(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記反応から生じる生成物の分離が、塩化水素流を取り出すことを可能にする第一の分離、続いて塩素流を回収することを可能にする第二の分離、続いてジフルオロメタン流を取り出すことを可能にする第三の分離を連続的に含む、請求項1から6の何れか一項に記載の方法。
撹拌子及びスタティックミキサーを用いた、及び/又は、不活性ガスと、前記反応物質及び/若しくは前記反応生成物の混合することによる、前記触媒反応器中の溶媒と前記五塩化アンチモンの混合を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
更に、クロロフルオロメタンの製造を任意に含み、ジフルオロメタンの製造及びもし充当するならばクロロフルオロメタンの製造が、0.5から10mol/h/Lである、請求項1から13の何れか一項に記載の方法。
前記反応から生じる生成物を分離するための前記装置の機材(7、10、13、16)から生じる反応物質及び副生成物を回収し、前記触媒反応器(5)に供給するためのパイプ(18)を含む、請求項16から18の何れか一項に記載の設備。
第三の分離ユニット(16)の出口が、ジフルオロメタンを取り出すためのパイプ(17)、並びに、反応物質及び副生成物を回収するためのパイプ(18)に接続される、請求項20に記載の設備。
前記触媒反応器(5)と、前記反応から生じる生成物を取り出すためのパイプ(6)を経て供給され、前記触媒反応器(5)に供給する前記触媒をリサイクルするための管(8)に出口が接続される前記第一の分離ユニット(10)との間に、予備分離ユニット(7)を含む、請求項20に記載の設備。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、第一に、液相中、塩素の存在下、一般式X
+A
−の有機塩[式中、A
−は、ハロゲン化物又はヘキサフルオロアンチモン酸アニオンであり、X
+は、第四級アンモニウム、第四級ホスホニウム又は第三級スルホニウムカチオンである]と五塩化アンチモンの反応の生成物からなるイオン性液体触媒の存在下でのフッ化水素とジクロロメタンの触媒反応を含むジフルオロメタンの製造のための方法に関する。
【0009】
一実施態様によれば、カチオンX
+は、テトラアルキルアンモニウム、トリアルキルアンモニウム、アルキルピリジニウム、ジアルキルイミダゾリウム又はトリアルキルイミダゾリウムカチオン、好ましくは、トリメチルスルホニウム、N−エチルピリジニウム、N−ブチルピリジニウム、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム又は1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムカチオンであり、触媒は、好ましくは、塩化1-エチル-3-メチルイミダゾリウムと五塩化アンチモンの反応の生成物である。
【0010】
一実施態様によれば、方法は、反応から生じる生成物の分離を含み、
−ジフルオロメタン流の取り出し、
−塩素流の回収及び触媒反応への後者のリサイクル
を可能にする。
【0011】
一実施態様によれば、塩素流は、塩素及びジフルオロメタンの混合物を含み、好ましくは、7.5体積%未満の塩素含有量を含む。
【0012】
一実施態様によれば、反応から生じる生成物の分離は、反応物質及び副生成物流の回収並びに触媒反応へのそのリサイクルも可能にする。
【0013】
一実施態様によれば、反応から生じる生成物の分離は、塩化水素流を取り出すことを可能にする第一の分離、続いて塩素流を回収することを可能にする第二の分離、続いてジフルオロメタン流を取り出すこと及び好ましくは反応物質及び副生成物流を回収することを可能にする第三の分離を連続的に含み、これらの分離のそれぞれは、好ましくは蒸留である。
【0014】
一実施態様によれば、該方法は、第一の分離の前に、触媒流の回収及び触媒反応段階への後者のリサイクルも含む予備分離を含む。
【0015】
一実施態様によれば、該方法は、
−触媒反応器への溶媒の注入、
−一般式X
+A
−の有機塩[式中、A
−は、ハロゲン化物又はヘキサフルオロアンチモン酸アニオンであり、X
+は、第四級アンモニウム、第四級ホスホニウム又は第三級スルホニウムカチオンである]の溶媒への溶解、
−触媒反応器への五塩化アンチモンの注入
を含む、触媒反応器を充填する予備段階を含む。
【0016】
一実施態様によれば、五塩化アンチモンは、触媒反応器のヘッドスペースに注入され、あるいは、充填段階は、好ましくは撹拌子、静的ミキサー利用し、及び/又は不活性ガスと反応物質及び/若しくは反応生成物とを混合することによる五塩化物と触媒反応器中の溶媒との混合を含む。
