特許第6363875号(P6363875)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6363875ペレット、ペレットの製造方法、樹脂成形品、および、メッキ層付樹脂成形品の製造方法
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  • 特許6363875-ペレット、ペレットの製造方法、樹脂成形品、および、メッキ層付樹脂成形品の製造方法 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6363875
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】ペレット、ペレットの製造方法、樹脂成形品、および、メッキ層付樹脂成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20180712BHJP
   C08L 77/00 20060101ALI20180712BHJP
   C08K 7/04 20060101ALI20180712BHJP
   C08K 7/14 20060101ALI20180712BHJP
   C08K 3/08 20060101ALI20180712BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20180712BHJP
   B29B 9/06 20060101ALI20180712BHJP
   B29B 9/14 20060101ALI20180712BHJP
   B29K 105/12 20060101ALN20180712BHJP
【FI】
   C08L101/00
   C08L77/00
   C08K7/04
   C08K7/14
   C08K3/08
   C08K3/22
   B29B9/06
   B29B9/14
   B29K105:12
【請求項の数】13
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-105193(P2014-105193)
(22)【出願日】2014年5月21日
(65)【公開番号】特開2015-218323(P2015-218323A)
(43)【公開日】2015年12月7日
【審査請求日】2017年4月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】594137579
【氏名又は名称】三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】森本 馨
(72)【発明者】
【氏名】田村 匡希
(72)【発明者】
【氏名】高野 隆大
(72)【発明者】
【氏名】山田 隆介
【審査官】 小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/042069(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 101/00
C08K 3/08
C08K 3/22
C08K 7/04
C08K 7/14
C08L 77/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂とモース硬度が5.0以上のレーザーダイレクトストラクチャリング添加剤と無機繊維とタルクを含むペレットであって、前記ペレットの30重量%以上が、前記ペレットの平均長さの90%以上の繊維長を有する無機繊維を含み
前記タルクとレーザーダイレクトストラクチャリング添加剤の質量比率が4:4〜5:8である、ペレット。
【請求項2】
熱可塑性樹脂が、ポリアミド樹脂である、請求項1に記載のペレット。
【請求項3】
無機繊維のモース硬度が5.0以上である、請求項1または2に記載のペレット。
【請求項4】
無機繊維がガラス繊維である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のペレット。
【請求項5】
モース硬度5.0未満のレーザーダイレクトストラクチャリング添加剤の含有量がレーザーダイレクトストラクチャリング添加剤の合計量の10重量%以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のペレット。
【請求項6】
熱可塑性樹脂とモース硬度が5.0以上のレーザーダイレクトストラクチャリング添加剤とタルクを含む熱可塑性樹脂組成物であって、前記タルクとレーザーダイレクトストラクチャリング添加剤の質量比率が4:4〜5:8である熱可塑性樹脂組成物を連続無機繊維に含浸させ、カットすることを含む、ペレットの製造方法。
【請求項7】
熱可塑性樹脂が、ポリアミド樹脂である、請求項6に記載のペレットの製造方法。
【請求項8】
無機繊維のモース硬度が5.0以上である、請求項6または7に記載のペレットの製造方法。
【請求項9】
無機繊維がガラス繊維である、請求項6〜8のいずれか1項に記載のペレットの製造方法。
【請求項10】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のペレットを成形してなる樹脂成形品。
【請求項11】
さらに、表面にメッキ層を有する、請求項10に記載の樹脂成形品。
【請求項12】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のペレットを成形してなる樹脂成形品の表面に、レーザーを照射後、金属を適用して、メッキ層を形成することを含む、メッキ層付樹脂成形品の製造方法。
【請求項13】
前記メッキ層が銅メッキ層である、請求項12に記載のメッキ層付樹脂成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規ペレットおよびその製造方法に関する。また、前記ペレットを用いた樹脂成形品ならびにメッキ層付樹脂成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、発光ダイオード(LED)、有機ELなどの新しい光源が、低電力、高寿命などのメリットを活かして、照明、表示素子などとして需要を拡大しつつある。特にLEDは、携帯電話などの移動通信機器、ディスプレイ、自動車コンソールパネル、信号機器、その他の家電用品など種々の用途に使用されている。このような電気電子機器製品においては、意匠性、携帯性等の要求のために、ますます軽薄短小化が進んでいる。
