特許第6363596号(P6363596)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6363596
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】化学パルプ製造方法
(51)【国際特許分類】
   D21C 3/02 20060101AFI20180712BHJP
【FI】
   D21C3/02
【請求項の数】12
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-518791(P2015-518791)
(86)(22)【出願日】2013年6月25日
(65)【公表番号】特表2015-525313(P2015-525313A)
(43)【公表日】2015年9月3日
(86)【国際出願番号】CN2013000757
(87)【国際公開番号】WO2014000420
(87)【国際公開日】20140103
【審査請求日】2016年4月12日
(31)【優先権主張番号】201210209351.4
(32)【優先日】2012年6月25日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】515000786
【氏名又は名称】北京英力生科新材料技▲術▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】尹▲応▼武
(72)【発明者】
【氏名】万▲鵬▼
(72)【発明者】
【氏名】▲喩▼宏貴
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼玉娟
(72)【発明者】
【氏名】▲孫▼▲響▼▲響▼
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼玲燕
【審査官】 弘實 由美子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2001−519486(JP,A)
【文献】 特開昭54−096102(JP,A)
【文献】 特開2001−295188(JP,A)
【文献】 特開昭52−090468(JP,A)
【文献】 特開昭50−000104(JP,A)
【文献】 特開平04−069648(JP,A)
【文献】 特表2004−503683(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21B 1/00− 1/38
D21C 1/00− 11/14
D21D 1/00− 99/00
D21F 1/00− 13/12
D21G 1/00− 9/00
D21H 11/00− 27/42
D21J 1/00− 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプ製造方法であって、
1)繊維および黒液を含む繊維パルプを得るために、硫酸塩と石灰および/またはカーバイドスラグを含む複合アルカリを用いて植物原料を蒸解する工程;
2)解の終了後および/またはパルプ製造中に、黒液の有機高分子を凝集および沈降し、これらを繊維上に吸着し、次いでこれらを分離するために、パルプに硫酸アルミニウムを加える工程、を含み、
前記硫酸塩は、石灰を加えると、カルシウムイオンと反応して、硫酸カルシウム沈殿物を生成する反応性を有する硫酸塩である、パルプ製造方法。
【請求項2】
更に、3)繊維パルプを得るために、植物原料および現行のアルカリ法で用いられているアルカリ、または石灰および/またはカーバイドスラグなどの他の弱アルカリを、パルプ中の不溶性物質を濾過して得られた硫酸含有濾液に加える工程、を含む請求項1に記載のパルプ製造方法。
【請求項3】
パルプ製造方法であって、
1)繊維および黒液を含む繊維パルプを得るために、現行のアルカリまたはクラフト法を用いて植物原料を蒸解する工程;
2)蒸解の終了後および/またはパルプ製造中に、黒液の有機高分子を凝集および沈降し、これらを繊維上に吸着し、次いでこれらを分離するために、パルプに硫酸アルミニウムを加える工程を含むパルプ製造方法。
【請求項4】
