(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2A】砂型鋳造用のC99760合金の実施のための成分の範囲、及びC99760合金のこの実施のヒート例を一覧表にした表である。
【
図2B】
図2Aの目標とする合金に対する銅、ニッケル、亜鉛、硫黄、マンガン、錫、アンチモン、及びアルミニウムの含有量、並びにUTS、YS、伸び%、BHN、及び弾性係数を一覧表にした表である。
【
図2C】永久鋳型鋳造用のC99760合金の実施のための成分の範囲、及びC99760合金のこの実施のヒート例を一覧表にした表である。
【
図2D】
図2Cの目標とする合金に対する銅、ニッケル、亜鉛、硫黄、マンガン、錫、アンチモン、及びアルミニウムの含有量、並びにUTS、YS、伸び%、BHN、及び弾性係数を一覧表にした表である。
【
図3A】砂型鋳造用のC99770合金の実施のための成分の範囲、及びC99770合金のこの実施のヒート例を一覧表にした表である。
【
図3B】
図3Aの目標とする合金に対する銅、ニッケル、亜鉛、硫黄、マンガン、錫、アンチモン、及びアルミニウムの含有量、並びにUTS、YS、伸び%、BHN、及び弾性係数を一覧表にした表である。
【
図3C】永久鋳型鋳造用のC99770合金の実施のための成分の範囲、及びC99770合金のこの実施のヒート例を一覧表にした表である。
【
図3D】
図3Cの目標とする合金に対する銅、ニッケル、亜鉛、硫黄、マンガン、錫、アンチモン、及びアルミニウムの含有量、並びにUTS、YS、伸び%、BHN、及び弾性係数を一覧表にした表である。
【
図4A】鍛造用途用のC79880合金の実施のための成分の範囲、及びC79880合金のこの実施のヒート例を一覧表にした表である。
【
図4B】
図4Aの目標とする合金に対する銅、ニッケル、亜鉛、硫黄、マンガン、及びアンチモンの含有量、並びにUTS、YS、伸び%、BHN、及び弾性係数を一覧表にした表である。
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図5】様々な硫化物の自由エネルギー状態図である。
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図6A】アンチモンを有さないC99760ベースの代替的な合金の相状態図である。
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図6B】0.8%のアンチモンを有するC99760合金の実施の相状態図である。
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図7A】アンチモンを有さないC99760ベースの代替的な合金の平衡下における集合相状態図(phage assemblage diagram)である。
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図7B】C99760に対する0.8%のアンチモンを有する本発明の実施形態の、平衡状態化の集合相状態図である。
【
図7C】アンチモンを有さないC99760ベースの代替的な合金の集合相状態図(シェイル冷却)である。
【
図7D】C99760に対して0.8%のアンチモンを有する本発明の実施形態の集合相状態図(シェイル冷却)である。
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図8A】アンチモンを有さないC99770ベースの代替的な合金の相状態図である。
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図8B】0.6%のアンチモンを有するC99770合金の実施の相状態図である。
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図9A】アンチモンを有さないC99770ベースの代替的な合金の平衡状態下における集合相状態図である。
【
図9B】アンチモンを有さないC99770ベースの代替的な合金の平衡状態下における集合相状態図の拡大図である。
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図9C】0.6%のアンチモンを有するC99770合金の実施の平衡状態下における集合相状態図である。
【
図9D】0.6%のアンチモンを有するC99770合金の実施の平衡状態下における集合相状態図の拡大図である。
【
図9E】アンチモンを有さないC99770ベースの代替的な合金の集合相状態図(シェイル冷却)である。
【
図9F】0.6%のアンチモンを有するC99770合金の実施の集合相状態図(シェイル冷却)である。
【
図10】C99760合金の実施とクロームメッキ被覆を有するC99770合金の実施との色調の比較である。
【
図11】C99760合金のバフ研磨された実施とクロームメッキ被覆を有するC99770合金の実施との色の比較である。
【
図12A】合金C99760の実施に対する興味深い場所を示す顕微鏡写真である。
【
図12B】注釈つき位置を示すC99760合金の実施のBE画像及び対応するEDSスペクトルである。
【
図12C】注釈つき位置を示すC99760合金の実施のBE画像及び対応するEDSスペクトルである。
【
図12D】注釈つき位置を示すC99760合金の実施のBE画像及び対応するEDSスペクトルである。
【
図12E】注釈つき位置を示すC99760合金の実施のBE画像及び対応するEDSスペクトルである。
【
図12H】C99760合金の実施形態の研磨したままの顕微鏡写真である。
【
図13A】合金C99760の実施形態のSEM画像である。
【
図13E】
図13Aに示された部分におけるマンガンの元素マッピングを示す図である。
【
図13G】
図13Aに示された部分におけるアンチモンの元素マッピングを示す図である。
【
図13H】
図13Aに示された部分におけるニッケルの元素マッピングを示す図である。
【
図14A】合金C99770の実施に対する興味深い場所を示す顕微鏡写真である。
【
図14B】注釈つき位置を示すC99770合金の実施のBE画像及び対応するEDSスペクトルである。
【
図14C】注釈つき位置を示すC99770合金の実施のBE画像及び対応するEDSスペクトルである。
【
図14D】注釈つき位置を示すC99770合金の実施のBE画像及び対応するEDSスペクトルである。
【
図14E】注釈つき位置を示すC99770合金の実施のBE画像及び対応するEDSスペクトルである。
