特許第6363669号(P6363669)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6363669
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】空気袋及び車両用シート装置
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/90 20180101AFI20180712BHJP
   B60N 2/22 20060101ALI20180712BHJP
   A47C 7/14 20060101ALI20180712BHJP
   A47C 7/46 20060101ALI20180712BHJP
   B60N 2/02 20060101ALI20180712BHJP
   A61H 7/00 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
   B60N2/90
   B60N2/22
   A47C7/14
   A47C7/46
   B60N2/02
   A61H7/00
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-171120(P2016-171120)
(22)【出願日】2016年9月1日
(65)【公開番号】特開2018-34729(P2018-34729A)
(43)【公開日】2018年3月8日
【審査請求日】2017年9月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】酒井 誠
(72)【発明者】
【氏名】水野 量介
(72)【発明者】
【氏名】関 誠雄
(72)【発明者】
【氏名】野末 勝也
(72)【発明者】
【氏名】横山 敬
(72)【発明者】
【氏名】田中 俊介
(72)【発明者】
【氏名】橋本 健司
【審査官】 望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−74245(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/178359(WO,A1)
【文献】 特開2010−69236(JP,A)
【文献】 特開2015−96383(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/90
A47C 7/14
A47C 7/46
A61H 7/00
B60N 2/02
B60N 2/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートの内側に固定されるベース部材と該ベース部材に対して回動可能に連結されたパドル部材との間に介在される袋部を有するとともに、
前記袋部は、二枚のシート材を貼り合わせてなるものであって、
前記袋部には、前記パドル部材の回動軸に沿った前記袋部の袋幅が、該袋部が収縮した状態において、前記ベース部材に連結された前記パドル部材の基端側から該パドル部材の先端側に向かって徐々に広くなるような拡幅部が設けられた空気袋。
【請求項2】
請求項1に記載の空気袋において、
前記拡幅部には、前記袋部の袋幅が、前記パドル部材の基端側から先端側に向かって一定の比率で広くなるような定率拡幅部が設定されること、を特徴とする空気袋。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の空気袋において、
前記各シート材の厚み方向に重なる複数の前記袋部を備えること、
を特徴とする空気袋。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れか一項に記載の空気袋において、
前記パドル部材の先端側において、前記袋部と前記ベース部材とを接続するストラップを備えること、を特徴とする空気袋。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れか一項に記載の空気袋を備えた車両用シート装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気袋及び車両用シート装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用のシート装置には、シートの内側に設けられた空気袋(ブラダ)を拡縮させることにより、そのシートサポート形状を変更可能なものがある。そして、例えば、特許文献1には、シートバックについて、そのサポート形状(ショルダーサポート)を変化させるものが開示されている。
【0003】
具体的には、この従来技術のシート装置は、シートの内側に固定されるベース部材(固定プレート)と、このベース部材に対して回動可能に連結されるパドル部材(回動プレート)と、これらのベース部材とパドル部材との間に介在される空気袋と、を備えている。即ち、このシート装置は、そのベース部材とパドル部材との間で拡縮する空気袋の押圧力に基づいてパドル部材が回動する。そして、このパドル部材がシートバックの内側から当該シートバックを押圧することにより、そのシートサポート形状が変化する構成になっている。
【0004】
