特許第6363714号(P6363714)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6363714
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】燃焼率調節剤
(51)【国際特許分類】
   C06B 45/24 20060101AFI20180712BHJP
   F42B 5/16 20060101ALI20180712BHJP
   C06B 25/18 20060101ALI20180712BHJP
   C06D 5/00 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
   C06B45/24
   F42B5/16
   C06B25/18
   C06D5/00 Z
【請求項の数】18
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2016-541741(P2016-541741)
(86)(22)【出願日】2014年9月11日
(65)【公表番号】特表2016-536262(P2016-536262A)
(43)【公表日】2016年11月24日
(86)【国際出願番号】AU2014000902
(87)【国際公開番号】WO2015035457
(87)【国際公開日】20150319
【審査請求日】2017年4月19日
(31)【優先権主張番号】2013903511
(32)【優先日】2013年9月12日
(33)【優先権主張国】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】516074229
【氏名又は名称】タレス オーストラリア リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】ウォレンダー ゲーリー
(72)【発明者】
【氏名】ジョーンズ アシュレイ
【審査官】 柴田 啓二
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−224686(JP,A)
【文献】 米国特許第04647579(US,A)
【文献】 米国特許第05908770(US,A)
【文献】 特開昭58−018340(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第00070134(EP,A1)
【文献】 米国特許第04908481(US,A)
【文献】 特開2008−007427(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/153655(WO,A1)
【文献】 特開2011−132085(JP,A)
【文献】 特開2006−071179(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C06B
C06D
F42B 5/16
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギー物質;および
一般式1の化合物を含む、
推進剤。
【化1】
式中
は、−H、−OH、−O(C1−4−アルキル)、−C1−4アルキル、−NHC1−4アルキル、−N(C1−4アルキル)、−NO、−NHNH、−N(C1−4アルキル)NH、および−CNからなる群から選択され;
は、−H、−OH、−O(C1−4−アルキル)、−C1−4アルキル、−NHC1−4アルキル、−N(C1−4アルキル)、−NO、−NHNH、−N(C1−4アルキル)NH、および−CNからなる群から選択され;
は、−H、および−C1−4アルキルからなる群から選択され;並びに、
は、−H、−OH、−O(C1−4−アルキル)、−C1−4アルキル、−NHC1−4アルキル、−N(C1−4アルキル)、−NO、−NHNH、−N(C1−4アルキル)NH、および−CNからなる群から選択され;並びに、
、RおよびRの少なくとも1つは、−OHである。
【請求項2】
エネルギー物質が、顆粒の形態である、請求項1の推進剤。
【請求項3】
顆粒が、穿孔(perforation)を含む、請求項2の推進剤。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載された推進剤であって、エネルギー物質が、カーボンブラック粉末、過塩素酸アンモニウム、ヘキソゲン、ブタントリオールトリナイトレート、エチレングリコール ジナイトレート、ジエチレングリコール ジナイトレート、エリスリトール テトラナイトレート、オクトゲン、ヘキサニトロイソウルツジタン、メトリオール トリナイトレート、N−メチルニトラミン、ペンタエリスリトール テトラナイトレート、テトラニトロベンゾールアミン、トリニトロトルエン、ニトログリセリン、ニトロセルロース、マンニトール ヘキサナイトレート、トリエチレン グリコール ジナイトレート、グアニジン、ニトログアニジン、3−ニトロ−1,2,4−トリアゾール−5−オン、硝酸アンモニウム、プロパンジオール ジナイトレート、ヘキサミン、5−アミノテトラゾール、メチルテトラゾール、フェニルテトラゾール、ポリグリシジルナイトレート、ポリグリシジルアジド、ポリ[3−ナイトレートメチル−3−メチルオキシタン]、ポリ[3−アジドメチル−3−メチルオキシタン]、ポリ[3,3―ビス(アジドメチル)オキシタン]、ナイトレイテッド シクロデキストリン ポリマー、ポリグリシジルナイトレート、および、これらの組み合わせからなる群から選択される、推進剤。
【請求項5】
エネルギー物質がニトロセルロースである、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の推進剤。
【請求項6】
一般式1の化合物が、顆粒の表面上のコーティングの形態である、請求項2乃至5のいずれか1項に記載の推進剤。
【請求項7】
更に、黒鉛層(graphite layer)を含む、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の推進剤。
【請求項8】
一般式1の化合物を含む、燃焼率調節剤(burn rate modifier)
【化2】
式中
は、−H、−OH、−O(C1−4−アルキル)、−C1−4アルキル、−NHC1−4アルキル、−N(C1−4アルキル)、−NO、−NHNH、−N(C1−4アルキル)NH、および−CNからなる群から選択され;
は、−H、−OH、−O(C1−4−アルキル)、−C1−4アルキル、−NHC1−4アルキル、−N(C1−4アルキル)、−NO、−NHNH、−N(C1−4アルキル)NH、および−CNからなる群から選択され;
は、−H、および−C1−4アルキルからなる群から選択され;並びに、
は、−H、−OH、−O(C1−4−アルキル)、−C1−4アルキル、−NHC1−4アルキル、−N(C1−4アルキル)、−NO、−NHNH、−N(C1−4アルキル)NH、および−CNからなる群から選択され;並びに
、RおよびRの少なくとも1つは、−OHである。
【請求項9】
化合物が、4−(4−ヒドロキシフェニル)ブタン−2−オンである、請求項8の燃焼率調節剤。
【請求項10】
一般式1の化合物の、燃焼率調節剤としての使用。
【化3】
式中
は、−H、−OH、−O(C1−4−アルキル)、−C1−4アルキル、−NHC1−4アルキル、−N(C1−4アルキル)、−NO、−NHNH、−N(C1−4アルキル)NH、および−CNからなる群から選択され;
は、−H、−OH、−O(C1−4−アルキル)、−C1−4アルキル、−NHC1−4アルキル、−N(C1−4アルキル)、−NO、−NHNH、−N(C1−4アルキル)NH、および−CNからなる群から選択され;
は、−H、および−C1−4アルキルからなる群から選択され;並びに、
は、−H、−OH、−O(C1−4−アルキル)、−C1−4アルキル、−NHC1−4アルキル、−N(C1−4アルキル)、−NO、−NHNH、−N(C1−4アルキル)NH、および−CNからなる群から選択され;並びに
、RおよびRの少なくとも1つは、−OHである。
【請求項11】
化合物が、4−(4−ヒドロキシフェニル)ブタン−2−オンである、請求項10の使用。
【請求項12】
エネルギー物質の顆粒を、一般式1の化合物でコーティングすることを含む、推進剤の製造方法。
【化4】
式中
は、−H、−OH、−O(C1−4−アルキル)、−C1−4アルキル、−NHC1−4アルキル、−N(C1−4アルキル)、−NO、−NHNH、−N(C1−4アルキル)NH、および−CNからなる群から選択され;
