(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
流れ方向引き裂き時には流れ方向に引き裂かれ、巾方向引き裂き時には巾方向に引き裂かれ、かつ流れ方向と45°の方向に引き裂いた場合は、流れ方向又は巾方向のいずれかの方向に、引き裂かれ、流れ方向と45°の方向に引き裂いた場合の引き裂き方向と、切断線とのなす鋭角が30〜60°であり、流れ方向と45°の方向に引き裂いた場合の引裂強度が10g以下であるプラスチックフィルムを用意する工程と、
前記プラスチックフィルムに多数の孔を形成する穿孔加工工程
を含む、穿孔プラスチックフィルムの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という)について詳細に説明する。
(穿孔プラスチックフィルム)
本発明の穿孔プラスチックフィルムは、多数の貫通孔を有する透湿度が300〜3500g/m
2・24hのプラスチックフィルムである。
ここでいう透湿度とは、後述する透湿度試験方法を用いて、40℃、湿度50%においてフィルムを通過する水蒸気の質量を測定し、得られた測定値を該フィルム1m
2・24時間当たりに換算した値をいう。
また、多数の貫通孔とは、10〜40000コ/100cm
2とする。
【0014】
水蒸気透過度を評価するパラメータは種々あるが、例えば、前述の特許文献2においてはサンプルを直接水に浸して行う測定法を採用している。しかしながら、サンプルを直接水に浸すこのような方法に基づくパラメータは、皮膚に貼った際の皮膚の浸軟や乾燥のしにくさといった観点からサンプルの水蒸気透過度を評価する場合には、その測定環境が実際の使用状況とは大きく異なるので評価目的には即していない。そのため、このようなパラメータを用いて水蒸気透過度を特定の範囲(例えば、創傷面からの水蒸気蒸散速度といわれる値と同等の範囲)に設定しても、実際には、皮膚刺激性の十分低いものとはなっていなかったと考えられる。
これに対して、本発明において採用する透湿度は、通常の外気環境下(40℃、湿度50%)においてサンプルを通過する水蒸気の質量を測定するものであって、その測定環境が皮膚保護フィルムの実際の使用状況と類似しているので、皮膚保護用途のフィルムの特性(浸軟や乾燥のしにくさ)を評価するのに適している。そして、本発明者らが鋭意検討したところ、プラスチックフィルムの透湿度を300〜3500g/m
2・24hという範囲内に設定すると、人の皮膚から蒸発する水分を適度に逃がし、蒸れて浸軟したり、逆に乾燥し過ぎることなく、さらに後述する皮膚や創傷部の上をフィルムが滑る際の摩擦による物理的な刺激低減やカット性を損なうことなく皮膚刺激性を抑えることができることが分かった。
透湿度は、より好ましくは、300〜2000g/m
2・24hでありこの範囲に設定すると、さらに皮膚の水分状態を適度に保ち皮膚刺激性を抑えることができる。さらに好ましくは300〜1800g/m
2・24h、最も好ましくは600〜1700g/m
2・24hである。
【0015】
本実施形態における穿孔プラスチックフィルムの透湿度は、貫通孔部を通過する水分に由来する透湿度と、プラスチック部を拡散して通過する水分に由来する透湿度の合計量である。前者は孔の開口率に依存し、後者はプラスチックフィルムの材質(水蒸気透過度等)や厚みに依存すると考えられる。
透湿度は、フィルムの材質や厚み、並びに、開口率いずれによって調整してもよい。
開口率によって透湿度を調整すると、水蒸気透過度以外の特性も考慮してフィルム材料を選択することができ、フィルム材料の選択の自由度が高くなるという点で好ましい。
【0016】
穿孔プラスチックフィルムの多数の貫通孔は、均一の開口部を有していても、その開口部面積に分布があってもよいが、その平均孔径は、5〜1000μmであることが好ましく、5〜300μmであることがより好ましい。
本発明において、「孔径」とはフィルム平面上の開口部の直径を意味するが、開口部は必ずしも真円とは限らないので、本発明においては、「孔径」とは、開口部を真上から(フィルム面に平行に視野を設定して)光学顕微鏡で観察したときの画像における開口部の面積と同一面積を有する真円の直径(円相当径)を意味するものとする。なお、開口部内において穿孔不良があった場合、その不良部も開口部とみなす。
孔径を測定する際の画像処理に用いる機器やソフトには特に制限はなく公知のものを用いることができる。本実施形態においては、以下のようにしてフィルムの平均孔径を測定することができる。
光学顕微鏡(例えば、キーエンス社VHX−900)で、観察倍率100倍、観察視野を1cm角に設定する。
まず、フィルムの第一面について任意の5か所の視野を選択する。そして、各視野について、視野内の全開口部の孔径を測定しその平均値を算出するという作業を5回繰り返し、得られた5つ平均値の平均をさらに算出し、第一面の平均孔径とする。
次いで、フィルムをひっくり返して、第二面についても同様に任意の5か所の視野を選択し、5つの視野の平均値の平均をさらに算出し、第二面の平均孔径とする。
第一面と第二面の平均孔径のうち、小さい方の値をフィルムの平均孔径とする。
【0017】
平均孔径を上記範囲内とすることで、水や異物などの侵入も防いで衛生性が保たれるとともに、汗や皮脂、皮膚の垢などが孔につまりにくく、皮膚から蒸発した水蒸気がフィルムの外へ滞りなく放出され蒸れないため、皮膚が浸軟することがない。また、皮膚が乾燥しすぎることなく適度な湿度を保持できる。
平均孔径は、より好ましくは5〜250μmであり、さらに好ましくは7〜200μmであり、最も好ましくは10〜150μmである。