また、このシート装置には、二枚のシート材(布)を貼り合わせることによって、その袋部が形成された空気袋が用いられている。そして、このような簡素な袋部構造を採用することで、その製造コストの削減が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015−96403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、このような二枚のシート材を貼り合わせてなる袋部を有した空気袋には、拡張時、その袋部の中央部分が大きく拡張するという特徴がある。このため、上記従来技術のシート装置のように、ベース部材に対してパドル部材が回動する構成においては、その拡張する空気袋によってパドル部材を広範囲に押圧することが難しいという問題がある。尚、上記特許文献1においてもまた、その回動可能に連結されたベース部材とパドル部材との間に介在される空気袋について、拡張時の形状が横断面視で略二等辺三角形状、即ち略楔形であることが望ましい旨が記載されている。しかしながら、その袋部を略楔形に拡張させる具体的な構造については何ら開示がないことから、この点において、なお改善の余地を残すものとなっていた。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、より好適に、ベース部材に対して回動可能に連結されたパドル部材を押圧することのできる空気袋及び車両用シート装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する空気袋は、シートの内側に固定されるベース部材と該ベース部材に対して回動可能に連結されたパドル部材との間に介在される袋部を有するとともに、前記袋部は、二枚のシート材を貼り合わせてなるものであって、前記袋部には、前記パドル部材の回動軸に沿った前記袋部の袋幅が、該袋部が収縮した状態において、前記ベース部材に連結された前記パドル部材の基端側から該パドル部材の先端側に向かって徐々に広くなるような拡幅部が設けられることが好ましい。
【0009】
上記構成によれば、袋部は、そのパドル部材の基端側に配置される第1端部側の膨らみ量よりもパドル部材の先端側に配置される第2端部側の膨らみ量の方が大きな略楔形状に拡張する。そして、これにより、その袋部が拡張した状態の空気袋が、パドル部材の基端側から先端側に亘って、より広範囲に押圧力を付与することができる。その結果、より好適に、そのベース部材に対して回動可能に連結されたパドル部材を押圧することができる。
【0010】
上記課題を解決する空気袋は、前記拡幅部には、前記袋部の袋幅が、前記パドル部材の基端側から先端側に向かって一定の比率で広くなるような定率拡幅部が設定されることが好ましい。
【0011】
上記構成によれば、袋部が拡張した状態において、その空気袋がパドル部材(及びベース部材)を押圧する面を平坦化(フラット化)することができる。そして、これにより、その袋部が拡張した状態の空気袋が、パドル部材に対し、より広範囲、且つ均等な押圧力を付与することができる。
【0012】
上記課題を解決する空気袋は、前記各シート材の厚み方向に重なる複数の前記袋部を備えることが好ましい。
上記構成によれば、パドル部材が大きく回動する場合においても、そのパドル部材に対し、より広範囲に押圧力を付与することができる。
【0013】
上記課題を解決する空気袋は、前記パドル部材の先端側において、前記袋部と前記ベース部材とを接続するストラップを備えることが好ましい。
上記構成によれば、袋部の拡張を妨げることなく、その袋部をベース部材に接続することができる。そして、パドル部材の基端側で袋部をベース部材に固定する構造と組み合わせることにより、例えば、組み付け時等、袋部が収縮した状態に生じやすい空気袋の捩じれを抑制することができる。
【0014】
上記課題を解決する車両用シート装置は、上記何れかの空気袋を備えることが好ましい。
上記構成によれば、より好適に、ベース部材に対して回動可能に連結されたパドル部材を押圧することが可能な車両用シート装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、より好適に、ベース部材に対して回動可能に連結されたパドル部材を押圧することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】内側に空気袋が設けられた車両シートの斜視図。
図2】シート装置の概略構成図。
図3】シート装置を構成するシートサポート装置の斜視図。
図4】ベース部材を共有するショルダーサポート装置、ランバーサポート装置及びバックペルビスサポート装置の正面図。
図5】ショルダーサポート装置の正面図。
図6】ショルダーサポート装置の分解斜視図。
図7】(a)(b)は、ショルダーサポート装置の断面図(図5におけるVII-VII断面、a:空気袋収縮時、b:空気袋拡張時)。
図8】(a)は、ベース部材に設けられた孔部近傍の拡大図、(b)は、パドル部材に設けられた係合突部近傍の拡大図。
図9】ショルダーサポート用の空気袋の平面図。
図10】(a)は、収縮状態における空気袋の側面図、(b)は、その拡大図。
図11】拡張状態における空気袋の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、空気圧式のシートサポート機能を有したシート装置の一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、車両用のシート1は、シートクッション2と、このシートクッション2の後端部に設けられたシートバック3と、を備えている。そして、そのシートバック3の上端には、ヘッドレスト4が設けられている。
【0018】
本実施形態のシート1において、シートバック3は、その両サイド部3a,3bが、それぞれ、前方に向かって膨出した形状を有している。更に、シートクッション2もまた、両サイド部2a,2bが、それぞれ、上方に向かって膨出した形状を有している。そして、本実施形態のシート1は、これにより、その乗員の良好な着座姿勢を確保し及びその着座姿勢を維持することが可能になっている。
