(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
所定の鉛直軸線回りに回転可能なスピンベースと、前記スピンベースと同伴回転可能に設けられ、基板の周端縁に当接して当該基板を支持する複数の基板支持部材とを有し、前記基板を水平姿勢に保持しながら前記鉛直軸線回りに回転させるための基板保持回転手段と、前記基板保持回転手段の周囲を取り囲み、当該基板保持回転手段によって回転されている基板から飛散する処理液を捕獲する処理カップとを含む基板処理装置において実行される基板処理方法であって、
前記スピンベースを回転させて、前記基板を前記鉛直軸線回りに、800(rpm)以上1200(rpm)以下の液処理速度で回転させる基板回転工程と、
前記基板回転工程に並行して、所定の第1の流量の処理液を前記基板の下面に供給すると共に、前記第1の流量よりも多い第2の流量の処理液を前記基板の上面に供給する処理液供給工程とを含む、基板処理方法。
所定の鉛直軸線回りに回転可能なスピンベースと、前記スピンベースと同伴回転可能に設けられ、基板の周端縁に当接して当該基板を支持する複数の基板支持部材とを有し、前記基板を水平姿勢に保持しながら前記鉛直軸線回りに回転させるための基板保持回転手段と、
前記基板の上面に処理液を供給するための処理液上供給手段と、
前記基板の下面に処理液を供給するための処理液下供給手段と、
前記基板保持回転手段の周囲を取り囲み、当該基板保持回転手段によって回転されている基板から飛散する処理液を捕獲する処理カップと、
前記基板保持回転手段、前記処理液上供給手段および前記処理液下供給手段を制御して、前記基板を前記鉛直軸線回りに、800(rpm)以上1200(rpm)以下の液処理速度で回転させる基板回転工程と、前記基板回転工程に並行して、所定の第1の流量の処理液を前記基板の下面に供給すると共に、前記第1の流量よりも多い第2の流量の処理液を前記基板の上面に供給する処理液供給工程とを実行する制御手段とを含む、基板処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る基板処理装置1の構成を模式的に示す図である。
この基板処理装置1は、円形の半導体ウエハ等の基板Wのデバイス形成領域側の表面および裏面に対して、洗浄処理やエッチング処理などの液処理を施すための枚葉型の装置である。
【0025】
基板処理装置1は、処理室2内に、基板Wを保持して回転させるスピンチャック(基板保持回転手段)3と、スピンチャック3に保持されている基板Wの表面(上面)に薬液を供給するための薬液供給ユニット(処理液上供給手段)4と、スピンチャック3に保持されている基板Wの表面(上面)に、リンス液の一例としてのDIW(脱イオン水)を供給するためのリンス液供給ユニット(処理液上供給手段)5と、低表面張力を有する有機溶剤の一例としてのイソプロピルアルコール(isopropyl alcohol:IPA)液を供給するための有機溶剤供給ユニット6と、スピンチャック3に保持されている基板Wの裏面(下面)に処理液(薬液または水)を供給するための下面処理液供給ユニット(処理液下供給手段)7と、スピンチャック3を取り囲む筒状の処理カップ8と、基板処理装置1に備えられた装置の動作やバルブの開閉を制御する制御装置(制御手段、設定手段)9とを含む。
【0026】
処理室2は、箱状の隔壁10と、隔壁10の上部から隔壁10内(処理室2内に相当)に清浄空気を送る送風ユニットとしてのFFU(ファン・フィルタ・ユニット)11と、隔壁10の下部から処理室2内の気体を排出する排気装置12とを含む。スピンチャック3、薬液供給ユニット4の薬液ノズル26、リンス液供給ユニット5のリンス液ノズル30、および有機溶剤供給ユニット6の有機溶剤ノズル34は、隔壁10内に収容配置されている。
【0027】
FFU11は隔壁10の上方に配置されており、隔壁10の天井に取り付けられている。FFU11は、隔壁10の天井から処理室2内に清浄空気を送る。排気装置12は、処理カップ8の底部に接続されており、処理カップ8の底部から処理カップ8の内部を吸引する。FFU11および排気装置12により、処理室2内にダウンフロー(下降流)が形成される。
【0028】
スピンチャック3として、基板Wを水平方向に挟んで基板Wを水平に保持する挟持式のチャックが採用されている。具体的には、スピンチャック3は、スピンモータ13と、このスピンモータ13の駆動軸と一体化されたスピン軸14と、スピン軸14の上端にほぼ水平に取り付けられた円板状のスピンベース15と、スピンベース15に配置された複数個(3個以上。たとえば6個)の挟持部材(基板支持部材)16とを含む。複数個の挟持部材16は、スピンベース15の上面周縁部において、基板Wの外周形状に対応する円周上で適当な間隔を空けて配置されている。
【0029】
複数個の挟持部材16は、互いに協動して、基板Wを水平方向に挟持する。この状態で、スピンモータ13が駆動されると、その駆動力によってスピンベース15が所定の回転軸線(鉛直軸線)A1まわりに回転され、そのスピンベース15と共に、基板Wがほぼ水平な姿勢を保った状態で回転軸線A1まわりに回転される。
薬液供給ユニット4は、薬液ノズル26を含む。薬液ノズル26は、たとえば、連続流の状態で液を吐出するストレートノズルであり、スピンチャック3の上方で、その吐出口を基板Wの上面中央部に向けて固定的に配置されている。薬液ノズル26には、薬液供給源からの薬液が供給される薬液供給管27が接続されている。薬液供給管27の途中部には、薬液ノズル26からの薬液の供給/供給停止を切り換えるための薬液バルブ28と、薬液供給管27の開度を調節して、薬液ノズル26から吐出される薬液の流量を調整するための薬液流量調整バルブ29とが、薬液ノズル26側からこの順で介装されている。薬液供給管27に供給される薬液として、たとえば希フッ酸(DHF)、濃フッ酸(concHF)、フッ硝酸(フッ酸と硝酸(HNO
3)との混合液)、またはフッ化アンモニウム等を例示できる。図示はしないが、薬液流量調整バルブ29は、弁座が内部に設けられたバルブボディと、弁座を開閉する弁体と、開位置と閉位置との間で弁体を移動させるアクチュエータとを含む。他の流量調整バルブについても同様である。
【0030】