このような軽薄短小化を実現するための鍵となる技術として、表面実装技術(SMT)が普及し、多くの電気電子機器製品に使用されている。これにより電子基板の実装密度が飛躍的に向上し、従来では実現できなかったような軽薄短小化が達成されている。
【0003】
SMTが適用される場合には、電子基板上に実装された部品全体をハンダ付けするために、最低でもハンダ付けの温度(230℃)に耐えられる材料でなければ使用できない。このような用途に使用できる材料として、耐熱性樹脂組成物が知られている(例えば、特許文献1)。
【0004】
ここで、樹脂成形品等に、直接に、3次元設計ができるメッキを形成する技術の1つとして、レーザーダイレクトストラクチャリング(以下、「LDS」ということがある)技術が注目されている。LDS技術は、例えば、LDS添加剤を含む樹脂成形品の表面にレーザーを照射し、レーザーを照射した部分のみを活性化させ、該活性化させた部分に金属を適用することによってメッキ層を形成する技術である。この技術の特徴は、接着剤などを使わずに、樹脂基材表面に金属構造体を製造できる点にある。かかるLDS技術は、例えば、特許文献2〜4等に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−075994号公報
【特許文献2】特表2000−503817号公報
【特許文献3】特表2004−534408号公報
【特許文献4】国際公開WO2009/141800号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、LDS添加剤を含む樹脂成形品においても、その強度を保つために、無機繊維を配合することが広く行われている。しかしながら、硬度の高いLDS添加剤と無機繊維を含む熱可塑性樹脂組成物をコンパウンドすると、LDS添加剤が無機繊維にダメージを与えてしまい、樹脂成形品の機械的強度が劣る傾向にあることが分かった。特に、優れた機械的強度を発揮する長繊維を含むペレットの製造が難しいことが分かった。本発明はかかる問題点を解決することを目的とするものであって、メッキが適切に形成でき、かつ、機械的強度に優れた樹脂成形品を提供するための、ペレットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる状況のもと、本願発明者が鋭意検討を行った結果、熱可塑性樹脂と硬度の高いLDS添加剤を含む熱可塑性樹脂組成物を連続無機繊維に含浸させ、カットしてペレット状にすることによって、熱可塑性樹脂と長繊維と硬度の高いLDS添加剤を含むペレットを提供可能になった。
具体的には、下記手段<1>により、好ましくは<2>〜<12>により上記課題は解決された。
<1>熱可塑性樹脂とモース硬度が5.0以上のレーザーダイレクトストラクチャリング添加剤と無機繊維を含むペレットであって、前記ペレットの30重量%以上が、前記ペレットの平均長さの90%以上の繊維長を有する無機繊維を含むペレット。
<2>熱可塑性樹脂が、ポリアミド樹脂である、<1>に記載のペレット。
<3>無機繊維のモース硬度が5.0以上である、<1>または<2>に記載のペレット。
<4>無機繊維がガラス繊維である、<1>〜<3>のいずれかに記載のペレット。
<5>熱可塑性樹脂とモース硬度が5.0以上のレーザーダイレクトストラクチャリング添加剤を含む熱可塑性樹脂組成物を連続無機繊維に含浸させ、カットすることを含む、ペレットの製造方法。
<6>熱可塑性樹脂が、ポリアミド樹脂である、<5>に記載のペレットの製造方法。
<7>無機繊維のモース硬度が5.0以上である、<5>または<6>に記載のペレットの製造方法。
<8>無機繊維がガラス繊維である、<5>〜<7>のいずれかに記載のペレットの製造方法。
<9><1>〜<4>のいずれかに記載のペレットを成形してなる樹脂成形品。
<10>さらに、表面にメッキ層を有する、<9>に記載の樹脂成形品。
<11><1>〜<4>のいずれかに記載のペレットを成形してなる樹脂成形品の表面に、レーザーを照射後、金属を適用して、メッキ層を形成することを含む、メッキ層付樹脂成形品の製造方法。
<12>前記メッキ層が銅メッキ層である、<11>に記載のメッキ層付樹脂成形品の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、熱可塑性樹脂と長繊維と硬度の高いLDS添加剤を含むペレットを提供可能になった。また、このようなペレットを用いて樹脂成形品を製造することにより、高いメッキ性を維持し、かつ、機械的強度に優れた樹脂成形品を提供可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】樹脂成形品の表面にメッキを設ける工程を示す概略図である。図1中、1は樹脂成形品を、2はレーザーを、3はレーザーが照射された部分を、4はメッキ液を、5はメッキ層をそれぞれ示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。尚、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
【0011】
本発明におけるモース硬度は、一般的に鉱物の硬さの指標として用いられる10段階モース硬度を用いる。
【0012】
本発明のペレットは、熱可塑性樹脂とモース硬度が5.0以上のレーザーダイレクトストラクチャリング添加剤と無機繊維を含むペレットであって、前記ペレットの30重量%以上が、前記ペレットの平均長さ(平均ペレット長)の90%以上の繊維長を有する無機繊維を含む。このようなペレットを用いて樹脂成形品を製造することにより、高いメッキ性を維持し、かつ、機械的強度に優れた樹脂成形品を提供することが可能になる。
ここで、ペレットの長さとは、ペレットの最も長い部分の長さをいう。従って、ペレットの平均長とは、各ペレットの最も長い部分の平均の長さをいう。本発明では、平均ペレット長の90%以上の長さを有する無機繊維を含むペレットが全体の30重量%以上を占め、好ましくは40重量%以上を占め、よりさらに好ましくは70重量%以上を占める。このような構成とすることにより、機械的強度の高い樹脂成形品を提供可能になる。
