(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
流体に隣接する第1表面を備えた層を有する支持プレートを備え、前記層は、実質的な無極性骨格と、前記骨格からペンダントし、実質的な極性基で終了する少なくとも1つの鎖とを有する材料を少なくとも部分的に備え、前記材料は、
式R1‐An‐R2を有し、
ここで、R1は、第1末端基、
R2は、第2末端基、
nは、2以上の整数、且つ、
各前記Aは、
式‐CF2CF2‐を有するR3、または、
式‐CFR5CF2‐を有するR4
からなるグループから別々に選択され、
ここで、R5は、式‐L‐Qを有し、Lはリンカー基、Qは実質的な極性基であり、
Anは、R3の少なくとも1つとR4の少なくとも1つを含む、
エレクトロウェッティング素子。
前記材料は、アイオノマー、両親媒性物質、前記実質的な無極性骨格が疎水性である材料、または、前記実質的な極性基が親水性である材料のうちの少なくとも1つである、請求項1または請求項2に記載のエレクトロウェッティング素子。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本明細書で言及する置換基及び原子の詳細について最初に記載する。別段の記載のない限り、これらの意味が適用される。
【0007】
本明細書において言及されるアルキル基は、環状基は以下に記載のリンカー側鎖Lの柔軟性という点で非常に制限的なので、環状基でない直鎖または分岐アルキル基である。
【0008】
本明細書において言及されるフルオロアルキル基は、水素原子の少なくとも1つがフッ素原子(F)によって置換され、少なくとも1つの水素原子が置換されていない、上記段落のアルキル基の記載に従った直鎖または分岐アルキル基である。
【0009】
本明細書において言及されるペルフルオロアルキル基は、各水素原子がフッ素原子(F)によって置換された、上記段落のアルキル基の記載に従った直鎖または分岐アルキル基である。
【0010】
本明細書において言及されるアルキレン基は、一般式‐C
mH
2m-を有する直鎖または分岐した2価の脂肪族炭化水素基である。
【0011】
本明細書において言及されるフルオロアルキレン基は、水素原子の少なくとも1つがフッ素原子(F)によって置換され、少なくとも1つの水素原子が置換されていない、上記段落のアルキレン基の記載に従った直鎖または分岐アルキレン基である。
【0012】
本明細書において言及されるペルフルオロアルキレン基は、各水素原子がフッ素原子(F)によって置換された、上記段落のアルキレン基の記載に従った直鎖または分岐アルキレン基である。
【0013】
本明細書において言及されるエーテル基は、式‐CH
2OCH
2‐を含む官能基である。
【0014】
フルオロエーテル基は、少なくとも1つの水素原子Hがフッ素原子Fによって置換され、少なくとも1つの水素原子Hが置換されていない、上記エーテル基である。
【0015】
ペルフルオロエーテル基は、全ての水素原子Hがフッ素原子Fによって置換された上記エーテル基である。
【0017】
図1は、複数の画素または表示素子2を含むエレクトロウェッティング表示装置1の例の一部の略断面図である。エレクトロウェッティングセル、エレクトロウェッティング素子、または、エレクトロウェッティングピクセルとも呼ばれてよい複数の画素または表示素子2のうちの1つが図に示されている。表示素子の横方向の範囲は、2本の破線3、4によって図に示されている。表示素子は、第1支持プレート5及び第2支持プレート6を備える。支持プレートは、各表示素子の別個の部分であってよいが、支持プレートは、複数の表示素子に共通に共有されてよい。支持プレートは、ガラス基板またはポリマー基板6、7を含んでよく、剛性または可撓性であってよい。
【0018】
表示装置は、表示装置が形成した画像または表示を見ることができる表示側8と、後側9とを有する。図において、この例においては基板7の表面である第1支持プレート5の表面が、後側9を規定し、この例においては基板6の表面である第2支持プレート6の表面が、表示側を規定する。あるいは、他の例においては、第1支持プレートの表面が表示側を規定してよい。表示装置は、反射型、透過型、または、半透過型であってよい。表示装置は、アクティブマトリクス駆動表示装置であってよい。複数の表示素子はモノクロームであってよい。カラー表示装置に関しては、表示素子は、各グループが異なる色を有するようにグループ分けされてよい。あるいは、個々の表示素子は、異なる色を示すことができてよい。
【0019】
支持プレートと支持プレートの間の各表示素子の空間10は、第1流体11と第2流体12の2種類の流体で満たされ、流体のうちの少なくとも1つは液体であってよい。第2流体は、第1流体と混和しない。よって、第1流体及び第2流体は、実質的に互いに混和せず、ある例においては、全く混和しない。第1流体と第2流体の不混和性は、第1流体と第2流体の特性、例えば、化学組成に起因する。第1流体と第2流体は、互いに分離する傾向があるので、第1流体と第2流体が混和して均一混合物を形成する傾向はない。この不混和性のために、第1流体と第2流体は、電圧を印加しない時は
図1において55とラベル付けした界面で、電圧を印加した時は57とラベル付けした界面で、互いに接触し、その界面は、第1流体の体積と第2流体の体積との間の境界を規定する。この界面または境界は、メニスカスと呼ばれてよい。第1流体及び第2流体が互いに実質的に混和せず、ある例においては、第1流体と第2流体はある程度、混和し得ることが想定されるが、これは、第1流体の体積の大半が第2流体の体積の大半と混和していないという点で、無視してよいとみなされる。
【0020】
第2流体は、導電性及び/または電気的に極性があり、水、または、塩化カリウム水溶液等の塩溶液であってよい。第2流体は透明であってよい。第2流体は、代わりに、例えば、色付きであってよい。または、吸収性であってよい。第1流体は、非導電性であり、例えば、デカン若しくはヘキサデカン等のアルカン、シリコーン油、または、(ビシクロ[4.4.0]デカンとして知られる)デカリンであってよい。
【0021】