は、−H、−OH、−O(C1−4−アルキル)、−C1−4アルキル、−NHC1−4アルキル、−N(C1−4アルキル)、−NO、−NHNH、−N(C1−4アルキル)NH、および−CNからなる群から選択され;
は、−H、および−C1−4アルキルからなる群から選択され;並びに、
は、−H、−OH、−O(C1−4−アルキル)、−C1−4アルキル、−NHC1−4アルキル、−N(C1−4アルキル)、−NO、−NHNH、−N(C1−4アルキル)NH、および−CNからなる群から選択され;並びに
、RおよびRの少なくとも1つは、−OHである。
【請求項13】
エネルギー物質のスラリーまたは生地を押し出し、紐状の押出造粒物を生成し、そして、紐状の押出造粒物を切断して、エネルギー物質の顆粒を製造する、請求項12の方法。
【請求項14】
エネルギー物質が、穿孔を有して押し出される、請求項13の方法。
【請求項15】
一般式1の化合物が、エネルギー物質の顆粒に分散している、請求項12乃至14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
一般式1の化合物を、エネルギー物質の顆粒全体に、均一に分散させる、請求項12乃至15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
請求項1乃至のいずれか1項に記載の推進剤を含む、弾薬薬莢(ammunition cartridge)
【請求項18】
ケース(casing)、請求項1乃至のいずれか1項に記載の推進剤、雷管および弾丸を含む、弾薬薬莢。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件発明は、一般的に、燃焼率調節剤、および、燃焼率調節剤を含む推進剤に関する。本件発明は、また、推進剤を含む弾薬薬莢と、燃焼率調節剤を含む推進剤、の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
推進剤の性能は、弾丸底部に圧力を与え、銃砲身の内側を下って行かせる、熱とガスの放出を通した、化学エネルギーを機械的エネルギー変化させる、その能力により決定される。多くの要因が、この過程に影響を与える。化学的組成は、1つの重要な性質で、他には、小粒の形態(形および大きさ)であり、燃焼率に重要な効果を有する。最適な推進剤のデザインに到達するために、物質、処理の条件、物理的性質および化学的性質は、全て、推進剤の性能の決定に結び付いていることを理解しなければならない。
【0003】
目標は、改善された弾道学上の性能を提供する最適化された負荷能力(loadability)を有する、効率的な燃焼を達成することである。更に、極端な温度での、推進剤の貯蔵寿命の向上や、弾道学上の一貫性の確保のような他の側面も、また重要である。また、新たな推進剤の製剤および生産プロセスが、効率性を改善し、より厳格な安全性、毒性および環境への影響の要件を満たすために、要求されていることが認識されている。
【0004】
推進剤の性能を改善するために、および、危険なほど高い圧力の蓄積を阻止するために、弾道学上のプロセスの最初の部分で、燃焼率を制御するために、燃焼抑制剤(または燃焼率調節剤)を、基本的に、推進剤に加えられる。これは、通常、推進剤の小粒の上に、化学物質をコーティングすることにより実現される。化学物質は、ある程度、小粒のマトリックスに浸透することができ、(燃焼の連鎖反応を中断することによって)燃焼の反応を遅くするか、または、化学物質は、より低温で燃焼する。
燃焼の連鎖反応を中断することにより機能する、燃焼抑制剤は、フリーラジカルを安定化することにより、そのように機能する。この安定化は、ラジカルの寿命を延ばし、ラジカルプロセスの速度を遅くし、そして、ついで、より少ない、または、より遅い燃焼となる。
【0005】
燃焼率抑制剤の一例は、ジニトロトルエン(DNT)である。比較的簡単に適用でき、長期に亘り安定で、および、ほとんどの小型武器の推進剤のメジャーなエネルギー成分である、ニトロセルロースのような、物質と化学的に互換性があるので、DNTは、有効な燃焼抑制剤である。しかし、それは非常に有毒で、懸念の化学物質とする発癌の疑いがある。(欧州連合の下の、化学物質の登録、評価、認可、および、制限(REACH)のような)最近の立法は、DNTは、ヨーロッパにおいて、禁止される潜在性を持って、高度に使用が規制された結果となった。その特性のため、DNTは、工場の建物内および周辺に堆積し、土に非常にゆっくりと移行し、そして、ゆっくり分解するという、環境問題が付随する。
【0006】
ジブチルフタレート(DBP)のような、他の現在使用されている燃焼率調節剤は、また、懸念のある物質のリストに掲載され、禁止される可能性が高い。他の国々が、より厳密な安全性と環境上の制御を適用するので、DNTおよびDBPのような物質は、またより厳しい制限が適用されるであろうことが予期される。
【0007】
従って、DNT、および、現在、使用されている他の燃焼率調節剤を代替する燃焼率調節剤の必要性があるのである。
【0008】
[発明の概要]
【0009】
従って、本件発明の最初の側面は、一般式1の化合物を含む、燃焼率調節剤を提供することである。
【化1】
式中
は、−H、−OH、−O(C1−4-アルキル)、−C1−4アルキル、−NHC1−4アルキル、−N(C1−4アルキル)、−NO、−NHNH、−N(C1−4アルキル)NH、および、−CNからなる群から選択され;
は、−H、−OH、−O(C1−4-アルキル)、−C1−4アルキル、−NHC1−4アルキル、−N(C1−4アルキル)、−NO、−NHNH、−N(C1−4アルキル)NH、および、−CNからなる群から選択され;
は、−Hおよび−C1−4アルキルからなる群から選択され;並びに
は、−H、−OH、−O(C1−4-アルキル)、−C1−4アルキル、−NHC1−4アルキル、−N(C1−4アルキル)、−NO、−NHNH、−N(C1−4アルキル)NH、および−CNからなる群から選択され;並びに
少なくとも、R、RおよびRの1つは、OHである。
【0010】
本件出願人は、弾薬の推進剤において、DNTの好ましい代替物質となる、燃焼率調整作用を有する、新たな、燃焼率調節剤を開発するために、鋭意、長年に亘り、相当な研究開発を行ってきた。
本件出願人は、一般式1に包含される、4−(4−ヒドロキシフェニル)ブタン−2−オンおよびその誘導体を基に、新たな燃焼率調節剤を開発した。本件出願人は、この新たな燃焼率調節剤が、DNTと、真に同等の良い燃焼率調整作用を有し、しかも、毒性および発癌性という欠点がないことを見出した。
実際、本新たな燃焼率調節剤は、産業界の好むDNTさえより、驚くほど、より良い、燃焼率調整作用を有し、推進剤および弾薬薬莢における使用を、好ましくした。
【0011】
第2の側面によれば、また、燃焼率調節剤として、一般式1の化合物の使用を提供する。
【0012】
第3の側面によれば、燃焼率調節剤として使用する、一般式1の化合物を提供する。
【0013】
いくつかの実施態様では、一般式1の化合物は、4−(4−ヒドロキシフェニル)ブタン−2−オンである。
本化合物は、好ましいが、近接の、構造上および物理的性質に関係する化合物も、また、DNTの、更なる代替の燃焼率調節剤を提供する可能性があることが理解される。
【0014】
4番目の側面に従えば、エネルギー物質、および、一般式1の化合物を含む推進剤を提供することにある。
【化2】
式中
は、−H、−OH、−O(C1−4-アルキル)、−C1−4アルキル、−NHC1−4アルキル、−N(C1−4アルキル)、−NO、−NHNH、−N(C1−4アルキル)NH、および−CNからなる群から選択され;
は、−H、−OH、−O(C1−4-アルキル)、−C1−4アルキル、−NHC1−4アルキル、−N(C1−4アルキル)、−NO、−NHNH、−N(C1−4アルキル)NH、および−CNからなる群から選択され;
は、−Hおよび−C1−4アルキルからなる群から選択され;並びに
は、−H、−OH、−O(C1−4-アルキル)、−C1−4アルキル、−NHC1−4アルキル、−N(C1−4アルキル)、−NO、−NHNH、−N(C1−4アルキル)NH、および−CNからなる群から選択され;並びに
少なくとも、R、RおよびRの1つは、OHである。
【0015】
本件出願人によって行われた試験行為は、この推進剤が、化学的に安定であることを示す。本件試験行為は、また、この推進剤が、弾道学的に安定であることを示す。
【0016】
5番目の側面において、2番目の側面における推進剤を含む、弾薬薬莢を提供することである。
この弾薬薬莢は、基本的に、ケース、上記の推進剤、雷管(primer)および弾丸を含む。
【0017】