従来では、熱可塑性樹脂とLDS添加剤と無機繊維をそのまま混練してペレットを作成していたため、LDS添加剤の硬度が高いと無機繊維にダメージを与え、無機繊維が折れてしまうことがあった。本発明では、熱可塑性樹脂とLDS添加剤を含む熱可塑性樹脂組成物を連続無機繊維に含浸させた後カットするので、このような問題が起きない。
以下、本発明の詳細について説明する。
【0013】
<熱可塑性樹脂>
本発明で用いる熱可塑性樹脂としては、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリアセタール樹脂およびポリカーボネート樹脂から選択されることが好ましい。これらの中でも、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂が好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0014】
ポリエステル樹脂としては、特開2010−174223号公報の段落番号0013〜0016の記載を参酌することができる。
ポリアセタール樹脂としては、特開2003−003041号公報の段落番号0011、特開2003−220667号公報の段落番号0018〜0020の記載を参酌することができる。
【0015】
ポリアミド樹脂としては、特開2011−132550号公報の段落番号0011〜0013の記載を参酌することができる。好ましくは、ジアミン構成単位(ジアミンに由来する構成単位)とジカルボン酸構成単位(ジカルボン酸に由来する構成単位)をからなるポリアミド樹脂であって、ジアミン構成単位の50モル%以上がキシリレンジアミンに由来するポリアミド樹脂である。好ましくは、ジアミン構成単位の70モル%以上、より好ましくは80モル%以上がメタキシリレンジアミンおよび/またはパラキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸構成単位(ジカルボン酸に由来する構成単位)の好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、特には80モル%以上が、炭素原子数が好ましくは4〜20の、α,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来するキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂である。4〜20のα、ω−直鎖脂肪族二塩基酸は、アジピン酸、セバシン酸、スベリン酸、ドデカン二酸、エイコジオン酸などが好適に使用できる。ジカルボン酸は、アジピン酸およびセバシン酸が好ましく、セバシン酸がより好ましい。
また、ポリアミド樹脂は、分子量が1,000以下の成分を0.5〜5質量%含有することが好ましい。このような低分子量成分をこのような範囲で含有することにより、得られる成形品の強度や低そり性がより良好となる。5質量%以下とすることにより、低分子量成分がブリードしにくくなり、また、表面外観が向上する傾向にある。
分子量が1,000以下の成分の好ましい含有量は、0.6〜4.5質量%であり、より好ましくは0.7〜4質量%であり、さらに好ましくは0.8〜3.5質量%であり、特に好ましくは0.9〜3質量%であり、最も好ましくは1〜2.5質量%である。
【0016】
分子量が1,000以下の低分子量成分の含有量の調整は、ポリアミド樹脂重合時の温度や圧力、ジアミンの滴下速度などの溶融重合条件を調節して行うことができる。特に溶融重合後期に反応装置内を減圧して低分子量成分を除去し、任意の割合に調節することができる。また、溶融重合により製造されたポリアミド樹脂を熱水抽出して低分子量成分を除去してもよいし、溶融重合後さらに減圧下で固相重合して低分子量成分を除去してもよい。固相重合に際しては、温度や減圧度を調節して、低分子量成分を任意の含有量に制御することができる。また、分子量が1,000以下の低分子量成分を後からポリアミド樹脂に添加することでも調節可能である。
【0017】
なお、分子量1,000以下の成分量の測定は、東ソー社(TOSOH CORPORATION)製「HLC−8320GPC」を用いて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定による標準ポリメチルメタクリレート(PMMA)換算値より求めることができる。なお、測定用カラムとしては「TSKgel SuperHM−H」を2本用い、溶媒にはトリフルオロ酢酸ナトリウム濃度10mmol/lのヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)を用い、樹脂濃度0.02質量%、カラム温度は40℃、流速0.3ml/分、屈折率検出器(RI)にて測定することができる。また、検量線は6水準のPMMAをHFIPに溶解させて測定し作成する。
【0018】
本発明のペレットにおける熱可塑性樹脂の含有量としては、20〜98重量%が好ましく、25〜80重量%がより好ましく、30〜70重量%がさらに好ましく、35〜60重量%が特に好ましい。熱可塑性樹脂は1種類のみを用いても良く、2種類以上用いても良い。2種類以上用いた場合は、その合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0019】
<LDS添加剤>
本発明におけるLDS添加剤は、熱可塑性樹脂(例えば、後述する実施例で合成しているポリアミド樹脂)100重量部に対し、LDS添加剤と考えられる添加剤を10重量部添加し、波長1064nmのYAGレーザーを用い、出力13W、周波数20kHz、スキャン速度2m/sにて照射し、その後のメッキ工程は無電解のMacDermid社製MIDCopper100XB Strikeのメッキ槽にて実施し、該レーザー照射面に金属を適用したときに、メッキを形成できる化合物をいう。本発明で用いるLDS添加剤は、合成品であってもよいし、市販品を用いてもよい。また、市販品は、LDS添加剤として市販されているものの他、本発明におけるLDS添加剤の要件を満たす限り、他の用途として販売されている物質であってもよい。LDS添加剤は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0020】
本発明で用いるLDS添加剤は、モース硬度が5.0以上である。本発明では、このようにモース硬度の高いLDS添加剤を用いても、長繊維を含むペレットを提供できる点で価値が高い。LDS添加剤のモース硬度は、5.0〜7.0が好ましく、5.0〜6.5がより好ましい。
