(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下、本発明に係る電気音響変換装置の実施の形態をスピーカ装置(例えばイヤホン装置)を例にし、図面を参照して説明する。
【0041】
図1は本発明のスピーカ装置に係る第1の構成について実施の一形態を示す縦断面図である。
【0042】
図1において、ヨーク29は、磁性体板材料から筒形に成形加工されてなり、一方(
図1中上側)の開放端側を外側に屈曲して形成されたリング板状のつば部29aを有し、このつば部29aの外周部が若干上側に立ち上がるように屈曲形成され、ケース本体31内に嵌められている。
【0043】
ヨーク29本体の外周には、これと間隔を置くようにして筒状の駆動マグネット33がつば部29aに重ねるようにして配置されている。
【0044】
駆動マグネット33の
図1中下面には、磁性体材料からなるリング状のポールピース35が重ねるようにして配置されており、ポールピース35の内周が、ヨーク29の
図1中下方の先端部側に環状の空隙を介し、ほぼ同じレベル位置で周対面している。
【0045】
このポールピース35は、高音質を得るための磁束集中用の部材であるが(以下同じ)、駆動マグネット33と同一視可能である。
【0046】
ヨーク29、駆動マグネット33およびポールピース35は、図示しない接着剤等によって共軸的に固定されて一体化され、つば部29aに下方から固定されている。
【0047】
ポールピース35の内周とこれと僅かの間隔を置いて対向するヨーク29の先端部との間には、ヨーク29からの磁束によって磁気回路が形成されている。
【0048】
振動板37は、
図2に示すように、従来公知の薄い絶縁性フィルム材料から円板状に形成された振動膜であり、比較的広い中央部を若干ドーム状に膨らませてなる中央領域37aと、この中央領域37aを狭い幅で同心円状かつ環状に囲んだ外周領域37bとを有している。
図2A、Bは振動板37を各々上下逆にして図示したものである。
【0049】
振動板37の中央領域37aには、折り返し形状、放射状又は同心円状のリブ等を設けてフィルム材料を屈曲させた屈曲部が形成され、中央領域37aは撓み難いよう剛性を有している。中央領域37aの中心部には、
図1中下側に突出する凹部37cが形成されており、この凹部37cも屈曲部として中央領域37aの剛性向上に寄与している。
【0050】
外周領域37bには、いわゆるコルゲーション(corrugation)エッジと称される放射状の細かい凹凸条が形成されているが、中央領域37aと比較し、外周領域37bは容易に撓み易く振動に対して柔軟性が高くなっている。
【0051】
すなわち、中央領域37aが外周領域37bに比べて撓み難く強い剛性を有している。中央領域37aが外周領域37bよりも例えば2〜5倍程度の強い剛性を有することが好ましいであろう。もっとも、中央領域37aを含めた振動板37の良好な振動が確保される剛性範囲内が大切である。
【0052】
振動板37には、中央領域37aの撓みを抑える屈曲部をそれ自体に形成する他、
図2Cに示すように、別フィルム板、ダイヤモンドやルビー等のコーティング層、アルミニウムやチタン等の金属蒸着層やスパッタリング層等の補強層37dを中央領域37aに重ね形成する構成も可能である。この構成によっても、その中央領域37aに対し、外周領域37bに比べて撓み難く強い剛性を持たせることが可能である。
【0053】
振動板37は、
図1に示すように、ヨーク29の開放端面(先端部)側およびポールピース35に対して空間を持ってそれらを覆うとともに、外周領域37bの外縁全周をポールピース35の外周縁に固定させ、ポールピース35に支持されている。
【0054】
ヨーク29のつば部29aの外面(
図1中上面側)には回路基板39が固定されている。回路基板39には、図示しないケーブル(
図9参照)によって電子機器(図示せず。)から音声信号が供給される。
【0055】
図1中の符号41はカバー基板であり、このカバー基板41には音質調整用の制動孔である小孔41aが貫通形成されている。
【0056】
振動板37の一方の面側(
図1中上面側)において、中央領域37aと外周領域37bとの環状の境目には、円筒状のボイスコイル43の一方の端面側が中央領域37aを囲むように固定されている。
【0057】