リンス液供給ユニット5は、リンス液ノズル30を含む。リンス液ノズル30は、たとえば、連続流の状態で液を吐出するストレートノズルであり、スピンチャック3の上方で、その吐出口を基板Wの上面中央部に向けて固定的に配置されている。リンス液ノズル30には、リンス液供給源からのリンス液が供給されるリンス液供給管31が接続されている。リンス液供給管31の途中部には、リンス液ノズル30からのリンス液の供給/供給停止を切り換えるためのリンス液バルブ32と、リンス液供給管31の開度を調節して、リンス液ノズル30から吐出される水の流量を調整するためのリンス液流量調整バルブ33とが、リンス液ノズル30側からこの順で介装されている。リンス液供給管31に供給されるリンス液としては、DIW(脱イオン水)、炭酸水、電解イオン水、オゾン水、希釈濃度(たとえば、10〜100ppm程度)の塩酸水、還元水(水素水)、脱気水等を例示することができる。
【0031】
有機溶剤供給ユニット6は、有機溶剤ノズル34を含む。有機溶剤ノズル34は、たとえば、連続流の状態で液を吐出するストレートノズルであり、スピンチャック3の上方で、その吐出口を基板Wの上面中央部に向けて固定的に配置されている。リンス液ノズル30には、IPA供給源からの液体のIPAが供給される有機溶剤供給管35が接続されている。有機溶剤供給管35の途中部には、有機溶剤ノズル34からのIPAの供給/供給停止を切り換えるための有機溶剤バルブ36が介装されている。
【0032】
なお、薬液ノズル26、リンス液ノズル30および有機溶剤ノズル34は、それぞれ、スピンチャック3に対して固定的に配置されている必要はなく、たとえば、スピンチャック3の上方において水平面内で揺動可能なアームに取り付けられて、このアームの揺動により基板Wの上面における処理液(薬液、リンス液または有機溶剤)の着液位置がスキャンされる、いわゆるスキャンノズルの形態が採用されてもよい。
【0033】
下面処理液供給ユニット7は、下面ノズル(中心軸ノズル)17と、スピン軸14内で上下に延びる第1の処理液供給配管18と、第1の処理液供給配管18に接続された第2の処理液供給配管19とを含む。第2の処理液供給配管19には、薬液下供給配管20が接続されている。下面ノズル17の上端には、スピンチャック3に保持された基板Wの下面(裏面)の中央部に対向する吐出口17aが形成されている。薬液下供給配管20には、薬液下供給配管20を開閉するための薬液下バルブ22と、薬液下供給配管20の開度を調整するための薬液下流量調整バルブ23とが、第2の処理液供給配管19側からこの順で介装されている。第2の処理液供給配管19には、リンス液下供給配管21が接続されている。リンス液下供給配管21には、リンス液下供給配管21を開閉するためのリンス液下バルブ24と、リンス液下供給配管21の開度を調整するためのリンス液下流量調整バルブ25とが、第2の処理液供給配管19側からこの順で介装されている。
【0034】
リンス液下バルブ24が閉じられた状態で薬液下バルブ22が開かれると、第2の処理液供給配管19を介して、第1の処理液供給配管18から下面ノズル17に薬液が供給される。下面ノズル17に供給された薬液は、その吐出口17aから上方に吐出される。これにより、スピンチャック3に保持されている基板Wの下面中央部に薬液が供給される。下面ノズル17から吐出される薬液の流量は、薬液下流量調整バルブ23によって調節されるようになっている。
【0035】
同様に、薬液下バルブ22が閉じられた状態でリンス液下バルブ24が開かれると、第2の処理液供給配管19を介して、第1の処理液供給配管18から下面ノズル17にリンス液が供給される。下面ノズル17に供給されたリンス液は、その吐出口17aから上方に吐出される。これにより、スピンチャック3に保持されている基板Wの下面中央部に水が供給される。下面ノズル17から吐出される水の流量は、リンス液下流量調整バルブ25によって調節されるようになっている。
【0036】
処理カップ8は、スピンチャック3に保持されている基板Wよりも外方(回転軸線A1から離れる方向)に配置されている。処理カップ8は、スピンチャック3を取り囲む筒状部材37と、スピンチャック3と筒状部材37との間に配置された複数のカップ38〜40(第1〜第3のカップ38〜40)と、基板Wの周囲に飛散した処理液(薬液、リンス液または有機溶剤)を受け止める複数のガード41〜44(第1〜第4のガード41〜44)と、複数のガード41〜44を個別に昇降させる昇降ユニット45とを含む。処理カップ8は、スピンチャック3に保持されている基板Wの外周よりも外側(回転軸線A1から離れる方向)に配置されている。
図1において、処理カップ8は、回転軸線A1の右側と左側とで異なる状態が示されている。
【0037】
各カップ38〜40は、円筒状であり、スピンチャック3と筒状部材37との間でスピンチャック3を取り囲んでいる。内側から2番目の第2のカップ39は、第1のカップ38よりも外側に配置されており、第3のカップ41は、第2のカップ39よりも外側に配置されている。第3のカップ41は、たとえば、第2のガード42と一体であり、第2のガード42と共に昇降する。各カップ38〜40は、上向きに開いた環状の溝を形成している。各カップ38〜40の溝には、回収配管(図示しない)または廃液配管(図示しない)が接続されている。各カップ38〜40の底部に導かれた処理液は、回収配管または廃液配管を通じて、それぞれ回収ユニット(図示しない)または廃液ユニット(図示しない)に送られる。これにより、基板Wから排出された処理液が回収または廃棄される。
【0038】
各ガード41〜44は、円筒状であり、スピンチャック3と筒状部材37との間でスピンチャック3を取り囲んでいる。各ガード41〜44は、スピンチャック3の周囲を取り囲む円筒状の案内部47と、案内部47の上端から中心側(基板Wの回転軸線A1に近づく方向)に斜め上方に延びる円筒状の傾斜部46とを含む。各傾斜部46の上端部は、ガード41〜44の内周部を構成しており、基板Wおよびスピンベース15よりも大きな直径を有している。4つの傾斜部46は、上下に重ねられており、4つの案内部47は、同軸的に配置されている。最も外側の第4のガード44の案内部47を除く3つの案内部47(ガード41〜43の案内部47)は、それぞれ、複数のカップ38〜40内に出入り可能である。すなわち、処理カップ8は、折り畳み可能であり、昇降ユニット45が4つのガード41〜44の少なくとも一つを昇降させることにより、処理カップ8の展開および折り畳みが行われる。なお、傾斜部46は、その断面形状が