【
図14H】C99770合金の実施の研磨したままの顕微鏡写真である。
【
図15A】合金C99770の実施形態のSEM画像である。
【
図15F】
図15Aに示された部分におけるマンガンの元素マッピングを示す図である。
【
図15H】
図15Aに示された部分におけるアンチモンの元素マッピングを示す図である。
【
図15I】
図15Aに示された部分におけるニッケルの元素マッピングを示す図である。
【
図16A】C79880合金の冷間圧延された実施のBE画像である。
【
図16B】C79880合金の一の実施に対する興味深い場所を示す
図16Aの拡大図である。
【
図16C】C79880合金の一の実施の一般的EDSスペクトルである。
【
図16D】C79880合金の一の実施の位置1のEDSスペクトルである。
【
図16E】C79880合金の一の実施の位置2のEDSスペクトルである。
【
図16F】C79880合金の一の実施の位置3のEDSスペクトルである。
【
図17】C79880合金の冷間圧延された実施のSEM画像及び元素毎のマッピングであり、AがSEM画像を示し、B〜JはAに示す部分における炭素、酸素、リン、硫黄、マンガン、ニッケル、銅、亜鉛、及びアンチモンそれぞれの元素マッピングを示す。
【
図18A】C79880合金の永久鋳造の実施のBE画像である。
【
図18B】C79880合金の一の実施に対する興味深い場所を示す
図19Aの拡大画像である。
【
図18C】C79880合金の一の実施の一般的なEDSスペクトルである。
【
図18D】C79880合金の一の実施の位置1のEDSスペクトルである。
【
図18E】C79880合金の一の実施の位置2のEDSスペクトルである。
【
図18F】C79880合金の一の実施の位置3のEDSスペクトルである。
【
図18G】C79880合金の一の実施の位置4のEDSスペクトルである。
【
図18H】C79880合金の一の実施の位置5のEDSスペクトルである。
【
図19】C79880合金の永久鋳造の実施のSEM画像及び元素毎のマッピングであり、AがSEM画像を示し、B〜JはAに示す部分におけるリン、硫黄、マンガン、ニッケル、銅、亜鉛、アンチモン、酸素、及び炭素それぞれの元素マッピングを示す。
【
図20A】C79880合金の冷間圧延され、焼鈍された実施のBE画像である。
【
図20B】C79880合金の一の実施に対する興味深い場所を示す
図20Aの拡大画像である。
【
図20C】C79880合金の一の実施の一般的なEDSスペクトルである。
【
図20D】C79880合金の一の実施の位置1のEDSスペクトルである。
【
図20E】C79880合金の一の実施の位置2のEDSスペクトルである。
【
図20F】C79880合金の一の実施の位置3のEDSスペクトルである。
【
図20G】C79880合金の一の実施の位置4のEDSスペクトルである。
【
図20H】C79880合金の一の実施の位置5のEDSスペクトルである。
【
図21】C79880合金の冷間圧延され、焼鈍された実施のSEM画像及び元素毎のマッピングであり、AがSEM画像を示し、B〜JはAに示す部分における炭素、酸素、マンガン、ニッケル、銅、亜鉛、アンチモン、硫黄、及びリンそれぞれの元素マッピングを示す。
【
図22】C99760及びC99770の機械加工性を他の合金と比較した図である。
【
図23A】機械加工性評価に使用されたC99760の組成を示す表である。
【
図23B】C99760の実施の機械加工性試験からの切りくずを示す図である。
【
図23C】C99760の実施の機械加工性試験からの切りくずを示す図である。
【
図23D】C99760の実施の機械加工性試験からの切りくずを示す図である。
【
図24A】機械加工性評価に使用されたC99770の組成を示す表である。
【
図24B】C99770の実施の機械加工性試験からの切りくずを示す図である。
【
図24C】C99770の実施の機械加工性試験からの切りくずを示す図である。
【
図24D】C99770の実施の機械加工性試験からの切りくずを示す図である。
【
図25A】
図4Aにリストされた合金サンプル79880−030713−P4H6−7の焼鈍温度情報と機械特性を示す表である。
【
図26A】アンチモンの量を変化させたC99760合金ベースの合金をリストした表である。
【
図26B】C99760合金ベースの合金を機械特性とともに示す表である。
【
図27A】合金の特性を変化させたアンチモン含有量とともにリストした表である。
【
図27B】機械特性をアンチモン含有量の関数として示す図である。
【
図27C】機械特性を硫黄含有量の関数として示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下の詳細な説明において、本出願の一部をなす添付の図面が参照される。図面において同様の符号は、別様に記載されない限り、同様の要素を特定する。詳細な説明、図面、及び特許請求の範囲に記載された事例的実施形態は、限定を意味するものではない。ここに記載する主題の精神及び技術的範囲から離れることなく、他の実施形態を使用することができ、別の変更を行うことができる。一般的にここに記載され、図面に示されているような本開示の特徴は、広い範囲の異なる構成にアレンジし、置き換え、組み合わせ、及び設計することができ、それらすべてが本開示の一部であることが明白に意図されており、かつ本開示の一部とされていることが容易に理解される。
【0020】
一実施形態は銅合金の組成に関し、この銅合金は抗菌効果を顕わすのに十分な量の銅、好ましくは60%以上の銅を含有する。この銅合金は、銅に加え、亜鉛、ニッケル、マンガン、硫黄、鉄、アルミニウム、錫、アンチモンを備える黄銅とすることができる。この銅合金はさらに少量のリン、鉛、及び炭素を含有する。好ましくはこの銅合金は、鉛を含まないか、又は0.09%未満の鉛を含有して、飲料用水の用途における有害な効果を低減する。一実施形態において合金は、抗菌特性を与えるための少なくとも60%の銅を含有しつつ0.09%未満の鉛を備え、従来のメッキされた丹銅(red−brass)合金に実質的に匹敵する最終的な色及び光沢を有する機械加工可能な最終製品を提供する。
【0021】
本発明の一実施形態の銅合金は、白色/銀色の色を呈する。この色と合金表面の抗菌性の特徴は、合金からなる製品のメッキを不必要にする。黄銅合金のメッキの必要性の回避は、環境的設置面積(environmental footprint)の実質的な削減に対する機会を提供する。大きなエネルギーが一般的に使用される電気めっきプロセスに対して必要であり、また、プロセスは強い化学薬品の使用を含んでいる。