6番目の側面によれば、エネルギー物質の顆粒を、一般式1の化合物でコーティングすることを含む、推進剤の製造方法を提供する。
【化3】
式中
は、−H、−OH、−O(C1−4-アルキル)、−C1−4アルキル、−NHC1−4アルキル、−N(C1−4アルキル)、−NO、−NHNH、−N(C1−4アルキル)NH、および−CNからなる群から選択され;
は、−H、−OH、−O(C1−4-アルキル)、−C1−4アルキル、−NHC1−4アルキル、−N(C1−4アルキル)、−NO、−NHNH、−N(C1−4アルキル)NH、および−CNからなる群から選択され;
は、−Hおよび−C1−4アルキルからなる群から選択され;並びに
は、−H、−OH、−O(C1−4-アルキル)、−C1−4アルキル、−NHC1−4アルキル、−N(C1−4アルキル)、−NO、−NHNH、−N(C1−4アルキル)NH、および−CNからなる群から選択され;並びに
少なくとも、R、RおよびRの1つは、OHである。
【0018】
これらの側面は、以下の発明の詳細な説明において、より十分に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
この発明は、以下の図を参照して、実施例のみによって、更に、詳細に記載される。
図1】本件発明の一の実施態様に従って、推進剤の組成を示す模式図である。
図2】異なる加工規模での、エネルギー物質の顆粒の上に、4−(4−ヒドロキシフェニル)ブタン−2−オンをコーティングする有効性を示すグラフである。
図3】.308 Winchester 基準銃身(proof barrel)から発射されたとき、84℃にて、4−(4−ヒドロキシフェニル)ブタン−2−オンでコーティングされたエネルギー物質の顆粒を含む薬莢について、圧力対速度を示すグラフである。
図4】.308 Winchester 基準銃身(proof barrel)から発射されたとき、78℃にて、4−(4−ヒドロキシフェニル)ブタン−2−オンでコーティングされたエネルギー物質の顆粒を含む薬莢について、圧力対速度を示すグラフである。
図5】.308 Winchester 基準銃身(proof barrel)から発射されたとき、確立された、DNTでコーティングされたより大きい顆粒と同等に機能する、4−(4−ヒドロキシフェニル)ブタン−2−オンでコーティングされた、小さな顆粒サイズのエネルギー物質について、圧力対速度を示すグラフである。
図6】.30/06 Springfieldから発射されたとき、そのような小粒が、そうでなければ使用されないような火器における、4−(4−ヒドロキシフェニル)ブタン−2−オンでコーティングされた小粒についての、圧力対速度性能の拡張を示すグラフである。
図7】30/06 Springfield基準銃身(proof barrel)から発射されたとき、中間の大きさの推進剤顆粒についての、圧力対速度性能の増大を示すグラフである。
図8】.308 Winchesterから発射されたとき、種々の量の4−(4−ヒドロキシフェニル)ブタン−2−オンでコーティングされた、エネルギー物質についての、圧力対速度を示すグラフである。
図9図8を作成するのに使用された、種々の量の4−(4−ヒドロキシフェニル)ブタン−2−オンを用いて、コーティングされた、同じエネルギー物質についての、.300 Winchester マグナムから発射されたときの、圧力対速度を示すグラフである。
図10】標準のDNT型の推進剤と比較した場合の、4−(4−ヒドロキシフェニル)ブタン−2−オンを組み込んだ同じ小粒の寸法に基づく、推進剤形態の熱流量(Heat Flux)を示すグラフである。
図11】標準のDNT型の推進剤と比較した場合の、4−(4−ヒドロキシフェニル)ブタン−2−オンを組み込んだ同じ小粒の寸法に基づく、推進剤形態の弾道学的な安定性を示す、一連のグラフである。
図12】5.56mmの試験プラットフォーム(test platform)において発射された場合の、古い弾薬の圧力および速度についての、弾道学上の熱拡散を示す、2つのグラフを示す。
【0020】
[発明の詳細な説明]
【0021】
この発明は、一般的に、燃焼率調節剤および燃焼率調節剤を含む推進剤に関する。本件発明は、また、推進剤を含む弾薬薬莢、および、燃焼率調節剤を含む推進剤の製造方法に関する。
【0022】
以下において、本件方法並びに燃焼率調節剤および推進剤の特徴を記載した。下記に記載した全ての特徴は、本件発明の方法および製品に、独立して適用される。
【0023】
化合物
【0024】
本件発明は、一般式1の化合物の使用を含む。
【化4】
式中
は、−H、−OH、−O(C1−4-アルキル)、−C1−4アルキル、−NHC1−4アルキル、−N(C1−4アルキル)、−NO、−NHNH、−N(C1−4アルキル)NH、および−CNからなる群から選択され;
は、−H、−OH、−O(C1−4-アルキル)、−C1−4アルキル、−NHC1−4アルキル、−N(C1−4アルキル)、−NO、−NHNH、−N(C1−4アルキル)NH、および−CNからなる群から選択され;
は、−Hおよび−C1−4アルキルからなる群から選択され;並びに
は、−H、−OH、−O(C1−4-アルキル)、−C1−4アルキル、−NHC1−4アルキル、−N(C1−4アルキル)、−NO、−NHNH、−N(C1−4アルキル)NH、および−CNからなる群から選択され;並びに
少なくとも、R、RおよびRの1つは、OHである。
【0025】
いくつかの実施態様では、Rは、−OH、−O−(C1−4-アルキル)および−C1−4アルキルからなる群から選択される。他の実施態様では、Rは、−OHおよび−O−(C1−4-アルキル)からなる群から選択される。特に好ましい実施態様では、Rは、−OHである。
は、芳香環の上のどの位置にあってもよい。例えば、Rは、オルト、メタ、または、パラ位であって良い。いくつかの実施態様では、Rは、パラ位である。
【0026】
いくつかの実施態様では、Rは、−H、−OH、−O−(C1−4-アルキル)および−C1−4アルキルからなる群から選択される。他の実施態様では、Rは、−H、−OHおよび−O−(C1−4-アルキル)からなる群から選択される。特に好ましい実施態様では、Rは、−Hである。
【0027】
いくつかの実施態様では、Rは、−Hである。
【0028】
いくつかの実施態様では、Rは、−H、−OH、−O−(C1−4-アルキル)および−C1−4アルキルからなる群から選択される。他の実施態様では、Rは、−H、−OHおよび−O−(C1−4-アルキル)からなる群から選択される。特に好ましい実施態様では、Rは、−Hである。
は、芳香環の上のどの位置にあってもよい。例えば、Rは、オルト、メタ、または、パラ位であって良い。いくつかの実施態様では、Rは、オルトまたはメタ位である。
【0029】
1つの実施態様では、Rが−OH、Rが−H、Rが−HおよびRが−Hである。
【0030】
1−4-アルキル、という用語は、炭素原子を1乃至4(上限および下限を含む)を有する、分枝鎖または分枝していない鎖のアルキル基を意味する。C1−4-アルキル基の例は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、および、tert-ブチルを含む。この定義は、C1−4-アルキル単独、または、−O(C1−4-アルキル)、−NHC1−4アルキル、−N(C1−4アルキル)、または、−N(C1−4アルキル)NH、のような置換基の部分を参照するために適用される。
【0031】
一般式1の化合物は、燃焼率調節剤として機能する。この燃焼率調節剤は、特異的に、燃焼率抑制剤(deterrent)であってもよい。燃焼率調節剤または燃焼率抑制剤は、また、燃焼抑制剤(burn deterrent)として言及されてもよい。
【0032】
一般式1の化合物は、好ましくは、約50から約90℃の融点を有する。例えば、融点は、約60から約80℃、または、約65から約75℃のような、約55から約85℃であって良い。いくつかの実施態様では、一般式1の化合物は、少なくとも、約50℃の融点である。例えば、融点は、少なくとも約65℃、または、少なくとも約70℃のような、少なくとも約60℃であってもよい。
【0033】
いくつかの実施態様では、一般式1の化合物は、4−(4−ヒドロキシフェニル)ブタン−2−オンである。
【化5】
この化合物は好ましいが、構造が近接し、物理的性質が関連する化合物も、また、4−(4−ヒドロキシフェニル)ブタン−2−オンと同様に機能する可能性がある、と評価される。
【0034】
本出願人により、試験はなされ、4−(4−ヒドロキシフェニル)ブタン−2−オンの、燃焼率調節剤としての有効性を証明した。本試験は、4−(4−ヒドロキシフェニル)ブタン−2−オンが、産業上好ましいDNTと比べてさえ、驚くべき、より良好な燃焼率調整作用を有し、しかも、毒性および発癌性の欠点もないことを示した。
