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特許6363753エポキシ化触媒の製造方法及びそれを用いたエポキシ化方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6363753
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】エポキシ化触媒の製造方法及びそれを用いたエポキシ化方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 37/02 20060101AFI20180712BHJP
   B01J 27/055 20060101ALI20180712BHJP
   B01J 37/10 20060101ALI20180712BHJP
   C07D 301/10 20060101ALI20180712BHJP
   C07D 303/04 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
   B01J37/02 101D
   B01J27/055 Z
   B01J37/10
   C07D301/10
   C07D303/04
【請求項の数】8
【外国語出願】
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2017-54439(P2017-54439)
(22)【出願日】2017年3月21日
(62)【分割の表示】特願2014-514486(P2014-514486)の分割
【原出願日】2012年5月25日
(65)【公開番号】特開2017-140616(P2017-140616A)
(43)【公開日】2017年8月17日
【審査請求日】2017年3月29日
(31)【優先権主張番号】61/493,553
(32)【優先日】2011年6月6日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508168701
【氏名又は名称】ダウ テクノロジー インベストメンツ リミティド ライアビリティー カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 都子
(72)【発明者】
【氏名】シュリカント ゴパル
(72)【発明者】
【氏名】ラクシュミ エヌ.ブトゥクル ムルティ
(72)【発明者】
【氏名】アルン ジー.バスルール
【審査官】 岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−001535(JP,A)
【文献】 特表2007−503305(JP,A)
【文献】 特開平03−068449(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0177000(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0222462(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00−38/74
DWPI(Derwent Innovation)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、と、マンガンと、ナトリウムとを含むエポキシ化触媒の製造方法であって、
マンガンにより前記支持体を含浸する工程の前に、ナトリウムにより前記支持体を含浸する工程と、
マンガンによる含浸と同時に、銀により前記支持体を含浸する工程と、
を含み、
前記触媒は、ナトリウム及びマンガンに加えて、少なくとも1種類のアルカリ金属及び/又は助触媒を更に含む、前記製造方法。
【請求項2】
前記触媒は、ナトリウムにより前記支持体を含浸する工程と銀及びマンガンにより前記支持体を含浸する工程との間に、600℃を超えない昇温に曝される、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
少なくとも1種類の更なるアルカリ金属及び/又は助触媒がレニウムを含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
多孔質支持体と、銀と、マンガンと、ナトリウムとを含むエポキシ化触媒の製造方法であって、
ナトリウムとは別の含浸工程においてマンガンにより前記多孔質支持体を含浸する工程と、
前記触媒を、各含浸の間において、600℃を超えない昇温に曝す工程と、
を含む、前記製造方法。
【請求項5】
前記マンガンの含浸の前に、前記銀の少なくとも一部と同時に、前記ナトリウムを前記多孔質支持体に含浸させる、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記ナトリウムの含浸の前に、前記銀の少なくとも一部と同時に、前記マンガンを前記多孔質支持体に含浸させる、請求項4に記載の製造方法。
【請求項7】
前記マンガンの含浸の前に、前記ナトリウムを前記多孔質支持体に含浸させ、前記マンガンの含浸と同時に、前記銀を前記多孔質支持体に含浸させる、請求項4に記載の製造方法。
【請求項8】
前記ナトリウムの含浸の前に、前記マンガンを前記多孔質支持体に含浸させ、前記ナトリウムの含浸と同時に、前記銀を前記多孔質支持体に含浸させる、請求項4に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書中において、エポキシ化触媒の製造方法を提供する。本方法は、多段含浸を伴い、このようにして製造される触媒は、従来の方法により製造される触媒と比べて、高い効率を示すことが期待される。また、このように調製される触媒を用いたエポキシ化方法も提供する。
【背景技術】
【0002】
触媒は、多くの化学的製造工程の重要な構成要素であり、一般的には、問題の反応速度を加速させるために、及び/又は所望の生成物への選択性や効率性を向上させるために用いられる。多くの反応に用いられる触媒は、汎用化学品事業で商業的に非常に重要な工程であるオレフィンのエポキシ化において、特に有利に用いられる。エポキシ化反応では、少なくともオレフィン及び酸素を含有する供給材料を触媒と接触させ、対応するオレフィンオキシドの形成を生じさせる。
【0003】
商業的に特に重要なオレフィンのエポキシ化の一例は、アルキレン又はアルキレンの混合物のエポキシ化であり、特にそのエポキシ化反応は、商業的に持続可能とするために高性能の触媒に依拠しなければならない。一般に、アルキレンのエポキシ化に使用される触媒は、適切な支持体/担体上に、単独又は1種類若しくは複数種類の助触媒と組み合わせて付着させた触媒種を含む。
【0004】
商業的規模においては、例えば1%などの僅かな選択性の増加が、そのエポキシ化方法に関する操業コストを大幅に低減させることができるので、当業者は、エポキシ化触媒の効率及び/又は活性の向上を、予てより積極的に追求してきた。
【0005】
この分野における研究は広範囲にわたっており、触媒に高い効率及び/又は長い有効寿命をもたらすことのできる改良が、例えば、担体、助触媒及び触媒種等の触媒の構成要素、触媒の製造方法、並びにエポキシ化方法自体さえも、この分野において追求されてきた。それにも拘らず、当業界では、更なる改良が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の触媒と比べて効率の増加を示すエポキシ化触媒を製造することのできる方法が提供されることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、従来製造されているエポキシ化触媒に比べて高い効率を示すエポキシ化触媒の製造方法を提供する。より具体的には、本発明の方法は、触媒支持体の選択的含浸を実現する。そして、驚くべきことに、他のアルカリ金属及び/又は助触媒とは別の支持体上に、マンガンの少なくとも一部を含浸させると、得られる触媒は、高い効率、例えば、従来の方法により調製される触媒よりも、1%以上にも及ぶ高い効率を示すことができることを発見した。
【0008】
そこで、第一の態様では、エポキシ化触媒の製造方法を提供する。このエポキシ化触媒は、支持体と、少なくとも1種類の触媒種と、マンガンと、少なくとも1種類のアルカリ金属及び/又は助触媒とを含む。この方法は、少なくとも1種類のアルカリ金属及び/又は助触媒とは別の含浸工程においてマンガンの少なくとも一部を含浸させることを含む。幾つかの実施形態では、マンガンを、少なくとも1種類の触媒種と組み合わせて、支持体上に含浸させることができ、幾つかの実施形態では、その触媒種は銀を含むことができる。