図1に示すように滑らかな上に凸の円弧を描きつつ延びていてもよいし、またたとえば直線状であってもよい。
【0039】
基板Wへの処理液(薬液、リンス液または有機溶剤)の供給や基板Wの乾燥は、いずれかのガード41〜44が、基板Wの周端面に対向している状態で行われる。たとえば内側から3番目の第3のガード43を基板Wの周端面に対向させる場合には、第1のガード41および第2のガード42が下位置(
図1の左側に示す位置)に配置され、第3のガード43および第4のガード44が上位置(
図1の左側に示す位置)に配置される。また、最も内側の第1のガード41を基板Wの周端面に対向させる場合には、4つのガード41〜44の全てが上位置(
図1の右側に示す位置)に配置される。
【0040】
たとえば、後述する薬液工程(
図3のS3)や、リンス工程(
図3のS4)、IPA置換工程(
図3のS5)では、最も外側の第4のガード44を除く3つのガード41〜43のいずれかが、基板Wの周端面に対向している状態で行われる。したがって、基板Wに処理液が供給されているときに基板Wの周囲に飛散した処理液は、第1のガード41、第2のガード42、および第3のガード43のいずれかによって、いずれかのカップ38〜40に案内される。
【0041】
図2は、挟持部材16の側面図である。各挟持部材16は、スピンベース15の周縁部に配置された台座51と、台座51の上面に固定された円柱状の挟持部52とを含む。挟持部52の外周面には、水平方向に関し内方(回転軸線A1側)に向いてV字状に開き、基板の周端面を挟持する挟持溝55が形成されている。挟持溝55は、水平面に対し、基板Wの回転半径方向外方に向かうに従って上向きに傾斜する下側当接面(第1の当接面)53と、水平面に対し、基板Wの回転半径方向外方に向かうに従って下向きに傾斜する上側当接面(第2の当接面)54とによって区画されている。下側当接面53は水平面に対し角度θ1(
図8参照)傾斜しており、上側当接面54は水平面に対し角度θ2(
図8参照)傾斜している。挟持溝55に基板Wの周端縁が挟持された状態においては、基板Wの下面端縁が下側当接面53に当接すると共に、基板Wの上面端縁が上側当接面54に当接する。
【0042】
図3は、基板処理装置1によって実行されるエッチング処理の処理例を示す工程図である。
図4は、
図3の処理例に含まれる各工程における基板Wの回転速度の変化を示す図である。
図5は、薬液工程(S3)およびリンス工程(S4)における処理液の供給流量を示す図である。
図5(a)は、基板W上面への処理液の供給流量を示し、
図5(b)は、基板W下面への処理液の供給流量を示す。
図5(c)は、基板W上下面への処理液の合計供給流量を示す。
図6は、薬液工程(S3)における基板Wの様子を示す側面図である。
図7は、リンス工程(S4)における基板Wの様子を示す側面図である。
図8は、薬液工程(S3)およびリンス工程(S4)における挟持部材16の付近の状態を示す図である。
【0043】
以下、
図1、
図3および
図4を参照しつつ、エッチング処理の処理例について説明する。
図5〜
図8は適宜参照する。
エッチング処理に際しては、搬送ロボット(図示しない)が制御されて、処理室2(
図1参照)内に未処理の基板Wが搬入される(ステップS1)。基板Wは、その表面を上方に向けた状態でスピンチャック3に受け渡される。なお、この基板Wの搬入前は、その搬入の妨げにならないように、第1〜第4ガード41〜44が下位置(最も下方位置)に下げられ、第1〜第4ガード41〜44の上端がいずれも、スピンチャック3による基板Wの保持位置よりも下方に配置されている。基板Wの一例として表面(デバイスが形成されるべき面)に酸化膜が形成されたシリコンウエハ(ベアシリコン)を挙げることができる。基板Wは大型基板(たとえば、外径300(mm)の円形基板)であってもよい。
【0044】
スピンチャック3に基板Wが保持されると、制御装置9はスピンモータ13を制御して、基板Wを回転開始させ、基板Wを回転させる(ステップS2)。基板Wの回転速度は予め定める液処理速度(たとえば
図4に示すように800rpm)まで上昇させられ、その液処理速度に維持される。
また、制御装置9は、ガード昇降ユニット45を制御して、第1および第2のガード41,42を下位置(最も下方の位置)のまま、第3および第4のガード43,44を上位置(最も上方の位置)まで上昇させて、第3のガード43を基板Wの周端面に対向させる。
【0045】
基板Wの回転速度が液処理速度に達すると、次いで、制御装置9は、薬液工程(ステップS3)の実行を開始する。具体的には、制御装置9は、薬液バルブ28を開くと共に、薬液下バルブ22を開く。これにより、薬液ノズル26から基板Wの上面中央部に向けて薬液が吐出されると共に、下面ノズル17の吐出口17aから基板Wの下面中央部に向けて薬液が上向きに吐出される。
【0046】
このときの薬液ノズル26からの薬液の供給流量(第2の流量)は、薬液流量調整バルブ29の調整により、
図5(a)に示すようにたとえば2.5(リットル/分)に設定されており、また、下面ノズル17からの薬液の供給流量(第1の流量)は、薬液下流量調整バルブ23の調整により、
図5(b)に示すようにたとえば1.0(リットル/分)に設定されている。この場合において、基板Wに対する薬液の合計供給流量は
図5(c)に示すように3.5(リットル/分)であり、下面ノズル17からの薬液の供給流量に対する、薬液ノズル26からの薬液の供給流量の流量比は2.5である。
【0047】
基板Wの上面中央部に供給された薬液は、基板Wの回転による遠心力を受けて、基板Wの上面を基板Wの周縁部に向けて流れる。これにより、
図6に示すように、基板Wの上面に、基板Wの上面の全域を覆う薬液の液膜61が保持される。また、基板Wの下面中央部に供給された薬液は、基板Wの回転による遠心力を受けて、基板Wの下面を伝って基板Wの周縁部に向けて流れる。これにより、
図6に示すように、基板Wの下面に、基板Wの下面の全域を覆う薬液の液膜62が保持される。薬液の液膜61,62により、基板Wの上面全域および下面全域に薬液が供給され、これにより、基板Wの上下面の全域に薬液処理が施される。希フッ酸、濃フッ酸、ふっ硝酸、フッ化アンモニウム等が薬液として用いられる場合、薬液処理に伴い基板Wの上面は疎水性を示すようになる。この処理例では、基板Wの上面が疎水性を示していても、基板Wの上面に、当該上面の全域を覆う薬液の液膜61を保持できる。
