特許第6363884号(P6363884)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6363884
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】圧着端子
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/18 20060101AFI20180712BHJP
【FI】
   H01R4/18 A
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-126411(P2014-126411)
(22)【出願日】2014年6月19日
(65)【公開番号】特開2016-4763(P2016-4763A)
(43)【公開日】2016年1月12日
【審査請求日】2016年11月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】とこしえ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】瀬下 裕也
(72)【発明者】
【氏名】石川 茂
【審査官】 田合 弘幸
(56)【参考文献】
【文献】 特表平11−515137(JP,A)
【文献】 特開2010−198789(JP,A)
【文献】 特開2011−081911(JP,A)
【文献】 特開2012−038493(JP,A)
【文献】 特開平05−152011(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹状のセレーションが形成されたバレルを備え、前記バレルが折り曲げられて電線の導体部分に圧着される圧着端子であって、
前記セレーションの外縁形状は、外側に向かって凸状の少なくとも3つの円弧が連なって構成されており、
全ての前記円弧は、仮想の円又は仮想の楕円と接触していることを特徴とする圧着端子。
【請求項2】
請求項1に記載の圧着端子であって、
前記外縁形状は、隣り合う前記円弧同士の連結部分に形成されたアール形状を含むことを特徴とする圧着端子。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の圧着端子であって、
前記外縁形状を構成する前記円弧の数は、3、4又は6であることを特徴とする圧着端子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧着端子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
円筒凹部からなるセレーションを内面に備えた導体圧着部を電線の導体の端末に圧着させて、当該導体圧着部を電線の導体に接続させる圧着端子が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−38453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
導体圧着部と電線の導体との接続は、セレーションを構成する凹部の縁部分が電線の導体表面に形成された酸化被膜を破壊することにより得られる。しかしながら、上記の圧着端子では、セレーションを構成する凹部の外縁形状が円形であるため、セレーションの占有面積に対して当該セレーションの縁部分が短い。このため、セレーションの加工に要するエネルギーが大きいという問題がある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、セレーションの加工に要するエネルギーの増大を抑えつつ、電線の導体部分との接続信頼性を向上することができる圧着端子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]本発明に係る圧着端子は、凹状のセレーションが形成されたバレルを備え、前記バレルが折り曲げられて電線の導体部分に圧着される圧着端子であって、前記セレーションの外縁形状は、外側に向かって凸状の少なくとも3つの円弧が連なって構成されており、全ての前記円弧は、仮想の円又は仮想の楕円と接触していることを特徴とする。
【0007】
[2]上記発明において、前記外縁形状は、隣り合う前記円弧同士の連結部分に形成されたアール形状を含んでもよい。
【0009】
]上記発明において、前記外縁形状を構成する前記円弧の数は、3、4又は6であってもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、外側に向かって凸状の複数の円弧を連ねてセレーションの外縁形状を構成することにより、セレーションの占有面積に対して当該セレーションの外縁を長くすることができる。これにより、セレーションの加工に要するエネルギーの増大を抑えつつ、電線の導体部分との接続信頼性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の実施形態における圧着端子を示す斜視図である。
図2図2は、本発明の実施形態における圧着端子及び電線を示す側面図である。
図3図3は、図2のIII-III線に沿った断面図である。
図4図4は、本発明の実施形態における圧着端子のバレルを示す展開図である。
図5図5は、図4のV-V線に沿った断面図である。
図6図6は、本発明の実施形態における圧着端子のバレルに形成されたセレーションの島状部を示す平面図である。
図7図7(A)〜図7(C)は、本発明の実施形態におけるセレーションの第1〜第3変形例をそれぞれ示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