【0009】
また、この方法によって調製されるエポキシ化触媒も提供される。前記少なくとも1種類のアルカリ金属及び/又は助触媒としては、レニウム、ナトリウム、セシウム、リチウム、硫酸塩、又はこれらの組合せが挙げられる。或る実施形態では、前記少なくとも1種類のアルカリ金属及び/又は助触媒は、レニウムを含むことが望ましい。これらの、また他の実施形態では、前記触媒種は銀を含むことができる。
【0010】
一方、このエポキシ化触媒は、従来の方法によって製造されるエポキシ化触媒よりも、1%以上にも及ぶ高い効率を示すことが期待される。したがって、アルキレンのエポキシ化方法も提供される。このエポキシ化方法は、酸素供給源とアルキレンをエポキシ化触媒の存在下で接触させる工程を含み、そのエポキシ化触媒は、少なくとも1種類のアルカリ金属及び/又は助触媒とは別の含浸工程において、多量のマンガンのうちの少なくとも一部を含浸させることによって調製される。
【0011】
このエポキシ化触媒が示す高い効率は、例えば、材料の使用を減らす、最終製品の精製における時間を縮小させるなどの形で、更なる下流の製品に利益をもたらすことが期待される。したがって、1,2−ジオール、1,2−ジオールエーテル、1,2−カルボナート又はアルカノールアミンの製造方法も提供される。この方法は、アルキレンオキシドを1,2−ジオール、1,2−ジオールエーテル、1,2−カルボナート又はアルカノールアミンに転化する工程を含む。このアルキレンオキシドは、上記方法により調製された触媒を用いて調製される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】従来のエポキシ化触媒及び本発明の方法の一実施形態に従って製造されたエポキシ化触媒の、出口におけるエチレンオキシド濃度%と効率%の関係を示すグラフである。
図2】従来のエポキシ化触媒及び本発明の方法の一実施形態に従って製造されたエポキシ化触媒の、出口におけるエチレンオキシド濃度%と効率%の関係を示すグラフである。
図3】従来のエポキシ化触媒及び本発明の方法の一実施形態に従って製造されたエポキシ化触媒の、出口におけるエチレンオキシド濃度%と効率%の関係を示すグラフである。
図4】従来のエポキシ化触媒及び本発明の方法の一実施形態に従って製造されたエポキシ化触媒の、出口におけるエチレンオキシド濃度%と効率%の関係を示すグラフである。
図5】従来のエポキシ化触媒及び本発明の方法の一実施形態に従って製造されたエポキシ化触媒の、出口におけるエチレンオキシド濃度%と効率%の関係を示すグラフである。
図6】従来のエポキシ化触媒及び本発明の方法の一実施形態に従って製造されたエポキシ化触媒の、出口におけるエチレンオキシド濃度%と効率%の関係を示すグラフである。
図7】従来のエポキシ化触媒及び本発明の方法の一実施形態に従って製造されたエポキシ化触媒の、出口におけるエチレンオキシド濃度%と効率%の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のこれらの及び他の特徴、態様及び利点は、下記の詳細な説明を添付図面と共に考察すると、更に理解及び/又は例証することができる。
【0014】
本明細書は、本発明の輪郭をより良く示し、本発明の実施において当業者を導くための幾つかの定義及び方法を提供するものである。特定の用語又は語句に対する定義の有無は、如何なる特定の重要性の有無を示唆するものではなく、寧ろ用語は、特に断りのない限り、当業界における当業者の通常の用法に従って理解されるべきである。
【0015】
別段の定義がない限り、本明細書中で使用される技術用語及び科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって普通に理解されているものと同じ意味を有する。エポキシ化反応の「選択性」(「効率」と同義である)とは、対応するオレフィンオキシド生成物を形成する転化又は反応したオレフィンの割合として表される比を指す。用語「効率」及び「選択性」は、本明細書中では区別なく使用される。エポキシ化反応の活性は、複数の方法で定量化することができる。一つは、反応器温度をほぼ一定に保ったままで、反応器の入口流に含有されるオレフィンオキシド(入口流のオレフィンオキシドのモルパーセントは、必ずしもそうとは限らないが、一般にはほぼゼロパーセントに近い)に対する出口流に含有されるオレフィンオキシドのモルパーセントであり、また、もう一つは、オレフィンオキシドの所与の生成速度を維持するのに必要な温度である。多くの場合、活性は、特定の一定温度で製造されるオレフィンオキシドのモルパーセントに関し、一定の期間に亘って測定される。或いは、活性は、特定の一定モルパーセントのオレフィンオキシドの製造を持続するのに必要な温度の関数として、測定することもできる。
【0016】
本明細書中で使用する「第一」、「第二」などの用語は、何らかの順序、量又は重要度を意味するものではなく、寧ろ一つの要素を別の要素と区別するために使用される。また、「或る(a及びan)」という用語は、量の限定を意味するものではなく、寧ろ記載事項の少なくとも1つの存在を意味し、また、「前部」、「後部」、「底部」及び/又は「頂部」という用語は、特に断らない限り、単に説明の便宜上使用され、いずれか一つの位置又は空間的配向を限定するものではない。範囲を開示する場合、同一の成分又は特性を対象としたすべての範囲の端点を含み、独立して組み合わせることができる(例えば、「最高で25重量%まで、又はより具体的には5重量%〜20重量%」は、各端点と、「5重量%〜20重量%」の範囲のすべての中間値を含む)。本明細書全体を通して記載される「一実施形態」、「別の実施形態」、「或る実施形態」は、その実施形態に関連して述べられる特定の要素(例えば、特徴、構造及び/又は特性)が、本明細書中で述べる少なくとも一つの実施形態に含められ、他の実施形態中に存在しても、しなくてもよいことを意味する。加えて、これら様々な実施形態において、記載された本発明の特徴を任意の適切なやり方で組み合わせることができることを理解されたい。
【0017】
本明細書中では、支持体と、触媒種と、マンガンと、少なくとも1種類の追加のアルカリ金属及び/又は助触媒とを含むエポキシ化触媒の製造方法を提供する。より具体的には、本方法は、マンガンの少なくとも一部を、少なくとも1種類の追加のアルカリ金属及び/又は助触媒とは別に、選択された支持体上に含浸させることを要し、また幾つかの実施形態では、触媒種とは別の含浸を要する。
【0018】
そして、驚くべきことに、上記方法を使用することによって、従来の方法により調製された触媒よりも、1%以上にも及ぶ高い選択性を示す触媒が得られることを発見した。すなわち、本発明の方法によってもたらされる有益な効果は、触媒中に含有されるマンガンの少なくとも一部を、触媒中に含有される任意の他のアルカリ金属及び/又は助触媒と別に含浸させる限りにおいて、使用される他のアルカリ金属及び/又は助触媒とは無関係に、それによって調製される触媒に見られるものと予想される。
【0019】
マンガンは、例えば、ポリオキシアニオン構造体を含む、オキシアニオン(マンガン酸塩)又は混合型金属オキシアニオンなどのアニオン助触媒の形態で、提供され得る。多くのアニオン助触媒が複雑な化学作用を有し、また、1又は複数の形態で存在し得ることはよく認識されており、それらの一部を、本発明の方法におけるマンガンの供給源として使用するために受け入れられる。さらに、オキシアニオン又はオキシアニオン前駆体が、担体に含浸させるための溶液中で使用可能であり、また、触媒の準備状態の間及び/又はその使用中に、初期の特定のマンガンオキシアニオン又は前駆体を別の形態に転化し得ることも知られている。本発明は、使用中に、触媒上に最終的に存在することのできる厳密なマンガン種によって限定されるものではない。したがって、マンガン成分の例としては、これらに限定されないが、酢酸マンガン(II)、硫酸アンモニウムマンガン、クエン酸マンガン(II)、ジチオン酸マンガン(II)、シュウ酸マンガン(II)、硝酸第一マンガン、硫酸第一マンガン、及び例えば、過マンガン酸アニオンなどのマンガン酸アニオン、並びにこれらの組合せが挙げられる。幾つかの実施形態において、マンガン成分をある種の含浸液中で安定化させるために、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)などのキレート化合物を、前記含浸液に加えることができる。
【0020】