ボイスコイル43は、絶縁被覆された細い絶縁導線を円筒状に巻いて一体化したものであり、その両端リード線43aが、中央領域37aに形成された凹部37cまで導出され、凹部37cに塗布された接着剤(図示省略)によって振動板37に直接止着されている。
【0058】
両端リード線43aは、中央領域37aにおいて、ボイスコイル43の付け根から凹部37cまでの複数箇所、例えば3箇所で接着剤(図示省略)にていわゆるチョン付けされ、振動板37に部分的に止着されている。
【0059】
ボイスコイル43は、ヨーク29の外周と駆動マグネット33やポールピース35の内周との間に、ヨーク29と駆動マグネット33やポールピース35とに僅かな間隔を置いて挿入され、ヨーク29の外周と駆動マグネット33の内周に対して僅かの間隔を置いて環状に対面している。
【0060】
ボイスコイル43からの両端リード線43aは、振動板37の凹部37cから外部へ立ち上がるように導出され、回路基板39に接続されている。なお、両端リード線43aは、振動板37の後述する振動によってもストレスが加わらないよう余裕を持って空中配線で外部へ立ち上がっている。
【0061】
両端リード線43aを介した音声信号のボイスコイル43への印加によってボイスコイル43が変位し、振動板37が振動駆動する。
【0062】
すなわち、ヨーク29、駆動マグネット33およびボイスコイル43により、振動板37を振動駆動させる駆動部45が形成され、いわゆる外磁型のスピーカが構成されている。
【0063】
上述したケース本体31は、ヨーク29、駆動マグネット33およびポールピース35が嵌る大径筒状部31aと、この大径筒状部31aから連続してヨーク29とほぼ同寸法になっている小径筒状部31bとを有し、絶縁性合成樹脂から一体的に成形加工されている。
【0064】
ヨーク29、駆動マグネット33およびポールピース35が、一体化されて大径筒状部31a内側に嵌め込まれ、大径筒状部31a内側に固定支持されている。
【0065】
ケース本体31において、大径筒状部31aから小径筒状部31bに至る部分が振動板37と間隔を置いてこれを覆っており、この部分には制御マグネット47が、振動板37を間に挟んでヨーク29と対向するとともに小径筒状部31bを塞ぐように固定されてい
る。
【0066】
制御マグネット47は、ヨーク29とほぼ同径の外径寸法のリング板状を有し、駆動マグネット33又はポールピース35と並行に配置されており、ヨーク29に対面する面側がヨーク29と同極性に着磁されている。
【0067】
制御マグネット47は、ヨーク29からポールピース35への漏洩磁束の拡散を抑えて圧縮するとともに、磁束密度の上昇を介して振動板37の駆動損失の軽減する機能を有している。
【0068】
上述した構成のスピーカ装置は、ケース本体31において大径筒状部31a外側に図示しないカバー等を被せるとともに、小径筒状部31b外周に可撓性のイヤーチップ49を嵌め、イヤホン装置として製品化される。なお、後述する第2の構成以降ではイヤーチップの図示を省略する。
【0069】
このようなスピーカ装置では、ボイスコイル43へ音声信号を印加することにより、駆動部45が振動板37を振動発音させ、音通筒体となった小径筒状部31bを介して振動音が外部へ伝搬される。
【0070】
そして、本発明に係るスピーカ装置は、上述した
図9に示したように、耳珠19、対珠21、耳甲介23で囲まれた耳甲介腔25にケース本体31を収納するとともに、先端のイヤーチップ49を外耳道27に挿入して装着使用される。
【0071】
このような本発明のスピーカ装置に係る第1の構成では、
図10Cに示すように、ボイスコイル43からの両端リード線43aの導出位置P5すなわち負荷位置が、振動板37の中央領域37aの中心部になっているから、振動板37全体がピストンモードで均一変位し、広い周波数帯域、優れた過渡応答波形、特に低い音域で高品質で音を再生させることが可能である。具体的には、楽器等の再生音を判別し易い。
【0072】
さらに、その動作について以下に詳述する。
上述した本発明のスピーカ装置では、両端リード線43aが、ボイスコイル43の付け根から振動板37の中央領域37aまで引き出されるとともに凹部37
cに接着剤などで固定され、凹部37
cから空中配線にて導出されているから、振動板37の動作時には中央領域37aの両端リード線43aの影響、例えば両端リード線43aの質量やスティフネスによって振動板37に機械的な負荷が掛かる。