【0019】
また、このシート1には、そのシートクッション2及びシートバック3の内側に複数の空気袋10(11〜16)が設けられている。具体的には、本実施形態のシート1において、シートバック3の内側には、その背もたれ面3sの肩部(ショルダー)、腰部(ランバー)及び下端部(バックペルビス)、並びに両サイド部3a,3bに対応する位置に、それぞれ、独立した空気袋11(11a,11b),12(12a〜12c),13,14(14a,14b)が設けられている。更に、シートクッション2についてもまた、その着座面2sにおける後端部(クッションペルビス)の内側、及び両サイド部2a,2bの内側に、それぞれ、独立した空気袋15,16(16a,16b)が設けられている。そして、本実施形態のシート1においては、これにより、各空気袋10の拡縮に基づいて、そのシートサポート形状を変更可能なシート装置20が形成されている。
【0020】
図2に示すように、本実施形態のシート装置20は、上記各空気袋10に空気を圧送するエアポンプ装置21と、これらの各空気袋10とエアポンプ装置21との間に介在された吸排気バルブ装置22と、を備えている。本実施形態のエアポンプ装置21には、モータ23を駆動源としてポンプ機構24を駆動する電動ポンプが用いられている。更に、吸排気バルブ装置22は、可撓性を有する樹脂製のエアチューブ25を介して各空気袋10及びエアポンプ装置21に接続されている。即ち、本実施形態のシート装置20は、これらのエアチューブ25及び吸排気バルブ装置22の内部通路によって、その各空気袋10及びエアポンプ装置21に連通する空気の流路Lが形成されている。そして、本実施形態の吸排気バルブ装置22は、これにより、その吸気バルブ26及び排気バルブ27を流路Lの途中に配置する構成になっている。
【0021】
また、本実施形態のシート装置20において、これらの各吸気バルブ26及び排気バルブ27、並びにエアポンプ装置21は、制御装置28によって、その作動が制御されている。具体的には、本実施形態の制御装置28には、各空気袋10の内圧Pや、図示しない操作スイッチに対する操作入力信号Scr、イグニッション信号Sig、及びドアロック信号Sdl等が入力される。そして、本実施形態の制御装置28は、これらの制御信号に基づいて、各空気袋10を拡縮させるべく、その各吸気バルブ26及び排気バルブ27、並びにエアポンプ装置21の作動を制御する構成になっている。
【0022】
さらに詳述すると、図3に示すように、本実施形態のシート装置20において、上記各空気袋10は、それぞれ、シート1のクッションパッド(図示略)を内側から押圧するシートサポート装置40(41〜46)を形成する。具体的には、ショルダーサポート装置41、バックサイドサポート装置44、クッションペルビスサポート装置45、及びクッションサイドサポート装置46は、それぞれ、その各空気袋10(11,14〜16)が、押圧部材となるパドル部材30(31,34〜36)と一体化された構造を有している。また、ランバーサポート装置42及びバックペルビスサポート装置43は、それぞれ、その各空気袋10(12,13)が、直接的にシート1のクッションパッドを押圧する構造になっている。そして、本実施形態のシート装置20は、これらの各シートサポート装置40が、それぞれ、その設置された位置において、シートサポート形状を変化させる構成になっている。
【0023】
(ショルダーサポート装置)
次に、本実施形態のシート装置20を構成するショルダーサポート装置41の構成について説明する。
【0024】
図4に示すように、本実施形態のシート装置20において、シートバック3の肩部に対応するショルダーサポート装置41は、シート1の内側に固定されるベース部材50を共有するかたちで、シートバック3の腰部に対応するランバーサポート装置42及び下端部に対応するバックペルビスサポート装置43と一体に設けられている。
【0025】
具体的には、図3及び図4に示すように、本実施形態のベース部材50は、略板状の外形を有してシートバック3の両サイドフレーム3f間に固定されている。また、ランバーサポート用の各空気袋12(12a〜12c)、及びバックペルビスサポート用の空気袋13は、それぞれ、上下方向に並ぶ態様で、このベース部材50に連結されている。そして、ショルダーサポート用のパドル部材31は、これらの各空気袋12,13よりも上側の位置において、そのベース部材50に連結されている。
【0026】
詳述すると、図5及び図6に示すように、本実施形態のシート装置20において、シートサポート用のパドル部材31は、略平板状の外形を有している。また、本実施形態のベース部材50は、その上端部分に、シート幅方向(図5中、左右方向)に離間して設けられた左右一対の支持部51を備えている。更に、本実施形態のシート装置20において、ショルダーサポート用に設けられた左右一対の空気袋11(11a,11b)は、それぞれ、これらの各支持部51に固定されている。そして、本実施形態のショルダーサポート装置41は、これらの支持部51に跨る態様で、そのパドル部材31がベース部材50に連結される構成になっている。
【0027】