更に、3)繊維パルプを得るために、植物原料、硫酸塩および現行のアルカリ法で用いられるアルカリ、または硫酸塩および石灰および/またはカーバイドスラグを含む複合アルカリを、パルプ中の不溶性物質を濾過して得られた硫酸含有濾液に加える工程、を含む請求項3に記載のパルプ製造方法。
【請求項5】
前記現行のアルカリ法において用いられる前記アルカリは、好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、石灰およびカーバイドスラグの水溶液からなる群から選ばれた1種以上である請求項1乃至4のいずれか1項に記載のパルプ製造方法。
【請求項6】
複合アルカリにおける硫酸塩は、硫酸ナトリウムまたは硫酸カリウムである請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のパルプ製造方法。
【請求項7】
工程3)において、石灰および/またはカーバイドスラグを加える場合に、水酸化カルシウムとして算出されるそれらの全添加量は、完全乾燥植物原料の重量を基準にして好ましくは2%以上である請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のパルプ製造方法。
【請求項8】
工程3)において、石灰および/またはカーバイドスラグを加える場合に、水酸化カルシウムとして算出されるそれらの全添加量は、完全乾燥植物原料の重量を基準にして好ましくは5%乃至15%である請求項7に記載のパルプ製造方法。
【請求項9】
工程1)または工程3)において、複合アルカリを用いたパルプ製造のための条件は、
植物原料および複合アルカリを室温または加熱条件下で1乃至100時間浸漬し、次いで得られた生産物を100乃至165℃の範囲の温度で1乃至10時間蒸解し、次いでこれをさらに120乃至165℃の範囲の温度で1乃至4時間蒸解する請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載のパルプ製造方法。
【請求項10】
工程1)または工程3)において、複合アルカリを用いたパルプ製造のための条件は、
植物原料および複合アルカリを室温または加熱条件下で1乃至100時間浸漬し、次いで得られた生産物を80乃至130℃の範囲の温度で1乃至12時間蒸解し、次いでこれをさらに120乃至165℃の範囲の温度で1乃至4時間蒸解する請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載のパルプ製造方法。
【請求項11】
蒸解の終了後および/または完全なパルプの分離前における噴霧,混練、押込工程の最中に硫酸アルミニウムを添加すること;
前記硫酸アルミニウムの添加量は繊維の重量を基準にして0.5乃至50%であること;および/または
前記硫酸アルミニウムは常温乃至100℃の範囲の温度で添加する請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載のパルプ製造方法。
【請求項12】
前記植物原料は、木材、竹、麦、米、コーン、大豆、モロコシ(ソルガム)または綿を含む穀物類の茎などの植物の茎、中国高山イグサ、バガス、葦および/または椰子殻である請求項1乃至請求項11のいずれか1項に記載のパルプ製造方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
本発明の技術は、パルプ製造および製紙および新材料の分野で広く用いることができる生物資源(バイオマス)のさらなる改良と応用分野に関する。
[背景技術]
現在、セルロースは種々の分野で広く用いられており、最も重要な用途には製紙が見られる。紙は国民の生産や生活にとって必要なものである。2012年には、中国における紙や厚紙の生産は1億トンを超え、世界の生産量の23.5%に達し、世界第1位のランクを占めている、紙パルプ産業は、中国の国家経済に貢献する重要な産業の一つとなっており、人類社会の発展にとって、パルプ製造と製紙および新材料産業は大きな発展の可能性を秘めている。
【0002】
現在パルプ製造および製紙産業は、多数のパルプ製造および製紙工場が多大なエネルギー消費と水準以下の汚水排出のために操業停止を余儀なくされている。ここ数年の間環境保護や原料供給およびコスト高のために、中国にけるパルプ工場は縮小されまた低利益となっている。年間能力は3千万トン未満になり、生産されるパルプは主として木材パルプである。さらに、輸入される一次パルプおよびリサイクルパルプは6千万トンを超えている。またさらに、中国ではパルプ製造および製紙産業は、全工業廃棄水中の30%を占める最も有機水を排出する産業となっている。