本発明により調製される触媒は、マンガンに加えて、望ましくは少なくとも1種類の他のアルカリ金属及び/又は助触媒を含む。当業者に知られているように、様々な既知の助触媒があり、また、例えば、銀などの特定の触媒材料と組合せて存在する場合は、1つ又は複数の態様の触媒性能の利益になり、或いは触媒が、例えば、エチレンオキシドやプロピレンオキシドなどの所望の製品を製造する能力を促進するように作用する材料もある。より具体的には、そのような助触媒自体は、一般に触媒材料とは見なされないが、通常、助触媒は、例えば、その所望の製品の製造速度又は量を高める、反応の適切な速度を達成するのに必要な温度を下げる、望ましくない反応速度又は量を減らすなどの触媒性能の1又は複数の有益な効果に貢献することができる。さらに、当業者に知られているように、所望の反応の助触媒として作用し得る材料は、別の反応の抑制剤となる場合もある。本発明の目的上、助触媒は、それが同時に起こり得る任意の競合反応を抑制するか否かに拘わらず、所望の製品の効率的な製造にとって有利なすべての反応に影響を及ぼす材料である。
【0021】
アルカリ金属及び/又は助触媒の例としては、これらに限定されないが、IA族金属及びIIA族金属の金属群、レニウム、モリブデン、タングステン、リチウム、イオウ、カリウム、ルビジウム、セシウム、クロム、チタン、ハフニウム、ジルコニウム、バナジウム、タリウム、トリウム、タンタル、ニオブ、カルシウム、バリウム、ガリウム、及びゲルマニウム、並びにそれらの混合物が挙げられる。更には、金属は、リチウム、カリウム、ナトリウム、ルビジウム及びセシウムなどのIA族金属、及び/又はカルシウムやバリウムなどのIIA族金属から選択されるものが好ましい。最も好ましくは、リチウム、カリウム、ナトリウム、及び/又はセシウムである。
【0022】
レニウム、モリブデン又はタングステンは、好適には、例えば過レニウム酸、モリブデン酸、又はタングステン酸などのオキシアニオンとして、塩又は酸の形態で提供することができる。助触媒、助触媒の特徴、及び助触媒を触媒の一部として組み込むための方法は、Thorsteinson他の米国特許第5,187,140号明細書(具体的には第11〜15欄)、Liu他の米国特許第6,511,938号明細書、Chou他の米国特許第5,504,053号明細書、Soo他の米国特許第5,102,848号明細書、Bhasin他の米国特許第4,916,243号及び第5,059,481号明細書、Lauritzenの米国特許第4,761,394号、第4,766,105号、第4,808,738号、第4,820,675号、及び第4,833,261号明細書に記載されている。
【0023】
幾つかの実施形態において、本発明の方法によって調製される触媒は、レニウムと、1種類又は複数種類の追加のアルカリ金属及び/又は助触媒を含むことができる。レニウムで促進される担持された銀含有触媒が、米国特許第4,761,394号及び米国特許第4,766,105号明細書により公知である。このような実施形態においては、レニウム成分は、例えば、金属、共有結合性化合物、カチオン又はアニオンなどの様々な形態で、供給することができる。高い効率及び/又は活性をもたらすレニウム種は特定されず、触媒の調製中又は使用中のいずれかにおいて加えられる成分又は発生する成分であってもよい。
【0024】
レニウム化合物の例としては、ハロゲン化レニウム、オキシハロゲン化レニウム、レニウム酸塩、過レニウム酸塩、レニウムの酸化物及びレニウムの酸が挙げられる。しかしながら、アルカリ金属過レニウム酸塩、アルカリ土類金属過レニウム酸塩、過レニウム酸銀、他の過レニウム酸塩及び七酸化レニウムを用いてもよい。七酸化レニウム(Re27)は、水に溶解すると、加水分解して過レニウム酸(HReO4)又は過レニウム酸水素になる。したがって、本明細書の目的上、七酸化レニウムは、過レニウム酸イオン、すなわちReO4であるとみなすことができる。類似の化学作用が、モリブデン及びタングステンなどの他の金属によっても示され得る。
【0025】
本発明の方法に供される触媒中に含有されるマンガンと、任意の他の望ましい助触媒及び/又はアルカリ金属は、促進量又は有効量で提供されることが望ましく、そのような量は当業者によって容易に決められる。ある助触媒の「促進量」とは、前記助触媒を含まない触媒に対して、前記助触媒を含む触媒の1つ又は複数の特性の改良を実現するように効果的に働く、前記助触媒の量を指す。触媒特性の例としては、とりわけ操作性(耐暴走性)、選択性、活性、転化率、安定性及び収率が挙げられる。この助触媒によってもたらされる促進効果は、例えば、反応条件と、触媒調製技術と、支持体表面の表面積、細孔構造及び化学的性質と、触媒の銀及び共助触媒の含量と、触媒上に存在する他のカチオン及びアニオンの存在などの複数の変数によって、影響を受ける可能性がある。また、他の活性化剤、安定剤、助触媒、エンハンサー又は他の触媒改質剤も、促進効果に影響を与える可能性がある。
【0026】
マンガン助触媒の量は、広範囲に、すなわち触媒の総重量を基準にして、0.0005から2重量%まで変えることができ、それはある程度、担体の表面積に左右される可能性がある。例えば、担体表面積が1.0m2/g〜1.3m2/gの範囲にある場合、マンガン成分は、触媒の総重量を基準にした重量で、5ppm以上、10ppm以上、10ppm〜1000ppm、又は20ppm〜300ppmの量で提供することができる。幾つかの実施形態では、加えられるマンガンの量は、触媒1g当たり1.5μモル以上とすることができる。
【0027】
レニウムの好適な量の例としては、触媒の総重量を基準にして、0.0001重量%(1ppmw)〜2重量%(20,000ppmw)、好ましくは0.0005重量%(5ppmw)〜0.5重量%(5000ppmw)の範囲であると予想される。セシウムの好適な量の例としては、触媒の総重量を基準にして、0.005重量%〜0.30重量%、又は0.005重量%〜0.15重量%の範囲であると予想される。一方、セシウムの好適な量としては、触媒の重量を基準にして、200ppmを超える量から1200ppmまでの範囲とすることができる。イオウの好適な量の例としては、触媒の総重量を基準にして、0.0025重量%〜0.15重量%、又は0.001重量%〜0.075重量%の範囲であると予想される。
【0028】
一般に、このような触媒は担持触媒であり、どのような多孔質耐熱材料を選択しようとも、その形成された多孔体の使用される用途で採用される化学薬品及び加工条件の存在下において比較的不活性である限り、多数の既知の多孔質耐熱構造体又は支持材のいずれでも含み得る。前記支持材も、それに基づく触媒も、反応器内の非常に大きな温度及び圧力の変動に耐久可能であることが重要である。
【0029】
アルキレンオキシド触媒に使用するのに適した支持体を調製する多くのよく知られた方法が存在する。そのような方法の幾つかは、例えば、米国特許第4,379,134号、第4,806,518号、第5,063,195号、第5,384,302号、第6,831,037号の各明細書などに記載されている。例えば、95%以上の純度のα−アルミナ支持体は、原料の配合(混合)、押出、乾燥及び高温焼成によって調製することができる。この場合、一般に出発原料は、様々な特性を有する1種類又は複数種類のα−アルミナ粉末と、物理的強度を与えるためにバインダーとして加えることのできる粘土型材料と、焼成工程中に除去された後に所望の気孔率及び/又は細孔径分布をもたらすように、混合物中で使用される燃焼物質(一般に有機化合物)とを含む。得られる支持体中の不純物のレベルは、使用される原料の純度と、焼成工程中の揮発の程度によって決まる。通常の不純物としては、シリカ、アルカリ及びアルカリ土類金属酸化物、微量の金属及び/又は非金属含有添加剤を挙げることができる。
【0030】
アルキレンオキシド触媒用に特に適した特性を有する支持体を調製するための別の方法は、ケイ酸ジルコニウムをベーマイトアルミナ(AlOOH)及び/又はγ−アルミナと混合する工程、解膠したハロゲン化アルミナを得るために、前記アルミナを酸性成分及びハロゲンアニオン(好ましくはフッ素アニオン)を含有する混合物により解膠する工程、成形した解膠ハロゲン化アルミナを得るために、前記解膠したハロゲン化アルミナを(例えば、押出又は加圧成形によって)成形する工程、乾燥した成形アルミナを得るために、前記成形した解膠ハロゲン化アルミナを乾燥する工程、任意に変性されたα−アルミナ支持体の丸剤を得るために、前記乾燥した成形アルミナを焼成する工程を含む。
【0031】
一実施形態において、前記支持材は、80重量%以上のα−アルミナを含み、かつ重量単位で、100万部当たり30部未満の酸浸出性アルカリ金属を含む。そのα−アルミナの重量%及び酸浸出性アルカリ金属の濃度は、支持体の重量を基準にして計算され、ここで前記酸浸出性アルカリ金属は、リチウム、ナトリウム、カリウム、及びこれらの混合物から選択される。
