(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1に記載の方法によって形成されるネオジム触媒法によるポリブタジエン(NdBR)を含むゴム混合物であって、前記ネオジム触媒法によるポリブタジエンが、前記ネオジム触媒法によるポリブタジエンを基準にして、90重量%を超えるcis−1,4単位および1重量%未満の1,2−ビニルブタジエン含量を含み、前記ネオジム触媒法によるポリブタジエンが、33%以上のモル質量の分断%を示す、ゴム混合物。
【背景技術】
【0002】
ポリブタジエンは、タイヤ産業において、最終的な性能における改良、たとえば転がり抵抗性の低下および摩耗値の低下を達成することを目的として、ゴム混合物の重要な構成成分として使用されている。さらなる使用分野は、ゴルフボールの芯材または靴底にあり、その場合の主たる関心は高い反発弾性にある。
【0003】
かなりの長期間にわたって、cis−1,4単位を高い割合で含むポリブタジエンは、大規模な工業的スケールで製造されており、タイヤおよびその他のゴム製品の製造、さらにはポリスチレンの耐衝撃性のための変性に使用されてきた。
【0004】
現在のところ、cis−1,4単位を高い割合で達成するためには、たとえば(特許文献1)および(特許文献2)に記載されているように、希土類金属の化合物をベースとする触媒が、ほぼ例外なく使用されている。
【0005】
高cisポリブタジエンの群の中でも、ネオジム触媒法によるポリブタジエンが、転がり抵抗、摩耗値および反発弾性に関しては特に有利な性質を有していることが、従来技術から公知である。使用される触媒系は、ポリブタジエンの製造において重要な役割を果たす。
【0006】
工業的に採用されているネオジム触媒は、たとえばZiegler−Natta系であり、それは、複数の触媒成分から形成される。触媒の生成には、ほとんど異なる触媒サイトの形成が含まれ、その結果、ポリマー中に少なくともバイモーダルなモル質量分布が得られる。Ziegler−Natta触媒系においては、親和性のある3種の触媒成分、通常ネオジム源、クロリド源、および有機アルミニウム化合物が、所定の温度条件下で各種の方法で混合され、エージングの有無を問わず、重合のための触媒系を構成する。
【0007】
従来技術でも、ポリブタジエンの製造において使用されるZiegler−Natta触媒系を調製するためのいくつかの方法が開示されている。
【0008】
同様に、従来技術では(特許文献3)が開示されており、そこでは、ネオジム酸化物、ネオジムアルコキシドおよびカルボキシレートを、有機金属ハロゲン化物、さらには有機化合物と20℃〜25℃の温度で混合することによって、触媒が調製される。これら4種の成分のための混合温度は、50℃〜80℃の範囲とすることもできる。この方法においては、その混合物を冷却して20〜25℃の範囲の温度とし、その時点で水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAH)を添加する。エージングについての記述はない。
【0009】
(特許文献4)には、溶液粘度/ムーニー粘度の比率が低いポリブタジエンを製造するための方法が開示されており、その触媒調製は、予備形成法で実施されている。最初に、バーサチック酸ネオジムを、DIBAHおよびイソプレンと50℃で混合し、次いで、その混合物を冷却して5℃とし、その後で、エチルアルミニウムセスキクロリド(EASC)と混合する。エージングは、10℃〜−80℃の温度で、数分〜数日かけて実施することができる。コモノマー、たとえばビスジエンを重合の途中で添加して、ポリマーの分岐を増やし、それによって極めて狭い溶液粘度/ムーニー粘度比を得る。その方法で得られた分岐状のポリマーは、ビスジエンを介したカップリングによって、1分子あたり少なくとも4個の遊離の鎖末端を有するが、それに対して、直鎖状の分子は、2個の鎖末端しか有さない。
【0010】
1つのポリマー中の鎖末端の数は、エネルギー散逸性能と直接的な相関を有している。ポリマーのエネルギー散逸性能は、遊離の鎖末端の数と共に向上する。しかしながら、ポリマーのエネルギー散逸性能が低いほど、たとえば、転がり抵抗性が低くなり、およびポリマーの反発弾性が良好となる。したがって、同一のモル質量であれば、1分子あたり2個の鎖末端しか有さない直鎖状のポリマーの最終性能は、分岐状のポリマーよりも常に良好となるであろう。
【0011】
商業的に生産されているポリマーは、統計的なモル質量分布を有していて、その幅は、その触媒が製造された方法に影響されることは公知である。
【0012】
「ムーニー粘度における段階的上昇(step increase in Mooney viscosity)」という表現、およびそれに類似した、たとえば「ムーニー値における段階的上昇(step increase in Mooney value)」、「ムーニージャンプされた(Mooney jumped)」、または「ムーニージャンプ(Mooney jump)」といった表現は、ポリマーを重合させた後で、そのムーニー粘度をさらに高くするための技術を指している。
【0013】
エラストマー性の不飽和ジエンポリマーの分子量を増大させることは、各種の理由から重要である。第一に、それによって低分子量の親ポリマーを作成することが可能となり、そのことは、典型的に採用される溶液重合技術に関連して大きな利点を有しており、「セメント(cement)」(重合において使用される有機溶媒媒体中のポリマーの溶液)において低い粘度を与え、その「セメント」中により高い固形分含量が存在するようになる操作を可能とし、それは、優れた熱伝達が達成されるからである。そのようなジエンポリマーのコールドフロー性を低下させることもさらに可能であり、それにより、油展性能が向上する。
【0014】
高分子量ポリマー、特に高分子量のネオジム触媒法によるポリブタジエンを直接製造するために溶液重合方法を使用するのは、高い溶液粘度のために特別に困難かつ非経済的であることは、従来技術における一般的常識である。撹拌が困難である。さらなる問題点としては、重合系における幾分かの不均質性、および熱伝達の劇的な低下が挙げられる。高分子量にまで直接重合させようとすると、その反応空間の固形分含量を低下させる結果として、ポリマーの生成速度を下げる必要がある。そのようなアプローチでは、ポリマーの製造コストがかなり上昇する。
【0015】
「予備形成法(pre−forming)」によって、Nd触媒の触媒効果を変化させることが可能であることが公知である。そのように予備形成されたNd触媒は、比較的低いコールドフロー性を有するポリマーを与えるが、しかしながら、予備形成することによって通常、触媒活性が低下し、そのため場合によってはネオジムの消費量がかなり増える。
