(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6363781
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】プラグ及びプラグ付きケーブル
(51)【国際特許分類】
G02B 6/38 20060101AFI20180712BHJP
【FI】
G02B6/38
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-217442(P2017-217442)
(22)【出願日】2017年11月10日
【審査請求日】2018年4月18日
(31)【優先権主張番号】15/637,417
(32)【優先日】2017年6月29日
(33)【優先権主張国】US
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、実施許諾の用意がある。
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000147350
【氏名又は名称】株式会社精工技研
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】特許業務法人航栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平 淳司
(72)【発明者】
【氏名】地引 正幸
(72)【発明者】
【氏名】高石 洋平
(72)【発明者】
【氏名】新井 則匡
【審査官】
岸 智史
(56)【参考文献】
【文献】
特表2015−516600(JP,A)
【文献】
特開2009−222932(JP,A)
【文献】
特開2005−321503(JP,A)
【文献】
国際公開第2015/068461(WO,A1)
【文献】
特開2009−276493(JP,A)
【文献】
特開2012−173344(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0169727(US,A1)
【文献】
Seikoh Giken Company to Introduce the Intelli-Cross Series LC Uniboot Connector with "Intelligent" Keying at OFC 2017,[online],2017年 2月21日,[2018年6月5日検索],URL,https://www.ofcconference.org/en-us/home/news-and-press/exhibitor-press-releases/exhibitor-press-releases/2017/seikoh-giken-company-to-introduce-the-intelli-cros/
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/24,
G02B 6/255,
G02B 6/36−6/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アダプタに嵌合されるプラグ本体と、
前記プラグ本体の外方から該プラグ本体の外面に向けて弾性的に変位可能に前記プラグ本体に設けられており、前記プラグ本体が前記アダプタに嵌合されている状態で前記アダプタに係止され、前記外方から前記外面に向けて変位することによって前記アダプタに係止された状態から解放されるラッチと、
前記ラッチの前記外方に配置されるカバー部を有するスライダと、
を備え、
前記スライダは、前記カバー部を前記外方から前記外面に向けて押し下げ可能に前記プラグ本体に支持され、且つ前記プラグ本体が前記アダプタから抜去される抜去方向に移動可能に前記プラグ本体に支持されており、
前記プラグ本体と前記カバー部とは、互いに係合する係合部をそれぞれ有し、前記プラグ本体の前記係合部及び前記カバー部の前記係合部のうち少なくとも一方の係合部には、前記抜去方向に向かうに従い前記プラグ本体の前記外面に接近するガイド面が設けられており、
前記カバー部が前記外面に向けて押し下げられる際に、前記ラッチは前記カバー部と一体に前記外面に向けて押し下げられ、
また、前記スライダが前記抜去方向に移動する際に、一方の前記係合部が他方の前記係合部の前記ガイド面を摺動することにより、前記カバー部が前記プラグ本体の前記外面に引き寄せられ、前記ラッチは前記カバー部によって前記外面に向けて押し下げられるプラグ。
【請求項2】
請求項1記載のプラグであって、
前記カバー部は、前記ラッチを押圧する押圧部を有しており、
前記押圧部と、前記カバー部の前記係合部とは互いに隣設されているプラグ。
【請求項3】
請求項1又は2記載のプラグであって、