第1流体は、光学スペクトルの少なくとも一部を吸収してよい。第1流体は、光学スペクトルの一部に対して透過的であってよく、色フィルタを形成する。この目的のために、第1流体は、色素粒子または染料を加えて色付けされてよい。あるいは、第1流体は、黒であってよい、すなわち、光学スペクトルの実質的に全ての部分を吸収してよい、または、反射性であってよい。反射性の第1流体は、可視スペクトル全体を反射してよく、層を白く見せる、または、可視スペクトルの一部を反射してよく、層は色を有する。
【0022】
支持プレート5は、本明細書に記載の第1流体等の流体が隣接する表面を有する層を含む。本明細書に記載の例においては、層は絶縁層13である。絶縁層は、透明または反射性であってよい。絶縁層13は、表示素子の壁と壁の間に延在してよい。第2流体12と絶縁層の下に配置された電極との間の短絡を回避するために、絶縁層の層は、図に示すように、複数の表示素子2に亘って途切れずに延在してよい。絶縁層は、表示素子2の空間10に面する表面14、すなわち、空間10に最も近い表面14を有する。以下に記載の表示エリアの範囲に対応する表面の範囲は、本明細書では、第1表面と呼ばれ、この例においては、疎水性である。絶縁層の厚さは、2マイクロメートル未満でよく、1マイクロメートル未満でよい。
【0023】
本明細書に記載の例における絶縁層は、既知の例と比較して、異なる材料、例えば、アイオノマーで形成される。これに関しては、以下により詳細に説明する。絶縁層は、このような異なる材料のみから形成されてよい。あるいは、絶縁層は、異なる材料の層15と所定の誘電特性を有する障壁層16とから形成されてよく、異なる材料15は、図に示すように、空間10に面する、すなわち、空間10により近い。異なる材料の層は、
図1に概略的に示されている。障壁層16は、基板面に対して垂直な方向に50ナノメータと500ナノメータの間の厚さを有してよく、酸化ケイ素若しくは窒化ケイ素等の無機材料またはこれらのスタック(例えば、酸化ケイ素‐窒化ケイ素‐酸化ケイ素)またはポリイミド若しくはパリレン等の有機材料から形成されてよい。
【0024】
印加電圧がない場合、第1流体は、絶縁層13の表面に対して第2流体12より高い濡れ性を有するので、第1表面の疎水性によって、第1流体11は、絶縁層13に優先的に付着する。濡れ性は、固体の表面に対する流体の相対的親和性に関する。濡れ性は、流体と固体の表面との接触角によって測定されてよい。接触角は、流体と固体の境界における流体と固体との表面張力の差によって決定される。例えば、表面張力の差が大きいと、疎水性を示し得る。
【0025】
各表示素子2は、支持プレート5の一部として第1電極17を備える。図示の例においては、素子毎にこのような電極17が1つある。電極17は、第1流体及び第2流体から絶縁層13によって電気的に絶縁される。隣り合う表示素子の電極は、非導電層によって分離される。ある例においては、絶縁層13と電極17との間に追加の層が配置されてよい。電極17は、任意の所望の形状または形式であってよい。表示素子の電極17は、図に概略的に示される信号線18によって電圧信号を供給される。
【0026】
支持プレート6は、例えば、第2電極19を備え、第2電極19は、図に示すように、表示素子の壁と壁との間に延在してよい、または、複数の表示素子2に亘って途切れずに延在してよい。電極19は、導電性の第2流体12と電気的に接触し、全ての表示素子に共通である。電極は、例えば、透明の導電材料であるインジウムスズ酸化物(ITO)から形成されてよい。第2信号線20は電極19に接続される。あるいは、電極は、支持プレートの縁に配置されてよく、支持プレートの縁は、第2流体と電気的に接触している。全ての素子が、壁に遮られずに、第2流体によって流体的に相互に接続され、第2流体を共有している時、この電極は、全ての素子に対して共通であってよい。表示素子2は、信号線18と20との間に印加される電圧Vによって制御することができる。信号線18は、基板7の制御線のマトリクスに結合することができる。信号線20は、表示駆動システムに結合される。
【0027】
この例において、第1流体11は、表示素子の断面に沿った壁21によって1つの表示素子に閉じ込められる。表示素子の断面は任意の形状を有してよい。表示素子が、マトリクス形式で配置される場合、断面は、通常、四角形か長方形である。壁は、絶縁層13の第2表面上に形成された、絶縁層13から突き出た構造として示されているが、壁は、代わりに、親水性または低疎水性の層等、第1流体をはじく支持プレートの表面層であってよい。壁は、第1から第2支持プレートに延在してよいが、代わりに、
図1に示すように、第1支持プレートから第2支持プレートに部分的に延在してよい。破線3と4によって示される表示素子の範囲は、壁21の中心によって規定される。表示素子の壁と壁の間の第1表面、すなわち、破線22と23によって示される第1表面のエリアは、表示エリア24と呼ばれ、表示エリア24に亘って、表示効果が生じる。壁が形成される第2表面のエリアは、壁エリアと呼ばれてよい。表示効果は、第1流体と第2流体が表示エリアによって規定される表面に隣接する程度によって決まり、その程度は上記印加電圧Vの大きさに依存する。印加電圧Vの大きさは、よって、エレクトロウェッティング素子内の第1流体と第2流体の構成を決定する。言い換えると、表示効果は、表示素子の第1流体と第2流体の構成に依存し、その構成は、表示素子の電極に印加される電圧の大きさに依存する。表示効果は、表示装置を見ている観察者に対して表示素子の表示状態を生じさせる。エレクトロウェッティング素子を1つの流体構成から異なる流体構成に切り替える時、それぞれ、表示エリア表面に隣接している第1流体の範囲が増減するのと共に、表示エリア表面に隣接している第2流体の範囲は増減し得る。
【0028】
図2は、第1支持プレートの疎水性の第1表面の長方形の画素のマトリクスを平面図で示す。
図1の破線3及び4に対応する
図2の中央の画素の範囲は、破線26によって示される。線27は、壁の内側の縁を示し、線27は、表示エリア23の端でもある。
【0029】
電極17と19の間に印加される電圧がゼロまたは実質的にゼロの時、すなわち、エレクトロウェッティング素子がオフ状態の時、第1流体11は、
図1に示すように、壁21と壁21との間に層を形成する。電圧を印加することによって、
図1または
図2の破線の形25によって示されるように、例えば、壁に対して第1流体を縮ませる。印加電圧の大きさに依存する第1流体の制御可能な形状を使用して、画素を光弁として働かせ、表示エリア23に亘って表示効果を提供する。例えば、第2流体の表示エリアとの隣接を増加させるように流体を切り替えることによって、素子が提供する表示効果の明るさを増加させてよい。