【0017】
一実施態様によれば、溶媒はジクロロメタンである。
【0018】
一実施態様によれば、五塩化アンチモンは、触媒反応器に、0.1から10トン/h、好ましくは0.1から1トン/h、理想的にはおよそ0.5トン/hの流速で注入される。
【0019】
一実施態様によれば、方法は、更に、クロロフルオロメタンの製造を任意に含み、ジフルオロメタン及び適切ならばクロロフルオロメタンの製造は、0.5から10mol/h/L、好ましくは1から5mol/h/Lである。
【0020】
一実施態様によれば、方法は、製造されたジフルオロメタン流の、98%以上、好ましくは99%以上、より特に好ましくは99.9%以上の純度での収集を含む。
【0021】
本発明は、
−塩素の存在下でフッ化水素とジクロロメタンの液相中における触媒反応を行うのに好適な触媒反応器であって、一般式X
+A
−の有機塩[式中、A
−は、ハロゲン化物又はヘキサフルオロアンチモン酸アニオンであり、X
+は、第四級アンモニウム、第四級ホスホニウム又は第三級スルホニウムカチオンである]と五塩化アンチモンの反応の生成物からなるイオン性液体触媒を含有する触媒反応器、
−触媒反応器に供給するジクロロメタンを導入するためのパイプ、及び
−該反応から生じる生成物を取り出すために、触媒反応器の出口に接続されるパイプ
を含むジフルオロメタンの製造のための設備にも関する。
【0022】
一実施態様によれば、カチオンX
+は、テトラアルキルアンモニウム、トリアルキルアンモニウム、アルキルピリジニウム、ジアルキルイミダゾリウム又はトリアルキルイミダゾリウムカチオン、好ましくは、トリメチルスルホニウム、N−エチルピリジニウム、N−ブチルピリジニウム、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム又は1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムカチオンであり、触媒は、好ましくは、五塩化アンチモンと塩化1-エチル-3-メチルイミダゾリウムとの反応の生成物である。
【0023】
一実施態様によれば、設備は、
−反応から生じる生成物を取り出すためのパイプによって供給される反応から生じる生成物を分離するための装置の機材、
−反応から生じる生成物を分離するための装置の機材から生じるジフルオロメタンを取り出すためのパイプ、
−反応から生じる生成物を分離するための装置の機材から生じる塩素をリサイクルし、触媒反応器に供給するためのパイプ
を含む。
【0024】
一実施態様によれば、設備は、反応から生じる生成物を分離し、触媒反応器に供給するための装置の機材から生じる反応物質及び副生成物を回収するためのパイプを含む。
【0025】
一実施態様によれば、反応から生じる生成物を分離するための装置の機材は、ユニットの出口で塩化水素を取り出すためのパイプに接続される第一の分離ユニットと、該第一の分離ユニットを経由して供給され、ユニットの出口で塩素を回収するためのパイプに接続される第二の分離ユニットと、該第二の分離ユニットを経由して供給され、ユニットの出口でジフルオロメタンを取り出すためのパイプに接続され、好ましくは該出口で反応物質及び副生成物を回収するためのパイプにも接続される第三の分離ユニットとを含み、好ましくは、前記第一、第二及び第三の分離ユニットは、蒸留カラムである。
【0026】
一実施態様によれば、設備は、触媒反応器と、反応から生じる生成物を取り出すためのパイプを経て供給され、ユニットの出口で触媒反応器に供給する触媒をリサイクルするための管に接続される第一の分離ユニットとの間に予備分離ユニットを含む。
【0027】
一実施態様によれば、触媒反応器は金属製であり、好ましくは加熱ジャケットを備えられ、及び/又は反応から生じる生成物を分離するための装置の機材は金属製である。
【0028】
一実施態様によれば、設備は、五塩化アンチモンと溶媒を触媒反応器に、好ましくは後者のヘッドスペースに注入するための手段を含む。
【0029】
一実施態様によれば、触媒反応器に、五塩化アンチモン及び溶媒を混合するための手段が備えられ、好ましくは、撹拌器及びスタティックミキサー、並びに不活性ガスにより反応物質及び/又は反応生成物を混合するための手段から選択される。
【0030】
本発明は、最新技術の不利点を克服することを可能にする。本発明は、より詳細には、収率の改善及び選択性の改善を呈するジフルオロメタンの製造のための新規方法を提供する。
【0031】