具体的には、図5図7、及び図8(a)(b)に示すように、本実施形態のベース部材50は、その各支持部51の基端となる位置において当該ベース部材50を厚み方向に貫通する一対の孔部52を有している。また、パドル部材31の下端部31aには、そのベース部材50に対向する裏面Sd側に突出して当該ベース部材50の各孔部52に挿入される一対の係合突部54が設けられている。更に、これらの各係合突部54は、それぞれ、ベース部材50側の各孔部52内に挿入されることにより、その各孔部52に係合する。そして、本実施形態のパドル部材31は、これらの各係合突部54がベース部材50の各孔部52に係合する位置(係合位置Px)を支点として、そのベース部材50の上端部分に対して回動可能に連結される構成になっている。
【0028】
即ち、図7(a)(b)に示すように、本実施形態のショルダーサポート装置41は、ベース部材50(の各支持部51)とパドル部材31との間に介在された空気袋11が拡張することにより、その空気袋11に押圧されたパドル部材31が上記各係合突部54及び各孔部52の係合位置Pxを支点(回動支点X)に回動する。また、この回動によりパドル部材31の上端部31b側(図7中、上側)がベース部材50から離間する方向に変位することで、当該パドル部材31がシートバック3のクッションパッド(図示略)を内側から押圧する。そして、本実施形態のショルダーサポート装置41は、これにより、シートバック3の肩部において、その背もたれ面3s(図1参照)をシート1の前方側(図7中、左側)に膨出させることによって、シート1に着座した乗員の肩部が当接する部位、つまりは、そのシートバック3の肩部におけるシートサポート形状を変化させる構成になっている。
【0029】
また、図6及び図7に示すように、本実施形態のショルダーサポート装置41は、パドル部材31の上端部31bに接続部56を有して当該パドル部材31をベース部材50に接続する一対のケーブル部材57を備えている。即ち、本実施形態では、各係合突部54が設けられたパドル部材31の下端部31aが第1位置を構成し、これらケーブル部材57の接続部56が設けられたパドル部材31の上端部31bが第2位置を構成する。そして、本実施形態では、これにより、パドル部材31の回動範囲を制限するストッパ機構60が形成されている。
【0030】
具体的には、本実施形態のショルダーサポート装置41において、各ケーブル部材57の一端には、略円柱状の係合部57aが設けられている。また、パドル部材31の上端部31bには、これら各ケーブル部材57の係合部57aを係止する凹部61が設けられている。そして、本実施形態では、これにより、そのパドル部材31に対する各ケーブル部材57の接続部56が形成されている。
【0031】
また、各ケーブル部材57の他端には、略円板状の係止部57bが設けられている。そして、本実施形態のストッパ機構60は、これら各ケーブル部材57の係止部57bがベース部材50の上記各支持部51に係止されることにより、そのパドル部材31の回動範囲を制限する構成になっている。
【0032】
詳述すると、図7に示すように、本実施形態のショルダーサポート装置41において、各ケーブル部材57は、それぞれ、その係止部57bが設けられた側の端部が、パドル部材31に対向するベース部材50の表面Sa側から裏面Sb側に引き回されている。更に、本実施形態の各ケーブル部材57には、それぞれ、コイルバネ62が嵌挿されている。尚、本実施形態の各ケーブル部材57は、可撓性を有する樹脂素材を用いて形成されている。また、各ケーブル部材57の係止部57bは、コイルバネ62よりも大きな直径を有している。そして、ベース部材50の裏面Sb側には、これらの各コイルバネ62と一体に各ケーブル部材57の係止部57bを収容する一対のガイド凹部63が設けられている(図6参照)。
【0033】
具体的には、本実施形態のベース部材50において、これらの各ガイド凹部63は、上記各支持部51に設けられている。また、これらの各ガイド凹部63は、ベース部材50の上下方向に延びている。更に、これら各ガイド凹部63の開口部には、蓋部材64が取着されている。そして、本実施形態の各ガイド凹部63は、その内側に各コイルバネ62を保持する状態を維持したまま、各ケーブル部材57の係止部57bについて、その各ガイド凹部63内における上下方向移動を許容する構成になっている。
【0034】
即ち、本実施形態のショルダーサポート装置41は、空気袋11の拡張に伴いパドル部材31が回動することにより、当該パドル部材31が各ケーブル部材57を引張する。また、パドル部材31が各ケーブル部材57を引張することにより、その各ガイド凹部63内に収容された係止部57bが各コイルバネ62を圧縮しつつ上方に移動する。更に、その各コイルバネ62が圧縮限界に到達することにより、各ガイド凹部63内における係止部57bの上方移動が規制される。そして、本実施形態のショルダーサポート装置41は、これにより、そのパドル部材31の回動範囲が制限される構成になっている。
【0035】
また、本実施形態のショルダーサポート装置41は、空気袋11が収縮した場合、その圧縮された各コイルバネ62の弾性力(弾性復元力)に基づいて、各ケーブル部材57がパドル部材31を引張する。そして、これにより、その上端部31b側がベース部材50に近接する方向にパドル部材31が回動する構成になっている。
【0036】
さらに詳述すると、図7及び図8(b)に示すように、上記のようにベース部材50の各孔部52に係合することによりパドル部材31の回動支点Xを形成する当該パドル部材31の各係合突部54は、それぞれ、その挿入方向及び抜脱方向(引出方向)に摺動可能な状態でベース部材50の各孔部52に挿入されている。更に、これらの係合突部54は、上記のようにパドル部材31とのベース部材50との間に介在された空気袋11の拡縮状態に基づいて、そのベース部材50の各孔部52から引き出される方向、及び当該各孔部52内に挿入される方向に摺動するように構成されている。そして、本実施形態のパドル部材31は、これにより、その各係合突部54におけるベース部材50の各孔部52との係合位置Px、つまりはパドル部材31の回動支点Xが移動する構成になっている。