【0022】
合金は主要成分として銅を備えている。銅は、抗菌特性及び耐腐食性を含む基本的な特性を合金に提供する。純銅は比較的低い降伏強度及び引張強度を有し、青銅及び黄銅という銅で共通する合金のクラスに比較してあまり硬くない。したがって、多くの用途に使用するために合金化を通じて銅の特性を改善することが望ましい。銅はベースインゴットとして通常は加えられる。ベースインゴットの組成の純度は、採掘源の鉱山と採掘後の処理とによって変わる。また、銅は再利用物質に起源する場合もあり、この銅は再利用物質の組成で広く異なる。したがって、本発明の合金は、本発明の精神及び技術的範囲から離れることなく、わずかな所定の元素を有する場合がある。さらに、インゴットの化学的性質は異なり、したがって一実施形態ではベースインゴットの化学的性質が考慮されるということが理解されるべきである。例えば、合金の望ましい最終的組成になるためにどれだけの追加的な亜鉛を添加すべきかを決める際に、ベースインゴット中の亜鉛の量が考慮される。多くの少量の不純物が一般的であり、望ましい特性には何ら材料的効果を有さないので、ベースインゴットは、ベースインゴット中の二次的元素と、その最終的な合金中の意図された存在を考慮しつつ、合金に必要とされる銅を提供するように選択されるべきである。
【0023】
鉛は銅合金中の構成元素として、特に機械加工性が重要な因子である配管設備のような用途に対して通常、含有されてきた。鉛は、銅合金に一般的な他の多くの元素に対して低い融点を有する。そのような銅合金中の鉛は、溶融金属が冷えるにつれて、デンドライト組織間又は結晶粒界領域に移動する傾向がある。デンドライト組織間又は結晶粒界領域における鉛の存在は、機械加工性及び耐圧性を大きく改善する。しかし、ここ数十年間に、鉛の重大な有害な効果によって鉛の使用が銅合金の多くの用途において望ましくないものとなった。特に、鉛がデンドライト組織間又は結晶粒界領域に存在する場合には、機械加工性を改善するために通常は許容される特徴が、鉛が銅合金から浸出する場合があるという望ましくない容易性にある程度関与する。本発明の合金は、鉛の量を最小化すること、例えば約0.09%未満の使用を追求するものである。
【0024】
硫黄は、鉛を含有する銅合金を使用するという所定の欠点を克服するために本発明の合金に添加される。硫黄は、機械加工性のような鉛が銅合金に与えるのと同様な特性を、鉛に関連する健康上の問題無しに提供する。溶融金属中に存在する硫黄は通常、溶融金属中にこれもまた存在する遷移金属と反応して、遷移金属硫化物を形成する。例えば、硫化銅及び硫化亜鉛を形成するか、又はマンガンが存在する実施形態では硫化マンガンを形成する。
図5は、本発明の実施形態において形成されるいくつかの遷移金属硫化物に対する自由エネルギー状態図を示す。銅の融点は1083℃であり、硫化銅では1130℃、硫化亜鉛では1185℃、硫化マンガンでは1610℃、硫化錫では832℃である。このように、本発明の技術的範囲を限定することなく、形成の自由エネルギーを考慮すると、硫化物形成のかなりの量は硫化マンガンである。硫化物は、銅が凝固し始めた後に、したがって溶融物中にデンドライトを形成した後に、凝固すると考えられる。これら硫化物はデンドライト組織間領域又は結晶粒界で凝集する。硫化物の存在は金属構造中の中断(break)と、結晶粒界領域にチップ形成のための点とを提供し、機械加工の潤滑性を改善し、全体的な機械加工性を改善する。本発明の合金中では優勢である硫化物は潤滑性を提供する。
【0025】
さらに、硫化物の良好な分散は耐圧性を改善するとともに機械加工性を改善する。硫化物の良好な分散は、ガス燃焼炉中での手撹拌、誘導溶融中の機械撹拌、及び銅フォイルにくるまれたアンチモンのプランジング(plunging)(又はアンチモン化合物)の組み合わせを通じて達成することができると考えられている。化合物からのアンチモンの解離を通じてのようなアンチモン元素の存在は、プランジング硫黄粉末と比較して、硫化銅及び硫化亜鉛の均一な形成を容易にし、それによってデンドライト結晶間領域における硫化物の均一な分散を容易にする。一の実施形態において、硫黄含有量は0.25%未満である。硫黄は上述のように有利な特性を提供するが、硫黄含有量が増加すると他の望ましい特性を低下させる場合がある。そのような低下を引き起こす1つのメカニズムは溶融中の二酸化硫黄の形成であり、二酸化硫黄の形成は最終的な合金製品中の気泡をもたらすと考えられている。
【0026】
高含有量の錫は強度及び硬さを増加させるが、固溶体強化(solid solution strengthening)によって、及びCu3SnのようなCu−Snの金属間相を形成することによって、展性を低下させると考えられている。また、高含有量の錫は凝固範囲を増加させる。鋳込み流動性は錫含有量とともに上昇し、錫はまた耐腐食性を増加させる。所定の実施形態における錫含有量は従来技術に対して非常に低い(<1.0%)。このような低いレベルでは、錫は固溶体に残り、Cu3Sn金属間化合物を形成しないと考えられている。また、低いレベルの錫は凝固範囲に影響しない(増加させない)。このような実施形態は、高い含有量の亜鉛、ニッケル、及びマンガンの故に、短い凝固範囲から中程度の凝固範囲(short to medium freezing range)の合金である。Cu−Mn二元合金は、中程度の凝固範囲を有する。したがって、本発明の所定のCu−Zn−Mn−Ni合金は、短い凝固範囲から中程度の凝固範囲を有するだろう。
【0027】
亜鉛に関しては、亜鉛の存在は錫のそれと同様であるが程度は低く、約2%の亜鉛の所定の実施形態は、言及した特性に対する上述した改善に対して1%Snに大体等しい。亜鉛は、十分な量では銅をアルファ相よりはむしろベータ相に存在させることが知られている。ベータ相は硬い材料を生成し、したがって亜鉛は固溶体硬化によって強度及び硬度を増加させる。しかし、CuZn合金は短い凝固範囲を有する。亜鉛は伝統的に錫よりも廉価であり、したがってより容易に使用されてきた。所定量以上、典型的には14%の亜鉛は、脱亜鉛現象の影響を受けやすい合金を生成する場合がある。加えて、大量の亜鉛は、硫黄が溶融物に溶け込んでしまうのを防止するということが発見された。幾らかの亜鉛は銅とともに固溶体中に残存すると考えられている。幾らかの亜鉛は幾らかの金属間相に関連する。残部はSと反応してZnSを形成する。Znの含有量が13〜14%を超える場合には、ZnS塊を形成するには余りにも多くのZnが存在し、ほとんどすべてのSはスラグ又はドロスになってしまう。