【0021】
以下に、本発明で用いるLDS添加剤の好ましい実施形態を述べる。このような実施形態のLDS添加剤を用いることにより、本発明の効果がより効果的に発揮される傾向にある。しかしながら、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではないことは言うまでもない。
【0022】
本発明で用いるLDS添加剤の第一の実施形態は、銅およびクロムを含む化合物である。第一の実施形態のLDS添加剤としては、銅を10〜50質量%含むことが好ましい。また、クロムを15〜50質量%含むことが好ましい。第一の実施形態におけるLDS添加剤は、銅およびクロムを含む酸化物であることが好ましい。
【0023】
銅およびクロムの含有形態としては、スピネル構造が好ましい。スピネル構造とは、複酸化物でAB24型の化合物(AとBは金属元素)にみられる代表的結晶構造型の一つである。
【0024】
第一の実施形態のLDS添加剤は、銅およびクロムの他に、他の金属を微量含んでいてもよい。他の金属としては、アンチモン、スズ、鉛、インジウム、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、カドミウム、銀、ビスマス、ヒ素、マンガン、マグネシウム、カルシウムなどが例示され、マンガンが好ましい。これら金属は酸化物として存在していてもよい。
第一の実施形態のLDS添加剤の好ましい一例は、銅クロム酸化物以外の金属酸化物の含有量が10質量%以下であるLDS添加剤である。
【0025】
本発明で用いるLDS添加剤の第二の実施形態は、アンチモンおよび/またはリンと、錫とを含む酸化物、好ましくはアンチモンと錫とを含む酸化物である。
【0026】
第二の実施形態のLDS添加剤は、錫の配合量がリンおよび/またはアンチモンの配合量よりも多いものがより好ましく、錫とリンとアンチモンの合計量に対する錫の量が、80重量%以上であることがより好ましい。
【0027】
特に、第二の実施形態のLDS添加剤としては、アンチモンと錫とを含む酸化物が好ましく、錫の配合量がアンチモンの配合量よりも多いものがより好ましく、錫とアンチモンの合計量に対する錫の量が、80重量%以上であることがより好ましい。
【0028】
より具体的には、第二の実施形態のLDS添加剤としては、例えば、アンチモンがドープされた酸化錫、酸化アンチモンがドープされた酸化錫、リンがドープされた酸化錫、リン酸化物がドープされた酸化錫が挙げられ、アンチモンがドープされた酸化錫、酸化アンチモンがドープされた酸化錫が好ましく、酸化アンチモンがドープされた酸化錫がより好ましい。例えば、リンと酸化錫とを含むLDS添加剤において、リンの含有量は、1〜20重量%であることが好ましい。また、アンチモンと酸化錫とを含むLDS添加剤において、アンチモンの含有量は、1〜20重量%であることが好ましい。また、リンとアンチモンと酸化錫とを含むLDS添加剤において、リンの含有量は、0.5〜10重量%、アンチモンの含有量は、0.5〜10重量%であることが好ましい。
【0029】
本発明で用いるLDS添加剤の第三の実施形態は、少なくとも2種の金属を含み、かつ、抵抗率が5×103Ω・cm以下の導電性酸化物を含むことが好ましい。導電性酸化物の抵抗率は、8×102Ω・cm以下が好ましく、7×102Ω・cm以下がより好ましく、5×102Ω・cm以下がさらに好ましい。下限については特に制限はないが、例えば、1×101Ω・cm以上とすることができ、さらには、1×102Ω・cm以上とすることができる。
本発明における導電性酸化物の抵抗率は、通常、粉末抵抗率をいい、導電性酸化物の微粉末10gを、内面にテフロン加工を施した内径25mmの円筒内へ装入して100kg/cm2に加圧し(充填率20%)、横河電機製の「3223型」テスターで測定することができる。
【0030】
第三の実施形態で用いるLDS添加剤は、抵抗率が5×103Ω・cm以下の導電性酸化物を含んでいれば特に制限されないが、少なくとも2種類の金属を含むことが好ましく、具体的には、周期表のn族(nは3〜16の整数)の金属とn+1族の金属を含むことが好ましい。nは10〜13の整数が好ましく、12または13がさらに好ましい。
第三の実施形態で用いるLDS添加剤は、LDS添加剤中における、周期表のn族(nは3〜16の整数)の金属の含有量とn+1族の金属の含有量の合計を100モル%としたとき、一方の金属の含有量が15モル%以下であることが好ましく、12モル%以下であることがさらに好ましく、10モル%以下であることが特に好ましい。下限については特に制限はないが、0.0001モル%以上である。2種類以上の金属の含有量をこのような範囲とすることで、メッキ性を向上させることができる。本発明では特に、n+1族の金属がドープされたn族の金属酸化物が好ましい。
さらに、第三の実施形態で用いるLDS添加剤は、LDS添加剤中に含まれる金属成分の98重量%以上が、上記周期表のn族の金属の含有量とn+1族の金属で構成されることが好ましい。
【0031】
周期表のn族の金属としては、例えば、3族(スカンジウム、イットリウム)、4族(チタン、ジルコニウムなど)、5族(バナジウム、ニオブなど)、6族(クロム、モリブテンなど)、7族(マンガンなど)、8族(鉄、ルテニウムなど)、9族(コバルト、ロジウム、イリジウムなど)、10族(ニッケル、パラジウム、白金)、11族(同、銀、金など)、12族(亜鉛、カドミウムなど)、13族(アルミニウム、ガリウム、インジウムなど)、14族(ゲルマニウム、スズなど)、15族(ヒ素、アンチモンなど)、16族(セレン、テルルなど)、これらの金属酸化物などが挙げられる。中でも、12族(n=12)の金属または金属酸化物が好ましく、亜鉛がより好ましい。
【0032】
周期表のn+1族の金属としては、例えば、4族(チタン、ジルコニウムなど)、5族(バナジウム、ニオブなど)、6族(クロム、モリブテンなど)、7族(マンガンなど)、8族(鉄、ルテニウムなど)、9族(コバルト、ロジウム、イリジウムなど)、10族(ニッケル、パラジウム、白金)、11族(同、銀、金など)、12族(亜鉛、カドミウムなど)、13族(アルミニウム、ガリウム、インジウムなど)、14族(ゲルマニウム、スズなど)、15族(ヒ素、アンチモンなど)、16族(セレン、テルルなど)、これらの金属酸化物などが挙げられる。中でも、13族(n+1=13)の金属または金属酸化物が好ましく、アルミニウムまたはガリウムがより好ましく、アルミニウムがさらに好ましい。