【0037】
具体的には、本実施形態のパドル部材31において、各係合突部54は、その各孔部52に係合する下側面54sを内側にして湾曲する略四角軸形状をなしている。そして、本実施形態のショルダーサポート装置41は、これにより、円滑に、その各係合突部54の摺動に応じてベース部材50の各孔部52に対する係合位置Pxが移動しつつ、この係合位置Pxを支点としてパドル部材31が回動する構成になっている。
【0038】
また、各係合突部54の先端54aには、抜け止め用の爪部65が設けられている。つまり、この爪部65は、ベース部材50の裏面Sb側から孔部52に係合することにより、その係合突部54が孔部52から引き出される方向の摺動を制限する。そして、本実施形態のショルダーサポート装置41は、これにより、そのパドル部材31が、ベース部材50から脱離しないように構成されている。
【0039】
即ち、本実施形態のショルダーサポート装置41は、拡張する空気袋11に押圧されてパドル部材31が回動する際、そのパドル部材31と一体に、各係合突部54がベース部材50の各孔部52から引き出される方向に摺動する。また、この摺動によって、各係合突部54は、そのベース部材50の各孔部52に対する係合位置、つまりはパドル部材31の回動支点Xとなる位置が先端54a側に移動する。そして、本実施形態のショルダーサポート装置41は、これにより、その各係合突部54が設けられた下端部31aを含め、パドル部材31全体がベース部材50から離間する方向(図7中、左側)に変位しつつ、その上端部31bが傾倒する態様で回動する構成になっている。
【0040】
更に、本実施形態のパドル部材31は、このようにベース部材50から離間する方向にスライド動作することによって、その見かけ上の回動中心Qが、パドル部材31の回動支点Xとなる係合突部54及びベース部材50の各孔部52から離間した位置に形成される構成になっている。具体的には、この見かけ上の回動中心Qは、略平板状をなすパドル本体66の延長線Nとベース部材50との交点P0に形成される。そして、本実施形態のショルダーサポート装置41は、これにより、シートバック3の肩部におけるシートサポート形状を、より広範囲に変化させることが可能になっている。
【0041】
つまり、シートバック3の肩部におけるシートサポート形状は、その内側で回動するパドル部材31がクッションパッド(図示略)を押圧することにより、シートバック3の背もたれ面3sが肩部の下方側で折れ曲がるように変化する。更に、この折れ位置は、そのパドル部材31について、見かけ上の回動中心Qが形成される位置により決定される。そして、本実施形態のショルダーサポート装置41は、これにより、シートバック3の背もたれ面3sが、その肩部より下方側の位置で折れ曲がるように膨出することで、その最適なシートサポート形状を設定することが可能となっている。
【0042】
(ショルダーサポート用の空気袋)
次に、本実施形態のシート装置20におけるショルダーサポート用の空気袋11について、その構成を説明する。
【0043】
図9図11に示すように、本実施形態のシート装置20において、ショルダーサポート用の各空気袋11は、それぞれ、二枚のシート材70a,70bを貼り合わせてなる袋部71を、そのシート材70a,70bの厚み方向に2つ重ねた構造を有している。
【0044】
具体的には、図9及び図10(a)(b)に示すように、各袋部71(71a,71b)は、厚み方向に重なる二枚のシート材70a,70bについて、その周縁部を互いに溶着することにより形成されている。そして、本実施形態の空気袋11は、その2つの袋部71a,71bがシート材70a,70bの厚み方向に重なる状態で、互いの中央部分を溶着した構成となっている。
【0045】
尚、本実施形態の各シート材70a,70bには、可撓性を有した樹脂素材が用いられている。また、本実施形態の空気袋11において、これら各シート材70a,70bの溶着には、例えば、高周波溶着が用いられる。そして、図9中には、ハッチングによって、その各溶着部α,βが示されている。
【0046】
図6図7及び図9に示すように、本実施形態の空気袋11は、各袋部71がベース部材50とパドル部材31との間に介在された状態において、そのベース部材50に連結されたパドル部材31の基端となる下端部31a側に配置される第1端部Z1(図9参照、同図中、右側の端部)に対し、そのエアチューブ25が接続される構成になっている。更に、この第1端部Z1には、貫通孔72aを有した一対の鍔部72が設けられている。そして、本実施形態の空気袋11は、この鍔部72を固定部として、例えば、クリップ等を用いてベース部材50の支持部51に固定される構成になっている。
【0047】
また、図9に示すように、本実施形態の各袋部71には、当該各袋部71が収縮した状態において、その袋幅Dが、第1端部Z1側から第2端部Z2側(図9中、右側から左側)に向かって徐々に広くなる拡幅部75が設けられている。換言すると、この拡幅部75は、空気袋11がベース部材50とパドル部材31との間に介在された状態において、そのパドル部材31の回動軸M(図5参照)に沿った各袋部71の袋幅Dが、パドル部材31の基端となる下端部31a側から先端となる上端部31b側に向かって徐々に広くなるように構成されている。尚、本実施形態のショルダーサポート装置41において、パドル部材31の回動軸Mは、上記のように、当該パドル部材31の回動支点Xとなる各係合突部54がベース部材50の各孔部52に係合する位置において、そのシート幅方向(図5参照、同図中、左右方向)に延びている。そして、本実施形態の各袋部71において、この拡幅部75には、更に、その袋幅Dが、第1端部Z1側から第2端部Z2側に向かって一定の比率で広くなるような定率拡幅部75aが設定されている。