特に、4−(4−ヒドロキシフェニル)ブタン−2−オンは、小粒の弾道学上の性能が、DNTでコーティングされた、極めて大きい顆粒と同等となるポイントまで、小粒の推進剤の性能を向上する。これにより、より多くの推進剤を、薬莢ケースに充填することができ、改善された性能を齎す。より小さい粒を、より多く充填することは、推進剤の廃棄物をより少なくし、銃口からの発火をより少なくし、そして、よりきれいな燃焼推進剤の充填 ― 市販の、および、軍事用の弾薬に関して望ましい結果、を意味する、全体的な充填の燃焼の有効性を改善する。燃焼率調節剤として、DNTに頼った、従来の小粒の形態は、同じ程度で、これらの結果を提供することはできなかった。
【0035】
本出願人により、なされた試験は、また、4−(4−ヒドロキシフェニル)ブタン−2−オンを含む推進剤は、標準のDNTバリアントよりも、熱分解に、より安定であることを明らかにした。さらに、試験は、推進剤の安定性は、使用する4−(4−ヒドロキシフェニル)ブタン−2−オンの量に比例して増加することを、明らかにした。
4−(4−ヒドロキシフェニル)ブタン−2−オンを含む推進剤を含む、弾薬の弾道学上の試験は、弾道学上の性能は、DNTを含む弾薬と一致することを示す。
【0036】
上記に基づいて、1つの実施態様では、一般式1を有する化合物を含む、推進剤は、一般式1を有する化合物の代わりに、DNTを有する同等の推進剤よりも、熱分解において、より高い安定性を有する。
【0037】
エネルギー物質
【0038】
本件発明の推進剤は、エネルギー物質(energetic material)を含む。「エネルギー物質」という用語は、燃焼により、弾丸(projectile)を推進する、推進ガスを生成することができる、任意の物質を含む。
【0039】
いくつかの実施態様では、エネルギー物質は、カーボン ブラック粉末、過塩素酸アンモニウム、ヘキソゲン(hexogen)、ブタントリオール トリナイトレート、エチレングリコール ジナイトレート、ジエチレングリコール ジナイトレート、エリスリトール テトラナイトレート、オクトゲン(octogen)、ヘキサニトロイソヴルチタン(hexanitroisowurtzitane)、メトリオール トリナイトレート(metriol trinitrate)、N−メチルニトラミン(N-methylnitramine)、ペンタエリスリトール テトラナイトレート(pentaerythritol tetranitrate)、テトラニトロベンゾールアミン(tetranitrobenzolamine)、トリニトロトルエン、ニトログリセリン(nitroglcerine)、ニトロセルロース、マンニトール ヘキサナイトレート(mannitol hexanitrate)、トリエチレングリコール ジナイトレート(triethyleneglycol dinitrate)、グアニジン(guanidine)、ニトログアニジン(nitroguanidine)、3−ニトロ−1,2,4−トリアゾール−5−オン、硝酸アンモニウム(ammoniumnitrate)、プロパンジオール ジナイトレート(propanediol dinitrate)、ヘキサミン(hexamine)、5−アミノテトラゾール、メチルテトラゾール、フェニルテトラゾール、ポリグリシジルナイトレート(polyglycidylnitrate)、ポリグリシジルアジド(polyglycidylazide)、ポリ[3−ナイトレートメチル−3−メチルオキシタン](poly[3-nitratomethyl-3-methyloxitane])、ポリ[3−アジドメチル−3−メチルオキシタン]、ポリ[3,3―ビス(アジドメチル)オキシタン](poly[3-azidomethyl-3-methyloxitane])、ナイトレイテッド シクロデキストリン ポリマー(nitrated cyclodextrin polymers)、ポリ グリシジルナイトレート(poly glycidylnitrate)、および、これらの組み合わせからなる群から選択される。
【0040】
いくつかの特定の実施態様では、エネルギー物質は、ニトログリセリン、ニトロセルロースおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0041】
いくつかの実施態様では、推進剤は、1つのエネルギー物質を含む。例えば、推進剤は、ニトロセルロースのみを含んでいてもよい。そのような状況において、エネルギー物質は、「シングルベース(single base)」と呼んでよく、その推進剤は、「シングルベース(single base)推進剤」と呼んでよい。
【0042】
他の実施態様では、推進剤は、2つのエネルギー物質を含んでいてもよい。例えば、推進剤は、ニトロセルロースおよびニトログリセリンを含んでよい。そのような場合、エネルギー物質は、「ダブルベース(double base)」と呼んでよく、そして、その推進剤は、「ダブルベース(double base)推進剤」と呼んでよい。
【0043】
また、他の実施態様では、推進剤は、2以上のエネルギー物質を含んでもよい。例えば、その推進剤は、ニトロセルロース、ニトロクアニジンおよびニトログリセリンを含んでいてもよい。そのような場合、エネルギー物質は、「マルチプルベース(multiple base)」と呼んでよく、その推進剤は、「マルチプルベース(multiple base)推進剤」と呼んでよい。
【0044】
1つの実施態様において、エネルギー物質は、ニトロセルロースである。
【0045】
エネルギー物質は、火器の弾薬薬莢に組入れるのに適した、任意の形態でもよい。
【0046】
いくつかの実施態様では、エネルギー物質は、顆粒の形態である。「顆粒」という用語は、また、「粒(kernel)」または「小球(pellet)」と呼んでよい。
【0047】
エネルギー物質の顆粒は、当該技術分野において知られた、任意の方法によって製造されてもよい。例えば、エネルギー物質のスラリーまたは生地を押し出すか、または、微粒子の形態のエネルギー物質を圧縮して、エネルギー物質の顆粒にしてもよい。別の実施態様では、エネルギー物質の微粒子を合体させ(coalesced)、スラリーをポンプにより、形成菅(shaping tubes)を通して、塊(agglomerates)に形成してもよい。いくつかの実施態様で、塊は、実質的に球形の形であってもよい。塊は、粒子(particles)と呼ばれてもよい。
【0048】
1つの実施態様において、エネルギー物質は、エネルギー物質のスラリーまたは生地を押し出して、押出造粒物を形成し、ついで、その押出造粒物を、顆粒化することによって、製造される。「顆粒化」という用語は、押出造粒物を、分割し、または、切断し、「顆粒」に押出す工程をいう。いくつかの実施態様では、エネルギー物質のスラリーまたは生地を押し出して、紐状の押出造粒物を形成し、そして、その紐状の押出造粒物を、適当な長さに切って、顆粒を形成させる。顆粒は、弾薬に使用されるのに適した、任意の大きさであって良い。
【0049】
上記で説明した処理工程の結果として、顆粒は、また、塊(agglomerates)、一粒(grains)、または、粒子(particles)と言ってもよい。
顆粒は、いかなる形でもよい。いくつかの実施態様では、顆粒は、一貫性のある断面を有する軸次元を持つ。例えば、顆粒は、実質的に、円形の断面を有していてもよく、または、その断面は、楕円形または、任意の他の、似たような形状であってよい。いくつかの実施態様では、顆粒は、形状が円筒形である。
【0050】
顆粒は、弾薬の使用に適した、任意の大きさであってよい。いくつかの実施態様では、顆粒は、長さ、約0.1から約25mmである。例えば、顆粒は、約0.5から約12mmの長さ、または、約0.7から約5mmの長さ、または、約1から2mmの長さのような、約0.3から約20mmの長さであってよい。
【0051】
いくつかの実施態様では、顆粒は、約0.1から約20mmの直径を有する。例えば、顆粒は、直径約0.2から約15mmを有してよく、例えば、約0.4から約12mm、または、約0.5から約10mm、または、約0.6から約5mm、または、約0.7から約1mmである。
【0052】
顆粒は、直径よりも大きい長さを有してもよい。これらの実施態様において、顆粒は、棒と呼ばれてもよい。いくつかの実施態様では、その棒の長さは、約8から12mmのような、約6から約14mmであってもよい。いくつかの実施態様では、棒の直径は、約0.7から約1mmのような、約0.6から約1.2mmであってもよい。