前記抜去方向に沿う前記スライダの可動域における前記抜去方向とは反対方向の一端に前記スライダが配置されている状態で、前記カバー部は、前記ラッチによって前記プラグ本体の前記外面から離間する向きに押圧されており、一方の前記係合部は他方の前記係合部の前記ガイド面に接触しているプラグ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項記載のプラグであって、
前記プラグ本体が前記アダプタに嵌合されている状態で、前記プラグ本体を前記抜去方向に付勢する付勢手段を備えるプラグ。
【請求項5】
請求項4記載のプラグであって、
前記付勢手段は、
当該プラグが取り付けられるケーブルの心線を保持し、前記プラグ本体が前記アダプタに嵌合されている状態で前記アダプタに当接する保持部材と、
前記保持部材を前記抜去方向とは反対方向に押圧する押圧部材と、
を含むプラグ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項記載のプラグが端末部に取り付けられているプラグ付きケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラグ及びプラグ付きケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバケーブルと、レシーバやトランスミッタなどの光モジュール又は他の光ファイバケーブルとはアダプタ(いわゆるレセプタクルを含む)を介して接続されており、アダプタに嵌合されるプラグが光ファイバケーブルの端末部に設けられている。プラグには、典型的には、アダプタに係止されるラッチが設けられており、ラッチがアダプタに係止されている係止状態を解除するための操作部材を備えるプラグが知られている。
【0003】
特許文献1に記載されたコネクタ(プラグ)は、操作部材としての引き金を備える。ラッチは、ジャックソケット(アダプタ)に挿入されるコネクタのプラグ端から反対側のケーブル入口端に向けて延びており、プラグ端側の固定端がコネクタの外表面に固定され、ケーブル入口端側の自由端がコネクタの外表面に対して上下移動可能に構成されている。引き金は、コネクタのケーブル入口端からプラグ端に向けて延びており、ケーブル入口端側の固定端がコネクタの外表面に固定され、プラグ端側の自由端がコネクタの外表面に対して上下移動可能に構成されている。引き金の自由端はラッチの自由端の上に配置されており、引き金がコネクタの外表面に向けて押し下げられると、引き金の自由端とラッチの自由端とが係合し、ラッチもまたコネクタの外表面に向けて押し下げられる。ラッチが押し下げられることにより、ラッチの係止状態が解除される。
【0004】
特許文献2に記載された光コネクタ組立体(プラグ)は、操作部材としてのハウジングを備える。ラッチは、光コネクタプラグの先端部から後端部に向けて徐々に光コネクタプラグの外表面から離れるように傾斜して延びている。光コネクタプラグは、ハウジングに形成されているプラグ挿入孔に挿入されており、ハウジングは、光コネクタプラグの先端部から後端部に向けて移動可能に光コネクタプラグに支持されている。ハウジングが光コネクタプラグの後端部側に引っ張られると、ハウジングとラッチとの間に介在するラッチ解除部材を介してラッチが光コネクタプラグの外表面に向けて押し下げられる。ラッチが押し下げられることにより、ラッチの係止状態が解除される。
【0005】
操作部材に対する引っ張り操作によってラッチの係止状態が解除されるプラグとしては、特開2009−229545号公報に記載された光コネクタプラグ、米国特許第8221007号明細書に記載されたプラグコネクタ、及び米国特許第8899845号明細書に記載された光ファイバコネクタも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−113762号公報
【特許文献2】特開2001−141961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載されたコネクタでは、操作部材としての引き金が押し下げられることによってラッチの係止状態が解除される。また、特許文献2に記載された光コネクタ組立体では、操作部材としてのハウジングが引っ張られることによってラッチの係止状態が解除される。このように、従来のプラグにおいてラッチの係止状態を解除する際の操作部材に対する操作としては、押し下げ操作と引っ張り操作との二通りの操作があるところ、従来のプラグはいずれか一方の操作にしか対応しておらず、ユーザーを困惑させる虞があり、使い勝手の点で難がある。
【0008】