【0016】
重合後にジエンポリマーを、二塩化二硫黄、二塩化硫黄、塩化チオニル、二臭化二硫黄、または臭化チオニルを用いて処理することによって、低いコールドフロー性を有するポリジエンを得ることが可能であることもさらに公知である(特許文献5)。しかしながら、(特許文献5)に記載されている、エラストマー性のジエンポリマーを製造するための方法は、ムーニージャンプで重合後のポリマーのムーニー粘度よりも50%以上高くしなければならない場合、高分子量のネオジム触媒法によるポリブタジエンに適していないという点で不利である。この理由は、「ジャンプされた(jumped)」ポリマーが、幾分かのゲル化を示し、それが反応器内の壁面に付着する結果として、反応器のオンストリーム時間を短くするからである。反応器の清掃および保持は、時間およびコストがかかる。そのポリマー自体がゲル画分を含み、そのため、もはやタイヤ用途に使用することができないというさらなるリスクも存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
したがって、本発明が対象としている問題点は、高いモル質量およびムーニー粘度のポリマーの良好な動的最終性能、低い転がり抵抗性、良好な亀裂抵抗性、および低い摩耗値を有する加硫物を得ると共に、同じムーニー粘度を有する未変性のNdBRに比べてより短い混合時間、および高いストランド速度での簡略化された押出し加工性などの良好な加工特性を備えた、高分子量のネオジム触媒法によるポリブタジエン(NdBR)を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、ネオジム触媒法によるポリブタジエン(NdBR)を基準にして、95重量%を超えるcis−1,4単位および1重量%未満の1,2−ビニル含量を含み、25%以上のモル質量の分断(molar mass breakdown)を示す、ネオジム触媒法によるポリブタジエンを提供する。
【0020】
素練り剤をNdBRと混合することによってモル質量の分断を実施し、素練り剤との混合の前後でそのNdBRのムーニー粘度(ML1+4、100℃)を測定し、計算によってムーニー粘度の間の変化パーセントを求めるのが好ましい。
【0021】
本発明のNdBRが、33%以上、より好ましくは50%以上のモル質量の分断を示すのが好ましい。
【0022】
本発明の意味合いにおけるモル質量の分断は、以下のようにして求める:素練り剤との混合の前後にNdBRのムーニー粘度(ML1+4、100℃)を測定し、次式で計算する:
モル質量の分断%=(K−L)/K*100
[式中、
K=素練り剤と混合する前のNdBRのムーニー粘度(ML1+4、100℃)であり、そのポリマーがムーニージャンプ変性されている場合には、そのムーニー粘度(ML1+4、100℃)は、変性の後のものであり、および
L=素練り剤と混合した後のNdBRのムーニー粘度(ML1+4、100℃)]。
【0023】
天然ゴムの場合において、モル質量の分断が特に重要であることは従来技術からも公知である。天然ゴムは、モル質量およびゲル含量が高いことから、加工することが困難であるため、通常加工は、素練りと呼ばれる操作にかけて、ポリマー鎖を意図的に解裂させることによって進行させる。このポリマー鎖の分断は、機械的、または熱−酸化的のいずれで実施することも可能である。天然ゴムの機械的分断は、高剪断(high friction)のロールミルで実施される。熱−酸化的分断では、分断の酸化プロセスに触媒作用のある、一連の物質(素練り剤(masticating agent)、素練り促進剤(peptizer))が使用される。2,2’−ジベンズアミドジフェニルジスルフィド(DBD)が効果的な分断促進剤であり、その一方で、金属の有機錯体がそのプロセスを活性化する。
【0024】
合成ゴムについて、特に、ムーニージャンプされた、すなわち重合後にそのムーニー粘度(ML1+4、100℃)がさらに高くなるように変性された高分子量のNdBRについて、これに関連してモル質量の分断は知られていない。
【0025】
驚くべきことに、本発明のNdBRゴムの場合においては、素練り剤がモル質量の分断をもたらすことが見いだされた。そのため、NdBRを意図的に特徴づけることが可能である。したがって、NdBRの加工挙動を、そのムーニー粘度とは無関係に予測することが今や可能となった。
【0026】
素練り剤としては、鉄フタロシアニンおよび2,2’−ジベンズアミドジフェニルジスルフィド、ワックス、ならびに充填剤を含む混合物が挙げられる。その素練り剤を、固体のNdBR原料と混合する。この目的には、たとえばロール、ニーダー、ミキサー、またはエクストルーダーなど、任意の慣用される混合装置を使用することができる。典型的に混合が実施されるのは、ロール上である。
【0027】
いかなるロールを選択してもよい。この概念の分析的実証に理想的な選択は、実験室用ロールであり、それが100g〜2kgのポリマーを扱うことができれば好ましい。ロールの直径が5〜30cmであれば好ましい。ロール間隙は、製作されるミルドシートが均質になるように選択する。ロール間隙は、好ましくは0.3〜2mm、より好ましくは0.4〜1mmである。ロール速度は、オペレーターが効率よく作業することができ、均質性を改良するために、ミルドシートを手作業で切断および折り重ねできるように選択する。ロールは、摩擦の存在下または非存在下で運転することができる。使用する素練り混合物の量は、使用するポリマーを基準にして、0.1〜2重量%とするのがよい。より大量の素練り剤を添加してもよいが、それによって効率をさらに上げることにはならず、その一方で、過剰の素練り混合物が処理後のムーニー粘度をさらに下げる可能性もある。
【0028】
そのロールは、外部の温度制御系によって、各種の温度に加熱してもよい。70℃〜160℃の温度が好ましく、80℃〜120℃であれば特に好ましい。予備的な試験によって、理想的なロール温度を容易に決めることができる。それは、ロールからポリマーへの熱の移動に依存し(これはすなわち、ロール表面積対使用したポリマーの量の比率に依存する)、および使用した活性化剤に依存する。
【0029】
活性化剤として鉄フタロシアニンを使用する場合には、ロール温度は好ましくは90℃〜120℃である。素練り混合物中に活性化剤が存在しない場合には、好ましくはより高い温度が必要となり、それは典型的には、100℃〜140℃である。
【0030】