造粒後、顆粒は、乾燥され、その間に、少し縮む可能性がある。エネルギー物質の顆粒の造粒時または粒子を圧縮するとき、この縮みを、考慮することができる。縮んだ顆粒は、弾薬において、使用されるのに適切な、任意の大きさであってもよい。いくつかの実施態様では、顆粒は、長さ約0.1から約25mmである。例えば、顆粒は、約0.3から約20mmの長さでよく、例えば、約0.5から約12mmの長さ、また、約0.7から約5mmの長さ、または、約1から約2mmの長さであってもよい。
【0053】
いくつかの実施態様では、顆粒は、約0.1から約20mmの直径を有する。例えば、顆粒は、直径約0.2から約15mmを有していても良く、例えば、約0.4から約12mm、または、約0.5から約10mm、または、約0.6から約5mm、または、約0.7から約1mmであってもよい。
【0054】
縮んだ顆粒が、棒であるとき、その棒の長さは、約8から約12mmのような、約6から約14mmであってもよい。いくつかの実施態様において、その棒の直径は、約0.7から約1mmのような、約0.6から約1.2mmであってもよい。
【0055】
いくつかの実施態様では、顆粒は、燃焼サイクルの後半で燃焼率を向上させるため、および顆粒を、燃焼において、より進歩的なものにするために、穿孔(perforation)を含む。換言すれば、いくつかの実施態様では、顆粒は、1つまたは複数の穿孔を含む。穿孔は、顆粒の表面領域を拡大し、一般式1の化合物の適用において、更に緩和な燃焼率を齎すことができる。いくつかの実施態様において、穿孔は、弾道学上のサイクルの初期の段階において、更に緩和な燃焼率を齎す。
【0056】
「穿孔」という用語は、顆粒における「開口aperture」を意味する。「穿孔」の代替用語は、「溝channel」、「穴bore」および「空洞cavity」である。穿孔は、顆粒を通して、全ての方向に延びていてもよい。いくつかの実施態様で、穿孔は、顆粒の中を軸方向に延びる。
【0057】
穿孔は、顆粒のサイズに適した任意の直径であってよい。いくつかの実施態様では、穿孔は、約50から約1000μmの直径を有する。たとえば、穿孔は、約50から約700μmの直径を有していてもよく、例えば、約50から約500μm、または、約100から約300μmであってもよい。
【0058】
各顆粒に、1つ以上の穿孔があってよい。いくつかの実施態様では、単一の穿孔がある。他の実施態様では、複数の穿孔がある。1つの特別な実施態様では、単一の中央穿孔がある。他の実施態様では、少なくとも、2つの穿孔があり、例えば、少なくとも、3つの穿孔、または、少なくとも、4つの穿孔、または、少なくとも 5つの穿孔である。
エネルギー物質が、押出しにより製造される場合は、押出造粒物は、1またはそれ以上の穿孔を有して、押し出されてもよい。
【0059】
推進剤
【0060】
推進剤は、エネルギー物質および一般式1の化合物を含む。エネルギー物質および一般式1の化合物は、任意の方法で合体されてもよい。いくつかの実施態様では、一般式1の化合物は、エネルギー物質の顆粒をコーティングする形態である。従って、1つの実施態様において、エネルギー物質の顆粒を、一般式1の化合物で、コーティングすることを含む、推進剤の製造方法を提供する。
【0061】
推進剤は、追加の層を含んでいてもよい。好適な層は、仕上げ層(finishing layer)、発火層(ignition layer)および/または2番目のエネルギー物質の層を含む。
【0062】
2番目のエネルギー物質の層がある場合の実施態様において、推進剤のコアを形成するエネルギー物質は、最初のエネルギー物質として言及されるであろう。2番目のエネルギー物質の層は、上記のエネルギー物質の範囲から選択することができる。2番目のエネルギー物質の層は、好適には、最初のエネルギー物質と相違する。
【0063】
推進剤が、発火層を含む場合の実施態様では、その発火層は、発火成分(ignition component)を含む。その発火成分は、硝酸の第I群の金属塩を含んでよい。
推進剤が、仕上げ層(finishing layer)を含む場合の実施態様では、仕上げ層は、黒鉛層(graphite layer)の形態であって良い。表面のグラファイト化は、典型的な、最後の仕上げ工程であるが、グラファイト化は、推進剤の乾燥に先立ち、または、後に、完了することができる。いくつかの実施態様では、黒鉛の仕上げ層は、発火成分を含んでいてもよい。好ましい発火成分の例は、1またはそれ以上の、硝酸の第I群の金属塩を含む。
【0064】
仕上げ層は、一般的に、推進剤の上の、最も外側の層である。追加の層は、推進剤の周りの、完全な層であってもよく、または、追加の層は、部分的な層であってもよい。
【0065】
1つの特別な実施態様では、推進剤は、化学的に安定である。他の特別な実施態様では、推進剤は、弾道学的に安定である。1つの実施態様において、推進剤は、化学的に、および/または弾道学的に、一般式1の化合物の代わりにDNTを含む、等価な推進剤より、より安定である。
【0066】
コーティング
【0067】
エネルギー物質のコーティングは、技術分野で知られている任意の方法で実行することができる。例えば、エネルギー物質の顆粒は、一般式1の化合物に浸漬(immersed)されてもよく、または、一般式1の化合物は、エネルギー物質の顆粒の上に、タンブル(回転)コーティング、または、噴霧によるコーティングで、コーティングされていてもよい。一般式1の化合物は、原液(neat liquid)、粉末として、または、溶液として適用されてもよい。
いくつかの実施態様では、エネルギー物質は、容器の中で、一般式1の化合物でコーティングされる。好適な容器は、回転式コーター(tumble coater)、造粒機(granulators)、形成チューブ(shaping tubes)、オーガ(augers)および、S字型またはらせん状の混合ブレード(sigmoidal or helical mixing blades)を有する、半割管の形状(half-pipe shape)に基づくリボン ブレンダ―(ribbon blenders)を含むが、これらに限定されない。
【0068】
いくつかの実施態様では、コーティングは、技術分野で、「sweetie barrel」または「tumbler」として、知られる容器の中で、エネルギー物質の顆粒に適用される。この容器は、また、回転タンブラー(rotating tumbler)または回転式コーターとして知られているものでもよい。
そのような容器は、本明細書では、「回転式コーター」と呼ばれるであろう。これらの実施態様では、エネルギー物質の顆粒は、回転式コーターに添加され、回転式コーターのドラムは回転し、顆粒の回転を引き起こし、そして、その後、それらが回転している間に、一般式1の化合物は、顆粒をコーティングするために添加される。
いくつかの実施態様では、一般式1の化合物は、一気に加えられる。他の実施態様では、一般式1の化合物は、顆粒が徐々にコーティングされるように、分割して添加される。
【0069】
回転式コーターの中の成分を温め、一般式1の化合物を溶かすために必要であれば、熱を加えてもよい。熱は、技術分野において知られている任意の方法で適用されて良い。いくつかの実施態様では、蒸気加熱が使用される。他の実施態様では、加熱は、容器をヒートジャケットで加熱すると効果的である。熱の適用は、一般式1の化合物が、顆粒をコーティングすることができるようにし、そして、一般式1の化合物が、推進剤の顆粒の表面に拡散することを高めることができる。
【0070】
いくつかの実施態様では、エネルギー物質の顆粒と一般式1の化合物は、日常の条件下、容器の中で混合される。好ましくは、容器は、回転式コーターまたはリボン ブレンダ―である。容器は、顆粒の必要な量を、コーティングするのに適した任意のサイズでよい。例えば、容器は、1バッチ当たり、数百キログラムの顆粒を、または、1バッチ当たり、1トンまたはそれ以上の顆粒まで、コーティングするのに適切な大きさであって良い。その後、容器は閉じられ、例えば、蒸気の追加、または、熱ジャケットで覆われた容器の使用によって、加熱される。熱(蒸気)は、一般式1の化合物を柔らかくし、そして、溶かすことによって、エネルギー物質の顆粒の上に、コーティングを形成することができるようにする。いかなる塊(clumps)の形成は、回転運動の工程と、湿気または溶媒の存在を通して、その場で壊される。この工程は、コーティングされた製品が、製造されるまで、続けられる。
【0071】
一般式1の化合物が、小粒の上に溶ける間、湿気と溶媒は、粒同士の粘つきを減少するために、十分な量が存在していてもよい。いくらかの実施態様では、その工程は、約150分(「実行時間」)まで継続される。例えば、その工程は、約90分まで、または、約60分まで、または、約30分まで、のように、約120分まで継続されてもよい。
