(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
配列番号16のアミノ酸配列に関して少なくとも1つの配列変化を有するアミノ酸配列を含む単離変異形第VII因子ポリペプチドであって、該少なくとも1つの配列変化が、P10Q、K32E、R36E、A34E、T106N及びV253Nから成る群より選択され、該ポリペプチドが0であるN結合型グリカンのモルに対する抱合型シアル酸のモルの比を有する、前記変異形第VII因子ポリペプチド。
P10Q、K32E、R36E、A34E、T106N及びV253Nから成る群より選択される2以上の配列変化を含む、請求項1に記載の単離変異形第VII因子ポリペプチド。
P10Q、K32E、R36E、A34E、T106N及びV253Nから成る群より選択される3以上の配列変化を含む、請求項1に記載の単離変異形第VII因子ポリペプチド。
P10Q、K32E、R36E、A34E、T106N及びV253Nから成る群より選択される4以上の配列変化を含む、請求項1に記載の単離変異形第VII因子ポリペプチド。
P10Q、K32E、R36E、A34E、T106N及びV253Nから成る群より選択される5以上の配列変化を含む、請求項1に記載の単離変異形第VII因子ポリペプチド。
前記アミノ酸配列が、P10Q、K32E、R36E、A34E、T106N及びV253Nの配列変化を有する配列番号16のアミノ酸配列から成る、請求項1に記載の単離変異形第VII因子ポリペプチド。
前記アミノ酸配列が、P10Q、K32E、T106N及びV253Nの配列変化を有する配列番号16のアミノ酸配列から成る、請求項1に記載の単離変異形第VII因子ポリペプチド。
前記変異形第VII因子ポリペプチドが、P10Q、K32E、R36E、A34E、T106N及びV253Nから成る群より選択される4以上の配列変化を含む変異配列を含む、請求項10に記載の方法。
前記変異形第VII因子ポリペプチドが、P10Q、K32E、R36E、A34E、T106N及びV253Nから成る群より選択される4以上の配列変化を含む変異配列を含む、請求項12に記載の方法。
前記変異形第VII因子ポリペプチドが、P10Q、K32E、R36E、A34E、T106N及びV253Nから成る群より選択される4以上の配列変化を含む変異配列を含む、請求項14に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0023】
急性出血の治療において血栓性合併症を制限するために組換え第VII因子ポリペプチド(野生型または変異体)の薬物動態を調節する方法が本明細書で記載される。シアル酸抱合が減少した第VII因子ポリペプチドも記載される。血液からのクリアランスが増強し、有効性の持続期間が減少した組換え第VII因子の変異体がさらに記載される。このような変異体は、変化したグリコシル化パターンにより、組換え野生型第VII因子よりも短いインビボでの半減期を有する。このような短時間作用性第VII因子ポリペプチドを製造および使用する方法も記載される。
【0024】
第VII因子およびグリコシル化を説明するために、
図3および
図4を提供する。
図3は、そのドメインを有する第VII因子分子の3つの例を模式的に示している。第VII因子は、Gla、EGFおよび触媒ドメインからなり、かつ2個のN結合型グリカン(N145およびN322)を含有するタンパク質である。V1は4個の変異(P10Q、K32E、T106N、V253N)を有する第VII因子変異体である。V2は6個の変異(P10Q、K32E、A343、R36E、T106N、V253N)を有する第VII因子変異体である。V1およびV2は共に活性化血小板に対する増加した親和性を有し、野生型第VII因子と比べて長い半減期をもたらすさらに2個のN−グリコシル化部位を含有する。V2にのみ見られる2個の突然変異(A34E、R36E)は、その組織因子非依存性を説明すると考えられている。
【0025】
図4は、Asn−X−Ser/Thrコンセンサス配列中のAsnにおける結合を示すN結合型グリカンの例を模式的に示している。末端シアル酸を含む種々の単糖を有するMan
3(GlcNac)
2コアを示している。
【0026】
所望の短い半減期を有する第VII因子ポリペプチドを調製する方法が本明細書で提供される。短時間作用性第VII因子ポリペプチドを製造するための2つの一般的な方法が提供され、これらの方法を別々にまたは組み合わせて用いることができる。第VII因子変異体の一例を用いて
図5に模式的に示されるように、グリコシル化第VII因子変異体を、脱シアリル化または脱グリコシル化によって処理して変異体のグリコシル化パターンを変化させ、それによって、その半減期を変化、好ましくは短縮することができる。この方法を用いて野生型第VII因子ポリペプチドを脱シアリル化することもできるだろう。
【0027】
脱シアリル化は、当技術分野で既知の任意の方法によって起こり得る。適切な方法の例としては、それだけに限らないが、ノイラミニダーゼ−アガロースビーズ(Sigma N5254)を含むシアリダーゼ、ならびにGI:40479およびFEBS Lett.238(1)、31〜34(1988)で同定されたウェルシュ菌(Clostridium perfringens)のノイラミニダーゼを含む脱シアリル化するよう機能する任意の既知の酵素と接触させることによる酵素的脱シアリル化が挙げられる。このような脱シアリル化は、部分的に精製した組換え第VII因子ポリペプチドを適切な条件下インビトロでシアリダーゼと接触させること、または組換え第VII因子ポリペプチドを発現している宿主細胞中でのシアリダーゼの同時発現によって達成され得る。インビトロでの接触は、部分的脱シアリル化のみが起こるような持続時間となり得る。例えば、所望の半減期を第VII因子ポリペプチドの組成物中0.5〜1モルの抱合型シアル酸と一定モルのN結合型グリカンの比を有する分子から得ることができる場合、完全な脱シアリル化が起こる前の限られた期間シアリダーゼと接触させることが推奨される。部分的脱シアリル化は、修飾シアリダーゼを使用すること、第VII因子ポリペプチドをシアリダーゼの完全な機能を遅くするもしくは損なう条件下でシアリダーゼと接触させること、または部分的脱シアリル化ポリペプチドのみ産生する当業者に明らかな他の方法によっても得られ得る。部分的脱シアリル化は、完全に脱シアリル化された基準調製物中の抱合型シアル酸とグリカンの比との比較によって測定され得る。
【0028】
脱シアリル化はまた、シアル酸付加に必要とされる1種または複数の細胞成分を欠くまたは欠乏している細胞系での第VII因子ポリペプチド(野生型または変異体)の発現を通しても達成され得る。特定の細胞系はシアリル化を減少させるまたは除去するよう修飾されているまたはされ得る。例えば、チャイニーズハムスター卵巣(「CHO」)起源のLec2細胞は、野生型細胞よりおよそ10倍少ないシアル酸を含む糖タンパク質を産生する。グリカンの脱シアリル化は、アシアロ糖タンパク質受容体(ASGPR)を含む肝臓受容体によって活発に排除され得る分子をもたらし、この理由のために、半減期が短縮すると考えられる。
【0029】
第2のアプローチは、第VII因子変異体を脱グリコシル化し、それによって半減期が短縮した分子を得るというものである。グリコシル化の減少によって、腎クリアランス(50〜60Kdカットオフ、Caliceti PおよびVeronese FM、「Pharmacokinetic and biodistribution properties of poly(ethylene glycol)−protein conjugates」、Adv Drug Deliv Rev.2003;55(10):1261〜77、Weinstein T ら、「Distribution of glycosaminoglycans in rat renal tubular epithelium」、J Am Soc Nephrol.1997;8(4):586〜95、Choi HSら、「Renal clearance of quantum dots」、Nat Biotechnol.2007;25(10):1165〜70に概説)、表面電荷および等電点(pI)電荷(糖タンパク質循環の増加と関連していた、Byrne B.ら、「Sialic acids:carbohydrate moieties that influence the biological and physical properties of biopharmaceutical proteins and living cells」、Drug Discovery Today 2007;12(7〜8):319の概説参照)、および任意の数の血漿プロテアーゼからの少ない糖タンパク質媒介保護(Ton G.ら、2005、Nie Yら、2006)を通して第VII因子のクリアランスが増強される。
【0030】
本明細書で使用される脱グリコシル化は、限定されないが、基準第VII因子ポリペプチドと比較して変化したアミノ酸配列をもたらす第VII因子ポリペプチドの遺伝子改変を含み、この変化によりN結合型グリコシル化部位が除去される。例えば、第VII因子変異体は、N結合型グリカンコンセンサス配列、すなわち、Asn−X−Ser/Thr(Xはプロリン以外の任意のアミノ酸を表す)に必要とされる1個または複数のアミノ酸残基でのグリコシル化を破壊する変化により作成され得る。本明細書で使用する場合、第VII因子アミノ酸配列の「グリコシル化を破壊する変化」とは、1個または複数のアミノ酸残基の置換、付加または欠失をもたらし、かつN結合型グリコシル化のための1つまたは複数の部位の喪失をもたらす野生型第VII因子に関する変化を指す。例えば、N結合型グリコシル化部位は、共に野生型第VII因子中に存在するN145および/またはN322を、任意のアミノ酸(天然または非天然)で置き換えることによって除去され得る。グリコシル化部位は、グリコシル化を破壊するよう変化させた場合に活性に及ぼす影響が最小であることが確認されるべきである。別の例では、脱グリコシル化が、グリコシル化のための機構を欠く細胞系での第VII因子ポリペプチド(野生型または変異体)の発現によって起こり得る。例えば、細菌細胞はグリコシル化のための細胞機構を欠くので、細菌細胞で産生される第VII因子は、完全に非グリコシル化されていると予想される。別の実施形態では、第VII因子ポリペプチドが、末端グリコシル化酵素を欠く、またはこのような酵素を有しているが、1個または複数が野生型細胞系で見られるものより小さい活性を有する細胞系で産生される。例えば、Appa R.ら、201、Narita Mら、1998、Seestedら、2010を参照されたい。別の実施形態では、第VII因子ポリペプチドが、グリカンの合成もしくは第VII因子への結合に関与する酵素の欠損、またはCMP−シアル酸トランスポーターの合成に関与する酵素の欠損を持つ細胞系で産生される。別の実施形態では、第VII因子ポリペプチドをデグリコシラーゼ(deglycosylase)または脱グリコシル化する化学物質で処理する。
【0031】
シアリダーゼ、デグリコシラーゼまたは第VII因子ポリペプチドからグリカンを減少させるもしくは除去する化学物質による処理は、発現、精製または精製後に起こり得る。
【0032】
一実施形態では、第VII因子変異体V1(N322、N145)または第VII因子変異体V2(N322、N145、N106、N253)中のN結合型グリコシル化部位の少なくとも1つを、活性に対する最小限の影響で選択的に除去した。N−グリカン部位を、N−グリカンコンセンサス配列を破壊することによって、DNAレベルで消した。N(アスパラギン)コドンの除去およびQ(グルタミン)コドンによる置換によってこれを行った。
図6は、ヒポグリコシル化変異体の例を示す表である。グリコシル化変異体を、野生型第VII因子(本明細書では「F7」と呼ぶ)、V1およびV2骨格で作成した。V1およびV2中の操作したN−グリカン部位(N106、N253)をその野生型配列(T106、V253)に戻した。変異体pMB113、pMB117およびpMB121はそれぞれ2個の内因性N−グリコシル化部位(N145、N322)を含有する野生型第VII因子、V1およびV2構築物である。
図6の他の全ての変異体は、NからQへの変異(N145Q、N322Q)を導入することによって除去された内因性N−グリカン部位の一方または両方を有していた。この脱グリコシル化アプローチによりより速いクリアランスがもたらされる。
【0033】