【0028】
所定の合金に関し、鉄は溶融及び鋳込み作業中に撹拌棒、スキマーから受け取られた不純物、又はベースインゴット中の不純物として考えることができる。不純物のそのようなカテゴリーは、合金の特性には何ら影響しない。しかし、本発明の実施形態は、合金成分としての鉄を、好ましくは約0.6%〜約1%の範囲で含有する。所定の実施形態では、鉄は約2%まで含有させることができる。このレベルでは、鉄は高強度の黄銅又はマンガニーズブロンズ(合金C86300)と同様の結晶粒精錬効果(grain refining effect)をたぶん有する。
【0029】
通常は、アンチモンは錫の劣ったブランド(inferior brands)、スクラップ、及び低品質のインゴット及びスクラップから拾い上げられている。しかし、本出願のいくつかの実施形態はアンチモンを使用して耐脱亜鉛性を上げている。アンチモンは一実施形態において合金元素として使用されている。相状態図の分析は、SbがNiSb化合物を形成することを示している。
図23B〜
図23D及び
図24B〜
図24Dは、アンチモンを有する実施形態が、0.01〜0.025%のSの存在にもかかわらず良好な機械加工性を有していることを示している。このことは、アンチモンの存在によると考えられている。硫化物及びNiSbの存在は良好な機械加工性に寄与すると考えられている。しかし、Sbの含有量が増加するにつれて、強度及び伸び%は低下するとさらに考えられる(
図27A〜C)。
【0030】
いくつかの実施形態において、ニッケルは強度及び硬さを増加させるために含有されている。さらに、ニッケルは合金中の硫化物の粒子の分散に役立つ。一実施形態において、ニッケルの添加は鋳造物の冷却プロセス中の硫化物の析出を助ける。硫化物の析出は、鋳造後の機械加工作業中に漂っている硫化物が切りくずの破壊と機械加工の潤滑とのための鉛に代替として作用するので望ましい。本発明の技術的範囲を限定することなく、より低い鉛含有量で、硫化物粒子は低下した機械加工性の効果を最小化すると考えられる。さらに、ニッケルの添加、及び10〜15%のニッケル含有量による望ましい特性を維持する合金の能力は、銅合金よりも金属ニッケルに類似した色、例えば白色から銀色の色を示す銅合金を提供する。Cu−Ni二元合金は完全可溶化を有する。Ni含有量が増加するにつれて、強度が増加し、また鋳造部品の色も金属ニッケルにより類似する。一般的に、3つのタイプの白銅合金が商業的に入手可能である(90/10、80/20、70/30)。銀白色の色はNi含有量とともに増加する。洋銀合金は11〜14%のNiと17〜25%のZnとを有している。27%のNiと4%未満のZnとを有する洋銀がある。洋銀は銀を含まない。銀白色はNiに由来する。本発明では、白色/銀色の色はNiとZnに由来すると考えられる。一般的に、Niの量が多いほど、色調はニッケル元素の色である銀色/白色に、より近づく。
【0031】
リンは脱酸をもたらすために添加することができる。リンの添加は、液体合金中の気体含有量を低下させる。気体の除去は通常、溶融物中の気体含有量を低下させること、及び最終的な合金中の気孔率を低下させることによって、高品質の鋳造物を提供する。しかし、過剰なリンは、低い機械的特性と多孔な鋳造を引き起こす金属‐鋳型の反応に寄与する場合がある。
【0032】
いくつかの黄銅合金中のアルミニウムは不純物として扱われる。そのような実施形態においては、アルミニウムは耐圧性及び機械的特性に有害な効果を有する。しかし、所定の鋳造用途におけるアルミニウムは選択的に鋳造の流動性を改善する。アルミニウムはそのような実施形態において、液体金属の容易な流動を可能にする微細な羽状のデンドライト構造を促す。所定の実施形態においては、アルミニウムは合金元素である。アルミニウムは、合金の亜鉛同等物に寄与することによって強度を大幅に増加させる。1%のAlは6の亜鉛同等物である。好ましくは、アルミニウムは最大1%として含有される。
【0033】
珪素は一般的には不純物と考えられている。複数の合金を有する鋳物工場では、珪素ベースの材料が、珪素を含有しない合金における珪素による汚染をもたらす場合がある。少量の残渣珪素が、準丹銅合金(semi red brass alloys)を汚染する場合があり、複数の合金の生産をほとんど不可能にしている。さらに、珪素の存在は準丹銅合金の機械特性を低下させる場合がある。本発明の実施形態に対して珪素は合金元素ではなく、不純物とみなされる。珪素は0.06%以下に限定されるべきであり、好ましくは0%である。
【0034】
マンガンは所定の実施形態に添加することができる。マンガンは硫化物の分散に役立つと考えられる。特に、マンガンの存在は溶融物中における硫化亜鉛の形成及び維持に役立つと考えられる。一実施形態において、マンガンは耐圧性を改善する。一実施形態において、マンガンはMnSとして添加される。相状態図は、所定の実施形態に対して1%のMnSしか形成しないことを示している。したがって、それら実施形態に対しては、MnSは主な硫化物ではなく、ZnS及びCu2Sが主な硫化物であろう。
図6A〜B及び
図8A〜Bが示すように、所定の従来技術による合金に比較して高いニッケル及びマンガンのレベルによって、多くのマンガンがMnNi2(7重量%)及びMn3Ni(13重量%)として存在する。所定の実施形態においては、1重量%のMnSしか存在していない。
【0035】
マンガンはいくつかの重要な役割を果たしている。第1に融点を下げることによって、そして第2にNiと金属間化合物を形成することである。Cu−11Mn二元合金の融点はCuの融点から〜85℃だけ低下している。同様に、Cu−13Znの融点は約〜25℃低下している。対照的に、Niは合金の融点を上昇させる。Cu−10Ni合金に対して、増分は約50℃である。Cu−Ni−Zn−Mnの四元合金を考慮すると、融点における全体的な低下を予想することができる。この予想は、例えば4%Ni合金に対して、融点が約1004℃であると実際に観測されている。したがって、本発明の実施形態は比較的低い温度で鋳込むことができる。このことは溶解損失と電力使用量(およびエネルギーコスト)を削減する大きな要因である。一実施形態において、約10%のNiによって、融点は1000℃未満、975℃に近いと期待される。相状態図を示す
図6は、そのことを支持している。
【0036】
Mnの第2の効果はNiとの金属間化合物の形成であり、たぶん強度及び展性に寄与する。
【0037】