【0018】
穿孔プラスチックフィルムの開口率((開口部の総面積/フィルム面積)×100)は、フィルムを構成する材料と目的とする透湿度に応じて適宜決定することができるが、目安としては0.0003〜4.5%であることが好ましい。開口率を上記範囲とすることで、フィルムの強度を保ちながら目的とする透湿度を実現することができる。フィルム材料として、後述する具体例やそれと同等の水蒸気透過度を有するものを使用した場合には、開口率を当該範囲とすることで上述した適度な透湿度を確保することができる。より好ましい開口率は0.0015〜2.0%であり、さらに好ましい開口率は0.003〜2.0%であり、最も好ましくは0.01〜1.5%である。
本実施形態において、フィルムの開口率は平均孔径と同様に以下のようにして測定することができる。
フィルムの第一面と第二面のうち平均孔径の小さかった方の面について、任意の5か所の視野を選択する。そして、各視野について、視野内の全開口部の面積を測定しその平均値を算出すると共に、同視野内の開口部の個数をカウントし、開口部の面積の平均値と開口部個数を掛け合わせて開口面積を算出する。この作業を5回繰り返し、これら5点の開口面積の総和を視野の総面積5cm
2で割り返し、フィルムの開口率とする。
なお、開口率は、フィルムに穿孔する貫通孔の平均孔径や穿孔密度を調整することにより所望の値とすることができる。
【0019】
本実施形態において、穿孔プラスチックフィルムの貫通孔の実質開口率は80〜100%であることが好ましい。実質開口率を当該範囲とすることで、穿孔不良部の樹脂塊が皮膚や創傷部の上を滑る際の摩擦による物理的な刺激を低減して皮膚への刺激性を抑制することができる。実質開口率を上記範囲にする方法に限定はないが、特に後述するレーザー照射やロールカッターによる方法を用いると比較的容易にこの範囲内にすることができるため好ましい。
本実施形態において、実質開口率は次のようにして測定することができる。
フィルムの第一面と第二面のうち平均孔径の小さかった方の面について、任意の5か所の視野を選択する。そして各視野について視野内の全開口部について、開口部分における完全な貫通部のみの面積(以下、「実質開口面積」という。)を測定する。この際、穿孔不良部の面積は実質開口面積に含まない。そして視野内の全開口部の実質開口面積の合計を全開口部の面積の合計で割り返した値の平均値を算出し、これを実質開口率とする。
【0020】
また、本実施形態の透湿度を有する穿孔プラスチックフィルムにおいては、その摩擦係数を1.7以下とすると、皮膚刺激性が低くなるため、好ましい。
ここでいう摩擦係数とは、後述の試験方法を用いて、人工皮膚の上を速度1000m/minで走行距離80mmを滑らせたときの動摩擦係数の値をいう。摩擦係数が当該範囲であれば、皮膚や創傷部の上をフィルムが滑る際の摩擦による物理的な刺激を低減し、皮膚に直接接触させたり、貼付したりしても問題がないほどに皮膚刺激性を抑えることができる。
摩擦係数は、より好ましくは1.3以下、なお好ましくは1.2以下、さらに好ましくは1.0以下である。
上記摩擦係数を1.7以下とすることによる皮膚刺激性低減効果は、透湿度が、特に700〜1500g/m
2・24h、さらには800〜1400g/m
2・24h、とりわけ900〜1300g/m
2・24h、さらにとりわけ1000〜1200g/m
2・24hである場合に、より顕著に奏される。
【0021】
多数の貫通孔を有しながら、摩擦係数が上記の範囲にある穿孔プラスチックフィルムを製造する方法に限定はないが、一般に、プラスチックフィルムに貫通孔を穿孔する際には、孔の端部(縁)にバリやカエリ等の凹凸が形成されてしまい、これにより摩擦係数が高くなるため、摩擦係数の低い穿孔プラスチックフィルムを実現するのは難しい。実際、上記のように低い摩擦係数を有する穿孔プラスチックフィルムというものは、これまで得られていなかった。
この点について、本発明者らが鋭意検討したところ、以下のような知見a〜cが得られた。
a.直交する二方向に高延伸されたプラスチックフィルムはバリ等を発生させることなく穿孔加工しやすい。
具体的には、流れ方向引き裂き時には流れ方向に引き裂かれ、巾方向引き裂き時には巾方向に引き裂かれ、かつ流れ方向と45°の方向に引き裂いた場合は、流れ方向又は巾方向のいずれかの方向に引き裂かれるようなプラスチックフィルムは、バリ等を発生させることなく穿孔加工しやすい。
特に、プラスチックフィルムが、流れ方向と45°の方向に引き裂いた場合の引き裂き方向と、切断線とのなす鋭角が30〜60°であり、流れ方向と45°の方向に引き裂いた場合の引裂強度が10g以下であると、よりバリ等の発生は低く抑えられる。
b.プラスチックフィルムが、ポリエチレン系樹脂を含み、かつ、ゲル分率(ASTM-D2765)が10〜60質量%であるものであると、バリ等を発生させることなく穿孔加工しやすい。
c.穿孔加工方法として、例えば、後述する一対のロールカッターやレーザーを用いた方法を採用すると、バリ等の発生が少ない。
したがって、上記a〜cに挙げた条件を適宜組み合わせる(すなわち、a〜cに挙げた条件のうちのいずれか一つを採用したり、いずれか二つを組み合わせて採用したり、或いは、全てを採用する)ことによって、多数の貫通孔を有し、しかも、摩擦係数が1.7以下である穿孔プラスチックフィルムを製造することができる。特に、条件cを採用することが効果的であり、これに加えてさらに条件a、bのいずれかを採用することがより好ましく、条件cに加えて条件a、bの両方を組み合わせることがさらに好ましい。