【0048】
図8に示すように、基板Wの上面を周縁部に向けて流れる薬液は、スピンベース15と一体的に回転している挟持部材16に基板Wの周縁部で当り、基板Wの側方に向けて飛散する。同様に、基板Wの下面を伝って周縁部に向けて流れる薬液も、スピンベース15と一体的に回転している挟持部材16に基板Wの周縁部で当り、その後、基板Wの側方に向けて飛散する。このように、基板Wの周縁部から排出される薬液は、挟持部材16への当接することにより、その飛散方向が変更される。
【0049】
基板Wの下面から挟持部材16に当って飛散する薬液の飛散方向は、挟持部材16の下側当接面53の延長面に概ね沿うようになる。すなわち、基板Wの下面を移動して基板Wの下面周縁部から飛散する薬液(以下、「基板Wの下面周縁部から飛散する薬液」という。)の飛散方向D
Dは、径方向外方に向かうに従って水平面に対して角度θ1上向きに傾斜している。一方、基板Wの上面から挟持部材16に当って飛散する薬液の飛散方向は、挟持部材16の上側当接面54の延長面に概ね沿うようになる。すなわち、基板Wの上面を移動して基板Wの上面周縁部から飛散する薬液(以下、「基板Wの上面周縁部から飛散する薬液」という。)の飛散方向D
Uは、径方向外方に向かうに従って水平面に対して角度θ2下向きに傾斜している。
【0050】
薬液工程時(S3)には、基板Wの周縁部において、基板Wの下面周縁部から飛散する薬液の流れと、基板Wの上面周縁部から飛散する薬液の流れとが上下方向に交差している。そのため、基板Wの下面周縁部から飛散する薬液と、基板Wの上面周縁部から飛散する薬液とが基板Wの周縁部において干渉する。そして、基板Wの周縁部において、基板Wの上面周縁部から飛散する薬液の飛散方向D
Dと基板Wの上面周縁部から飛散する薬液の飛散方向D
Uとを合成した、薬液の全体の飛散方向D
1に向けて薬液が飛散する。
【0051】
仮に、上下面供給流量比(上面:下面)を1:1にした場合、基板Wの上面周縁部から飛散する薬液の流量が下面周縁部からの薬液流量と比較して多くないので、
図9(a)に示すように、斜め上方に向かう基板Wの下面周縁部からの薬液を十分に抑制できず、その結果、薬液の全体の飛散方向D
1は、径方向外方に向かうに従って水平面に対して上向きに大きく傾斜している。
【0052】
これに対し、
図3の処理例では、上下面供給流量比(上面:下面)を2.5:1にしているので、基板Wの上面周縁部から飛散する薬液の流量が下面周縁部からの薬液流量と比較して十分に多い。そのため、
図9(b)に示すように、基板Wの上面周縁部から飛散する薬液によって、基板Wの下面周縁部から飛散する薬液の飛散方向が下向きに抑え込まれる結果、薬液の全体の飛散方向D
1は、水平面に対して略水平方向に沿うか、あるいは水平方向に近づくようになる。
【0053】
したがって、基板Wの周縁部から飛散する薬液の大部分は、第3のガード43の内壁に受け止められる。これにより、薬液工程(S3)において処理カップ8外への薬液の流出を抑制または防止できる。第1のガード43の案内部47の内壁を伝って流下した薬液は、第3のカップ40の底部に集められ、回収配管(図示しない)を通じて回収ユニット(図示しない)へと導かれる。
【0054】
薬液の吐出開始から、予め定める薬液処理時間が経過すると、制御装置9は、薬液バルブ28および薬液下バルブ22を閉じて、薬液ノズル26および下面ノズル17からの薬液の吐出を停止する。
また、制御装置9は、ガード昇降ユニット45を制御して、第1および第2のガード41,42を上位置(最も下方の位置)まで移動させ、第1のガード41を基板Wの周端面に対向させる。この状態で第1〜第4のガード41〜44の全てが上位置に配置される。
【0055】
第1および第2のガード41,42が上位置に配置されると、次いで、制御装置9はリンス工程(ステップS4)の実行を開始する。具体的には、制御装置9は、薬液工程(S3)に引き続いて、基板Wの回転速度を前記の液処理速度に維持しながら、リンス液バルブ32を開くと共に、リンス液下バルブ24を開く。これにより、リンス液ノズル30から基板Wの上面中央部に向けてリンス液が吐出されると共に、下面ノズル17の吐出口17aから基板Wの下面中央部に向けてリンス液が上向きに吐出される。
【0056】
このときのリンス液ノズル30からのリンス液の供給流量(第2の流量)は、リンス液流量調整バルブ33の調整により、
図5(a)に示すようにたとえばたとえば2.5(リットル/分)に設定されており、また、下面ノズル17からのリンス液の供給流量(第1の流量)は、リンス液下流量調整バルブ25の調整により、
図5(b)に示すようにたとえばたとえば1.0(リットル/分)に設定されている。この場合において、基板Wに対するリンス液の合計供給流量は
図5(c)に示すように3.5(リットル/分)であり、下面ノズル17からのリンス液の供給流量に対する、リンス液ノズル32からのリンス液の供給流量の流量比は2.5である。
【0057】
基板Wの上面中央部に供給されたリンス液は、基板Wの回転による遠心力を受けて、基板Wの上面を基板Wの周縁部に向けて流れる。これにより、基板Wの上面に保持されている薬液の液膜61が、
図7に示すようにリンス液の液膜71に置換される。リンス液の液膜71は、基板Wの下面の全域を覆う。また、基板Wの下面中央部に供給されたリンス液は、基板Wの回転による遠心力を受けて、基板Wの下面を伝って基板Wの周縁部に向けて流れる。これにより、基板Wの下面に保持されている薬液の液膜62が、
図7に示すようにリンス液の液膜72に置換される。リンス液の液膜72は、基板Wの下面の全域を覆う。リンス液の液膜71,72により、基板Wの上面および下面に付着していた薬液が洗い流され、基板Wの上下面にリンス処理が施される。希フッ酸、濃フッ酸、ふっ硝酸、フッ化アンモニウム等が薬液として用いられる場合、薬液処理後の基板Wの上面は疎水性を示すようになるのであるが、この処理例では、基板Wの上面が疎水性を示していても、基板Wの上面に、当該上面の全域を覆うリンス液の液膜71を保持できる。このことにより、リンス液への置換および基板Wの洗浄がむらなく行われると共に、基板Wの上面の全域を液膜71により、飛散した液等から保護することができる。