処理時間は、ロール上のポリマーの温度と、その素練り混合物で使用された活性化剤とに依存する。処理時間は、典型的には1分〜30分であり、予備的な試験で決めることができる。ロール温度ならびにポリマーの量および素練り混合物の量を最適に組み合わせると、理想的には、処理時間を1〜10分の範囲にまで短縮させることができる。
【0031】
本発明はさらに、本発明のネオジム触媒法によるポリブタジエン(NdBR)を製造するための方法であって、
1)少なくとも1種の不活性な有機溶媒の存在下で、およびネオジム化合物をベースとする少なくとも1種の触媒の存在下で、60℃〜140℃の温度でブタジエンモノマーを重合させ、
2)次いで、反応性化合物の混合によりその重合を停止させ、
3)そのポリマーが冷却できないようにしながら、そのポリマーを硫黄塩化物類と直接混合し、それによってムーニージャンプされたポリマーを形成させ、
4)そのムーニージャンプされたポリマーに素練り剤を混合し、それによってモル質量の分断を増やす、
方法を提供する。
【0032】
ポリマーへの硫黄塩化物類の混合が、そのポリマーを「変性している(modifying)」ともみなされることを理解されたい。
【0033】
工程3)における温度は、好ましくは66℃〜140℃、より好ましくは75℃〜100℃の範囲である。変性処理は、15分未満、好ましくは10分で実施される。
【0034】
工程3)は、静的ミキサーまたは動的ミキサーを用いて実施するのが好ましい。
【0035】
硫黄塩化物類を混合するための温度および時間の条件が守られると、この方法によって、驚くべきことに、本発明の高分子量のネオジム触媒法によるポリブタジエン(NdBR)が生成し、このことは、ムーニー粘度(ML1+4、100℃)を基準にして、25%以上の素練り剤を用いたモル質量の分断を示し、モル質量の分断は、素練り剤をNdBRと混合することによって起こり、素練り剤との混合の前後におけるNdBRのムーニー粘度(ML1+4、100℃)を測定し、算術的にモル質量の分断を求める。
【0036】
硫黄塩化物類の転化率が、好ましくは90%超以上、より好ましくは95%以上、さらにより好ましくは97%以上であることもまた確認された。本発明におけるポリマー溶液のpHは、理想的には6〜7の範囲であり、その場合には転化率が97%を超えるであろう。塩化硫黄の転化率が高いほど、その方法がプラント設備に対して穏やかになる。このことは、次のストリッピングプロセスでHClが放出され、それがプラント設備の腐食を招く可能性があるからである。したがって、本発明の方法は、発生するHClが原因のプラントの腐食を軽減し、および/または完全に防止する。
【0037】
そのpHを求めるには、重合からのポリマー溶液を水と共に撹拌する。使用する水の量はポリマー溶液の量と同じにする。使用する水のpHは7である。迅速試験のためには、数分後、典型的には5〜10分後にその水のpHを再度測定する。二塩化二硫黄の転化率を定量的に測定するには、NaOHに対してその水を滴定する。終点は、指示薬を使用して視覚的に求めることもできるだけではなく、pH電極を使用して求めることもできる。
【0038】
驚くべきことに、本発明の方法に従って製造されたポリブタジエンのゲル含量が、好ましくは1重量%未満、より好ましくは0.3重量%未満、さらにより好ましくは0.2重量%未満であることが判明した。ゲル含量の測定方法については、後に説明する。
【0039】
使用されている用語は、以下の意味合いを有している:
初期ムーニー粘度:ポリマーの重合後、すなわち工程2)の後のムーニー粘度(ML1+4、100℃)。
最終ムーニー粘度:変性/ムーニージャンプの後、またはポリマーのジャンプ反応の後(ジャンプされたポリマー)、すなわち工程3)の後のムーニー粘度(ML1+4、100℃)。
ジャンプされたポリマー:変性後、ムーニージャンプの後、またはジャンプ反応の後の高分子量ポリブタジエン。
【0040】
炭化水素中に可溶性の、希土類金属の化合物、たとえばセリウム、ランタン、プラセオジム、ガドリニウムまたはネオジムの化合物をベースとするZiegler−Natta触媒を使用するのが好ましい。使用されるZiegler−Natta触媒が以下のものであれば、特に好ましい:希土類金属の相当する塩、たとえば、ネオジムのカルボン酸塩、特にネオデカン酸ネオジム、オクタン酸ネオジム、ナフテン酸ネオジム、2,2−ジエチルヘキサン酸ネオジム、または2,2−ジエチルヘプタン酸ネオジム、ネオジムのリン酸塩、特にたとえば国際公開第200238636号パンフレットに記載されているようなトリス(2−エチルヘキシルリン酸)ネオジム、ならびにさらにはランタンまたはプラセオジムの相当する塩。有用なZiegler−Natta触媒としてはさらに、たとえば欧州特許出願公開第A1025136号明細書および欧州特許出願公開第A1078939号明細書に記載されているような、メタロセンをベースとする触媒系も挙げられる。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明の方法は、以下の工程を使用して実施するのが好ましい:
a)少なくとも1種の不活性な有機溶媒の存在下で、およびネオジム化合物をベースとする少なくとも1種の触媒の存在下で、60℃〜140℃の温度でブタジエンモノマーを重合させる工程であって、
好ましい1つの実施形態において、予備形成の存在下または非存在下で、
− 成分A:ネオジムのアルコキシド、リン酸塩、またはカルボン酸塩、好ましくはバーサチック酸ネオジム、
− 成分B:アルキルアルミニウム化合物、好ましくは水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAH)、
− 成分C:ジエン、好ましくはブタジエン、および
− 成分D:少なくとも1種のハロゲン化合物、好ましくはエチルアルミニウムセスキクロリド(EASC)
を含むネオジムをベースとする触媒系を使用することによる触媒の調製法が存在する、工程、
b)反応性化合物を用いて重合を停止させ、それによって第一のポリマーを形成させる工程、
c)その第一のポリマーが冷却できないようにしながら、第一のポリマーを硫黄塩化物類と混合し、それによってムーニージャンプされたポリマーを形成させる工程、および
d)そのムーニージャンプされたポリマーに素練り剤を混合する工程。
【0042】
本発明のまた別の実施形態において、その方法は以下のさらなる工程:
c1)工程c)の後で工程d)の前に、ムーニージャンプされたポリマーのムーニー粘度を測定する工程、
e)工程d)の後に、ポリマーのムーニー粘度を再度測定する工程、および
f)ポリマーのモル質量の分断%を計算する工程
を含んでもよい。
【0043】
必要に応じて、工程d)、e)およびf)を繰り返して、所望のモル質量の分断%を達成することも考えられる。