更に、この方法において、腐食作用は制御されており、方法のスキームはごく単純である。取得された生成物は、高純度を呈する。取得された生産性、及び触媒の寿命も高い。
【0032】
このことは、F−30のフッ素化を実施することの効果により遂行され、一般式X
+A
−の有機塩[式中、A
−は、ハロゲン化物又はヘキサフルオロアンチモン酸アニオンであり、X
+は、第四級アンモニウム、第四級ホスホニウム又は第三級スルホニウムカチオンである]と五塩化アンチモンの反応の生成物からなるイオン性液体触媒を用いて液相中(塩素の存在下)におけるフッ化水素によりF−32を得る。
【0033】
もし上記触媒の使用が、F−32を得るためのF−30のフッ素化の最新技術において提供されている別のイオン性液体、すなわちEmim−Clとクロロテトラフルオロアンチモン(SbF
4Cl)との反応により得られた触媒と比較されるならば、収率及び選択性が本発明によって改善することが分かる(特に以下の実施例7を国際公開第01/81353号の実施例26と比較)。
【0034】
もし上記触媒の使用が、SbCl
5単独の使用(例えば、国際公開第99/25670号において教示される)と比較されるならば、本発明は、腐食を低減させることも可能にすることが分かる(以下の実施例10を参照)。
【0035】
上記の目的に加えて、本発明は、塩素の存在下、液相中におけるジクロロメタンとフッ化水素との触媒反応に好適な触媒反応器を充填するための方法であって、
−触媒反応器への溶媒の注入、
−一般式X
+A
−の有機塩[式中、A
−は、ハロゲン化物又はヘキサフルオロアンチモン酸アニオンであり、X
+は、第四級アンモニウム、第四級ホスホニウム又は第三級スルホニウムカチオンである]の溶媒への溶解、
−触媒反応器のヘッドスペースへの五塩化アンチモンの注入、あるいは触媒反応器への五塩化アンチモンの注入、並びにこれと触媒反応器中の溶媒との、好ましくは撹拌器及びスタティックミキサーを用いて、及び/又は不活性ガスを用いて、反応物質及び/又は反応生成物の混合
を含む方法に関する。
【0036】
触媒反応器を充填するためのこの方法の一実施態様によれば、カチオンX
+は、テトラアルキルアンモニウム、トリアルキルアンモニウム、アルキルピリジニウム、ジアルキルイミダゾリウム又はトリアルキルイミダゾリウムカチオン、好ましくは、トリメチルスルホニウム、N−エチルピリジニウム、N−ブチルピリジニウム、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム又は1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムカチオンであり、有機塩は、好ましくは塩化1-エチル-3-メチルイミダゾリウムである。
【0037】
一実施態様によれば、溶媒はジクロロメタンである。
【0038】
一実施態様によれば、工業的規模の五塩化アンチモンは、0.1から10トン/h、好ましくは0.1から1トン/h、理想的にはおよそ0.5トン/hの流速で注入される。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明は、この後の記述において、更に詳細に暗黙の限定なしに記述される。
【0041】
別段の言及がない限り、以下で指示されているすべての百分率は、重量百分率である。
【0042】
本発明は、F−32を得るための、液相中、塩素及び触媒の存在下での、フッ化水素によるF−30のフッ素化を提供する。
【0043】
触媒の記述に関しては、第一に国際公開第01/81353号を参照してよい。
【0044】
この触媒は、中程度の温度(好ましくは120℃未満)の範囲内、大気圧では液体であり、非水系非プロトン性イオン化合物である。五塩化アンチモン(SbCl
5)であるハロゲン化ルイス酸と、一般式X
+A
−の塩[式中、A
−は、ハロゲン化物(臭化物、ヨウ化物、好ましくは塩化物又はフッ化物)又はヘキサフルオロアンチモン酸(SbF
6−)アニオンを表し、X
+は、第四級アンモニウム、第四級ホスホニウム又は第三級スルホニウムカチオンを表す]との反応により得られる。
【0045】
X
+A
−塩において、X
+カチオンは、下記の一般式:
R
1R
2R
3R
4N
+
R
1R
2R
3R
4P
+
R
1R
2R
3S
+
の一つに対応し得、ここで、R
1からR
4の符号は、同一であるか又は異なっており、それぞれ、1から10個までの炭素原子を有する飽和又は不飽和、環式若しくは非環式、又は芳香族のヒドロカルビル、クロロヒドロカルビル、フルオロヒドロカルビル、クロロフルオロヒドロカルビル又はフルオロカルビル基を表し、これらの基の一又は複数が、N、P、S又はO等の一又は複数のヘテロ原子を含むことも可能である。