本開示の一態様では、脱グリコシル化および脱シアリル化を組み合わせて、所望の短縮した半減期を有する第VII因子ポリペプチドを得る。例えば、第VII因子分子を遺伝子組換えして、野生型第VII因子中に存在する2つを超える追加のN結合型グリコシル化部位を含めることができる。次いで、本明細書に記載される方法の1つを用いて、この変異体を脱シアリル化することができる。次いで、得られた分子は、末端シアル酸を含まない各N結合型グリコシル化部位でグリカン構造を保持し得る。本明細書で報告される実験で、出願人らは、有するN結合型グリコシル化部位が少ない類似の脱シアリル化第VII因子変異体よりも速い排除時間を有する変異体を報告する。同様に、野生型第VII因子に見られる2つのN結合型グリコシル化部位のみを有する第VII因子ポリペプチドを、これらの部位の1つで脱グリコシル化し、次いで、脱シアリル化に供することができる。シアル酸を欠く1個のN結合型グリカンを有する得られた第VII因子変異体は、本明細書で報告される実験証拠に基づいて、第2のN結合型グリコシル化部位を欠いていない類似の第VII因子ポリペプチドとは異なる薬物動態を有する。
【0034】
定義および実施形態
特に定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術的および科学的用語は、一般的に本開示が属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。一般的に、本明細書で使用される命名法ならびに細胞培養、分子遺伝学、有機化学、および核酸化学およびハイブリダイゼーションの実験室手順は、当技術分野で周知でありかつ一般的に使用されているものである。核酸およびポリペプチド合成のために標準的な技術を使用する。本明細書で使用される命名法ならびに下記の分析化学および有機合成の実験室手順は、当技術分野で周知でありかつ一般的に使用されているものである。化学合成および化学分析のために標準的な技術またはその修正を使用する。遺伝子操作に使用される手順は周知であり、例えば、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor、N.Y.に見出され得る。
【0035】
「シアル酸」または「シアリル」という用語は、九炭素カルボキシル化糖のファミリーのいずれかのメンバーを指す。シアル酸ファミリーの最も一般的なメンバーは、N−アセチル−ノイラミン酸(2−ケト−5−アセトアミド−3,5−ジデオキシ−D−グリセロ−D−ガラクトノヌロピラノース(galactononulopyranos)−1−オン酸(通常Neu5Ac、NeuAcまたはNANAと略される))である。
【0036】
「ポリペプチド」および「タンパク質」という用語は、本明細書で互換的に使用され、モノマーがアミノ酸であり、かつアミド結合を通して結合されているポリマーを指す。さらに、非天然アミノ酸、例えば、β−アラニン、フェニルグリシンおよびホモアルギニンも含まれる。遺伝子コードされていないアミノ酸も本明細書で開示される技術で使用することができる。さらに、反応性基、グリコシル化部位、ポリマー、治療部分、生体分子などを含むよう修飾されたアミノ酸も使用することができる。本明細書で使用されるアミノ酸の全てはD−またはL−異性体のいずれであってもよい。L−異性体が一般的に好ましい。本明細書で使用する場合、「ポリペプチド」および「タンパク質」は、グリコシル化と非グリコシル化両方のポリペプチドおよびタンパク質をそれぞれ指す。
【0037】
「アミノ酸」という用語は、天然および合成アミノ酸、ならびに天然アミノ酸と同様に機能するアミノ酸類似体およびアミノ酸模倣体を指す。天然アミノ酸は、遺伝暗号によってコードされているもの、ならびに後に修飾されるアミノ酸、例えば、ヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタミン酸およびO−ホスホセリンである。「アミノ酸類似体」は、天然アミノ酸と同じ基本化学構造、すなわち、水素、カルボキシル基、アミノ酸およびR基に結合したα炭素を有する化合物、例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムを指す。このような類似体は、修飾R基(例えば、ノルロイシン)または修飾ペプチド骨格を有するが、天然アミノ酸と同じ基本化学構造を保持している。「アミノ酸模倣体」は、アミノ酸の一般的化学構造とは異なるが、天然アミノ酸と同様に機能する構造を有する化学化合物を指す。
【0038】
ポリペプチドまたはタンパク質薬物を患者に投与する文脈において本明細書で使用される「半減期」または「t1/2」という用語は、患者における薬物の血漿中濃度が2分の1低下するのに要する時間として定義される。
【0039】
半減期は、例えば、約25〜250μg/kgの用量の製剤を投与し:投与後の所定の時間に血漿試料を得て;凝固アッセイ(もしくは任意の生物検定)、免疫測定法または同等の方法の1つまたは複数を用いて試料中の第VII因子ポリペプチドの含量を測定することによって、試験動物で測定することができる。データを図表で表示し、次いで、生物学的利用能を曲線下の面積として決定する。特定の例では、ラットまたはマウスモデルを半減期測定に使用する。第VII因子ポリペプチドまたはその組成物の相対的生物学的利用能は、短時間作用性第VII因子ポリペプチドの曲線下の面積と野生型第VII因子または別の適切なコンパレータポリペプチド(comparator polypeptide)もしくはタンパク質の曲線下の面積の比を指す。第VII因子の血液凝固活性を有するいずれの第VII因子変異体も本明細書に記載される目的および方法に有用である。本明細書で使用される第VII因子変異体はポリペプチドである。「変異形第VII因子ポリペプチド」および「第VII因子変異体」という用語は本明細書で互換的に使用される。一実施形態では、第VII因子変異体が、1個または複数のアミノ酸の置換、欠失および/または挿入による野生型第VII因子(配列番号16)由来のアミノ酸配列を有する。アミノ酸置換の命名において、第1の文字はある位置で野生型ヒト第VII因子中に存在するアミノ酸を表す。次の数字はヒト野生型第VII因子中の位置を表す。第2の文字は野生型に見られるアミノ酸に置き換わるアミノ酸を表す。例えば、「P10Q」は、アミノ酸10位におけるプロリン(P)のグルタミン(Q)による置換を表す。
【0040】
特定の例では、第VII因子変異体がP10Q、K32E、R36E、A34E、T106NおよびV253Nからなる群から選択される1個または複数のアミノ酸置換を含む。他の例では、第VII因子変異体がこれらの置換の少なくとも2、3、4、5または6個を含む。さらなる例では、第VII因子変異体が配列番号16のアミノ酸配列(野生型ヒト第VII因子)に関して少なくとも2つの配列変化を有するアミノ酸配列を含み、少なくとも2つの配列変化が(1)10位のプロリン残基に置換したグルタミン残基、および(2)32位のリジン残基に置換したグルタミン酸残基である。別の例では、第VII因子変異体が配列番号16のアミノ酸配列に関して少なくとも3つの配列変化を有するアミノ酸配列を含み、少なくとも3つの配列変化が(1)10位のプロリン残基に置換したグルタミン残基、(2)32位のリジン残基に置換したグルタミン酸残基、および(3)36位のアルギニン残基に置換したグルタミン酸残基である。さらなる例では、第VII因子変異体が配列番号16のアミノ酸配列に関して少なくとも4つの配列変化を有するアミノ酸配列を含み、少なくとも4つの配列変化が(1)10位のプロリン残基に置換したグルタミン残基、(2)32位のリジン残基に置換したグルタミン酸残基、(3)36位のアルギニン残基に置換したグルタミン酸残基、および(4)34位のアラニン残基に置換したグルタミン酸残基である。1つの特定の例では、第VII因子変異体が配列番号16のアミノ酸配列に関して少なくとも6つの配列変化を有するアミノ酸配列を含み、少なくとも6つまたは6つの配列変化が(1)10位のプロリン残基に置換したグルタミン残基、(2)32位のリジン残基に置換したグルタミン酸残基、(3)36位のアルギニン残基に置換したグルタミン酸残基、(4)34位のアラニン残基に置換したグルタミン酸残基、(5)106位のトレオニン残基に置換したアスパラギン残基、および(6)253位のバリン残基に置換したアスパラギン残基である。別の特定の例では、第VII因子変異体がこれらの6つの変化のみを含む。これらの変異体についてのさらなる詳細は、共に全体が参照により本明細書に組み込まれている、Maxygenの国際公開第200158935号パンフレットおよびPedersenらの米国特許第7371543号明細書に見出される。
【0041】
本明細書に記載される第VII因子変異体は、出発ポリペプチドとして任意の機能的第VII因子ポリペプチドを用いて設計することができる。特定の実施形態では、第VII因子ポリペプチドがヒト第VII因子ポリペプチドである。さらなる実施形態では、第VII因子ポリペプチドが配列番号16のヒト第VII因子ポリペプチド、またはその修飾型もしくは対立遺伝子変異体である。有用な出発ポリペプチドには、第VII因子活性も有する、野生型ヒト第VII因子の配列(配列番号16)と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%、89%、88%、87%、86%、85%、84%、83%、82%、81%、80%、79%、78%、77%、76%、75%、74%、73%、72%、71%、70%、69%、68%、67%または66%同一のアミノ酸配列を含む修飾または変異形第VII因子ポリペプチドも含まれる。さらに、特定の例では、本開示の変異形第VII因子ポリペプチドには、第VII因子機能性を有し、かつ配列番号16に関して本明細書で論じられるアミノ酸変化の1つまたは複数も含有する、配列番号16の配列と少なくとも約99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%、89%、88%、87%、86%、85%、84%、83%、82%、81%、80%、79%、78%、77%、76%、75%、74%、73%、72%、71%、70%、69%、68%、67%または66%の同一性を有する任意のポリペプチドが含まれる。別の実施形態では、第VII因子ポリペプチドが、配列番号16との99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%、89%、88%、87%、86%、85%、84%、83%、82%、81%、80%、79%、78%、77%、76%、75%、74%、73%、72%、71%、70%、69%、68%、67%または66%超の相同性および第VII因子活性を有し、かつ本明細書で言及されるアミノ酸変化の1つまたは複数も有するアミノ酸配列を含む。
【0042】
本明細書で使用される第VII因子変異体には、野生型第VII因子のグリコシル化変異体も含まれる。例えば、部分的脱シアリル化野生型第VII因子変異体およびその組成物は野生型第VII因子よりも短い半減期を有するので有用となり得る。部分的または完全脱シアリル化野生型第VII因子の医薬製剤ならびに第VII因子活性を有する短時間作用性ポリペプチドから利益を得る本明細書に列挙される疾患の治療へのこのようなポリペプチドおよび製剤の使用も本明細書で有用である。部分的または完全脱シアリル化は、本明細書に記載されるように第VII因子ポリペプチドの組成物中の抱合型シアル酸のモルとN結合型グリカンのモルの比によって測定することができる。
【0043】
本明細書中の第VII因子変異体をコードするヌクレオチド配列も有用である。一実施形態では、第VII因子ポリペプチドが、野生型第VII因子のヌクレオチド配列(配列番号1)と全長にわたって少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%、89%、88%、87%、86%、85%、84%、83%、82%、81%、80%、79%、78%、77%、76%、75%、74%、73%、72%、71%、70%、69%、68%、67%または66%の同一性を有し、かつ機能的第VII因子ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列によってコードされている。特定の例では、ヌクレオチド配列が配列番号16に関して本明細書で論じられるアミノ酸変化の1つまたは複数を含有するポリペプチドもコードする。別の実施形態では、第VII因子ポリペプチドが、野生型第VII因子のヌクレオチド配列(配列番号1)との99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%、89%、88%、87%、86%、85%、84%、83%、82%、81%、80%、79%、78%、77%、76%、75%、74%、73%、72%、71%、70%、69%、68%、67%または66%超の相同性を有し、かつ機能的第VII因子ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列によってコードされている。特定の例では、ヌクレオチド配列が配列番号16に関して本明細書で論じられるアミノ酸変化の1つまたは複数を含有するポリペプチドもコードする。
【0044】