【0003】
パルプ製造は、化学的、機械的または生物学的方法あるいはそれらの組合わせによって植物性繊維状原料をパルプに分離する製造方法である。異なる蒸解および磨砕方法に従い、異なる生産性、性能、および品質を持った化学パルプ、準化学パルプ、化学―機械パルプ、生物学的パルプを生産することができる。
【0004】
現在では、製紙産業において広く用いられている繊維抽出法は、典型的にはソーダパルプ化法またはクラフトパルプ化法といわれる。アルカリは化学パルプ化法および準化学パルプ化法において最も一般的な化学原料として提示される。木材、または(非木材)の蒸解液の主要成分として、アルカリはリグニンの除去および製紙の主要原料の分離(すなわち植物原料の細胞から繊維を分離)に重要な役割を果たす。従来の蒸解法では、原料から得られるパルプの品質および収率を確保するために、一般に原料の約25%の苛性ソーダおよび硫化ソーダを必要とする。
【0005】
特に現在の一般的なクラフトパルプ製造方法では、大量のアルカリを消費するのみならず、相当量の硫化物やアントラキノンのような添加物が用いられ、その結果、低生産性、繊維パルプの品質劣化、「3つの廃棄物」問題、すなわち後処理の困難性、多額の投資、高コストおよび高エネルギー消費を引き起こす。1トンの繊維パルプを得るために、2乃至3トンの植物原料(純度100%基準で)および0.67乃至0.9トンのアルカリ(純度100%基準で)を必要とする。
【0006】
多量のアルカリの使用は、繊維とリグニンに損傷を与え、原料の多量の消費は、パルプ製造のコストを増加させるのみならず、資源を浪費し黒液の処理や再利用を困難にする。黒液中に含まれるリグニン、溶解性セルロースおよびへミセルロースのような相当量の有用物質は十分利用されず、燃やされるか違法に廃棄される。今日、製紙において、焼却が黒液による汚染に対する実行可能な解決手段であると考えられている。現存する大きなパルプ工場では、濃縮、焼却および苛性化法によりアルカリのリサイクルおよび再使用が行われ、それは黒液による汚染の問題を部分的に解決するが、多くのバイオマス資源を消費し、多額の設備投資、高コスト、多量のエネルギー消費し、二酸化炭素、酸化窒素、二酸化硫黄、ダイオキシンおよびその他の廃ガスを大量に含む廃ガスの発生、リグニン、溶解セルロース、ヘミセルロース、タンパク質などを含む廃水の洗浄、および残留ソーダ、硫化ソーダ、アルミノケイ酸塩のような、炭酸カルシウム主導の大量の石灰汚泥を含む廃棄残渣が生じるなどの問題を生じ、深刻な二次汚染を引き起こす。藁類の黒液のような大量のケイ酸を含む黒液は、濃縮やスケール発生が起こりやすいために操作上好ましくない影響を及ぼす。さらに黒液の濃縮および灰化の全システムは、高額の投資(全投資額の半分以上を計上)、高コストおよび大きなエネルギー消費を含む好ましくない短所を持っている。現在、中国全土においてアルカリパルプ化方法により発生するリグニンは、年間約2千万トンで、その殆ど全てが灰化または廃棄され、そのうちの極僅かが加熱用エネルギーとして利用される。
【0007】
機械パルプ(砕木パルプ)は、主として機械的摩砕法で生産され、高い(含有量の)リグニンおよびその他の組織成分を含んでいる。この方法は、単純な生産方法で、低コスト、高生産性、低公害、優秀な印刷性、良好な平滑性、得られた紙の優れた不透明性などの利点を有するが、摩砕での深刻な繊維片の発生、低いアスペクト比、複雑なパルプ組成、低い繊維形成性、得られた紙の粗末な特性などの欠点もある。機械パルプは、原料として木材を使用するのに単に適している主に機械的な摩砕法により得られる。従って、この方法は、高エネルギー消費量(パルプ1トン当たり1000キロワットアワー以上の電力を消費)、単一の原料、少ない木材原料、高価格、「つまらない用途のために立派な木材を使用する」などの問題点を有し、また高額な設備投資、高頻度のメンナンスのための休止時間および高い補修費用の問題点もある。
【0008】