【0073】
しかし、ボイスコイル43内側の中央領域37aは、
図1に示すように、中央領域37aに折り返し部や凹部37c等の屈曲部を設けて強化されて剛性を有し、ボイスコイル43と同時に上下振動はするが、それ自体は撓み難い不撓領域になっている。
【0074】
そのため、ボイスコイル43の両端リード線43aによる負荷を、不撓領域である中央領域37aの中心部で受けることでその負荷の影響を受け難くなり、振動板37は、従来のようにローリング運動することなく全体として均一に変位し、周波数特性、過渡応答特性等の向上に寄与する。
【0075】
なお、凹部37cは補強機能以外に、振動板37の中央マーカーとしての機能も兼ねている。
【0076】
他方、従来のスピーカ装置において、低域レスポンスを向上させようとすると振動板37の振動振幅が大きくなるため、歪の増加、ビビリ音の発生など異常振動が生じ易い。
【0077】
従来のスピーカ装置において、振動板7は、
図10Aのように、両端リード線9aの負荷によるアンバランスなローリングと呼ばれるような動作を生じ易く、これを前提にして振動板7の設計がなされていたので、振動板7の振動時の歪をある程度吸収するために中央領域7aに相当する部分もある程度撓んで振動するように球状形状とすることが一般的であった。
【0078】
そして、従来構造において、本発明のように振動板43の剛性を高めると、撓みながら振動する外周領域37b部分には更に大きな歪が発生し、異常振動音等が発生し易い。
【0079】
本発明の構成では、ローリング運動が発生し難いため、外周領域37bについても捻じれなどの歪が発生し難く、コルゲーションエッジ部の設計自由度は従来構成と比較し、遙かに向上させることが可能である。しかも、歪、ビビリ音などの発生が少ないため、低域のレスポンスも比較的自由にコントロール可能となる。
【0080】
そして、本発明のスピーカ装置に係る第1の構成では、
図3の実線で示す全高調波歪特性のように、特に低い音域まで歪の少ない特性を示し、広い周波数帯域で高品質の音再生が可能であることが分かる。
【0081】
他方、
図10Aに示したように、ボイスコイル9の付け根から両端リード線9aを引き出す従来構成では、
図3の破線で示す周波数特性のように、低い音域での全高調波歪特性が悪化し易い。
【0082】
図10Bのように、ボイスコイル9の両端リード線9aを振動板7の外周縁へ引き出す構成の特性も、
図10Aの構成が示す特性と同様である。
【0083】
さらに、本発明に係るスピーカ装置の第1の構成が示す過渡応答波形は、
図4に示すようになり、200Hzおよび1000Hzのトーンバースト信号を印加した場合の出力信号波形の乱れが少なく、過渡応答波形が良いことが分かる。
【0084】
他方、
図10Aの従来構成では、
図5に示すように、200Hzおよび1000Hzのトーンバースト信号を印加した場合の出力信号波形に比較的大きな乱れが生じ、本発明に係るスピーカ装置の過渡応答波形が向上していることが分かる。
【0085】
このように、本発明のスピーカ装置に係る第1の構成では、そのボイスコイル43からの両端リード線43aを中央領域37aにて接着剤等で振動板37に直接止着するから、その両端リード線43aと振動板37との擦れが防止されてその両端リード線43aを損傷し難く、特性も安定する。
【0086】
また、その振動板37の中央領域37aに形成された凹部37cを経てその両端リード線43aを外部に導出するから、その中央領域37aに接着剤等を保持し易く、その両端リード線43aの止着作業が簡単になり、前記した補強と中央部のマーカーとしての機能以外に、製造効率が向上すると言う副次的な利点も有る。
【0087】
本発明のスピーカ装置に係る第1の構成においては、ボイスコイル43からの両端リード線43aが少なくとも中央領域37aで振動板37に止着されていれば、本発明目的達成が可能であり、必ずしも、ボイスコイル43から中央領域37aでの間で両端リード線43aが振動板37に止着されている必要はない。
【0088】
ところで、上述した本発明のスピーカ装置においては、ボイスコイル43の両端リード線43aを中央領域37aの中央部から外部へ引き出す構成であったが、厳密に中央領域37aの中心部である必要はなく、例えば