【0032】
支持材の調製は、例えば、水、酸、バインダー、滑剤、分散剤、細孔形成剤、ドープ剤、改質剤などの任意の他の成分を、例えば、Introduction to Principles of Ceramic Processing,J.Reed,Wiley Interscience(1988)に記載されているような加工に必要な量又は所望の任意の量で、更に含むことができる。
【0033】
この支持材は、多孔質であることが望ましく、0.5m2/g以上(より好ましくは0.7〜10m2/g)の実測表面積と、0.3cc/g以上(より好ましくは0.4cc/g〜2.0cc/g)の実測細孔体積と、1〜50ミクロンのメジアン細孔径とを有する。
【0034】
本明細書中で使用する「表面積」は、Journal of the American Chemical Society 60(1938)pp.309〜316に記載されているように、窒素によるBET(Brunauer、Emmett及びTeller)法によって測定される表面積を指す。「総細孔体積」は、支持材の細孔体積を意味し、一般には水銀ポロシメトリー法によって測定される。「気孔率」は、材料の総体積に対する非固体体積の割合である。当業者は、水銀ポロシメトリー法又は吸水率によって測定される総細孔体積を用いて、前記気孔率を推定することができる。「メジアン細孔径」とは、細孔径分布において測定された成型多孔体の総細孔体積の半分に当たる点に対応する細孔径を意味する。
【0035】
支持材/触媒は、任意の所望の好適な形状とすることができる。通常の市販の固定床エチレンオキシド反応器は、一般的には、2〜7cmの外径及び4〜14mの長さを有する(好適なシェル中において)複数本の平行な細長い管の形態である。このような固定床反応器を使用する場合、前記支持材/触媒は、0.1インチ(0.25cm)〜0.8インチ(2cm)の直径を有する、例えば、球形、ペレット、環形、錠剤などの丸い形状に形成されることが望ましい。
【0036】
支持材、マンガン、少なくとも1種類の追加のアルカリ金属及び/又は助触媒に加えて、エポキシ化触媒は、その上に付着させた少なくとも1種類の触媒種を含む。前記支持材に有利に担持可能な触媒種の非限定的な例としては、金属、固体状化合物、分子触媒、酵素、及びこれらの組合せが挙げられる。一般に、エチレンのエポキシ化に有用な触媒は、触媒種として銀を用い、また、この銀が、本発明の幾つかの実施形態では好ましい。
【0037】
酸素又は酸素含有気体による、例えば、エチレンなどの対応するアルキレンオキシドへの直接酸化を触媒することのできる任意の量の銀を使用することができる。一般に、支持材は、該支持材上に銀を提供し得る十分な1種類又は複数種類の銀化合物溶液が、触媒の重量を基準にして、5%を超える、10%を超える、15%を超える、20%を超える、25%を超える、好ましくは27%を超える、より好ましくは30%を超える量で、含浸される。使用される銀の量は、特に限定されないが、支持材に対して提供される銀の量は、一般的には、触媒の重量を基準にして、70重量%未満、より好ましくは50重量%未満とすることができる。
【0038】
密度に関しては、例えば、銀などの触媒種、支持材の表面積を基準にして、0.07g/m2以上にも及ぶ、0.2g/m2にも及ぶ又は0.3g/m2以上にも及ぶ量で存在し得る。
【0039】
得られる触媒中の銀の粒径は重要あるが、その範囲は狭くない。好適な銀の粒径は、直径が10Å〜10,000Åの範囲とすることができる。好ましい銀の粒径は、直径が100Åを超え、5,000Å未満までの範囲にある。銀は、成型多孔体内で及び/又は至るところで及び/又はその上で、比較的均一に分散していることが望ましい。
【0040】
含浸液は、例えば、銀などの触媒種を含むことができ、また、担体上に含浸させた助触媒のみを含むことが望ましい。本発明の目的上、必要なことは、少なくとも1回の含浸工程において、マンガンが、任意の他の望ましい/必要とされるアルカリ金属及び/又は助触媒とは別に含浸されることである。マンガンを含む含浸液中に銀を含有させる場合、その銀は、当業界において公知の任意の溶媒又は錯化/可溶化剤に溶かして提供することができる。そのような例としては、これらに限定されないが、乳酸、アンモニア、エチレングリコールなどのアルコール、アミン及びアミンの混合物が挙げられる。含浸液の一つの具体例は、シュウ酸及びエチレンジアミンの溶液中に銀が約30重量%となるように溶解した酸化銀と、所望量のマンガンとを含み得る。他の実施形態では、マンガンは、単独で、所望の溶媒中に所望量で溶解させることもできる。
【0041】
支持体に、触媒種と、少なくとも1種類の他のアルカリ金属及び/又は助触媒を含浸させる順序は、少なくとも1回の含浸工程において、或る量のマンガンが、望ましくは支持体上に付着される任意の他のアルカリ金属又は助触媒と別に付着される限り、変えることができる。幾つかの実施形態では、更なる所定量のマンガンを、望ましくは支持体上に付着される所定量の触媒種及び/又は他のアルカリ金属若しくは助触媒と組み合わせて、前記支持体上に付着させることが望ましい。
【0042】
例えば、最初に銀を別に付着させ、続いてマンガンを単独で含浸させ、更に任意の他の所望のアルカリ金属及び/又は助触媒を同時に又は順次含浸させることができる。或いは、或る量の触媒種及び或る量のマンガンを1回の含浸で付着させることもでき、また、更なる含浸工程において、更なる所定量の触媒種及びマンガンを、1種類又は複数種類のアルカリ金属及び/又は助触媒などと共に付着させることもできる。或いは、或る量のマンガンを支持体上に含浸させ、続いて所望の触媒種と、少なくとも1種類のアルカリ金属及び/又は助触媒とを含浸させることもできる。他の実施形態では、これらの工程を逆にすることができる。すなわち、支持体に、少なくとも1種類のアルカリ金属及び/又は助触媒及び/又は触媒種を含む溶液を含浸させ、次いでマンガンを含む溶液を含浸させることができる。マンガンを含むこの含浸液は、或る量の触媒種を含んでいても、また含んでいなくてもよい。また、触媒種並びに他のアルカリ金属及び/又は助触媒の含浸は、同時に又は順次行うこともできる。2回以上の含浸が採用される場合は、含浸される担体を、一般には乾燥するか、又は連続する各含浸の間で焼成及び/又は焙焼して、前記支持体上への金属の付着を確実にする。
【0043】
一実施形態では、2段階含浸が採用される。第一段階では、溶媒又は可溶化剤を含む溶液と、銀溶液と、マンガンとを、支持体に含浸させる。その後、その含浸させた担体を、空気下(又は、窒素、ヘリウム及び/又は蒸気などの他の雰囲気下)で、0.01時間〜12時間に亘る時間、200℃〜600℃の範囲の温度及び大気圧において焼成する。任意に、焼成前に溶媒を除去するために、前記含浸させた支持体をオーブン中で乾燥することもできる。第二段階では、追加の銀化合物と、促進量の少なくとも1種類のアルカリ金属及び/又は助触媒とを含有する溶液を、前記含浸させた支持体に含浸させる。次いで、その支持体を、空気下で、0.01時間〜12時間に亘る時間、200℃〜600℃の範囲の温度及び大気圧において焼成又は焙焼する。
【0044】
本明細書中の方法に従って調製される触媒は、エポキシ化方法で用いると、従来の方法に従って製造される触媒よりも、1%以上にも及ぶ高い効率を示すことが期待される。このような方法は、一般的に、触媒を、所望のアルキレンと、酸素供給源と、一般には1種類又は複数種類の気相助触媒とを含む供給物流に曝す工程を伴う。
【0045】
気相エポキシ化反応助触媒は、所望のアルキレンオキシドの形成に向けて速度を速めること、及び/又は所望のアルキレンオキシドの形成と比較して二酸化炭素と水を形成するアルキレン又はアルキレンオキシドの酸化を抑えることによって、エポキシ化触媒の効率及び/又は活性を増加させることができると考えられる。多くのこのような助触媒が知られており、それらのいずれかを本発明の方法に使用することができる。一般に、エポキシ化反応に有用な気相助触媒としては、有機化合物が挙げられ、また、具体的には、例えば、臭化物や塩化物などの有機ハロゲン化物が挙げられる。「助触媒」は、時には「抑制剤」又は「調整剤」と呼ばれる。
【0046】
これらの中では、塩化及び臭化炭化水素が特に好ましい。それらの例としては、これらに限定されないが、塩化メチル、塩化エチル、二塩化エチレン、二臭化エチレン、塩化ビニル又はこれらの任意の組合せが挙げられる。本発明に用いる特に好ましい気相エポキシ化反応助触媒は、塩化エチル及び二塩化エチレンである。
【0047】