【0030】
この表示効果は、観察者が表示装置の表示側の方を見ている時、観察者が見る表示状態を決定する。表示状態は、任意の中間のグレー状態を伴う黒から白であってよい。カラー表示装置においては、表示状態は色も含んでよい。
【0031】
既知のエレクトロウェッティング表示装置においては、層は、疎水性材料、例えば、テフロン(登録商標)AF1600、で形成される。しかしながら、本明細書に記載の例においては、例えば、テフロンAF1600とは異なる材料を用いて、層、例えば、絶縁層13等の層を少なくとも部分的に形成し、第1流体が隣接する疎水性表面、及び、印加電圧の大きさによって、第2流体が隣接する疎水性表面を提供してよいことが分かった。この異なる材料は、実質的に無極性(すなわち、非極性)の骨格と、その骨格からペンダントした(すなわち、延びた、または、吊り下がった)、実質的な極性基で終了する少なくとも1つの鎖とを備える少なくとも1つの分子を有する材料である。材料は、従って、例においては、ポリマーであってよい。ある例においては、材料は、両親媒性物質、すなわち、実質的な極性領域と実質的な非極性領域を有する両親媒性材料とみなされてよい。ある例においては、このような両親媒性材料は、アイオノマー、すなわち、実質的な極性基がイオン性である、すなわち、実質的な極性基が解離して陰イオンと陽イオンを形成できるアイオノマー材料である。このようなイオン性基の例は、カルボン酸基、すなわち、‐COOHである。
【0032】
実質的な極性官能性は、例えば、材料の分子の少なくとも1つの極性官能基の存在によって提供される。例においては、極性は、結合された2個の原子の電気陰性度によって決まる。例えば、極性官能基は、酸素原子Oまたは窒素原子Nまたは硫黄原子Sに結合された水素原子Hを含む。ある例においては、アイオノマー材料に関して前述したように、この極性基は、解離する傾向があってよい。今述べた極性官能基等の極性官能基は、エレクトロウェッティング素子の壁を形成する材料、例えば、SU8等のフォトレジスト材料によって濡れる親和性を有してよい。例においては、この特性を用いて、前述したような少なくとも1つの壁を絶縁層に付着させるために、第2表面の濡れ性を提供する。このような壁を形成する詳細を以下にさらに記載する。例において、極性官能基は、親水性官能性、すなわち、水と混和する傾向、または、水に濡れる傾向、を提供してよい。すなわち、極性官能基は、水をはじくよりも、水に濡れる親和性を有してよい。
【0033】
実質的な非極性官能性は、例えば、材料の分子の少なくとも1つの無極性、すなわち、非極性の部分の存在によって提供される。このような非極性官能性は、例においては、原子の非極性基、すなわち、極性のない基の存在によって提供される。このような非極性基の例は、C‐H基、すなわち、炭素C原子に結合された水素H原子、C‐C基、すなわち、炭素原子Cに結合された炭素原子C、及び/または、C‐F基、すなわち、フッ素原子Fに結合された炭素原子Cを含む。例においては、非極性官能性は、疎水性官能性、すなわち、水をはじく分子の部分の特性、言い換えると、水に塗れること、または、水と混和することを回避する特性を提供してよい。非極性官能性は、従って、エレクトロウェッティング素子に印加されている電圧が無い、すなわち、ゼロの時、第1流体によって濡れる親和性を提供してよい。例においては、この特性を用いて、上記のように、第1流体に隣接するために第1表面の濡れ性を提供する。
【0034】
例えば、テフロン(登録商標)1600を使用して絶縁層の一部として疎水性層を提供する既知の方法において、疎水性層の表面は、疎水性を低下させるために、例えば、反応性イオンエッチング(RIE)を用いて処理する必要がある。そして、親水性の壁材料を疎水性層の表面に塗布してよい。この処理を行わなければ、表面の疎水性は、壁材料の付着のために望ましくない。疎水性によって、疎水性材料上に壁が不十分に形成、及び/または、不十分に接着され得る。さらに、疎水性が低減されると、SU8等の壁材料の残りが、表示エリア内の疎水性材料の表面の一部についたままになることがあり、それによって、表示エリアを汚し、エレクトロウェッティング素子における流体切り替えを妨げる可能性もある。さらに、壁が形成されると、表示エリア内の疎水性層表面の疎水性を回復する必要がある。回復は、壁形成プロセスで用いた温度より高くなり得る温度に疎水性層をさらすことによって、リフローステップを用いて行われてよい。しかしながら、このリフローは、疎水性低減処理の前の疎水性のレベルまで表面の疎水性を十分には回復しない場合がある。
【0035】
表示エリアの表面、すなわち、上記第1表面と、壁を形成する表面、すなわち、上記第2表面を提供する層を形成する材料に、上記のように、異なる材料、例えば、アイオノマー材料を用いることによって、エレクトロウェッティング素子の支持プレートを製造する新しい方法を使用できる。これに関しては後に記載する。異なる材料の特性は、例においては、異なる材料の層の表面を、その上に壁を形成するために、表面の疎水性を低減する処理が不要であることを意味する。代わりに、異なる材料分子の極性官能性は、例えば、壁材料に対する適切な親和性を与え、第2表面への壁材料の良好な付着性につながる。RIEを用いて表面を処理して、壁を塗布するための低疎水性の表面を提供する既知の方法の後、例においては、極性官能性は、例えば、テフロン(登録商標)1600の層の表面を模倣すると考えられてよい。さらに、例において、第1表面は、異なる材料分子の無極性部分の存在によって、壁材料に対しては濡れにくいままで、第1流体に対しては濡れやすい。これは、エレクトロウェッティング素子の第1流体に隣接する表面の疎水性を回復するためにリフローステップまたは同等のステップを行う必要もないので、支持プレートの製造方法を簡単にできる。さらに、壁材料の残りの表示エリアへの付着性を低減できて、より良い表示及び/または切り替え性能をエレクトロウェッティング素子に与える。例えば、材料の疎水性を回復するための熱処理を必要とせずに、第1表面は、疎水性であってよく、第2表面は親水性であってよい。代わりに、以下にさらに記載するように、異なる材料分子は、例えば、分子の異なる部分を向けて、第1表面と第2表面が異なる表面濡れ特性を提供するように構成することができる。例えば、壁材料の極性基によって与えられる双極子力、異なる材料の表面に塗布された壁材料への引力等、外力の存在によって、極性官能基は、極性特性を有するSU8等の壁材料の方に向いてよく、また、少なくとも部分的に壁材料内に挿入される場合もある。さらに、例えば、異なる材料を含む層の下にある障壁層等の層の存在によって、異なる材料分子の非極性部分は、例えば、障壁層を形成する下の層の材料に対する極性官能基の引力によって、第1表面の方に向いてよい。異なる材料は、従って、極性官能基の向きに応じて、第1流体に濡れやすく、壁材料に濡れにくい第1表面等の表面と、第1表面と比較して、壁材料に濡れやすく、第1流体に濡れにくい第2表面等の表面を提供する。