図10C中の符号「φ」で示すように、凹部37c程度の幅内で両端リード線43aを引き出せばよい。要は、中央領域37aの中央にあってスピーカ外径に対し10%以下の範囲内から引き出せば本発明の目的達成が可能である。
【0089】
次に、本発明のスピーカ装置に係る第1の構成の変形例を説明する。
図6は、第1の構成に係る変形例を示す縦断面図である。
【0090】
図6において、ケース本体31の小径筒状部31bを正面側(
図6中下側)としたとき、ヨーク29、駆動マグネット33、ポールピース35、振動板37およびボイスコイル43からなる
図1のスピーカ構成を、振動板37を正面側の小径筒状部31bではなく大径筒状部31aの背面開放側に向け、ヨーク29のつば部29aを小径筒状部31bに向けたものである。
【0091】
そのため、ヨーク29、ケース本体31、駆動マグネット33、ポールピース35、振動板37およびボイスコイル43等の主要な構成要素は、配置が逆であるものの
図1と実質同様であり、
図6の構成では
図1と共通する部分には同一の符号を付す。
【0092】
なお、
図6の振動板37について、中央領域37aが外周領域37bよりも強い剛性を有して撓み難くなっている点は、上述した構成と同様であるが、
図1とは若干異ならせて図示した。
【0093】
図6の構成では、ヨーク29のつば部29aの周縁部が、大径筒状部31aから小径筒状部31bに至る平坦部分に当接するようにしてケース本体31内に嵌め込まれており、振動板37が大径筒状部31aの開放端側に向けて配置されている。
【0094】
一体化されたヨーク29、駆動マグネット33、ポールピース35および振動板37の外周には、間隔を置いて振動板37を覆うようにしてカップ状の支持台51の側壁内側が嵌められて一体化されている。支持台51は、この側壁外側をケース本体31の大径筒状部31a内壁に当接するように嵌め込まれて固定されている。
【0095】
支持台51の中程空所には、上述した制御マグネット47と同様に、ヨーク29に面する側がヨーク29と同極性に着磁された制御マグネット53が、振動板37を間に挟むようにしてヨーク29と対面するよう固定されている。
【0096】
支持台51又は制御マグネット53には、図示しない音質制御用の小孔が開けられている。
【0097】
支持台51には、回路基板39と同様な回路基板55が制御マグネット53の近くに固定されており、ボイスコイル43の両端リード線43aが、振動板37の凹部37cに貫通形成された小孔37eを通して支持台51側に導出され、回路基板55に接続されている。
【0098】
図6に示す第1の構成の変形例におけるその他の構成、動作は、上述した
図1の第1の構成と同様であり、得られる特性も同様である。
【0099】
さらに、第1の構成の変形例においては、その振動板37の凹部37cに形成された小孔37eを通して両端リード線43aが外部に導出されるから、その振動板37にあってボイスコイル43の配置側に限らずこれと反対側からも両端リード線43aの導出が可能になるうえ、導出位置も一定になり易く、安定した広い周波数特性を維持しつつ、種々の構成に対応可能である。
【0100】
次に、本発明のスピーカ装置に係る第2の構成について実施の一形態を説明する。
【0101】
図7は、本発明のスピーカ装置に係る第2の構成を示す縦断面図であり、外磁型の第1のスピーカ部Aおよび第2のスピーカ部Bとを振動板を共通にして対面するよう共軸的に配置して構成したものである。
【0102】
第1のスピーカ部Aは、
図6のスピーカ部に類似する構成を有し、第1のヨーク57、第1の駆動マグネット59、第1のポールピース61、共通の振動板63および第1のボイスコイル65を有して形成され、ケース本体67内に固定されている。
【0103】
第1のヨーク57は、磁性体板材料から筒形に成形加工されてなり、一方(
図7中下側)の開放端側を外側に屈曲して形成されたリング板状の第1のつば部57aを有し、この第1のつば部57aの外周部が若干下側に屈曲形成されている。
【0104】
第1のヨーク57本体の外周には、これと間隔を置くようにして、筒状の第1の駆動マグネット59が第1のつば部57aに重ねるようにして配置されている。
【0105】
第1の駆動マグネット59の
図7中上側端面には、磁性体材料からなるリング状の第1のポールピース61が重ねるようにして配置されており、第1のポールピース61の内周が、第1のヨーク57の