同一性%値は、アミノ酸または核酸配列領域全体にわたって計算される。異なる配列を比較するために、種々のアルゴリズムに基づく一連のプログラムが当業者に利用可能である。少なくとも一実施形態では、2つのアミノ酸配列間の同一性%が、EMBOSSソフトウェアパッケージ(EMBOSS:The European Molecular Biology Open Software Suite、Rice,P.、Longden,I.、およびBleasby,A、Trends in Genetics 16(6)、276〜277、2000)のneedleプログラムに組み込まれたNeedlemanおよびWunschアルゴリズム(Needleman 1970、J.Mol.Biol.(48):444〜453)を用いて、遠縁のタンパク質についてのBLOSUM 45もしくはPAM250スコアリングマトリクスのいずれか、または近縁のタンパク質についてのBLOSUM 62もしくはPAM160スコアリングマトリクスのいずれか、ならびに16、14、12、10、8、6または4のギャップ開始ペナルティおよび0.5、1、2、3、4、5または6のギャップ伸長ペナルティを用いて決定される。EMBOSSパッケージのローカルインストールのためのガイドならびにウェブサービスへのリンクは、emboss.sourceforge.netに見出され得る。needleプログラムを用いて2つのアミノ酸配列を整列させるために使用されるパラメータの非限定的例には、EBLOSUM62スコアリングマトリクス、10のギャップ開始ペナルティおよび0.5のギャップ伸長ペナルティを含むデフォルトパラメータがある。さらに別の実施形態では、2つのヌクレオチド配列間の同一性%が、EMBOSSソフトウェアパッケージ(EMBOSS:The European Molecular Biology Open Software Suite、Rice,P.、Longden,I.、およびBleasby,A、Trends in Genetics 16(6)、276〜277、2000)のneedleプログラムを用いて、16、14、12、10、8、6または4のギャップ開始ペナルティおよび0.5、1、2、3、4、5または6のギャップ伸長ペナルティと共にEDNAFULLスコアリングマトリクスを用いて決定される。needleプログラムを用いて2つのアミノ酸配列を整列させるために使用されるパラメータの非限定的例には、EDNAFULLスコアリングマトリクス、10のギャップ開始ペナルティおよび0.5のギャップ伸長ペナルティを含むデフォルトパラメータがある。核酸およびタンパク質配列を「クエリ配列」としてさらに使用して公共データベースに対して検索を行って、例えば、他のファミリーメンバーまたは関連配列を同定することができる。このような検索は、Altschulら(Altschul 1990、J.Mol.Biol.215:403〜10)のBLASTシリーズのプログラム(バージョン2.2)を用いて行うことができる。クエリ配列として本開示の核酸配列を用いるBLASTを、デフォルトパラメータを用いるBLASTn、BLASTxまたはtBLASTxプログラムで行って、本開示の核酸配列によってコードされる配列と相同なヌクレオチド配列(BLASTn、tBLASTx)またはアミノ酸配列(BLASTx)のいずれかを得ることができる。クエリ配列として本開示の核酸配列によってコードされるタンパク質配列を用いるBLASTを、デフォルトパラメータを用いるBLASTpまたはtBLASTnプログラムで行って、本開示の配列と相同なアミノ酸配列(BLASTp)または核酸配列(tBLASTn)のいずれかを得ることができる。比較目的のためのギャップ化アラインメントを得るために、ALtschulら、1997、Nucleic Acids Res.25(17):3389〜3402に記載されているように、デフォルトパラメータを用いるGapped BLASTを利用することができる。
【0045】
本開示のポリヌクレオチドは上記ヌクレオチド配列から本質的になるまたは上記ヌクレオチド配列を含む。したがって、これらはさらなるヌクレオチド配列も含有することができる。特定の実施形態では、ポリヌクレオチドが、オープンリーディングフレームに加えて、コード遺伝子領域の3’および/または5’末端にさらなる未翻訳配列、例えば、コード領域の5’末端の上流の少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500もしくはそれ以上のヌクレオチドの配列および/またはコード遺伝子領域の3’末端の下流の少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500もしくはそれ以上のヌクレオチドの配列を含むことができる。さらに、ポリヌクレオチドは、融合タンパク質の一方のパートナーが上に列挙されるヌクレオチド配列によってコードされているポリペプチドである融合タンパク質をコードすることができる。このような融合タンパク質は、精製目的のための検出可能なマーカーまたは補助尺度として働き得るいわゆる「タグ」を含むことができる。異なる目的のためのタグは当技術分野で周知であり、FLAGタグ、6−ヒスチジンタグ、MYCタグなどを含む。一実施形態では、ポリヌクレオチドが、ヌクレオチド配列と作動可能に連結した発現制御配列をさらに含む。
【0046】
特定の実施形態では、第VII因子ポリペプチドをコードする核酸配列を適切なベクターに挿入する。種々の目的に有用な多数のベクターが当技術分野で周知であり、当業者であれば所望の用途に適したベクターを容易に選択することができるだろう。特定の例では、ベクターがクローニングベクターまたは発現ベクターであり得る。他の例では、ベクターがプラスミド、ウイルスベクター、コスミドまたは人工染色体であり得る。特定の例では、第VII因子ポリペプチドをコードする核酸が、適切なプロモーターに隣接しておよび/またはその制御下に配置され得る。種々の目的に有用な多数のプロモーターが当技術分野で周知であり、当業者であれば所望の用途に適したプロモーターを容易に選択することができるだろう。特定の例では、プロモーターが構成型プロモーター、誘導性プロモーターまたは組織特異的プロモーターであり得る。
【0047】
特定の実施形態では、第VII因子ポリペプチドが細胞、組織または生物中で組換え産生される。特定の実施形態では、このような組換え産生が、変異ポリペプチドをコードする核酸分子またはこのような核酸を含有するベクターで宿主細胞を形質転換またはトランスフェクトすることによって達成される。多数の形質転換およびトランスフェクション法が当技術分野で周知であり、当業者であれば所望の用途に適した方法を容易に選択することができるだろう。
【0048】
このような組換え産生を、任意の適切な宿主細胞、組織または生物を用いて達成することもできる。適切な細胞、組織および生物が当技術分野で周知であり、当業者であれば所望の用途に適した宿主を容易に選択することができるだろう。いくつかの実施形態では、宿主細胞が哺乳動物である。適切な哺乳動物細胞系の例には、COS−1(ATCC CRL 1650)、ベビーハムスター腎臓(BHK)、HEK293(ATCC CRL 1573;Grahamら、J.Gen.Virol.36:59〜72、1977)、HEK293T(ATCC CRL 11268;DSM ACC 2494)およびHEK293F(Invitrogen R79007)細胞系がある。有用なBHK細胞系は以下でBHK570細胞と呼ぶ、tk
31ts13 BHK細胞系(参照により本明細書に組み込まれている、WaechterおよびBaserga、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 79:1106〜1110、1982)である。BHK570細胞系は、ATCC寄託番号CRL10314で、米国培養細胞系統保存機関、12301 Parklawn Dr.,Rockville,Md.20852により寄託された。tk
−ts13 BHK細胞系も寄託番号CRL1632で、ATCCから入手可能である。さらに、Rat Hep I(ラット肝細胞癌;ATCC CRL1600)、Rat Hep II(ラット肝細胞癌;ATCC CRL1548)、TCMK(ATCC CCL139)、ヒト肺(ATCC HB8065)、NCTC1469(ATCC CCL9.1)、CHO(ATCC CCL61)、CHO K1(ATCC CCI61)、DUKX細胞(UrlaubおよびChasin、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216〜4220、1980)およびCHO−DG44細胞(Urlaubら Cell 33:405〜412、1983)を含む、いくつかの他の細胞系を本開示中で使用することができる。
【0049】
本明細書に定義され、組成物中のN結合型グリカン1モル当たりの抱合型シアル酸のモルの比が0.05未満、0.1未満、1.0未満、2.0未満、3.0未満、4.0未満、5.0未満または6.0未満である第VII因子ポリペプチドの組成物、あるいはN結合型グリカン1モル当たりの抱合型シアル酸のモルの比が(1)0〜8;(2)0〜7;(3)0〜6;(4)0〜5;(5)0〜4;(6)0〜3;(7)0〜2;(8)0〜1および(9)0〜0.5からなる群から選択される範囲内、または1〜8、1〜7、1〜6、1〜5、1〜4、1〜3、1〜2、2〜8、2〜7、2〜6、2〜5、2〜4、2〜3、3〜8、3〜7、3〜6、3〜5、3〜4、4〜8、4〜7、4〜6、4〜5および0.1〜1の比である組成物が有用である。比は、糖タンパク質上のグリカンの数に対する糖タンパク質に結合したシアル酸のモルの測定値である。グリカンの数とは、糖タンパク質中のN結合型グリカンに結合した糖部分の数を指し、1つのN結合型グリコシル化部位はこの比の目的のために本明細書で定義されるただ1つのグリカンを支持し得る。比は、Takara Bio Inc.(カタログ番号4400)によって販売されているようなシアル酸蛍光標識キットを用いて決定される。このようなシアル酸蛍光標識キットは、部分的酸加水分解またはアルスロバクター・ウレアファシエンス(Arthrobacter ureafaciens)シアリダーゼなどのシアリダーゼの使用などによって、結合糖タンパク質からシアル酸を放出するステップを含む。次いで、遊離シアル酸を1,2−ジアミノ−4,5−メチレンオキシベンゼン(「DMB」)などの発蛍光団で標識する。次いで、標識シアル酸を、HPLCを用いておよびピーク高さを較正曲線と比較して、定量的に測定する。したがって、測定される比は、組成物の全第VII因子ポリペプチドから放出されるグリカン1モル当たりのシアル酸のモルの比である。
【0050】
一連の実施形態では、第VII因子ポリペプチドの組成物または単離ポリペプチド自体が、ヒトまたは哺乳動物血漿、例えば、マウスまたはラット血漿中で測定された場合、2時間未満、1.5時間未満、1時間未満、.75時間未満、.5時間未満、.25時間未満、0.1時間未満の半減期、あるいは合理的に測定することができないほど短い半減期を有する。
【0051】
本明細書で使用する場合、第VII因子活性は、当技術分野で周知のように、第VII因子欠乏血漿およびトロンボプラスチンを用いて、製剤が血液凝固を促進する能力を測定することによって定量化され得る生物活性である。特定の例では、第VII因子活性を有する第VII因子ポリペプチドが、同じ条件下で測定される場合、野生型第VII因子の活性の少なくとも25%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%または少なくとも90%を示す。
【0052】