本発明は、上述した事情に鑑みなされたものであり、使い勝手に優れるプラグ及びプラグ付きケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様のプラグは、アダプタに嵌合されるプラグ本体と、前記プラグ本体の外方から該プラグ本体の外面に向けて弾性的に変位可能に前記プラグ本体に設けられており、前記プラグ本体が前記アダプタに嵌合されている状態で前記アダプタに係止され、前記外方から前記外面に向けて変位することによって前記アダプタに係止された状態から解放されるラッチと、前記ラッチの前記外方に配置されるカバー部を有するスライダと、を備え、前記スライダは、前記カバー部を前記外方から前記外面に向けて押し下げ可能に前記プラグ本体に支持され、且つ前記プラグ本体が前記アダプタから抜去される抜去方向に移動可能に前記プラグ本体に支持されており、前記プラグ本体と前記カバー部とは、互いに係合する係合部をそれぞれ有し、前記プラグ本体の前記係合部及び前記カバー部の前記係合部のうち少なくとも一方の係合部には、前記抜去方向に向かうに従い前記プラグ本体の前記外面に接近するガイド面が設けられており、前記カバー部が前記外面に向けて押し下げられる際に、前記ラッチは前記カバー部と一体に前記外面に向けて押し下げられ、また、前記スライダが前記抜去方向に移動する際に、一方の前記係合部が他方の前記係合部の前記ガイド面を摺動することにより、前記カバー部が前記プラグ本体の前記外面に引き寄せられ、前記ラッチは前記カバー部によって前記外面に向けて押し下げられる。
【0010】
また、本発明の一態様のプラグ付きケーブルは、前記プラグが端末部に取り付けられている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、使い勝手に優れるプラグ及びプラグ付きケーブルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図5】スライダのカバー部が押し下げられた状態のプラグの断面図である。
【
図6】スライダが引っ張られた状態のプラグの断面図である。
【
図8A】アダプタとプラグとの嵌合が解除される際のプラグの各部の動作を示す断面図である。
【
図8B】アダプタとプラグとの嵌合が解除される際のプラグの各部の動作を示す断面図である。
【
図8C】アダプタとプラグとの嵌合が解除される際のプラグの各部の動作を示す断面図である。
【
図9A】アダプタとプラグとの嵌合が解除される際のプラグの各部の動作を示す断面図である。
【
図9B】アダプタとプラグとの嵌合が解除される際のプラグの各部の動作を示す断面図である。
【
図9C】アダプタとプラグとの嵌合が解除される際のプラグの各部の動作を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施形態について図面を参照して説明する。
【0014】
図1に示すケーブル1は光ファイバケーブルであり、光ファイバケーブル1の端末部にはプラグ2が取り付けられている。プラグ2は、機器3のパネル4に設けられているアダプタ5に嵌合される。機器3は、例えば通信機器又は配線盤であり、光ファイバケーブル1は、アダプタ5を介して、例えば通信機器に実装されている光モジュールに接続され、又は配線盤に収納されている他の光ファイバケーブルに接続される。
【0015】
アダプタ5は、嵌合孔がパネル4の正面側にのみ設けられる、いわゆるレセクタプルと、嵌合孔がパネル4の正面側及び背面側の双方に設けられるものとを含む。嵌合孔がパネル4の正面側にのみ設けられているアダプタは、典型的には、光ファイバケーブル1と光モジュールとの接続に用いられ、嵌合孔がパネル4の正面側及び背面側の双方に設けられているアダプタは、典型的には、光ファイバケーブル1と他の光ファイバケーブルとの接続に用いられる。
【0016】
図2から
図4はプラグ2の構成を示す。プラグ2は、プラグ本体10と、スライダ11とを備える。
【0017】
プラグ本体10は、光ファイバケーブル1の心線(光ファイバ)6を保持する保持部材としてのフェルール20と、フェルール20を支持しているプラグフレーム21と、プラグフレーム21を支持しているラッチフレーム22とを備える。本例では、フェルール20は心線毎に設けられており、プラグフレーム21はフェルール20毎に設けられている。光ファイバケーブル1は単心ケーブルであってもよいし、2心以上の多心ケーブルであってもよく、フェルール20及びプラグフレーム21の数は、光ファイバケーブル1の心数に応じて適宜変更される。なお、フェルール20は、複数の心線を保持する多心フェルールであってもよい。
【0018】
ラッチフレーム22は筒状に形成されており、光ファイバケーブル1は、ラッチフレーム22に挿通され、ラッチフレーム22の軸方向一端側の開口から引き出されている。ラッチフレーム22から引き出された光ファイバケーブル1には、ケーブルの屈曲を防止するためのブーツ23が被せられている。