【0046】
アンモニウム、ホスホニウム又はスルホニウムカチオンX
+は、1から3個までの窒素、リン又は硫黄原子を有する飽和若しくは不飽和、又は芳香族のヘテロ環の一部を形成し得、下記の一般式:
[式中、R
1及びR
2は、上記で定義された通りである]
の何れか一つに対応し得る。
【0047】
式中に二又は三つのアンモニウム、ホスホニウム又はスルホニウム部位を含む塩を使用してもよい。
【0048】
X
+A
−塩の例として、塩化及びフッ化テトラアルキルアンモニウム、塩化及びフッ化テトラアルキルホスホニウム、塩化及びフッ化トリアルキルスルホニウム、塩化及びフッ化アルキルピリジニウム、塩化、フッ化及び臭化ジアルキルイミダゾリウム並びに塩化及びフッ化トリアルキルイミダゾリウムを言及され得る。フッ化又は塩化トリメチルスルホニウム、塩化又はフッ化N−エチルピリジニウム、塩化又はフッ化N−ブチルピリジニウム、塩化又はフッ化1-エチル-3-メチルイミダゾリウム、並びに塩化又はフッ化1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムが、より特に高く評価されている。好ましい塩は、Emim−Clと表される塩化1-エチル-3-メチルイミダゾリウムである。
【0049】
本発明によるイオン性液体は、ハロゲン化又はオキシハロゲン化ルイス酸及び有機塩X
+A
−を、0.5:1から3.5:1、好ましくは1:1から2.5:1、より好ましくは1:1から2:1の範囲であり得るモル比で適切に混合することにより調製され得る。厳密に1:1より大きいモル比は、酸性イオン性液体を得ることが望ましいならば、特に推奨される。
【0050】
混合は、反応の発熱性を限定するために任意に冷却されたオートクレーブ型の反応器内で行われ得る。反応物質の一方を他方に連続的に添加することにより、この発熱性を制御することも可能である。ルイス酸/有機塩モル比が1:1より大きい場合、固体が完全に溶解するまで反応混合物を加熱することが有用であることが判明し得る。
【0051】
反応物質及び取得されるイオン性液体は概して吸湿性であるため、合成は、有利には空気及び水を除いて行われる。溶媒は上記イオン性液体の調製に使用される。それは、有利にはF−30である。
【0052】
有利には、混合は、F−30からF−32への変換を行うために使用される触媒反応器内で行われる。
【0053】
更に、反応物質を混合する形態は、取得されるイオン性液体の性能のために重要であることが分かっている。有利には、混合は、(1)有機塩を溶媒、好ましくはF−30に溶解すること、及び(2)五塩化アンチモンを反応器のヘッドスペース内、換言すると溶液の上に徐々に添加することによって行われる。
【0054】
SbCl
5の密度は、2.36g/cm
3であり、ルイス酸溶液の密度より大きい(本発明の文脈において使用されるEmim−Cl/F−30溶液の典型的な密度は、およそ1.3g/cm
3である−1:1の重量比に対して)。
【0055】
SbCl
5を、反応器のヘッドスペース内、換言すると溶液の上に導入すると、SbCl
5は反応器の底部に向かって落下し、Emim−Cl溶液との最大接触を確実にする。封管付きの反応器の底部への注入は、そのような最大接触を保証するものではなく、SbCl
5は反応器の底部に向かって留まる傾向がある。これは、Emimの塩素化副反応、従って、アンチモンの一部の+3の酸化状態(SbCl
3形態)への還元をもたらし、これは触媒に有害である。
【0056】
結果として、反応器のヘッドスペースへのSbCl
5の導入は、所望の生成物の出現を促す。フッ素化反応器は概して混合手段を含まず、この事例において、SbCl
5の導入の形態は重大な性質を有し得ることを強調するべきである。
【0057】
あるいは、媒質の均質性を確実にすることを可能にする特異的方法:媒質と、不活性ガス、反応物質及び/又は反応生成物との混合、撹拌器の使用又はスタティックミキサーの使用も可能である。これらの状況において、SbCl
5を、反応器の任意の水平面に、例えば反応器の底部に導入することが可能である。
【0058】
好ましくは、本発明は、撹拌の非存在下における反応器の底部を経る触媒の充填を除外する。
【0059】
図1を参照すると、本発明による設備は、F−32を得るためにF−30のフッ素化用の反応を行うための触媒反応器5を含む。上述したイオン性液体触媒は、この反応器内で製造してもよいし、又は任意に、別の反応器内で別個に製造してもよい。
【0060】