第VII因子ポリペプチドおよび第VII因子ポリペプチドを含むその組成物と、薬学的に許容される賦形剤または担体との医薬製剤も有用である。特定の例では、医薬製剤が、例えば、静脈内、皮下または筋肉内投与などによる非経口投与用であり、投薬が単一ボーラス用量、間欠投薬または連続静脈内注射としてのものとなり得る。局所投与も有用である。一実施形態は、使用時に再構成される凍結乾燥製剤中に本明細書に記載される単離第VII因子ポリペプチドまたは本明細書に記載される第VII因子ポリペプチドの組成物を含む医薬製剤を含む。あるいは、医薬製剤は、再構成を要さない安定な液体の即時使用可能な製剤であり得る。医薬製剤は、第VII因子ポリペプチド1、2、5または8mgの単回使用バイアル中の凍結乾燥粉末であり得る。ヒスチジンを含有する滅菌水などの、指定量の液体による再構成後、最終溶液は、治療効果をもたらす任意の適切な量の第VII因子ポリペプチド、例えば、限定されないが、1mg/mL(1000μg/mL)、2mg/mL、3mg/mL、4mg/mL、5mg/mL、1〜2mg/mL、1〜3mg/mL、1〜5mg/mL、1〜10mg/mL、0.5〜1mg/mLまたは0.5〜2mg/mLの第VII因子ポリペプチドを含有することができる。患者への適切な投与量は、例えば、患者の体重、治療している出血性障害またはエピソードの種類、および使用している特定の第VII因子ポリペプチドの活性に基づいて当業者によって容易に決定され得る。特定の例では、投薬が70〜110μg/kg、70〜90μg/kgまたは80〜100μg/kgの範囲にあり、90μg/kgであり得る。凍結乾燥粉末は、水、緩衝水、0.4%生理食塩水、0.3%グリシン等などの水性担体を用いて再構成され得る。非経口的に投与可能な組成物を調製するための実際の方法は当業者に知られているまたは明らかであり、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第18版、Mack Publishing Company、Easton、PA.(1990)により詳細に記載されている。外傷の場合に賢明となり得るような局所適用は、スプレー、灌流、カテーテル、ステント、血管移植もしくはステント、軟膏、または当技術分野で知られている他の製剤によって行うことができる。特定の例では、局所投与が、第VII因子変異体を含む組成物で処理された、これを注入された、これでコーティングされた、またはこれに浸漬された外科スポンジまたはコラーゲンマトリクスなどの固体または半固体マトリクスを通してもよい。このようなマトリクスを調製する方法は当技術分野で周知であり(例えば、Thrombosis/Hemostasis 12:445、2006参照)、当業者であれば適切な用量および組成物を所与のマトリクスに適用する方法を容易に決定することができるだろう。
【0053】
一実施形態では、本開示は第VII因子ポリペプチドを含むキットに関する。特定の例では、キットが適切な医薬組成物中に第VII因子ポリペプチドを含有する即時使用可能な液体を含有するバイアルを含有する。他の例では、キットが凍結乾燥第VII因子ポリペプチドまたはポリペプチドを含む凍結乾燥製剤と、再構成用の希釈剤とも含有するバイアルを含有する。他の例では、キットが、第VII因子ポリペプチドの局所製剤、例えば、軟膏、スプレー、または液体、および局所製剤を患者への投与前に適用することができるスポンジまたは他の医療用マトリクスなどのマトリクスを含有する。
【0054】
本明細書に記載される第VII因子ポリペプチドの組成物も有用である。第VII因子はその天然分解産物との混合で存在する。したがって、第VII因子ポリペプチドの組成物は、本明細書で列挙される完全アミノ酸配列の1つを有するポリペプチドと、本明細書に記載されるものの部分的アミノ酸配列を有する分解産物とを含む。さらに、第VII因子は糖タンパク質であるので、第VII因子の組成物は、組成物中の各糖タンパク質が他のものと正確に同じグリコシル化を有するわけではない第VII因子ポリペプチドの不均一な混合物を含有すると予想され得る。第VII因子ポリペプチドの組成物または単離第VII因子ポリペプチドへの言及は、個々のポリペプチドが異なるグリコシル化を有するこのようなポリペプチドの混合物を包含するものとし、したがって、「組成物」または「単離第VII因子ポリペプチド」という用語は、ポリペプチド中にグリコシル化パターンの不均一性を包含する。
【0055】
本明細書に記載される第VII因子ポリペプチドおよび組成物は、血液凝固障害、および血液凝固から利益を得る障害の治療、特に、野生型第VII因子よりも短い半減期を有する薬物を用いた凝固に有用である。したがって、本明細書の第VII因子ポリペプチドおよび組成物は、穿通性外傷性損傷;鈍的外傷性損傷;待機手術における出血;心臓手術における出血;脊髄手術における出血;整形外科手術;神経外科手術;腫瘍学手術;分娩後手術;月経過多;幹細胞移植における出血;肝移植における出血;消化管出血;肝硬変の活発な静脈瘤出血;肝硬変の非静脈瘤出血;びまん性肺胞出血;大動脈瘤;脳内出血;外傷性脳損傷;脳挫傷;ワルファリンの逆転;ヘパリンの逆転;抗凝固薬の逆転;抗血栓薬の逆転;第VII因子欠乏症;火傷;阻害因子による血友病患者の予防;非肝硬変および肝硬変患者のための部分肝切除;後天性血友病;特発性血小板減少性紫斑病;グランツマン血小板無力症;血小板輸血に対して難治性のグランツマン血小板無力症およびベルナール−スリエ症候群に有用である。
【0056】
本明細書では、第VII因子などの凝固因子の半減期を測定するのに有用なアッセイも開示される。生存ラット肝細胞を血液凝固因子と共にインキュベートするステップと、試験時点1で試料を取り出すステップと、試料中の細胞から上清を分離するステップと、試料中の上清中の血液凝固因子の活性または量を定量化するステップとを含む、凝固因子の半減期を測定する方法であって、血液凝固因子の活性または量が二抗体サンドイッチELISAアッセイを用いて測定される方法が存在する。本方法を異なる時点で繰り返して、経時的な血液凝固因子の活性または量のプロットを作成してもよい。
【0057】
[実施例]
脱シアリル化第VII因子ポリペプチドを得る方法
ポリペプチドの酵素的脱シアリル化、シアリル化欠乏細胞系での第VII因子ポリペプチドの産生、および組換え細胞での第VII因子とシアリダーゼの同時発現を含む、多数の方法を使用して脱シアリル化第VII因子ポリペプチド(野生型と変異体の両方)を産生した。
【0058】
シアル酸欠乏細胞系の作成
内因性シアル酸を、32種の酵素からなる複雑な経路を含む哺乳動物細胞で合成する(WickramasingheおよびMedrano 2011)。シアル酸の生合成は、サイトゾル中で始まり、UDP−N−アセチルグルコサミン−2−エピメラーゼ/Nアセチルマンノサミンキナーゼ(GNE)、シアル酸9−リン酸シンターゼ(NANS)およびシアル酸9−リン酸ホスファターゼ(NANP)などのいくつかの酵素を伴い、UDP−N−アセチルグルコサミン(UDP−GlcNac)をNeu5Acに変換する。サイトゾル中のNeu5Acは、核膜孔を通して核内に輸入され、CMP−Siaシンターゼ(CMAS)と呼ばれる酵素によってCMP−Neu5Acに変換される。合成されたCMP−Neu5Acは、さらなる修飾およびゴルジ装置への抱合のために、核膜孔を介してサイトゾル内に再度輸送される。サイトゾル中でのNeu5AcのNeu5Gcへの変換は、酵素CMP−NeuAcヒドロキシラーゼ(CMAH)によって触媒される。次いで、CMP−Neu5AcおよびCMP−Neu5Gcが中央トランスゴルジの膜に位置する疎水性3型膜輸送体、CMP−シアル酸輸送体(SLC35A1)を介してゴルジコンパートメントに輸送される。CMP−シアル酸輸送体は、細胞シアリル化経路の重要な要素である(Hirschbergら 1998)。この遺伝子のホモ接合性変異は、マウスにおいて生後致死を引き起こす(MGI 4.32、Homologene)。ヒトでは、SLC35A1の変異がシアリル抱合体の減少または完全な喪失に関連している。SLC35A1におけるいくつかの挿入および欠失変異は、ヒトのグリコシル化の先天性障害に関連し、神経系発達、凝固の欠陥、および免疫不全をもたらす(Martinez−Dunckerら、2005)。いったんCMP−Neu5Ac/CMP−Neu5Gcがゴルジ装置に輸送されると、これらは20のメンバーを含むシアリルトランスフェラーゼ(ST)ファミリー内の酵素によって炭水化物、糖タンパク質および糖脂質と抱合する。
【0059】
CMP−シアル酸輸送体(SLC35A1)はゴルジ装置でのシアル酸抱合を支持する主要な分子であり、この輸送体タンパク質の変異は適切なシアリル化を欠くタンパク質の合成につながる。脱シアリル化第VII因子を産生するために、CMP−シアル酸輸送体遺伝子ノックアウトを有する第VII因子産生細胞系を作成する。あるいは、治療分子上のシアリル化が極めて低レベルまたは全くないタンパク質治療剤を産生する細胞系での第VII因子変異体の発現によって、脱シアリル化を達成することができるだろう。この技術を用いて患者においてT1/2が短い治療タンパク質を産生することができるだろう。
【0060】
チャイニーズハムスター卵巣(CHO)起源を有するLec2細胞を、それぞれの野生型細胞よりもおよそ10倍少ない糖タンパク質および糖脂質中のシアル酸を産生するという特性により同定した(StanleyおよびSiminovitch、1977、Stanley、1980および1983)。後の研究により、Lec2変異体がインビトロアッセイにおいてCMP−シアル酸をゴルジ小胞の膜を横切って転位置させることができない一方で、他のヌクレオチド誘導体の転位置は変異細胞において比較的正常であることが示された(Deutscherら、1984)。発現クローニングを用いることにより、Lec2細胞からCMP−シアル酸輸送体をコードする遺伝子が報告された(Eckhardtら、1996)。さらなる調査により、CMP−シアル酸輸送体遺伝子中のヌクレオチド575〜751の欠失がLec2表現型の原因であることが示された(Eckhardtら、1998)。例えば、例えば、1E3、6B2、8G8および9D3細胞の場合のCMP−シアル酸輸送体遺伝子中の他の変異もLec2表現型をもたらす(Eckhardtら、1998)。
【0061】
実験1
この実験を、例えば、Lec2細胞の場合のCMP−シアル酸輸送体の遺伝子中の変異が、正常なCHO細胞から発現される同じタンパク質と比較してシアリル化の欠乏した発現組換えタンパク質(例えば、第VII因子)をもたらすかどうかを決定するよう設計する。
【0062】
(1)Lec2細胞からの第VII因子などの組換えタンパク質の発現の試験 第VII因子変異遺伝子を含有する発現ベクター(例えば、pMB117およびpMB121)を正常なトランスフェクション条件下でLec2細胞および正常なCHO細胞にトランスフェクトする。これらの細胞の細胞培養からの第VII因子の発現レベルを、第VII因子活性アッセイによって監視する。トランスフェクト細胞の培養をスケールアップし、培養条件培地を第VII因子の精製のために回収する。
【0063】
(2)正常なCHO細胞から発現した同じタンパク質と比較したLec2細胞から発現した精製第VII因子のシアル酸含量の試験 これらの条件培地からの第VII因子の精製を、通常の第VII因子精製法にしたがって行う。Lec2細胞または正常なCHO細胞のいずれかからの精製第VII因子を、精製第VII因子のシアル酸含量について分析する。生物活性および薬物動態(PK)パラメータを本明細書に記載されるように分析する。
【0064】
実験2
発現組換えタンパク質上にシアル酸を含まない第VII因子変異体を発現する製造細胞系を作成するために、CMP−シアル酸輸送体遺伝子を標的化して第VII因子を発現する細胞系(例えば、CHO細胞系)を修飾する遺伝子欠失法を使用する。細胞でのシアリル化を完全に阻害するために、序論で上に列挙されるUDP−N−アセチルグルコサミン−2−エピメラーゼ/Nアセチルマンノサミンキナーゼ(GNE)、シアル酸9−リン酸シンターゼ(NANS)、シアル酸9−リン酸ホスファターゼ(NANP)およびCMP−Siaシンターゼ(CMAS)などの他の標的を欠失させて、CMP−シアル酸輸送体のための基質を提供するCMP−Neu5Ac生合成の阻害を増強してもよい。
【0065】
2つの遺伝子欠失技術、Life Technologies製のTALEヌクレアーゼ(TALEN)およびSangamo BioSciences/Sigma−Aldrich製のZFPヌクレアーゼ(ZFN)を、CMP−シアル酸輸送体遺伝子のノックアウトまたはシアル酸合成経路の複数の遺伝子のノックアウトを行うために使用することができる。
【0066】
CMP−シアル酸輸送体遺伝子ノックアウトを有する第VII因子発現細胞系を評価してCMP−シアル酸輸送体遺伝子の欠失を確認する。確認した細胞系を培養して第VII因子を産生する。CMP−シアル酸輸送体遺伝子欠失細胞系からの第VII因子を本明細書に記載されているように精製および評価し、分子上のシアル酸含量について親第VII因子発現細胞系からの第VII因子と比較する。
【0067】
第VII因子と細菌シアリダーゼの同時発現による脱シアリアル化第VII因子の産生
FVIIの脱シアリル化型を作成するために、本発明者らは、アルスロバクター・ウレアファシエンス(Arthrobacter ureafaciens)シアリダーゼ(AUシアリダーゼ)(N−アセチルノイラミネートグリコヒドロラーゼ、EC3.2.1.18)由来の細菌シアリダーゼ変異体と共にFVIIを同時発現させた。CHO細胞安定に発現FVII(例えば、P10Q、K32E、A34EおよびR36E変異を有する配列番号16)を、pJ608発現ベクターを用いてAUシアリダーゼでさらにトランスフェクトした。発現したタンパク質は、タンパク質の分泌を促進する、N末端の成長ホルモンシグナル配列を有する。培地中のシアリダーゼについての発色性アッセイによって検出されるAUシアリダーゼを産生する安定なクローンを選択した。本発明者らはまた、細胞が高レベルのFVIIタンパク質を発現し続けることを示した(これは、プローブとしてFVII特異的抗体を用いる、ELISAアッセイ、SDS PAGEおよびウエスタンブロット法によって検出した)。レクチンブロッティングアッセイを用いて、本発明者らは、精製FVIIを用いて条件培地中のFVIIタンパク質上のシアル酸を検出することができなかった。対照的に、シアリダーゼでトランスフェクトしていない細胞由来の同様のレベルの精製FVIIは、強力なレクチン結合シグナルを示した。まとめると、本発明者らのデータは、AUシアリダーゼが、細胞によって同時発現したFVIIを効率的に脱シアリル化するのに十分なレベルでCHO細胞培地中で発現したことを示している。