【0044】
有用なジエンとしては、ブタジエン、イソプレン、ペンタジエン、および2,3−ジメチルブタジエン、特にはブタジエンおよびイソプレンが挙げられる。上述のジエンは、個別に使用できるだけではなく、相互に混合して使用することも可能であり、それによって、上述のジエンの、ホモポリマーあるいはコポリマーのいずれでも製造される。
【0045】
触媒系が製造されたところで、有機溶媒中において重合を実施する。それらの溶媒は、使用される触媒系に対して不活性でなければならない。好適な溶媒としては、たとえば以下のものが挙げられる:芳香族、脂肪族および脂環族炭化水素、たとえばベンゼン、トルエン、ペンタン、n−ヘキサン、イソヘキサン、ヘプタン、異性体のペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、およびシクロヘキサン。これらの溶媒は、個別に使用しても、組み合わせて使用してもよい。シクロヘキサンおよびn−ヘキサンが好ましい。極性溶媒とブレンドすることも、同様に可能である。
【0046】
それら不活性な有機溶媒は、100重量部のモノマーを基準にして、200〜900重量部の量で使用される。300〜500重量部の量が好ましい。
【0047】
重合は、連続法のみならず、バッチ法でも実施することができる。
【0048】
重合は、60℃〜140℃の範囲の温度で実施される。
【0049】
重合は、一段または多段、バッチ操作、連続操作など、慣用される方法で実施することができる。複数の、好ましくは少なくとも2基、特には2〜6基の反応器からなるカスケード反応器における連続の操作が好ましい。
【0050】
所望の転化率に達したところで、反応性化合物、たとえば、プロトン性化合物を添加することによる慣用される方法で触媒を失活させる、すなわち重合を停止させる。そのプロトン性化合物の量は、使用したモノマーを基準にして、好ましくは0〜1phrである。
【0051】
反応性化合物としては、好ましくは脂肪酸が挙げられ、この場合、飽和、モノ不飽和またはポリ不飽和の植物性もしくは動物性の脂肪酸、たとえば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、またはバーサチック酸を使用することができる。
【0052】
重合の不活化には、ステアリン酸またはラウリン酸を使用するのが好ましい。
【0053】
また別の実施形態においては、好ましくは、カルボン酸を必要としないこともあり得る。
【0054】
所望の転化率を達成することで、触媒を1種または複数の反応性の極性有機化合物と反応させることがさらに可能となり、その有機化合物は、触媒と反応した後、ポリマー鎖に結合された官能性末端基を形成することができる。
【0055】
ポリマーから低沸点物をすべて除去する目的で、重合後に減圧工程を実施することも同様に可能であるが、これは必須ではない。
【0056】
硫黄塩化物類としては、好ましくは二塩化二硫黄、二塩化硫黄および/または塩化チオニル、またはそれらの任意の混合物が挙げられる。
【0057】
他の硫黄ハロゲン化物を使用することも同様に可能であり、その場合、ハロゲンとしては塩素または臭素が使用され、塩素を使用するのが好ましい。硫黄の二ハロゲン化物が慣用されるが、1分子あたりの硫黄含量は、1〜8個の範囲の硫黄原子とするのがよく、ハロゲン化物1個あたり2個の硫黄原子が存在しているのが好ましい。二塩化二硫黄を用いて変性を実施するのが特に好ましい。
【0058】
100重量部のジエンゴムあたりに混合される硫黄塩化物類、好ましくは二塩化二硫黄の量は、一般的には0.05〜0.7重量部の範囲、好ましくは0.1〜0.4重量部の範囲である。
【0059】
変性は、典型的には66℃〜140℃、好ましくは75℃〜100℃の温度で実施されるが、その一方で変性にかかる時間は、15分未満、好ましくは10分である。
【0060】
仕上げの前に、ポリマー溶液に対して、慣用される安定剤を慣用される量で添加してもよい。有用な安定剤としては、たとえば以下のものが挙げられる:立体障害のあるフェノール、たとえば、2,6−ジ−tert−ブチル−4,5−メチルフェノール、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、または3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピン酸オクタデシル、または芳香族アミンたとえば、N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−パラ−フェニレンジアミン、またはホスファイト、たとえば、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト。その他の市販されている安定剤を使用してもよい。
【0061】
ポリマーは、ポリマー溶液を蒸発させる方法、非溶媒たとえばメタノール、エタノール、アセトンを用いて沈殿させる方法、または好ましくは溶媒を水蒸気蒸留させる方法によって単離する。
【0062】
水蒸気を用いたストリッピングの後で、適切な篩、またはスクリュー装置たとえばエキスペラーまたはエキスパンダースクリュー、または流動層ドライヤーを使用して水を除去する。
【0063】
乾燥は通常の方法、たとえば乾燥キャビネット中またはスクリュー乾燥機中で実施する。
【0064】
そのようにして得られた高分子量のネオジム触媒法によるポリブタジエン(NdBR)は、ネオジム触媒法によるポリブタジエンを基準にして、90重量%を超えるcis−1,4単位および1重量%未満の1,2−ビニルブタジエン含量を有し、ムーニー粘度(ML1+4、100℃)を基準にして、25%以上のモル質量の分断を示すが、ここで、モル質量の分断は、素練り剤をNdBRと混合することにより実施され、素練り剤との混合の前後でNdBRのムーニー粘度(ML1+4、100℃)を測定する。
【0065】
本発明の高分子量のポリブタジエン(NdBR)は、好ましくは、ゲル化がまったくないか、あるとしても顕著に低いゲル化しか示さない。そのゲル含量は、好ましくは、1重量%未満である。
【0066】
本発明のNdBRは、好ましくは、次の物性を有している:
・ 1〜10000kg/molのNdBRのモル質量(Mw)、
・ 1〜5、好ましくは1.2〜3.0のMw/Mnとしての多分散性、
・ 30MU〜150MUのムーニー粘度、
・ 100重量%のNdBRを基準にして、0.01〜1重量%、好ましくは0.02〜0.5重量%の硫黄含量、
・ 100重量%のNdBRを基準にして、0.01〜1重量%、好ましくは0.02〜0.5重量%の塩素含量、