第3の可能性のあるMnの効果は、その+0.5の亜鉛同等係数と考えることができる。他方でNiは負の亜鉛同等係数1.3を有する。したがって、10%のNiは13%だけZn同等係数を低下させる。比較のために、SuのZn同等係数、FeのZn同等係数、及びAlのZn同等係数はそれぞれ+2、+0.9、及び+6である。
【0038】
炭素は所定の実施形態において耐圧性を改善し、空孔を減少させ、機械加工性を改善するために添加することができる。一実施形態において、炭素は銅メッキされたグラファイト(「CCG」)として合金に添加することができる。銅メッキされたグラファイト製品の1つのタイプは、DesulcoMC(商標)との名称であり、Superior Graphiteから入手可能である。銅メッキされたグラファイト製品の一実施形態は、最小99.5%の炭素、最大0.5%の灰分、及び最大0.5%の湿気を含有するグラファイトを使用している。粒子のUSメッシュサイズは200ミクロン又は125ミクロンである。このグラファイトは60重量%のCuでコーティングされており、非常に低いS含有量を有する。
【0039】
他の一実施形態において、炭素は、熱的に高純度化されたコークスとしても知られている焼成石油コークス(CPC)として合金に添加することができる。CPCは粒度に篩分けすることができる。1つの特徴においては、1%の硫黄が添加され、CPCは60重量%のCuでコーティングされる。銅で包まれたCPCは、銅でコーティングされたグラファイトに比べて比較的高く粗悪な硫黄の含有の故に、合金にわずかに多いSを与え、より良い機械加工性を与える。CPCの使用はCCGと同様の寄与を与えることが観察されたが、CPCを使用した実施形態の観察された機械加工性は、CCGを有する実施形態より優れている。
【0040】
炭素の大部分は最終的な合金には存在しないと考えられる。むしろ、炭素粒子が形成され、ドロスとして表面に浮遊するか、又は反応して一酸化炭素を形成(1149℃前後)し、ガスとして溶融物から排出されると考えられる。合金の最終的な炭素含有量は約0.005%であり、2.2g/ccの低密度を有することが観察された。炭素粒子は浮遊し、(炭素気泡(carbon boil)のように)1149℃でCO2を形成し、溶融物を浄化する。したがって、炭素を使用する合金は、S、MnS、アンチモン等のような他の添加物に比較してより均一かつ純粋である場合がある。さらに、炭素の原子半径は0.91×10−10mであり、これは銅の原子半径(1.57×10−10mより小さい。本発明の技術的範囲を制限することなく、炭素がその小さな原子体積の故に銅の面心立法結晶格子中に残り、それによって強度及び展性に寄与するということが考えられる。
【0041】
炭素の存在が機械的特性を改善することが観察された。一般的に、少量の炭素(0.006%)は、強度、硬度、及び伸び%を増加させるのに効果的である。一般的に0.1%の炭素が、本発明の実施形態の望ましい最大量と考えられる。
【0042】
[合金の実施]
C99760合金及びC99770合金は、砂型鋳造に適した実施及び永久鋳型鋳造に適した実施を含む。C79880合金は、鍛造合金用の実施を含む。
【0043】
所定の実施において、C99760合金は重量%で、61〜67の銅、8〜12のニッケル、8〜14の亜鉛、10〜16のマンガン、0.25までの硫黄、0.1〜1.0のアンチモン、0.2〜1.0の錫、0.6未満の鉄、0.6未満のアルミニウム、0.05未満のリン、0.09未満の鉛、0.05未満の珪素、0.10未満の炭素を含有する。
【0044】
一の実施において、砂型鋳造用のC99760合金は重量%で、61〜67の銅、8〜12のニッケル、8〜14の亜鉛、10〜16のマンガン、0.25までの硫黄、0.1〜1.0のアンチモン、0.2〜1.0の錫、0.6未満の鉄、0.6未満のアルミニウム、0.05未満のリン、0.09未満の鉛、0.05未満の珪素、0.10未満の炭素を含有する。
【0045】
所定の実施において、C99770合金は重量%で、66〜70の銅、3〜6のニッケル、8〜14の亜鉛、10〜16のマンガン、0.25までの硫黄、0.1〜1.0のアンチモン、0.2〜1.0の錫、0.6未満の鉄、0.6未満のアルミニウム、0.05未満のリン、0.09未満の鉛、0.05未満の珪素、0.10未満の炭素を含有する。
【0046】
一の実施において、砂型鋳造用のC99770合金は重量%で、66〜70の銅、3〜6のニッケル、8〜14の亜鉛、10〜16のマンガン、0.25までの硫黄、0.1〜1.0のアンチモン、0.2〜1.0の錫、0.6未満の鉄、0.6未満のアルミニウム、0.05未満のリン、0.09未満の鉛、0.05未満の珪素、0.10未満の炭素を含有する。一の実施において、永久鋳型の用途用のC99770合金は重量%で、66〜70の銅、3〜6のニッケル、8〜14の亜鉛、10〜16のマンガン、0.25までの硫黄、0.1〜1.0のアンチモン、0.2〜1.0の錫、0.6未満の鉄、0.6未満のアルミニウム、0.05未満のリン、0.09未満の鉛、0.05未満の珪素、0.10未満の炭素を含有する。
【0047】
一の実施において、鍛造用途用のC79880は合金重量%で、66〜70の銅、3〜6のニッケル、10〜14の亜鉛、10〜16のマンガン、0.25までの硫黄、0.1〜1.0のアンチモン、約0.4の鉄、約0.05のリン、0.09未満の鉛、0.05未満の珪素、0.10未満の炭素を含有する。
【0048】
C99770合金の一の実施は、約66〜70%の銅、約3〜6%のニッケル、約8〜14%の亜鉛、約10〜16%のマンガン、約0.25%の硫黄、約0.1〜1.0%のアンチモン、約0.6%の錫、約0.6%の鉄、約0.6%のアルミニウム、約0.1%の炭素を含有する。この合金はC99770である。
【0049】
C99760合金の一の実施は、約61〜67%の銅、約8〜10%のニッケル、約8〜14%の亜鉛、約10〜16%のマンガン、約0.25%の硫黄、約0.1〜1.0%のアンチモン、約0.6%未満の錫、約0.6%未満の鉄、約0.6%未満のアルミニウム、約0.05%のリン、約0.09%未満の鉛、約0.05%未満の珪素、約0.1%の炭素を含有する。
【0050】
本発明の合金は、いくつかの望ましい特性の調和を示し、従来技術の合金に対する優れた特徴と性能とを示す。
図2及び3は、本発明のいくつかの実施形態(C99760合金及びC99770合金、砂型鋳造及び永久鋳型鋳造の両方)に対するUTS、YS、伸び%、BHN、及び弾性係数を提供する表である。
【0051】