【0048】
即ち、図11に示すように、このような拡幅部75を各袋部71に設けることで、これらの各袋部71は、それぞれ、そのパドル部材31の基端側(図11中、右側)に配置される第1端部Z1側の膨らみ量d1よりもパドル部材31の先端側(同図中、左側)に配置される第2端部Z2側の膨らみ量d2の方が大となる略楔形に拡張する。特に、この拡幅部75に定率拡幅部75aを設定することにより、これらの各袋部71が拡張した状態において、その空気袋11がパドル部材31の裏面Sd(及びベース部材50の表面Sa)を押圧する面を平坦化(フラット化)することができる(図7参照)。そして、本実施形態のショルダーサポート装置41は、これにより、その各袋部71が拡張した状態の空気袋11が、パドル部材31の下端部31a側から上端部31b側に亘って、より広範囲、且つ均等な押圧力を付与する構成になっている。
【0049】
更に、図6図7及び図9に示すように、本実施形態の空気袋11は、パドル部材31の上端部31b側に配置される第2端部Z2側において、その袋部71とベース部材50(の支持部51)との間を接続する二本のストラップ77を備えている。具体的には、これらのストラップ77は、袋部71を構成する各シート材70a,70bと同様の樹脂素材を用いて帯状に形成されている。本実施形態の空気袋11において、これらのストラップ77は、シート材70a,70bの厚み方向に重なる2つの袋部71a,71bのうち、そのベース部材50側に配置される袋部71aから延びている。そして、ベース部材50(の支持部51)の上端部には、これらの各ストラップ77の先端に設けられた抜止部78を係止する係止部79が設けられている。
【0050】
即ち、図7(a)に示すように、本実施形態の空気袋11において、これらのストラップ77は、各袋部71が収縮した状態にある場合には、その大部分がベース部材50の裏面Sb側に配置されている。また、図7(b)に示すように、これらのストラップ77は、各袋部71が拡張することにより、ベース部材50の表面Sa側に引き出される。そして、本実施形態の各ストラップ77は、これにより、その先端に設けられた抜止部78が、ベース部材50の裏面Sb側から当該ベース部材50の上端部に設けられた各係止部79に係合することによって、各袋部71a,71bの拡張を妨げることなく、これらの各袋部71a,71bをベース部材50に接続する構成になっている。
【0051】
以上、本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)シート装置20を構成するショルダーサポート装置41は、シート1の内側に固定されるベース部材50と、このベース部材50に対して回動可能に連結されるパドル部材31と、このパドル部材31とベース部材50との間に介在される袋部71を有した空気袋11と、を備える。空気袋11の袋部71は、二枚のシート材70a,70bを貼り合わせることにより形成される。そして、この袋部71には、そのパドル部材31の回動軸Mに沿った袋部71の袋幅Dが、当該袋部71が収縮した状態において、ベース部材に連結されたパドル部材の基端(下端部31a)側に配置される第1端部Z1側からパドル部材の先端(上端部31b)側に配置される第2端部Z2側に向かって徐々に広くなるような拡幅部75が設けられる。
【0052】
上記構成によれば、袋部71は、そのパドル部材31の基端側に配置される第1端部Z1側の膨らみ量d1よりもパドル部材31の先端側に配置される第2端部Z2側の膨らみ量d2の方が大きな略楔形に拡張する。そして、これにより、その袋部71が拡張した状態の空気袋11が、パドル部材31の下端部31a側から上端部31b側に亘って、より広範囲に押圧力を付与することができる。その結果、より好適に、そのベース部材50に対して回動可能に連結されたパドル部材31を押圧することができる。
【0053】
(2)拡幅部75には、その袋部71の袋幅Dが、パドル部材31の下端部31a側(基端側)から上端部31b側(先端側)に向かって一定の比率で広くなるような定率拡幅部75aが設定される。
【0054】
上記構成によれば、袋部71が拡張した状態において、その空気袋11がパドル部材31(及びベース部材50)を押圧する面を平坦化(フラット化)することができる。そして、これにより、その袋部71が拡張した状態の空気袋11が、パドル部材31に対し、より広範囲、且つ均等な押圧力を付与することができる。
【0055】
(3)空気袋11は、そのシート材70a,70bの厚み方向に重なる複数(2つ)の袋部71(71a,71b)を備える。これにより、パドル部材31が大きく回動する場合においても、パドル部材31に対し、より広範囲に押圧力を付与することができる。
【0056】
(4)空気袋11は、パドル部材31の先端となる上端部31b側において、その袋部71とベース部材50とを接続するストラップ77を備える。
上記構成によれば、袋部71の拡張を妨げることなく、その袋部71をベース部材50に接続することができる。そして、パドル部材31の基端となる下端部31a側で袋部71をベース部材50に固定する構造と組み合わせることにより、例えば、組み付け時等、袋部71が収縮した状態に生じやすい空気袋11の捩じれを抑制することができる。
【0057】