【0022】
本実施形態の穿孔プラスチックフィルムにおいては、孔の開口率によって透湿度を自由に設計できるので、その材質は水蒸気透過率等に縛られることなく、幅広い材料の中から自由に選択ができるが、具体例としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ4メチルペンテンなどのオレフィン類の単独重合体;2種以上のオレフィン類の共重合体及び1種以上のオレフィン類とオレフィン類以外の異種成分との共重合体などが挙げられ、ポリエチレン系樹脂を含むことが好ましく、ポリエチレン系樹脂からなることが特に好ましい。ここで、ポリエチレン系樹脂とは、エチレン単位を含む高分子化合物をいう。
このようなポリエチレン系樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン;エチレン−酢酸ビニル共重合体;エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体等のエチレン−脂肪族不飽和カルボン酸共重合体;エチレン−メチルアクリレート共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−エチルメタクリレート共重合体、エチレン−ブチルアクリレート共重合体、エチレン−ブチルメタクリレート共重合体等のエチレン−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体等が挙げられる。
これらは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0023】
さらにポリエチレン系樹脂のなかでも、超低密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低圧法高密度ポリエチレン及びエチレン−酢酸ビニル共重合体等が好ましい。
【0024】
また、ポリエチレン系樹脂は、必要に応じて公知の可塑剤を含んでいてもよい。該可塑剤の種類に限定はないが、皮膚刺激性の低いものが好ましく、具体例としては、例えば、アセチルクエン酸トリブチルのようなクエン酸エステル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジオクチル、グリセリン、グリセリンエステル、ワックス、流動パラフィン、リン酸エステル及びエポキシ化大豆油などが挙げられ、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸アルコールエーテル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが好ましい。
これらは1種単独で用いても又は2種以上を併用してもよい。
【0025】
このようなポリエチレン系樹脂を含むプラスチックフィルムは、皮膚への化学的な刺激性が低く、また柔軟性に富むため皮膚へ沿って貼りつくので物理的に皮膚を傷つけることも少なく、皮膚刺激性を抑えることができる。さらに、穿孔加工の際にバリ等の発生が少ないという点でも好ましい。
【0026】
本実施形態において、穿孔プラスチックフィルムがポリエチレン系樹脂を含む場合、フィルムのゲル分率(ASTM-D2765)が10〜60質量%であることが好ましい。前述のとおり、本発明者らの研究によれば、ゲル分率がこのような範囲にあるポリエチレン系樹脂含有フィルムは、穿孔加工する際に孔の端部に発生するバリ等が少ないことが判明した。ゲル分率は、15〜50質量%がより好ましく、25〜40質量%がさらに好ましい。
ゲル分率は、架橋度の指標として一般に用いられている値であり、ゲル分率を10〜60質量%とするには、フィルムを構成する高分子化合物を架橋させればよい。架橋方法に限定はなく、例えば、架橋剤を使用してもよいし、フィルムに対して放射線架橋(電子線架橋)を行うことによってゲル分率を調整することもできる。放射線架橋は、架橋剤を使用する化学的架橋と異なり、フィルムを構成する高分子化合物を架橋剤を介さず直接的に架橋させることができるので、添加剤を添加することなく架橋させることができ、皮膚刺激性を抑えるという点で好ましい。
【0027】
また、本実施形態において、穿孔プラスチックフィルムは、直交する方向に高延伸されたものであることが好ましい。
具体的には、流れ方向(フィルム製膜時のMD方向)引き裂き時には流れ方向に引き裂かれ、巾方向(流れ方向と直交する方向、TD方向)引き裂き時には巾方向に引き裂かれ、かつ流れ方向と45°の方向に引き裂いた場合は、流れ方向又は巾方向のいずれかの方向に引き裂かれるものであることが好ましい。
このような特性を有するプラスチックフィルムは、バリ等をあまり発生させることなく穿孔加工することができるので、その結果、摩擦係数の低い穿孔プラスチックフィルムとすることができ、さらに、穿孔プラスチックフィルムをカット面が直線的になるように手で任意の寸法にカットすることも可能となる。
ここで、「流れ方向に引き裂かれる」、「巾方向に引き裂かれる」とは、各々、流れ方向、又は、巾方向と切断線(切断した方向)のなす鋭角が0〜15°であることをいい、「切断線」とは、引き裂き開始点と終了点(フィルム試験片の端辺と実際に引き裂かれた線の交点)を結ぶ線をいう。流れ方向、又は、幅方向と切断線のなす鋭角は、0〜10°であることがより好ましく、0〜5°であることがさらに好ましい。
【0028】
引き裂き評価では、JIS K 7128の引裂試験B法(エルメンドルフ法)と同様にして、引き裂き試験を行い、流れ方向、又は、幅方向と切断した方向とのなす鋭角を測定する。