触媒反応器5は、好ましくは、ジクロロメタンを導入するためのパイプ2、塩素を導入するためのパイプ1及びフッ化水素を導入するためのパイプ1を介して供給される。加熱手段4は、反応物質を、触媒反応器5内へのそれらの到着前に予熱するために、好ましくは設けられている。
【0061】
上述の導入パイプは、触媒反応器5に別個に供給してもよく、又は、後者を反応物質の混合物として供給するために、触媒反応器5の上流で一緒に接続されていてもよい。一実施態様によれば、塩素流をF−30流と混合し、次いで、この混合物を今度はフッ化水素流と混合する。
【0062】
触媒反応器5は、好ましくは金属反応器である。これは、最新技術及び特に国際公開第99/25670号において直面した一般に使用される過剰なフッ化水素の結果としての腐食の問題が、本発明の事例では、触媒として上述した通りのイオン性液体の使用の結果として発生しないからである。
【0063】
反応器の金属は、好ましくはステンレス鋼316Lであってもよい。しかし、スーパーオーステナイトステンレス鋼、又は不動化可能なニッケル基合金等の他の材料を用いられ得る。例として、C22、純モリブデン、H242(25%Mo、2%Fe、8%Cr、残りNi)又は3033(31%Ni、33%Cr、33%Fe、1.6%Mo)を言及され得る。
【0064】
同じ理由で、設備の他の装置の機材のすべて、特に分離カラム又は蒸留カラムのすべてが、金属製であり得る。
【0065】
触媒反応器5は、上流の加熱手段4と組み合わされて、反応混合物を所望の温度にすることを可能にする加熱ジャケット又は内部コイルを含み得る。
【0066】
例えば、触媒反応器5において、温度は、50から150℃、より詳細には90から110℃、特に100℃前後であってもよく、圧力は、5から40絶対バール、好ましくは13から17絶対バール、特に15絶対バール前後であってもよい。
【0067】
反応から生じる生成物を取り出すためのパイプ6は、触媒反応器5の出口と接続されている。このパイプは、イオン触媒との混合物としての所望の生成物(F−32)、未反応の反応物質(F−30及びフッ化水素)、塩素並びに反応の副生成物及び副産物を含む流れを運ぶ。
【0068】
反応から生じる生成物を取り出すためのパイプ6は、好ましくは上部に還流システムが備わっている蒸留カラムである予備分離ユニット7に供給する。この予備分離ユニット7は、反応から生じる生成物の残りからイオン性液体(反応の副生成物であるHF及びF−31、又はクロロフルオロメタンのほとんどを持つ)の分離を提供する。
【0069】
イオン性液体は、予備分離ユニット7の底部と接続されている触媒リサイクルライン8を経て触媒反応器5に戻る。第一の中間パイプ9は、予備分離ユニット7の上部と接続されており、このパイプ9は、反応から生じる残りの生成物の収集を意図したものであり、反応の副生成物である塩化水素の分離を予定される第一の分離ユニット10に供給する。
【0070】
冷却手段は、第一の中間パイプ9上に、第一の分離ユニット10が所望の温度で動作するように設けられてもよい。
【0071】
第一の分離ユニット10は、好ましくは、底部にリボイラ、上部に還流システムが装備された蒸留カラムである。例えば、触媒反応器5よりわずかに低い圧力で、特に、5から40絶対バール、好ましくは12から16絶対バール、特に14絶対バール前後の圧力で動作され得る。
【0072】
第一の分離ユニット10の底部温度は、例えば、5から40℃、好ましくは15から30℃、特におよそ22℃である。第一の分離ユニット10の上部温度は、例えば、−35から0℃、好ましくは−25から−10℃、特におよそ−21℃である。
【0073】
塩化水素を取り出すためのパイプ11は、第一の分離ユニット10の上部と接続されており、このパイプ11により、主に塩化水素を(概して高純度で)含む流れが取り出される。この流れには、微量のF−32も存在し得る。
【0074】
製造されるHClは、好ましくは、水中への断熱又は等温吸収後にHCl溶液の形態で有効に回収される。HClは、分析グレードを有するために、ガスをアルミナ塔に通過することで精製されてもよい。
【0075】
エネルギー最適化を狙いとして、塩化水素を取り出すためのパイプ11と第一の中間パイプ9との間に熱交換手段を設けることが可能であり、従って、塩化水素流は、第一の分離ユニット10を対象とした流れから熱を吸収する。
【0076】
第二の中間輸送パイプ12は、第一の分離ユニット10の底部と接続されており、このパイプ12は、反応から生じる残りの生成物を収集することが意図されており、塩素の分離を対象とした第二の分離ユニット13に供給する。冷却手段及びポンピング手段は、第二の中間輸送パイプ12上に、第二の分離ユニット13が所望の温度及び所望の圧力で動作するように設けられてもよい。