(5)パドル部材31には、ベース部材50に設けられた孔部52に挿入されることにより当該孔部52に係合して、そのパドル部材31の回動支点Xを形成する係合突部54が設けられる。そして、この係合突部54は、パドル部材31が空気袋11に押圧されることによりベース部材50の孔部52から引き出される方向に摺動して、その孔部52に対する係合位置Pxが係合突部54の先端54a側に移動する。
【0058】
上記構成によれば、パドル部材31は、当該パドル部材31とベース部材50との間に介在された空気袋11の拡張によって、そのパドル部材31全体がベース部材50から離間する方向に変位しながら回動する。更に、このようなベース部材50から離間する方向のスライド動作によって、パドル部材31は、その見かけ上の回動中心Qが、当該パドル部材31の回動支点Xとなる係合突部54及びベース部材50の孔部52から離間した位置に形成されることになる。そして、これにより、そのパドル部材31の回動に基づいて、より広範囲にシートサポート形状を変化させることができる。その結果、より簡素な構成にて、最適なシートサポート形状を設定することができる。
【0059】
(6)特に、ショルダーサポート装置41の場合、シートバック3の内側で上端部31bが傾倒するようにパドル部材31が回動することによって、そのパドル部材31の押圧力に基づいて、シートバック3の背もたれ面3sが肩部の下方側で折れ曲がる態様で、その肩部におけるシートサポート形状が変化する。そして、この折れ位置は、そのパドル部材31について、見かけ上の回動中心Qが形成される位置により決定される。従って、上記構成によれば、シートバック3の背もたれ面3sを、より下方側の位置で折れ曲がるように膨出させることができる。そして、これにより、シートバック3の肩部について、最適なシートサポート形状を設定することができる。
【0060】
(7)係合突部54は、ベース部材50の孔部52に対する係合位置Pxを内側にして湾曲した軸形状をなすように構成される。これにより、より円滑に、その係合突部54の摺動に応じてベース部材50の孔部52に対する係合位置Pxが移動しつつ、この係合位置Pxを支点としてパドル部材31を回動させることができる。
【0061】
(8)係合突部54の先端54aには、ベース部材50の裏面Sb側から孔部52に係合することにより、その係合突部54が孔部52から引き出される方向の摺動を制限する抜止部としての爪部65が設けられる。このような構成を採用することで、パドル部材31が、ベース部材50から脱離しないようにすることができる。そして、これにより、高い信頼性及び質感を確保することができる。
【0062】
(9)ショルダーサポート装置41は、パドル部材31の上端部31bに接続部56を有して当該パドル部材31とベース部材50とを連結するケーブル部材57を備える。そして、このケーブル部材57が、そのパドル部材31の回動範囲を制限するストッパ機構60として機能する。
【0063】
上記構成によれば、例えば、シートバック3の背もたれ面3sを前方側に引っ張る等の人為的な操作によってパドル部材31が回動した場合であっても、その過度な回動を規制することができる。そして、これにより、高い信頼性及び質感を確保することができる。
【0064】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、ベース部材側の孔部52及びパドル部材31側の係合突部54を、それぞれ、シート幅方向に離間した二箇所に設けることとしたが、その数や配置等は、任意に変更してもよい。
【0065】
・上記実施形態では、係合突部54は、ベース部材50の孔部52に対する係合位置Pxを内側にして湾曲した四角軸形状をなすように構成されることとした。しかし、これに限らず、挿入方向及び抜脱方向(引出方向)に摺動可能な状態でベース部材50の孔部52に挿入されることで、その摺動に伴い係合突部54における当該係合突部54と孔部52との係合位置Px、即ちパドル部材31の回動支点Xが移動する構成であれば、例えば直線的な軸形状、爪形状や鈎形状等、その形状は任意に変更してもよい。また、必ずしも、その先端54aに抜け止め用の爪部65を備えた構成でなくともよい。そして、ベース部材50の孔部52についてもまた、その挿入される係合突部54の形状に合わせて任意に孔形状を変更してもよい。
【0066】
・上記実施形態では、ストッパ機構60を構成するケーブル部材57は、パドル部材31の上端部31bに接続部56を有して当該パドル部材31をベース部材50に接続することとした。しかし、これに限らず、係合突部54が設けられた位置をパドル部材31の第1位置とし、この第1位置から離間した第2位置にパドル部材31に対する接続部56を有してパドル部材31の回動範囲を制限することが可能であれば、その接続部56が設けられる第2位置は任意に変更してもよい。また、ケーブル部材57の数や形状、或いは素材や配置、更には、パドル部材31及びベース部材50に対する接続構造等は、任意に変更してもよい。そして、ケーブル部材57以外の形態を含め、このようなストッパ機構60を備えない構成についてもまた、これを排除しない。
【0067】
・上記実施形態では、ショルダーサポート用の空気袋11は、シート材70a,70bの厚み方向に2つの袋部71a,71bを重ねた構造を有することとしたが、袋部71の数は、一つでも3つ以上であってもよい。そして、複数の袋部71を備える場合についてもまた、必ずしも、その各袋部71がシート材70a,70bの厚み方向に重なる構造を有していなくともよい。
【0068】