【0068】
可溶性シアリダーゼ処理を用いた脱シアリル化第VII因子の酵素調製
以下の出発材料をこの実験に利用した:
第VII因子:20mg野生型第VIIa因子、濃度約1mg/ml
シアリダーゼ:20μg、0.25mg/ml、50000U/ml、P0720L、New England BioLabsから購入
緩衝液A:25mMヒスチジン、50mM NaCl、pH6.4
緩衝液B:25mMヒスチジン、1M NaCl、pH6.4
FVIIa製剤緩衝液:2.3mg/ml塩化ナトリウム、1.5mg/ml塩化カルシウム脱水物、1.3mg/mlグリシルグリシン、0.1mg/mlポリソルベート80、25mg/mlマンニトール、10mg/mlスクロース、0.5mg/mlメチオニン、1.6mg/mlヒスチジン、pH6.0
精製カラム:5ml HiTrap Q Sepharose HPカラム
これらの材料を用いて、以下の手順を行った:
1.FVIIa20mg(約1mg/ml)に、シアリダーゼのシアリダーゼ20μg(0.25mg/ml、1:1000質量比)を添加する。
【0069】
2.下記のように脱シアリル化FVIIaをクロマトグラフィによって精製する前に、反応物を室温で一晩(約19時間)インキュベートする。
【0070】
3.以下の通り、5ml HiTrapQ Sepharose HPカラムで脱シアリル化FVIIaを精製する。
【0071】
a)緩衝液A(25mMヒスチジン、50mM NaCl、pH6.4)5CVを用いてQ−Sepharoseカラムを平衡化する。
【0072】
b)カラムに適用する前に、FVIIaおよびシアリダーゼ反応物を緩衝液A200mlで希釈し、pHを6.4に調整する。
【0073】
c)A280を監視しながら、AKTA Explorerシステムを用いて2.5ml/分の流量で充填する。分画を通して流れを回収する。
【0074】
d)充填が完了した後、カラムを緩衝液A 10CVで洗浄する。
【0075】
e)カラムを0〜50%緩衝液B(25mMヒスチジン、1M NaCl、pH6.4)20CVにより40分間溶出する。ピーク分画を回収する(脱シアリル化NovoSeven)。
【0076】
f)ピーク分画対FVIIa製剤緩衝液を4℃で一晩透析する。
【0077】
g)試料を−80℃においてアリコートで凍結させる。
【0078】
生成物はSDS−PAGE、aSECによって高度に純粋であること、およびFVIIaについての生物アッセイで活性であることが示された。シアル酸含量についてのアッセイにより残留シアル酸はないことが示され、重鎖のLC−MS分析によりシアル酸の除去以外のグリカン構造の有意な変化はないことが示された。
【0079】
ノイラミニダーゼ−アガロースビーズを用いた脱シアリル化第VII因子の酵素調製
本明細書で使用される組換え野生型第VII因子は、Novo Nordiskから得たNovoSeven(登録商標)であり、本明細書では「F7」と呼ぶ。他の出発材料は上記のV1およびV2である。
【0080】
凍結出発材料を37℃水浴で急速解凍し、プールした。タンパク質を遠心分離によって2.5倍濃縮し、濃縮物をピペット操作によって穏やかに混合してタンパク質−フィルタ界面での超濃縮(super−concentration)(凝集)を最小化した。
【0081】
V2を、V2製剤緩衝液(ヒスチジン、CaCl
2、トレハロース、メチオニンおよび微量レベルのTween(登録商標)−20、pH6.4〜6.6を含有)からMES緩衝液(10mM MES、10mM CaCl
2、50mM NaCl、pH6.0、滅菌濾過を含有)に緩衝液交換した。これを3つの方法の1つで達成した。第1の選択肢では、V2を、それぞれ3カラム体積のMES緩衝液で3〜5回予洗したNAP−10重力流動カラム(GE、17−0854−01)を用いて緩衝液交換した。次いで、V2をカラムに充填し、充填体積の1.5倍のMES緩衝液で希釈した。第2の選択肢では、V2を、MES緩衝液中での一晩の透析によって緩衝液交換した。透析カセットをMES緩衝液に予浸し、V2をシリンジによって3.500MWCO slide−a−lyzerカセット(Thermo Scientific、66130)に、滅菌濾過MES緩衝液を含む10Lピッチャー中4℃で一晩充填した。第3の選択肢では、V2を、Sephadex G−25(Sigma、G−25−80)ゲル濾過カラムを通してMES緩衝液に緩衝液交換し、MES緩衝液を用いて平衡化した。
【0082】
緩衝液交換V2を、ノイラミニダーゼ−アガロース(Sigma N5254)を用いて脱シアリル化した。アガロースビーズ産物を50%スラリー混合物に供給し、硫酸アンモニウム緩衝液中に保存し;ビーズをMES緩衝液中3〜5回予洗し;ビーズ/緩衝液混合物を4℃で3分間1000rcfでの遠心分離によって分離し、上清液をピペットによって取り出して、捨てた。洗浄したビーズに、緩衝液交換V2を添加し、室温で16〜22時間回転によって穏やかに混合した。タンパク質1mg当たり2.08mLの充填ビーズを脱シアリル化に使用し;より大規模の調製のために、これをタンパク質1mg当たり0.208mLのビーズまで1:10減少させた。その後、脱シアリル化V2を遠心分離によって回収し、ピペットで取り出した。ビーズを1回、1:1体積の新鮮なMES緩衝液中で回転によって5分間穏やかに洗浄し;洗浄混合物を前の通りに遠心分離し、上清をV2と共にプールした。ビーズを、最終的に0.2ミクロンシリンジフィルタを通した滅菌濾過によってまたは0.45ミクロンフィルタを通した真空濾過によって除去した。
【0083】
EndoTrap HD樹脂(Hyglos)を用いて数ラウンドのエンドトキシン除去を行った。樹脂をMES緩衝液中3〜5回洗浄し、洗浄緩衝液を捨てた。2つのバッチで、洗浄樹脂1〜3mLを、室温で一晩脱シアリル化V2と穏やかに混合した。樹脂を遠心分離によって除去し、次いで、シリンジまたは真空フィルタを通して濾過した。
【0084】
脱シアリル化V2を10分サイクル間、Ultracels中での遠心分離によって2.1mg/mLまで4.75倍濃縮し;濃縮物をピペット操作によって穏やかに混合して、タンパク質−フィルタ界面での凝集を減少させた。
【0085】
脱シアリル化V2を、HiLoad 26/60 Superdex 200サイズ排除カラムを用いて高分子量種(および凝集したエンドトキシン)からさらに分離した。カラムおよびAKTA精製装置システムを0.1N NaOH+20%EtOHを用いて予衛生化した。システムをpH中和し、水ですすぎ、再構成しプールしたV2製剤緩衝液を用いて平衡化した。数バッチの濃縮物を12mL試料ループに手動で注入し、3mL/分の流量でサイズ排除カラムに充填し;溶離液を回収し、Frac−900を用いてポリスチレンチューブ(17×100mm、Fisherbrand、14−956−6D)に分画した。初期に、高分子量ピークが排除され、所望のV2分画をプールし、Charles River EndoSafe PTSおよびNanoDrop ND−1000を用いてエンドトキシンレベルおよび濃度について試験した。V2緩衝液を用いて脱シアリル化V2を溶出した。
【0086】
5バッチのサイズ排除を行い、回収した溶離液を1バッチにプールし、これをUltracels中1.0mg/mLに濃縮した。最終調製物を、0.2ミクロンシリンジフィルタを通して滅菌濾過し、エンドトキシンおよび濃度について試験した。1mLアリコートを標識2mLチューブ(Sarstedt、72.694.006)にピペットで入れ、エタノール/ドライアイスバッチ中で急速凍結し、使用するまで−80℃で標識ボックスに保存した。
【0087】
特性評価−タンパク質分析学およびインビトロアッセイ
最終調製材料ならびに未処理出発材料を、MES泳動緩衝液中4〜12%ビス−トリスNuPAGE(Novex NP0335BOX)を用いたタンパク質ゲル分析および分析的サイズ排除(TSK3000カラム;泳動緩衝液:200mM KH2PO4、150mM KCl、pH6.8、流量:0.15ml/分、蛍光検出)によって特性評価した。少量の試験試料を、第VII因子重鎖上のシアル酸含量についてLC−MSにより、ならびに総タンパク質のDMB−標識シアル酸定量化について本明細書に論じられているTakara Bio Inc.キットを用いて分析した。活性を、リン脂質依存性第X因子活性化およびトロンビン産生アッセイによって試験した。
【0088】
シアル酸含量分析
LC−MS法を用いて、未処理対照および脱シアリル化第VII因子について第VII因子の重鎖のN−グリカン上のシアル酸を同定した。タンパク質10μgを37℃で30分間10mM DTT混合物を用いて還元し、次いで、Agilent 1200 Capillary LC System:カラム:PLRP−S 8μm 4000A、0.3×150mm、75℃で分析した。緩衝系:A:0.2%ギ酸+0.01%TFAを含む水;B:0.2%ギ酸+0.01%TFAを含むACN。勾配:50μL/分、2分で10%B、25分で90%Bまで、90%B洗浄5分、10%B平衡化5分。
【0089】
Agilent 6520Q−TOFシステム:DualEsi源、ガス温度:350℃、乾燥ガス:7psi、ネブライザ:10psi、スキャン範囲:500〜3000amu、1スペクトル/秒。基準イオン:1221.990637および2421.91399amu、50ppm窓、分1000カウント。
【0091】
DMB標識キットを用いたシアル酸定量化
シアル酸蛍光標識キット(Takara Bio Inc.、カタログ番号4400)は、シアロ糖抱合体の定量的および高感度分析のためのものである。1,2−ジアミノ−4,5−メチレンオキシベンゼン(DMB)を用いたこのHPLCに基づくシアル酸蛍光標識技術は、単純かつ高感度定量法である。この方法では、遊離シアル酸を、DMBによる標識後に逆相HPLC(GlycosepR、Glyko製、番号1−4727)によって分析する。
【0092】
結論
V2重鎖は2つのN−グリコシル化部位を有する。N−グリカンはフコシル化された、高度にシアリル化された、二、三および四構造である。脱シアリル化試料上に末端シアル酸は見られず、このことは試料が十分に脱シアリル化されていること、および第VII因子N−グリカン上のシアル酸の99.9%超が除去されたことを示唆している。
【0093】
ラット肝細胞を用いた半減期アッセイ
肝細胞の調製
凍結保存された初代培養ラット肝細胞をCellzDirect(Invitrogen)から得た。およそ500万個の細胞を含有する各バイアルを解凍し、細胞を解凍培地10mlに添加し、引き続いて60gで3分間遠心分離した。細胞をインキュベーション培地+0.25%BSA(約4ml)に再懸濁し、血球計数器を用いて細胞をカウントした。トリパンブルーによって染色して死細胞を同定した後、生細胞をカウントした。細胞生存率は80〜82%であった。細胞を、カウント直後にクリアランスアッセイに使用した。
【0094】
解凍培地:500mlウィリアムスE培地に添加したInvitrogen CM3000 Thawing/Plating Supplement Pack。インキュベーション培地:500mlウィリアムスE培地に添加したInvitrogen CM4000 Cell Maintenance Supplement Pack。
【0095】
インビトロ肝細胞クリアランスアッセイ
初代培養ラット肝細胞、100万個生細胞/mlを、エッペンドルフチューブ中で、CellzDirectインキュベーション培地+0.25%BSA中25ng/mlの種々の第VII因子変異体と共にインキュベートし、1.2mlの出発体積中、37℃で穏やかにくるくると回転して混合した。示される時点の各々で、混合物0.25mlを取り出して、直ちに遠心分離して細胞をペレット化した(1000rpm、エッペンドルフ遠心分離で3分)。清澄化上清0.18mlを取り出し、急速凍結し、−80℃で一晩保管した。翌日、上清中の第VII因子を、対応する精製変異タンパク質を標準として使用するELISAアッセイを用いて定量化した。第VII因子変異体を培地中単独で37℃で2時間インキュベートした無細胞対照上清を0時点値として使用した。各インキュベーションを3連で行った。固有クリアランス値を、インキュベーション体積および細胞数に関して正規化した式CLint=0.693/インビトロT