ここで、試験片の大きさは60×60mm、スリット長さは10mmとし、フィルムの流れ方向と45°の方向への引き裂き評価の場合は、試験片はフィルムの原反から流れ方向と45°の方向で採取する。
なお、フィルムの引き裂き評価の結果は、穿孔加工前後において実質的に変わりはないが、本実施形態においては、穿孔プラスチックフィルム(穿孔後)について定義されるものとする。
【0029】
本実施形態においては、さらに、フィルムを流れ方向と45°の方向に引き裂いた場合の引き裂き方向と切断線とのなす鋭角が、30〜60°であることが好ましく、35〜55°がより好ましく、40〜50°がさらに好ましい。例えば、フィルムの流れ方向と45°の方向に引き裂いた際の引き裂き方向と切断線とのなす鋭角が45°の場合の引き裂き方向は、流れ方向又は巾方向となる(
図1参照)。
引き裂き方向と切断線の角度が上記範囲内であると、バリ等の発生を低減して穿孔加工することができる傾向にあり、しかも、手でカットした場合の直進性により優れる傾向にある。
【0030】
引き裂き方向と切断線の角度は、フィルム製造時の延伸条件や、それにより生じる配向の度合いにより制御することができる。二軸延伸において、延伸倍率が高く、延伸温度が低い程、分子の配向の度合いは高くなり、分子鎖はMD及びTD方向に強く配向する。このため、フィルムを引き裂いた場合、分子が強く配向している方向に引き裂かれ易くなる。すなわち、MD及びTD方向に引き裂かれ易くなり、他の方向、例えば、MD方向と45°の方向には引き裂き難くなる。よって、流れ方向と45°に引き裂いても、MDまたはTD方向に引き裂かれる。このようなフィルムは、芯管などに巻いた巻回体として、ここから引き出して、手で切る場合、引出方向に張力をかけた上で指をフィルムに食い込ませるなどして切断の起点を作ると、それを起点に巾方向に伝播して容易に巻回体の巾方向に切ることが可能になる。
【0031】
本実施形態においては、フィルムのMD方向と45°の方向に引き裂いた場合の引裂強度は、10g以下であることが好ましく、1〜8gがより好ましく、2〜6gがさらに好ましい。
MD方向と45°の方向の引裂強度が上記範囲内であると、MD方向及びTD方向のカット性により優れる傾向にあり、しかも、バリ等の発生を低減して穿孔加工することができる傾向にある。なお、引裂強度が10g以下であると、手により容易にカットすることができる。
ここで、フィルムのMD方向と45°の方向に引き裂いた場合の引裂強度とは、JIS K 7128の引裂試験B法(エルメンドルフ法)と同様にして引き裂き試験を行った場合において、引き裂かれた際に測定される引裂強度をいう。
【0032】
フィルムのMD方向に引き裂いた場合の引裂強度は、10g以下が好ましく、1〜8gがより好ましく、2〜6gがさらに好ましい。MD方向の引裂強度が上記範囲内であると、MD方向の手によるカット性により優れる傾向にあり、バリ等の発生を低減して穿孔加工することができる傾向にある。なお、引裂強度が10gより大きいと、手により容易にカットすることができない。
フィルムのTD方向に引き裂いた場合の引裂強度は、10g以下が好ましく、1〜8gがより好ましく、2〜6gがさらに好ましい。TD方向の引裂強度が上記範囲内であると、TD方向の手によるカット性により優れる傾向にあり、バリ等の発生を低減して穿孔加工することができる傾向にある。なお、引裂強度が10gより大きいと、手により容易にカットすることができない。
【0033】
本実施形態において、穿孔プラスチックフィルムの厚みは、5.0〜40.0μmが好ましく、5.0〜20.0μmがより好ましく、5.0〜15.0μmがさらに好ましい。厚みが5.0μm以上であると、破れにくい傾向にある。また、厚みが40μm以下であると、カット性がより向上する傾向にある。
【0034】
(穿孔プラスチックフィルムを含む積層体)
本実施形態の穿孔プラスチックフィルムは、別の多孔性フィルムや不織布や紙と積層したり、粘着層や撥水層などの機能層を設けるなどして積層体を構成するようにしてもよい。皮膚保護用途に用いる場合には、穿孔プラスチックフィルムを皮膚に接する側とすることが好ましい。
また、この場合、積層体全体の透湿度もまた、300〜3500g/m
2・24hを満たすことが好ましい。
【0035】
(穿孔プラスチックフィルムの使用方法)
穿孔プラスチックフィルムは、皮膚保護用途に用いる場合、必要に応じて適切な大きさに切断し、創傷発生部(または、創傷の発生を予防したい部分)の上を被覆した状態になるように皮膚上に重ね、サージカルテープ等で貼り付けるなどして皮膚上に固定して使用できる。また、ワセリンなどの軟膏を皮膚の創傷発生部(または、創傷の発生を予防したい部分)に塗布し、その上から該フィルムをのせて、軟膏の粘着効果を利用して貼付してもよい。
別法としては、適切な大きさに切断した該フィルムに枠状の粘着層を積層した積層体を作成し、皮膚の創傷発生部(または、創傷の発生を予防したい部分)が該枠状の粘着層の枠内に入るように皮膚に貼り付けて使用することができる。
【0036】
(穿孔プラスチックフィルムの製造方法)
本実施形態の穿孔プラスチックフィルムの製造方法に限定はないが、例えば、ベースフィルムを用意する工程と穿孔加工工程とを含む本実施形態の製造方法によって製造することができる。本実施形態の製造方法は、さらにオプションとして、ベースフィルムを用意する工程の一部として、電子線架橋処理工程及び/または延伸処理工程を有していてもよい。
