【課題を解決するための手段】
【0010】
本出願人は、先行技術の場合に一般的であった「シルクハット」型の出力密度プロファイルを作らずに、むしろ「魔女の帽子」タイプのプロファイル、即ちその中央から両端まで徐々に下がっていく勾配を有する三角形に近いプロファイルを作る、マイクロレンズに基づくレーザライン形成光学系を、装置のモジュールに装備することにより、それぞれのレーザモジュールの位置合わせにおける誤差に対するモジュール式レーザ装置の感度を有意に低下させることが可能であることを認知した。
【0011】
本発明が対象とするのは、作業平面におけるレーザラインを各々が作り出す複数のレーザモジュールを含むレーザ装置であり、前記レーザモジュールは該モジュールにより作り出したレーザラインを一緒にして単一のレーザラインにするように配置されていて、該レーザモジュールの各々が、
・レーザラインを作り出すための少なくとも1つの手段、好ましくはレーザダイオードの線状アレイ、及び、
・前記レーザラインを形作るための手段、
を含むレーザ装置であって、前記レーザラインを形作るための手段は、最終のレーザラインが作業平面において、最大出力密度の90%のところでの幅(L
90)と最大出力密度の10%のところでの幅(L
10)とを有し、L
90/L
10比が1/15と1/5の間、好ましくは1/12と1/7の間、特に1/10と1/8の間に含まれる出力密度プロファイルを有するように、マイクロレンズの第1の線状アレイ、収束レンズ、及び該収束レンズの焦点面に配置されたマイクロレンズの第2の線状アレイを含むことを特徴とするレーザ装置である。
【0012】
それ故、先行技術とは対照的に、本発明では、各々ができるだけ大きい有効な出力平坦部を含む出力密度プロファイルでレーザラインを作り出すレーザモジュールを製造することは求められない。反対に、高い出力の中央領域(L
90)の広がりをモジュールのレーザラインの全長の20%未満、好ましくは15%未満、特に10%未満に減少させることが求められ、そして最大出力の領域の両側の勾配の値を減少させることも求められる。この理由は、各モジュールにより作り出される出力密度プロファイルの2つの端部の勾配が小さいほど、モジュールを位置合わせするときに生ずる誤差がモジュールの線状アレイにより形成される一体とした出力密度プロファイルに及ぼす影響が小さくなるからである。したがって、各モジュールにより作り出されるラインの出力プロファイルの理想的形状は、最大出力に等しい高さ(h)とレーザラインの長さに等しい底辺(b)とを有する三角形である。
【0013】
それ故、理想的には、出力密度プロファイルの両側の勾配は、この三角形のそれ(2h/b)に等しい。
【0014】
しかしながら、実際の出力密度プロファイルは、厳密に三角形の形状とは若干異なってもよい。
【0015】
好ましくは、各レーザモジュールにより作りだした最終のレーザラインは、作業平面において最大出力密度をレーザラインの中央に有する出力密度プロファイルを有し、この出力密度はラインの中央から両端へと徐々に減少し、この減少の勾配は、同じL
10及びL
90の完全に三角形のプロファイルの勾配と最大で20%、好ましくは最大で10%だけ異なる。ここで、「減少の勾配」という表現は、レーザラインの長さの1/50に等しい長さにわたって観察される平均の勾配を意味する。
【0016】
レーザモジュールは、全ての個々の出力密度プロファイルの総計から得られる一体とされたレーザラインの出力密度プロファイルが、装置の一体とされたレーザラインの全長の少なくとも90%に相当する中央領域を有するシルクハット型プロファイルとなり、その領域では出力密度の変動が最大で10%、好ましくは最大で5%、特に有利には最大で1%であるように並置される。
【0017】
各モジュールの三角形のプロファイルの有効な出力領域の幅(L
90)が小さいことは、本発明の装置において2つの隣接するモジュールにより作り出される個々のレーザラインの非常に大きい重なりにより補償される。
【0018】
具体的に言えば、個々の三角形の「魔女の帽子」型プロファイルからシルクハット型の一体としたプロファイルを作り出すために、最終のプロファイルの殆ど全ての点が部分的に重なり合う少なくとも2つの個々のプロファイルの合算から得られることが不可欠である。
【0019】