1/2を用いて、Luら(Lu ref.)の方法に基づいて計算した。プログラムWinNonLin(Pharsight Corporation、Sunnyvale、CA)を用いて、インビトロ半減期(T
1/2)を計算した。肝細胞インキュベーションからの上清を、二抗体サンドイッチELISAフォーマットを用いてアッセイした。0.1ml/ウェルの抗第VII因子モノクローナル抗体(1.0μg/ml、PBS中)をGreiner Microlon 655061 96ウェルプレートに添加した。4℃で一晩のインキュベーション後、プレートを0.2ml/ウェルの1%カゼインブロッキング緩衝液(50mMトリスHCl、100mM NaCl、0.05%Tween 20 pH7.2)を用いて37℃で1.5時間ブロッキングした。プレートを0.3ml/ウェルのPBS+0.05%Tween 20で(BioTek ELx405プレート洗浄機を用いて)4回洗浄し、次いで、関連第VII因子標準および未知試料をプレートに添加した。各肝細胞上清0.18mlを、希釈緩衝液(50mMトリスHCl、100mM NaCl、0.1%カゼイン、0.05%Tween 20 pH7.2)0.18mlを添加することによって2倍希釈した。各希釈上清0.10mlを3連でELISAプレートに添加した。希釈緩衝液に希釈した対応する精製第VII因子変異体から標準を作成した。標準の2倍連続希釈を希釈緩衝液に製造して、50〜0.8ng/ml最終濃度範囲の希釈液を得た。第VII因子標準および試料(0.1ml/ウェル)を室温(21℃)で2時間インキュベートした。プレートを上記のように4回洗浄し、次いで、ビオチン化検出抗体、希釈緩衝液(50mMトリスHCl、100mM NaCl、0.1%カゼイン、0.05%Tween 20 pH7.2)中1μg/mlを添加し(0.1ml/ウェル)、引き続いて室温で1.5時間インキュベートした。プレートを上記のように4回洗浄し、次いで、希釈緩衝液に1/1000希釈したストレプトアビジン−西洋ワサビペルオキシダーゼを添加し(0.1ml/ウェル)、引き続いて室温で1時間インキュベートした。プレートを再度洗浄し、Ultra−TMBを0.1ml/ウェル添加した。室温で10〜15分間のインキュベーション後、0.05ml/ウェルの2M H
2SO
4を添加して反応を停止した。Molecular Devices Spectramax M2プレートリーダーを用いて、450nmで吸光度を読み取った。Softmax Pro5.4(Molecular Devices)を用いてデータ分析を行った。
【0096】
凍結保存ラット肝細胞、解凍培地およびインキュベーション培地(CellzDirect)はInvitrogen/Life Technologies(Grand Island、NY)製とした。1−Step Ultra−TMB(One Step)基質、カタログ番号34028はThermo Scientific(Rockford、IL)製とした。ストレプトアビジン−西洋ワサビペルオキシダーゼ(SA−HRP)、カタログ番号DY998はR&D Systems、Minneapolis、MN製とした。リン酸緩衝生理食塩水、pH7.2はInvitrogen(Carlsbad、CA)製とした。スプラーグ−ドーリーラット血漿(5%クエン酸ナトリウム抗凝固薬)はBioreclamation(Westbury、NY)製とした。Greiner Microlonプレート(カタログ番号655061)はFisher Scientific(Pittsburgh、PA)を通して得た。
【0097】
脱グリコシル化変異体:分子変異体を得る方法
野生型第VIIa因子は2個のN−グリカン(N322およびN145)を有し、V1およびV2はそれぞれ4個のN−グリカン(N106、N145、N253、N322)を有する。V1およびV2に見られるさらに2個のN−グリカン(N106、N253)を、半減期を増加させるよう最初に設計した。本研究のために、これらの部位を野生型第VII因子の内因性アミノ酸配列(T106、V253)に戻すことによって、除去する。次いで、残りの2個の内因性N−グリカン部位(N145およびN322)を、これらの部位でのN→Q変異における操作によってDNAレベルで除去した。(
図6)
野生型第VII因子をpmCMVにクローニングしてpMB113を作成した。aa145または322位における単一のNからQへの変異を含有する挿入物ならびに二重変異体(aa145および322)を合成し、XbaIおよびPmlI部位を用いてpMB113にクローニングしてクローンpMB114〜116を得た。次いで、V1およびV2のGlaドメインをコードする挿入物を、AscIおよびAfeIを用いてpMB113〜116にクローニングして、構築物pMB117〜120(V1系変異体)およびpMB121〜124(V2系変異体)を得た。全ての構築物を配列確認した(McLab)。哺乳動物細胞(CHO由来細胞系)を、6ウェルフォーマットで、電気穿孔を介して各構築物で一過的にトランスフェクトした。トランスフェクション4日後、上清を回収し、発現についてウエスタンブロット法によって、引き続いて、hFVII ELISA(AssayPro)およびFVII活性アッセイによってアッセイした。次いで、変異体のサブセットを単細胞クローニングした。pMB121と呼ぶV2 2−Nグリカン変異体を精製し、さらなる分析のために活性化した。
【0098】
10L WAVE発現からのFVIIaの精製/活性化の方法
方法の概要
数日にわたって行われる多段階プロセスを用いて、透析濾過した濃縮条件培地からのFVIIの精製および活性化を達成した。最初に、培地を解凍し、遠心分離して、凍結/解凍中に形成したかもしれない凝集体を除去する。CaCl
2で溶出する陰イオン交換カラム(Q−Sepharose)を使用した擬似アフィニティ(psuedoaffinity)捕捉ステップを用いてFVIIタンパク質をさらに濃縮し、緩衝液を交換する。次に、ヒドロキシアパタイトカラムを用いてFVIIタンパク質をさらに精製する。次いで、より小型のQ−Sepharoseカラムを用いて、FVIIをpH7.8〜8.2で溶液中24時間活性化する前にさらに精製する。pHを4.0に低下させることによって、活性化反応を停止する。最後に、FVIIaを製剤緩衝液(pH6.5)に透析し、凍結保存する。
【0099】
最終的な精製タンパク質を、SDS−PAGE、aSEC、ELISA、糖分析(glycoanalysis)、エンドトキシンおよびFVIIa活性アッセイによって特性評価する。
【0100】
FVII ELISA
Zymutest FVII酵素結合免疫測定法(Aniara、West Chester、Ohio)。ELISAは、96ウェルマイクロプレートのウェルに結合したウサギ抗FVIIポリクローナル抗体を用いた2部位免疫測定法である。試料を導入し、引き続いて西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)に結合したウサギ抗FVIIポリクローナル抗体を導入する。アッセイは製造業者の指示にしたがって行った。手短に言えば、試料および較正物質を、96ウェル丸底ポリプロピレン希釈プレート中アッセイ緩衝液に希釈した。50μLアリコートの希釈試料を用意したウサギ抗FVIIコーティングプレートに移し、室温で15分間インキュベートした。200μLのHRP結合ウサギ抗FVIIを添加し、室温で1時間インキュベートした。プレートを用意した洗浄緩衝液300μLで5回洗浄した。TMBを200μL/ウェルで添加し、室温でおよそ5分間インキュベートした。0.45M硫酸50μLを導入することによって、反応を停止した。450nmで吸光度を読み取った。試料値を4パラメータ曲線当てはめを用いて作成したV2較正曲線と比較することによって、第VII因子レベルを得た。
【0101】
第VII因子発色アッセイ
Biophen FVII発色アッセイ(Aniara、West Chester、Ohio)を使用した。発色アッセイ原理は、試料の第VII因子および製造業者によって供給されたウサギトロンボプラスチン(組織因子)からなる酵素複合体の形成を伴う。過剰に添加したFXをFXaに活性化し、今度はこれがFXa特異的発色基質(SXa−11)を切断してpNAを産生する。放出されたpNAの量はFXa活性に正比例する。アッセイは製造業者の指示にしたがって行った。手短に言えば、試料および較正物質を、96ウェル丸底ポリプロピレン希釈プレート(Fisher Scientific)中トリスBSAアッセイ緩衝液に希釈した。キット試薬、R1、R2およびR3ならびに96ウェル平底ポリスチレンアッセイプレート(Costar)を使用前に37℃に加温した。試料および較正物質30μLを希釈プレートからアッセイプレートに移し、引き続いて、試薬R2 30μL、次いで試薬R1 60μLを移した。アッセイプレートを混合し、ジルバプレート振盪装置(Boekel Scientific)中37℃で7分間インキュベートした。R3 60μLを添加し、吸光度の変化率(405nm/分におけるODの変化)を、SpectraMax Plusマイクロプレートリーダー(Molecular Devices)を用いて37℃で測定した。試料値を4パラメータ曲線当てはめを用いて作成したV2較正曲線と比較することによって、第VII因子レベルを得た。
【0102】
リン脂質依存性トロンビン産生アッセイ
野生型FVIIaと比較して、Glaドメインの修飾(P10Q/K32E)により、さらなるγ−カルボキシル化の結果としてFX活性化、トロンビン産生、および陰イオン性リン脂質または活性化血小板の存在下での全血凝固の効力が増加する。PL依存性TGAを、陰イオン性リン脂質の存在下でのrFVIIa活性を測定するよう設計し、Thrombinoscope、BV製のトロンビン較正物質および基質試薬、FLuCaキットを用いて行った。20%ホスファチジルセリン(PS)、40%ホスファチジルエタノールアミン(PE)および40%ホスファチジルコリン(PC)で構成されるリン脂質(PL)小胞は、Avanti Polar Lipids製とし、100mM NaCl、50mMトリスHCl(pH7.2)中10分間の超音波処理によって調製した。
【0103】
PL小胞(500μM)またはトロンビン較正物質20μLを96ウェルプレートに分配した。異なる濃度のrFVIIaをヒトHemA血漿に希釈し、3連でPL混合物に添加し、37℃に10分間平衡化した。FluCa溶液を添加することによって、トロンビン産生反応を開始し、反応をThrombinoscope
BVによって概説される較正自動トロンボグラフィ(Calibrated Automated Thrombography)(CAT)法にしたがって60分間連続的に監視した。トロンビン較正物質を用いてα
2−マクログロブリン活性について補正するThrombinoscope
BV(3.4.0)ソフトウェアを用いて、データを取得および分析した。分析パラメータ「ピーク高さ」は産生したトロンビンの最高レベルを表し、「内因性トロンビンポテンシャル」(ETP)は産生したトロンビンの総量に相当していた。Prism4.0(GraphPad Inc)を用いた4パラメータ非線形曲線当てはめ法によってトロンビン産生パラメータを分析した。
【0104】
リン脂質依存性FX活性化アッセイ
PL依存性FX活性化アッセイを用いて、FVIIaが組織因子を含まないリン脂質小胞の存在下でFXを活性化する能力を測定した。第VIIa因子またはFVIIa変異体を、リン脂質小胞の存在下でFXと共にインキュベートする。S−2765、FXaについての発色基質を添加することによって、FXの活性化を測定する。手短に言えば、較正物質および試料をポリプロピレン丸底プレート中トリスHCl緩衝液に希釈する。4μg/mL FX(Haematologic Technologies Inc.)30μLを96ウェル平底ポリスチレンプレートの全ウェルに添加し、引き続いて20:40:40の重量%比のホスファチジルセリン、ホスファチジルコリンおよびホスファチジルエタノールアミンからなるリン脂質小胞30μLを添加した。希釈試料および較正物質30μLをFX/リン脂質混合物に移した。プレートを密閉し、穏やかに混合し、37℃で20〜23時間インキュベートした。S−2765(DiaPharma)の5mM溶液40μLを全ウェルに添加した。プレートを密閉し、37℃で6時間インキュベートした。マイクロプレートリーダーにより405nmで吸光度を読み取った。試料のFX活性化レベルをF7較正曲線と比較することによって、試料の活性を測定した。
【0105】
ラットPK試験動物、試験プロトコル(調製物の注入、血液および調製物のサンプリング、ELISA、データ分析、動物の屠殺)。
【0106】
タンパク質(F7、V2、V1、dV2およびdV1)を0.1mg/kgでスプラーグドーリーラットに静脈内投与した。血漿試料を、投与1分後に始めて採取し、FVII ELISAによって分析した。