・ ポリマー中で、90%を超える、好ましくは95%を超える、1,4−cis−ブタジエン単位の割合、
・ ポリマー中で、1%未満、好ましくは0.5%未満の、1,2−ビニル−ブタジエン単位の割合。
【0067】
本発明のネオジム触媒法によるポリブタジエンは、ゴムのムーニー粘度を調節するための、エクステンダーオイル、たとえば芳香族エクステンダーオイルの添加は一切必要としない。
【0068】
本発明のポリブタジエンは、単独で使用することも、あるいは芳香族もしくは脂肪族オイルを用いて希釈(cut)することも、あるいは他のゴムと混合することもできる。ゴム加硫物を製造するのに適したさらなるゴムとしては、天然ゴムのみならず、合成ゴムも同様に挙げられる。そのようなものとしては、以下のものが挙げられる:
BR − 通常のポリブタジエン、
ABR − ブタジエン/アクリル酸C1〜C4−アルキルコポリマー、
CR − ポリクロロプレン、
IR − ポリイソプレン、
SBR − 1〜60、好ましくは20〜50重量%のスチレン含量を有する、スチレン−ブタジエンコポリマー、
IIR − イソブチレン−イソプレンコポリマー、
NBR − 5〜60、好ましくは10〜40重量%のアクリロニトリル含量を有する、ブタジエン−アクリロニトリルコポリマー、
HNBR − 部分水素化または完全水素化NBRゴム、
EPDM − エチレン−プロピレン−ジエンモノマーコポリマー、
ならびにそれらの混合物。表面変性充填剤を助剤とした自動車用タイヤの製造のための、関心を寄せられている物質は、特に、天然ゴム、エマルション法SBR、さらには欧州特許出願公開第A−0 447 066号明細書に記載されているような、−50℃よりも高いガラス転移温度を有し、任意選択的にシリルエーテルまたは他の官能基で変性されている溶液法SBRゴム、Ni、Co、TiまたはNdベースの触媒を用いて製造した、高い1,4−cis含量(>90重量%)を有するポリブタジエンゴム、さらには0〜75重量%のビニル含量を有するポリブタジエンゴム、さらにはそれらの混合物である。
【0069】
ゴム混合物は、本発明の主題のさらなる一部を構成しており、一般的には、5〜300重量部の、たとえば以下に示すような活性もしくは不活性な充填剤を含んでいる:
− 微細に分散されたシリカ、たとえば、シリケートの溶液を沈降させるか、またはケイ素のハロゲン化物を火炎加水分解させることによって調製され、5〜1000、好ましくは20〜400m
2/gの比表面積(BET表面積)および10〜400nmの一次粒径を有するもの。それらのシリカは、任意選択的に、他の金属の酸化物たとえばAl酸化物、Mg酸化物、Ca酸化物、Ba酸化物、Zn酸化物、Zr酸化物、またはTi酸化物との混合酸化物として存在していてもよい、
− 合成ケイ酸塩、たとえばケイ酸アルミニウム、ケイ酸アルカリ土類金属、たとえば、ケイ酸マグネシウムもしくはケイ酸カルシウムで、BET表面積が20〜400m
2/g、一次粒子直径が10〜400nmのもの、
− 天然ケイ酸塩、たとえばカオリンおよびその他の天然産のシリカ、
− ガラス繊維およびガラス繊維製品(マット、ストランド)、またはガラスマイクロビーズ、
− 金属酸化物、たとえば、酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、
− 金属炭酸塩、たとえば、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、
− 金属水酸化物、たとえば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、
− 金属塩、たとえばα,β−不飽和脂肪酸、たとえば3〜8個の炭素原子を有するアクリル酸またはメタクリル酸の亜鉛塩またはマグネシウム塩、たとえば、アクリル酸亜鉛、二アクリル酸亜鉛、メタクリル酸亜鉛、二メタクリル酸亜鉛、およびそれらの混合物、
− カーボンブラック。本明細書において使用されるカーボンブラックは、ランプブラックプロセス、ファーネスブラックプロセス、またはガスブラックプロセスにより製造されたものであり、20〜200m
2/gのBET表面積を有しており、たとえば、SAF、ISAF、HAF、FEF、またはGPFブラックである、
− ゴムゲル、特にポリブタジエン、ブタジエン−スチレンコポリマー、ブタジエン−アクリロニトリルコポリマー、およびポリクロロプレンをベースとするもの。
【0070】
二アクリル酸亜鉛、微細に分散されたシリカ、およびカーボンブラックが特に好ましい。
【0071】
上述の充填剤は、単独で使用しても、混合して使用してもよい。1つの特に好ましい実施形態においては、そのゴム混合物に、充填剤として、淡色の充填剤、たとえば微細に分散されたシリカとカーボンブラックとの混合物が含まれ、淡色の充填剤対カーボンブラックの混合比が、0.05〜20の範囲、好ましくは0.1〜10の範囲である。
【0072】
本発明のポリブタジエンの溶液に充填剤を添加する形態は、好ましくは、固体の形態、または水もしくは溶媒中のスラリーの形態である。そのゴム溶液はあらかじめ調製してもよいが、重合したままの溶液を直接使用するのが好ましい。次いで、その溶媒を、熱的、好ましくは水蒸気を利用して除去する。このストリッピング操作のための条件は、予備的な試験から容易に決めることができる。
【0073】
充填剤を、本発明の固体のポリブタジエンまたはゴムの混合物に混合し、公知の方法、たとえばニーダーを使用して組み入れるのがさらに好ましい。
【0074】
本発明のゴム混合物は、任意選択的に、架橋剤をさらに含んでいてもよい。使用される架橋剤は、硫黄またはペルオキシドであってよく、この場合、硫黄が特に好ましい。本発明のゴム混合物にはさらに、ゴム用助剤、たとえば、反応促進剤、抗酸化剤、熱安定剤、光安定剤、抗オゾン剤、加工助剤、可塑剤、粘着付与剤、発泡剤、染料、顔料、ワックス、エクステンダー、有機酸、遅延剤、金属酸化物、さらには、活性化剤、たとえばトリエタノールアミン、ポリエチレングリコール、ヘキサントリオールなどが含まれていてよく、これらのものはゴム業界では公知である。
【0075】
高活性の沈降シリカを含む好適なゴム混合物においては、さらなる充填剤活性化剤の使用が特に有利である。好ましい充填剤的活性剤としては、以下のものが挙げられる:硫黄含有シリルエーテル、特にビス(トリアルコキシシリルアルキル)ポリスルフィド(たとえば、独国特許出願公開第A2 141 159号明細書および独国特許出願公開第A2 255 577号明細書に記載されているようなもの)、オリゴマー性および/またはポリマー性の硫黄含有シリルエーテル(独国特許出願公開第A4 435 311号明細書および欧州特許出願公開第A0 670 347号明細書)、メルカプト−アルキルトリアルコキシシラン、特にメルカプトプロピルトリエトキシシランおよびチオシアナトアルキルシリルエーテル(たとえば、独国特許出願公開第A195 44 469号明細書に記載のもの)。