【0019】
プラグフレーム21はラッチフレーム22の軸方向他端側の開口から突出して配置されており、このプラグフレーム21がアダプタ5に嵌合される。以下、プラグフレーム21がラッチフレーム22から突出する方向をプラグ2における前方とし、反対方向を後方とする。プラグ本体10が後方に引かれることによってプラグフレーム21はアダプタ5から抜去される。
【0020】
プラグフレーム21は筒状に形成されており、本例では、フェルール20はプラグフレーム21の内部で前後方向に移動可能にプラグフレーム21に収容されている。そして押圧部材としてのコイルスプリング34がプラグフレーム21にさらに収容されている。コイルスプリング34は、フェルール20に設けられているフランジ部35と、プラグフレーム21の後端側の開口部に組み付けられている環状のストッパ36との間に配置されており、フェルール20を前方に押圧し、換言すればプラグフレーム21がアダプタ5から抜去される抜去方向とは反対方向に押圧している。前方に押圧されているフェルール20の前端部24は、プラグフレーム21の前端側の開口から突出して配置されている。
【0021】
ラッチフレーム22の外周の一面22aには、アダプタ5によって係止されるラッチ25が設けられている。以下、外面22aの面内において前後方向に垂直な方向且つ外面22aに平行な方向をプラグ2における幅方向とする。また、外面22aに垂直な方向をプラグ2における上下方向とし、外面22a側を上側とする。なお、二つのラッチ25が幅方向に間隔をあけて配置されているが、ラッチ25は一つ以上あればよい。
【0022】
ラッチ25はラッチフレーム22の外面22aに固定されている支持部26から前方に延びており、ラッチ25の前端部27はプラグフレーム21の上方に配置されている。ラッチ25とラッチフレーム22の外面22a及びプラグフレーム21の外面21aとの間には支持部26を除いて隙間があいており、ラッチ25が弾性的に撓むことによって、前端部27はプラグフレーム21の外面21aの上方から外面21aに向けて変位可能である。前端部27はプラグフレーム21と共にアダプタ5に収容され、前端部27には、アダプタ5によって係止される係止突起28が設けられている。
【0023】
スライダ11は、ラッチ25の上方に配置されるカバー部30と、ラッチフレーム22の後方に配置される把持部31とを備える。ラッチフレーム22の外面22aとカバー部30とはラッチ25を間に挟んで対向しており、外面22aとカバー部30とには、互いに係合する係合部40,41がそれぞれ設けられている。両係合部40,41によって、スライダ11は、カバー部30を外面22aの上方から外面22aに向けて押し下げ可能にラッチフレーム22に支持され、且つスライダ11は、後方に移動可能に、換言すればプラグフレーム21がアダプタ5から抜去される抜去方向に移動可能にラッチフレーム22に支持されている。
【0024】
図3及び
図4に示すように、ラッチフレーム22の係合部40は、ラッチフレーム22の外面22aに固定されているリブ42と、リブ42から幅方向両側に突出している一対のウイング43とで構成されており、前後方向に延びている。
【0025】
カバー部30の係合部41は、幅方向に間隔をあけて配置されている一対のアーム44を含む。一対のアーム44は、係合部40のリブ42及び一対のウイング43を幅方向に挟んでおり、リブ42及び一対のウイング43と一対のアーム44との係合によって、カバー部30は前後方向にガイドされる。そして、各アーム44には、ラッチフレーム22の外面22aとウイング43との間に収容される係合爪45が設けられており、ウイング43と係合爪45との係合によってカバー部30の浮き上がりが規制される。これにより、スライダ11は抜去方向に移動可能に支持される。なお、スライダ11の把持部31には、ブーツ23が挿通される挿通孔32が設けられており、挿通孔32の内周とブーツ23との係合によって、スライダ11の支持が補助されている。
【0026】
係合部41は、一対のアーム44の前端部間を塞ぐストッパ46をさらに含み、スライダ11の抜去方向に沿った可動域は、ストッパ46と、把持部31とによって規定されている。スライダ11が抜去方向に所定量移動すると、ストッパ46が係合部40のリブ42の前端と当接し、スライダ11の抜去方向の移動が阻止される。また、スライダ11が抜去方向とは反対方向に所定量移動すると、把持部31がラッチフレーム22の後端に当接し、スライダ11の抜去方向とは反対方向の移動が阻止される。
【0027】
そして、リブ42及び一対のウイング43とカバー部30との間には上下方向に隙間があけられており、一対のアーム44とラッチフレーム22の外面22aとの間にもまた上下方向に隙間があけられており、これらの隙間があることによって、スライダ11は、カバー部30を外面22aに向けて押し下げ可能に支持される。