【0107】
HemA−PK試験
タンパク質(F7、dV1)を1.0mg/KgでHemAマウスに静脈内投与した。血漿試料を、投与5分後に始めて採取し、FVII ELISAおよびsTF−PTアッセイによって分析した。
【0108】
血漿試料に対するFVII ELISA
材料
FVIIaに対するモノクローナル抗体を使用した。1つのモノクローナル抗体をさらにビオチン化した。精製FVIIa変異体(野生型または脱シアリル化)をアッセイ較正物質およびアッセイ対照として使用する。ブロッキング緩衝液は30mMトリスpH7.2、60mM NaCl、0.03%Tween 20中1%(w/V)カゼインである。アッセイ希釈緩衝液(ADB)は、0.1%(w/v)カゼイン、50mMトリスpH7.2、0.1M NaCl、0.05%Tween−20である。アッセイ洗浄緩衝液はPBS+0.05%Tween−20である。免疫測定プレートはGreiner Microlon高結合プレート(番号655061)である。ストレプトアビジン−西洋わさびペルオキシダーゼ(SA−HRP)はR&D Systems製である。HRP基質Ultra−TMBはThermoFisher Pierce製である。ブランクマウス血漿は商業的に(Bioreclamation)または社内供給源を通してCD1またはHemAマウスから得た。他の全ての材料(カゼイン、トリス、NaCl、Tween−20、PBS、硫酸)は試薬等級の品質のものである。
【0109】
FVIIaサンドイッチ免疫測定の方法
96ウェルアッセイプレートを、4℃で一晩、PBS中1μg/mlの、FVIIaに対する抗体0.1ml/ウェルでコーティングする。プレートを吸引し、回転させながら(150rpm)室温で少なくとも2時間0.2ml/ウェルのブロッキング緩衝液でブロッキングする。ブロッキング後、ウェルを4×0.3ml/ウェルの洗浄緩衝液で洗浄する。FVIIa試料または標準をADB中5%血漿の最終濃度に1:20希釈し、回転させながら室温で少なくとも1.5時間0.1ml/ウェルでインキュベートする。全ての標準、対照および試料を3連ウェルで測定する。前記の通りプレートを洗浄した後、FVIIaに対するビオチン化抗体をADB中42ng/ml、0.1ml/ウェルで添加し、プレートを回転させながら室温で少なくとも1時間インキュベートする。プレートを洗浄し、引き続いてストレプトアビジン−HRP、ADB中1:1000と共にインキュベートし、回転させながら室温で少なくとも1時間インキュベートする。最終的なプレート洗浄後、ウェルを0.1ml/ウェルのUltra−TMBで展開し、0.05ml/ウェルの2M硫酸を用いて反応を停止する。停止した反応物をOD−450nmで読み取り、データを分析および較正する。アッセイについての定量下限値(LLOQ)は、典型的には100%血漿中15〜30ng/mlのFVIIaである。
【0110】
rFVIIa活性を測定するための可溶性組織因子(sTF)に基づく修正PTアッセイ
プロトロンビン時間(PT)アッセイを行って、HemAマウスエキソビボ血漿試料中のヒトrFVIIaの活性を測定した。
【0111】
手短に言えば、aPTT緩衝液(0.15M NaCl、0.05MトリスpH7.5、0.1%BSA)中10%のHemAマウス血漿および50%のヒトFVII欠乏血漿(George King Inc)を含有する試料50μLをsTF−PT試薬50μLと混合し、37℃で30秒間インキュベートした。sTF−PT試薬は1体積の2μM組換えヒト可溶性TF(sTF
1−221)および1体積の8μMリン脂質小胞(PS
20:PC
40:PE
40)で構成されていた。25mMのCaCl
2 50μLを添加することによって凝固を開始し、凝固時間をSTA Coagulation Analyzer(Diagnostica Stago Inc)で記録した。標準は、200から0.78ng/mLまで2倍連続希釈したrFVIIa(wt−rFVIIまたは修飾rFVIIa変異体)からなっていた。
【0112】
血友病A(HemA)マウスにおける脱シアリル化V2の有効性
急性尾切断有効性試験
失血量を測定するために、マウスをイソフルランで麻酔し、尾を15mlプラスチックチューブ中37〜38℃に加温した0.9%生理食塩水に10分間入れた。尾をメスによって先端から4mmで切断し、直ちに生理食塩水10mlを含有する別の予め加温した15mlプラスチックチューブに戻し入れた。マウスを40分にわたって自由に出血させた。脱シアリル化V2およびF7を、尾切断損傷の5分後または15分および30分前に静脈内投与した。血液回収前後のチューブを秤量することによって重量測定で失血量を定量化した。
【0113】
尾静脈切断有効性(TVT)試験
HemAマウスに、尾静脈切断損傷の1時間前または5分後に尾静脈注射によって脱シアリル化V2またはF7を投与した。適切な麻酔を使用した。尾静脈を11番メスの直線刃を用いて切断し、タイマーを開始した。次いで、マウスを4×8インチ加熱パッドの上部に置かれた白色紙寝具(Versi−Dri(商標))を含む個々の清潔なケージに戻した。動物の活動状態を次の9時間にわたって1時間毎におよび24時間の時点で監視した。活動レベル低下の兆候を示したマウスを監視フォームに書き留め、過剰な失血の兆候を示したマウスを直ちに安楽死させた。
【0114】
HemAマウス血漿におけるトロンビン−抗トロンビン(TAT)アッセイ
試薬:
(1)捕捉抗体:Enzyme Research Labs、カタログ番号TAT−EIA−Cの抗トロンビンポリクローナル抗体;(2)検出抗体:Enzyme Research Labs、カタログ番号TAT−EIA−DのHRP抱合抗AT−IIIポリクローナル抗体、(3)アッセイ希釈液:Enzyme Research Labs、カタログ番号TAT−EIA−D、(4)HRP基質:Amplex Red、Invitrogen、カタログ番号A12216、(5)α−トロンビン:Enzyme Research Labs、カタログ番号HT−1002a、−80℃で保管、(6)AT−III:Enzyme Research Labs、カタログ番号HAT、−80℃で保管、(7)BSA:Sigma、カタログ番号A−7030;(8)AT−III欠乏血漿:Enzyme Research Labsから購入、カタログ:AT−DP、−80℃で保管。
【0115】
緩衝液
(1)TAT標準緩衝液:20mMトリスHCl、pH7.4、0.15M NaCl、1mM EDTA、0.05U/mlヘパリン;(2)コーティング緩衝液:1錠剤の重炭酸塩+100ml dH20、4℃で保管;(3)ブロッキング緩衝液:2%BSA−PBS;(4)試料希釈緩衝液:0.1M HEPES、pH7.4、0.15M NaCl、1%BSA、0.05%Tween20を添加、濾過および分割し、−20℃で保管;(5)基質緩衝液:5mg/mL Amplex Red50μL、3%H2O2 20μlをPBS緩衝液に添加する。混合し、プレートに添加する前に新たに調製する;(6)1μM TAT標準ストックの調製:1.36mg/mlのヒトAT−III 100μLおよび3.28mg/mLのヒトトロンビン5.93μLをTAT緩衝液419μLに添加し、混合し、37℃で10〜20分間インキュベートする;(7)60nM TAT標準ストックの調製:1μM TAT複合体50μLをAT−III欠乏血漿783μLに添加し、混合する。50μL/バイアルに分割し、−80℃で保管する。
【0116】
アッセイ手順
1.抗トロンビンpAb(捕捉抗体)を重炭酸塩緩衝液に希釈する(1:100希釈:1つの96ウェルプレートについて、抗体110μLを重炭酸塩緩衝液11mLに添加する)。
【0117】
2.希釈コーティング抗体100μLを2HB Immulon 96ウェルプレート上の各ウェルに添加する。プレートを穏やかに叩いて確実に全ての液体がプレートの底を覆うようにする。プレートを密閉し、4℃で一晩インキュベートする。
【0118】
3.自動プレート洗浄機において300μL洗浄緩衝液で4回洗浄する。最後の洗浄後、プレートを反転させ、清潔なペーパータオルに軽く叩きつける。
【0119】
4.ブロッキング緩衝液(2%BSA−PBS)150μLを各ウェルに添加する。プレートを密閉し、室温で1.5時間インキュベートする。
【0120】
5.自動プレート洗浄機を用いて300μL洗浄緩衝液で4回洗浄する。最後の洗浄後、プレートを反転させ、清潔なペーパータオルに軽く叩きつける。
【0121】
6.標準、試料およびQC100μLを各ウェルに3連で添加し、プレートを室温で2時間室温でインキュベートする。
【0122】
7.自動プレート洗浄機を用いて300μL洗浄緩衝液で4回洗浄する。最後の洗浄後、プレートを反転させ、清潔なペーパータオルに軽く叩きつける。
【0123】
8.HRP−検出抗体100μL(1/100、抗体110μLを抱合体希釈液11mLに添加する)を各ウェルに添加する。プレートを密閉し、室温で1時間インキュベートする。
【0124】
9.自動プレート洗浄機を用いて300μL洗浄緩衝液で4回洗浄する。最後の洗浄後、プレートを反転させ、清潔なペーパータオルに軽く叩きつける。
【0125】
10.Amplex Rd基質70μL(新たに調製)を各ウェルに添加する。
【0126】
11.プレートを室温で暗所に置き、15〜30分間インキュベートする。
【0127】
12.OD485nm/595nmでプレートを読み取る。
【0128】
13.標準を4パラメータ曲線当てはめでプロットする;対照および各試料の濃度を各ELISAプレートの標準から計算した。
【0129】
凝固能力のあるマウスにおける脱シアリル化V2の有効性
急性尾切断試験を行って凝固能力のあるマウスにおけるdV2の有効性を測定した。凝固能力のあるマウスをイソフルランで麻酔し、尾を15mlプラスチックチューブ中37〜38℃に加温した0.9%生理食塩水に10分間入れた。5mg/kg組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)の静脈内投与後、尾をメスによって先端から50mmで切断し、生理食塩水10mlを含有する別の予め加温した15mlプラスチックチューブに戻し入れた。脱シアリル化V2およびF7を尾切断損傷直後に静脈内投与した。マウスを45分にわたって自由に出血させた。血液回収前後のチューブを秤量することによって重量測定で失血量を定量化した。
【0130】
結果
脱シアリル化または脱グリコシル化タンパク質のインビトロ特性評価
dV2の重鎖をLC−TOF MSによって分析した。分析により、重鎖上のN−グリカンがシアリダーゼ処理後にシアル酸を含有していないことが示された。軽鎖に対するこのような分析は、Glaドメインの存在によって困難にされた。処理分子のシアル酸含量の全般的な状況を得るために、シアル酸蛍光標識を行った。この方法により、シアル酸の99.9%超が脱シアリル化プロセス中にV2上で除去されることが示された。
図7は、シアル酸含量についての脱シアリル化V2の分析を示している。LC−TOF MS分析およびシアル酸蛍光標識を利用した。シアル酸含量分析をdV1に対しても同様に行うと同様の結果が得られた(データ不掲載)。脱シアリル化分子を、リン脂質依存性Xa活性化とリン脂質依存性TGAアッセイの両方によって活性について試験した。PL−XaおよびPL−TGAアッセイにより、脱シアリル化後のタンパク質の活性が低下しないことが証明された(
図9および
図10参照)。
図9は、脱シアリル化タンパク質に対するPL−FXa活性化アッセイを示している。脱シアリル化V1およびV2(dV1、dV2)を、リン脂質FXa活性化アッセイを用いて活性について試験した。両脱シアリル化タンパク質が、このアッセイでその未修飾親分子と比較してわずかに高い活性を有した。
図10は、脱シアリル化タンパク質に対するPL−TGAアッセイを示している。PL−TGAによって、dV2およびdV1は、その未修飾親分子に対してわずかに増加した活性を示した。結果をF7に正規化した。
【0131】
PL−Xaアッセイにより、その未修飾親分子に対するdV2およびdV1の活性の測定可能な増加が一貫して示された。ヒポグリコシル化wtFVIIa、V2およびV1分子を発現させ(
図11)、発現と活性の両方について粗製発現抽出物として試験した。
図11は、ヒポグリコシル化FVII変異体の発現を示している。電気穿孔4日後の培地試料をFVII発現について分析した。抗Glaドメイン抗体を用いたウエスタンブロット解析は、変異体の発現を示している。N−グリカン部位の除去は、発現レベルについて正規化すると活性に影響を及ぼすように見えなかった。