化学・機械パルプは、化学的、熱的、または機械的方法、またはそれらを組み合わせた方法で繊維原料を分離することにより得られる。アルカリのような化学物質による脱リグニン化のために、繊維離解点は、主として組織内層において生じ、また化学・機械パルプは長繊維の大量含有と短繊維の少量含有、リグニンの大量含有および高い光散乱係数を持っている。化学・機械パルプは、パルプの補完物として、木材の処理における廃棄物質の効果的な利用に関して、パルプ産業における改良と応用についての確実な可能性を持つ。
【0009】
生物パルプ製造はクリーンなパルプ製造法の1つの傾向を示す。しかしながら、生物系統の養成や選択に対する要求、およびパルプ製造法に対する条件は高いので、製造についての大きな変動、難浸透性、原料の不均一処理、長い処理時間、品質の低下、および低生産効率などの多くの問題がある。10年以上の研究を通して、中国においては、幾つかのパルプ製造業者のみが、藁から低品質のパルプを生産し、トン当たりの製造コストで数百中国元の節約が図られた。従って、製造法はさらなる改良を必要としている。
【0010】
植物の十分な改良についての数年間の調査および研究の後に、発明者らは、繊維質原料から高い生産性で効率的に繊維を抽出することができる段階的な環境保全技術、及びリグニンを直接利用できるかまたは抽出して黒液から有機カリ肥料を取得できる技術を一括して開発した。
【0011】
これらの技術は、環境保全技術および生態学的産業の両者における重要な技術的隘路を通して躍進し、また植物の十分な改良を実現した。一方、従来法では直接石灰を利用したパルプ製造法も開発されている。
【0012】
本発明は、上記に正確に基づいて改良された化学的パルプ化法に関する。この方法は、古代中国の4大発明の一つである古来の製紙技術の技術的特性を継承するものであり、我々の早期の研究結果であるアルカリパルプ化に組み合わされるものである。この方法は、パルプ化の効率を著しく高めるのみならず、機械パルプによるパルプ生産量に近接したパルプ生産量を達成するものであり、さらに繊維片の発生を最大限に少なくしまた繊維強度も維持する。
[発明の内容]
長期にわたる実験の結果、発明者らは硫酸塩とカルシウムイオンから低い溶解度で硫酸カルシウムの沈殿物が得られる反応を見出した。繊維スラリーから不溶性物質を濾過して得られた濾液中に、または予め硫酸アルミニウムで処理して得られた前回のバッチの濾液に、石灰を加えて、次ぎに不溶性物質を濾過することで、濾液中に溶解した硫酸ソーダまたは硫酸カリウムを硫酸カルシウムとして沈殿させることができ、また水酸化ソーダまたは水酸化カリウムを生ずることができる。この方法では、遊離水酸基の濃度は単独で添加した水酸化カルシウムと比べて3.5倍の濃度を有する。加熱はアルカリの植物体に対する拡散を促進し、一方においてカルシウムイオンが硫酸基によって連続的に沈殿する間に連続的に消費される。カルシウムイオンの沈殿は水酸化カルシウムの連続的な溶解および水酸基の放出によって効果的に促進される。水酸基は速やかに広がり、平衡への変化を促進するリグニンのような酸性物質によって中和され、さらに強アルカリを弱アルカリで置換、すなわちNAOHまたはKOHを安価な石灰で置換する目的を達成し、パルプ溶液の再利用によって黒液無しで高い効率で高品質のパルプが得られる。
【0013】
この実験は、水酸化カルシウムのみを用いた蒸解実験に比べて、前記方法は浸漬および蒸解の時間を大幅に短縮するのみならず、繊維の生産性および品質を著しく高めることを示す。このようにして得られた繊維は、現行のアルカリおよびクラフト法によって得られた繊維と類似の特性を持ち、それはアルカリの代わりに石灰と硫酸塩を組合わせて用いたクリーンなパルプ製造法の実行可能性を立証する。
【0014】
さらなる研究により硫酸アルミニウムを、上記のパルプ化用黒液、または黒液と現行のクラフトおよびアルカリパルプ化法の蒸解の終了後に得られた繊維との混合物に添加することができ、さらに黒液中のリグニンのように効果的な含有物として利用することが見出されている。パルプ化法における叩解と磨砕後、リグニンのような有効な含有物が均一に繊維表面に吸着され繊維パルプを形成する。この目的のために、機械パルプの生産量に近接したパルプ生産量を達成するのみならず、化学パルプの品質や強度を維持することができる。他方では、黒液中の有効な含有物が再利用できるのみならず、黒液による汚染を無くすることもできる。
【0015】