【0036】
例においては、上記極性官能性は、実質的に極性であると考えられてよく、上記無極性官能性は、実質的に無極性であると考えられてよい。このような例における実質的は、次のような意味である。例えば、分子の極性部分及び無極性部分は、例えば、前述した極性または無極性と考えられる異なる原子間結合に従って、それぞれ、極性、無極性であるが、さらに、分子の実質的に極性の部分及び実質的に無極性の部分は、壁材料が異なる材料の表面に塗布される時、例えば、壁材料との相互作用に関して、本明細書に記載の機能を果たす。さらに、実質的という用語は、分子内の電子の移動による極性の任意の過渡変化及び比較的小さい変化を表すために使用する。
【0037】
ある例においては、異なる材料は、以下の式R
1‐A
n‐R
2を有する。ここで、R
1は第1末端基、R
2は第2末端基、nは2以上の整数、各Aは、第1モノマーとみなし得る式‐CF
2CF
2‐を有するR
3、または、第2モノマーとみなし得る式‐CFR
5CF
2‐を有するR
4からなるグループから別々に選択されてよく、ここで、R
5は、式‐L‐Qを有し、Lはリンカー基、Qは実質的な極性基で、A
nは、R
3の少なくとも1つとR
4の少なくとも1つとを含む。リンカー基Lは、実質的な極性基Qの骨格に対する位置が外力に応じて変更可能なように、例においては、十分に長く柔軟である。リンカー基Lの極性は、材料の所望の特性に応じて選択されてよい。
【0038】
例において、R
5の少なくとも1つリンカー基Lは、単結合、直鎖アルキレン基、分岐アルキレン基、直鎖フルオロアルキレン基、分岐フルオロアルキレン基、ペルフルオロ直鎖アルキレン基、または、ペルフルオロ分岐アルキレン基からなるグループから、別々に選択される。
【0039】
例においては、R
5の少なくとも1つ、例えば、全てのリンカー基Lは、2〜10個の炭素原子を含む、すなわち、2〜10個の炭素原子を有する直鎖アルキレン基、2〜10個の炭素原子を含む直鎖フルオロアルキレン基、または、2〜10個の炭素原子を含むペルフルオロ直鎖アルキレン基からなるグループから別々に選択される。数範囲2〜10の炭素原子は、範囲内の全ての整数、すなわち、2、3、4、5、6、7、8、9、及び、10を含む。炭素原子のこの範囲は、リンカー基Lの適切な柔軟性及び長さを提供することが分かった。ある例においては、リンカー基は、2〜3、4〜5、6〜7、または、8〜10個の炭素原子を含んでよく、例えば、第1流体及び第2流体の特定の配合(formulation)及び使用されている壁材料に応じて、炭素原子のこれらの部分的範囲は、例えば、第2表面の壁付着性と、第1表面の疎水性とに関して、前記材料に所望の特性を与える。
【0040】
例においては、R
5の少なくとも1つ、例えば、全てのリンカー基Lは、以下の式‐R
6R
7R
8‐を有する。ここで、R
6は、単結合、直鎖アルキレン基、分岐アルキレン基、直鎖フルオロアルキレン基、分岐フルオロアルキレン基、ペルフルオロ直鎖アルキレン基、または、ペルフルオロ分岐アルキレン基のうちの1つであり、単結合の例以外の任意のこのような例においては、R
6は、例えば、1、2、3、4または5個の炭素原子を含んでよい。ある例においては、R
6は直鎖アルキレン基で、フルオロアルキレン若しくはペルフルオロであってよく、R
6は、1つの炭素原子Cを含む。これは、好ましい柔軟性特性を側鎖に与えることが分かったが、さらなる例においては、R
6基を形成する異なる数の炭素原子を想定する。
【0041】
このような例においては、R
7は、‐CHR
9‐、‐CFR
9、または、‐CR
9R
9‐の式の1つを有してよい。各前記R
9は、直鎖アルキル基、分岐アルキル基、直鎖フルオロアルキル基、分岐フルオロアルキル基、ペルフルオロ直鎖アルキル基、または、ペルフルオロ分岐アルキル基からなるグループから別々に選択される。例においては、R
9は、メチル基である。すなわち、R
9は、1個の炭素原子Cを含み、1個の炭素原子Cは、側鎖の柔軟性という点で、好ましい特性を与えることが分かっている。R
9が異なる数の炭素原子を含む他の例を想定する。
【0042】
さらに、このような例においては、R
8は、直鎖アルキレン基、直鎖フルオロアルキレン基、または、ペルフルオロ直鎖アルキレン基であってよい。リンカー基Lの少なくとも1つ、例えば、全てのR
8は、ある例においては、1〜8個の炭素原子を別々に含んでよい。これは、側鎖の末端に適切な程度の柔軟性を与えるので、外力に応じて、極性官能基Qの再配置のためにさらに自由度を与える。範囲1〜8個の炭素原子とは、範囲内の整数値、すなわち、1、2、3、4、5、6、7、8を含む。ある例においては、R
8は、1〜3、4〜5、または、6〜8個の炭素原子を含む。再び、例えば、第1流体及び第2流体の特定の配合と、例えば、使用されている壁材料に応じて、炭素原子のこれらの部分的範囲は、例えば、第2表面の壁付着性と第1表面の疎水性に関して材料の所望の特性を与える。
【0043】
ある例においては、リンカー基Lの少なくとも1つ、例えば、全てのR
8は、少なくとも5個の原子を含む。例えば、各リンカー基Lは、6個の原子を含んでよく、R
8がフルオロエチレン基またはペルフルオロであってよいエチレン基である例に対応する。例えば、R
8がペルフルオロアルキレン基の場合、R
8は、式‐CF
2CF
2‐を有するので、少なくとも6個の原子を含む。ある例においては、側鎖は、少なくとも5個の原子を含み、その末端に極性官能基Qの再配置のための適切な柔軟性を提供する。
【0044】
ある例においては、R