【0077】
第二の分離ユニット13は、好ましくは、底部にリボイラ、上部に還流システムが装備された蒸留カラムである。これは、例えば、10から45絶対バール、好ましくは25から35絶対バール、特に28絶対バール前後の圧力で動作され得る。
【0078】
第二の分離ユニット13の底部の温度は、例えば、30から70℃、好ましくは40から60℃、特におよそ50℃である。第二の分離ユニット13の上部の温度は、例えば、25から65℃、好ましくは35から55℃、特におよそ44℃である。
【0079】
塩素リサイクルパイプ14は、第二の分離ユニット13の上部と接続されており、このパイプ14により、F−32及び塩素の混合物を主に含む流れが取り出される。この塩素をリサイクルするためのパイプ14は、触媒反応器5に供給し、塩素及びF−32の回路においてリサイクルを提供する。
【0080】
塩素/F−32混合物は、広い塩素濃度範囲内で可燃性である。従って、塩素リサイクルパイプ14を介して取り出される塩素/F−32混合物が可燃性にならないように、設備のパラメータを調整することが特に有利である。例えば、この混合物中における塩素含有量を、7.5体積%未満の濃度に保つことが適切となり得る。このような手法で、混合物は、50℃の典型的な温度及び18絶対バールの典型的な圧力において可燃性ではない。
【0081】
第三の中間輸送パイプ15は、第二の分離ユニット13の底部と接続されており、このパイプ15は、反応から生じる残りの生成物を収集することが意図されており、F−32の回収を対象とした第三の分離ユニット16に供給する。
【0082】
第三の分離ユニット16は、好ましくは、底部にリボイラ、上部に還流システムが装備された蒸留カラムである。例えば、第二の分離ユニット13のものよりわずかに低い圧力で、例えば、10から40絶対バール、好ましくは20から30絶対バール、特に26絶対バール前後の圧力で動作され得る。
【0083】
第三の分離ユニット16の底部の温度は、例えば、好ましくは80から120℃、好ましくは90から110℃、特におよそ100℃である。第三の分離ユニット16の上部の温度は、例えば、20から60℃、好ましくは30から50℃、特におよそ43℃である。
【0084】
ジフルオロメタンを取り出すためのパイプ17は、第三の分離ユニット16の上部と接続されており、このパイプ17を経て、製造されたF−32が収集される。このF−32流は、貯蔵ユニットに向けられてもよく、又は任意に、一又は複数の追加の精製段階、例えば活性炭上若しくはアルミナ上に供されてもよい。
【0085】
反応物質及び副生成物を回収するためのパイプ18は、第三の分離ユニット16の底部と接続されており、このパイプ18は、反応から生じる残りの生成物、すなわち特にフッ化水素及びF−31を収集する。反応物質及び副生成物を回収するためのパイプ18は、本方法におけるこれらの化合物のすべてのリサイクルを提供するように、触媒反応器5に供給する。反応へのリサイクル前にいかに微量の水も除去するための乾燥機の設置が想定され得る。
【0086】
本発明による方法は、バッチ式、半連続式又は連続式であってよい。好ましくは、方法は連続式である。
【0087】
他のハイドロフルオロカーボンは、触媒反応中に製造され得、特にF−22及びF−23である。もしそうであるならば、製造されたF−23の事実上すべてが塩化水素とともに塩化水素を取り出すためのパイプ11に取り出され、製造されたF−22の事実上すべてが分離動作のすべての終わりに反応から生じる残りの生成物とともに取り出され、従って触媒反応器5にリサイクルされ、このF−22は最終的にF−23に変換される。
【0088】
ジフルオロメタンを取り出すためのパイプ17を介して設備の出口で回収されたF−32流は、好ましくは、98%、又は99%、又は更には99.9%以上の純度を呈する。この流れは、好ましくは、15ppm未満の水含有量、10ppm未満のF−31含有量、1ppm未満のHCl含有量及び3ppm未満の塩素含有量を含む。
【0089】
塩素リサイクルパイプ14内に取り出された塩素及びF−32流は、好ましくは、ジフルオロメタンを取り出すためのパイプ17を介して取り出されたF−32の重量での流速の、50%未満(及び、例えば、30%未満、又は20%未満、又は10%前後未満)の重量での流速を表す。
【0090】
設備内に存在する塩素の量は、好ましくは、設備内の循環生成物の総量の0.1%から2%、特に0.2%から1%、例えばおよそ0.5%を表す。
