特許第6363845号(P6363845)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6363845凍結乾燥即席食品に適した味噌含有調味料及びそれを用いた凍結乾燥即席食品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6363845
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】凍結乾燥即席食品に適した味噌含有調味料及びそれを用いた凍結乾燥即席食品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 3/44 20060101AFI20180712BHJP
   A23L 11/20 20160101ALI20180712BHJP
【FI】
   A23L3/44
   A23L11/20 103
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-23200(P2014-23200)
(22)【出願日】2014年2月10日
(65)【公開番号】特開2015-146796(P2015-146796A)
(43)【公開日】2015年8月20日
【審査請求日】2016年12月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】715011078
【氏名又は名称】アサヒグループ食品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 正二
(74)【代理人】
【識別番号】100121474
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 俊之
(72)【発明者】
【氏名】前田 恭子
【審査官】 西村 亜希子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−187623(JP,A)
【文献】 特開平07−079726(JP,A)
【文献】 特開昭54−002399(JP,A)
【文献】 特開平09−023807(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3173123(JP,U)
【文献】 特開2013−201908(JP,A)
【文献】 特開2008−022845(JP,A)
【文献】 特開2005−312439(JP,A)
【文献】 特開平05−153928(JP,A)
【文献】 特開昭59−227262(JP,A)
【文献】 特開2009−118814(JP,A)
【文献】 特開平06−197723(JP,A)
【文献】 特開昭59−175861(JP,A)
【文献】 特開平06−189677(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3077543(JP,U)
【文献】 特開平11−289971(JP,A)
【文献】 特開平07−147945(JP,A)
【文献】 特開平08−103240(JP,A)
【文献】 特開2004−215654(JP,A)
【文献】 特開2005−137233(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3148449(JP,U)
【文献】 特開2007−097579(JP,A)
【文献】 特開2008−173090(JP,A)
【文献】 特開2010−183871(JP,A)
【文献】 特開2013−027339(JP,A)
【文献】 特開昭53−145992(JP,A)
【文献】 国際公開第99/048388(WO,A1)
【文献】 特開昭59−017969(JP,A)
【文献】 特開2013−169177(JP,A)
【文献】 特開2003−144085(JP,A)
【文献】 特開昭54−119067(JP,A)
【文献】 特開2009−118815(JP,A)
【文献】 特開2007−236352(JP,A)
【文献】 特開2009−291134(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0129519(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 3/
A23L 11/20
A23L 27/
A01J
A23C
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バターと味噌とを含有するとともに、お湯で復元させて喫食される凍結乾燥即席食品の製造方法であって、