5の少なくとも1つ、例えば、全てのリンカー基Lは、別々に、例えば、1〜8個の炭素原子(すなわち、1、2、3、4、5、6、7、または、8個の炭素原子)を含むエーテル基、例えば、1〜8個の炭素原子(すなわち、1、2、3、4、5、6、7、または、8個の炭素原子)を含むフルオロエーテル基、例えば、1〜8個の炭素原子(すなわち、1、2、3、4、5、6、7、または、8個の炭素原子)を含むペルフルオロエーテル基、または、以下の式の1つを有する基、のうちの1つである。以下の式とは、‐O(CH
2)
z-、‐O(CF
2)
z-、‐(OCH
2CH
2)
x-、‐OR
6R
7OR
8-、‐O(R
6R
7O)
zR
8-、または、-OR
6R
7(OCH
2CH
2)
x-であり、ここで、R
6は、単結合、直鎖アルキレン基、直鎖フルオロアルキレン基、または、ペルフルオロ直鎖アルキレン基、例えば、前述したR
6の例うちの1つである。
【0045】
例においては、R
7は、-CHR
9-若しくは-CR
9R
9-のうちの1つを有する、または、R
7は、直鎖アルキレン、直鎖フルオロアルキレン、若しくは、ペルフルオロ直鎖アルキレンのうちの1つである。
【0046】
このような例には、各R
9の少なくとも1つ、例えば、全てが、別々に、直鎖アルキル基、分岐アルキル基、直鎖フルオロアルキル基、分岐フルオロアルキル基、ペルフルオロ直鎖アルキル基、または、ペルフルオロ分岐アルキル基のうちの1つである例もある。ある例においては、R
9はメチル基で、メチル基は、ある例においては、側鎖の柔軟性の維持を助けている。
【0047】
このようなさらなる例には、R
8が、直鎖アルキレン基、直鎖フルオロアルキレン基、または、ペルフルオロ直鎖アルキレン基である例もある。ある例においては、各R
8は、別々に、1〜8個の炭素原子、すなわち、値1、2、3、4、5、6、7または8を含み、1〜3、4〜5、若しくは、6〜8個の炭素原子を含む部分的範囲内の値を有してよい。ここでも、1〜8個の炭素は、極性官能基Qを配置するために適切な柔軟性を側鎖に与える。さらに、ある例においては、各R
8は、少なくとも5個の原子を含むリンカー基に関して説明したのと同様、少なくとも5個の原子を別々に含む。ある例においては、R
7及びR
8は、それぞれ、直鎖アルキレン基及びペルフルオロ直鎖アルキレン基である。
【0048】
zは、範囲1〜8から選択される値、すなわち、値1、2、3、4、5、6、7または8を有する整数であり、1〜3、4〜5、または、6〜8個の炭素原子を含む部分的範囲内の値を有してよい。ここでも、1〜8個の炭素は、極性官能基Qを配置するために適切な柔軟性を側鎖に与える。
【0049】
xは、範囲1〜3から選択される値を有する整数、すなわち、値1、2または3の-(OCH
2CH
2)-基である。
【0050】
ある特定の例においては、リンカー基Lは、-OCF
2CF(CF
3)O(CF
2)
1-8-、-OCF
2C(CF
3)
2O(CF
2)
1-8-、-OCF
2CF
2O(CF
2)
1-8-、-O(CF
2CF
2O)
1-8(CF
2)
1-8-、-OCF
2CF(CF
3)
2O(CH
2)
1-8-、-OCF
2C(CF
3)
2O(CH
2)
1-8-、-OCF
2CF
2O(CH
2)
1-8-の式のうちの1つを有する。
【0051】
他の特定の例においては、リンカー基Lは、-OCF
2CF(CF
3)(OCH
2CH
2)
1-3-、-OCF
2C(CF
3)
2(OCH
2CH
2)
1−3‐、OCF
2CF
2(OCH
2CH
2)
1−3-、-O(CF
2CF
2O)
1-8(OCH
2CH
2)
1-3-の式のうちの1つを有する。
【0052】
上記のように、極性基Q、例えば、各極性基Qは、例えば、酸素原子O、窒素原子N、または、硫黄原子Sに結合された水素原子Hを含む。ある例においては、各側鎖の各Qは、-OH、すなわち、ヒドロキシル基、-COOH、すなわち、カルボン酸、SO
3H、すなわち、スルホン酸、NH
2、すなわち、1級アミン、または、CONH
2、すなわち、アミドからなるグループから別々に選択される。特定の例、例えば、本明細書に記載の例においては、リンカー基Lは、基(OCH
2CH
2)
x-を含み、
xは1〜3の範囲の整数値を有し、極性基Qが-OHである。エレクトロウェッティング素子の疎水性層を形成する既知のフルオロポリマーは、このような極性基をいずれも欠いている。
【0053】
ある例においては、A
n材料は、アイオノマーの一例である式R
1-[(CF
2CF
2)
f(CF(OCF
2CF(CF
3)OCF
2CF
2COOH)CF
2)
1-f)]-R
2を有する。よって、R
3は、-(CF
2CF
2)-、すなわち、材料のポリマーの第1モノマーであり、R
4は、-(CF(OCF
2CF(CF
3)OCF
2CF
2COOH)CF
2)-、すなわち、材料の第2モノマーである。fは、ポリマーの第1モノマーの割合、例えば、分数を表す、よって、ポリマーの第2モノマーの割合、例えば、分数は、1-fである。この例は、郵便番号100-8405東京都千代田区丸の内1-5-1旭硝子が供給しているアイオノマーの一例である商品名フレミオン(商標)のポリマーと呼ばれてよい。
【0054】
フレミオン(商標)は、商品名ナフィオン(商標)のポリマーと、ナフィオン(商標)においては-COOH基に代わってSOOOHである以外は類似している。ナフィオン(商標)は、米国デラウェア州ウィルミントンのデュポン社が供給している。
【0055】
当業者は、本明細書に記載の例に従った材料の合成法が容易に分かるであろう。例えば、以下に記載するように、支持プレートの下になる表面をコートするために適切に調製されたフレミオン(商標)が使用されてよい。参考文献Modern Chlor-Alkali Technology 1992,pp59-67の論文に従って、フレミオン(商標)のモノマーを合成する方法の例を引用により本明細書にその内容を組み込み、以下に記載する。
【化1】
【0056】
別の例においては、ナフィオン(商標)は、当業者が理解するように、-SOOOH基を-COOHまたは-OH等の必要な極性官能基で置換するように変性してよい。他の例においては、ナフィオン(商標)の合成に使用される方法と類似の方法が、当業者の理解に従って適宜修正されて使用されてよい。ナフィオン(商標)のモノマーを合成する方法の例を記載する。
【化2】