【0033】
第三の実施形態で用いるLDS添加剤は、導電性金属酸化物以外の金属を含有していてもよい。導電性酸化物以外の金属としては、アンチモン、チタン、インジウム、鉄、コバルト、ニッケル、カドミウム、銀、ビスマス、ヒ素、マンガン、クロム、マグネシウム、カルシウムなどが例示される。これら金属は酸化物として存在していてもよい。これら金属の含有量は、LDS添加剤に対してそれぞれ0.01重量%以下が好ましい。
なお、第三の実施形態で用いるLDS添加剤は、L値を向上させる観点から、アンチモンの含有量は、LDS添加剤に対して3重量%以下であることが好ましく、1重量%以下であることがより好ましく、0.01重量%以下であることがさらに好ましく、実質的に含まないことが特に好ましい。実質的に含まないとは、本発明の効果に影響を与える範囲内で含まないことを意味する。
【0034】
本発明で用いるLDS添加剤の粒子径は、0.01〜50μmであることが好ましく、0.05〜30μmであることがより好ましい。このような構成とすることにより、メッキを適応した際のメッキ表面状態の均一性が良好になる傾向にある。
【0035】
本発明のペレットにおける、LDS添加剤の配合量は、熱可塑性樹脂100重量部に対し、好ましくは1〜30重量部であり、より好ましくは2〜25重量部であり、さらに好ましくは5〜20重量部である。LDS添加剤の配合量をこのような範囲にすることによって、樹脂成形品のメッキ特性をより良好にすることができる。また、後述するように、タルクと組み合わせることにより、少ない添加量でメッキ形成をすることが可能になる。2種類以上のLDS添加剤を含む場合には、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0036】
<<他のLDS添加剤>>
本発明では、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で他のLDS添加剤を含んでいても良い。具体的には、EP2291290号公報の段落番号0034〜0037に記載のLDS添加剤、WO2013/141157号パンフレットの段落番号0025〜0033に記載のLDS添加剤であってモース硬度が5.0未満のものが例示される。
しかしながら、本発明では、モース硬度5.0未満のLDS添加剤を全LDS添加剤の10重量%以下とすることもできる。
【0037】
<アルカリ>
本発明のペレットはアルカリを含んでいてもよい。本発明において、アルカリは、通常、熱可塑性樹脂組成物に配合され、本発明のペレットに組み込まれる。本発明で用いるLDS添加剤が酸性物質(例えば、pH6以下)の場合に、組み合わせによって自身が還元することで色目がまだら模様となるケースがあるが、アルカリを添加することにより、得られる樹脂成形品の色あいをより均一にすることができる。アルカリの種類は特に定めるものではなく、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等を用いることができる。アルカリは、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。例えば、上述の銅を含むLDS添加剤(Cu3(PO42Cu(OH)2)が酸性物質のLDS添加剤に該当する。
本発明のペレットにおける、アルカリの配合量は、LDS添加剤の種類及びアルカリの種類にもよるが、LDS添加剤の配合量の、好ましくは0.01〜3重量%であり、より好ましくは0.05〜1重量%である。
【0038】
<無機顔料>
本発明のペレットは無機顔料を含んでいてもよい。本発明において、無機顔料は、通常、熱可塑性樹脂組成物に配合され、本発明のペレットに組み込まれる。本発明では、無機顔料を添加することにより、樹脂成形品を着色することが可能になる。無機顔料は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。無機顔料としては、CIELabにおけるL*値が80以上、かつ、モース硬度が5.0以下の無機顔料が好ましい。L*値は、50〜100がより好ましい。無機顔料のモース硬度は、2〜5がより好ましく、2.5〜4.5がさらに好ましい。
このような無機顔料としては、ZnS(L*値:(87〜95)、モース硬度:3〜3.5)、ZnO(L*値:(88〜96)、モース硬度:4〜5)が例示され、ZnSがより好ましい。
本発明のペレットにおいて、LDS添加剤として銅を含むものを用いる場合、特に、モース硬度が5.0以下のものを用いることが好ましい。このような無機顔料を用いることにより、本発明の効果がより効果的に発揮される傾向にある。
本発明のペレットにおける無機顔料の配合量は、ペレット100重量部に対し、0.1〜20重量部であることが好ましく、0.3〜15重量部であることがより好ましく、0.5〜12重量部であることがさらに好ましい。
【0039】
<タルク>
本発明のペレットはタルクを含んでいてもよい。本発明では、タルクを配合することにより、レーザーを照射した部分のメッキ性能が向上する傾向にある。
本発明において、タルクは、通常、熱可塑性樹脂組成物に配合され、本発明のペレットに組み込まれる。
本発明のペレットがタルクを含む場合、該タルクの配合量は、熱可塑性樹脂組成物100重量部に対し、0.5〜20重量部であることが好ましく、1〜15重量部であることがより好ましい。
【0040】
<離型剤>
本発明のペレットは、離型剤を含んでいてもよい。本発明において、離型剤は、通常、熱可塑性樹脂組成物に配合され、本発明のペレットに組み込まれる。離型剤は、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸エステル、および数平均分子量200〜15000の脂肪族炭化水素化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物が好ましい。中でも、脂肪族カルボン酸、および脂肪族カルボン酸エステルから選ばれる少なくとも1種の化合物がより好ましく用いられる。
【0041】