以下の表1は、本発明の合金の3つの異なる実施をリストしている。合金C99760及びC99770は、砂型鋳造及び永久鋳型鋳造に最も合っていると考えられる。C79880合金は、鍛造製品用に最も合っていると考えられる。C99760合金は、C99770及びC79880合金よりも多量のニッケルを含有する。より多くのニッケルを有する合金は、より銀色の色と硬度を呈するが、伸び%のような他の特性でわずかに低下する場合がある。C00760合金は、C99770よりも高い硬度を示す。
【0053】
一の実施において、合金はステンレス鋼の代わりに使用することができる。特に、銅合金はステンレス鋼が使用される医療用途に使用することができ、銅合金は抗菌機能を提供する。ステンレス鋼の代わりとしての使用の実施形態は、一般的に高いUTS、YS、及び伸び%を示す。一実施形態において、銅合金は60%より多い銅を備え、抗菌効果と落ち着いた銅の色又は白色/銀色の色を示す。しかし、ステンレス鋼は約69を超えるUTS、約30を超えるYS、及び約55%を超える伸び%を有する。ステンレス鋼に対する最低限の要求は、70ksi/30ksi/30のUTS/YS/伸び%である。ステンレス鋼に匹敵し置換するために、抗菌特性を有する銅合金は、鋳造ステンレス鋼と比較して低い機械特性にもかかわらず上述したステンレス鋼の機械特性を超えなければならず、その抗菌特性は、ステンレス鋼が早く腐食してしまう糊又は裂け目の存在下において突出しなければならない。
【0054】
[相状態図−C99760]
本発明の所定の実施形態の相が研究された。
図6A〜B、
図7A〜Dは対応する相状態図を示す。これらは平衡及び非平衡(シェイル計算(Scheil calculation))の両方の条件に対して描かれている。評価された実施は、62%Cu、8%Ni、15%Zn、12%Mn、0.4%Sの組成を有する。また、0.8%Sbの添加の効果も示されている。
【0055】
準丹銅群に比較して短い/中程度の凝固範囲の合金があることは明白である。本発明の所定の実施形態では、凝固点は40℃近傍である。準丹銅群では、凝固範囲は80℃より広い。したがって、本発明のこれら実施形態の永久鋳型鋳造は好都合である。いくつかの用途において、ほとんどの配管部品は重力及び低圧の両方の永久鋳型鋳造によって生産される。早い冷却速度による細かい結晶粒は、永久鋳型鋳造において機械特性を増加させるに違いない。
【0056】
[平衡計算−C99760]
白色金属合金は、(平衡速度で冷却された場合には)多くの金属間化合物を含んでいる。上述の実施形態の集合相状態図(phase assemblage diagram)が
図8A〜8Dに示されている。この合金は以下の相を室温で含んでいる。
【0058】
図7Bは、0.8Sbを有する上述の実施形態の集合相状態図を示す。液相線温度及び固相線温度は、NiSb化合物が液相から形成されるので、Sbの添加によって大きくは変化しない(1〜2℃だけ)。Sbの添加は、1重量%程度のNiSb化合物の形成を除いて、合金の相含有量を変化させない。
【0059】
図7Cは、上述のアンチモンを有さない、C99760の変形合金の集合相状態図(シェイル冷却)を示す。シェイルのシミュレーションによれば、この合金は、微量(〜1重量%)のMnSを有する単一相合金である。現実の条件は平衡状態とシェイル状態との間のどこかにあると予想される。
液相線温度=975℃
固相線温度=900℃
【0060】
当初のシェイル計算は、4%Ni及び21%Znを有した合金99X1 0−022912−H1 P4−7−XのDSC(示差走査熱量測定法)研究によって、75℃の凝固範囲を示す。液相線温度及び固相線温度は、それぞれ1004℃及び965℃であった。これは39℃の凝固範囲を有する。Niが8〜10%に増加し、Znが約13%に減少すると、凝固範囲は40℃未満になると予想される。
【0061】
図7Dは、0.8Sbを有するC99760の集合相状態図(シェイル冷却)である。0.8Sbの添加は1重量%程度のNiSb化合物の形成を生じさせたが、液相線温度又は固相線温度を変化させなかった。
【0062】
<C99760合金へのSbの効果のまとめ>
(室温において存在する相の相対量)
100Kgの合金全体はそれぞれの相を以下の量(kg)で含有する。
【0065】
[相状態図‐C99770]
本発明の所定の実施形態の相が研究された。
図8A〜8Bは、対応する相状態図を示す。評価された実施は、68%Cu、5%Ni、11%Zn、11%Mn、0.3%Sの組成を有する。また、0.6%Sbの添加の効果も示されている。
【0066】
準丹銅群に比較して短い/中程度の凝固範囲の合金があることは明白である。本発明の所定の実施形態では、凝固点は40℃近傍である。準丹銅群では、凝固範囲は80℃より高い。したがって、本発明のこれら実施形態の永久鋳型鋳造は好都合である。いくつかの用途において、ほとんどの配管部品は重力及び低圧両方の永久鋳型鋳造によって生産される。早い冷却速度による細かい結晶粒は、永久鋳型鋳造において機械特性を増加させるに違いない。
【0067】
C99770合金は、以下で分かるように(平衡速度で冷却された場合には)多くの金属間化合物を含んでいる。液相線温度及び固相線温度は、NiSb化合物が液相から形成されるので、Sbの添加によって大きくは変化しない(3℃程度だけ)。Sbの添加は、1重量%未満のNiSb化合物の形成を除いて、合金の相含有量を変化させない。
【0068】
[平衡計算−C99770]
図9A〜
図9Fは、上述のアンチモンを有さない、C99770からの変形合金の集合相状態図(平衡‐
図9A、9B、シェイル冷却‐
図9E)、及び0.6%のアンチモンを有するC99770合金の実施の集合相状態図(平衡‐
図9C、9D、シェイル冷却‐
図9F)を示す。シェイルのシミュレーションによれば、C99770合金は、微量(〜1重量%)のMnSを有する単一相合金である。現実の鋳造プロセスでは、結果は平衡状態とシェイル状態との間のどこかにあるはずである。0.6Sbの添加は1重量%程度のNiSb化合物の形成を生じさせたが、液相線温度又は固相線温度を変化させなかった。
【0069】
<C99770合金へのSbの効果のまとめ>
(室温において存在する相の相対量)
100Kgの合金全体はそれぞれの層を以下の量(kg)で含有する。
【0072】
[亜鉛同等物]
銅合金は、約15%より多く含有する場合に所定の環境において脱亜鉛をこうむることが知られている。しかし、大量の亜鉛は銅の相をすべてアルファ相から2相(duplex)又はベータ相へ変化させる。また、他の元素は銅の相を変化させることが知られている。複合材料「亜鉛同等物」が銅相への影響を評価するために使用される。
