【文献】
MINTEL GNPD, Sugar free mangosteen guanabana flavoured yogurt drink, ID No.2684387,掲載時期:2014年9月,[検索日:2018年5月22日]
【文献】
MINTEL GNPD, Nordic berries smoothie, ID No.4569519,掲載時期:2017年1月,[検索日:2018年5月22日]
【文献】
MINTEL GNPD, Low carbohydrate chocolate flavour drink, ID No.310675,掲載時期:2004年10月,[検索日:2018年5月22日]
【文献】
MINTEL GNPD, Health & energy manegement drink, ID No.195783,掲載時期:2003年3月,[検索日:2018年5月22日]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一態様は、以下(A)〜(E)を満たす飲料である。
(A)イヌリンを1.0〜6.0g/100mL、及び
(B)マグネシウムを0.1〜7.4mg/100mL含有し、
(C)波長660nmの吸光度が0.06以下であり、
(D)純水を基準とした場合のΔE値(色差)が3.5以下であり、
(E)イヌリンを除く飲料の可溶性固形分(Brix)が2.0以下である
【0011】
(イヌリン)
本発明の飲料は、イヌリンを含有する。イヌリンは、水溶性食物繊維のひとつでニンニク、ニラ、チコリ、キクイモなど多くの野菜や果物に含まれている天然物質である。イヌリンは、フラクトースが2〜100個、好ましくは2〜60個直鎖状に重合し、末端にグルコースが結合したものである。
【0012】
本発明の飲料に含有されるイヌリンの含有量は、1.0〜6.0g/100mL、好ましくは1.2〜6.0g/100mL、1.3〜5.8g/100mL、1.5〜5.0g/100mL、さらに好ましくは1.6〜4.0g/100mL、最も好ましくは1.8〜3.0g/100mLである。イヌリンの含有量が1.0g/100mL未満のイヌリンであれば、無色透明飲料であってもその甘味は感じられないので、問題となることはほとんどない。一方、イヌリンの含有量が、6.0g/100mLを超えると、本発明の効果が得られないことがある。イヌリンの含有量は、公知の方法(例えば、GC−MS法、HPLC法など)で測定することができる。
【0013】
本発明に用いられるイヌリンは、無色透明飲料に使用可能なイヌリンであれば、どのようなものを用いてもよい。例えば、砂糖を原料にして作られたイヌリン(フジFF(商標)、フジFFSC(商標))、チコリの根、キクイモ、玉ねぎなどの天然物由来のイヌリン(Frutafit(商標)、Raftiline(商標))の他、多数の植物種から当業者に周知の方法により得ることができる。無色透明飲料のすっきりした味わいや爽やかな風味を損なわないという観点からは、イヌリン含量が90%以上に精製されたものを用いることが好ましく、95%以上に精製されたものを用いることが更に好ましい。
【0014】
(マグネシウム)
フレーバードウォーターのような無色透明な飲料では、一般に、水以外の配合成分の種類や量が比較的少ないことが特徴とされている。そのため、別の成分を添加すると飲料の香味のバランスが崩れやすくなり、すっきりした味わいや爽やかな風味といった飲料の美味しさを維持しながらイヌリンの甘味を抑制することは困難である。本発明の飲料は、特定濃度のマグネシウムを含有させることにより、すっきりした味わいや爽やかな風味といった飲料の美味しさを維持しながら、イヌリンに由来する甘味を感じにくいという特徴を有する。
【0015】
本発明の飲料は、0.1〜7.4mg/100mLの濃度のマグネシウムを含有する。本発明の所望する効果の顕著さから、マグネシウム濃度は0.2mg/100mL以上が好ましく、0.4mg/100mL以上がより好ましい。また、香味的な観点から、マグネシウム濃度は5mg/100mL以下が好ましく、4mg/100mL以下がより好ましく、1mg/100mL以下がさらに好ましい。マグネシウムの含有量が前記範囲であることにより、イヌリンに由来する甘味を効果的に低減することができる。
【0016】