【0076】
それらのゴム助剤は、慣用される量で使用され、それは、特に目的とする用途に依存する。慣用される量の例は、ゴムを基準にして、0.1〜50重量%の量である。
【0077】
ゴムの、上述のその他のゴム助剤、架橋剤、および加硫促進剤とのさらなるブレンド作業は、適切な混合装置、たとえば、ロール、インターナルミキサー、およびミキシングエクストルーダーなどを使用して、慣用される方法で実施することができる。
【0078】
本発明のゴム混合物は、(任意選択的に10〜200barの加圧下で)100〜200℃、好ましくは130〜180℃の慣用される温度で加硫することができる。
【0079】
本発明のゴム混合物は、任意の種類の成形物品を製造するのに極めて有用である。
【0080】
それらの成形物品の例を非限定的に挙げれば、O−リング、形材、ガスケット、膜、タイヤ、タイヤトレッド、制動要素、ホースなどがある。
【0081】
各種のタイヤ構成部品およびタイヤトレッドが、特に好適である。
【0082】
本発明のゴム混合物はさらに、熱可塑性プラスチック、特にポリスチレンおよびスチレン−アクリロニトリルコポリマーの耐衝撃性の改良においても有用である。
【0083】
このゴム混合物を、ゴルフボール、特にゴルフボールの芯材のために使用するのが特に好ましい。
【0084】
本発明の範囲には、上記および下記の一般的な項目または好ましい範囲として記載される、残基の定義、指数、パラメーター、および説明のすべてが相互に組み合わさって、すなわちそれぞれの範囲および好ましい範囲が任意の所望の組合せとして包含される。
【0085】
本発明をさらに説明することを目的として、以下の実施例が提供される。
【実施例】
【0086】
I.高分子量のネオジム触媒法によるポリブタジエン(NdBR)の製造
比較例1:ムーニージャンプを有する従来品のNdBR、S
2Cl
2の混合
1a)重合:
乾燥させた、窒素を用いて不活性化した20Lのスチール製オートクレーブに、8500gのヘキサン(モレキュラーシーブ上での乾燥品)、1300gの1,3−ブタジエン、21mmolのヘキサン中水素化ジイソブチルアルミニウムの20%溶液、1.44mmolのヘキサン中エチルアルミニウムセスキクロリドの10%溶液、およびさらに1.44mmolのヘキサン中バーサチック酸ネオジムの40%溶液を仕込んだ。そのオートクレーブの内容物を、撹拌しながら加熱して73℃とし、撹拌しながら60分かけて重合させた。反応器の中の温度を上げて、90℃とした。その重合の後のブタジエンの転化率は、98.7%であった。
【0087】
6.5gのステアリン酸(0.5phr)を混合することによって、その重合反応を停止させた。その溶液は、さらに15分間90℃に保持した。
初期ムーニー粘度(ML1+4、100℃):39.5MU、
微細構造:97.4重量%の1,4−cis、1.9重量%の1,4−trans、0.6重量%の1,2−ビニル。
【0088】
1b)変性:
720gのポリマー溶液(固形分13%)を2Lのガラス製反応器の中へ移した。その溶液を冷却して40℃としてから、変性させた。変性のために、0.37gの二塩化二硫黄(0.4phr、2.96mmol phm)を混合した。その溶液を、45℃で15分間撹拌した。pH測定のために、その溶液から100gのサンプルを取り出した。
【0089】
残った溶液から、この残分を5kgのエタノール中に通すことによって、NdBRを沈殿させ、Irganox1520(0.2phr)を用いて安定化し、70℃で真空乾燥させた。
最終ムーニー粘度(ML1+4、100℃):55MU、
ゲル含量:0.3重量%未満、
微細構造:97.4重量%の1,4−cis、1.9重量%の1,4−trans、0.6重量%の1,2−ビニル、
pH:4.6。
【0090】
滴定による、塩化硫黄の転化率Uの測定:
・ 使用した水100gから、10gの水を、フェノールフタレイン指示薬を使用し、0.1モル濃度のNaOH溶液で滴定した:
NaOHの消費量=0.23mL、これは、0.1mol/Lの濃度では0.023mmolに相当する。
・ 次式により計算
U[S
2Cl
2](%)=(1−(n[NaOH])/(n[S
2Cl
2]*2*c[BR]*F))*100
U[S
2Cl
2](%)=(1−(0.023mmol)/(2.96mmol*2*0.13*0.1))*100
=(1−0.023mmol/0.077mmol)*100=70%。
【0091】
1c)モル質量の分断
素練り剤:4gのDBDを、乳鉢中で、6gのタルカムおよび0.08gの鉄フタロシアニンと混合した。
【0092】
実験室用ロール上、120℃で、1b)からのポリマー250gを1.56gの素練り剤と混合した。ロール間隙は0.5mm、ロール直径は10cmであった。ロール時間は15分であった。
ムーニー粘度(ML1+4、100℃):40MU、
ゲル含量:0.3重量%未満、
モル質量の分断:27%。
【0093】
比較例2:ムーニージャンプをさせないNdBR
モル質量の分断:
実験室用ロール上、120℃で、Buna CB22タイプのネオジム触媒法によるポリブタジエン(初期ムーニー粘度(ML1+4、100℃)=63.3MU)の250gを、1.56gの素練り剤と混合した。ロール間隙は0.5mm、ロール直径は10cmであった。ロール時間は15分であった。
ムーニー粘度(ML1+4、100℃):62MU、
ムーニー応力緩和(MSR、100℃):0.69、
ゲル含量:0.3重量%未満、
モル質量の分断:2%。
【0094】
本発明実施例3:33%のモル質量が分断されたNdBR
3a)重合:
乾燥させた、窒素を用いて不活性化した20Lのスチール製オートクレーブに、8500gのヘキサン(モレキュラーシーブ上での乾燥品)、1300gの1,3−ブタジエン、21mmolのヘキサン中水素化ジイソブチルアルミニウムの20%溶液、1.44mmolのヘキサン中エチルアルミニウムセスキクロリドの10%溶液、およびさらに1.44mmolのヘキサン中バーサチック酸ネオジムの40%溶液を仕込んだ。そのオートクレーブの内容物を、撹拌しながら加熱して73℃とし、撹拌しながら60分かけて重合させた。反応器の中の温度を上げて90℃とした。6.5gのステアリン酸(0.5phr)を混合することによって、その重合反応を停止させた。
【0095】