硫酸アルミニウム自体は,製紙においてAKDまたは松脂と組み合わせて使用される無機添加物であり、紙製品の疎水性を向上させるのみならず紙の密度と強度を改善するので、紙の耐水性を向上させることができる。硫酸アルミニウムとpH9−10の黒液は容易に重合体中に凝集させることができ、その間では黒液中のリグニンは、リグニンのアルミニウム塩として析出する。そこではアルミニウムイオンは、「三角鋲」として機能し、リグニンのような植物含有物と共にメッシュ構造を形成し、それにより紙製品の強度を向上させ、かつリグニンの耐水性が紙製品の耐水性を改善する。
【0016】
硫酸アルミニウムの助けにより、大部分の有機化合物を繊維の表面に吸着させることができ、黒液のCODの単独移動率は60%以上に上昇し、かつ溶解性硫酸塩および他の残留物が溶液中に残留する。本発明による複合アルカリは、石灰および/または炭化カルシウムスラグおよび硫酸塩または硫酸塩含有溶液を言う。硫酸塩は好ましくは水溶性硫酸ソーダおよび/または硫酸カリウムである。その中で、硫酸塩含有溶液は、好ましくは、硫酸アルミニウムを用いて、黒液中の有機高分子を沈殿させ、その後、不溶性物質を濾出させて得られた硫酸塩含有濾液である。
【0017】
これらの実験を通して、例えば硫酸アルミニウムの架橋、錯化および凝集などの作用を経て繊維の表面に吸着されたリグニンのような有機化合物は、耐水性および繊維の相互吸着性を増加させ、得られた硫酸カルシウムおよび繊維の共析を生じさせて望ましい成果で有機―無機の複合体を得るのみならず、パルプ製造において生ずる黒液の再利用を実現し、低いコストでかつ黒液を生ずることなく、繊維パルプを大規模生することが可能となる。本発明は、製紙、繊維性複合体、化学肥料の制御分離物質、防火材料およびその他の新材料の分野で広く用いることができる。
【0018】
パルプ製造法を提供するための本発明の一態様は以下の工程を含む:
1)繊維および黒液を含む繊維パルプを得るために、硫酸塩と石灰および/またはカーバイドスラグを含む複合アルカリを用いて植物原料を蒸解する工程;
2)任意で、蒸解の終了後および/またはパルプ製造中に、黒液の有機高分子を凝集および沈降し、こられを繊維上に吸着し、次いでこれらを分離するために、パルプに硫酸アルミニウムを加える工程;および/または、
3)任意で、繊維パルプを得るために、植物原料および現在のアルカリ法で用いられているアルカリ、または石灰および/または炭酸カルシウムなどの他の弱アルカリを、パルプ中の不溶性物質を濾過して得られた硫酸含有濾液に加える工程。
【0019】
ここで、工程2)および工程3)は任意で実施される。
一実施形態では、本発明によるパルプ製造法は工程1)を含む。
別の実施形態では、本発明によるパルプ製造法は工程1)および2)、または工程1)および3)を含む。
【0020】
さらに別の実施形態実施例では、本発明によるパルプ製造法は工程1)、2)および3)を含む。
パルプ製造法を提供するための本発明の別の態様は以下の工程を含む:
1)繊維および黒液を含む繊維パルプを得るために、現行のアルカリまたはクラフト法を用いて植物原料を蒸解する工程;
2)任意で、蒸解の終了後および/またはパルプ製造中に、黒液の有機高分子を凝集および沈降し、こららを繊維上に吸着し、次いでこららを分離するために、パルプに硫酸アルミニウムを加える工程;および/または、
3)任意で、繊維パルプを得るために、植物原料、硫酸塩および現行のアルカリ法で用いられるアルカリ、または硫酸塩および石灰および/またはカーバイドスラグを含む複合アルカリを、パルプ中の不溶性物質を濾過して得られた硫酸含有濾液に加える工程。
【0021】
一実施形態では、本発明に依るパルプ製造法は工程1)および2)、または工程1)および3)を含む。
別の実施形態では、本発明に依るパルプ製造法は工程1)、2)および3)からなる。
【0022】
一実施形態では、本発明によるパルプ製造法は以下の工程を含む:
1)硫酸塩および石灰および/またはカーバイドスラグを用いるか、または現行のアルカリ法またはクラフト法を用いて、繊維性原料を蒸解する工程;
好ましくは、品質上の異なる要求に従って、加えられる複合アルカリの全重量は2%以上とする。
【0023】