本発明の好ましい実施形態では、レーザモジュールを、レーザモジュールにより作り出されたレーザラインの各端部が隣接するモジュールにより作り出されたレーザラインの中央の直ぐ近傍に位置するようにして並置する。したがって、出力密度が一定である一体としたプロファイルの中央部分において、レーザラインの各点は、2つの異なる隣接するレーザモジュールによりそれぞれ作り出された2つの三角形のレーザプロファイルの一部から作られるのが好ましい。
【0020】
プロファイルを組み合わせるこのやり方は、複数の個々の「シルクハット型」プロファイルを作り出して一緒にすることが一般に求められて、かつ個々のプロファイルの重なりの領域が、標準的にレーザラインの全長の2〜3パーセントより多くに相当しない先行技術で使用されるそれとは非常に異なる。
【0021】
実質的に三角形の出力密度プロファイルを有する長さL
iのレーザラインを各々が作り出すn個のモジュールが単一の「シルクハット型」プロファイル(
図1参照)を形成するように並置される本発明の装置の1つの実施形態において、この単一のラインの全長(L
g)は、
L
g=(n+1)×0.5L
i
に等しい。
【0022】
それ故、全長L
gは好ましくは、各モジュールにより個々に作り出されるレーザラインの長さの半分の倍数に等しい。
【0023】
レーザラインにシルクハット型の出力密度プロファイルを与えることを可能にするレンズ系は、先行技術で知られている。そのような系は、例えば米国特許出願公開第2012/0127723号明細書に記載されている。それは、各々が複数のマイクロレンズから光を受け入れる、サイズがより大きい収束レンズ(5)と組み合わされた第1のマイクロレンズアレイ(4)を含む。各収束レンズは、焦点面(8)において、比較的幅の広い中央部分及び勾配が比較的急な下がっていく側部(10)を有するシルクハット型の出力密度プロファイル(9)を作り出す。
【0024】
本発明では、三角形のプロファイルが得られることを可能にするマイクロレンズアレイを、シルクハット型の出力密度プロファイルを形成する収束レンズの焦点面に配置する。このマイクロレンズアレイは、焦点距離DのN個の円筒型マイクロレンズの線状アレイを含む。
【0025】
図1を参照して下記で説明するように、マイクロレンズのこの線状アレイにより形作られるレーザラインの出力密度プロファイルは、マイクロレンズアレイに対する距離と共に変化する。線状のマイクロレンズアレイの直ぐ近くでは、それはシルクハットの形状にされている。それは、線状アレイからの距離があるほど形状がますます三角形になる。
【0026】
それが三角形の形状を有する正確な距離(D)は、知られているように、以下の式により計算することができる。
D=N×F
この式中のNはマイクロレンズの数を表し、Fは各マイクロレンズの焦点距離を表すが、ただし、マイクロレンズアレイは、マイクロレンズアレイとシルクハット型の出力密度プロファイルを形成する収束レンズとの距離に比べて無視し得るサイズであるとする。
【0027】
有利には、作業平面(基材)は、線状のマイクロレンズアレイからD±15%、好ましくはD±5%に等しい距離に、理想的には正確に距離Dのところに配置される。
【0028】
所定の距離Dで三角形の出力密度プロファイルを得るために適したマイクロレンズの線状アレイを上の式により選択することは、当業者にとって言うまでもなく可能でありかつ容易である。
【0029】
本発明のモジュール式レーザ装置は、好ましくは少なくとも5個のモジュール、特に少なくとも10個のモジュールを含む。
【0030】
レーザモジュールは、作り出されたレーザラインが一緒になって全長が1.2mを超え、好ましくは2mを超え、特に3mを超える単一のレーザラインになるように並置するのが有利である。
【0031】
3.21mの幅を有する「特大」基材をレーザ処理することを目的とするなら、出力密度が実質的に一定のレーザラインの中央部分は、3.20mと3.22mの間に含まれる長さを有することが好ましい。
【0032】
さらに、レーザモジュールは組み立てられて、作り出すレーザラインが基材又は作業平面を、基材の法線に対して好ましくは小さい角度で、典型的には20°未満、好ましくは10°未満の角度で横切るように、レーザ装置に搭載される。該装置は、レーザモジュールを固定したままで、処理すべき基材がモジュールの線状アレイの上方又は下方を、一般にレーザラインの主軸線に対して垂直方向に走行するように設計することができる。変形実施形態として、基材を固定したままで、レーザラインを基材上に投射しながら、レーザモジュールの線状アレイが基材の上方又は下方を走行するように装置を設計してもよい。
【0033】
次に、本発明を添付の図面を参照して説明することにする。