転化率試験用のサンプルを抜き出した。重合後のブタジエンの転化率が98.7%であることが判明した。
出発時ムーニー粘度(ML1+4、100℃):40MU、
微細構造:97.5重量%の1,4−cis、2.0重量%の1,4−trans、0.5重量%の1,2−ビニル。
【0096】
3b)変性:
変性のために、90℃でそのポリマー溶液を3.33gの二塩化二硫黄(0.3phr)と混合した。その溶液は、さらに14分間90℃で撹拌した。pH測定のために、その溶液から100gのサンプルを取り出した。
【0097】
残った溶液から、この残分を5kgのエタノール中に通すことによって、NdBRを沈殿させ、Irganox1520(0.2phr)を用いて安定化し、70℃で真空乾燥させた。乾燥後の最終重量:1263g。
最終ムーニー粘度(ML1+4、100℃):61.0MU、
ゲル含量:0.3重量%未満、
微細構造:97.5重量%の1,4−cis、2.0重量%の1,4−trans、0.5重量%の1,2−ビニル、
モル質量:Mn=202kg/mol、Mw=418kg/mol、Mz=1050kg/mol;多分散性(Mw/Mn)=2.07、
溶液粘度:277mPas、
pH:6.5。
【0098】
滴定による、塩化硫黄の転化率Uの測定:
・ 使用した水100gから、10gの水を、フェノールフタレイン指示薬を使用し、0.01モル濃度のNaOH溶液で滴定した:
NaOHの消費量=0.08mL、これは、0.01mol/Lの濃度では0.0008mmolに相当する。
・ 次式により計算
U[S
2Cl
2](%)=(1−(n[NaOH])/(n[S
2Cl
2]*2*c[BR]*F))*100
U[S
2Cl
2](%)=(1−(0.023mmol)/(2.22mmol*2*0.13*0.1))*100
=(1−0.0008mmol/0.058mmol)*100=99%。
【0099】
3c)モル質量の分断
素練り剤:4gのDBDを、乳鉢中で、6gのタルカムおよび0.08gの鉄フタロシアニンと混合した。
【0100】
実験室用ロール上、120℃で、3b)からのNdBRの250gを1.56gの素練り剤と混合した。ロール間隙は0.5mm、ロール直径は10cmであった。ロール時間は15分であった。
ムーニー粘度(ML1+4、100℃):40.7MU、
ゲル含量:0.3重量%未満、
モル質量:Mn=189kg/mol、Mw=362kg/mol;多分散性(Mw/Mn)=1.92、
モル質量の分断:33%。
【0101】
本発明実施例4:35%のモル質量が分断されたNdBR
4a)重合:
重合は、実施例1と同様にして実施した。
【0102】
反応器内の最終温度は95℃、ブタジエンの転化率は99%であった。
出発時ムーニー粘度(ML1+4、100℃):40MU、
微細構造:97.5重量%の1,4−cis、2.0重量%の1,4−trans、0.5重量%の1,2−ビニル。
【0103】
4b)変性:
変性のために、95℃でそのポリマー溶液を3.33gの二塩化二硫黄(0.3phr)と混合した。その溶液を、さらに10分間、95℃で撹拌した。pH測定のために、その溶液から100gのサンプルを取り出した。
【0104】
残った溶液から、この残分を5kgのエタノール中に通すことによって、NdBRを沈殿させ、Irganox1520(0.2phr)を用いて安定化し、70℃で真空乾燥させた。
最終ムーニー粘度(ML1+4、100℃):62.7MU、
ゲル含量:0.3重量%未満、
微細構造:97.4重量%の1,4−cis、2.0重量%の1,4−trans、0.6重量%の1,2−ビニル、
モル質量:Mn=212kg/mol、Mw=462kg/mol、Mz=1150kg/mol;多分散性(Mw/Mn)=2.17、
溶液粘度:288mPas、
pH:6.4、
S
2Cl
2の転化率:99%。
【0105】
4c)モル質量の分断:
20rpmで回転しているBrabenderタイプのインターナルミキサーの中で、230gのNdBRを混合し、5分かけて130℃に加熱した。それに1.44gの素練り剤を添加し、同一の条件下で1分間混合した。この手順を合計して4回実施した。ゴムを合わせた。
ムーニー粘度(ML1+4、100℃):41.0MU、
ゲル含量:0.3重量%未満、
モル質量の分断:35%。
【0106】
試験:
A:BAYELAS MO AQ 259−A LAB法に類似の重量法による、スチレン中でのポリブタジエンのゲル含量の測定:
25.0gのポリマーを、化学天秤上で、0.1gまで正確に秤量する。縁部はあらかじめ切断して、廃棄する。ポリマーを切断して、小片にする。1Lの広口ビンに、最初に850mLの濾過済みのスチレンを仕込み、振盪機上で約4時間かけてポリマーを溶解させる。
【0107】
メッシュサイズ0.036mm、φ50mmのワイヤ織布からなる細目金網を赤熱するまで加熱し、デシケーターボトルの中に置いて冷却させる。冷却してから、デシケーターボトルから細目金網を取り出し、化学天秤上で、0.1mgまで正確に秤量する。この重量をAとする。それぞれに100mLの濾過済みのスチレンを入れた、3個のガラスビーカーを用意する。50mmの直径を有する細目金網を、「Gelman」金属濾過系(シール−フィルター−シール)に置き、ロート装置を、定位置にねじ止めする。
【0108】
次いで、そのフィルターにポリマー溶液を通過させる。3個のスチレンを含むガラスビーカーの最初のものを使用して、広口ビンを洗い流し、その溶液も同様に、フィルターを通過させる。次いでそのフィルターを、残った2つのスチレン部分を用いて洗い流す。
【0109】
次いでペンチ(pincers)を用いてそのフィルターを注意深く取り外し、清潔な紙ティッシューの上に置く。そのペンチを使用して、フィルターの縁に注意深く圧力をかける。めがね(eyeglass)を用いて、スチレンの蒸発を観察する。まだスチレンで湿っている、湿ったワイヤフィルターが、スチレンの量が少なくなるにつれて、見かけ上、色が薄くなる。フィルターメッシュのすべてからスチレンがなくなったら、直ちに天秤でそれを再び秤量する。この重量をBとする。
【0110】
フィルターの2回目の秤量の後、乾燥キャビネット中、100℃(±5℃)で15分かけてフィルターを乾燥させ、乾燥ゲル含量を求める。その間中、フィルターは、蓋を開けたデシケーターボトルの中に置いておく。乾燥後、ボトル+フィルターをデシケーターの中に約10分間入れて冷却し、次いで再秤量する。その重量をCとする。
【0111】
計算:
【数1】
B:ムーニー粘度およびムーニー応力緩和
ASTM D1646−00による。
C:ISO 3105による溶液粘度
Brookfield DV I 回転粘度計を使用し、室温で、トルエン中5.43%ポリマーの溶液を測定する。