まずバターを褐色になるまで加熱し、次いで味噌に対する前記バターの配合割合が5重量%以上25重量%以下となるように味噌を加えて加熱混合することによりローストして味噌含有調味料を製造し、この味噌含有調味料を単独で又は他の食材とともに凍結乾燥することを特徴とする凍結乾燥即席食品の製造方法。
【請求項2】
バターと味噌とを含有するとともに、お湯で復元させて喫食される凍結乾燥即席食品に使用する味噌含有調味料の使用方法であって、
まずバターを褐色になるまで加熱し、次いで味噌に対する前記バターの配合割合が5重量%以上25重量%以下となるように味噌を加えて加熱混合することによりローストして製造した味噌含有調味料を凍結乾燥即席食品に用いることを特徴とする味噌含有調味料の使用方法。
【請求項3】
バターと味噌とを含有するとともに、お湯で復元させて喫食される凍結乾燥即席食品用の味噌含有調味料の製造方法であって、
まずバターを褐色になるまで加熱し、次いで味噌に対する前記バターの配合割合が5重量%以上25重量%以下となるように味噌を加えて加熱混合することによりローストして製造することを特徴とする凍結乾燥即席食品用の味噌含有調味料の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湯を注ぐだけで復元する凍結乾燥食品に適した味噌含有調味料及びそれを用いた凍結乾燥食品に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、日本人の食は多様化していると言われている。このような食の多様化に伴い、和食と洋食との融合等、従来の常識を超えた異色の食材を組み合わせた新たな食品を生み出す試みがなされている。
【0003】
他方、インスタント食品に代表されるように、できるだけお手軽な食品に対する消費者の需要もいや増している。湯を注ぐだけで食することができる凍結乾燥食品(フリーズドライ食品)はその典型である。
【0004】
このような傾向の下、本発明者は、洋風食材の代表例であるバターと和風食材の代表例である味噌とを組み合わせてローストした「焦がし味噌」(ロースト味噌)を用いて凍結乾燥食品を製造することを試みた。
【0005】
なお、かかる試みは文献公知発明ではなく、また、出願人は、かかる試みについて記載した公知文献を知らないため、記載すべき先行技術文献情報はない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、初めから味噌とバターとを混合して同時に炒めたものを用いて凍結乾燥食品を製造した場合、お湯をかけて復元させると、バター(油分)と味噌とが二層に分離してバター(油分)の層が表面に浮くという問題(以下、「バターの浮き」という。)が生じた。
【0007】
また、味噌とバターとを同時に炒めた場合、味噌が焦げ過ぎるという問題もあった。
【0008】
他方、味噌が焦げないようにロースト時間を短縮した場合は、香ばしいロースト風味を十分に付与することができないという問題があった。
【0009】
本発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、復元後のバターの浮きという問題を解消するとともに、ロースト風味を十分に付与することができる凍結乾燥食品用の味噌含有調味料及びそれを用いた凍結乾燥食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、まずバターを加熱し、次いで味噌を加えて加熱混合することにより製造した味噌含有調味料を用いて凍結乾燥食品を製造すれば、復元後のバターが液滴状になり、上述したバターの浮きを解消することができるとともに、十分なロースト風味を付与することができることを知見した。
本発明は、かかる知見に基づいてなされたものであり、以下のように構成したことを特徴とする。
【0012】
すなわち、本発明は、バターと味噌とを含有するとともに、お湯で復元させて喫食される凍結乾燥即席食品の製造方法であって、まずバターを褐色になるまで加熱し、次いで味噌に対する前記バターの配合割合が5重量%以上25重量%以下となるように味噌を加えて加熱混合することによりローストして味噌含有調味料を製造し、この味噌含有調味料を単独で又は他の食材とともに凍結乾燥することを特徴とする凍結乾燥即席食品の製造方法である。
【0013】
また、本発明は、バターと味噌とを含有するとともに、お湯で復元させて喫食される凍結乾燥即席食品に使用する味噌含有調味料の使用方法であって、まずバターを褐色になるまで加熱し、次いで味噌に対する前記バターの配合割合が5重量%以上25重量%以下となるように味噌を加えて加熱混合することによりローストして製造した味噌含有調味料を凍結乾燥即席食品に用いることを特徴とする味噌含有調味料の使用方法である。