Zn同等物=(100*X)/((X+銅%)
【0073】
ここで、xは添加された合金元素と合金中に実際に存在する亜鉛の%との合計によって寄与される亜鉛同等物の合計である。32.5%亜鉛より少ない亜鉛同等物は通常、単一のアルファ相をもたらす。この相はベータ相に比べて比較的柔らかい。
【0074】
表2は、ここに記載した所定の合金元素の亜鉛同等値をリストに挙げている。わかるように、すべての元素が亜鉛同等物と等しく寄与するわけではない。実際、ニッケルのような所定の元素は負の亜鉛値を有し、したがって亜鉛同等数と関連した機械的特性とを高水準で減少させる。
【0076】
脱亜鉛は、亜鉛が、典型的には15%を超えて存在する際に、塩素殺菌された水中に進出する場合に生じる。亜鉛の反応性は、弱い原子結合の故に高い。C99760及びC99770の亜鉛領域の上端ではあるが、アンチモンの存在が脱亜鉛を減少させるのに役立つことが考えられる。Zn−Sbの相状態図は、Sbが、Znの原子結合の強度を増加させるSb3Zn4のような金属間化合物を形成することができることを示している。したがって、増加したZnの原子結合の強度は、脱亜鉛が最小化されるように選択的な浸出への抵抗を増加させると考えられる。さらに、脱亜鉛は、溶液中のCu++の、陰極反応による合金上のCuへの還元によって生じる。Sbの添加は、この陰極銅還元反応を抑制するか、「害し」、それによって効果的に脱亜鉛を排除する。
【0077】
[焼鈍の研究(熱間及び冷間圧延)]
焼鈍の研究が、
図4Aに79880−030713−P4H6−7としてリストされた組成に対して行われた。この焼鈍の研究は、以下のパラメータを有していた。
1.0.5インチ厚みの永久鋳型鋳造された平板が、900℃で2時間、均一化され、熱間条件で圧延された;
2.エッジ亀裂が現れたので、800℃で間欠的に焼鈍され、熱間圧延が2回行われ、厚みが0.150インチに低減された;
3.これら熱間圧延されたシートは700℃で1時間、焼鈍され、空気中で冷却され、次いで0.040インチの厚みまで数回冷間圧延された;
4.冷間圧延されたシートからのサンプルが引張測定及び硬さ測定のために切り出された;
5.引張試験が冷間圧延及び焼鈍の条件で行われた。焼鈍は1100F、1200F、及び1290F(593℃、650℃、及び700℃)で1時間、行われた。
【0078】
図16〜
図21は焼鈍の研究に関する。
図16及び
図17は冷間圧延された実施に関し、
図18及び
図19は永久鋳造された実施に関し、
図20及び21は冷間圧延され焼鈍(1200F、1時間)された実施に関する。この焼鈍の研究は等時焼鈍の挙動を示していた。冷間圧延された試験片は示された温度それぞれで1時間、焼鈍され、次いで空冷された。異なる焼鈍温度での硬さのデータは、回復が400℃までに行われることを示す。再結晶は450℃〜650℃で生じる。結晶粒成長は、650℃の焼鈍温度を超えて行われる。間欠的焼鈍が熱間圧延及び冷間圧延中に必要とされる場合には、880℃近辺で行われるべきである。再結晶した微細構造が示される。
図25Aは、焼鈍温度の情報と機械特性とを示す表である。
図25B及び
図25Cは、硬度対焼鈍温度のグラフである。
【0079】
[色の比較]
目的は、合金C99760と合金C99770とが色において、六価クロムでメッキされた(CP)部品との比較においてどのくらい近いかを示すことである。このために、標準的な六価クロムでメッキされた(CP)被覆が使用される。六価クロムでメッキされた(CP)被覆は、この試験が基づくゼロとして規定された。
図10は、バフ研磨されたC99760及びC99770に対する、明るさ、赤又は緑の値、及び青又は黄の値を基準の被覆との比較で示す。これらデータは、C99760がCP部品から2.1ユニットだけ暗く、2.15ユニット赤く、8.37ユニット黄色であることを示している。
図11は反射率の比較を示す。CP被覆の反射率は予定の100から66.511である。合金C99760及び合金C99770の場合には、反射率の値はわずかに低下し、それぞれ62.464及び63.786であった。白色合金はバフ研磨された状態で使用されるので、これらデータは2つの白色合金がCP被覆に対して遜色がないことを示している。
【0080】
[微細構造]
走査型電子顕微鏡(SEM)は、光学顕微鏡が可視光を使用するように、撮像のために電子を使用する。撮像は通常、細かいトポグラフィー的特徴の最良の分解能のために二次電子(SE)を使用して行われる。代替的に、後方散乱した電子(BE)による撮像は、原子番号に基づくコントラストを与えて、顕微鏡的組成の変化を分解するとともに、トポグラフィー的情報を与える。化学的定量分析及び化学的定性分析を、エネルギー分散型X線スペクトロメトリー(EDS)をSEMとともに使用して行うことができる。試験室によって使用される機器には、炭素及び炭素より大きな原子番号を有する元素を検知することができる(すなわち、水素、ヘリウム、リチウム、ベリリウム、及びボロンは検知できない)軽元素検知器が設けられている。
【0081】
サンプルのそれぞれは導電性エポキシ中に取り付けられ、金属組織学的に0.04μm仕上げに準備され、BE撮像を使用して分析され、さらに観察された粒子を同定された。
【0082】
サンプルは、20keVの励起電圧を使用するエネルギー分散型スペクトロスコピーを有する走査型電子顕微鏡〈SEM/EDS〉を使用して分析された。この機器には、炭素及び炭素より大きな原子番号を有する元素を検知することができる(すなわち、水素、ヘリウム、リチウム、ベリリウム、及びボロンは検知できない)軽元素検知器が設けられている。画像は、後方散乱電子(BE)検出器を使用して得られた。後方散乱電子画像では、大きな原子番号を有する元素は明るく見える。EDS分析では、結果は半定量的であり、別様に示さない限り重量%で得られる。
【0083】
観察されたサンプルは、銅リッチなマトリックスの全体を通じて分散した粒子からなる。画像解析が次いで行われ、粒子サイズが測定された。最小値、最大値、及び平均値が以下の表に報告されている。粒子サイズに対する画像解析は顕微鏡写真上で行われ、
図12及び
図14に示されている。
【0084】
[微細構造]
<C99760>
微細構造が、上述に説明されたようにC99760:66.11 Cu, 10.28 Ni, 10.90 Zn, 10.86 Mn, 0.021 S, 0.441 Sb, 0.408 Sn, 0.537 FE, 0.385 AI, 0.022 P, 0.002 Si and 0.015 Cの実施に対して研究された。