【0058】
図8に示すように、基板Wの上面を周縁部に向けて流れるリンス液は、スピンベース15と一体的に回転している挟持部材16に基板Wの周縁部で当り、基板Wの側方に向けて飛散する。同様に、基板Wの下面を伝って周縁部に向けて流れるリンス液も、スピンベース15と一体的に回転している挟持部材16に基板Wの周縁部で当り、その後、基板Wの側方に向けて飛散する。このように、基板Wの周縁部から排出されるリンス液は、挟持部材16に当接することにより、その飛散方向が変更される。
【0059】
基板Wの下面から挟持部材16に当って飛散するリンス液の飛散方向は、挟持部材16の下側当接面53の延長面に概ね沿うようになる。すなわち、基板Wの下面を移動して基板Wの下面周縁部から飛散するリンス液(以下、「基板Wの下面周縁部から飛散するリンス液」という。)の飛散方向D
Dは、径方向外方に向かうに従って水平面に対して角度θ1上向きに傾斜している。一方、基板Wの上面から挟持部材16に当って飛散するリンス液の飛散方向は、挟持部材16の上側当接面54の延長面に概ね沿うようになる。すなわち、基板Wの上面を移動して基板Wの上面周縁部から飛散するリンス液(以下、「基板Wの上面周縁部から飛散するリンス液」という。)の飛散方向D
Uは、径方向外方に向かうに従って水平面に対して角度θ2下向きに傾斜している。
【0060】
リンス工程(S4)時には、基板Wの周縁部において、基板Wの下面周縁部から飛散するリンス液の流れと、基板Wの上面周縁部から飛散するリンス液の流れとが上下方向に交差している。そのため、基板Wの下面周縁部から飛散するリンス液と、基板Wの上面周縁部から飛散するリンス液とが基板Wの周縁部において干渉する。そして、基板Wの周縁部において、基板Wの上面周縁部から飛散するリンス液の飛散方向D
Dと基板Wの上面周縁部から飛散するリンス液の飛散方向D
Uとを合成した、リンス液の全体の飛散方向D
1に向けてリンス液が飛散する。
【0061】
仮に、上下面供給流量比(上面:下面)を1:1にした場合、基板Wの上面周縁部から飛散するリンス液の流量が下面周縁部からのリンス液流量と比較して多くないので、
図9(a)に示すように、斜め上方に向かう基板Wの下面周縁部からのリンス液を十分に抑制できず、その結果、リンス液の全体の飛散方向D
1は、径方向外方に向かうに従って水平面に対して上向きに大きく傾斜している。
【0062】
これに対し、
図3の処理例では、上下面供給流量比(上面:下面)を2.5:1にしているので、基板Wの上面周縁部から飛散するリンス液の流量が下面周縁部からのリンス液流量と比較して十分に多い。そのため、
図9(b)に示すように、基板Wの上面周縁部から飛散するリンス液によって、基板Wの下面周縁部から飛散するリンス液の飛散方向が下向きに抑え込まれる結果、リンス液の全体の飛散方向D
1は、水平面に対して略水平方向に沿うか、あるいは水平方向に近づくようになる。
【0063】
したがって、基板Wの周縁部から飛散するリンス液の大部分は、第1のガード41の内壁に受け止められる。これにより、リンス工程(S4)において処理カップ8外へのリンス液の流出を抑制または防止できる。第1のガード41の内壁を伝って流下したリンス液は、第1のカップ38の底部に集められ、排液配管(図示しない)を通じて廃液ユニット(図示しない)へと導かれる。
【0064】
図4および
図5に示すように、リンス工程(S4)は、基板Wを前記の液処理速度(リンス処理速度)で回転させる高速リンス工程(ステップS41)と、基板Wの回転速度を、前記の液処理速度(たとえば800rpm)からパドル速度(0〜100rpmの範囲内で、たとえば
図4に示すように10rpm)まで連続的に落とす減速工程(ステップS42)と、基板Wの上面の全域にリンス液の液膜をパドル状に保持するパドル工程(ステップS43)とを含む。
【0065】
リンス液の吐出開始から予め定める高速リンス期間(たとえば30秒間)が経過すると、制御装置9は、減速工程(S42)の実行を開始する。具体的には、制御装置9は、リンス液ノズル30および下面ノズル17からのリンス液の供給流量をそれぞれ2.5(リットル/分)および1.5(リットル/分)に維持しながら、スピンモータ13を制御して液処理速度(たとえば800rpm)で回転している基板Wを約100rpmまで急減速させる。
【0066】
減速工程(S42)では、液処理速度からパドル速度まで6段階で段階的に減速させている。
図4に示すように、液処理速度(たとえば800rpm程度)から第1段階(たとえば約300rpm程度)、第2段階(たとえば約100rpm程度)、第3段階(たとえば約50rpm程度)、第4段階(たとえば約30rpm程度)および第5段階(たとえば約20rpm程度)を順次に経て、約15秒間でパドル速度(第6段階。たとえば約10rpm)に減速させる。
【0067】
基板Wの回転速度がそのパドル速度(10rpm)まで落とされると、制御装置9は、スピンモータ13を制御して、基板Wの回転速度をそのパドル速度に維持する。これにより、基板Wの上面の全域にリンス液の液膜がパドル状に保持されるパドル工程(S43)が実行される。
基板Wの回転速度がパドル速度(10rpm)まで落とされてから、予め定めるパドルリンス期間(たとえば6秒間)が経過すると、制御装置9は、リンス液バルブ32およびリンス液下バルブ24を閉じて、リンス液ノズル30および下面ノズル17からのリンス液の吐出を停止する。
【0068】
次いで、制御装置9はIPA置換工程(ステップS5)の実行を開始する。具体的には、制御装置9は、基板Wの回転速度をパドル速度に維持しつつ、有機溶剤バルブ36を開いて、有機溶剤ノズル34から基板Wの上面中心部に向けて液体のIPAを吐出する。このときの有機溶剤ノズル34からのIPAの供給流量は、たとえば0.1(リットル/分)に設定されている。基板Wの上面にIPAが供給され、これにより基板Wの上面の液膜に含まれるリンス液がIPAに順次置換されていく。これにより、基板Wの上面に、基板Wの上面全域を覆うIPAの液膜がパドル状に保持される。
【0069】