【0037】
ベースフィルムを用意する工程は、本実施形態の穿孔プラスチックフィルムの原料となるベースフィルムを用意する工程であり、例えば、公知のフィルム製造方法を採用することができる。
【0038】
この工程は、たとえば、樹脂と可塑剤とを環状ダイより単層または多層原反として押し出す工程と、押し出された原反を冷却固化する工程と、冷却固化された原反を延伸処理する工程により構成することができる。
延伸処理工程は、フィルム原反に対して一軸または二軸方向に延伸処理を行う公知の工程である。延伸方法に限定はなく、好ましくは2軸延伸、より好ましくは逐次または同時2軸延伸法又はインフレーション2軸延伸法を採用することができ、この中でもインフレーション2軸延伸法が好ましい。2軸延伸をすることでカット性がより向上する傾向にある。
【0039】
MD及びTD方向の延伸倍率は、共に5.0〜12倍が好ましく、5.5〜11倍がより好ましく、6.0〜10倍がさらに好ましい。延伸倍率が上記範囲であることにより、フィルムを構成する高分子化合物の配向度が高くなり、手によるカット性に優れ、かつ裂けトラブルが抑制されたフィルム(すなわち、MD方向引き裂き時にはMD方向に引き裂かれ、TD方向引き裂き時にはTD方向に引き裂かれ、かつMD方向と45°の方向に引き裂いた場合は、MD方向又はTD方向のいずれかの方向に引き裂かれるフィルム)が得られる傾向にある。
【0040】
TD方向の延伸倍率は、(延伸後のフィルム巾)/(延伸前のパリソン巾)の比であり、MD方向の延伸倍率は、(延伸後のライン速度)/(延伸前のライン速度)の比である。
また、延伸面積倍率は、5〜70倍が好ましく、20〜60倍がより好ましい。延伸面積倍率が、5倍以上であることによりカット性により優れる傾向にある。また、延伸面積倍率が、70倍以下であることにより製品の寸法変化より小さくなる傾向にある。
延伸温度は、フィルムを構成する材料の融点+60℃以下が好ましく、融点+40℃以下がより好ましく、融点+30℃以下がさらに好ましい。延伸温度が上記範囲であることにより、フィルムを構成する高分子化合物の配向度が高くなり手によるカット性により優れる傾向にある。
【0041】
プラスチックフィルムがポリエチレン系樹脂を含む場合は、パリソン又は延伸後のフィルムに放射線を照射して架橋処理を行うことが好ましい。放射線架橋処理方法で用いられる放射線としては、特に限定されないが、例えば、紫外線、電子線、X線、α線、β線、γ線、中性子線等の電離性放射線が挙げられる。このなかでも、電子線が好ましい。電子線照射による照射方法では、例えば100kV〜1MVのエネルギー電圧で電子線をパリソン又はフィルム全体に照射する方法が挙げられる。
【0042】
放射架橋処理を行う場合、処理後のフィルムのASTM-D2765に定められたゲル分率を10〜60質量%とすることが、穿孔加工時のバリ等の発生の抑制の観点から好ましい。
さらに、延伸前に架橋処理を行った場合には、高倍率での延伸を行うことが可能になるため、高倍率での延伸により、フィルムを構成する高分子鎖が高配向となり、刃物を利用することなく容易に手でフィルムを切れるようにすることができる。
フィルムのゲル分率は、一般に、架橋度の指標として用いられる。ゲル分率を高めると高倍率での延伸が可能となるが、一方でゲル分率があまり高くなりすぎると逆に延伸が困難になる傾向にある。そのため、本実施形態においてゲル分率は、15〜50質量%がより好ましく、25〜40質量%がさらに好ましい。
【0043】
穿孔加工工程は、ベースフィルムに微細な孔を設ける工程である。穿孔方法に限定はないが、例えば、熱針での突き刺しやレーザー照射、など公知の方法を用いることができる。
平均孔径は、熱針の径やレーザー出力を、フィルムの厚みや材料に合わせて適宜設定することにより調整できる。
本実施形態においては、穿孔加工工程における穿孔条件(レーザー出力、針径、穿孔密度等)を制御することで、孔径や孔密度を自由に調整でき、その結果、開口率もまた自由に調整できるので、穿孔プラスチックフィルムの透湿度の設計が容易にできる。
なお、本実施形態において、穿孔にレーザーを用いる場合には、レーザー照射の際に、照射するフィルム面とは反対側の面に、紙やフィルムといった基材を積層しておくと、照射により穿孔した孔の周縁部が基材に軽接着し、穿孔部が熱収縮して塞がることなく加工することができるため好ましい。
【0044】
さらに、穿孔加工工程において、
図2や
図3に示すような、切り刃の設置パターンの異なる一対のロールカッターを備える穿孔装置を用いてもよい。
例えば、
図2に示された穿孔装置においては、ロールの間を通過するフィルム10は、ロール2上に設けられた切刃4とロール3上に設けられた切刃5とが交差する部分、つまり平面視で線L1と線L2とが交差する部分の近傍において、上面及び下面から同時に加圧される。このため、フィルム10は切刃4と切刃5とが交差する部分9において穿孔され、貫通孔が形成される。
このようなロールカッターによる穿孔によれば、孔の端部にバリ及びカエリ等の凹凸が生じにくいため、孔が形成された後もフラットな表面を有する摩擦係数の低い穿孔プラスチックフィルムを簡単に製造することができる。
また、このようなロールカッターで穿孔された穿孔プラスチックフィルムは、フラットな表面を有するため、ロール状に巻き取ってもシワ及びコブ等が生じづらく、巻き姿が良好であると共に、巻き痕が付かず、良好な製品が得られる。
【0045】
本実施形態の穿孔プラスチックフィルムの製造方法においては、さらに、コロナ処理やプラズマ処理などの表面処理や、印刷加工、粘着剤の塗工などを施してもよい。