例として、塩化炭化水素気相助触媒を使用する場合、所望のアルキレンオキシドに関して効率及び/又は活性を高める助触媒の能力は、例えば、その触媒上に又はその触媒より上の気相中に、塩素原子又は塩素イオンなどの特定の塩素種を付着させることによって気相助触媒が触媒の表面を塩素化する程度に依存するものと考えられる。しかしながら、塩素原子を欠く炭化水素は、触媒から塩化物を引き抜くため、前記気相助触媒によってもたらされるすべての増強作用を損なうと考えられる。この現象の考察については、Bertyの論文、「Inhibitor Action of Chlorinated Hydrocarbons in the Oxidation of Ethylene to Ethylene Oxide」,Chemical Engineering Communications,Vol.82(1989),229〜232、及びBertyの論文、「Ethylen Oxide Synthesis」,Applied Inustrial Catalysis,Vol.1(1983),207〜238中に見出すことができる。エタン又はプロパンなどのパラフィン系化合物は、触媒から塩化物を引き抜くことに対して、特に効果的であると考えられる。しかしながら、エチレン及びプロピレンなどのオレフィンも、触媒から塩化物を引き抜くように作用すると考えられる。これらの炭化水素の幾つかは、エチレン供給材料中の不純物として導入されることもあり、また、他の理由(再循環の流れの使用など)で存在することもある。一般に、供給材料中のエタンの好ましい濃度は、存在しても、0〜2モル%である。反応器供給物流中の気相助触媒とハロゲン化されていない非促進性炭化水素の競合効果を考慮すると、「総ハロゲン化効力値(overall halogenating effectiveness value)」を規定するのが便利である。これは有機塩化物の場合、触媒をハロゲン化(又は塩化)する際の促進性及び非促進性気相種の正味の効果を表す「総塩化効力値(overall chloriding effectiveness value)」である。有機塩化物の気相助触媒の場合、その総塩化効力は無次元量Z*として定義され、次式
(1) Z*=塩化エチル当量(ppmv)/エタン当量(モル%)
によって表される。式中、塩化エチル当量は、供給物流中の有機塩化物の濃度で、反応器供給物流中に存在するその有機塩化物とほぼ同じ触媒塩化効力をもたらす塩化エチル濃度(ppmv単位)であり、また、エタン当量は、供給物流中の炭化水素を含有する非塩化物の濃度で、供給物流中の炭化水素を含有する非塩化物とほぼ同じ触媒脱塩化効力をもたらすエタン濃度(モル%単位)である。
【0048】
塩化エチレンが、反応器供給物流中に存在する唯一の気体塩化物含有助触媒である場合は、塩化エチル当量は、ppmv単位の塩化エチル濃度である。別の塩素含有助触媒(特に、塩化ビニル、塩化メチル又は二塩化エチレン)を単独で又は塩化エチルと組み合わせて使用する場合は、塩化エチレン当量は、ppmv単位の塩化エチル濃度と、その他の気体塩化物含有助触媒の濃度(塩化エチルに対して、それらの助触媒としての効力が補正されたもの)の和である。非塩化エチル助触媒の相対的な効力は、塩化エチルをその他の助触媒と置き換え、塩化エチルによってもたらされるものと同レベルの触媒性能を得るのに必要な濃度を決定することによって、実験的に測定することができる。更なる例示的手段として、1ppmvの塩化エチルによってもたらされる触媒性能と比べて同等の効力を実現するための反応器入口における二塩化エチレンの必要濃度が、0.5ppmvである場合、1ppmvの二塩化エチレンに相当する塩化エチルは、2ppmvの塩化エチルとなるはずである。1ppmvの二塩化エチレンと1ppmvの塩化エチルを有する仮想上の供給材料の場合、Z*の分子における塩化エチル当量は、3ppmvになる。更なる例として、塩化メチルは、塩化エチルの10分の1の塩化効力を有することが幾つかの触媒について見出されている。したがって、そのような触媒の場合、ppmv単位の所与の濃度の塩化メチルに対する塩化エチル当量は、0.1×(ppmv単位の塩化メチル濃度)である。
【0049】
エタン当量は、反応器の供給物流中のモル%単位のエタンの濃度に、触媒から塩化物を除去する効果のあるその他の炭化水素の濃度(エタンと比較してそれらの脱塩素化の効力が補正されたもの)を加えたものである。エチレンとエタンの相対的効力は、同じエチレン濃度であるが特定の塩化エチル当量濃度を有し、かつ、エタンを含まない同一の供給材料と比べて、エチレンとエタンの両方を含む供給材料が同じレベルの触媒性能をもたらす入口における塩化エチル当量濃度を求めることによって、実験的に測定することができる。
【0050】
更なる例示的手段として、30.0モル%のエチレン濃度及び0.30モル%のエタン濃度を含む供給材料組成に関して、6.0ppm塩化エチル当量の触媒性能が、類似の供給材料組成を有するものであるがエタンを欠く3.0ppm塩化エチル当量と、同レベルの触媒性能をもたらすことが分かっている場合は、30.0モル%エチレンに対するエタン当量は、0.30モル%になる。30.0モル%エチレン及び0.30モル%エタンを有する入口の反応器供給材料の場合は、エタン当量は0.6モル%になる。別の例示的な幾つかの触媒の場合は、メタンは、エタンの500分の1の脱塩化効力を有することが分かっている。したがって、そのような触媒の場合、メタンに対するエタン当量は、0.002×(モル%単位のメタン濃度)である。30.0モル%エチレン及び0.1モル%エタンを有する一般的な入口の反応器供給材料の場合は、エタン当量は、0.4モル%になる。
【0051】
エタン及びエチレン以外の炭化水素の相対的効力は、2つの異なる供給エタン濃度で、関心のある炭化水素をその供給濃度で含む供給材料が同じ触媒性能を達成するのに必要な入口の塩化エチル当量濃度を求めることによって、実験的に測定することができる。炭化水素化合物が極めて小さい脱塩化効果を有し、かつ、低濃度で存在することも分かっている場合は、前記Z*の計算におけるエタン当量濃度への影響は、無視できるはずである。
【0052】
したがって、上記の関係を考慮すると、反応器の供給物流が、エチレン、塩化エチル、二塩化エチレン、塩化ビニル及びエタンを含む場合、その工程の総塩化効力値は、
(2) Z*=(ECL+2*EDC+VCL)/(C26+0.01*C24
として定義することができる。式中、ECL、EDC、及びVCLは、反応器の供給物流中のそれぞれ塩化エチル(C25Cl)、二塩化エチレン(Cl−CH2−CH2−Cl)及び塩化ビニル(H2C=CH−Cl)のppmv単位の濃度である。C26及びC24は、反応器供給物流中のそれぞれエタン及びエチレンのモル%単位の濃度である。
【0053】
単一の塩化炭化水素助触媒は、本発明の幾つかの実施形態で使用できるが、エポキシ化反応条件下での触媒との接触時には、様々な化合物が形成される可能性があるため、そのようなものが、その工程中に存在することを当業者は認識するはずである。したがって、本発明の方法において、一つの又は或る特定の気相助触媒が最初に使用されるとしても、特許請求の範囲は、その導入された(1種類又は複数種類の)助触媒だけでなく、本方法を適用する過程で形成される可能性のあるその/それらの反応生成物の一部又は全部も含むものとして考えられると理解される。
【0054】
本発明の適用によって特定の利益を見出すことのできる触媒の部類としては、オレフィンのエポキシ化、具体的には、アルキレン又はアルキレンの混合物のエポキシ化に有用なものが挙げられる。多くの参考文献がこれらの反応について記述しており、それらの代表例としては、Lie他の米国特許第6,511,938号明細書、Bhasinの米国特許第5,057,481号明細書、及びKirk−Othmer’s Encyclopedia of Chemical Technology,4th ed.(1994)Volume 9.pp.915〜959がある。本発明をそれほど限定するものではないが、簡潔性及び例示目的のために、本発明の方法の応用を、エチレンのエポキシ化に有用な触媒に関し、また、その観点から、更に述べる。
【0055】
そして、驚くべきことに、本明細書中で述べる方法に従って調製されるエポキシ化触媒は、従来の工程に従って調製されるエポキシ化触媒よりも、1%以上にも及ぶ高い効率を示すことができることを発見した。したがって、本発明の方法は、顕著なコストの削減及び時間の節約をもたらす。更なるコスト削減は、これらの方法により製造される触媒の高い効率によってもたらされる原料の節減という形で、実現することができる。
【0056】