また、本発明の飲料は、飲料中のマグネシウム含有量(B)とイヌリン含有量(A)との比率[(B)×10
3/(A):重量比]が0.025〜2.6であることが好ましい。この範囲であると、後述する加熱殺菌された飲料で発生するイヌリンの雑味について、十分な雑味抑制効果を発揮する。より好ましい(B)×10
3/(A)は、0.06〜2.6であり、さらに好ましくは0.08〜2.6である。
【0017】
なお、本発明において飲料中のマグネシウムの含有量は、マグネシウムが塩の形態にある場合は、これを遊離体(フリー体)の量に換算した量である。また、本発明において飲料中のマグネシウムの含有量は、ICP発光分光分析装置(ICP−AES)を用いて公知の方法により測定することができる。
【0018】
マグネシウムの供給源としては、これらに限定するものではないが、例えば以下の形態のものが挙げられる:クエン酸塩、硫酸塩、グルコン酸塩、乳酸塩、ビス−グリシン酸塩、アミノ酸キレート、炭酸塩、酸化物、水酸化物、塩化物、リン酸塩、ピロリン酸塩、酢酸塩、フマル酸塩、及びリンゴ酸塩。本発明において好ましいマグネシウム塩は、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、及びグルコン酸マグネシウムである。また、無色透明の物性を損なわない範囲で、天然物由来のミネラルを供給源とすることもできる。
【0019】
(無色透明飲料)
フレーバードウォーターのような無色透明な飲料では、水のように飲みやすくするために全体的に飲料の香味を弱く設定することが要求されており、他の飲料(例えば、色のついた飲料や混濁した飲料)よりもイヌリンの甘味が目立ちやすくなる。本発明では、このように香味の弱い無色透明飲料であっても、イヌリンの甘味を感じさせにくくすることができる。なお、本明細書中、「香味が弱く設定された、無色透明飲料」を、単に「無色透明飲料」と表記することもある。
【0020】
ここで、「香味が弱く設定された飲料」とは、飲料に添加される甘味料や酸味料等の成分が少ない飲料をいい、具体的には、飲料の可溶性固形分濃度(Brix)が2.0以下の飲料をいう。本発明において、可溶性固形分濃度は、糖度計や屈折計などを用いて得られるBrix(ブリックス)値に相当する。ブリックス値は、20℃で測定された屈折率を、ICUMSA(国際砂糖分析法統一委員会)の換算表に基づいてショ糖溶液の質量/質量パーセントに換算した値である(単位:「°Bx」、「%」または「度」)。
【0021】
本発明者らの検討によると、イヌリンを除く飲料の可溶性固形分(Brix)が2.0以下のような低Brixの飲料は、それよりもBrixが高い飲料と比較して、イヌリンの甘味が目立ちやすい。特定量のマグネシウムを含有させることによる効果の顕著さから、本発明の飲料は、イヌリンを除く飲料の可溶性固形分が0〜1.5であることが好ましく、0〜1.0であることがより好ましく、0〜0.5であることがさらに好ましい。
【0022】
「香味が弱く設定された飲料」の一態様として、イヌリン以外の甘味成分の少ない低甘味度飲料が挙げられる。イヌリンを除く飲料の甘味度が2.0以下に抑えられている低甘味度の飲料は、イヌリンの甘味が目立ちやすい。効果の顕著さから、本発明のイヌリンを除く飲料の甘味度は、0〜1.5であることが好ましく、0〜1.0であることがより好ましく、0〜0.5であることがさらに好ましい。ここで、「甘味度」は、ショ糖の甘味を基準とした場合の甘味の程度を意味し、一般的には、パネルによる官能検査により、一定濃度のショ糖溶液(例えば、ショ糖10重量%溶液)と同じ甘味の強さを示す被験甘味料の濃度との比較により求めることができる。甘味料の甘味度は当業者に知られており、例えば「最新・ソフトドリンクス」(株式会社光琳)を参照することができる。甘味料としては、甘味を呈する成分であればよく、例えば、ショ糖、異性化糖、ブドウ糖、果糖、乳糖、麦芽糖、キシロース、異性化乳糖、フラクトオリゴ糖、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、カップリングシュガー、パラチノース、マルチトール、ソルビトール、エリスリトール、キシリトール、ラクチトール、パラチニット、還元デンプン糖化物、ステビア、グリチルリチン、タウマチン、モネリン、アスパルテーム、アリテーム、サッカリン、アセスルファムK、スクラロース、ズルチンなどが挙げられる。