図7中上方の先端部側に同じレベル位置で、環状の空隙を介して周対面している。
【0106】
この第1のポールピース61も、第1の駆動マグネット59と同一視可能である。
【0107】
第1のヨーク57、第1の駆動マグネット59および第1のポールピース61は、図示しない接着剤等によって共軸的に固定されるとともに、第1のつば部57aに固定して一体化されている。
【0108】
第1のヨーク57の第1のつば部57aの外面(
図7中下面)には、第1の回路基板69が固定されている。第1の回路基板69には図示しないケーブル(
図9参照)によって電子機器(図示せず。)から音声信号が供給される。
【0109】
共通の振動板63は、上述した振動板37と同様に形成されてなり、中央領域37aと同様な中央領域63aと、外周領域37bと同様で中央領域63aを囲む環状の外周領域63bとを有している。共通の振動板63は、上述した振動板37とは図示を異ならせている。
【0110】
共通の振動板63において、中央領域63aが外周領域63bよりも強い剛性を有して撓み難くなっており、外周領域63bが撓み易くなっている点は上述した第1の構成と同様である。
【0111】
共通の振動板63は、第1のポールピース61および第1のヨーク57の先端部側を空間を持って覆うとともに
、外周領域63bの外縁全体が第1のポールピース61の外周縁に固定されている。
【0112】
共通の振動板63の一方の面側(
図7中下面側)において
、中央領域63a
と外周領域63bとの環状の境目には、ボイスコイル43と同様な円筒状の第1のボイスコイル65の一方の端面側が第1の中央領域63aを囲むように固定されている。
【0113】
第1のボイスコイル65は、その第1の両端リード線65aが、第1のボイスコイル65付け根から中央領域63aまで導出され、塗布された接着剤(図示省略)によって止着保持されている。
【0114】
第1の両端リード線65aは、共通の振動板63において、中央領域63aに至るまで例えば3箇所で接着剤(図示省略)にて共通の振動板63に止着されている。
【0115】
第1のボイスコイル65は、第1のヨーク57の外周と第1の駆動マグネット59の内周との間に、第1のヨーク57と第1の駆動マグネット59と僅かな間隔を置いて挿入され、第1のボイスコイル65を挟むようにして、第1のヨーク57の外周と第1の駆動マグネット59の内周が、僅かの間隔を置いて環状に対面している。
【0116】
第1のボイスコイル65からの第1の両端リード線65aは、共通の振動板63の中央領域63a中心部から外部へ立ち下がるように導出され、第1の回路基板69の空所を介して当該第1の回路基板69に接続されている。
【0117】
第1の両端リード線65aを介した音声信号の第1のボイスコイル65への印加によって第1のボイスコイル65が変位し、共通の振動板63が振動駆動するようになっている。
【0118】
すなわち、第1のヨーク57、第1の駆動マグネット59および第1のボイスコイル65により、共通の振動板63を振動駆動させる第1の駆動部71が形成されており、いわゆる外磁型の第1のスピーカ部Aが構成されている。
【0119】
第2のスピーカ部Bは、第2のヨーク73、第2の駆動マグネット75、第2のポールピース77、第2のボイスコイル79および上述した共通の振動板63を有して形成され、第1のスピーカ部Aに積層するように重ねて一体化され、ケース本体67内に固定されている。
【0120】
第2のヨーク73は、磁性体板材料から筒形に成形加工されてなり、一方(
図7中上側)の開放端側を外側に屈曲して形成されたリング板状の第2のつば部73aを有し、この第2のつば部73aの外周部が若干上側に立ち上がるように筒形に屈曲形成されている。
【0121】
第2のヨーク73の外周には、これと間隔を置くようにして筒状の第2の駆動マグネット75が配置され、第2のつば部73aに重ねるようにして配置されている。
【0122】
第2の駆動マグネット75の
図7中下面には、磁性体材料からなるリング状の第2のポールピース77が重ねるようにして配置されており、第2のポールピース77の内周が、第2のヨーク73の
図7中下方の先端部側に、ほぼ同じレベル位置にて環状の空隙を介して周対面している。
【0123】
この第2のポールピース77も、第2の駆動マグネット75と同一視可能である。
【0124】