IPAの吐出開始から予め定めるIPAパドル時間(たとえば約8秒間)が経過すると、制御装置9は、IPA吐出を継続しながら、スピンモータ13を制御して基板Wをパドル速度から高回転速度(たとえば約1000rpm)までたとえば4段階(10rpm→50rpm→100rpm→500rpm→1000rpm)で加速させる。基板Wが高回転速度に到達した後、制御装置9は、IPAの吐出開始から所定時間が経過したことを条件として、有機溶剤バルブ36を閉じて有機溶剤ノズル34からのIPAの吐出を停止する。
【0070】
IPAの吐出が停止されると、制御装置9は、乾燥工程(ステップS6)を実行する。すなわち、制御装置9は、基板Wの回転速度をたとえば1000rpmに維持する。これにより、基板Wに付着しているIPAが振り切られて基板Wが乾燥される。
乾燥工程(S6)が予め定める乾燥時間に亘って行われると、制御装置9は、スピンモータ13を駆動して、スピンチャック3の回転(基板Wの回転)を停止させる(ステップS7)。これにより、1枚の基板Wに対する洗浄処理が終了し、搬送ロボットによって、処理済みの基板Wが処理室2から搬出される(ステップS8)。
【0071】
以上によりこの実施形態によれば、基板Wの下面から挟持部材16に当って飛散する処理液(薬液またはリンス液)の飛散方向は、挟持部材16の下側当接面53の延長面に概ね沿うようになる。すなわち、基板Wの下面周縁部から飛散する処理液の飛散方向は、径方向外方に向かうに従って水平面に対して上向きに傾斜している。
一方、基板Wの上面から挟持部材16に当って飛散する処理液の飛散方向は、挟持部材16の第2の上側当接面54の延長面に概ね沿うようになる。すなわち、基板Wの上面周縁部から飛散する処理液の飛散方向は、径方向外方に向かうに従って水平面に対して下向きに傾斜している。そのため、基板Wの下面周縁部から飛散する処理液と、基板Wの上面周縁部から飛散する処理液とが基板Wの周縁部において干渉する。
【0072】
基板Wの下面への処理液の供給流量に対する基板Wの上面への処理液の供給流量の流量比が2.5であるので、基板Wの上面周縁部から飛散する処理液によって、基板Wの下面周縁部から飛散する処理液の飛散方向が抑え込まれる。その結果、処理液の全体の飛散方向D
1を低く抑えることができる。
そのため、基板Wの周縁部から飛散する処理液を処理カップ8によって確実に捕獲でき、これにより、処理カップ8外への処理液の流出を抑制または防止できる。
【0073】
また、各ガード41〜44の傾斜部46が、案内部47の上端から中心側(基板Wの回転軸線A1に近づく方向)に斜め上方に延びるように設けられているので、基板Wの周縁部からの処理液の飛散方向が上向きになりすぎると、傾斜部46の内壁に衝突した処理液が、基板W側に向けて跳ね返り、基板の上面に処理液の液滴が降り注ぐおそれがある。
これに対し、本実施形態では、基板Wの周縁部から飛散する処理液の全体の飛散方向が低いので、処理カップ8との衝突によって処理液の液滴が基板W側に跳ね返ることを抑制でき、これにより、処理液の液滴が基板Wに付着することに起因する基板W汚染を抑制または防止できる。
【0074】
また、前述の処理例の薬液工程(S3)および高速リンス工程(S41)において、基板Wの下面への処理液(薬液またはリンス液)の供給流量が1.0(リットル/分)であり、しかも、液処理速度が800(rpm)であるので、基板Wの下面に、当該下面の全域を覆う処理液を保持することができる。また、基板Wの回転速度を
図4に破線で示すような高速(たとえば1200rpm)とする場合と比較して、処理カップ8外への処理液の流出および基板Wへの処理液の跳ね返りをより一層抑制することもできる。
【0075】
また、前述の処理例の薬液工程(S3)および高速リンス工程(S41)において、基板Wの下面への処理液の供給流量に対する基板Wの上面への供給流量の流量比が1である場合に、基板Wの上面に、当該上面の全域を覆う処理液の液膜61,71を保持するためには、基板Wの回転速度を
図4に破線で示すような高速(たとえば1200rpm)にし、かつ基板Wの上下面に対する処理液の供給流量を最低でもそれぞれ2.0(リットル/分)にする必要がある。この場合、上下面併せて必要な処理液の供給流量は、
図5(c)に破線で示すように上下面併せて4.0(リットル/分)である。
【0076】
これに対し、前述の処理例の薬液工程(S3)および高速リンス工程(S41)では、
図5(c)に実線で示すように、必要な処理液の供給流量がそれぞれ上下面併せて3.5(リットル/分)で済む。これにより、処理液の省液を図りつつ、基板Wの上下面の全域に処理液の液膜61,62,71,72を保持することができる。
したがって、薬液消費量およびリンス液消費量を低減しつつ、高品質な基板処理を実現できる基板処理装置1を提供できる。
【0077】
前述の処理例の薬液工程(S3)および高速リンス工程(S41)において、液処理速度を800(rpm)である場合を例に挙げて説明したが、液処理速度は、800(rpm)以上1200(rpm)以下の範囲内に設定することが好ましい。
また、前述の処理例の薬液工程(S3)および高速リンス工程(S41)において、基板Wの周縁部から飛散する処理液の全体の飛散方向D
1を低く抑えるためには、基板Wの下面への処理液の供給流量に対する、基板Wの上面への処理液の供給流量の流量比が、1.5以上であることが望ましい。但し、基板Wの下面への処理液の供給流量に対する、基板Wの上面への処理液の供給流量の流量比は、1.0を超えていれば1.5未満であってもよい。
【0078】
また、前述の処理例の薬液工程(S3)および高速リンス工程(S41)において、基板Wの下面に、当該下面の全域を覆う処理液の液膜62,72を保持すためには、基板Wの下面への処理液の供給流量はそれぞれ1.0(リットル/分)以上であることが望ましいが、1.0(リットル/分)未満であってもよい。
次に、第1の試験〜第7の試験について説明する。
図10は、第1の試験の試験結果を示す図である。
図11は、第2の試験の試験結果を示す図である。
図12は、第2の試験において、傾斜部46への試験紙の配置位置を説明するための平面図である。
図13は、第3の試験の試験結果を示す図である。
図14は、第4の試験の試験結果を示す図である。
図15は、第5の試験の試験結果を示す図である。
図16は、第6の試験の試験結果を示す図である。
図17は、第7の試験の試験結果を示す図である。第1〜第7の試験のうち第1〜第5の試験は、次に述べる実施例および比較例に係るエッチング処理を試料に施す。
【0079】