ナフィオンを合成する例は、参考文献Journal of New Materials for Electrochemical Systems 1,47―66(1998)の論文にさらに詳しく記載されている。
【0057】
本明細書に記載の例に従ってペロフルオロモノマーの合成に使用してよい別の反応を、ナフィオン(商標)に関して記載する。しかし、当業者が理解するように、異なるペロフルオロモノマーに関して、適宜、方法を修正してよいことは理解されたい。書籍『Fluorinated Ionomers』Second Ed.,Walther Gro,page15を参照し、その内容は本明細書に含まれる。これらの反応は、フッ化物イオンによって触媒される。フッ化セシウム(CsF)は、ジグリム、テトラグライム、アセトリニル、及び、アジポトニル等の溶剤への溶解度のために好まれる。テトラフルオロエタン(TFE)スルトンは、以下の図から明らかなように、直接、または、フッ化物イオンが触媒した開環後の反応に使用できる。
【化3】
【化4】
【0058】
本明細書に記載の例の材料の合成に使用し得る別の合成方法を、当業者が理解するように適宜、修正して、機関誌Applied Sciences 2012,2,page 258から取得して、記載する。
【化5】
【0059】
重合させて材料を形成するモノマーの割合に応じて、ポリマー内の異なる種類のモノマーの割合は、制御されてよい。例えば、R
3モノマーとR
4モノマーの数の比、すなわち、比R
3:R
4は、1:2〜4:1の範囲内である。すなわち、R
3/R
4の数の比は、0.5〜4の範囲内であってよい。例えば、層15を形成する材料に壁材料を適切に塗布、例えば、広げることができるように、ポリマー分子の実質的な極性基の割合を制御することが望ましい。
【0060】
ポリマー内のR
3とR
4のモノマーの総数は、合成方法に依存して制御されてよい。例えば、ポリマーは、400〜400,000ダルトンの分子量を有してよい。例えば、モノマーの数は、ナフィオン(商標)の数と匹敵し得る。重合及び合成は、ポリマー分子の特性を決定するように制御されてよい。例えば、製造中、下にある表面に材料を塗布する方法には適切な粘度が必要であってよい。このような粘度は、例えば、セ氏21度の室温で、動的粘度125センチポアズであってよい。
【0061】
しかしながら、材料はあまり粘性が高くないことが望ましい、さもなければ、以下に記載するように、壁材料を塗布する時、分子の再構成能力に影響を与え得る。
【0062】
ある例においては、材料は、分子の少なくとも一部分、ある例においては、分子の実質的に全て(例えば、95%以上)が、例えば‐(R
3R
4)‐ダイマーをさらに順次繰り返し得る以下の式を有する、R
3とR
4の基の交互の配列によって形成されるように、合成されてよい。他の例においては、R
3とR
4のモノマーは、交互の配列を形成しなくてよく、代わりに、少なくとも部分的に、ランダムな配列を形成してよい。
【0063】
例においては、第1末端基は、H、F、または、材料のポリマー分子を形成する重合反応を開始する開始剤によって形成された開始基からなるグループから選択される。さらに、例においては、第2末端基は、H、F、または、材料のポリマー分子を形成する重合反応を停止させる停止剤によって形成された末端基からなるグループから選択される。これらの基の例は、式CF
3CF
2-を有するペンタフルオロエチレン(TFE)、または、式CF
3CF
2CF
2‐を有するヘプタフルオロプロピレンであってよい。
【0064】
少なくとも1つのエレクトロウェッティング素子の支持プレートを製造する方法の例を
図1、
図2、及び、
図3の特徴に関して記載する。表示装置の製造プロセス中、第1支持プレートは、全体を製造されてよく、または、製造プロセス中、部分的若しくは完全にアセンブルされた支持プレートとして提供されてよい。例に従って第1支持プレートを製造する時、基板7を用意する。上記第1電極に対応する少なくとも1つの電極17を含む電極層を、基板7上に設ける。少なくとも1つの電極を形成する材料は、表面、例えば、基板の表面上に設けられ、その材料は、設計パターンに従って少なくとも1つの電極を形成するためにパターニングされる。第1電極の材料が、例えばITOの場合、当業者には分かるように、プラズマ化学蒸着技術またはDC(直流)マグネトロンスパッタリング技術が使用されてよい。
【0065】
続いて、この例においては、障壁層16と異なる材料を含む層とを含む絶縁層13は、第1電極構造上に設けられる。例においては、障壁層は誘電材料から形成され、誘電材料は、電極を形成するためにパターニングされた材料上に設けられて、電極上に誘電材料層を形成する。例えば、障壁層形成のためのこの誘電材料は、当業者が理解されるように、化学蒸着(CVD)または物理蒸着(PVD)、例えば、スパッタ蒸着、若しくは、温度、圧力、若しくは、電力が適切に制御される電子ビーム蒸着を用いて、提供されてよい。次に、異なる材料を含む層15が、この例においては、障壁層の表面上に、他の例においては、電極層上に、例えば、当分野で周知のシルトコーティング、フレキソ印刷、スピンコーティング、または、浸漬コーティング等の湿式コーティングプロセスを用いて、層を形成する材料を塗布することによって、形成されてよい。従って、これによって、この例においては、障壁層の表面上に異なる材料を含む材料層を形成する。ここに記載の例においては、層15は、全ての画素に対して共通の第1支持プレートの連続した、途切れていない層である。
【0066】
例においては、層15を形成した後、例えば、アイオノマーである異なる材料の層は、この例においては、第1流体等、上記エレクトロウェッティング素子の流体が隣接するのに適切した濡れ性である表面を提供する。表面は、従って、疎水性であってよい。これは、例えば、形成する材料層の下にある材料に引き付けられる分子の極性基の引力による。従って、第1表面を形成する層の領域において、分子は、分子の少なくとも1つの側鎖が材料層の表面から材料のバルクの方に向くように構成され、その結果、極性官能基(複数可)は、第1表面から離れて位置する。
【0067】