【0091】
F−23副産物生成は、2%未満、好ましくは0.5%未満、典型的には0.1%未満の量、従って、99.9%より大きい全収率を表す。
【0092】
F−32及びF−31の生産性は、例えば、0.5から10mol/h/L、好ましくは1から5mol/h/Lである。
【0093】
図1において例証されている設備の考えられる代替形態は、第二の分離ユニット13及び第三の分離ユニット16の役割を反転させることである。
【0094】
この事例において、設備への修正は、下記の通りである:反応物質及び副生成物を回収するためのパイプ18は、第二の分離ユニット13の底部と接続され、第三の中間輸送パイプ15は、この第二の分離ユニット13の上部と接続され、塩素リサイクルパイプ14は、第三の分離ユニット16の上部と接続され、ジフルオロメタンを取り出すためのパイプ17は、この第三の分離ユニット16の底部と接続される。
【0095】
この代替形態によれば、方法に関して、反応から生じる生成物の分離は、塩化水素流を取り出すことを可能にする第一の分離、続いて反応物質及び副生成物流を回収することを可能にする第二の分離、続いてジフルオロメタン流を取り出すこと及び塩素流を回収することを可能にする第三の分離を連続的に含み、これらの分離のそれぞれは、好ましくは蒸留である。
【実施例】
【0096】
下記の実施例は、本発明を限定することなく例証するものである。
【0097】
実施例1−無溶媒イオン性液体触媒の調製
0.2molのSbCl
5及び0.1molのEmim−Clを添加する。混合物を、均質な混合物が取得されるまで穏やかに加熱する。冷却した後、固体生成物を核磁気共鳴装置(NMR)により分析する。試料を重アセトニトリルに溶解し、対象のカチオンの構造を立証するために、
1H、
13C及び
121Sb NMRにより分析する。結果を以下の表1に示す。
【0098】
実施例2−溶媒を用い、ディップ管を使用するイオン性液体触媒の調製
75gのEmim−Clを、200gのF−30に溶解する。使用した装置の機材は、サーモスタット制御の外部浴に接続されているジャケット付きのガラス反応器である。熱電対は、動作中の温度を示す。反応器には、水の循環に接続されたコンデンサが装備されている。ディップ管は、反応器の底部に300gのSbCl
5をゆっくり添加するための漏斗として使用される。動作は2時間持続するが、混合物中における結晶化がおよそ1時間後に観察される。SbCl
5の導入の平均速度は、150g/hである。SbCl
5の添加の終了後、混合物は固化した。固体をNMR分析により試験する。結果を以下の表1に示す。
【0099】
実施例3〜8−溶媒を用い、ディップ管を使用しないイオン性液体触媒の調製
ディップ管なしで実施例2を繰り返す。
【0100】
SbCl
5の注入点は、反応器のヘッドスペース、Emim−Cl/F−30溶液の上である。二つのパラメータを試験する:撹拌(有り又は無し)及び混合中の温度(ジャケット内における水の循環、又は混合物を液体形態に保つことを可能にする温度、50から55℃の間で維持)並びにSbCl
5の導入速度(極めて急速、150g/h程度、又はより遅く、50g/h)。試料をNMR分析のために取り出す。
【0101】
Emim−ClとSbCl
5との反応は、カチオン性部分及びアニオン性部分を生成する。アニオン性部分は、SbCl
5及びSbCl
3等の中性化合物と混合されたハロゲン化アンチモン化合物SbCl
6−である。カチオン性部分は窒素環である。NMR分析は、下記の化合物:
の存在を明らかにする。
【0102】
SbCl
5とEmim−Clとの間の塩素化反応は、塩素化(一又は二置換)カチオン、及びSbCl
3を得るためのSbCl
5の還元をもたらす。実際に、SbCl
3は、SbF
3の形成及び反応器内における固体析出物をもたらす不活性実体である。更に、この塩素化反応は所望されていない。従って、可能な限り低い量の塩素化カチオン(Emim)を取得することが所望される。
【0103】
結果を以下の表1に示す。
【0104】
塩素化(一又は二の塩素)Emimカチオンの量は、下記の条件下ではより高くなる:溶媒F30無し(実施例1)、ディップ管の使用(実施例2)、及び50℃の温度と緩徐な注入速度との組み合わせ(実施例8)。
【0105】
触媒の品質に対するこの特徴の影響を例証するために、実施例4及び次いで実施例2の触媒をフッ素化反応において試験した。
【0106】
実施例9−フッ素化反応