脂肪族カルボン酸としては、飽和または不飽和の脂肪族モノカルボン酸、ジカルボン酸またはトリカルボン酸を挙げることができる。本明細書では、脂肪族カルボン酸の用語は、脂環式カルボン酸も包含する意味で用いる。脂肪族カルボン酸の中でも、炭素数6〜36のモノまたはジカルボン酸が好ましく、炭素数6〜36の脂肪族飽和モノカルボン酸がより好ましい。このような脂肪族カルボン酸の具体例としては、パルミチン酸、ステアリン酸、吉草酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラリアコンタン酸、モンタン酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸等を挙げることができる。
【0042】
脂肪族カルボン酸エステルを構成する脂肪族カルボン酸成分としては、前記脂肪族カルボン酸と同じものが使用できる。一方、脂肪族カルボン酸エステルを構成するアルコール成分としては、飽和または不飽和の1価アルコール、飽和または不飽和の多価アルコール等を挙げることができる。これらのアルコールは、フッ素原子、アリール基等の置換基を有していてもよい。これらのアルコールのうち、炭素数30以下の1価または多価の飽和アルコールが好ましく、さらに炭素数30以下の脂肪族飽和1価アルコールまたは多価アルコールが好ましい。ここで脂肪族アルコールは、脂環式アルコールも包含する。これらのアルコールの具体例としては、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2−ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等を挙げることができる。これらの脂肪族カルボン酸エステルは、不純物として脂肪族カルボン酸および/またはアルコールを含有していてもよく、複数の化合物の混合物であってもよい。脂肪族カルボン酸エステルの具体例としては、蜜ロウ(ミリシルパルミテートを主成分とする混合物)、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、ベヘン酸オクチルドデシル、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレートを挙げることができる。
【0043】
本発明のペレットが離型剤を含む場合、該離型剤の配合量は、樹脂成分100重量部に対し、0.01〜5重量部であり、0.05〜3重量部がより好ましい。本発明のペレットは、離型剤を1種類のみ含んでいてもよいし、2種類以上含んでいてもよい。2種類以上含む場合は、合計量が上記範囲となる。
【0044】
<その他の成分>
本発明のペレットは、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、光安定剤、熱安定剤、エラストマー、顔料、アルカリ、紫外線吸収剤、難燃剤、蛍光増白剤、滴下防止剤、帯電防止剤、防曇剤、滑剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、防菌剤などが挙げられる。これらは2種以上を併用してもよい。本発明においては、これらの成分も、通常、熱可塑性樹脂組成物に配合され、本発明のペレットに組み込まれる。
これらの記載は、国際公開WO2012/128219号パンフレットの段落番号0027、0028、0038〜0054、特開2007−314766号公報、特開2008−127485号公報および特開2009−51989号公報、特開2012−72338号公報等の記載を参酌でき、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。
また、本発明のペレットは、本発明の範囲を逸脱しない範囲で、短繊維を含んでいても良い。短繊維としてはガラス繊維が挙げられる。
【0045】
<連続無機繊維>
本発明に用いる連続無機繊維としては、炭素繊維および/またはガラス繊維が好ましく、ガラス繊維がより好ましい。
本発明における連続無機繊維とは、10cm以上の長さを有する繊維であり、工業的には1m以上の長さを有する、いわゆる、ロービング状の繊維である。
【0046】
連続無機繊維は、本発明で用いる熱可塑性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂との濡れ性、界面密着性を向上させるために、連続無機繊維の表面に熱可塑性樹脂と反応性を有する官能基を有するものが好ましい。
熱可塑性樹脂と反応性を有する官能基を有する連続無機繊維の例として、表面処理剤または収束剤で表面処理したものが好ましく挙げられる。
【0047】
表面処理剤としては、例えば、エポキシ系化合物、アクリル系化合物、イソシアネート系化合物、シラン系化合物、チタネート系化合物等の官能性化合物からなるものが挙げられ、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤等であり、シラン系カップリング剤が好ましい。
シラン系カップリング剤としては、アミノプロピルトリエトキシシラン、フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、グリシジルプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のトリアルコキシまたはトリアリロキシシラン化合物、ウレイドシラン、スルフィドシラン、ビニルシラン、イミダゾールシラン等が挙げられる。
【0048】
収束剤としては、ビスフェノールA型のエポキシ樹脂等のエポキシ系樹脂、1分子中にアクリル基またはメタクリル基を有するエポキシアクリレート樹脂であって、ビスフェノールA型のビニルエステル樹脂、ノボラック型のビニルエステル樹脂、臭素化ビニルエステル樹脂等のビニルエステル系樹脂が好ましく挙げられる。また、エポキシ系樹脂やビニルエステル系樹脂のウレタン変性樹脂であってもよい。
【0049】
本発明で用いる連続無機繊維のモース硬度は、5.0以上であることが好ましく、5.5以上であることが好ましく、6.0以上であることが好ましい。また、上限としては、7.0以下が好ましく、6.5以下がより好ましい。
【0050】
本発明のペレット中の無機繊維の量は、20〜80重量%が好ましく、20〜70重量%がより好ましい。
また、本発明のペレットは、その構成成分の80重量%以上が、熱可塑性樹脂と無機繊維からなることが好ましい。
【0051】
ペレットの製造方法
本発明のペレットは、熱可塑性樹脂とモース硬度が5.0以上のレーザーダイレクトストラクチャリング添加剤を含む熱可塑性樹脂組成物を連続無機繊維に含浸させ、カットすることによって製造される。