【0028】
以上のように、スライダ11を抜去方向に移動可能に支持し、且つスライダ11のカバー部30をラッチフレーム22の外面22aに向けて押し下げ可能に支持する両係合部40,41は、さらに、スライダ11が抜去方向に移動する際に、スライダ11の移動に応じてカバー部30が外面22aに引き寄せられるように構成されている。
【0029】
本例では、ラッチフレーム22の外面22aと対向するウイング43の下面にはガイド面43aが設けられており、ウイング43と対向する係合爪45の上面にもガイド面45aが設けられており、ガイド面43a,45aは、いずれも後方に向かうに従い外面22aに接近するように傾斜している。スライダ11が抜去方向(後方)に移動する際に、スライダ11の移動に応じて、ウイング43の前端43eが係合爪45のガイド面45aを摺動し、また、係合爪45の後端45eがウイング43のガイド面43aを摺動し、これにより、カバー部30がラッチフレーム22の外面22aに引き寄せられる。なお、ガイド面は、係合部40,41のうちいずれか一方の係合部にのみ設けられてもよい。
【0030】
図5は、カバー部30がラッチフレーム22の外面22aに向けて押し下げられた状態を示す。押し下げられたカバー部30はラッチ25に当接し、ラッチ25は、弾性的に撓みながら、カバー部30と一体に外面22aに向けて押し下げられる。これにより、ラッチ25の前端部27がプラグフレーム21の外面21aに向けて変位する。
【0031】
図6は、スライダ11の抜去方向の移動に応じてカバー部30がラッチフレーム22の外面22aに引き寄せられた状態を示す。外面22aに引き寄せられたカバー部30はラッチ25に当接し、ラッチ25は、弾性的に撓みながら、カバー部30によって外面22aに向けて押し下げられる。これにより、ラッチ25の前端部27がプラグフレーム21の外面21aに向けて変位する。
【0032】
図7に示すように、カバー部30には、ラッチ25と当接する押圧部33が設けられており、押圧部33はカバー部30の係合部41に隣設されていることが好ましい。本例では、ラッチフレーム22の係合部40は一対のラッチ25の間に配置されており、カバー部30の係合部41は、係合部40に対応して、カバー部30の幅方向中央部に配置されており、押圧部33は係合部41の幅方向両側に配置されている。スライダ11の抜去方向の移動に応じてカバー部30がラッチフレーム22の外面22aに引き寄せられ、カバー部30が外面22aに引き寄せられることによってラッチ25と当接する場合に、押圧部33が係合部41に隣設されていることにより、カバー部30の撓みを抑制してラッチ25を外面22aに向けて確実に押し下げることができる。
【0033】
また、抜去方向に沿うスライダ11の可動域における抜去方向とは反対方向の一端にスライダ11が配置されている状態、すなわち、把持部31がラッチフレーム22の後端に当接している
図4に示す状態で、ラッチ25は弾性的に撓んでおり、カバー部30がラッチ25によってラッチフレーム22の外面22aから離間する向きに押圧されていることが好ましい。これにより、係合部40のウイング43と係合部41のガイド面45aとの接触、及び係合部41の係合爪45と係合部40のガイド面43aとの接触を維持してカバー部30のガタつきを抑制でき、スライダ11の操作性を高めることができる。
【0034】
図8A〜
図8Cは、スライダ11のカバー部30がラッチフレーム22の外面22aに向けて押し下げられることによって、アダプタ5とプラグ本体10との嵌合が解除される際のプラグ2の各部の動作を示す。
【0035】
図8Aに示すように、プラグ本体10のプラグフレーム21がアダプタ5に嵌合している。ラッチ25の前端部27もアダプタ5に収容されており、前端部27に設けられている係止突起28がアダプタ5の係止部7によって係止されている。フェルール20の前端部24は、アダプタ5のフェルール受け部8に当接してプラグフレーム21に押し込まれており、プラグフレーム21に収容されているコイルスプリング34は圧縮されている。フェルール20は、プラグフレーム21がアダプタ5から抜去される抜去方向とは反対方向に押圧されており、プラグ本体10は、フェルール20とコイルスプリング34とによって構成される付勢手段によって抜去方向に付勢されている。
【0036】
図8Bに示すように、スライダ11のカバー部30がラッチフレーム22の外面22aに向けて押し下げられると、上記のとおり、ラッチ25がカバー部30と一体に外面22aに向けて押し下げられ、ラッチ25の前端部27がプラグフレーム21の外面21aに向けて変位する。前端部27の変位に伴い、前端部27の係止突起28がアダプタ5の係止部7によって係止されている係止状態が解除され、アダプタ5とプラグフレーム21との嵌合が解除可能となる。