実施例:表面に酸化膜が形成されたシリコンウエハ(外径300(mm))を試料として採用し、薬液として希フッ酸を採用した。スピンチャック3に保持されて回転状態にあるこの試料に対し、基板処理装置1を用いて前述の
図3〜
図5に示すエッチング処理を実行した。すなわち、とくに言及する場合を除き、基板Wの下面への処理液(薬液またはリンス液)の供給流量を1.0(リットル/分。LPM)とすると共に、基板Wの上面への処理液の供給流量を2.5(リットル/分)としている。
【0080】
比較例:表面に酸化膜が形成されたシリコンウエハ(外径300(mm))を試料として採用し、薬液として希フッ酸を採用した。スピンチャック3に保持されて回転状態にあるこの試料に対し、基板処理装置1を用いてエッチング処理を実行した。比較例に係る処理は、基板Wの下面への処理液(薬液またはリンス液)の供給流量を2.0(リットル/分)とすると共に、基板Wの上面への処理液の供給流量を2.0(リットル/分)とした点で前記の処理例とは異なっており、その他の点は前記の処理例の場合と共通している。
<第1の試験>
第1の試験では、実施例および比較例において、エッチング処理後の基板Wの表面における26(nm)以上の大きさのパーティクル数を計測した。
【0081】
実施例では、薬液工程(S3)および高速リンス工程(S41)における基板Wの回転速度を、600(rpm)、800(rpm)、1000(rpm)および1200(rpm)の間で変化させた。
比較例では、薬液工程(S3)および高速リンス工程(S41)における基板Wの回転速度を1200(rpm)とした。
【0082】
第1の試験の試験結果を
図10に示す。
図10には、実施例および比較例における、基板Wの回転速度と、基板Wの表面のパーティクル数(Particle Adder)との関係を示す。
図10に示すように、薬液工程(S3)および高速リンス工程(S41)の基板Wの回転速度が800(rpm)、1000(rpm)および1200(rpm)である実施例では、エッチング処理後のパーティクル数が少なかった。
【0083】
これに対し、薬液工程(S3)および高速リンス工程(S41)における基板Wの回転速度が600(rpm)である実施例では、エッチング処理後のパーティクル数が多かった。また、比較例でも、エッチング処理後のパーティクル数が多かった。
図10から、実施例において、エッチング処理後のパーティクルの発生を抑制できることがわかる。また、基板Wの回転速度が800(rpm)未満では、実施例であっても、エッチング処理後のパーティクルの発生を十分に抑制できないことがわかる。これは、薬液工程(S3)および高速リンス工程(S41)における基板Wの回転速度が800(rpm)未満であると、薬液工程(S3)や高速リンス工程(S41)おいて基板Wの上面の液膜61,71に亀裂等が生じ、基板Wの上面(表面)が部分的に露出する結果、基板Wの上面の周辺で浮遊しているパーティクルが基板Wの上面に付着したものと推察できる。
<第2の試験>
第2の試験では、実施例および比較例において、薬液工程(S3)における基板Wの回転速度を、それぞれ、800(rpm)、1000(rpm)および1200(rpm)の間で変化させ、そのときに基板Wの周縁部から飛散する薬液(希フッ酸(DHF))の飛散方向を計測した。
【0084】
第2の試験の試験結果を
図11に示す。
図11には、実施例および比較例における、基板Wの回転速度(DHF Rotation speed)と、基板Wの周縁部から飛散する薬液の飛散方向が水平面となす角度(Angle)との関係を示す。
図11に示すように、基板Wの回転速度が、800(rpm)および1000(rpm)である実施例において、基板Wの周縁部から飛散する薬液の飛散方向は水平に近かった。また、基板Wの回転速度が1200(rpm)である実施例では、基板Wの周縁部から飛散する薬液の飛散方向は、斜め上方であるが水平面に対する角度は小さく抑えられていた。
【0085】
一方、比較例においては、基板Wの周縁部から飛散する薬液の飛散方向は、斜め上方であり、当該飛散方向の水平面に対する角度も大きかった。
図11から、実施例では、比較例と比較して、基板Wの周縁部から飛散する薬液の飛散方向を低く抑えることができることがわかる。とくに、基板Wの回転速度が800〜1000(rpm)である場合に、比較例と比較して、基板Wの周縁部から飛散する薬液の飛散方向を低く大幅に抑えることができることがわかる。
<第3の試験>
第3の試験では、実施例および比較例において、薬液工程(S3)時に処理カップ8外に流出する薬液(希フッ酸)の量を計測した。
【0086】
図12に示すように、第4のガード44の傾斜部46の外表面に、50(cm)×50(cm)のph試験紙81を配置した。エッチング処理後において、ph試験紙81に薬液が付着して変色した変色点の数を、処理カップ8外に飛散(流出)した薬液の数とした。
第3の試験では、基板Wの下面への薬液の供給流量を1.5(リットル/分)とし、かつ基板Wの上面への薬液の供給流量を2.5(リットル/分)とすると共に、薬液工程(S3)における基板Wの回転速度を、それぞれ、400(rpm)、600(rpm)、800(rpm)および1200(rpm)の間で変化させた。
【0087】
第3の試験の試験結果を
図13に示す。
図13には、実施例および比較例における、基板Wの回転速度(Rotation speed)と、処理カップ8外に飛散する薬液の数との関係を示す。
図13に示すように、基板Wの回転速度が、400(rpm)、600(rpm)および800(rpm)である場合には、実施例および比較例の別を問わず、処理カップ8外に流出する薬液は少量であった。
【0088】
一方、基板Wの回転速度が1200(rpm)である場合において、実施例では処理カップ8外に流出する薬液が比較的少量であったのに対し、比較例では、処理カップ8外に多量の薬液が流出していた。
図13から、実施例では、基板Wの回転速度の如何によらずに、処理カップ8外に流出する薬液の量を低減できることがわかる。とくに、基板Wの回転速度が高速である場合に、比較例と比較して、処理カップ8外への薬液の流出を大幅に抑制できることがわかる。
<第4の試験>
第4の試験では、実施例および比較例において、1枚の基板Wに対してエッチング処理を施した後(initial)、および30枚の基板Wに連続してエッチング処理を施した後(after 30run)の基板Wの表面におけるパーティクル数およびパーティクルの大きさを計測した。