複合アルカリを用いたパルプ製造のための条件は、植物原料および複合アルカリを室温または加熱状態で1乃至100時間を浸漬し、次いで得られた生産物を1乃至10時間、100乃至165℃の温度で蒸解し、好ましくは前記生産物を1乃至12時間、80乃至130℃で蒸解し、次いでこれをさらに1乃至4時間、120乃至165℃で蒸解する。
2)蒸解の終了後および/またはパルプ製造中に、繊維と黒液の混合物に対して、黒液の有機高分子を凝集および沈降し、これらを繊維上へ吸着するために、アルミニウム硫酸塩を添加する工程;
3)濾液中に残留する水に沈降または溶解しない有機物と共に、複合繊維状パルプ製品を得るために、上記のパルプと黒液の混合物を濾過し、分離する工程;
4)アルカリの再生:石灰またはカルシウムカーバイドスラグなどの弱アルカリを上記の濾液または硫酸塩水溶液中に加える工程、すなわち、複合アルカリを準備し、かつこれをパルプ製造蒸解し、さらに蒸解の終了後、繊維と大部分のリグニン固形物を分離するために硫酸アルミニウムを添加し、さらに次の一群の材料を蒸解するために最終濾液を利用する工程。
【0024】
好ましくは、濾液は利用できなくなるまで、または再利用できなくなるまで、即ち硫酸アルミニウムを使用しても濾過されなくなり、生物肥料原料のように他の目的に使用を見つけるまで利用される。
【0025】
本発明では、植物原料は、木材、竹、麦、米、コーン、大豆、モロコシ(ソルガム)または綿を含む穀物類の茎などの植物の茎、中国高山イグサ、バガス、葦および/または椰子殻である。
【0026】
本発明で述べられる現行のアルカリ法で用いられるアルカリは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、石灰およびカーバイドスラグの水溶液からなる群から選ばれた1種以上である。
【0027】
蒸解の終了後、または完全にパルプが分離される前の噴射、混練、押込または精製の工程中に、硫酸アルミニウムを加えることができる。
硫酸アルミニウムは、硫酸アルミニウム溶液または直接固体の硫酸アルミニウムによって加えることができる。
【0028】
硫酸アルミニウムは、繊維の0.5乃至50%の重量で加えられ、かつ溶液のpHが7を超えないようにして加えられることが好ましい。
硫酸アルミニウムは常温から100℃の範囲で加えることができる。
【0029】
濾液の再利用に際して、濾液に加えられる弱アルカリは、石灰および/またはカーバイドスラグのような硫酸基と反応して析出物を生ずることができる化学物質であり、加えられる石灰および/またはカーバイドスラグの添加量は、水酸化カルシウムとして計算して、完全乾燥植物原料(すなわち水分除去後の)の重量を基準に、約2%を超えて、好ましくは5乃至15%である。
【0030】
濾液の再利用に際しては、濾液中の硫酸基の含有量に従って、反応で生ずるアルカリが蒸解に必要とされるアルカリ量に適合するように、硫酸塩を補充することができる。
本発明による方法は、以下の利点を有する。
1.硫酸アルミニウムの析出特性の効力によって、本方法はリグニン、ヘミセルロースおよび溶解性繊維を黒液中に再循環させ、かつこれらをスラリーの一部として直接繊維上に吸着し、これによって機械パルプの生産性に近い生産性を有し、かつ化学パルプの繊維品質および紙強度が確保される。本方法によれば、繊維品質が保たれるだけでなく、繊維の生産性も86.5%以上まで改善される。
2.本方法は、2つの化学平衡を用いる、即ち蒸解に必要な強アルカリを作成するために硫酸塩および弱アルカリを用いること、および高価なNaOHおよびKOHの代わりに廉価な石灰を用いることである。
3.本特許は、パルプ製造での水循環と汚水のゼロ廃棄を達成することができ、操作も簡単である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明をさらに以下の実施例を用いて説明する。しかし本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例1]
比較実験:
42重量%の水分を含む431gの竹、25gのNaOH、および895gの水を蒸解装置に加えた。105℃で90分間浸漬した後、混合物を125℃に加熱し、同温度で150分蒸解した。蒸解が終了した後、得られた混合物を固液分離し、次に蒸解された竹を叩解し、ふるいにかけ、製紙し、それによってSRo40で、69.6%の収率でパルプを取得し、そして、80gの紙秤量、22.7の測定白色度、3.26kPam/gの比破裂強さ、51回の耐折り度数、28.3Nm/gの比引張強さ、17.2mNm/gの比引裂強さ、83900の黒液のCOD、8.5重量%の固体含有量、および10.46のpH値である紙を生産した。