【0037】
図8Cに示すように、ラッチ25の係止状態が解除されると、抜去方向に付勢されているプラグ本体10が自動的に抜去方向に移動する。具体的には、圧縮されたコイルスプリング34が、フェルール20の前端部24をプラグフレーム21から押し出しながら復元し、前端部24が押し出されるのに応じて、プラグフレーム21が自動的にアダプタ5から所定量押し出される。この後、プラグ本体10が抜去方向に引かれることにより、プラグフレーム21がアダプタ5から完全に抜去される。
【0038】
図9A〜
図9Cは、スライダ11が抜去方向に引っ張られることによって、アダプタ5とプラグ本体10との嵌合が解除される際のプラグ2の各部の動作を示す。
【0039】
図9Aに示すように、プラグ本体10のプラグフレーム21がアダプタ5に嵌合している。ラッチ25の前端部27もアダプタ5に収容されており、前端部27に設けられている係止突起28がアダプタ5の係止部7によって係止されている。
【0040】
図9Bに示すように、スライダ11が抜去方向に引かれると、上記のとおり、スライダ11の抜去方向の移動に応じてカバー部30がラッチフレーム22の外面22aに引き寄せられ、ラッチ25がカバー部30によって外面22aに向けて押し下げられ、ラッチ25の前端部27がプラグフレーム21の外面21aに向けて変位する。前端部27の変位に伴い、前端部27の係止突起28がアダプタ5の係止部7によって係止されている係止状態が解除され、アダプタ5とプラグフレーム21との嵌合が解除可能となる。
【0041】
図9Cに示すように、スライダ11が引き続き抜去方向に引かれると、スライダ11が可動域の抜去方向の一端に達し、以後、スライダ11と一体にプラグ本体10も抜去方向に引かれ、プラグフレーム21がアダプタ5から抜去される。
【0042】
このように、スライダ11のカバー部30の押し下げ操作と、スライダ11の引っ張り操作との二通りの操作によってラッチ25の係止状態を解除でき、プラグ2は使い勝手に優れる。
【0043】
さらに、本例では、プラグ本体10が抜去方向に付勢されており、カバー部30の押し下げ操作によってラッチ25の係止状態が解除される場合に、ラッチ25の係止状態が解除されると同時にプラグ本体10が自動的に抜去方向に移動し、ラッチ25の係止突起28がアダプタ5の係止部7から離脱する。これにより、プラグフレーム21をアダプタ5から完全に抜去するにあたってプラグ本体10を抜去方向に引く際に、カバー部30の押し下げを不要とすることができ、プラグ2の操作性を高めることができる。なお、プラグ本体10を抜去方向に付勢する付勢手段は、フェルール20と、フェルール20を押圧するコイルスプリング34とによって構成されているが、フェルール20を押圧する押圧部材は、例えば板ばねやゴム等の弾性体であってもよい。
【0044】
ここまで、光ファイバケーブル1とその端末部に取り付けられているプラグ2を例にして実施形態を説明したが、上記実施形態は一例であって、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で変更して実施できることは言うまでもない。例えばケーブルは、心線に導体が用いられる電気ケーブル(例えばLAN(Local Area Network)ケーブル等)であってもよい。また、ケーブルには、幹線から複数の分岐線が延びる分岐ケーブルも含まれ、分岐ケーブルである場合に、プラグが取り付けられるケーブルの端末部には、幹線の端末部及び/又は各分岐線の端末部が含まれる。
【符号の説明】
【0045】
1 光ファイバケーブル
2 プラグ
5 アダプタ
6 心線
10 プラグ本体
11 スライダ
20 フェルール(保持部材)
25 ラッチ
30 カバー部
33 押圧部
34 コイルスプリング(押圧部材)
40 係合部
41 係合部
43 ウイング
43a ガイド面
45 係合爪
45a ガイド面
【要約】
【課題】使い勝手に優れるプラグ及びプラグ付きケーブルを提供する。
【解決手段】ケーブル1の端末部に取り付けられているプラグ2は、アダプタ5に嵌合されるプラグ本体10と、プラグ本体10の外方からプラグ本体10の外面22aに向けて弾性的に変位可能にプラグ本体10に設けられており、アダプタ5に係止されるラッチ25と、ラッチ25の外方に配置されるカバー部30を有するスライダ11と、を備え、カバー部30が外面22aに向けて押し下げられ、又はプラグ本体10がアダプタ5から抜去される抜去方向にスライダ11が引かれることにより、ラッチ25が外面22aに向けて押し下げられ、ラッチ25の係止状態が解除される。
【選択図】
図2