【0046】
本実施形態において、穿孔プラスチックフィルムは、芯管に巻回された巻回体とすることができる。巻回体とすることで取扱い性がよく、所望の面積を容易に切り出すことができる。特にフィルムが、引出方向引き裂き時には流れ方向に引き裂かれ、巾方向引き裂き時には巾方向に引き裂かれ、かつ引出方向と45°の方向に引き裂いた場合は、引出方向又は巾方向のいずれかの方向に引き裂かれ、引出方向と45°の方向に引き裂いた場合の引き裂き方向と、切断線とのなす鋭角が30〜60°であり、引出方向と45°の方向に引き裂いた場合の引裂強度が10g以下である場合には、巻回体から引き出したフィルムを手で直線的にカットしやすくできる。
【0047】
芯管は、その材料に限定はなく、例えば紙製、プラスチック製、金属製等のものを用いることができる。芯管は内部が中空の円筒状物でも、中空でない円柱状物でも構わないが、中空状の場合には手で巻物を握って引き出したフィルムの引出方向にもう一方の手で張力をかけて指でカットの起点を作る際にかかる力(握る力)に対応できるように、肉厚として0.5mm以上のものを用いることが好ましい。肉厚の上限には特に制限はない。
また、芯管の直径に限定はなく、例えば10mm〜50mmとすることができる。
【0048】
[実施例]
次に、実施例及び比較例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。実施例及び比較例に於いて、透湿度、平均孔径、開口率、実質開口率、摩擦係数、ゲル分率、斜め引裂き、厚みは以下の方法で測定した。
【0049】
(透湿度)
JIS1099繊維製品の透湿度試験方法A−2法ウォーター法と同じ測定装置を使用して、以下の手順で評価した。
あらかじめ40℃に温めた直径60mm深さ25mmのアルミ製カップに40℃の精製水30mlを入れ、直径70mmの試験片を、後述する平均孔径の小さい方の面を水側に向けて、カップに対して同心円になるように乗せ、パッキン及びリングを装着し、ちょうナットで固定して試験体とした。この試験体を40±2℃、50±5%RHの恒温・恒湿装置内の試験片上の10mm上部の風速が0.8m/sを超えない位置に静置し、8時間後の試験体の重量変化を測定した。下記式にて透湿度を算出した。
透湿度(g/m
2・24h)=〔重量変化(g)/透湿面積(m
2)〕×3
【0050】
(平均孔径)
光学顕微鏡(キーエンス社VHX−900)で観察の倍率100倍、観察の視野は1cm角とし、フィルムの第一面の端(MD方向の端)から5cm内側のところに視野を設定し、当該視野内のすべての開口部の孔径を算出し、その平均値を求めた。
さらに、前記視野からフィルムのMD方向(巻出方向)に1mおきに4点のところで、同様の視野で同じく測定してそれぞれ平均値を算出し、最終的にはこれら5点の平均値をさらに平均して、そのフィルムの第一面の平均孔径とした。
同様にしてフィルムをひっくり返して、第二面の平均孔径を測定した。そして、第一面の平均孔径と第二面の平均孔径のうち、小さい方の値をフィルムの平均孔径とした。
【0051】
(開口率)
上記平均孔径と同様の方法で、フィルムの第一面と第二面のうち平均孔径の小さかった方の面について、光学顕微鏡で1cm角の視野を設定し、この視野内のすべての開口部の面積を測定してその平均値を算出すると共に、同視野内の開口部の個数をカウントし、前記平均値と開口部個数を掛け合わせて開口面積を算出した。
フィルムのMD方向に1mおきに計5つの視野を設定し、同様の操作を実施して各視野の開口面積を算出し、これら5点の開口面積の総和を視野の総面積5cm
2で割り返し、フィルムの開口率とした。
【0052】
(実質開口率)
上記平均孔径と同様の方法で、フィルムの第一面と第二面のうち平均孔径の小さかった方の面について、光学顕微鏡で1cm角の視野を設定し、視野内のすべての開口部について、開口部の面積と開口部分における完全な貫通部のみの面積(実質開口面積)を測定し、各々の合計を算出した。この際、穿孔不良部の面積は実質開口面積に含まないようにした。
フィルムのMD方向に1mおきに計5つの視野を設定し、同様の操作を実施して、各視野について実質開口面積の合計を開口部の面積の合計で割り返した値を求め、その平均値を算出した。
【0053】
(摩擦係数)
株式会社東洋精機製作所friction tester(TR−2)を用いて、長さ100mm×巾64mm重さ200gの摩擦面発泡体の金属製ライダーに、測定する穿孔フィルム(長さ100mm×巾64mm)を貼り付け、人工皮膚であるバイオスキンプレートノーマル(長さ195mm×巾130mm)(株式会社ビューラックス製)上を速度1000m/minで走行距離80mmを滑らせ、動摩擦係数を測定した。
【0054】
(ゲル分率)
ASTM-D2765に準拠し以下のように測定した。
沸騰パラキシレン中にフィルムを12時間浸漬した後の不溶分の質量分率を次式により表示したものをゲル分率とした。尚、試料は、延伸されたフィルムを140℃で熱収縮させてパリソン状に戻したものを使用した。
ゲル分率(質量%)=(浸漬後の試料質量/浸漬前の試料質量)×100
【0055】
(斜め引裂試験、カット性)
図1に実施例における斜め引き裂き試験(MD方向と45°の方向の引き裂き性試験)の概略を示す。
ベースフィルムのMD方向と45°の方向の引裂強度は、JISK7128に準じたエルメンドルフ引裂強度試験機(東洋精機製)を用いて、60cm×60cmのフィルムに1cmの切れ目を入れてMD方向から45°の方向に引き裂いたこと以外は、JISK7128に準じて測定した。