D:GPCはCurrentaによって実施した。
E:微細構造の測定
Currenta、ELA 101:ポリマーのトルエン中の溶液を、KBrウィンドウの上に流し、溶媒を蒸発させて、2枚のKBrウィンドウに挟んだそのポリマー膜をFTIR分光光度法により測定する。
ESBO:エポキシ化大豆油(Cognis製)
Irganox1520:4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール(BASF製)。
【0112】
F:塩化硫黄の転化率の測定
pHを測定するためには、(25℃で)pHが7である脱イオン水を使用する。このためには、重合から100gのポリマー溶液を取り出し、KPGスターラーを備えたガラス容器の中で100gの水と共に撹拌する。その温度は50℃であり、温度は外部水浴を介して設定する。撹拌時間は10分である。水相pHを測定する。
【0113】
G:二塩化二硫黄の転化率Uの定量的測定
二塩化二硫黄の転化率を定量的に求めるために、10gの水を、NaOHで滴定する。そのNaOH溶液のモル濃度は、滴定される酸の量に依存し、典型的には、1mol/L〜0.01mol/Lである。pH7での終点は、指示薬を使用して視覚的に求めることもできるだけではなく、pH電極を使用して求めることもできる。NaOHの消費量を用いて、二塩化二硫黄の転化率Uを求めることができる。
U[S
2Cl
2](%)=(1−(n[NaOH])/(n[S
2Cl
2]*2*c[BR]*F))*100
U[S
2Cl
2]=S
2Cl
2の転化率(%)
n[NaOH]=滴定におけるNaOHの消費(mmol)
c[BR]=ポリマーのg/(ポリマー溶液のg)
n[S
2Cl
2]=100gのBRあたりのS
2Cl
2(mmol)
F=使用した水の量/滴定水の量
ここで、抽出されたポリマー溶液の量は、抽出のために使用された水の量に相当する。
【0114】
II.ゴム混合物および加硫物の製造
ゴム混合物として製造したものには、以下のものが含まれる:変性をしていないNd触媒法によるポリブタジエンとしてのBUNA(商標)CB 24(P1)、ムーニージャンプはしたが、変性はしていない実施例3b)のポリマー(P2)、およびモル質量の分断の後の実施例2からの本発明のポリマー4c)(P3)。ゴム混合物のP1
*、P2
*、およびP3
*においては、50phrの上述の特定のポリブタジエンを、それぞれの場合において、50phrの天然ゴムと混合した。
【0115】
混合物の構成成分を表1に列記した。それらの混合物はまず、硫黄および加硫促進剤なしで、1.5Lのニーダーの中で製造した。次いで、混合物構成成分の硫黄および加硫促進剤を、40℃でロール上で混ぜ込んだ。表2に配合と測定した試験結果を示す。
【0116】
混合物の検討に使用した物質は、以下の通りである。
【0117】
【表1】
【0118】
【表2】
【0119】
【表3】
【0120】
【表4】
【0121】
本発明の加硫物P3およびP3
*を比較例のP1およびP2ならびにP1
*およびP2
*と比較すると、Monsanto MDRに必要な加硫時間の短縮:低転がり抵抗性についての指標における改良、たとえば、60℃での高い反発弾性、60℃でのMTS試験における低いtanデルタ最大値、およびEplexor試験における60℃での低いtanデルタ、さらには応力−歪み試験における優れた結果(これは、S300/S10の商が高いことから明らかである)などが認められ、さらに天然ゴムとの混合物の場合においては、P3
*は、P1
*およびP2
*に比較して、摩耗試験の数値が極めて低い。
【0122】
加硫物の試験
加硫物について、下記の標準に従って、以下の物性を求めた:
・ DIN 53505:ショアーA硬度、60℃
・ DIN 53512:反発弾性、60℃
・ DIN 53504:10%、100%、および300%伸びにおける応力値(σ
10、σ
100、およびσ
300)、引張強度、ならびに破断時伸び
・ DIN 53516:摩耗
・ DIN 53513:Eplexor装置による動的減衰 − Gabo−Testanlagen GmbH(Ahlden,Germany)製のEplexor装置(Eplexor 500N)を使用して、動的性質(−60℃〜0℃の温度範囲における貯蔵モジュラスE’の温度依存性、および60℃におけるtanδ)を求めた。それらの値は、DIN 53513に従って、Ares stripについて、−100℃〜+100℃の温度範囲、1K/分の加熱速度、10Hzで求めた。
【0123】
その方法を使用して以下の変数を得た。ここにおける用語はASTM D5992−96に従ったものである。
E’(60℃):60℃における貯蔵モジュラス
E’(23℃):23℃における貯蔵モジュラス
E’(0℃):0℃における貯蔵モジュラス
およびさらに
tanδ(60℃):60℃における損失係数(E’’/E’)
tanδ(23℃):23℃における損失係数(E’’/E’)
tanδ(0℃):0℃における損失係数(E’’/E’)。
【0124】
E’は、冬用タイヤトレッドの氷および雪の上でのグリップ性の指標を与える。E’が低くなるほど、グリップ性が改良される。
【0125】
tanδ(60℃)は、運転条件下におけるタイヤからのヒステリシス損失の目安である。tanδ(60℃)が低くなるほど、タイヤの転がり抵抗性が低下する。
【0126】
・ DIN 53513−1990:弾性 − MTS製のMTSエラストマー試験システム(MTS Flex Test)を使用して、弾性を求めた。測定は、DIN 53513−1990に従い、円筒状試験片(2サンプル、それぞれ20×6mm)について、全圧縮2mm、温度60℃、および測定振動数1Hz、振幅掃引範囲0.1〜40%で実施した。
【0127】
その方法を使用して以下の変数を得た。ここにおける用語はASTM D5992−96に従ったものである。
G
*(0.5%):0.5%の振幅掃引での動的弾性率
G
*(15%):15%の振幅掃引での動的弾性率
G
*(0.5%)−(15%):振幅掃引が0.5%および15%のときの動的弾性率の差
およびさらに
tanδ(最大値):60℃での全測定範囲における最大の損失係数(G”/G’)。
【0128】
G
*(0.5%)−(15%)は、その混合物のPayne効果の使用であり、その値が低いことは、良好な充填剤分布、ひいては低い転がり抵抗性を表している。
【0129】
tanδ(最大)は、運転条件下におけるタイヤからのヒステリシス損失の目安である。tanδ(最大)が低くなるほど、タイヤの転がり抵抗性が低下する。