【0032】
[実施例2]
黒液を硫酸アルミニウムで処理する効果についての実験:
42重量%の水分を含む431gの竹、25gのNaOH、および895gの水を蒸解装置に加えた。105℃で90分間浸漬した後、混合物を125℃に加熱し、同温度で150分蒸解した。蒸解が終了した後、14kgの水および8.8gの硫酸アルミニウムを、凝集反応および吸着のために添加しながら、得られた混合物に叩解を施すためにビーター(叩解装置)に加えた。次に、得られた混合物は、パルプを生産するために表面に吸着させるリグニンなどの有機物質で濾過し、それによってSRo40で、74.7%の収率でパルプを得た。そして、重量80gの紙秤量、21.8の測定白色度、3.60kPam/gの比破裂強さ、55回の耐折り度数、29.2Nm/gの比引張強さ、19.0mNm/gの比引裂強さ、72300の黒液COD、7.8重量%の固体含有量、および7.20のpH値である紙を生産した。
【0033】
[実施例3]
濾液の再利用および複合アルカリの蒸解についての実験:
250gの竹(100%の純度基準で)に、硫酸アルミニウムで処理された黒液を希釈して得られた975gの濾液(CODは2750)、25.0gの水酸化カルシウムおよび44.8gの付加的な硫酸ナトリウムを加え、その結果、硫酸基はカルシウムイオンと同じ分子量を持ち、また一方、この溶液はpH13.32であり、pH12.82の飽和水酸化カルシウムの濃度と比較すると、硫酸基の濃度は3.2倍まで増加する。次に、得られた混合液は、95℃で12時間浸漬し、蒸解した後165℃で3.5時間ブローした。得られた繊維は、叩解を施し、製紙し、それによって83.5%の収率で、SRo40を持ったパルプを得た。そして、80gの紙坪量、163の測定カッパ数、20.6の測定白色度、2.45kPam/gの比破裂強さ、64回の耐折り数、29.0Nm/gの比引張強さ、14.2mNm/gの比引裂強さ、60100の黒液のCOD、およびpH9.94のpH値を有する紙を生産した。
【0034】
[実施例4]
複合アルカリでの蒸解液再循環の効果についての実験
250gの竹(100%の純度基準で)に、水酸化カルシウムで処理された上記黒液に26.6gの硫酸アルミニウムを加えて得られた933gの濾液(CODは25200)、および25.0gの水酸化カルシウムを加えた。次いで、得られた混合物を12時間95℃で浸漬し、3,5時間165℃で蒸解後ブローした。得られた繊維に叩解を施して、製紙を行い、それによって85.0%の収率で、叩解度SR40を持ったパルプを得た。そして、80gの紙坪量、164の測定カッパー数、19.6の測定白色度、2.39kPam/gの比破裂強度、54回の耐折り数、26.9Nm/gの比引張強さ、15.1mNm/gの比引裂強度、80400の黒液CODおよび9.82のpH値を有する紙を生産した。
【0035】
[実施例5]
複合アルカリの効果についての実験
250gの竹(100%の純度基準で)に、1033gの水、25.5gの水酸化カルシウム、47.9gの硫酸ナトリウムを加えた。次いで得られた混合物を12時間95℃で浸漬し、3.5時間165℃で蒸解後ブローした。得られた繊維に叩解を施して製紙を行い、それによってて84.4%の収率で、叩解度SR40を持ったパルプを得た。そして、80gの紙坪量、159の測定カッパー数、19.9の白色度、2.41kPam/gの比破裂強度、50回の折耐折り数、27.3Nm/gの比引張強さ、16.2mNm/gの比引裂強度、63500の黒液CODおよび10.05のpH値を有する紙を生産した。
【0036】
[実施例6]
強アルカリで処理した木材黒液の沈殿の効果についての実験
500gの松(100%の純度基準で)をNaOH溶液(100gのNaOHおよび2000mlの水からなる)中で12時間60℃で浸漬した。パルプは3.5時間165℃蒸解した後、叩解した。凝集および吸着のために35.5gの硫酸アルミニウムを叩解装置に加えた。次いで、得られた混合物を洗浄し濾過し、それによって75.6%の収率で繊維を得た。このようにして得られたパルプを標準的な繊維分離装置で分離した後、製紙を行い、それによって80gの紙坪量、23.0の測定白色度、2.9kPam/gの比破裂強さ、56回の折耐折り数、45.8Nm/gの比引張強さ、15.2Nm/gの比引裂強さを有する紙を生産した。