上記斜め引裂試験の測定において、実際に引き裂かれた方向と引き裂き方向(MD方向と45°の方向)とのなす鋭角を測定した。
斜め引裂試験のカット性評価は、引き裂かれた方向と引き裂き方向(MD方向と45°の方向)とのなす鋭角を下記評価基準により評価することにより行なった。
<評価基準>
◎:引き裂かれた方向と引き裂き方向とのなす鋭角が40以上50°以下、かつ引裂強度が2〜6gである。
○:引き裂かれた方向と引き裂き方向とのなす鋭角が30°以上40°未満、又は、50°超過60°以下かつ引裂強度が10g以下である。
×:引き裂かれた方向と引き裂き方向とのなす鋭角が60°超過又は30°未満である、又は引裂強度が10g超過である。
【0056】
(MD方向、TD方向引裂試験)
ベースフィルムのMD方向及びTD方向の引裂試験は、JISK7128に準じてエルメンドルフ引裂強度試験機(東洋精機製)を用いて、60cm×60cmのフィルムに1cmの切れ目を入れてMD方向及びTD方向に引裂き試験を行い、下記の基準で評価した。
<評価基準>
○:引き裂かれた方向と引き裂き方向とのなす鋭角が15°以下
×:引き裂かれた方向と引き裂き方向とのなす鋭角が15°超
【0057】
(フィルム厚み)
フィルムの厚みは、ASTME-252に準じて測定した。具体的には、TECLOCKCORPORATION製 TECLOCK US−26を使用して測定を行った。
【0058】
(皮膚刺激性)
フィルムを5cm角に切り出し、サージカルテープを用いて健常な皮膚の被験者20人の上腕部皮膚へ貼り付け、24時間経過後に剥離し、30分放置後にフィルムが接触していた皮膚の様子を下記のように判定した。
<評価基準>
◎浸軟、かゆみなどの違和感なしが19人以上かつ発赤者なし
○浸軟、かゆみなどの違和感なしが16人〜18人かつ発赤者なし
△浸軟、かゆみなどの違和感なしが10人〜15人かつ発赤者なし
×浸軟、かゆみなどの違和感なしが9人以下、若しくは発赤1人以上
【0059】
[実施例1〜4]
LL(エチレン−1−オクテン共重合体 密度0.926g/cm
3 MI2.0g/10分):LD(高圧法低密度ポリエチレン 密度0.921g/cm
3 MI0.4g/10分)=70:30のポリエチレン系樹脂(組成物)に、グリセリンモノオレートを0.5質量%添加したものを環状ダイより単層原反(実施例1、4)、3層原反(実施例2)、又は5層原反(実施例3)として押出した後、冷水にて冷却固化して、折り巾120mm、厚さ500μmのチューブ状原反を作製した。
これを電子線照射装置に誘導し、500kVに加速した電子線を照射し、吸収線量として80kGyになるように架橋処理を行った。
これを延伸機内に誘導して再加熱を行い、2対の差動ニップロール間に通して、エアー注入によりバブルを形成し、MD方向8倍TD方向6倍(実施例1、3)、MD方向6倍TD方向6倍(実施例2)の延伸条件でそれぞれ延伸を行いダブルプライフィルムを得た。さらに実施例1、3、4については、スリット工程でシングルフィルムに剥いで各ベースフィルムを得た。
得られたベースフィルムに、実施例1、3、4おいてはレーザー照射で、実施例2においては熱針を樹脂のゲル化温度、溶融温度を考慮して135〜170℃の範囲で適宜調整し、穿孔加工を施して、穿孔プラスチックフィルムを得た。
なお、平均孔径は、実施例1及び3においてはレーザーの出力を、実施例2においては熱針の径を調整することにより調整した。
【0060】
[実施例5]
実施例1、3と同様にして(ただし、単層原反として押出し、MD方向8倍TD方向6倍に延伸)得られたベースフィルムに、切り刃の設置パターンの異なる一対のロールカッター21及び22からなるロールカッター装置2を用いて穿孔加工を施して穿孔プラスチックフィルムを得た。
図3に使用したロールカッター装置2を示す。
ロールカッター装置2において、ロールカッター21及びロールカッター22は、円筒状または円柱状のカッターで互いに対向して配置されている。ロールカッター21の軸とロールカッター22の軸とは互いに平行であって、ロールカッター21とロールカッター22とは、被穿孔物を挟み込める程度に離間している。ロールカッター21の軸方向の両端には支持部24が設けられており、ロールカッター21は支持部24を介して軸回りに回転可能にフレーム23に支持されている。ロールカッター22の軸方向の両端には支持部25が設けられており、ロールカッター22は支持部25を介して軸回りに回転可能にフレーム23に支持されている。ロールカッター21とロールカッター22とは連動して回転し、ロールカッター21の回転方向C1は、ロールカッター22の回転方向C2と反対である。
ロールカッター21の周面には、切刃211が設けられている。切刃211は、ロールカッター21の軸方向に対して角度θ
1で傾斜して周方向に連続して設けられ、ピッチP1で複数設けられている。ロールカッター22の周面には、切刃221が設けられている。切刃221は、ロールカッター22の軸方向に対して角度θ
2で傾斜して周方向に連続して設けられ、ピッチP2で複数設けられている。切刃211及び切刃221は、軸方向に対して同じ方向に傾いている。なお、切刃211及び切刃221は、
図2においてはピッチP1、及びピッチP2で間欠的に施されているが、例えばらせん状に施されていても良い。
このようなロールカッター装置2を使用し、