したがって、本発明は、アルキレンのエポキシ化方法も提供する。化学工学分野における当業者は、このような方法に精通している。一つの具体例としての方法が、Kirk−Othmer’s Encyclopedia of Chemical Technology,4th ed.Volume 9.1994,pp.925〜939に記載されている。
【0057】
一般的には、エポキシ化反応を、例えば、固定床反応器、連続撹拌槽反応器(CSTR)及び流動床反応器などの任意の好適な反応器内で行うことができ、それらの種々様々なものが当業者に知られており、本明細書中で詳細に述べる必要はない。また、未反応供給材料を再循環すること、シングルパス方式を採用すること、又は直列配置の反応器によりエチレン転化率を増大させる逐次反応を用いることの望ましい状況も、当業者が容易に決めることができる。選択される特定の動作モードは、一般にプロセスの経済性によって決定される。
【0058】
エポキシ化反応は、一般に発熱性である。したがって、冷却システム(例えば、伝熱流体又は沸騰水などの冷却流体を伴う冷却ジャケット又は流体回路)を設けて、反応器の温度を調節することができる。伝熱流体としては、テトラリン(1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン)などの幾つかのよく知られた伝熱流体のいずれかを用いることができる。沸騰水で冷却される反応器において、冷却液は、反応器の冷却側、最も一般的には外郭側に、液体の水として導入される。その水は、冷却側を通って流れるにつれて、工程側から熱を取り除き、その水の一部は蒸発して蒸気になる。冷却液は、水と蒸気の混合物として反応器の冷却側から出る。反応器を出た蒸気は、反応器から熱を除去することによって凝縮し、循環して冷却液側の入口に戻る。
【0059】
反応器における冷却液の温度は、その水の沸点によって決まり、そして、その沸点は、反応器が動作する圧力によって決まる。圧力は、反応器の冷却側を出る蒸気−水混合物から幾らかの圧力を放出する通気弁によって制御される。一般には、閉ループ制御器が使用され、通気弁を自動的に調節して所望の温度を維持するのに必要な圧力に保持することによって、冷却液の温度を調節する。
【0060】
オレフィン(アルキレン)、好ましくはエチレンの、オレフィンオキシド、好ましくはエチレンへの転化は、例えば、アルキレン(例えばエチレン)と、酸素又は酸素含有気体と、百万分率レベルの気相助触媒とを含有する供給物流を、触媒を入れた反応器に200℃〜300℃の温度と、所望の質量速度及び製造性に応じて5気圧(506kPa)から30気圧(3.0MPa)の間で変更可能な圧力で、連続的に導入することによって行うことができる。酸素は、空気又は純粋酸素、或いは酸素を多く含む空気などの酸素を含有する流れとして、前記反応に供給することができる。得られるアルキレンオキシド、好ましくはエチレンオキシドは、通常の方法を用いて反応生成物から分離され、回収される。
【0061】
本方法では、任意のアルキレンを使用することができ、エポキシ化することのできる望ましいアルキレンの例としては、これらに限定されないが、1,9−デカジエン、1,3−ブタジエン、2−ブテン、イソブテン、1−ブテン、プロピレン、エチレン又はこれらの組合せが挙げられる。好ましくは前記アルキレンは、エチレンを含む。
【0062】
一般に、エポキシ化反応は、所望のアルキレンと酸素とを含む供給材料を、エポキシ化触媒と接触させた状態で、望ましくは気相中において、行うことができる。多くの場合、この触媒は、固体材料として存在し、また、より好ましくは所望の反応器内で充填床として存在することもできる。充填床中の触媒の量は、10kg以上、20kg以上、102〜107kg、又は103〜106kgとすることができる。
【0063】
多くのエポキシ化反応は、連続工程として行われ、それはここでも検討される。そのような工程において望ましい反応器は、一般に、反応器及び/又は触媒床内に、工程温度を制御するための熱交換機を備えるものである。
【0064】
供給材料は、例えば、二酸化炭素、不活性気体、飽和炭化水素などを含む、1種類又は複数種類の任意成分を更に含むことができる。特に二酸化炭素は、当該二酸化炭素が多くのエポキシ化方法の副産物であるがゆえに、供給材料の再循環が行われるような場合に存在するものと予想される。これらの実施形態では、二酸化炭素は、触媒性能、特に活性に悪影響をもたらすので、再循環気体中の二酸化炭素の少なくとも一部は、例えば、Kirk−Othmer’s Encyclopedia of Chemical Technology,4th ed.(1994)Volume 9,pp.915〜959に記載される方法などの通常の方法によって除去される。不活性気体としては、窒素、アルゴン又はこれらの混合物が挙げられる。メタンなどの飽和炭化水素は、反応器内の熱を制御するために用いることができ、また、供給材料中のより高い酸素濃度を可能にする。
【0065】
一実施形態では、アルキレンの酸化方法は、アルケン、酸素及び二酸化炭素を含む反応混合物の供給材料を、担体、並びにその担体上に付着させた銀、マンガン及び少なくとも1種類の追加の助触媒及び/又はアルカリ金属を含む、本方法に従って調製した触媒と接触させる工程を含み、前記二酸化炭素は、すべての反応混合物を基準にして、多くても3モル%の量で、前記反応器の混合物中に存在し、また、前記少なくとも1種類の追加の助触媒及び/又はアルカリ金属は、ナトリウム、セシウム、リチウム、硫酸塩及びこれらの混合物を含む。
【0066】
エポキシ化反応器の動作中、該反応器の入口における圧力は、一般に4000kPa未満、又は3500kPa未満とすることができ、或いは、好ましくは絶対圧2500kPa未満とすることができ、また、ほとんどの例では、絶対圧1000kPa以上とすることができる。気体空間速度(gas hourly space velocity)(「GHSV」)は、1時間当たり1単位体積の充填触媒床を通り過ぎる標準状態の温度及び圧力(0℃、1気圧)の気体の単位体積である。好ましくは充填触媒床上を覆う気相中でエポキシ化反応を行う、これらの実施形態では、その始動期におけるGHSVは、1時間当たり2000〜10000であることが望ましい。
【0067】
動作中、供給材料の組成は、実質的に不変のまま維持することができる。より具体的には、反応器入口の酸素濃度は、例えば8モル%で、実質的に不変のまま維持できることが望ましく、また、反応器入口のアルキレン濃度は、例えば30モル%で、実質的に不変のまま維持できることが望ましく、さらに、前記入口の二酸化炭素濃度も、例えば3モル%で、実質的に不変のまま維持することができ、さらにまた、総触媒塩化効力値は、例えばZ*として表した場合に3で、実質的に不変のまま維持することができる。
【0068】
当業者であれば容易に理解するはずであるが、エポキシ化方法の他のパラメータも、昇温及び/又は降温状態の期間中にアルキレンオキシドの生成における所望の速度を得るために、調節することができる。例えば、反応器圧力及び/又は空間速度を、特定の運転温度において特定の生成速度が得られるように、入口供給材料の組成と共に又はその代わりに、変更することができる。
【0069】
或いは、幾つかの実施形態では、供給材料の組成を、エポキシ化方法の間に変更することもできる。所望であれば、反応器入口の酸素濃度は、安全な運転条件及び所望のアルキレンオキシドの生成が維持される限り、例えば1モル%以上、2モル%以上、又は3モル%も下げることができる。入口の二酸化炭素濃度は、有利には、例えば0.5モル%以上、又は1モル%以上も上げることができるが、幾つかの例においては、このような増加量は、エポキシ化方法の設計上の制限を受ける。総触媒塩化効力値は、有利には、例えば0.5以上、又は1.0以上のZ*単位も下げることができるが、幾つかの例においては、このような減少量は、前記方法の設計上、再循環量によって制限される。前記入口のアルキレン濃度は、実質的に維持することができ、或いは昇温状態の期間と同時に、5モル%、10モル%又は15モル%も下げることができる。いずれの場合でも、これらの調節又はこれらの組合せによって、所望レベルのアルキレンオキシドをもたらすことが望ましい。
【0070】
本発明のエポキシ化方法によって製造されるアルキレンオキシドは、一般には加工されて、例えば1,2−ジオール、1,2−ジオールエーテル、1,2−カーボナート及びアルカノールアミンなどの更なる下流製品を提供することができる。本発明は、従来の方法によって製造される触媒が示す効率よりも、1%以上高い効率を示すエポキシ化触媒をもたらすので、それによって得られる改良点が繰り越されて、更に下流の工程及び/又は製品にも改良をもたらすものと考えられる。したがって、1,2−ジオール、1,2−カーボナート、1,2−ジオールエーテル及びアルカノールアミンの改良された製造方法も、本明細書において提供される。