第2のヨーク73、第2の駆動マグネット75および第2のポールピース77は、図示しない接着剤等によって共軸的に固定されるとともに、第2のつば部73aに一体的に固定されている。
【0125】
第2のポールピース77の内周とこれと僅かの間隔を置いて対向する第2のヨーク73の先端部との間には、第2のヨーク73からの磁束によって磁気回路が形成されている。
【0126】
第2のヨーク73の第2のつば部73aの外面(
図7中上面側)には、第2の回路基板81が固定されており、第2の回路基板81には図示しないケーブル(
図9参照)によって電子機器(図示せず。)から音声信号が供給される。
【0127】
共通の振動板63は、第2のポールピース77および第2のヨーク73の先端部側を空間を持って覆うとともに、外周領域63bの外縁全周が第1、第2のポールピース61、77の外周縁にこれらに挟まれるようにして支持されている。
【0128】
共通の振動板63の他方の面側(
図7中上面側)において、上述した第2のボイスコイル79が中央領域63aを囲むように固定されている。
【0129】
第2のボイスコイル79は、この第2の両端リード線79aが第2のボイスコイル79付け根
から中央領域63aまで伸びて接着剤(図示省略)によって止着保持されている。
【0130】
第2の両端リード線79aは、共通の振動板63において、中央領域63aに至るまで例えば3箇所で接着剤(図示省略)にて共通の振動板63に止着されている。
【0131】
第2のボイスコイル79は、第2のヨーク73の外周と第2の駆動マグネット75の内周との間に、第2のヨーク73と第2の駆動マグネット75と僅かな間隔を置いて挿入され、第2のボイスコイル79を挟むようにして、第2のヨーク73の外周と第2の駆動マグネット75の内周が僅かの間隔を置いて環状に対面している。
【0132】
第2のボイスコイル79からの第2の両端リード線79aは、共通の振動板63の中央領域63aから外部へ立ち上がるように導出されて第2の回路基板81に接続されている。
【0133】
第2の両端リード線79aを介した第2のボイスコイル79への音声信号は、第1のボイスコイル65へのそれとは逆位相で供給されており、第2のボイスコイル79が第1のボイスコイル79と同方向へ変位し、共通の振動板63が振動駆動するようになっている。
【0134】
なお、第1のスピーカ部Aへの音声信号の配線(図示せず)は大径筒状部67aの内側の一部を縦に切り欠いた部分を通して
図7中の上部に引き出される。
【0135】
第2のヨーク73、第2の駆動マグネット75および第2のボイスコイル79により、共通の振動板63を振動駆動させる第2の駆動部83が形成されており、いわゆる外磁型の第2のスピーカ部Bが構成されている。
【0136】
それら第1、第2のスピーカ部A、Bは、上述した円筒状の保持筒85に嵌められて一体化され、ケース本体67内に固定されている。
【0137】
本発明のスピーカ装置に係る第2の構成におけるその他の構成、動作は、上述した
図1又は
図6の構成と同様である。
【0138】
この第2の構成においては、共通の振動板63を有して外磁型の第1、第2のスピーカ部A、Bを一体化しているから、第1、第2のスピーカ部A、Bにおける共通の振動板63の上述した好ましい動作により、同じ周波数特性を生かしつつ、広い周波数帯域、特に低音域で高品質の音再生が可能となる。
【0139】
しかも、第2の構成においては、第1、第2のボイスコイル65、79が同方向へ変位して共通の振動板63を大きく変位させるから、大きな音が再生される。
【0140】
次に、本発明のスピーカ装置に係る第3の構成について実施の一形態を説明する。
【0141】
図8は、本発明のスピーカ装置に係る第3の構成を示す縦断面図であり、上述した
図7のスピーカ装置に係る第2の構成における第1のスピーカ部Aと第2のスピーカ部Bに類似する第2のスピーカ部Cとを、個々の第1、第2の振動板87、89を有して形成する構成である。
【0142】
すなわち、第1の振動板87は、共通の振動板63と同様に第1の中央領域87aおよび第1の外周領域87bを有し、第1のポールピース61の
図8中上側開放端に周縁部全周が固定されている。第1の振動板87には、上述した第1のボイスコイル65が固定されている。
【0143】
第2の振動板89は、共通の振動板61や第1の振動板87と同様に第2の中央領域89aおよび第2の外周領域89bを有し、第1の振動板87と僅かな間隔を置いて第2のポールピース77の