カット長を調整することによって、ペレットの長さを調整できる。平均ペレット長としては、1〜30mmが好ましく、3〜15mmがより好ましい。
【0052】
本発明のペレット中に含まれる無機繊維は、平均ペレット長の90%以上の繊維長を有する無機繊維を含む。本発明では、無機繊維に熱可塑性樹脂組成物を含浸させた後に切断するので、ペレット中の無機繊維の長さは長い。本発明では、ペレットに含まれる無機繊維のうち、30重量%以上が平均ペレット長の90%以上の繊維長を有することが好ましい。
【0053】
本発明のペレットの製造方法は、まず、熱可塑性樹脂、LDS添加剤、その他の成分を、タンブラーやヘンシェルミキサーなどの各種混合機を用い予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダーなどで溶融混練する。
【0054】
また、例えば、各成分を予め混合せずに、または、一部の成分のみを予め混合し、フィーダーを用いて押出機に供給して溶融混練することもできる。
さらに、例えば、一部の成分を予め混合し押出機に供給して溶融混練することで得られる熱可塑性樹脂組成物をマスターバッチとし、このマスターバッチを再度残りの成分と混合し、溶融混練することもできる。
【0055】
このようにして得られた溶融混練された熱可塑性樹脂組成物を連続無機繊維に含浸させる。含浸させる際は、好ましくは、ロービング状の連続無機繊維を開繊して引きながら、溶融混練された熱可塑性樹脂組成物を含浸させる。
含浸の際の温度は、熱可塑性樹脂組成物のガラス転移点+100℃以上の温度から熱分解温度−5℃の温度範囲が好ましい。また、融点を有する熱可塑性樹脂組成物の場合は、融点+30℃以上が好ましく、より好ましくは融点+50℃以上である。上限については、熱可塑性樹脂組成物の熱分解温度−5℃の温度範囲が好ましい。
このような条件で加熱や加圧することで、本発明で用いる熱可塑性樹脂組成物の連続無機繊維への含浸がより良好に行われる。なお、本発明で用いる熱可塑性樹脂組成物が融点を2つ以上有する場合、ここでいう融点とは、高温側の吸熱ピークのピークトップの温度である。
【0056】
得られた熱可塑性樹脂組成物が含浸した繊維は、賦形ダイ等を通してストランドとして引取り、所望のペレット長となるようにカットされる。
【0057】
<樹脂成形品>
本発明のペレットは、樹脂成形品に加工される。樹脂成形品の製造方法は、特に限定されず、ペレットを用いた成形法を任意に採用できる。その例を挙げると、射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、ガスアシスト等の中空成形法、断熱金型を使用した成形法、急速加熱金型を使用した成形法、発泡成形(超臨界流体も含む)、インサート成形、IMC(インモールドコーティング成形)成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法、ブロー成形法などが挙げられる。また、ホットランナー方式を使用した成形法を用いることも出来る。
【0058】
本発明の樹脂成形品は、最終製品に限らず、複合材料や各種部品も含む趣旨である。本発明における樹脂成形品は、携帯電子機器、車両および医療機器の部品や、その他の電気回路を含む電子部品、ならびに、これらを形成するための複合材料として用いることが好ましい。特に、本発明の樹脂成形品は、高い耐衝撃特性と剛性、優れた耐熱性を併せ持つうえ、異方性が小さく、反りが小さいものとすることができるため、電子手帳、携帯用コンピューター等のPDA、ポケットベル、携帯電話、PHSなどの内部構造物および筐体として極めて有効である。特に樹脂成形品がリブを除く平均肉厚が1.2mm以下(下限値は特に定めるものではないが、例えば、0.4mm以上)である平板形状の部品に適しており、中でも携帯電子機器の筐体として特に適している。
【0059】
<メッキ層の形成方法>
次に、本発明の樹脂成形品の表面にメッキを設ける工程を図1に従って説明する。図1は、レーザーダイレクトストラクチャリング技術によって、樹脂成形品1の表面にメッキを形成する工程を示す概略図である。図1では、樹脂成形品1は、平坦な基板となっているが、必ずしも平坦な基板である必要はなく、一部または全部が曲面している樹脂成形品であってもよい。
本発明のメッキ層の形成方法では、樹脂成形品1にレーザー2を照射する。ここでのレーザーとは、特に定めるものではなく、YAGレーザー、エキシマレーザー、電磁線等の公知のレーザーから適宜選択することができ、YAGレーザーが好ましい。また、レーザーの波長も特に定めるものではない。好ましい波長範囲は、200nm〜1200nmである。特に好ましくは800〜1200nmである。
レーザーが照射されると、レーザーが照射された部分3のみ、樹脂成形品1が活性化される。この活性化された状態で、樹脂成形品1をメッキ液4に適用する。メッキ液4としては、特に定めるものではなく、公知のメッキ液を広く採用することができ、金属成分として銅、ニッケル、金、銀、パラジウムが混合されているものが好ましく、銅がより好ましい。
樹脂成形品1をメッキ液4に適用する方法についても、特に定めるものではないが、例えば、メッキ液を配合した液中に投入する方法が挙げられる。メッキ液を適用後の樹脂成形品は、レーザー照射した部分のみ、メッキ層5が形成される。
本発明の方法では、1mm以下、さらには、150μm以下の幅の回路間隔(下限値は特に定めるものではないが、例えば、30μm以上)を形成することができる。かかる回路は携帯電子機器部品のアンテナとして好ましく用いられる。すなわち、本発明の樹脂成形品の好ましい実施形態の一例として、携帯電子機器部品の表面に設けられたメッキ層が、アンテナとしての性能を保有する樹脂成形品が挙げられる。
【0060】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、特開2011−219620号公報、特開2011−195820号公報、特開2011−178873号公報、特開2011−168705号公報、特開2011−148267号公報の記載を参酌することができる。
【0061】
本発明の方法により、樹脂成形品の表面に直接にメッキ層を形成できる。このため、本発明の製造方法は、アンテナを有する携帯電子機器部品の製造に好ましく用いられる。
【実施例】
【0062】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0063】