【0014】
さらに、本発明は、バターと味噌とを含有するとともに、お湯で復元させて喫食される凍結乾燥即席食品用の味噌含有調味料の製造方法であって、まずバターを褐色になるまで加熱し、次いで味噌に対する前記バターの配合割合が5重量%以上25重量%以下となるように味噌を加えて加熱混合することによりローストして製造することを特徴とする凍結乾燥即席食品用の味噌含有調味料の製造方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、復元後におけるバターの浮きという問題を解消できるとともに、十分なロースト風味を凍結乾燥食品に付与することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0018】
本発明に係る味噌含有調味料は、まずバターを加熱し、次いで味噌を加えて加熱混合することにより製造されるものであり、バターと味噌の加熱順序を上記のとおりにしたものである。
【0019】
前述のとおり、バターと味噌とを同時に炒めたものを用いて凍結乾燥食品を製造した場合は、復元後におけるバターの浮きという問題があった。しかし、本発明のように、まずバターを加熱し、次いで味噌を加えて加熱混合することにより製造した味噌含有調味料を凍結乾燥食品に用いた場合は、復元後においてバター成分(油分)が液滴状にきれいに分散し、バターの浮きという問題を改善することができる。
【0020】
本発明において、前記味噌含有調味料における味噌に対するバターの配合割合は25重量%以下にすることが好ましい。特に3〜25重量%が好ましく、さらに好ましくは5〜25重量%、最も好ましくは7〜23重量%である。
【0021】
本発明の味噌含有調味料に使用するバターや味噌の種類は問わない。かかる味噌含有調味料を製造するに当たっては、まず、バターを高温で熱し(バターが褐色になるまで加熱調理することが好ましい)、その後、味噌を投入して両者を加熱しながら混合する。その際、味噌は予め水で溶いておくことが好ましい。
【0022】
このようにして得られた味噌含有調味料(以下において「焦がし味噌」又は「ロースト味噌」ということがある。)を使用して凍結乾燥食品を製造する。具体的には、上記のようにして得られた味噌含有調味料を単独で又は他の食材と組み合わせて凍結乾燥食品を製造する。本発明に係る味噌含有調味料を用いて製造される食品としては、味噌汁やスープ類、味噌ラーメン及びそのスープ、鍋物のつゆ、炒め物のたれ等、広く味噌を使用した料理一般を挙げることができる。合わせる具材は、目的とする最終製品に応じて適宜の食材を使用することができる。
【0023】
凍結乾燥に当たっては常法の凍結乾燥処理を使用することができる。特に、充填機で個食用トレーに分注し、トレーごと予備凍結したものを凍結乾燥させれば、一食分がブロック状に形成された個食用の凍結乾燥食品を得ることができる。
このようにして得られた凍結乾燥食品は、お湯を注ぐだけで直ちに喫食することができるので、手軽な即席食品として利便性が高い。
【0024】
但し、本発明の味噌含有調味料は必ずしも他の食材と組み合わせて凍結乾燥しなければならないものではなく、それ単独で凍結乾燥させて調味料として提供することもできる。
また、本発明の味噌含有調味料は、凍結乾燥食品に特に適したものであるため、凍結乾燥食品用として、それ自体を凍結乾燥するのではなく、バターと味噌とを上記手順で加熱したものをペースト状等の適宜の性状で提供するものであってもよい。
【実施例】
【0025】
以下、本発明の実施例について説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0026】
(実験例2〜7)
予め、味噌5.40gと水0.81gとを混合して味噌ペースト(1食分換算)を作成した。
他方、鍋にバターを投入し、撹拌しながら褐色になるまで加熱した。投入したバターの量は、表1の実験例2〜7に示すとおりである。
ここに上記の味噌ペーストを投入し、両者を加熱しながら混合してローストした。なお、表1中の「バター添加割合」とは、味噌に対するバターの添加割合(重量%)のことである。
このようにして得られた1食分の「ロースト味噌」(味噌含有調味料)を個食用トレーに充填し、常法により凍結乾燥処理することで実験例2〜7に係るブロック状の凍結乾燥食品を得た。
【0027】
(実験例1)
実験例1は、上記実験例2〜7からバターを除いたものである。具体的には、前記と同様の味噌ペーストを単独で鍋で加熱撹拌してバターなしのロースト味噌を調製し、これを上記と同様に凍結乾燥したものである。
【0028】
(実験例8及び9)
