圧力をアップし、調合検査(糖度(Brix値)、水素イオン指数(pH)、塩分濃度(%、‰))を経て調味液3を得る(G)ようにする。
【0027】
図3に示すような透明軟質合成樹脂製自立型のパウチ、または、図4に示すような有色硬質合成樹脂製の器型容器に透明軟質合成樹脂製フィルム製の密閉蓋40をラミネート加工によって組み合わせる樹脂製容器などの密閉容器4に、前記茹でコンニャク塊2をパウチ4の場合には例えば15個、カップ4の場合には例えば8個ずつと共に、適量の調味液3を充填し、図4に示すカップ4の場合には、同カップ4内の空気を窒素、二酸化炭素(炭酸ガス)、酸素またはそれらの混合気などに入れ替える、ガス置換包装を行い、密閉包装(H)したものとする。
【0028】
密閉包装の工程(H)を経た後、金属探知機による検査(J)、ウェイトチェッカーによる重量検査(K)を行なった上、例えば121℃×45分間の条件の下、加熱殺菌(L)し、除水してから、X線異物検出装置によるX線異物検査(M)を行い、安全を確認した後、ラベル貼着または直接印字、印刷するなどしてラベル5表示(N)を行い、箱詰め(P)、保管・出荷(Q)するものとなる。
【0029】
(実施例1の作用・効果)
以上のとおりの構成からなるこの発明の非加熱調味コンニャク包装食品の製造方法は図1および図2に示すように、コンニャク塊2をボイルする工程(A),〜(C)を始めに行い、より効果的に灰汁抜きできるものとし、さらに、この作業に平行するように、調味液3を製造する工程(D),〜(G)を行うようにしたから、一段と効率的な生産が可能となり、しかも、甘味料・ゲル化剤水溶液は、それらの調合割合によって粘性に変化を与えることができ、甘味料としての砂糖の量を増やすと粘性を下げ、ゲル化剤の量を増やすと粘性を高める作用が得られ、その調合割合を変えることによって、様々な商品展開が可能となり、また、天然調味料・塩水溶液は、天然調味料としてイカエキスを用いるようにしたから、イカの旨味成分が深い味わいを引き出し、山形名物の玉こんにゃくとしてより付加価値に優れたこんにゃく食品として提供することができる。
【0030】
(結 び)
叙述の如く、この発明の非加熱調味コンニャク包装食品の製造方法は、その新規な構成によって所期の目的を遍く達成可能とするものであり、しかも製造も容易で、従前からの蒟蒻製造およびその包装技術に比較して、多くの消費者が面倒だと思っていた調理直前の下拵えとしての灰汁抜き、および、その後の加熱調理を一切不要とすることができるから、大幅に利便性を高めたものとすることができ、煮込みなどの加熱調理も不要となり、低廉化して遥かに経済的なものとすることができる上、このように調理不要とすることにより、観光地や屋外施設における展示、販売も容易になり、店頭における宣伝および販売促進も安全且つ簡便に行えるものとなり、蒟蒻食品の市場拡大を模索する食品製造業界はもとより、従前までの蒟蒻食品の面倒な調理法に不満を抱いていた一般家庭や、食品流通業界においても高く評価され、広範に渡って利用、普及していくものになると予想される。
【符号の説明】
【0031】
1 非加熱調味コンニャク包装食品
2 コンニャク塊
3 調味液
4 密閉容器
40 同 密閉蓋
5 ラベル
(A) コンニャク塊を温水に投入する工程
(B) ボイルする工程
(C) 茹でコンニャク塊を得る工程
(D) 砂糖・ゲル化剤水溶液を造る工程
(E) イカエキス・塩水溶液を造る工程
(F) 調味料を加える工程
(G) 調味液を得る工程
(H) 密閉容器に充填・密閉する工程
(J) 金属探知工程
(K) 重量検査工程
(L) 加熱殺菌工程
(M) X線異物検査工程
(N) ラベル表示工程
(P) 箱詰め工程
(Q) 保管・出荷工程
図1
図2
図3
図4