図2に示される例と同様にして、ベースフィルムの一端を装置2のロールカッター21及びロールカッター22の間に挟み込む。このとき、ロールカッター21の切刃211はベースフィルムの上面に当接し、ロールカッター22の切刃221はベースフィルムの下面に当接する。この状態で、ロールカッター21とロールカッター22とを連動して回転させることにより、ベースフィルムをフィルムの長手方向に沿って搬送して加工する。
図4にロールカッター装置2の一対のロールカッター21及び22の間を通ったベースフィルムの平面図を示す。ロールカッター装置2では、ベースフィルムの上面に切刃211が押し当てられて、切刃211の跡である線L1が上面に形成される。また、ベースフィルムの下面に切刃221が押し当てられて、切刃221の跡である線L2が下面に形成される。線L1は、ベースフィルムの上面側から見た場合、ベースフィルムの幅方向に対して角度θ
1で傾斜してベースフィルムの長手方向に延びており、ピッチP1で複数形成される。線L2は、ベースフィルムの下面側から見た場合、ベースフィルムの幅方向に対して線L1が傾斜する方向とは反対側に角度θ
2で傾斜してベースフィルムの長手方向に延びており、ピッチP2で複数形成される。
このようにして、切刃211と切刃221とが交差する部分において、ベースフィルムに孔11が連続して形成され、穿孔フィルムが作製される。
【0061】
[実施例6]
塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体PVDC(塩化ビニリデン単量体単位含有量/塩化ビニル単量体単位含有量=80質量%/20質量%、質量平均分子量12万)100質量部に対し、脂肪酸エステル類としてジブチルセバケートを3質量部、アセチルトリブチルシトレートを4質量部、エポキシ化化合物としてエポキシ化大豆油を2質量部、添加してヘンシェルミキサーで5分混合した。得られた混合物を溶融押出機で管状に押出し、約10℃の冷水槽で過冷却後、35℃の水中に通し、延伸温度30℃、MD方向に3.0倍、TD方向に4.0倍のインフレーション2軸延伸を行って得た管状フィルムをピンチロールで折りたたみ、厚み10μmの平坦長尺状のベースフィルムを得た。
実施例5と同様にロールカッター装置2を用いて穿孔加工を施して穿孔プラスチックフィルムを得た。
【0062】
[実施例7]
LD(高圧法低密度ポリエチレン 密度0.921g/cm
3 MI0.4g/10分)を溶融押出機で筒状に押出してバブルを形成して巻き取り、ベースフィルムを作製した。
次いで、実施例2と同様に熱針を135〜170℃の範囲で適宜調整して穿孔加工を施して穿孔プラスチックフィルムを得た。
[実施例8]
ポリプロピレンを溶融押出機で押出し冷却固化後、再加熱し、MD方向4倍TD方向8倍に逐次2軸延伸を行いベースフィルムを得た。
次いで、実施例2と同様に熱針の温度を180〜220℃の範囲で適宜調整し、穿孔加工を施して穿孔プラスチックフィルムを得た。
[実施例9]
実施例1と同様にしてベースフィルムを作成し、レーザー照射時にオレフィン系スパンボンド不織布と貼り合わせ、実施例1と同様にレーザー照射により穿孔加工を施して、穿孔と共ににベースフィルムと不織布との複合化を行い、穿孔プラスチックフィルム積層体を得た。
【0063】
[実施例10]
ベースフィルム製造時に3層原反として押出し、MD方向6倍TD方向6倍に延伸した以外は実施例5と同様にして、穿孔プラスチックフィルムを得た。
【0064】
[実施例11]
ベースフィルム製造時に5層原反として押出した以外は実施例5と同様にして、穿孔プラスチックフィルムを得た。
【0065】
[実施例12]
ポリエチレンテレフタレートを溶融押出機で押出し、逐次2軸延伸を行いベースフィルムを得た。実施例5と同様にロール状カッターを用いて穿孔加工を施して穿孔プラスチックフィルムを得た。
【0066】
[実施例13]
6ナイロンを溶融押出機で押出し、2軸延伸してベースフィルムを得た。実施例5と同様にロール状カッターを用いて穿孔加工を施して穿孔プラスチックフィルムを得た。
【0067】
[実施例14]
実施例1と同様にして、LL/LDからなるベースフィルムを得た。
次いで、実施例2と同様に熱針の温度を135〜170℃の範囲で適宜調整し、穿孔加工を施して穿孔プラスチックフィルムを得た。
[比較例1]
実施例7と同様の方法でベースフィルムを得た。
次いで、特許1995281号明細書に記載される突起物へ圧着するポーラス加工により穿孔加工を施して穿孔プラスチックフィルムを得た。
[比較例2]
実施例1と同様にしてチューブ状原反を作成し、これを電子線照射装置に誘導して電子線を照射し、吸収線量を調整してゲル分率が61質量%となるよう架橋処理を行った。
これを延伸機内に誘導して再加熱を行い、2対の差動ニップロール間に通して、エアー注入によりバブルを形成したところ、バブルを形成することができずにフィルム採取が不可能であった。
[比較例3]
ポリエチレンテレフタレートを溶融押出機で押出し、逐次2軸延伸を行いベースフィルムを得た。熱針を樹脂のゲル化温度、溶融温度を考慮して150〜220℃の範囲で適宜調整し、穿孔加工を施して穿孔プラスチックフィルムを得た。
【0068】
[比較例4]
低密度ポリエチレン(密度0.921g/cm3 MI0.4g/10分)を溶融押出機で筒状に押出してバブルを形成して巻き取り、ベースフィルムを作製した。次いで、特許1995281号明細書に記載される突起物へ圧着するポーラス加工により穿孔加工を施して穿孔プラスチックフィルムを得た。
【0069】
実施例及び比較例で製造した穿孔プラスチックフィルムの各種物性、並びに、フィルムに対して行った斜め引き裂き試験及び皮膚刺激性官能試験の結果を表1に示す。