【0023】
「香味が弱く設定された飲料」の一態様として、pHが高い飲料が挙げられる。pHが4以下の酸性飲料は、酸味成分によりイヌリンの甘味がマスキングされるが、pHが4を超える弱酸性から中性の飲料では、イヌリンの甘味が目立ちやすい。特定量のマグネシウムを含有させることによる効果の顕著さから、本発明の飲料のpH(20℃)は、4.5〜7.0であることが好ましく、5.0〜7.0であることがより好ましい。飲料のpH調整は、酸味料やpH調整剤を用いて適宜行うことができる。本発明の飲料で使用できる酸味料又はpH調整剤としては、特に限定されないが、例えば、アスコルビン酸、クエン酸、グルコン酸、コハク酸、酒石酸、乳酸、フマル酸、リンゴ酸、アジピン酸等の有機酸、リン酸等の無機酸及びそれらの塩類、またはレモン、グレープフルーツ、オレンジ、ミカン等の果汁類から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
【0024】
また、本発明の飲料は、無色透明飲料であることを特徴とする。ここで、無色透明飲料とは次の要件(1)及び(2)を満たす飲料である。
【0025】
(1)飲料が無色である
純水を基準とした場合のΔE値(色差)が3.5以下、好ましくは2.3以下である。ΔE値は、測色色差計(ZE2000(日本電色工業株式会社製)など)を用いて純水を基準として測定した際の透過光のΔE値(色差)をもって規定することができる。
【0026】
(2)飲料が透明である
いわゆるスポーツドリンクのような白濁や、混濁果汁のような濁りがなく、水のように視覚的に透明な飲料であることをいう。飲料の透明度は、液体の濁度を測定する公知の手法を用いることにより、数値化することができる。紫外可視分光光度計(UV−1600(株式会社島津製作所製)など)を用いて測定した波長660nmにおける吸光度をもって飲料の透明度を規定することができる。具体的には、本発明の飲料は、波長660nmの吸光度が0.06以下である。飲料に濁りがある場合は、その濁りの原因となる粒子の存在により、イヌリンに由来する甘味が感じられにくくなる。他方、飲料が透明である場合、すなわち、飲料に濁りがない場合は、そのような粒子が存在しないためにイヌリンに由来する甘味が感じられやすくなる。
【0027】
(その他成分)
その他、本発明の飲料には、本発明の所期の目的を逸脱しない範囲であれば、酸化防止剤、乳化剤、保存量、pH調整剤、香料、調味料、酸味料、品質安定剤等を単独、或いは併用して配合してもよい。
【0028】
(容器詰飲料)
上述のとおり、本発明は、無色透明飲料で目立つイヌリンの甘味を特定のミネラルで低減し、水のように飲みやすい飲料とするものである。本発明者らは、所定量のイヌリンを含有する飲料を長期間常温で保存可能なレベルの加熱殺菌処理した場合に、イヌリンの呈する甘味が雑味(本来の味を損なう味)として知覚され、フレーバードウォーターに求められる清涼感をより損なうことを見出している。したがって、特定量のマグネシウムを含有させることによる効果の顕著さから、加熱殺菌処理を経て得られる飲料は、本発明の好適な一態様である。加熱殺菌方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、飲料を容器に充填した後に加熱殺菌を行う方法や、飲料を加熱殺菌して容器に充填する方法などにより製造することができる。
【0029】
また、本発明の飲料は、水のように飲みやすい飲料であるから、常温で長期保存でき、即時飲用可能な形態(RTD;Ready To Drink)とするのが、ユーザーの観点の簡便性から優れている。これらの観点から、加熱殺菌処理を経て得られる容器詰飲料は本発明の一態様である。
【0030】
本発明の飲料を充填する容器は、特に限定されるものではない。ガラス製容器、金属製容器、紙製容器、更には、ポリエチレン製容器、ポリエチレンテレフタレート製(PET)容器、及びポリプロピレン製容器などのプラスチック容器などを例示できる。中でも、PET容器は本発明の飲料が無色透明であることから好適である。
【0031】
容器の容量に制限はないが、必要に応じて、例えば100mL〜2L、好ましくは300mL〜2Lの容器を適宜選択して用いることができる。