図12は、トランスフェクション上清を用いたヒポグリコシル化FVII変異体の「特異的活性」の測定を示している。ヒポグリコシル化変異体の2つの一過性トランスフェクションからの粗製発現上清の活性をXa活性化アッセイによって分析した。ELISAによって測定される発現について正規化すると、N−グリカン除去の結果としての活性の低下は認められなかった。このアッセイで予想されるように、V1およびF7タンパク質は類似の活性を有する一方で、V2分子はそのTF非依存性の結果である低い活性を有していた。このことは、pMB121と呼ばれる2個のN−グリカン(N322およびN145)のみを有する精製ヒポグリコシル化V2に対して行ったPL−TGA活性アッセイによってさらに証明された。
図13は、精製したヒポグリコシル化変異体pMB121に対するPL−TGAアッセイを示している。PL−TGAアッセイによって、pMB1212は未修飾V2と同様にF7に対して増強した活性を示す。これらの分子のインビトロクリアランスを肝細胞クリアランスモデルで試験した。dV2はこのモデルで未修飾V2に対して有意なクリアランスを証明した(
図14)一方で、ヒポグリコシル化変異体についてはクリアランスの増加がほとんどまたは全く見られなかった(
図15)。
【0132】
ラットPKおよびHemA PK
スプラーグドーリーラットにおける薬物動態試験により、脱シアリル化およびヒポグリコシル化タンパク質がFVII ELISAによって測定されるようにその未修飾対応物よりも有意に速く排除された。
図16は、ラット薬物動態結果を示している。脱シアリル化V2およびV1の半減期は、FVII ELISAによって測定されるようにスプラーグドーリーラットにおいてその未修飾親分子よりも有意に短かった。これは、脱シアリル化V2、脱シアリル化V1およびpMB121(ヒポグリコシル化V2)も同様であった。両脱シアリル化分子についてのt1/2は1分未満であった一方で、その親タンパク質のt1/2はおよそ2.5時間であった。ヒポグリコシル化V2分子pMB121のクリアランスは、1.6時間のt1/2を有するF7のクリアランスと同等であった。HemAマウスにおけるPK試験は、それぞれおよそ3分および2.6時間の半減期を有するdV2およびF7と同様の結果を有した(
図17(A))。sTF−PTT凝固アッセイによって短い半減期が確認された(
図17(B))。
図17は、HemA PK結果を示している。脱シアリル化V2の半減期は、HemAマウスにおいて、A)FVII ELISAおよびB)sTF−PTアッセイによって測定されるように、その未修飾親分子よりも有意に短かった。
【0133】
HemA有効性モデル
dV2を有効性についてHemAマウスで試験した。HemA尾切断モデルを用いると、dV2は1mg/kgの用量で(ボーラス、静脈内)効果的であることが示された。比較して、このモデルでは、F7の効果的な用量は2.5mg/kg(ボーラス、静脈内)であった。これらの結果により、dV2がF7よりも効果的であることが証明される(
図18(A))。このモデルを利用してdV2の有効性がF7の有効性よりも速く消滅することも示された(
図18(B))。
図18は、HemAマウスにおける脱シアリル化V2有効性試験の結果を示している。dV2を用いた試験により、この分子が、HemA尾切断モデルにおいて、F7よりもA)効果的でありかつB)速い有効性クリアランスを有することが示される。
【0134】
より感受性のTVTモデルを用いると、F7に対するdV2のより速い有効性クリアランスも証明され、効果的な用量が確認された。
図19は、TVT HemAモデルにおけるdV2有効性試験を示している。より高い感受性を有する有効性モデル(TVT)を用いたTVT試験により、dV2がF7よりも速い有効性クリアランスを有することが確認された。HemAマウスへの投与30分後および60分後に行った血栓形成性のマーカーとしてのトロンビン抗トロンビン(TAT)測定により、dV2について有意に低いレベルが示された。
図20はTAT測定を示している。HemAマウスでは、効果的な用量(1mg/kg)で投与したdV2が、効果的な用量のF7(2.5mg/kg)よりも少ないトロンビン抗トロンビン(TAT)を産生した。このデータは、有効性データと合わせて、dV2がF7よりも好都合な治療指数を有することを示唆しているだろう。
【0135】
凝固能力のあるマウスにおける有効性
dV2を、有効性について、tPA処理した凝固能力のあるマウスで試験した。尾切断モデルを用いると、dV2は0.3〜1mg/kgの用量で(ボーラス、静脈内)効果的であることが示された。比較して、このモデルでは、F7の効果的な用量は5mg/kg(ボーラス、静脈内)であった。これらの結果により、dV2がF7よりも効果的であることが証明される(
図21)。
図21は、tPA処理した凝固能力のあるマウスにおける脱シアリル化V2有効性試験の結果を示している。
【0136】
脱シアリル化野生型第VII因子(dWT VIIa)のクリアランスおよび有効性
脱シアリル化野生型第VII因子(dWT VIIa)を、出発第VII因子材料としてNovo Nordiskから得たNovoSeven(登録商標)を用いて、かつ上記のように可溶性シアリダーゼ酵素を用いて出発ポリペプチドを脱シアリル化することによって上記のように産生した。dWT VIIaは、99%超の純度、低いエンドトキシンを有し、検出可能なシアル酸を有さないことが分かった。さらに、質量分析により、シアル酸の選択的除去が示された。
【0137】
このdWT VIIa材料の活性を、上記のBiophen FVII発色アッセイおよび修正PTアッセイを用いて分析し、野生型第VII因子と比較した。これらの分析の各々により、dWT VIIaが野生型第VII因子ポリペプチドとほぼ同一の活性を有することが示された。
【0138】
dWT VIIaおよび野生型第VII因子(1mg/kg)のクリアランスも、ヒト組織因子ノックイン(TFKI)マウスのマウスモデルを用いて分析および比較した。
図22に示されるように、dWT VIIaの半減期は野生型第VII因子よりも有意に短く、クリアランス(ml/時間/kg)は40倍速かった。
【0139】
上記のTFKIマウスおよび尾切断法を用いて、野生型第VII因子と比較したdWT VIIaの有効性を調査した。手短に言えば、5mg/kgのtPAをマウスに静脈内注射し、引き続いて尾の先端から50mmを切り落とした。次いで、野生型第VII因子(Novoseven(登録商標))またはdWT VIIaを1〜6mg/kgに及ぶ投与量で静脈内注射した。次いで、血液を45分間尾から採取し、不安定な血餅を採取期間全体にわたって6分毎に破壊した。
図23に示されるように、驚くべきことにdWT VIIaは、野生型第VII因子よりも有意に効果的であることが分かった。より具体的には、6mg/kg用量の野生型第VII因子と比較して、3mg/kg用量のdWT VIIaにより失血減少が引き起こされた。この分析の結果を仮定すると、2mg/kgのdWT VIIaが6mg/kgの野生型第VII因子と生物学的同等用量であると決定された。
【0140】
dWT VIIaおよび野生型第VII因子(NovoSeven(登録商標))が全身性凝固を引き起こす能力も上記トロンビン抗トロンビン(TAT)法によって調査した。マウスを生物学的同等用量のdWT VIIa(2mg/kg)および野生型第VII因子(6mg/kg)で処理し、次いで、TAT複合体の形成をELISAによって測定した。
図24に示されるように、野生型NovoSeven(登録商標)第VII因子は、dWT VIIaよりも有意に高いレベルのTATを産生した。dWT VIIaがベースラインTATレベルのみを産生したという事実を仮定すると、この実験は、ポリペプチドが野生型第VII因子と同じくらい効果的であるという事実にもかかわらず、この用量のdWT VIIaが観察可能な全身性凝固をもたらさないことを示唆している。
【0141】
さらに、dWT VIIaおよび野生型第VII因子(NovoSeven(登録商標))が血栓形成を引き起こす能力もFeCl
3血栓症モデルで調査した。マウスを血栓症試験の開始15分前に生物学的同等用量のdWT VIIa(2mg/kg)および野生型第VII因子(6mg/kg)で処理した。次いで、3.25%FeCl
3溶液の投与によって血栓症を開始し、次いで、血栓形成をドップラーによって30分間測定した。得られた血流データを血流対時間のグラフにプロットし、次いで、対照試料についての曲線下の面積の百分率を計算して、第VII因子処理群の各々について血栓形成によって引き起こされた血流の低下を決定した。
図25に示されるように、野生型NovoSeven(登録商標)第VII因子は、血流の有意な減少(平均ほぼ40%)をもたらした一方で、dWT VIIaは血流の低下をほぼ示さなかった(平均>90%)。この実験により、所与の用量のdWT VIIaは、野生型第VII因子と比較して大いに減少した血栓形成をもたらすことが証明された。
【0142】
野生型第VII因子と比較したdWT VIIaの活性および有効性を、SN−17cトリペプチド蛍光原基質(HTI)を用いて、これらのペプチドの可溶性組織因子(sTF)に対する見かけの結合親和性を調べることによってさらに調査した。
図26に示されるように、この分析により、dWT VIIa(dF7)および野生型第VII因子(F7)が同等のsTFに対する見かけの結合親和性を有することが証明された。しかしながら、
図27に示されるように、sTF−第VII因子複合体(0.5mM 第VII因子[dWT VIIaまたは野生型]、125nM sTF)の存在下で第X因子濃度を滴定することによって、これらのペプチドが第X因子を活性化する能力を調べる実験モデルでは、dWT VIIaおよび野生型第VII因子についてのミカエリスメンテン型反応速度論により、dWT VIIa(dF7)が野生型第VII因子(F7)よりも有効に(およそ2倍)第X因子を活性化することができることが証明される。このデータは、dWT VIIaがその野生型対応物よりも1つの第VII因子活性部位当たり多くの第X因子を第Xa因子に変換することができることを示唆している。
【0143】
考察
急性出血の治療に効果的であるが、血栓形成性が低下した治療薬を開発する未だ対処されていない医学的必要性が存在する。半減期が短い効果的な第VII因子ポリペプチドは、急性出血に使用するのに適したより大きな治療窓を有する分子を潜在的にもたらすだろう。
【0144】
V2およびV1は2つの第VIIa因子変異体である(
図1〜
図3)。これらの変異体は、活性化血小板に対する親和性を増加させ、V2の場合には、組織因子非依存性をもたらすGlaドメインの変異を含有する。両変異体はさらに2個のN−グリコシル化部位も有し、これにより野生型第VIIa因子と比較して延長した半減期、血友病の治療に有利な形質がもたらされる。しかしながら、急性出血のための治療剤としてのその使用は、半減期の減少から利益を得るだろう。この修正により、オフターゲットの効果のリスクが低下し、結果として、その治療指数が増加するだろう。本発明者らは、ここで、V2およびV1の炭水化物鎖上に存在するシアル酸の除去により、インビトロ肝細胞クリアランスモデルにおいて分子の有意に速いクリアランスがもたらされることを示した。ヒポグリコシル化変異体はインビトロモデルではこれで速く排除されなかったが、このことは脱シアリル化分子とヒポグリコシル化分子との間のクリアランスの機構が異なることを示唆している。スプラーグドーリーラットで行ったインビボ試験により、脱シアリル化分子(dV2およびdV1)ならびにヒポグリコシル化変異体pMB121が有意に減少した半減期を有することが証明された。興味深いことに、脱シアリル化V2とV1の両方が、脱シアリル化野生型FVIIaについて報告されている速度と比較して増加したクリアランス速度(Appaら、Thrombosis and Haemostasis 104.2/2010)、そのさらに2個のN−グリカンにより得る特徴を有していた。この活性についての1つの可能な理論は、本明細書で主張されるものに限定されないが、これらの余分なN−グリカンが、脱シアリル化されて、ASGPRまたは類似の受容体のための追加のリガンドとなり、より速いクリアランスを媒介するというものである。これらの分子の活性は、インビトロ活性アッセイによって測定されるように、その親分子と比較して保持されたまたは増加した。dV2のより速いクリアランスは、HemAマウスPK試験においてインビボでさらに検証され、HemA尾切り落としおよびTVT試験において効果的であることが示された。
【0145】
さらに、野生型第VII因子の脱シアリル化によって、野生型よりもずっと急速に消滅する第VII因子ポリペプチドが産生された一方で、多数の実験モデルにおいて示されるように有効性が増加するという驚くべき結果も提供された。
【0146】
第VIIa因子または第VIIa因子変異体のN−グリカンの除去またはN−グリカンの単糖組成の修正により、より速く消滅する分子が得られる。これらの分子はインビボで活性を保持し効果的である。これらの速く消滅する第VII a因子分子の開発は、急性出血性適応症の治療に有益であるのみならず、潜在的に市場の種々の抗凝固薬の解毒薬となるだろう。