【0072】
容器が加熱される必要がある温度(そして、それゆえ、追加が必要な蒸気の量)は、一般式1の化合物を、柔らかくして、および、溶融するのに、必要な温度に依存する。いくつかの態様では、容器は、少なくとも、約50℃の温度に加熱される。例えば、温度は、少なくとも、約65℃、または、少なくとも、約70℃、または、少なくとも、約80℃のような、少なくとも、約60℃で在り得る。いくつかの実施態様では、温度は、少なくとも、約85℃、例えば、少なくとも、約90℃、または、少なくとも、約95℃である。
【0073】
一般式1の化合物のコーティングは、エネルギー物質の顆粒の表面上において、独立した外側の層として存在する必要はない。一般式1の化合物は、一部、または、全部が、エネルギー物質の表面の層または表面下層の中に、拡散または浸透してもよい。そのような場合、一般式1の化合物は、粒の中から、表面層に、拡張する。一般式1の化合物は、表面から均一に分配されていていてもよく、また、顆粒中で、不均一に分配されていてもよい。一般式1の化合物は、顆粒あたり、大体、同じサイズの、顆粒の帯または領域の形態になっていてもよい。
【0074】
もし、一般式1の化合物が、エネルギー物質の中に、それが拡散していくように適用されるならば、一般式1の化合物は、多くの推進剤の構成成分と接触するようになってもよい。
【0075】
コーティングという用語は、顆粒の表面上に残るコーティング、および、表面の中に拡散されたコーティング、を含む、全てのそのようなコーティングの形態を意味すると、理解されるであろう。特に、「顆粒の表面上にコーティング」という表現は、顆粒の表面上に残るコーティング、および、顆粒の中に拡散したコーティングを含む。
【0076】
一般式1の化合物の拡散が、エネルギー物質の顆粒の中へと起こる場合、拡散された一般式1の化合物の層は、抑制帯(deterred band)、または、抑制領域(deterred region)と言うことができる。以下において、コーティングの厚さに言及する場合、これは、顆粒の表面の中に、コーティングが拡散した場合の実施態様においては、抑制帯の厚さと等価である。
【0077】
コーティングの厚さは、(即ち、抑制帯の厚さ)は、一般式1の化合物が、適切な方法で、エネルギー物質の燃焼率を遅延させることができる、任意の厚さであってよい。いくつかの実施態様では、コーティングの厚さは、約10から約700μmである。例えば、厚さは、約20から400μm、または、約50から300μmのような、約15から約500μmであって良い。
【0078】
一般式1の化合物が、エネルギー物質の顆粒の中に拡散する深さは、顆粒が、その化合物と接触している時間、適用されるその化合物の濃度、コーティングが行われる温度、および/または、推進剤のマトリックスと、その化合物の間の化学的な相互作用に、依存することができる。例えば、より薄い抑制帯を得るためには、早い初期温度傾斜(rapid initial temperature ramp)を使用することができ、および/または、より短い実行時間(a shorter run time)を使用することができる。より厚い抑制帯を得るためには、より緩やかな初期温度傾斜(slower initial temperature ramp)、および/または、より長い実行時間(a longer run time)を使用することができる。
更に、推進剤マトリックス組成物の変更は、事前に決定された実施条件において、浸透の深さ、および、それ故、抑制帯の厚さを変えるかもしれない。
【0079】
制限のない溶媒和(Solvation)の技術を含む、化合物の、顆粒の中への拡散を制御する、追加の方法が利用可能である。溶媒和(Solvation)の間、一般式1の化合物は、種々の有機溶媒に溶解していてもよく、そして、顆粒の中に拡散する溶液として、顆粒に適用されてもよく、その一般式1の化合物は、温度、溶解度、および、溶液濃度に関係した深さで、顆粒の中に堆積する。溶媒和の技術は、一般式1の化合物の溶液、一般式1の化合物の移動を管理する溶媒、および、一般式1の化合物のエマルジョンを、推進剤の顆粒に適用することを含む。
【0080】
好ましくは、一般式1の化合物は、急激な減衰曲線が濃度プロファイルに接近するような(exponential decay curve approximates the concentration profile)、急激な濃度プロファイル(exponential concentration profile)で、エネルギー物質の顆粒の中に拡散する。換言すれば、燃焼率調整剤の濃度は、顆粒の表面の下のある点で最大となり、そして、抑制領域の中へ、および、抑制領域から外へ、と浸透の深さが増えるにしたがって測定すると、その濃度は、おおよそ急激に減少する。
【0081】
一般式1の化合物は、推進剤において、その化合物が存在しない場合の燃焼率と比較して、エネルギー物質の顆粒の、外側の表面の燃焼率を阻害するのに十分な量で存在する。いくつかの実施態様では、一般式1の化合物は、重量で、推進剤の約0.1から約10%の量で存在する。例えば、一般式1の化合物は、約0.5から約6.5%、または、約0.7から約6%のような、約0.2から約8%の量で存在してもよい。最も好適には、一般式1の化合物は、重量で、推進剤の約1から約5%の量で存在する。
【0082】
一般式1の化合物は、顆粒の全表面をコートしてもよい。若しくは、一般式1の化合物は、顆粒の表面の一部をコートしてもよい。例えば、一般式1の化合物は、顆粒の外側の表面をコートしてもよく、または、一般式1の化合物は、穿孔ある領域の中の顆粒の表面をコートしてもよく、または、一般式1の化合物は、顆粒の外側および内側の表面の両方をコートしてもよい。
【0083】
一般式1の化合物をコーティングとして適用することは、その化合物を、組成物の全体の冷却材として含むことを排除しない。
【0084】
いくつかの実施態様において、コーティングがなくてもよく、そして、一般式1の化合物は、顆粒全体に均等に分散される。この場合、一般式1の化合物は、燃焼率調整剤として機能することができる。
【0085】
いくつかの実施態様では、推進剤は、異なった燃焼率調節剤の第2の層を含んでいてもよい。いくつかの実施態様では、第2の層は、最初の層の一般式1の化合物と異なる、一般式1の化合物を含んでいてもよい。他の実施態様では、第2の層は、技術分野で公知の任意の燃焼率調節剤を含んでいてもよい。好ましい、燃焼率調節剤の例としては、ジニトロトルエン、アセチル トリエチル サイトレート、トリエチル サイトレート、トリ−n−ブチル サイトレート、トリブチル アセチル サイトレート、アセチル トリ−n−ブチル サイトレート、アセチル トリ−n−ヘキシル サイトレート、n−ブチル トリ−n−ヘキシルサイトレート、ジ−n−ブチル アジペート、ジイソプロピル アジペート、ジイソブチル アジペート、ジエチルヘキシル アジペート、ノニル ウンデシル アジペート、n―デシル―n−オクチル アジペート、ジブトキシ エトキシ エチル アジペート、ジメチル アジペート、ヘキシル オクチル デシル アジペート、ジイソノニル アジペート、ジブチル フタレート、ジエチル フタレート、ジアミル フタレート、ノニルウンデシル フタレート、ビス(3,5,5−トリメチルヘキシル)フタレート、ジ−n−プロピルアジペート、ジ−n−ブチル セバケート、ジオクチル セバケート、ジメチル セバケート、ジエチル ジフェニル ウレア、ジメチル ジフェニル ウレア、ジ−n−ブチル フタレート、ジ−n−ヘキシル フタレート、ジノニル ウンデシル フタレート、ノニル ウンデシル フタレート、ジオクチル テレフタレート、ジオクチル イソフタレート、1,2−シクロヘキサン ジカルボン酸 ジイソノニルエステル、ジブチル マレエート、ジノニル マレエート、ジイソオクチル マレエート、ジブチル フマレート、ジノニル フマレート、ジメチル セバケート、ジブチル セバケート、ジイソオクチル セバケート、ジブチル アゼラート、ジエチレングリコール ジベンゾエート、トリオクチル トリメリエート、トリオクチル ホスフェート、ブチル ステアレート、メチルフェニルウレタン、N−メチル−N−フェニルウレタン、エチル ジフェニル カーバメイト、カンファー、アラビアゴム、ゲラチン、ロジン、修飾ロジン エステル、二塩基酸およびアルキル脂肪族アルコールの樹脂、分子量が、1500から30、000である、二価アルコールおよび二塩基酸のポリエステル、およびそれらの組み合わせを含み、これらに限定されない。
【0086】
添加剤