【0032】
(製造方法)
本発明の別の側面によれば、飲料の製造方法が提供される。
すなわち、
波長660nmの吸光度が0.06以下であり、純水を基準とした場合のΔE値(色差)が3.5以下であり、イヌリンを除く飲料の可溶性固形分(Brix)が2.0以下である飲料の製造方法であって、
1.0〜6.0g/100mLのイヌリンを飲料に含有させるイヌリン配合工程、及び 飲料中のマグネシウム濃度を0.1〜7.4mg/100mLに調整する工程(マグネシウム調整工程)、
を含む、前記製造方法である。
【0033】
イヌリン配合工程及びマグネシウム濃度調整工程において、飲料中の成分の種類やその含有量等は、本発明の飲料に関して上述した通りであるか、それらから自明である。本発明の飲料において、マグネシウムが所定の濃度範囲を逸脱する場合には、本発明における所望の作用効果の一部または全部が著しく低減するか発揮されなくなることから、マグネシウム濃度調整工程では、原水のマグネシウム濃度をICP−AESやICP−MSなどの手段により正確に分析し、その分析結果に基づいて本発明の飲料のマグネシウムが所定の濃度範囲となるように調整する。イヌリン配合工程及びマグネシウム調整工程は同時に行ってもよいし、別々に行ってもよいし、工程の順番を入れ替えてもよい。
【0034】
本発明の飲料が容器詰飲料の場合には、上記の工程に加え、さらに加熱殺菌処理工程及び容器充填工程を含む。容器の耐熱性を勘案し、加熱殺菌処理工程と容器充填工程の順番が適宜選択される。加熱殺菌処理は、食品衛生法に定められた殺菌条件で行われる。殺菌機は、チューブ式殺菌機、プレート式熱交換器、FP(Flash Pastrization)プレート式殺菌装置、UHT(ultra high temperature)殺菌装置等を用いることができる。加熱温度や処理時間等は、飲料の種類によって適宜選択して行われる。通常、60〜150℃で1秒間〜30分間加熱する。
【実施例】
【0035】
以下に実施例に基づいて本発明の説明をするが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例中のイヌリンには、フジ日本精糖株式会社の「フジFF」(イヌリン含有量97%)を使用した。
【0036】
実施例1:マグネシウムによるイヌリンの甘味の緩和効果(1)
飲料中のイヌリン及びマグネシウム濃度が表1の数値となるように、イヌリン及び硫酸マグネシウム(和光純薬工業社製)を純水に配合して、低Brix、低甘味度のイヌリン含有飲料(pH7.0(20℃))を調製した。いずれの飲料も無色透明飲料(波長660nmにおける吸光度:0.01以下、純水を基準とした場合のΔE:0.0)であった。
【0037】
得られた低Brixの無色透明飲料の味につき、パネル3名にて、1〜5点の5段階評価法にて評価した。官能評価基準は、水以外の味を感じるか、すなわちイヌリン由来の甘味やマグネシウム由来の嫌味(苦味や舌に刺激のある硬さ感)を感じるかにつき、5点:全く感じない、4点:ほとんど感じない、3点:少し感じるが問題ない、2点:水以外の味を感じる、1点:水以外の味を強く感じる、として各パネルが評価した結果を、再度全員で自由討議し、全員の合意のもとに整数値で表記した。なお、評価点は、3点を超えるものがすっきり感を有する飲料であり、無色透明飲料として好ましい飲料であると判定した。ここで「すっきり感を有する飲料」とは、飲用中及び飲用後において、異味を感じない水のように飲みやすい飲料を意味する。
【0038】
結果を表1に示す。飲料中のマグネシウム濃度が0.15〜7.4mg/100mLであると、イヌリンに由来する甘味やマグネシウムに由来する嫌味を感じない、水のように飲みやすい飲料であった。
【0039】
【表1】
【0040】
実施例2:マグネシウムによるイヌリンの甘味の緩和効果(2)
実施例1の試料1−4について、マグネシウム塩として塩化マグネシウム(和光純薬工業社製)を用いる以外は、実施例1と同様にして評価した。結果を表2に示す。無色透明な飲料において、マグネシウム塩として塩化マグネシウムを用いた場合にも、イヌリンの甘味を緩和する効果が確認できた。パネル全員が、硫酸マグネシウムを用いた飲料(試料1−4)と塩化マグネシウムを用いた飲料(試料2−1)は、いずれも無色透明飲料に求められるすっきりした味わいや爽やかな風味を損なわずにイヌリンに由来する甘味が感じられにくい無色透明な飲料であると評価した。