【0071】
アルキレンオキシドの1,2−ジオール又は1,2−ジオールエーテルへの転化は、例えば、好適には酸性又は塩基性触媒の存在下で、所望のアルキレンオキシドを水と反応させる工程を含み得る。例えば、1,2−ジオールエーテルに優先して1,2−ジオールを選択的に生成させるのに、前記アルキレンオキシドを、例えば、全反応混合物を基準にして0.5〜1.0重量%の硫酸などの酸触媒の存在下、1バールの絶対圧で50〜70℃の液相反応において、或いは、好ましくは触媒不在の下、130〜240℃及び20〜40バールの絶対圧の気相反応において、10倍モル過剰の水と反応させることができる。水の割合が低い場合は、反応混合物中の1,2−ジオールエーテルの割合が増加することになる。このようにして生成される1,2−ジオールエーテルは、ジエーテル、トリエーテル、テトラエーテル又はその他のマルチエーテルを含み得る。或いは1,2−ジオールエーテルは、アルキレンオキシドをメタノール又はエタノールなどのアルコールで転化させることによって又は少なくとも一部の水をアルコールと置き換えることによって、調製することができる。得られた1,2−ジオール及び1,2−ジオールエーテルは、食品、飲料、タバコ、化粧品、熱可塑性ポリマー、硬化型樹脂系、洗剤、熱伝達システムなどの産業における、種々様々な最終用途に用いることができる。
【0072】
本発明に従って製造される触媒を用いて製造されるアルキレンオキシドのアルカノールアミンへの転化は、例えば、アルキレンオキシドをアンモニアと反応させる工程を含み得る。無水又は水性アンモニアを使用することができるが、モノアルカノールアミンの製造には、無水アンモニアが有利に働き、それが好ましい場合は、使用することができる。得られたアルカノールアミンは、例えば、天然ガスの処理に用いることができる。オレフィンオキシドは、該オレフィンオキシドを二酸化炭素と反応させることによって、対応する1,2−カーボナートに転化することができる。所望であれば1,2−ジオールは、前記1,2−カーボナートを水又はアルコールと引き続き反応させて1,2−ジオールを形成させることによって、調製することもできる。適用可能な方法については、米国特許第6080897号明細書が参照される。
【実施例】
【0073】
下記の例の中に記載される触媒は、表1に示す下記特性を有する支持体上で、調製される。
【0074】
【表1】
【0075】
例1
触媒1(比較)は、下記に述べるように調製し、すべての助触媒を二回目の銀の含浸の間に加えた。担体A(10.30g)の一回目の含浸は、米国特許出願公開第2009/177000号明細書中の「Catalyst Preparation」の欄に記載されているように調製した約30mLの銀−アミン−シュウ酸溶液(銀26.6重量%)を使用して行った。
【0076】
より具体的には、担体を、真空下で担体に含浸させるための栓を備えたほぼ標準サイズのガラス容器において含浸させた。含浸液を留めるために用いる分液漏斗を、含浸用容器の頂部に、ゴム栓を通して挿入した。担体を含有する含浸用容器を、約1〜2水銀インチ絶対圧まで15分間排気した後、前記分液漏斗と前記含浸用容器の間にある栓を開くことによって、含浸液を担体にゆっくりと加えた。すべての溶液を含浸用容器に移した後(約15秒間)、真空を解放して、圧力を大気圧に戻した。前記溶液の添加に続いて、担体を、周囲条件で15分間、前記含浸液に浸漬したままにし、その後、過剰の溶液を15分間排出させた。
【0077】
次いで、この銀を含浸した担体を、下記のように焙焼して、触媒表面で銀の還元を行った。この湿潤した含浸担体の丸剤を、ステンレス鋼製ワイヤの3mmの開口を有する網上に、単層の状態に広げて、ホットエアガン(Steinel HL16105)に接続したノズル上に置いた。焙焼の手順は、2段階からなる。第一段階では、含浸した支持体を、75LPM/in2の空気流により300℃の温度で1.5分間焙焼し、次いで第二段階では、焙焼を完結させるために、温度を2分間で400℃に上昇させた。第二段階の焙焼の間の空気流は、130LPM/in2とした。焙焼の完了後、触媒を外気中で室温まで冷却し、計量した。
【0078】
次いで、この焙焼した触媒丸剤の二回目の含浸を、新鮮な銀−アミン−シュウ酸溶液と一回目の含浸からの排出溶液とを組み合わせてなる銀−アミンシュウ酸溶液40.7gに、下記の表2に示した量の助触媒溶液を加えることにより調製した溶液を用いて行った。Mn(NO32溶液を、銀−アミン−シュウ酸溶液に加える前に、(NH42EDTAと錯体を形成させた。この二回目の含浸における含浸、排出及び焙焼の各工程を、一回目の含浸と同様に行った。銀の吸収量及び加えた助触媒溶液の量に基づいて、排出及び焙焼の後に算出した触媒1の組成を表2に示す。
【0079】
触媒2(本発明)は、触媒1と同一の目標配合処方により調製した。前記触媒1との唯一の違いは、(NH42EDTAとの錯体形成後のマンガン助触媒を、一回目のAg含浸の間に、銀と共に加えたことである。その他の助触媒は、すべて二回目のAg含浸の間に加えた。銀の吸収量及び加えた助触媒溶液の量に基づいて算出した触媒2の最終組成を、下記の表2に示す。
【0080】
別添の図1は、エチレンエポキシ化反応における触媒1と触媒2の性能の比較を示す。前記触媒を、1/4インチ(外径)のステンレス鋼製反応器の管(単流操作)中で試験した。0.7gの量の粉砕した(30/50メッシュサイズの)触媒を、同じ粒径画分の重量単位で1:1のDenstone(Norton Inc,USAから入手可能な不活性のもの)を用いて完全に混合し、前記反応器の管に充填した。供給材料組成は、30モル%のエチレン、8モル%の酸素、1.5モル%の二酸化炭素、0.7モル%のエタン、及び様々なppmvレベルの塩化エチルとした。総入口気体の流速は、未粉砕触媒について計算される10000h-1の気体空間速度(a gas hourly space velocity)が得られるように調整した。反応器圧力は、約1950kPaのゲージ圧とした。前記触媒を、同一供給材料組成及び240℃の一定温度において作用させた。Z*を、供給材料中の塩化エチル(ECL)濃度を変えることによって変動させた。図1中のプロットは、Z*の変動に伴う出口EO濃度及び酸素効率の変化を示す。本発明の触媒(触媒2)で得られた最大(ピーク)酸素効率は、比較の触媒(触媒1)で得られたものよりも約1%高い。
【0081】
例2
触媒3(本発明)は、前記触媒1と同一の目標配合処方により調製した。前記触媒1との唯一の違いは、ナトリウム助触媒を、一回目のAg含浸の間に、銀溶液に加えたことである。その他の助触媒は、すべて二回目のAg含浸の間に加えた。含浸工程の間に銀−アミ−シュウ酸溶液に加えた助触媒溶液の量と、銀の吸収量及び加えた助触媒の量に基づいて最終的に算出した組成とを、表2に示す。
【0082】
図2は、エチレンエポキシ化反応における触媒1と触媒3の性能の比較を示す。供給材料のZ*を、例1で記載したように変動させて、その反応を観察した。本発明の触媒(触媒3)で得られた最大酸素効率は、比較の触媒(触媒1)で得られたものよりも0.5〜0.6%高い。
【0083】
例3
触媒4(比較)は、前記触媒1と同一の目標配合処方により調製した。前記触媒1との唯一の違いは、ナトリウム助触媒と、((NH42EDTAと錯体を形成させた)マンガン助触媒とを、一回目のAg含浸の間に、溶液に加えたことである。残りの助触媒は、二回目のAg含浸の間に銀−アミン−シュウ酸溶液に加えた。前記含浸工程の間に銀−アミン−シュウ酸溶液に加えた助触媒溶液の量と、銀の吸収量及び加えた助触媒溶液の量に基づいて算出した最終組成とを、表2に示す。
【0084】
図3は、エチレンエポキシ化反応における触媒1と触媒4の性能の比較を示す。供給材料のZ*を、例1で記載したように変動させて、その反応を観察した。触媒4で得られた最大酸素効率は、驚くべきことに、触媒1において得られたものよりも1.3%低い。
【0085】
一回目のAg含浸におけるMn又はNaのいずれかの添加は、例1及び2で例示したように効率の向上をもたらしたが、例3に示すように、一回目のAg含浸においてMnとNaを共に添加することは、効率にとって有害であった。
【0086】
例4
触媒5(比較)は、助触媒をすべて二回目の銀含浸の間に加えて調製した。二回目の含浸の間に銀−アミン−シュウ酸溶液に加えた助触媒溶液の量と、銀の吸収量及び加えた助触媒溶液の量に基づいて算出した最終組成とを、表2に示す。
【0087】