【0087】
いくつかの実施態様では、本推進剤は、更に、可塑剤、安定化剤、発火抑制剤(flash suppressants)、銃身摩擦改善剤(barrel-wear ameliorants)およびそれらの組合せからなる群から選択される添加剤を含む。
【0088】
いくつかの実施態様では、添加剤は、エネルギー物質の顆粒に組込まれる。他の実施態様では、添加剤は、一般式1の化合物と一緒に組み込まれる。更に、他の実施態様では、添加剤は、エネルギー物質の顆粒の中に、一般式1の化合物と一緒に、組み込まれる。添加剤の、エネルギー物質の顆粒の中への組み込みは、添加剤を、エネルギー物質のスラリーまたは生地に加え、次いで、それから、顆粒を形成することにより、達成することができる。
【0089】
「可塑剤」という文言は、エネルギー物質に、均一性と可塑性を付与する、任意の化合物を意味する。いくつかの実施態様では、可塑剤は、ジエチルフタレート、樟脳、ジブチルフタレート、ジ−n−プロピル アジペート、メチルフェニル ウレタン、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ブチル、ニトログリセリン、およびその組み合わせ、からなる群から選択されてよい。
【0090】
「安定化剤」という用語は、エネルギー物質を安定化するのに使用することができる任意の化合物を意味する。いくつかの実施態様では、安定化剤は、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、アカルジット(akardites)、セントラリト(centralites)、2−ニトロソジフェニルアミン、ジフェニルアミン、N−メチル−p−ニトロアニリンおよびそれらの組合せからなる群から選択されてよい。
【0091】
「発火抑制剤(flash suppressant)」という用語は、火器の銃口発火を抑制するのに使用することができる、任意の化合物を意味する。いくつかの実施態様では、発火抑制剤は、有機酸のカリウム塩、硫酸カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウムおよびその組み合わせからなる群から選択されてよい。
【0092】
「銃身摩擦改善剤」という用語は、銃身摩擦を減少させるために使用できる、任意の化合物を意味する。いくつかの実施態様では、銃身摩擦改善剤は、ビスマス、酸化ビスマス、クエン酸ビスマス、オキシ炭酸ビスマス、鉛、炭酸鉛、鉛とビスマスの他の塩およびその組み合わせからなる群から選択することができる。
【0093】
弾薬(Ammunition)
【0094】
1つの実施態様では、推進剤を含む弾薬薬莢が提供される。弾薬薬莢は、基本的に、ケース、上記の推進剤、雷管(primer)および弾丸を含む。
本件発明の推進剤は、多種の火器における使用に適している。特に、.22 - .224口径銃器、.243口径銃器、.27口径銃器、6mm口径銃器、7mm口径銃器、.30口径銃器、8mm口径銃器、.338口径銃器から、.50口径銃器までの使用に適しており、ミディアムから大口径銃器にさえも適している。
【0095】
ケース(筐体)は、推進剤の燃焼中に、破壊されないくらい、十分にタフで、かつ、十分な厚さである、任意の素材で作られていてよい。ケースは、任意のサイズでよく、そのサイズは、その薬莢が使用される、火器銃器に依存するであろう。通常のケースの素材および構造は、技術分野で良く知られており、本件出願に適用される。
【0096】
雷管(primer)、または、点火化合物(priming compound)は、推進剤を発火させる、熱を生むことができる任意の物質を含んでいてもよい。点火化合物の例は、アジ化鉛(デキストリン化された)、スチフニン酸鉛、雷酸水銀およびその組み合わせを、を含み、これらに限定されない。いくつかの実施態様では、点火化合物は ASA(アルミニウム、スチフニン酸鉛、アジ化鉛)である。
【0097】
弾丸は、推進剤の燃焼に基づき、銃器システム(または銃)の銃口から発射されることができる、任意の物体(object)であってよい。弾丸の例は、弾丸(bullets)、砲弾(shot)、小弾丸(pellets)、弾(slugs)、砲弾(shells)、銃弾(balls)、散弾(buckshot)、ボルト(bolts)、ロケットおよび砲弾(cannon balls)を含み、これらに限定されない。いくつかの実施態様では、弾丸は、弾丸(bullets)、小弾丸(pellets)、弾(slugs)および銃弾(balls)から成る群から選択される。
【0098】
[発明の効果]
【0099】
効果(Advantages)
【0100】
一般式1の化合物は、炭素、水素、酸素、およびいくつかの場合には窒素分子のみを有し、ハロゲンのような、潜在的に毒、または、危険な要素を何ら含まない。本化合物は、DNTよりも、毒性が低く、ニトロセルロースのようなエネルギー物質と互換性があり、そして、長年に亘り、(化学的にも弾道学的にも共に)安定である。一般式1の化合物は、DNTと同等の良い燃焼率調整作用を有するが、毒性および発癌性の欠点はない。実際、一般式1の化合物は、産業上好適なDNTさえよりも、驚くほど、より良い燃焼率調整作用を有するので、推進剤および弾薬薬莢において、使用するのを好適にするのである。
【実施例】
【0101】
ここで、本件発明は、以下の、限定のない実施例を参照して記載される。
【表1】
【0102】
燃焼率調節剤である、4−(4−ヒドロキシフェニル)ブタン−2−オンを、DNTに対する対照試験に付した。1セットの試験の結果を、上記表1に記載した。比較試験の作業は、約1.4mmの平均の長さと平均直径約0.7mmを有する、エネルギー物質であるニトロセルロースの顆粒を製造することを含んだ。顆粒は、約50μmの直径の、単一の中央穿孔を有した。その顆粒は、推進剤を形成するために、DNTまたは4−(4−ヒドロキシフェニル)ブタン−2−オンで、表に記載されている量でコーティングされた。
【0103】
試験結果は、4−(4−ヒドロキシフェニル)ブタン−2−オン推進剤の、推進剤酸素バランスは、DNT推進剤の、―34.0%と比較して、−30.5%であったことを示す。試験結果は、また、標準温度および圧力における、4−(4−ヒドロキシフェニル)ブタン−2−オン推進剤のガスは、0.96L/gであったDNT推進剤と比較して、0.94L/gであり、2950Kでの、4−(4−ヒドロキシフェニル)ブタン−2−オン推進剤のガスは、9.47L/gであったDNT推進剤と比較して、9.26L/gであった、ことを示した。
【0104】
これらのデータは、4−(4−ヒドロキシフェニル)ブタン−2−オンは、DNTの良い代替品であることを示す。実際、4−(4−ヒドロキシフェニル)ブタン−2−オンは、DNTよりも低い量で使用することができ、同様の結果を達成することができる。
【0105】
推進剤は、その後、薬莢に充填され、室内の射撃場で、試験条件で、基準銃身(in proof barrels)から発射され、筐体(case)−コンフォーマル薬室の圧力を、電子的ピエゾメーターにより、および、弾丸速度を、発射ごとの生のセンサーのデータを処理する分析機器に接続した、電子的ショット トラバース検出スクリーン(shot-traverse-detection screens)で測定した。弾丸学上の比較を、図5乃至7に示した。
【0106】
図1は、本件発明の一実施態様による、推進剤の組成を示す模式図である。図1に示される推進剤は、単一の中央の穿孔を有する顆粒の形態である。エネルギー物質(1)は、本件発明の燃焼率調整剤の層(3)において、コーティングされている。推進剤は、異なる燃焼率調整剤の第2の層(2)を含むことができ、または、この領域は、更なる、エネルギー物質を表す場合がある。この実施態様では、燃焼率調節剤は、顆粒の外側の表面の上に、および、穿孔の領域内における顆粒の表面の上にコーティングされる。推進剤は、更に、必要に応じて、黒鉛による表面のうわぐすりで覆われていてもよいが、本技術分野に精通した人に知られている他の物質、例えば、硝酸の金属塩、を含んでいてもよい、点火層(4)を含む。
図1の推進剤の顆粒は、単一の中央の穿孔を有する、エネルギー物質の、生地またはスラリーを押し出すことにより、紐状の押出造粒物を形成し、そして、その後、その紐状の押出造粒物を、必要な長さに切断することにより、製造することができる。顆粒は、その後、乾燥することができ、その間、少し縮む場合がある。その顆粒は、その後、燃焼率調節剤の最初の層で(そして、必要に応じて、異なる燃焼率調節剤の第2の層で)、コーティングされ、そして、最後に点火層でコーティングされていてもよい。
【0107】
