(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態であるディスプレイオーディオ装置(以下「DA装置」という)10の電気的な構成を示すブロック図である。
【0013】
このDA装置10は、可搬型の情報端末であるスマートフォン100と連携して、当該スマートフォン100から出力された情報を出力するとともに、ユーザから受け付けた操作をスマートフォン100に入力する機器である。スマートフォン100には、例えば、経路を案内するナビゲーションソフトや、映像や音楽を出力するプレーヤーソフト等がインストールされている。DA装置10は、スマートフォン100にインストールされているソフトウェアのうち、ユーザから指定されたソフトウェアを起動させ、スマートフォン100から出力された情報(例えば、経路案内画面や、経路案内音声、楽曲音声、映像)をDA装置10の表示部26に表示する。
【0014】
図1に示す通り、DA装置10の制御部20は、ハーネス24を介して、スマートフォン100と電気的に接続されている。ハーネス24は、HDMI(登録商標)規格に従ったケーブルである。このハーネス24は、信号送受のために制御部20に電気的に繋がっている。また、このハーネス24は、スマートフォン100への電力供給用ハーネスとしても機能し、充電器23にも電気的に繋がっている。
【0015】
制御部20は、スマートフォン100から供給された映像信号や音声信号に基づいて、液晶ディスプレイ12やスピーカー14を駆動し、映像および音声を出力させる。また、制御部20は、タッチパネル16で感知されたタッチ操作に基づいて操作信号を生成し、スマートフォン100に出力する。なお、スマートフォン100が音声操作機能を有している場合には、DA装置10にマイク18を設け、当該マイク18で収集した音声信号を、操作信号としてスマートフォン100に送るようにしてもよい。また、
図1には図示しないが、DA装置10は、簡単な操作デバイス、例えば、スイッチやボタン、ボリュームスイッチ、キーボード等を備えてもよい。メモリ22には、DA装置10を駆動するためのプログラムや、制御パラメータ等が記憶されている。
【0016】
こうしたDA装置10は、
図2に示すように、車両の車室内のうち乗員が見やすい位置、例えば、ダッシュボード102のうち計器類に隣接する位置等に組み付けられる。DA装置10の本体部(
図2では見えず)は、ダッシュボード102の内部に埋め込まれており、通常、DA装置10のうち表示部26(すなわちタッチパネル16が組み付けられた液晶ディスプレイ12)を構成するパネル40(
図3参照)のみが外部に露出している。このように、表示部26のみが露出した状態でDA装置10を組み付けることで、ユーザの手指がDA装置10に意図せずにぶつかったり、DA装置10がユーザの視界の妨げになったりすることが防止できる。その一方で、スマートフォン100より大きい画面やより高性能なスピーカーで、各種情報を提供できるため、ユーザは、スマートフォン100にインストールされた各種ソフトウェア(ナビゲーションソフトやプレーヤーソフト)をより快適に利用できる。
【0017】
ところで、このDA装置10に接続されるスマートフォン100は、従来、DA装置10の外部に設置されていた。すなわち、従来は、ダッシュボード102の外表面に、スマートフォン100のドッキングステーション、いわゆるクレイドルを設置し、このクレイドルにスマートフォン100を取り付けていた。この場合、スマートフォン100は、ダッシュボード102から突出して位置することになる。その結果、車室内のインテリアの統一感が乱れて、見栄えが悪くなるだけでなく、ユーザの手指が、スマートフォン100やクレイドルに意図に反してぶつかり、スマートフォン100等が破損や誤動作するおそれがあった。また、外部に突出するスマートフォン100がユーザの視界を妨げる恐れがあった。また、この場合、スマートフォン100とDA装置10とを電気的に接続するハーネス24も外部に露出することになるが、こうした外部に露出したハーネス24は、見栄えを悪くするだけでなく、ユーザの手指が引っ掛かりやすく、スマートフォン100やDA装置10の破損や誤動作を招きやすかった。
【0018】
そこで、本実施形態では、表示部26の背後に、スマートフォン100を保持するホルダ部を設けている。これについて、
図3〜
図7を参照して説明する。
図3は、DA装置10の分解斜視図である。また、
図4、
図5は、表示部26を開状態にしたときのDA装置10の斜視図である。さらに、
図6は、閉状態の、
図7は、開動作途中の、
図8は、開動作完了後のDA装置10の側面図である。
【0019】