【0037】
[実施例7]
I 製造比較実験
25mの回転式球状蒸解装置内に、5.8トンの竹(100%の純度基準で)、24袋のNaOH(100%の純度基準で600kg)および10mの水を加えた。次いでその混合物を105℃に加熱し、同温度で1.5時間維持し、次いで125℃に加熱してさらに2.5時間維持した。得られたパルプを空気でブローし、それによって67%の収率で、11280ppmの黒液のCOD、重量で11.7%の固体含有、10.37のpH値のパルプを得た。次いでブローされたパルプは、SR40で叩解と洗浄をした。さらに、このようにして得られたパルプを標準的な繊維分離装置で分離した後、製紙を行い、80gの紙坪量、22.8の測定白色度、3.915kPam/gの比破裂強さ、46回の折耐折り数、32.3Nm/gの比引張強さ、15.8Nm/gの比引裂強さを有する紙を生産した。
【0038】
[実施例8]
II 硫酸アルミニウム添加の製造実験
比較実験の条件に従って、5.8トンの竹(100%の純度基準で)、24袋のNaOH(100%の純度基準で600kg)および10mの水を25mの回転式球状蒸解装置内に加えた。次いでその混合物を105℃に加熱し、同温度で1.5時間維持し、次いで165℃に加熱してさらに3.5時間維持した。回転式球状蒸解装置内に、沈降と吸着のために40%の濃度を有する0.78tの硫酸アルミニウム溶液を添加し、次いで83300ppmのCODを有する8mの黒液を得るために、ブローと混練を行い、それによって73%の収率で、重量で8.28%の固体含有量、7.26のpH値、および1.60%のSO−2を含有するパルプを得た。次いでブローされたパルプはSR40で叩解と洗浄を行った。次いで、このようにして得られたパルプを標準的な繊維分離装置で分離した後、製紙を行い、80gの紙坪量、22.8の測定白色度、3.18kPam/gの比破裂強さ、42回の折耐折り数、29.8Nm/gの比引張強さ、17.4Nm/gの比引裂強さを有する紙を生産した。
【0039】
[実施例9]
複合アルカリ濾液の再利用による竹原料の蒸解の製造実験
実施例8で得られた濾液8m中に850kgの硫酸ナトリウム、550kgの石灰および2mの水を加え、得られた混合物を均一に混合した。次いで、均一の混合物を、加えられた5.8トンの竹(100%の純度基準で)とともにポンプで25mの回転式球状蒸解装置に入れた。次いで、混合物を105℃に加熱し、同温度で15時間維持し、さらに165℃に加熱して同温度で3.5時間維持した。回転式球状蒸解装置内に、沈降と吸着のために40%の濃度を有する0.78tの硫酸アルミニウム溶液を添加し、次いで81900ppmのCODを有する8.1mの黒液を得るために、ブローと混練を行い、それによって79.4%の収率で、重量で7.78%の固体含有量、7.36のpH値、および1.80%のSO−2を含有するパルプを得た。次いでブローされたパルプはSR40で叩解と洗浄を行った。次いで、このようにして得られたパルプを標準的な繊維分離装置で分離した後、製紙を行い、80gの紙坪量、22.1の測定白色度、2.43kPam/gの比破裂強さ、38回の折耐折り数、27.5Nm/gの比引張強さ、15.8Nm/gの比引裂強さを有する紙を生産した。
【0040】
[実施例10]
蒸解し沈殿した木材原料の製造実験
500gの松(100%の純度基準で)をNaOH溶液(100gのNaOHおよび2000mlの水からなる)中で12時間60℃で浸漬した。パルプを3.5時間165℃で蒸解した後、叩解した。38.5gの硫酸アルミニウムを、沈降および吸着するために叩解装置に加えた。次いで、得られた混合物を洗浄し濾過し、それによって75.6%の収率で繊維を得た。このようにして得られたパルプを標準的な繊維分離装置で分離した後、製紙を行い、それによって80gの紙坪量、23.0の測定白色度、2.9kPam/gの比破裂強さ、56回の折耐折り数、45.8Nm/gの比引張強さ、15.2Nm/gの比引裂強さを有する紙を生産した。