実施例4のイオン性液体を、F−30のフッ素化のための反応に使用する。使用した装置の機材は、ステンレス鋼316Lから製造されたジャケット付きの1リットルの容量を有するオートクレーブからなる。これには、温度及び圧力を測定するための手段が設けられている。オートクレーブの上部を開けることにより、反応物質を導入すること及び生成物を取り出すことが可能になる。コンデンサ、及び圧力を調節するためのバルブも、上部に設けられている。コンデンサは、独立したサーモスタット制御の浴を利用して温度制御されている。その役割は、流れに乗り運ばれた触媒、並びに未反応のHF及び中間体の一部も、反応器に戻すことである。
【0107】
反応の生成物を、反応中に連続的に抽出する。出口ガス流はスクラビングデバイスに移行し、これが水素酸HF及びHClを収集し、次いで液体窒素で覆われる。出口ガスの生成物のモル濃度分布を、GC(ガスクロマトグラフィー)により定期的に分析する。
【0108】
試験の終わりに、反応媒質を減圧し、残留HFを排出するためにゆっくり加熱する。この脱気期間に、ガス流からHF及びHClを除去するためにスクラビングデバイスに通過させた後、運ばれる可能性のある有機化合物も回収される。最終段階において、オートクレーブを開けて空にする。
【0109】
実施例4からの混合物の総量(575g)を、オートクレーブに移す。温度を液相中でおよそ100℃に調整する。圧力の調節を15絶対バールで行う。その後、反応物質を、下記の流速で導入する:塩素の0.3g/h、F−30の25.5g/h及びHFの12g/h。従って、HF対有機化合物のモル比は2である。圧力を所望の値まで増大させ、連続的な流れを安定させた後、流速を、F−30については51g/h、HFについては24g/hまで増大させる。入口と出口との間の重量での正しい平衡の確立を定期的に確認する。出口流の組成をGC分析によりモニターし、表2に記す:
【0110】
F−30の変換は99.5%より大きい。F−30及びF−31は工業的規模での方法の状況でリサイクルされ、従って本質的には完全にF−32に変換されることを考慮すれば、工業的規模で期待されるF−32の全収率は、99.5%より大きい。F−32及びF−31の生産性は、1.4mol/h/Lである。
【0111】
実施例10−フッ素化反応
実施例4からの触媒の代わりに実施例2からの触媒(575gの重量)を使用することを除き、実施例9の手順を再現する。
【0112】
出口流の組成をGC分析によりモニターし、表3に記す:
【0113】
実施例9と実施例10との間の比較は、触媒の寿命を延長するために、反応器の上部を経てSbCl
5を充填するための手順の利点を例証するものである。
【0114】
実施例11(比較)−SbCl5単独とのフッ素化反応
この実施例において、F−30のフッ素化は、SbCl
5単独の存在下で行う。これを行うために、147gのSbCl
5を588gのF−30に、実施例9のものと同じデバイス内で添加する。温度を液相中でおよそ100℃に調整する。圧力の調節を15絶対バールで設定する。反応物質を、下記の流速で導入する:塩素の0.6g/h、F−30の21g/h及びHFの10g/h。HF対有機化合物のモル比は2である。圧力を所望の値まで増大させた後、及び連続的な流れの安定化の後、流速を、F−30については42g/h、HFについては20g/hまで増大させる。
【0115】
入口と出口との間の重量での正確な平衡の立証を、定期的に確認する。出口流の組成をGC分析によりモニターし、表4に記す:
【0116】
実施例12−腐食試験
上記の実施例9、10及び11の状況において、反応物の腐食速度を評価するために、金属試験片をオートクレーブ内に設置する。ステンレス鋼316Lの四つの試験片を、液相の底部から上部までの範囲に置く。
【0117】
鋼316Lに関する腐食速度を、それぞれの試験中における金属試験片の重量損失から算出する。
【0118】
四つの追加の試験片を同じ支持体上に設置する。使用した材料は異なっており、それらの抵抗をステンレス鋼316Lと比較することを可能にするものである。
【0119】
結果を以下の表5に記す:
【0120】
試験した材料の性質は、下記の通りである:
C22:20−22.5%Cr、2−6%Fe、12.5−14.5%Mo、2.5−3.5%W、残部のニッケル
Mo:純モリブデン
hMo:30−32%Ni、26−28%Cr、1−1.4%Cu、6−7%Mo、残部の鉄
BC1:22%Mo、15%Cr、0.25%Mn、残部のニッケル
【0121】
これらの結果は、実施例10について、反応器の下部分への高密度のSbCl
5の導入に関係する液体媒質の不均質性を例証するものである。本発明による触媒の使用が、SbCl
5単独の使用と比較して、腐食を大きく低減させることを可能にすることも分かる。