DA装置10は、ダッシュボード102内に埋め込まれ固定される本体部28と、当該本体部28に対して開閉可能な表示部26と、に大別される。表示部26は、樹脂等からなるハウジング44に、パネル40、タッチパネルを構成する電極42や中継基板48、TFT46を組み付け、さらに、その背後をカバー50で覆って構成される(
図3参照)。本実施形態では、この表示部26の背後を覆うカバー50の背面に、スマートフォン100を保持するホルダ部72を形成している(
図4参照)。ホルダ部72は、
図4に示すように、スマートフォン100の形状に応じて形成された枠部材50aで構成される。ただし、ホルダ部72は、スマートフォン100を保持できるのであれば、枠部材50aでなく、他の形式、例えば、スマートフォン100の四隅のみを囲む部材等であってもよい。
【0020】
また、本実施形態では、この表示部26を、本体部28に対して開閉可能に構成している。この表示部26の開閉機構30については、後に詳説するが、表示部26は、ホルダ部72を本体部28内に位置させた閉状態と、ホルダ部72を外部に露出させた開状態と、に切替可能となっている。より具体的に説明すると、
図6に図示するような閉状態において、表示部26を奥側にプッシュすると、表示部26は、前方に直進し、ダッシュボード102表面から外側に突出して、
図7に図示する状態になった後、前のめりに回動し、
図8に示すように、ホルダ部72が外部に露出した開状態となる。
【0021】
閉状態にする場合は、開状態になった表示部26を、奥側に押し付ければよい。ホルダ部72は、スマートフォン100全体を収容できる大きさを有しており、スマートフォン100をホルダ部72に収納した状態で、表示部26を閉状態にできる。つまり、本実施形態によれば、表示部26を閉じれば、スマートフォン100は、DA装置10の本体部28の内部に完全収容される。その結果、スマートフォン100が、DA装置の外部に露出せず、スマートフォン100と手指との意図しない接触や、スマートフォン100による視界の妨げ等が確実に防止される。
【0022】
また、本実施形態では、DA装置10とスマートフォン100とを電気的に接続するハーネス24(
図4、
図5参照)を、DA装置10の本体部28内に収容している。すなわち、DA装置10の本体部28に設置されるフレーム67には、ハーネス24の先端に設けられた接続端子24aを収容する端子収容部67aが形成されている(
図4、
図5参照)。この端子収容部67aには、ハーネス24が挿通される挿通孔67bが形成されており、ハーネス24は、この挿通孔67b内を進退可能となっている。スマートフォン100をホルダ部72に装着した際には、
図5に示すように、ハーネス24を前方に引き出し、接続端子24aをスマートフォン100に接続する。この状態で、表示部26を閉状態にすれば、スマートフォン100だけでなく、ハーネス24も完全に、DA装置10の内部に収まるため、ハーネス24への意図しない手指の引っ掛かりが完全に防止できる。
【0023】
次に、このDA装置10の機械的構成について説明する。DA装置10は、既述した通り、機械的には、ダッシュボード102内に埋め込まれる本体部28と、当該本体部28に対して開閉自在の表示部26と、に大別される。本体部28には、DA装置10のケースを構成する複数の鉄板70や、制御部20やメモリ22を構成する複数の回路基板68が搭載されている。
【0024】
回路基板68の前方には、ベース部材62が設置されており、このベース部材62には、仕切り板64が固着されている。この仕切り板64は、略垂直に立脚する部材で、その中央近傍には、後述する進退バー54aが挿通する挿通孔64bが複数形成されている。
【0025】
ベース部材62は、DA装置10のケースに固着される部材である。このベース部材62の幅方向両端には、略垂直に立脚するサイド壁74が設けられている。このサイド壁74は、表示部26の開閉状態を切り替える開閉機構30の構成要素である。サイド壁74には、アーム56が挿し入れられるアーム用孔74aや、ガイド用突起58aの移動をガイドするガイド孔74b等が形成されているが、これについては、後に詳説する。
【0026】
また、ベース部材62には、さらに、ロックスイッチ66を取り付けるための設置アーム63が立脚している。ロックスイッチ66も表示部26の開閉状態を切り替える開閉機構30の構成要素の一つである。このロックスイッチ66は、表示部26の一部と係合して閉状態を維持する係合状態と、当該係合を解除した係合解除状態とをとることができる。このロックスイッチ66の状態は、ロックスイッチ66の前面に突出した可動ピン82を押圧することで切り替えることができる。
【0027】
ベース部材62の前面には、進退板54が設けられている。進退板54は、略平板状の板材で、当該進退板54の背面には、水平方向に延びる進退バー54aが複数設けられている。この進退バー54aは、既述した通り、固定設置される仕切り板64の挿通孔64bに挿通されており、進退板54は、仕切り板64に対して前後方向に進退可能となっている。また、進退バー54aには、進退板54を開方向に付勢するコイルスプリング60が取り付けられている。