【0089】
第4の試験では、実施例(OPT)および比較例(POR)において、薬液工程(S3)および高速リンス工程(S41)における基板Wの回転速度を、それぞれ、1000(rpm)および1200(rpm)とした。
第4の試験の試験結果を
図14に示す。
図14では、基板Wの表面のパーティクル数を、26(nm)以上、32(nm)以上および45(nm)以上に分けて示す。
【0090】
図14に示すように、実施例では、1枚の基板Wに対する処理後と、30枚の基板Wへの連続処理後との間で、基板Wの表面におけるパーティクル数およびパーティクルの大きさにとくに変化は見られなかった。
一方、比較例では、30枚の基板Wへの連続処理後においては、1枚の基板Wに対する処理後と比較して、基板Wの表面におけるパーティクル数は増加しており、とくに小さなパーティクルの数が増加していた。
【0091】
図14から、実施例においては、基板Wのエッチング処理の回数が増大しても、基板 Wの表面におけるパーティクルの発生し易さに変わりがないことがわかる。このことから、実施例において、処理カップ8外(処理室2内)に薬液(薬液(希フッ酸)のミスト)がほとんど浮遊していないものと推察される。
<第5の試験>
第5の試験では、実施例および比較例において、エッチング処理後のエッチング量とエッチング均一性とを計測した。
【0092】
実施例では、薬液工程(S3)および高速リンス工程(S41)における基板Wの回転速度を、600(rpm)、800(rpm)および1000(rpm)の間で変化させた。
比較例では、薬液工程(S3)および高速リンス工程(S41)における基板Wの回転速度を1200(rpm)とした。
【0093】
各条件において、それぞれ2回ずつ計測した(
図15に示すRun1およびRun2の双方)。
第5の試験の試験結果を
図15に示す。
図15には、実施例および比較例における、エッチング量(Etching amount(nm))と、17点でのエッチング均一性(17pt Uniformity(%))とを示す。
図15から、実施例において、比較例の場合と同様、エッチング量の増減はなく、または、エッチング均一性が悪化することもないことがわかる。
<第6の試験>
第6の試験では、表面に酸化膜が形成されたシリコンウエハ(外径300(mm))を試料として採用し、薬液として希フッ酸を採用した。スピンチャック3に保持されて回転状態にあるこの試料に対し、基板処理装置1を用いて前述のエッチング処理の薬液工程(S3)を実行した。そして、基板Wの上面および基板Wの下面への薬液の供給流量の組合せを、「2.5(リットル/分)および1.0(リットル/分)」、「2.25(リットル/分)および1.0(リットル/分)」、「2.5(リットル/分)および1.5(リットル/分)」、「2.25(リットル/分)および1.5(リットル/分)」ならびに「2.0(リットル/分)および2.0(リットル/分)」の間で変化させた。
【0094】
第6の試験の試験結果を
図16に示す。
図16には、基板Wの回転速度と、基板Wの上下面への供給流量比との関係を示す。また、
図16では、パーティクルがほとんどまたは少量しか発生しなかった処理条件に「★」印を、比較的多量のパーティクルが発生した処理条件に「☆」印を付している。
図16から、
図16においてハッチングを付している領域に含まれる処理条件でエッチング処理を実行すると、処理後の基板Wが高品質になることがわかる。
<第7の試験>
第7の試験では、シリコンウエハ(外径300(mm))を試料として採用し、スピンチャック3に保持されて回転状態にあるこの試料に対し、基板処理装置1を用いて基板Wの下面のみに薬液(希フッ酸)を供給すると共に、そのときの薬液の供給流量を、1.0(リットル/分)、1.5(リットル/分)および2.0(リットル/分)の間で変化させた。薬液として希フッ酸を採用した。また、薬液工程(S3)における基板Wの回転速度を、400(rpm)、500(rpm)、600(rpm)、800(rpm)および1200(rpm)の間で変化させた。
【0095】
第7の試験の試験結果を
図17に示す。
図17からは、基板Wの下面への薬液の流量が1.0(リットル/分)以上であり、かつ基板Wの回転速度が500(rpm)以上であれば、基板Wの下面に、当該下面の全域を覆う薬液の液膜72を形成できることがわかる。
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明は他の形態で実施することもできる。
【0096】
たとえば、前述の処理例の薬液工程(S3)において、基板Wの上面に薬液(希フッ酸)を供給すると共に、基板Wの下面に水(たとえばDIW)を供給するようにしてもよい。この場合であっても、基板Wの上面への薬液の供給流量は、基板Wの下面への水の供給流量よりも多く、より好ましくは、基板Wの下面への水の供給流量に対する、基板Wの上面への薬液の供給流量の流量比は1.5以上である。
【0097】
また、低表面張力を有する有機溶剤として、IPA以外に、たとえば、メタノール、エタノール、アセトン、およびHFE(ハイドロフルオロエーテル)等を採用できる。
また、前述のIPA置換工程(S5)のような有機溶剤置換工程は、省略することもできる。
また、本発明は、基板Wの表面からシリコン酸化膜を除去するエッチング処理に限らず、他のエッチング処理や洗浄処理等に広く適用できる。ただし、本発明の効果は、基板Wの表面が疎水性を示す場合にとくに顕著に発揮される。表面が疎水性を示す基板Wに対する処理としては、シリコン酸化膜を除去する処理以外に、レジストを除去する処理を例示できる。
【0098】
また、前述の処理例のように、高速リンス工程(S41)においても、基板Wの上下面を良好にカバリッジできるように、面基板Wの上面へのリンス液の供給流量を基板Wの下面への供給流量よりも多くすることが望ましいのであるが、高速リンス工程(S41)において、基板Wの上下面へのリンス液の供給流量が互いに同程度としてもよいし、基板Wの下面へのリンス液の供給流量を基板Wの上面への供給流量よりも多くしてもよい。
【0099】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。