実験例8及び9は、上記実験例3と同量のバターと味噌と水を使用しつつ、バターを先に加熱するのではなく、バターと味噌(味噌ペースト)とを一緒にローストした点で相違しているものである。
【0029】
(実験例10)
実験例10は、上記実験例3と同量のバターと味噌と水を使用しつつ、これらをローストせずに、単に混合したものを凍結乾燥させた点で相違しているものである。
【0030】
【表1】
【0031】
(実験例1〜10の評価)
実験例1〜10の凍結乾燥品をそれぞれ容器に入れ、適量のお湯を注いて復元させた。これを、5名のパネラーによって官能評価(評価は1〜5の5段階評価;5が最も良い)した。評価項目は、「バターの浮き」、「ロースト感(ロースト風味)」、「バター感」である。表1の各項目欄に記載の数値は、その平均値である。
なお、「バターの浮き」とは、その値が大きいほど「きれいに浮く」(バター成分が液滴状に分散する)ことを意味し、その値が小さいほどバター成分が層状に分離して表面に広がっている状態(つまり「バターの浮き」が生じている状態)を意味している。なお、実験例1のように、バターを使用していないために結果的にバターが浮いていないものは「3」とした。
「ロースト感」とは、風味(香りと味わい)という観点から評価したローストの好ましさの程度のことであり、数値が高いほどそれが好ましいことを意味するが、逆にローストが強すぎて苦みが突出して感じられる場合は、その値は低く評価される。
「バター感」とは、バター風味の好ましさの程度であり、一般に、値が大きいほどまろやかな風味が感じられることを意味する。逆に、まろやかさに欠けていたり、バターの「乳臭さ」が突出して感じられたりする場合は、その値は小さく評価される。
「復元性」とは、お湯をかけてから喫食できるまでの時間(復元の速さないし復元時間)のことであり、「5」はお湯をかければ直ちに復元することを意味し、数値が小さいほど復元に時間がかかることを意味する。
【0032】
表1に示すとおり、バターの添加割合が7.4〜22.2重量%である実験例2〜5では、各項目とも評価は上々であったのに対し、バターの添加割合がそれぞれ29.6%、37.0%である実験例6及び7では、「バター浮き」という項目で評価が低くかった。特に実験例7では、風味の上でも、ロースト感が強すぎて好ましい域を超え、酸っぱさが感じられた。
次に、バターと味噌とを同時にローストした実験例8及び9では、復元後にバターと味噌とが顕著に分離していることが観察された。
さらに、バターと味噌とをローストしなかった実験例10では、「バター浮き」という項目で評価が低かっただけでなく、ロースト感が極めて乏しく、ロースト風味の付与という所期の目的を達成できなかった。
以上のことから、実験例2〜5が望ましいことを理解することができる。
【0033】
次に、本発明の味噌含有調味料を使用した凍結乾燥食品について説明する。ここでは、表1の実験例3(味噌に対するバターの配合割合:14.8%)に係る味噌含有調味料(ロースト味噌)を用いて凍結乾燥味噌汁を製造した。
使用した原材料及びその分量(1食分)は以下の1及び2のとおりである。
【0034】
1 調味
(1)味噌 12.3g
(2)ロースト味噌(実験例3) 6.3g
(3)魚介エキス 1.3g
(4)風味調味料 1.0g
(5)デキストリン 0.4g
(6)調味料(アミノ酸) 0.3g
(7)増粘剤 0.1g
(8)水 38.9g
【0035】
2 具材
(1)たまねぎ 4.5g
(2)人参 2.5g
(3)ぶなしめじ 5.0g
(4)鮭 9.5g
(5)キャベツ 10.0g
【0036】
本実施例に係る凍結乾燥味噌汁は、比較的具材の使用量が多い具だくさん味噌汁であり、特に、魚介の中でも比較的魚臭さ(生臭さ)が強い鮭を使用した魚介入り味噌汁(鮭入り味噌汁)である。なお、本実施例に係る凍結乾燥味噌汁では、ロースト味噌のほかに、味噌を使用している(上記1の(1))。
この凍結乾燥味噌汁の製造手順は以下のとおりである。
【0037】
鍋に上記1の調味欄に記載した各材料を投入し、混合しながら加熱した。これを篩でろ過した。
そこに、上記2の具材欄中の(1)〜(5)の具材を投入し、さらに混合した。
これを個食用トレーに充填し、トレーごと冷凍庫で予備凍結させた。
予備凍結後、常法により減圧下で凍結乾燥させて、ブロック状に成形された凍結乾燥味噌汁を得た。
【0038】
上記のようにして得られたブロック状の凍結乾燥味噌汁を容器に入れ、お湯を注いで復元させたところ、バターの浮きもなく、ロースト風味に富んだ鮭入り味噌汁が得られた。
また、この味噌汁では、ロースト風味やバター風味が加味されたことで鮭特有の魚臭さ(生臭さ)も気にならなかった。
このように、本発明に係る味噌含有調味料は、魚介類や畜肉類のように臭みの強い食材を具材に使用する場合にも有用である。