触媒6(本発明)は、触媒5と同一の目標配合処方により調製した。前記触媒5との唯一の違いは、ナトリウム助触媒を、一回目のAg含浸の間に、銀溶液に加えたことである。その他の助触媒は、すべて二回目のAg含浸の間に加えた。前記触媒6の算出された最終組成を表2に示す。
【0088】
図4は、エチレンエポキシ化反応における触媒5と触媒6の性能の比較を示す。供給材料のZ*を、例1で記載したように変動させて、その反応を観察した。本発明の触媒(触媒5)で得られた最大酸素効率は、比較の触媒(触媒5)で得られたものよりも0.5〜0.6%高い。
【0089】
例5
触媒7(本発明)は、触媒1と同一の目標配合処方により調製した。前記触媒1との唯一の違いは、ナトリウム助触媒及びリチウム助触媒を、一回目のAg含浸の間に銀溶液に加えたことである。その他の助触媒は、二回目のAg含浸の間に加えた。含浸工程の間に銀−アミン−シュウ酸溶液に加えた助触媒溶液の量と、銀の吸収量及び加えた助触媒溶液の量に基づいて算出した触媒7の最終組成とを、表2に示す。
【0090】
図5は、エチレンエポキシ化反応における触媒1と触媒7の性能の比較を示す。供給材料のZ*を、例1で記載したように変動させて、その反応を観察した。触媒7で得られた最大酸素効率は、触媒1において得られたものよりも約1.4%高い。
【0091】
二回目のAg含浸におけるLi及びNaの添加は、例5で例示したように効率の向上をもたらしたが、例3に示したように、一回目のAg含浸においてMnとNaを共に添加することは、効率にとって有害であった。
【0092】
例6
触媒8(本発明)は、触媒1と同一の目標配合処方により調製した。前記触媒1との唯一の違いは、マンガン助触媒を、Ag溶液の含浸の前に、露出した担体に加えたことである。この触媒の調製は、下記の工程からなる。Mn溶液は、0.0348gの硝酸第一マンガン溶液(溶液1g当たりMn 0.1552g)を30gの脱イオン水に加えることにより調製した。上記溶液を用いて、10.13gの担体(支持体番号A)に真空含浸した。過剰の溶液を排出した後、担体を焙焼した。次いで、25.60重量%のAgを含有する銀−アミン−シュウ酸溶液を用いて、二回目の真空含浸を行った。Ag含浸後の触媒の重量は13.16g、すなわち23.07%のAg装填量であった。次いで、42.3gの銀−アミン−シュウ酸溶液に、0.0902gのCsOH溶液(溶液1g当たりCs 0.4564g)と、0.0944gの酢酸リチウム溶液(溶液1g当たりLi 0.023g)と、0.0375gの酢酸ナトリウム溶液(溶液1g当たりNa 0.071g)と、0.8042gの過レニウム酸アンモニウム溶液(溶液1g当たりRe 0.0359g)と、0.0366gの硫酸アンモニウム溶液(溶液1g当たりSO4 0.2789g)と、0.0357gの硝酸第一マンガン溶液(溶液1g当たりMn 0.1552g)と、を加えて調製した溶液を用いて、焙焼した触媒丸剤のもう一回の含浸を行った。この含浸工程における含浸、排出及び焙焼の各工程は、前回の含浸と同じように行った。排出及び焙焼の後に算出した最終触媒重量は15.79gであった。銀の吸収量及び加えた助触媒溶液の量に基づいて算出した触媒8の組成は、Ag:35.71重量%、Cs:627ppm、Li:33ppm、Na:41ppm、Re:439ppm、SO4:155ppm、Mn:82ppmであった。
【0093】
図6は、エチレンエポキシ化反応における触媒1と触媒8の性能の比較を示す。供給材料のZ*を、例1で記載したように変動させて、その反応を観察した。触媒8で得られた最大酸素効率は、触媒1において得られたものよりも1%高い。
【0094】
例7
触媒9(比較)は、Agの含浸を一回だけ行って調製した。18.76重量%のAgを含有する42.0gの銀−アミン−シュウ酸溶液に、0.0541gのCsOH溶液(溶液1g当たりCs 0.4564g)と、0.0605gの酢酸リチウム溶液(溶液1g当たりLi 0.023g)と、0.0245gの酢酸ナトリウム溶液(溶液1g当たりNa 0.071g)と、0.4823gの過レニウム酸アンモニウム溶液(溶液1g当たりRe 0.0359g)と、0.0212gの硫酸アンモニウム溶液(溶液1g当たりSO4 0.2789g)と、0.0238gの硝酸第一マンガン溶液(溶液1g当たりMn 0.1552g)と、0.0947gのジアンモニウムEDTA溶液(溶液1g当たりEDTA 0.4128g)と、を加えて調製した溶液を用いて、10.34gの担体の丸剤(支持体番号A)に含浸させた。含浸、排出及び焙焼の各工程は、前回の調製と同じように行った。排出及び焙焼の後、最終触媒重量は12.30gであった。銀の吸収量及び加えた助触媒溶液の量に基づいて算出した触媒9の組成は、Ag:15.94重量%、Cs:499ppm、Li:28ppm、Na:35ppm、Re:350ppm、SO4:120ppm、Mn:75ppmであった。
【0095】
触媒10(本発明)は、前記触媒9と同一の目標配合処方により調製した。前記触媒9との唯一の違いは、マンガン助触媒を、Ag及び他の助触媒の含浸の前に、担体に加えたことである。この触媒の調製は、下記の工程からなる。Mn溶液は、0.0334gの硝酸第一マンガン溶液(溶液1g当たりMn 0.1552g)を30gの脱イオン水に加えることにより調製した。上記溶液を用いて、10.26gの担体(支持体番号A)に真空含浸し、過剰の溶液を排出し、丸剤を焙焼した。続いて、18.76重量%のAgを含有する42.0gの銀−アミン−シュウ酸溶液に、0.0503gのCsOH溶液(溶液1g当たりCs 0.4564g)と、0.0560gの酢酸リチウム溶液(溶液1g当たりLi 0.023g)と、0.0227gの酢酸ナトリウム溶液(溶液1g当たりNa 0.071g)と、0.4477gの過レニウム酸アンモニウム溶液(溶液1g当たりRe 0.0359g)と、0.0200gの硫酸アンモニウム溶液(溶液1g当たりSO4 0.2789g)と、を加えて調製した溶液を用いてもう一回の含浸を行った。含浸、排出及び焙焼の各工程は、前回の調製と同じように行った。排出及び焙焼の後、最終触媒重量は12.23gであった。銀の吸収量及び加えた助触媒溶液の量に基づいて算出した触媒10の組成は、Ag:16.13重量%、Cs:499ppm、Li:28ppm、Na:35ppm、Re:349ppm、SO4:121ppm、Mn:113ppmであった。
【0096】
図7は、本発明の実施例の触媒10が、比較の触媒9よりも0.6〜0.7%高い初期効率をもたらすことを示している。
【0097】
【表2】
【0098】
提示したデータは、一回目のAg含浸において加えた助触媒の選択が些細なものではないことを実証している。同一工程で共に加えることが必要な助触媒の選択、及び共に混合するべきでなく、別の工程で加えるべき助触媒も、些細なものではない。
本開示は以下も包含する。
[1] 支持体と、少なくとも1種類の触媒種と、マンガンと、少なくとも1種類のアルカリ金属及び/又は助触媒とを含むエポキシ化触媒の製造方法であって、
前記マンガンの少なくとも一部を、前記少なくとも1種類のアルカリ金属及び/又は助触媒とは別の含浸工程において含浸させる工程を含む、前記製造方法。
[2] 前記マンガンが、前記少なくとも1種類の触媒種と共に含浸される、上記態様1に記載の製造方法。
[3] 前記少なくとも1種類のアルカリ金属及び/又は助触媒が、ナトリウム、セシウム、リチウム、硫酸塩又はこれらの組合せを含む、上記態様1に記載の製造方法。
[4] 前記少なくとも1種類のアルカリ金属及び/又は助触媒が、ナトリウムを含み、前記マンガンとは別の工程において含浸される、上記態様1に記載の製造方法。
[5] 前記マンガンが、Mn−EDTA錯体を含む、上記態様1に記載の製造方法。
[6] 前記少なくとも1種類のアルカリ金属及び/又は助触媒がレニウムを含む、上記態様1に記載の製造方法。
[7] 前記触媒種が銀を含む、上記態様1に記載の製造方法。
[8] 上記態様1に記載の製造方法によって調製されたエポキシ化触媒。
[9] 上記態様1に記載の製造方法によって調製されたエポキシ化触媒の存在下で、酸素供給源とアルキレンを接触させる工程を含む、1種類又は複数種類のアルキレンのエポキシ化方法。
[10] 前記アルキレンがエチレンを含む、上記態様8に記載の製造方法。
[11] 1,2−ジオール、1,2−ジオールエーテル、1,2−カーボナート又はアルカノールアミンの製造方法であって、上記態様6に記載の製造方法によって調製されたアルキレンオキシドを、前記1,2−ジオール、1,2−ジオールエーテル、1,2−カーボナート又はアルカノールアミンに転化させる工程を含む、前記製造方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7