【0028】
表示部26は、既述した通り、パネル40や、電極42、中継基板48、ハウジング44、およびカバー50で構成されるが、このうち、カバー50の背面には、ホルダ部72を構成する枠部材50aが形成されている。カバー50背面の端部からは、ロックスイッチ66に係合するカバー側係合部材50bが突出している(
図9、
図10参照)。また、このカバー側係合部材50bの近傍には、ロックスイッチ66に当接するプッシャー52が取り付けられている。カバー50の下端近傍には、ガイド部材58が固着されており、カバー50、ひいては、当該カバー50が組み込まれた表示部26全体は、当該ガイド部材58とともに進退および回動するようになっている。さらに、カバー50には、アーム56も取り付けられている。ただし、このアーム56は、カバー50およびガイド部材58とともに進退するものの、これらカバー50等とともに回動はせず、常に、水平姿勢を保つ。
【0029】
次に、以上のような構成のDA装置10において、表示部26の開閉の機構について
図9、
図10を参照して説明する。
図9、
図10は、いずれも、DA装置10のうち表示部26の開閉に関与する部材を抜き出した斜視図であり、
図9は、閉状態を、
図10は開状態をそれぞれ示している。
【0030】
表示部26を本体部28に対して開閉する開閉機構30は、ベース部材62や進退板54、アーム56、ガイド部材58、ロックスイッチ66等で構成される。すなわち、閉状態において、カバー側係合部材50bは、ロックスイッチ66に設けられたスイッチ側係合部材86と係合している。この状態で、表示部26を押圧すると、二つの係合部材50b,86の係合が解除される。係合が解除されると、進退板54を前方に付勢するコイルスプリング60の付勢力により、進退板54および当該進退板54の前方に位置する表示部26が、前方に移動する。
【0031】
このとき、ガイド部材58に形成されたガイド用突起58aは、サイド壁74に形成されたガイド孔74bに挿通されているため、ガイド部材58、ひいては、表示部26は、このガイド孔74bに沿った方向、すなわち、水平方向前方に移動する。
【0032】
前方に移動していく過程で、ガイド用突起58aは、ガイド孔74bから抜け出て、アーム56に対して回動自在となる。また、サイド壁74のアーム用孔74aに挿し入れられたアーム56は、一定量、前方に移動すると、サイド壁74に取り付けられたアーム止め57に当接し、その前方移動が規制され、ひいては、表示部26の更なる前進が妨げられる。この状態になれば、表示部26は、自重により、アーム56との接合軸を中心として、前のめりに回動する。そして、結果として、
図10に示す開状態となる。なお、より積極的に回動させるために、進退板54とカバー50との間に、当該カバー50を前方方向に付勢する回動用の弾性体を設けてもよい。
【0033】
開状態になった表示部26を、閉状態にするには、当該表示部26をコイルスプリング60の付勢力に抗して、奥側に押圧すればよい。プッシャー52がロックスイッチ66を押圧する位置まで表示部26を押せば、ロックスイッチ66の一部が、カバー側係合部材50bと係合し、閉状態を維持する。
【0034】
ここで、閉状態でも、進退板54は、コイルスプリング60の付勢力により、常時、カバー50を前方方向に押す。ホルダ部72にスマートフォン100が収容されている場合には、進退板54は、このスマートフォン100を、カバー50側に押し付ける。その結果、ホルダ部72内でのスマートフォン100のガタ付きや振動が効果的に防止され、不快な振動音や、振動や衝撃によるスマートフォン100の破損が効果的に防止される。また、これまでの説明で明らかな通り、本実施形態では、表示部26の開閉用の弾性体と、スマートフォン100のガタ付き防止用の弾性体とを共通化している。その結果、部品点数を低減でき、より安価にDA装置10を構成できる。
【0035】
なお、ロックスイッチ66としては、係合状態および係合解除状態を切り替え可能であれば、その構成は特に限定されず、公知の構成、例えば、日本特許公開第2006−137224号公報に開示されている構成等を採用できる。
図11A、
図11Bは、ロックスイッチ66の構成の一例を示す図であり、
図11Aは係合状態を、
図11Bは係合解除状態をそれぞれ示している。また、
図12は、このロックスイッチ66の分解斜視図である。
【0036】
このロックスイッチ66は、固定設置される角筒状の筐体80や、当該筐体80内で進退する可動ピン82および摺動体84、筐体80の径方向に進退するスイッチ側係合部材86、可動ピン82および摺動体84を付勢する弾性体88,90等から構成される。