【0086】
C99760からのベース材料のSEM/EDXスペクトルの結果は、非常に大量の銅と少量のマンガン、鉄、ニッケル、及び亜鉛とからなる(場所4参照)。場所1及び3の明るい色調の相は、マンガン、鉄、ニッケル、銅、及び亜鉛に加えてアンチモン及び錫を示す(場所1及び3参照)。暗い色調の相は、大量の硫黄、銅、及びマンガンと少量の鉄、ニッケル、亜鉛、及びセレンを示す(場所2参照)。科学的半定量分析のデータは、上述の場所について以下の表に報告されている。代表的BE画像は、
図12F及び
図12Gに示されている。
【0088】
<C99770>
C99770の微細構造は、C99760: 99770−052313−P7H 1−7: 67.71 Cu, 5.32 Ni, 11.99 Zn, 12.88 Mn, 0.011 s, 0.514 sb, 0.669 sn, 0.508 fe, 0.344 ai, 0.031 p, 0.007 Pb, 0.002 Si and 0.004 Cの実施に対して上述に説明したように研究された。
【0090】
C99770からのベース材料のSEM/EDXスペクトルの結果は、大量の銅と少量のマンガン、鉄、ニッケル、及び亜鉛とからなる(場所1参照)。明るい白色の色調の相は、大量の鉛と少量の銅、マンガン、ニッケル、亜鉛、錫、及びアンチモンを示す(場所2参照)。暗い色調の相は、大量のリン及びマンガンと少量の鉄、ニッケル、銅、亜鉛、錫、及びアンチモンを示す(場所3参照)。場所4の明るい色調の相は、大量のアンチモン及びマンガンと、少量のニッケル、銅、亜鉛、及び錫を示す(場所4参照)。
【0092】
代表的なBE画像は200倍及び1000倍で取られており、
図14G及び
図14Hに示されている。
【0093】
<C79880>
C79880の2つのサンプルが研究された。これらサンプルは、
図4Aの79880−030813−P4H5−9の実施に基づいている。
【0094】
・サンプル1
図16A〜
図16F(BE及びEDS画像)及び
図17A〜
図17J(SEM及び元素分析)はサンプル1に関し、サンプル1は、C79880の冷間圧延された実施であった。
【0096】
サンプル1は、場所1において硫黄、マンガン、並びに少量の銅及びニッケルに加えて少量の珪素を含み、硫化マンガンが検出された。場所2は、主に銅と、亜鉛及びマンガンを含み、場所3も同様であるが硫黄は検出されなかった。
【0097】
・サンプル2
図18A〜
図18H(BE及びEDS画像)及び
図19A〜
図19J(SEM及び元素分析)はサンプル1に関し、サンプル1は、C79880の永久鋳型の実施であった。
【0099】
サンプル2は、場所2においてリン及びマンガン並びに少量の亜鉛及びアンチモンを含む。場所3は主に硫化マンガンであり場所4も同様である。場所5は主に銅及び亜鉛、並びに少量のマンガン及びニッケルである。
【0100】
・サンプル3
図20A〜
図20H(BE及びEDS画像)及び
図21A〜
図21J(SEM及び元素分析)はサンプル1に関し、サンプル1はC79880の冷間圧延され、焼鈍された実施であった。
【0102】
サンプル3は主に硫化マンガンを場所1において含んでいる。場所3は主に銅及びマンガンと、硫黄、亜鉛、及びニッケルである。場所4は主にリン、マンガン、及び鉄と、ニッケルである。場所5は、主に銅と幾らかのマンガン及び亜鉛、並びに少量のニッケルと微量のアンチモンである。
【0103】
[機械的特性(冷間圧延された状態及び焼鈍された状態)]
試験されたC99760及びC99770の機械的特性は優れた結果を示した。例えば、
・冷間圧延された状態にあるUTS及びYSは、洋銀(C74500 and C78200)及び白銅(C71000)のUTS及びYSよりも高い。
・焼鈍された状態にある機械的特性は洋銀(C78200)の機械的特性と同様である。
・これら機械的特性は、平板状、棒状、筒状の製品に対して白色金属が洋銀及び白銅と匹敵するということを示している。
・他の利点は、抗菌性の特徴及び白色の色である。
【0104】
[機械加工性]
C99770の実施は、C99760よりわずかに良好な評価を有する。これはまた、切りくずの形態からも明白である。しかし、C99770及びC99760は、他の銅色の合金と比べても遜色ない。
【0105】
本出願に記載した機械加工性試験は、以下の方法を使用して行われた。小片(piece parts)は、冷却材を供給された2軸のCNC Turning Centerによって加工された。切削工具はカーバイドインサートであった。機械加工性は、上述したCNC Turning Centerの始動中に使用されたエネルギーの比率に基づいている。計算式は以下のように書くことができる。
1.CF=(E1/E2)×100
2.CF=切削力
3.「既知の」合金C36000(CDA)の始動中に使用されるエネルギー
4.新規な合金の始動中に使用されるエネルギー
5.送り速度=.005IPR
6.スピンドルスピード=1599RPM
7.切削深さ=切削の半径方向深さ=0.038インチ
【0106】
電気計器が、切削工具が荷重を受けている間の電気的プル(electrical pull)を測定するのに使用された。このプルは、ミリアンペア測定を介して得られた。
【0107】
図23Aは、機械加工性評価に使用されたC99760合金の組成を与える。
図23B〜
図23Dは切りくずの形態を示している。
図24Aは、機械加工性評価に使用されたC99770合金の組成を与える。
図24B〜
図24Dは切りくずの形態を示している。硫黄、アンチモン、及び炭素の組み合わせは、C99760及びC99770の機械加工性を改善するのに役立っていたと考えられる。
【0108】
CCGだけでは切りくずの形態を改善しないと考えられる。アンチモン或いはアンチモン+硫黄が機械加工性を改善するのに効果的である。これら2つの添加、すなわちアンチモン+硫黄の添加は、わずかにより良好な切りくずの形態を得るのを可能にする力を有する。もしもアンチモン、炭素、及び硫黄の添加がなければ、切りくずの品質は非常に悪い。
【0109】
図示した実施形態の上記の説明は、図示及び説明の目的で行われてきた。それは開示された正確な形状に関して網羅的又は限定的であることを意図するものではなく、変形及び変化は上述の教示に照らして可能であるか、または開示された実施形態の実践から得ることができる。本発明の技術的範囲が特許請求の範囲及びその均等物によって規定されることが意図されている。