<ポリアミド樹脂>
(ポリアミド(PAMP10)の合成)
セバシン酸を窒素雰囲気下の反応缶内で加熱溶解した後、内容物を攪拌しながら、パラキシリレンジアミン(三菱瓦斯化学(株)製)とメタキシリレンジアミン(三菱瓦斯化学(株)製)のモル比が3:7の混合ジアミンを、加圧(0.35Mpa)下でジアミンとセバシン酸とのモル比が約1:1になるように徐々に滴下しながら、温度を235℃まで上昇させた。滴下終了後、60分間反応継続し、分子量1000以下の成分量を調整した。反応終了後、内容物をストランド状に取り出し、ペレタイザーにてペレット化し、ポリアミドを得た。以下、「PAMP10」という。
【0064】
(ポリアミド(PAMP6)の合成)
アジピン酸を窒素雰囲気下の反応缶内で加熱溶解した後、内容物を攪拌しながら、パラキシリレンジアミン(三菱瓦斯化学(株)製)とメタキシリレンジアミン(三菱瓦斯化学(株)製)のモル比が3:7の混合ジアミンを、加圧(0.35Mpa)下でジアミンとアジピン酸(ローディア社製)とのモル比が約1:1になるように徐々に滴下しながら、温度を270℃まで上昇させた。滴下終了後、0.06MPaまで減圧し10分間反応を続け分子量1,000以下の成分量を調整した。その後、内容物をストランド状に取り出し、ペレタイザーにてペレット化し、ポリアミドを得た。以下、「PAMP6」という。
【0065】
<LDS添加剤>
Black1G:銅クロム酸化物(CuCr24)(シェファードジャパン製)、モース硬度5.5〜6
T1−20L:アンチモンドープ錫(三菱マテリアル製)、モース硬度5.5〜6
<無機繊維>
T−423:連続ガラス繊維、日本電気硝子製、モース硬度6.5、繊維径:17μm、線密度:2400TEX
03T−296GH:ガラス繊維(日本電気硝子製)、モース硬度6.5、繊維径:10μm
<タルク>
ミクロンホワイト5000S(林化成製)
<離型剤>
CS8CP(日東化成工業製)
【0066】
<LDS添加剤を含む長繊維ペレットの製造方法(実施例1〜3、比較例3)>
後述する表に示す組成となるように、ガラス繊維を除いた各成分をそれぞれ秤量し、タンブラーにてブレンドし、含浸ポッドを先端に取り付けた二軸押出機(東芝機械社製、TEM26SS)の根元から投入し、溶融した樹脂組成物を含浸ポッドに供給し、ロービング状のガラス繊維を開繊して引きながら、含浸ポッド中で樹脂の溶融物に含浸させた。その後、賦形ダイを通してストランドとして引取り、ガラス長繊維ペレットを作成した。押出機バレルの温度設定は280℃、回転数は250回転、含浸ポッドの設定温度は310℃、ロービングの引き取り速度は15m/minにて実施した。
【0067】
<コンパウンド品の作成方法(比較例1、2)>
後述する表に示す組成となるように、各成分をそれぞれ秤量し、ガラス繊維を除く成分をタンブラーにてブレンドし、二軸押出機(東芝機械社製、TEM26SS)の根元から投入し、溶融した後で、ガラス繊維を押出機の下流からサイドフィードして樹脂ペレットを作成した。押出機の温度設定は280℃、回転数は350回転にて実施した。
【0068】
<ペレットの平均長さ>
得られたペレット100粒を、デジタルノギスを用い、ペレットの長さを測定し平均値を算出した。単位は、mmで表した。
【0069】
<ペレット中繊維の平均繊維長の測定>
ペレットから約5gのサンプルを切り出し、温度600℃の電気炉で2時間灰化後、残った強化繊維に対して行った。得られた強化繊維を折損しないように中性表面活性剤水溶液中に分散させ、その分散水溶液を、ピペットを用いてスライドグラス上に移し、顕微鏡で写真撮影を行った。その写真画像に対して、画像解析ソフトを用い、1000〜2000本の強化繊維について測定を行った。
【0070】
<長繊維を含むペレットの割合>
長繊維ペレットと短繊維ペレットの総和のうち、長繊維ペレットが占める割合を重量比率で算出した。ここで、長繊維ペレットとは、ペレットの平均長さの90%以上の長さの繊維を含むペレットをいい、長繊維ペレット以外のペレットであって繊維を含むペレットを短繊維ペレットという。
【0071】
<ISO試験片の作成>
上記で得られたペレットを80℃で5時間乾燥させた後、ファナック社製射出成形機(100T)を用いて、シリンダー温度280℃、金型温度130℃の条件で、ISO引張り試験片(厚さ4.0mm)を射出成形した。その後、ISO引張り試験片の両端を切削し衝撃強度測定用試験片を得た。
射出速度:ISO引張試験片中央部の断面積から樹脂流速を計算して300mm/sとなるように設定した。約95%充填時にVP切替となるように保圧に切り替えた。保圧はバリの出ない範囲で高めに500kgf/cm2を25秒とした。
【0072】
<シャルピー衝撃強度>
上述の方法で得られたISO引張試験片(厚さ4.0mm)を用い、ISO179−1またはISO179−2に準拠し、23℃の条件で、ノッチ付きシャルピー衝撃強度を測定した。単位は、kJ/m2とした。結果を下記表1に示す。
【0073】
<メッキ性(Plating外観)>
上記ISO試験片を用い、得られたプレート試験片の5×5mmの範囲に、SUNX(株)製LP−Z SERIESのレーザー照射装置(波長1064nmのYAGレーザー最大出力13W)を用い、出力80%、パルス周期20μs(マイクロ秒)、速度4m/sにて照射した。その後のメッキ工程は無電解のMacDermid社製、MIDCopper100XB Strikeを用い、60℃のメッキ槽にて実施した。メッキ性能は30分間にメッキされた銅の厚みを目視にて判断した。
以下の通り評価した。結果を下記表に示す。
A:良好な外観(銅の色も濃くメッキが厚く乗っている様子が確認された)
B:メッキが形成されたが、Aよりは劣るレベル(実用レベル)
C:メッキがほとんど確認されない様子であった
【0074】
【表1】
【0075】
上記結果から明らかなとおり、本発明のペレットを用いた樹脂成形品では、高いメッキ性を維持しつつ、高いノッチ付きシャルピー衝撃強度を維持できた(実施例1〜3)。これに対し、ガラス繊維を、熱可塑性樹脂およびLDS添加剤と共にコンパウンドしたペレットを用いた樹脂成形品では(比較例1、2)、メッキ性は維持できたが、ノッチ付きシャルピー衝撃強度が低下してしまった。また、LDS添加剤を配合しないペレットを用いた樹脂成形品では(比較例3)、高いノッチ付きシャルピー衝撃強度を維持できたが、メッキが形成できなかった。
図1