【0037】
可動ピン82および摺動体84は、それぞれ、第一、第二弾性体88,90により、前方(図面下方)に付勢されている。可動ピン82の先端は、筐体80の先端面に形成された孔から外部に突出して、プッシャー52に当接している。
【0038】
摺動体84は、対抗する二面が開放された箱状部84aと、当該箱状部84aに連なるカム部84bと、を備えている。箱状部84aのうち、移動方向と直交する二面には、前方に近づくにつれ、係合解除方向(図面右方向)に進むように斜め方向に延びるカム孔84cが形成されている。このカム孔84cには、スイッチ側係合部材86に取り付けられた軸94が挿通される。
【0039】
以上の構成のロックスイッチ66では、係合状態では、
図11Aに示すように、摺動体84および可動ピン82は、前方(図面下方)に進出しており、スイッチ側係合部材86は、カバー側係合部材50bと係合している。この状態では、カバー側係合部材50b、ひいては、表示部26は、前方に移動することは出来ず、閉状態を維持できる。
【0040】
この状態で、プッシャー52で可動ピン82を奥側に押圧すると、可動ピン82、摺動体84が、ともに、奥側(図面上方)に移動する。この移動に伴い、スイッチ側係合部材86の軸が、カム孔84cに沿って移動することになり、ひいては、スイッチ側係合部材86が、係合解除の方向(図面右方向)に移動することになる。その結果、スイッチ側係合部材86とカバー側係合部材50bとの係合が解除され、
図11Bの状態になる。プッシャー52による押圧を解除すると、摺動体84および可動ピン82は、弾性体の付勢力により再び、前方方向に移動する。
【0041】
係合解除状態からロック状態に戻す場合には、表示部26を奥側に押圧し、プッシャー52で、再度、可動ピン82を奥側に押圧すればよい。これにより、可動ピン82および摺動体84は、再度、奥側に移動し、スイッチ側係合部材86は、ロック解除方向に移動し、
図11Bの状態になる。また、カバー側係合部材50bは、プッシャー52とともに奥側に移動するが、このとき、スイッチ側係合部材86とは干渉しないため、完全奥側まで移動できる。スイッチ側係合部材86が完全奥側まで移動した後に、プッシャー52による押圧を解除すれば、可動ピン82および摺動体84は、弾性体の付勢力により前方に移動し、これに伴い、スイッチ側係合部材86も、係合方向(図面左方向)に移動する。そして、最終的には、
図11Aに示すロック状態になる。
【0042】
ただし、ここで説明したロックスイッチ66の構成は、一例であり、表示部26の一部との係合状態を、適宜、切り替えられるのであれば、他の構成でもよい。例えば、本実施形態では、機械的に係合・係合解除を切り替えるロックスイッチ66を用いたが、電気的に係合・係合解除を切り替えてもよい。例えば、表示部26に、開閉切替用のボタン等を設け、当該ボタンの押下信号を受けて、進退する電磁プランジャー等を用いて、係合・係合解除を切り替えてもよい。
【0043】
また、DA装置10の表示部26の背面に、可搬型の情報端末を保持できるのであれば、その他の構成は適宜、変更されてもよい。例えば、本実施形態では、表示部26の開動作時、表示部26を、前方へスライドさせ、その後、前方へ回動させている。しかし、スマートフォン100をセットするために十分なスペースを確保できるのであれば、前方へのスライドまたは前方への回動のいずれか一方だけを行うようにしてもよい。また、スライドや前方への回動ではなく、表示部26の左右端部に設けられた垂直軸回りに回動して開閉する構成、いわゆる、片開き扉状に開閉する構成としてもよい。
【0044】
また、本実施形態では、ハーネス24を介して、スマートフォン100とDA装置10とを電気的に接続しているが、電気的接続部材がDA装置10の内部に完全収容できるのであれば、他の接続形態を採用してもよい。例えば、ホルダ部72にスマートフォン100をセットした際に、当該スマートフォン100の接続端子と接触する位置に接続端子を固定設置しておき、スマートフォン100をホルダ部72にセットすれば、自動的に、DA装置10の接続端子とスマートフォン100の接続端子が接続されるようにしてもよい。また、電気的接続部材は、電気信号の送受が出来るのであれば、有線に限らず、無線であってもよい。
【0045】
また、本実施形態では、スマートフォン100に接続されるDA装置を例に挙げたが、可搬型の情報端末であれば、スマートフォンに限らず、PDAやタブレット端末等に接続されてもよい。
【0046】
いずれにしても、DA装置の表示部26の背面に、可搬型の情報端末のホルダ部を設けることで、見栄えを向上するとともに、当該情報端末の破損や、当該情報端末により視界が妨げられるといった問題を効果的に防止できる。