【0041】
【表2】
【0042】
実施例3:マグネシウムによるイヌリンの甘味の緩和効果(3)
実施例1の試料1−3について、イヌリンの含有量を1.2又は1.6g/100mLとする以外は、実施例1と同様にしてイヌリン含有飲料(pH7.0(20℃))を調製し、評価した。結果を表3に示す。イヌリンの含有量を1.2又は1.6g/100mLとした場合にも、マグネシウムを配合することによるイヌリンの甘味を緩和する効果が確認できた。
【0043】
【表3】
【0044】
実施例4:マグネシウムによるイヌリンの甘味の緩和効果(4)
実施例3の試料3−1〜3−4について、クエン酸及びクエン酸三ナトリウムを用いて飲料のpHを7.0、5.5、4.6又は3.0に調製した。それぞれのpHの飲料について、実施例1と同様に評価した。結果を表4に示す。いずれのpHの飲料であっても、マグネシウムの添加により、イヌリンの甘味が効果的に緩和された。pH4.0以下の飲料では酸味成分の存在により、イヌリンの甘味が抑制されていたことから、マグネシウムの効果が効果的に発揮される飲料はpH4.5以上の飲料であることが示唆された。
【0045】
【表4】
【0046】
実施例5:イヌリン含有容器詰飲料
(1)イヌリン含有容器詰飲料の調製
表5の処方となるように、イヌリンを水(pH7のイオン交換水)に溶解してUHT殺菌処理(110〜150℃、1〜数十秒間)した後、500mLのPET容器(透明)に充填して容器詰飲料を調製した。この容器詰飲料を25℃にした後、3名のパネルによりイヌリンの雑味の有無を評価した。また、飲料の波長660nmにおける吸光度及び色差(ΔE)を測定した。
【0047】
結果を表5に示す。表5中の評価結果は、雑味があると感じたパネルの人数を示す。イヌリンを0.5g/100mL含有する飲料は、イヌリンの甘味が加熱殺菌処理に伴い雑味となって知覚されることが明らかとなった。イヌリンを1.2g/100mL以上含有する飲料は、パネル全員がイヌリンの雑味を強く感じると評価した。
【0048】
【表5】
【0049】
(2)マグネシウムによるイヌリン含有容器詰飲料の雑味の緩和効果(1)
イヌリン1.2g/100mLと、表4のマグネシウム濃度になる量の硫酸マグネシウム(和光純薬工業社製)とを、水(pH7のイオン交換水)に溶解してUHT殺菌処理(110〜150℃、1〜数十秒間)した後、500mLのPET容器(透明)に充填して容器詰飲料を調製した。この加熱殺菌された飲料を25℃にした後、3名のパネルによりイヌリンの雑味の有無を評価した。評価はマグネシウム無添加の飲料の雑味の強さを基準として、以下の基準で各パネルが評価した結果を、再度全員で自由討議し、全員の合意のもとに整数値で表記した。
(±) イヌリンの雑味が変わらない
(+) イヌリンの雑味が少し低減されている
(++) イヌリンの雑味がやや低減され、僅かに雑味を感じる
(+++) イヌリンの雑味が大きく低減され、雑味をほとんど感じない
【0050】
結果を表6に示す。加熱殺菌によって発生するイヌリン含有飲料の雑味を、0.1mg/100mL以上のマグネシウム添加によって緩和できることが判明した。マグネシウム(B)とイヌリン(A)の比率[((B)×10
3/(A):重量比]が高いと、マグネシウムが加熱殺菌されて発生するマグネシウム自体の風味が感じられ、所望する水のような飲み易い飲料ではなくなったことから、(B)×10
3/(A)の上限は2.6程度であることが示唆された。
【0051】
【表6】
【0052】
実施例6:マグネシウムによるイヌリン含有容器詰飲料の雑味の緩和効果(2)
飲料中のイヌリン及びマグネシウム濃度が表7の数値となるようにする以外は、実施例5と同様にして、イヌリン含有容器詰飲料を製造し、評価した。
結果を表7に示す。表6の結果を合わせて考えると、イヌリン(A)を1.0g/100mLの高濃度で含有する飲料において、マグネシウム(B)を0.1mg/100mL以上の濃度で含有させ、かつマグネシウム(B)とイヌリン(A)の比率[(B)×10
3/(A):重量比]が0.025〜2.6であると、十分な雑味抑制効果を発揮することが判明した。
【0053】
【表7】