次に、少なくとも1つの壁が、例えば、SU8フォトレジスト材料を用いたフォトリソグラフィによって形成されてよく、これは当業者には周知である。より詳細には、壁材料は、異なる材料の層の表面の少なくとも一部を横切って広がってよく、次に、例えば、塗布された壁材料にマスクを用いて、選択的にあてられる紫外線を用いたフォトリソグラフィによってパターニングされてよい。次に、パターニングされた壁材料をハードベークした後、パターニングされた壁材料を現像し、形成された壁を残す。本明細書に記載の例においては、壁材料は、第2表面上に少なくとも1つの壁を形成するようにパターニングされる。従って、壁材料は、材料、例えば、本明細書に記載のアイオノマー材料の層の第2表面に塗布されてよい。第2表面は、壁を形成する表面である。例においては、壁材料を塗布する時、材料の層の第1表面も壁材料によって覆われるが、後に、現像ステップ中に、取り除かれる、それによって、側鎖は向きを変えて、塗布された壁材料に引き付けられる極性基と共にいる状態から、第1表面から離れて層15のバルクの方を向き、それによって、疎水性の第1表面を提供する。上記のような第1表面は、表示エリアに対応する。
【0068】
より詳細には、壁材料を第2表面に塗布すると、下にある層の異なる材料、例えば、本明細書に記載の例のアイオノマー材料は、第2表面を形成する層の領域で、再構成して、第2表面に第1表面より壁材料により濡れやすい表面を提供する。従って、少なくとも1つの壁を形成した後、第2表面は、壁材料を塗布する前に例えば、RIEを用いた層の表面への処理を必要とせずに、第1表面より水に濡れやすくてよい。材料の極性官能基と第2表面に塗布される壁材料との間の引力によって再構成が生じる。従って、例においては、この引力によって、実質的な無極性骨格からペンダントする分子の1つまたは複数の追加の側鎖が、第2表面で、第2表面に塗布された壁材料内に、少なくとも部分的に挿入され、従って、ペンダント側鎖の極性官能基(複数可)が挿入される。極性基の壁材料へのこの挿入は、例においては、下にある層への壁材料の付着性を向上させる。さらに、極性基は、壁材料への引力によって、少なくとも第2表面に壁材料を広げるのを助けてよく、それによって、壁材料と第2表面との間の接合の緊密さを改善する。
【0069】
壁材料を塗布した後、壁材料がフォトレジストの場合、壁材料は、上記のように及び当業者が理解するように、適切なマスキング及び現像技術を用いて現像される。これは、第2表面に塗布された壁材料を硬化させるハードベークステップを必要とし得る、このハードベークは、セ氏約180度の温度で行われてよい。既知の技術と比較して、材料が塗布されて層を形成すると、材料の層の第1表面は、エレクトロウェッティング素子の機能に適しているので、より高い温度でリフローステップを行うことは必要ないことに注意されたい。従って、例においては、例えば、RIEを用いて表示エリアを処理する必要がないので、また、例えば、その結果、表示エリアを壁材料によって汚すことがないので、より質の良い表示エリアが提供される。本明細書に記載の例の異なる材料を用いることによって、既知の技術に比べてより簡単な製造技術を使用してよい。
【0070】
第1支持プレートを製造すると、第1支持プレートは、予め製造された第2支持プレートとアセンブルして、第1及び第2流体を第1及び第2支持プレート間に形成される空間に供給した後、1つまたは複数のエレクトロウェッティング素子アレイの最も外側の周囲で、例えば、接着シールを用いて第1及び第2支持プレートを接着することによって、1つまたは複数のエレクトロウェッティング素子を1アセンブルしてよい。当業者は、このための適切な技術を容易に理解されよう。
【0071】
「壁材料」という句は、少なくとも1つの壁を形成する材料、例えば、前駆体の壁材料と、壁形成プロセス後、少なくとも1つの壁を形成する材料と、少なくとも1つの壁を形成中に形成される任意の中間材料とを含むように使用されることに注意されたい。他の製造方法を用いて第1支持プレートを製造してよいことも理解されたい。
【0072】
上記例は、説明のための例であると理解されたい。例えば、以下に番号付けした条項に記載する追加の例も想定される。例えば、表示素子に関して例を記載したが、本明細書に記載の異なる材料、例えば、アイオノマー材料の使用は、他の種類のエレクトロウェッティング素子、例えば、エレクトロウェッティングレンズで使用されてよいことも想定される。
【0073】
任意の1つの例に関して記載した任意の特徴は、単独で、または、記載の他の特徴と組み合わせて、使用されてよく、例の任意の他の1つまたは複数の特徴と組み合わせて、または、例の任意の他の任意の組み合わせで使用されてよいことは理解されたい。さらに、上記に記載していない均等物及び変更も、添付の請求項の範囲を逸脱することなく、採用されてよい。
【0074】
1.エレクトロウェッティング素子であって、
流体と隣接する第1表面を備える層を有する支持プレートを備え、前記層は、実質的な無極性骨格と、前記骨格からペンダントし、実質的な極性基で終了する少なくとも1つの鎖とを有する材料から少なくとも部分的に形成される、前記エレクトロウェッティング素子。
【0075】
2.前記材料は、アイオノマー、両親媒性物質、前記実質的な無極性骨格が疎水性である材料、または、前記実質的な極性基が親水性である材料、のうちの少なくとも1つである、条項1に記載のエレクトロウェッティング素子。
【0076】
3.前記材料は、
R
1‐A
n‐R
2を有し、
ここで、R
1は第1末端基、
R
2は第2末端基、
nは、2以上の整数であり、
各前記Aは、
式‐CF
2CF
2-を有するR
3、または、
式‐CFR
5CF
2-を有するR
4
からなるグループから別々に選択され、
ここで、R
5は式‐L‐Qを有し、Lはリンカー基、Qは実質的な極性基、
A
nは、R
3の少なくとも1つとR
4の少なくとも1つを含む、
条項1に記載のエレクトロウェッティング素子。
【0077】
4.前記R
5の少なくとも1つの前記リンカー基Lは、
単結合、直鎖アルキレン基、分岐アルキレン基、直鎖フルオロアルキレン基、分岐フルオロアルキレン基、ペルフルオロ直鎖アルキレン基、または、ペルフルオロ分岐アルキレン基
からなるグループから別々に選択される、条項3に記載のエレクトロウェッティング素子。
【0078】
5.前記R
5の少なくとも1つの前記リンカー基Lは、
2〜10個の炭素原子を含む直鎖アルキレン基、2〜10個の炭素原子を含む直鎖フルオロアルキレン基、または、2〜10個の炭素原子を含むペルフルオロ直鎖アルキレン基