図2は、1kg(ラボスケール 低容量)および2kg(ラボスケール 高容量)のスケールでの生産における、13.15%の窒素の標準のニトロセルロース推進剤(おおよそ、長さ1.5mm、直径0.7mmおよび140μmの穿孔)における、4−(4−ヒドロキシフェニル)ブタン−2−オンのコーティングの有効性(パーセントで表す)を示す。このグラフは、容量が増えるとコーティングの有効性が改善する結果となったことを示す。
【0108】
図3は、おおよそ、長さ1.5mm、直径0.8mmおよび140μmの穿孔のある、エネルギー物質であるニトロセルロースの顆粒の上に、84℃の温度で、4−(4−ヒドロキシフェニル)ブタン−2−オンをコーティングして生産してから、種々の時間が経過した、推進剤のサンプルについての、弾道学上の圧力と速度の傾向についての重ね合わせプロット(overlay plot)である。
弾薬弾は、Winchester 筐体(ケース)および、168 grain Sierra hollow point boat tail 弾丸と一緒に大きいライフルの雷管を含んだ。
【0109】
図4は、おおよそ、長さ1.5mm、直径0.8mmおよび140μmの穿孔のある、エネルギー物質であるニトロセルロースの顆粒の上に、78℃の温度で、4−(4−ヒドロキシフェニル)ブタン−2−オンをコーティングして生産してから、種々の時間が経過した、推進剤のサンプルについての、弾道学上の圧力と速度の傾向についての重ね合わせプロット(overlay plot)である。弾薬弾は、Winchester 筐体(ケース)および、168 grain Sierra hollow point boat tail 弾丸と一緒に大きいライフルの雷管を含んだ。
【0110】
図5は、先行技術である市販のDNTでコーティングされたニトロセルロース推進剤(おおよそ、長さ1.5mm、直径0.8mmおよび140ミクロンの穿孔- AR2206H)についての、4−(4−ヒドロキシフェニル)ブタン−2−オンのコーティングを含む、実験のためのニトロセルロース推進剤(長さ1.5mm、直径0.7mmおよび50ミクロンの穿孔)に対する、性能比較を示す。弾薬弾は、Winchester 筐体(ケース)および、168 grain Sierra hollow point boat tail 弾丸と一緒に大きいライフルの雷管を含んだ。
【0111】
図6は、先行技術である市販のDNTでコーティングされたニトロセルロース推進剤(おおよそ、長さ1.5mm、直径1.0mmおよび180ミクロンの穿孔- AR2209)についての、4−(4−ヒドロキシフェニル)ブタン−2−オンのコーティングを含む、ニトロセルロース推進剤(長さ1.5mm、直径0.7mmおよび50ミクロンの穿孔)に対する、圧力と速度の性能比較のプロットを示す。
弾薬弾は、Winchester 筐体(ケース)および、168 grain Sierra hollow point boat tail 弾丸と一緒に、Tulammoの大きいライフルの雷管を含んだ。チャートは、一般式1の化合物を有する推進剤の組成物において、DNTを置換されることによってのみ達成することができた実験的推進剤によって得た性能の利点を示す。
【0112】
図7は、先行技術である市販のDNTでコーティングされたニトロセルロース推進剤(おおよそ、長さ1.5mm、直径1.15mmおよび180ミクロンの穿孔)についての、4−(4−ヒドロキシフェニル)ブタン−2−オンのコーティングを含む、ニトロセルロース推進剤(長さ1.5mm、直径0.8mmおよび140ミクロンの穿孔)に対する、圧力と速度の性能比較のプロットを示す。
弾薬は、Winchester 筐体(ケース)、Tulammoの大きいライフルの雷管および、168 grain Sierra hollow point boat tail 弾丸を含んだ。チャートは、異なったタイプの推進剤を同じ容量で充填したために、一般式1の化合物で作られた推進剤によって、顕著な性能の利点が可能になったことを示す。
【0113】
図8は、4−(4−ヒドロキシフェニル)ブタン−2−オン(HPK)のコーティングを種々のレベル(0.3%から3.6%)で含む、実験的ニトロセルロース推進剤(長さ1.5mm、直径0.7mmおよび50ミクロンの穿孔)についての、.308 Winchester 口径系(system)における、重ね合わせプロット(overlay plot)を示す。
弾薬弾は、Winchester 筐体(ケース)、および、168 grain Sierra hollow point boat tail 弾丸と一緒に大きいライフルの雷管を含んだ。
【0114】
図9は、4−(4−ヒドロキシフェニル)ブタン−2−オン(HPK)のコーティングを種々のレベル(2.8%から4%)で含む、実験的ニトロセルロース推進剤(長さ1.5mm、直径0.8mmおよび140ミクロンの穿孔)についての、.300 Winchester マグナム口径系(system)における、重ね合わせプロット(overlay plot)を示す。
弾薬は、Winchester 筐体(ケース)、Winchester の大きいライフルの雷管および、180 grain Sierra hollow point boat tail 弾丸よりなっていた。図は、4−(4−ヒドロキシフェニル)ブタン−2−オンの量が多く適用された場合に、どのように、推進剤が改善されたかを示す。
【0115】
図10は、それぞれ、6%のDNT、2%の4−(4−ヒドロキシフェニル)ブタン−2−オンおよび6%の4−(4−ヒドロキシフェニル)ブタン−2−オンのコーティングを含む、小さいニトロセルロースが主体の推進剤である3つのサンプル(長さ1.39mm、直径0.7mmおよび50ミクロンの穿孔)についての、許容されたSTANAG 4582法に従った、熱流量測定量(Heat Flow Calorimetry trace)を示す。
図は、4−(4−ヒドロキシフェニル)ブタン−2−オンを含む推進剤が、標準のDNTバリアントよりも、熱分解に、より安定であったことを示す。試験は、また、使用された4−(4−ヒドロキシフェニル)ブタン−2−オンの量に比例して、推進剤の安定性が増大したことを明らかにした。
【0116】
図11は、それぞれ、6%のDNTおよび2%の4−(4−ヒドロキシフェニル)ブタン−2−オンのコーティングを含む、ニトロセルロース・ベースの推進剤の2つのサンプル(長さ1.39mm、直径0.7mmおよび50ミクロンの穿孔)の弾道学的な安定性を示す。
図は、5.56mmの試験プラットフォームにおいて、年月を得ていないサンプルに関して、弾道学的な変化は、各燃焼率調整剤で同様であったことを示す。
弾薬は、Nammo BNT 弾丸を用いて、SS109 スタイルに構成された。
図は、また、3週間の人工的な加齢を通して、実際の弾道学的な変化は低かったことを示す。
【0117】
図12は、それぞれ、6%のDNTおよび2%の4−(4−ヒドロキシフェニル)ブタン−2−オンのコーティングを含む、ニトロセルロース・ベースの推進剤の2つのサンプル(長さ1.39mm、直径0.7mmおよび50ミクロンの穿孔)についての、5.56mmの試験プラットフォームにおいて、−15℃、21℃および52℃で測定した、場合の弾道学的な温度分布を示す。
弾薬は、Nammo BNT 弾丸を用いて、SS109 スタイルに構成された。
図は、3週の間、弾道学的な熱分布は、加齢により顕著に影響されなかったことを示す。
【0118】
特定の実施態様において示されるように、広く記載されている本件発明の精神または範囲から逸脱することなく、多数のバリエーションおよび/または修飾が、本件発明になされてもよいことが、当業者に理解されるであろう。したがって、本実施態様は、全ての側面で、例示であって、制限ではないと考えるべきである。
【0119】
「a」および「an」および「the」の使用並びに、本発明を記載する文脈(特に、次の特許請求の範囲の文脈において)における同様に指示されるものの使用は、本出願で他を示さず、また、明らかに文脈によって反対されない限り、単数及び複数の両方を包含すると解釈されなければならない。
【0120】
以下の特許請求の範囲において、および上記の発明の説明において、明白な言い回し、または、必要な含蓄のために、文脈が、それ以外を要求する場合を除き、「含むcomprise」という語、または、「comprises」または「comprising」のようなバリエーションは、包括的意味で使用される。即ち、述べた要素の存在を特定するためであって、本件発明の様々な実施態様において、更なる要素の存在または追加を排除するものではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12