図8中下側開放端に周縁部全周が固定されている。第2の振動板89には、上述した第2のボイスコイル79が第1のボイスコイル65と重なる位置に固定されている。
【0144】
第1、第2の振動板87、89の第1、第2の中央領域87a、89aは、上述した振動板37の中央領域37aと同様に形成され、第1、第2の外周領域87b、89bも、上述した振動板37の外周領域37bと同様に形成されている。
【0145】
第1、第2の振動板87、89との間は音響的に気密状態に保持されているが、完全な気密状態である必要はない。
【0146】
図8中の符号91は、外磁型の第1のスピーカ部Aおよび第2のスピーカ部Bとを連結するために第1、第2のポールピース61,77を填めてこれらを連結保持する保持筒である。
【0147】
保持筒91をケース本体67の大径筒状部67a内に嵌め、第1、第2のスピーカ部A、Cがケース本体67に保持されている。
【0148】
第1、第2のスピーカ部A、Cに係るその他の構成、動作は、
図7のスピーカ装置に係る第2の構成とほぼ同様である。
【0149】
第3の構成において、第1、第2のスピーカ部A、Cにおける第1、第2の振動板87、89の好ましい動作が確保される点に加えて、第1、第2の振動板87、89との間は気密状態に保持されるとともに、
図7の構成と同様に第1、第2の振動板87、89が同一方向に駆動変位されているから、広い周波数帯域、特に低音域で高品質の音再生が可能な2個の第1、第2のスピーカ部A、Cにより、周波数特性を良好に維持した状態で大きな再生音が得られる。
【0150】
しかも、第1又は第2のスピーカ部A、C単体では、スピーカの構造と振動板の形状からして、入力信号が大きい場合、第1および第2の振動板87、89の動作は上(凸)方向と下(凹)方向で対称の振動とはならず、一般的に振動の片側から歪が発生し出し易く、第1および第2の振動板87、89の振動が対称になり難い。
【0151】
しかし、本発明の第3の構成では、上述したように逆向きに対向された第1および第2のスピーカ部A、Cの第1および第2の振動板61、89が同時、かつ同じ方向へ同じ振動幅で振動することにより、互いにその歪が補完され、第1および第2の振動板61、89の振動が対称になり易くて歪みが少なくなる。
【0152】
そして、上述した本発明に係る第2、第3の構成において、第1、第2のボイスコイル65、79からの両端リード線65a、79aが少なくとも共通の振動板63や第1、第2の振動板87、89の中央領域63a、87a、89aに止着されてなる構成も可能であるし、中央領域63a、87a、89aに形成された凹部(
図7、
図8では符号省略)を経て外部に導出される構成も可能であり、第1の構成等と同様な効果が得られる。
【0153】
ところで、本発明のスピーカ装置においては、2個のスピーカ部A〜Cを有する場合、第1のボイスコイル65からの両端リード線65aが少なくとも第1のボイスコイル65が固定された振動板63、87の中央領域63a、87aに直接止着され、第2のボイスコイル79からの両端リード線79aが少なくとも第2のボイスコイル79が固定された振動板63、89の中央領域63a、89aに直接止着されていればよい。
【0154】
また、本発明のスピーカ装置では、第1および第2のスピーカ部A〜Cを各々同形状にしたり共軸状に配置する必要はないが、同形状に形成したり共軸状に配置することにより、共通したスピーカ部を第1、第2のスピーカ部A〜Cに用いることが可能となり、安価で小型化が容易で、所望の特性も得られ易い。
【0155】
さらに、本発明のスピーカ装置では、ヨークと駆動マグネットの何れも内側又は外側に位置する外磁形又は内磁形構成の何れも可能であり、ヨークに対して周対向するように駆動マグネットを共軸的に配置し、ヨークの筒形先端部と駆動マグネットとの間で磁気回路が形成される構成であればよい。
【0156】
さらにまた、本発明のスピーカ装置では、ケース本体31、67の小径筒状部67bで形成する音通筒体をケース本体(小径筒状部)31、67の中心軸上に沿って突出する構成の他、中心軸に対して斜め方向に突出する構成も可能である。
【0157】
なお、本発明の電気音響変換装置は、ヘッドホン、大型のスピーカ等のスピーカ装置、更に、マイクロフォンとして広く使用可能である。