からなるグループから別々に選択される、条項3に記載のエレクトロウェッティング素子。
【0079】
6.前記R
5の少なくとも1つの前記リンカー基Lは、
式‐R
6R
7R
8‐を有し、
ここで、R
6は、単結合、直鎖アルキレン基、分岐アルキレン基、直鎖フルオロアルキレン基、分岐フルオロアルキレン基、ペルフルオロ直鎖アルキレン基、または、ペルフルオロ分岐アルキレン基のうちの1つであり、
R
7は、式‐CHR
9-、‐CFR
9、または、‐CR
9R
9‐のうちの1つを有し、各前記R
9は、直鎖アルキル基、分岐アルキル基、直鎖フルオロアルキル基、分岐フルオロアルキル基、ペルフルオロ直鎖アルキル基、または、ペルフルオロ分岐アルキル基からなるグループから別々に選択され、
R
8は、直鎖アルキレン基、直鎖フルオロアルキレン基、または、ペルフルオロ直鎖アルキレン基である、
条項3に記載のエレクトロウェッティング素子。
【0080】
7.前記リンカー基Lの少なくとも1つの前記R
8は、1〜8個の炭素原子を別々に含む、条項6に記載のエレクトロウェッティング素子。
【0081】
8.前記リンカー基の少なくとも1つの前記R
8は、少なくとも5個の原子を含む、条項6に記載のエレクトロウェッティング素子。
【0082】
9.前記R
5の少なくとも1つの前記リンカー基Lは、別々に、
エーテル基、フルオロエーテル基、ペルフルオロエーテル基、または、以下の式の1つを有する基のうちの1つであり、前記式は、
-O(CH
2)
z-、
-O(CF
2)
z-、
-(OCH
2CH
2)
x-、
-OR
6R
7OR
8-、
‐O(R
6R
7O)
zR
8‐、若しくは、
‐OR
6R
7(OCH
2CH
2)
x-
ここで、R
6は、単結合、直鎖アルキレン基、分岐アルキレン基、直鎖フルオロアルキレン基、分岐フルオロアルキレン基、ペルフルオロ直鎖アルキレン基、または、分岐ペルフルオロアルキレン基のうちの1つであり、
R
7は、式‐CHR
9‐若しくは‐CR
9R
9‐のうちの1つを有する、または、直鎖アルキレン、直鎖フルオロアルキレン、若しくは、ペルフルオロ直鎖アルキレンのうちの1つであり、
各前記R
9は、別々に、直鎖アルキル基、分岐アルキル基、直鎖フルオロアルキル基、分岐フルオロアルキル基、ペルフルオロ直鎖アルキル基、または、ペルフルオロ分岐アルキル基のうちの1つであり、
R
8は、直鎖アルキレン基、直鎖フルオロアルキレン基、または、ペルフルオロ直鎖アルキレン基であり、
zは、範囲1〜8から選択された値を有する整数で、
xは、範囲1〜3から選択された値を有する整数である、
条項3に記載のエレクトロウェッティング素子。
【0083】
10.各前記R
8は、別々に、1〜8個の炭素原子を含む、条項9に記載のエレクトロウェッティング素子。
【0084】
11.各前記R
8は、別々に、少なくとも5個の原子を含む、条項9に記載のエレクトロウェッティング素子。
【0085】
12.各前記Qは、別々に、酸素原子、窒素原子、または、硫黄原子のうちの1つに結合された水素原子を含む、条項3に記載のエレクトロウェッティング素子。
【0086】
13.各前記Qは、‐OH、‐COOH、SO
3H、NH
2、または、CONH
2からなるグループから別々に選択される、条項3に記載のエレクトロウェッティング素子。
【0087】
14.比R
3:R
4は、1:2〜4:1の範囲にある、条項3に記載のエレクトロウェッティング素子。
【0088】
15.前記A
nは、前記R
3と前記R
4Rの少なくとも1つの交互の配列を含む、条項3に記載のエレクトロウェッティング素子。
【0089】
16.前記アイオノマーのポリマー分子は、分子量400〜400,000ダルトンを有する、条項3に記載のエレクトロウェッティング素子。
【0090】
17.前記第1末端基は、H、F、または、前記材料のポリマー分子を形成する重合反応を開始する開始剤によって形成された開始基、からなるグループから選択され、
前記第2末端基は、H、F、または、前記材料のポリマー分子を形成する重合反応を停止する停止剤によって形成された末端基からなるグループから選択される、
条項3に記載のエレクトロウェッティング素子。
【0091】
18.前記層の第2表面に形成された少なくとも1つの壁を備え、前記第2表面は前記第1表面より水に濡れやすい、条項1に記載のエレクトロウェッティング素子。
【0092】
19.前記第1表面を形成する前記層の領域において、前記少なくとも1つの側鎖のうちの1つまたは複数の側鎖は、前記各実質的な極性官能基が、前記第1表面から離れて位置するように向いており、
前記第2表面を形成する前記層の領域において、前記少なくとも1つの側鎖の追加の1つまたは複数は、前記各実質的な極性官能基が前記少なくとも1つの壁を形成する材料内に位置するように向けられる、
条項18に記載のエレクトロウェッティング素子。
【0093】
20.エレクトロウェッティング素子の支持プレートを製造する方法であって、
i)前記支持プレートの層を形成する表面を備えること、
ii)前記表面に、層材料であって、実質的な無極性骨格と、実質的な極性基で終了する少なくとも1つのペンダント鎖を有する前記層材料を塗布すること、及び、
iii)前記表面に塗布された前記層材料から前記表面上に前記層を形成すること、
を含む、前記方法。
【0094】
21.前記表面に前記層を前記形成すると、前記層は、エレクトロウェッティング素子の流体に隣接させるために濡れ性を有する前記支持プレートの第1表面を提供する、条項20に記載の方法。
【0095】
22.iv)前記層の第1表面と第2表面に、前記第2表面に少なくとも1つの壁を形成するための壁材料を塗布することを含み、前記層材料は、前記壁材料の前記塗布後、再構成して、前記第1表面と前記第2表面に前記壁材料の前記塗布前より前記壁材料により濡れやすい表面を提供する、
条項20に記載の方法。
【0096】
23.前記層材料の再構成は、少なくとも1つの前記実質的な極性基を前記第2表面に塗布された前記壁材料に少なくとも部分的に挿入するように前記層材料を再構成することを含む、条項22に記載の方法。
【0097】
24.iv)中に、前記第1表面に塗布された壁材料を除去することを含み、前記層材料は、エレクトロウェッティング素子の流体に隣接するための濡れ性を前記第1表面に提供するように再構成し、前記第1表面は、前記第2表面より前記流体に濡れやすい、条項22に記載の方法。