・空気袋11の袋部71を構成する各シート材70a,70bの材質や形状、或いは、その貼り合わせ方法については任意に変更してもよい。また、拡幅部75を有するものであれば、定率拡幅部75aについては、必ずしも備えていなくともよい。更に、ストラップ77の形状についても、例えば、紐状等、帯状に限らず、任意に変更してもよい。そして、このようなストラップ77を備えない構成についてもまた、これを排除しない。
【0069】
・上記実施形態に開示したベース部材50に対するパドル部材31の回動連結構造、及び、これらのベース部材50とパドル部材31との間に介在される空気袋11の構造については、ショルダーサポート装置41以外のシートサポート装置40に適用してもよい。即ち、例えば、バックサイドサポート装置44やクッションサイドサポート装置46等、シート1の内側に設けられたパドル部材30がベース部材に対して回動することによりシート表面1sを膨出させて、そのシートサポート形状を変更するものであれば、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。そして、上記実施形態に開示した空気袋11の袋部構造を採用するシートサポート装置40(シート装置20)において、例えば、ヒンジを用いる等、上記実施形態とは異なるパドル部材31の回動連結構造を適用してもよい。
【0070】
次に、以上の実施形態から把握することのできる技術的思想を効果とともに記載する。
(イ)前記パドル部材は、前記空気袋の拡縮に基づき回動することによりシートサポート形状を変化させるものであって、前記パドル部材には、前記ベース部材に設けられた孔部に挿入されることにより該孔部に係合して前記パドル部材の回動支点を形成する係合突部が設けられるとともに、前記係合突部は、前記パドル部材が前記空気袋に押圧されることにより前記ベース部材の孔部から引き出される方向に摺動して、該孔部に対する係合位置が前記係合突部の先端側に移動すること、を特徴とする車両用シート装置。
【0071】
上記構成によれば、パドル部材は、当該パドル部材とベース部材との間に介在された空気袋の拡張によって、そのパドル部材全体がベース部材から離間する方向に変位しながら回動する。更に、このようなベース部材から離間する方向のスライド動作によって、パドル部材は、その見かけ上の回動中心が、当該パドル部材の回動支点となる係合突部及びベース部材の孔部から離間した位置に形成されることになる。そして、これにより、そのパドル部材の回動に基づいて、より広範囲にシートサポート形状を変化させることができる。その結果、より簡素な構成にて、最適なシートサポート形状を設定することができる。
【0072】
(ロ)前記係合突部は、前記ベース部材の孔部に対する前記係合位置を内側にして湾曲した軸形状をなすこと、を特徴とする車両用シート装置。
上記構成によれば、より円滑に、その係合突部の摺動に応じてベース部材の孔部に対する係合位置が移動しつつ、この係合位置を支点としてパドル部材を回動させることができる。
【0073】
(ハ)前記係合突部には、前記ベース部材の孔部に係合することにより該孔部から前記係合突部が引き出される方向の摺動を制限する抜止部が設けられること、を特徴とする車両用シート装置。
【0074】
上記構成によれば、パドル部材が、ベース部材から脱離しないようにすることができる。そして、これにより、高い信頼性及び質感を確保することができる。
(ニ)前記係合突部が設けられた第1位置から離間した第2位置に前記パドル部材に対する接続部を有して該パドル部材と前記ベース部材とを連結することにより前記パドル部材の回動範囲を制限するストッパ機構を備えること、を特徴とする車両用シート装置。
【0075】
上記構成によれば、例えば、シートバックの背もたれ面を前方側に引っ張る等の人為的な操作によってパドル部材が回動した場合であっても、その過度な回動を規制することができる。そして、これにより、高い信頼性及び質感を確保することができる。
【0076】
(ホ)前記パドル部材は、シートバックの肩部において前記シートサポート形状を変化させるものであること、を特徴とする車両用シート装置。
即ち、シートバックの肩部においてシートサポート形状を変化させる場合、当該シートバックは、その内側で回動(傾倒)するパドル部材の押圧力によって、背もたれ面が肩部の下方側で折れ曲がるように、そのシートサポート形状が変化する。そして、この折れ位置は、そのパドル部材について、見かけ上の回動中心が形成される位置により決定される。従って、上記構成によれば、シートバックの背もたれ面を、より下方側の位置で折れ曲がるように膨出させることができる。そして、これにより、シートバックの肩部について、最適なシートサポート形状を設定することができる。
【符号の説明】
【0077】
1…シート、2…シートクッション、3…シートバック、3s…背もたれ面、10,11…空気袋、20…シート装置、30,31…パドル部材、31a…下端部(第1位置)、31b…上端部(第2位置)、40…シートサポート装置、41…ショルダーサポート装置、50…ベース部材、51…支持部、52…孔部、54…係合突部、54a…先端、54s…下側面、56…接続部、57…ケーブル部材、57a…係合部、57b…係止部、60…ストッパ機構、61…凹部、62…コイルバネ、63…ガイド凹部、65…爪部(抜止部)、66…パドル本体、70a,70b…シート材、71(71a,71b)…袋部、75…拡幅部、75a…定率拡幅部、77…ストラップ、Px…係合位置、X…回動支点、M…回動軸、N…延長線、P0…交点、Q…回動中心、α,β…溶着部、Z1…第1端部、Z2…第2端部、D…袋幅、d1,d2…膨らみ量。
図1
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図11