図1は本実施形態における圧着端子1を示す斜視図であり、図2は本実施形態における圧着端子1及び電線2を示す側面図であり、図3図2のIII-III線に沿った断面図であり、図4は本実施形態における圧着端子1の第2のバレル13を示す展開図であり、図5図4のV-V線に沿った断面図であり、図6はセレーションの島状部を示す平面図である。
【0014】
本実施形態における圧着端子1は、電線2(図2参照)の端部に取り付けられ、接続相手方端子(不図示)と嵌合することにより当該接続相手方端子と当該電線2の導体部分21との導通を図るための端子である。この圧着端子1は、図1及び図2に示すように、接続部11と、第1のバレル12と、第2のバレル13と、を備えており、金属材料(銅、銅合金、鉄等)からなる板材に対してプレス加工及びベンディング加工を施すことにより製造される。なお、圧着端子1を製造するために用いる板材の表面に錫メッキ等が施されていてもよい。
【0015】
圧着端子1に取り付けられる電線2は、図2に示すように、導体部分21と、当該導体部分21を被覆する被覆部分22と、から構成される。導体部分21は、アルミニウムやアルミニウム合金等の導電性材料から構成されており、複数(例えば3本や7本)の細線211が撚って形成されている。なお、電線2が、1本の素線から構成される導体部分21を有する単線であってもよい。被覆部分22を構成する材料としては、合成樹脂等の絶縁性材料を例示することができる。
【0016】
圧着端子1の接続部11は、圧着端子1の一方端部(図1中の−Y側端部)に設けられており、矩形状の断面外形を有している。この接続部11は、当該接続部11の形状に対応する形状を有する不図示の接続相手方端子(プラグ)と嵌合して電気的に接続されるレセプタクルの機能を有している。
【0017】
圧着端子1の底面には、図2に示すように、係止穴111が形成された係止片112が設けられており、例えば、圧着端子1が挿入されるコネクタハウジング(不図示)に形成された係止凹部や係止凸部と係合して、当該コネクタハウジング内での圧着端子1の位置が規定され、固定される。
【0018】
なお、接続部11の構造、形状又は接続相手方端子との接続方法は特に限定されない。例えば、圧着端子1の接続部11をプラグとし、接続相手方端子をレセプタクルとしてもよい。
【0019】
圧着端子1の第1のバレル12は、圧着端子1に電線2が取り付けられた際に、当該電線2の被覆部分22に接触して固定される部分であり、図1に示すように、圧着端子1の他方端部(図1中の+Y側端部)に設けられている。この第1のバレル12は、底部121と、側部122と、から構成されている。側部122は底部121の両端からそれぞれ立設されており、これにより第1のバレル12は、取り付けられる電線2の延在方向(図1中のY軸方向)からみて略U字形状を有している。側部122は、底部121に載置された電線2の被覆部分22に向かって折り曲げ(加締め)られることにより、当該被覆部分22を圧着して固定する。このため、この第1のバレル12は、電線2の被覆部分22を圧着して固定するために十分な長さ(高さ)H1(図2参照)を有している。
【0020】
第2のバレル13は、圧着端子1に電線2が取り付けられた際に、当該電線2の導体部分21を固定する部分であり、図1及び図3に示すように、接続部11と第1のバレル12との間に形成されている。本実施形態における第2のバレル13が、本発明のバレルの一例に相当する。
【0021】
第2のバレル13も、図3に示すように、底部131と、側部132と、から構成されている。側部132は底部131の両端からそれぞれ立設されており、取り付けられる電線2の延在方向(図1中のY軸方向)からみて略U字形状を有している。側部132は、底部131に載置された電線2の導体部分21に向かって折り曲げ(加締め)られることにより、当該導体部分21を圧着して固定する。このため第2のバレル13は、電線2の導体部分21を圧着して固定するために十分な長さ(高さ)H2を有している(図2参照)。また、第2のバレル13の幅Dは、図2に示すように、圧着端子1に電線2の導体部分21の長さと略等しくなっている。
【0022】
圧着端子1に電線2を取り付ける際は、まず、電線2の被覆部分22を第1のバレル12の底部121に載置すると共に、当該電線2の導体部分21を第2のバレル13の底部131に載置する(図2中の矢印参照)。次いで、第1のバレル12が有する2つの側部122の先端部123が、被覆部分22における径方向の略中央部分を図2中の−Z方向に向かって押圧するように当該側部122をそれぞれ折り曲げる。
【0023】
また、同様に、第2のバレル13が有する2つの側部132の先端部133が、導体部分21における径方向の略中央部分を図2中の−Z方向に向かって押圧するように、当該側部132をそれぞれ折り曲げる。これにより、電線2は圧着端子1に固定されると共に、当該電線2の導体部分21は第2のバレル13の内面(圧着面)130に圧着される。
【0024】
本実施形態における第2のバレル13の内面130には、図1及び図3に示すように、セレーション14が設けられている。このセレーション14は、図4に示すように、第2のバレル13における側部132の内面130の全面に形成されていると共に、底部131の内面130の略中央部に形成されている。なお、第2のバレル13の内面130においてセレーション14が形成される領域は、圧着端子1に電線2を取り付けた際に、当該電線2の導体部分21と接触する部分を含んでいればよく、特に上記に限定されない。例えば、第2のバレル13における底部131の内面130の全面のみにセレーション14が形成されていてもよい。
【0025】
本実施形態におけるセレーション14は、図4及び図5に示すように、線状部141と、島状部142と、から構成されている。
【0026】
セレーション14の線状部141は、図4に示すように、図4中のY方向に対して斜め方向に延在するように形成されている。本実施形態では、合計10個の線状部141が略等間隔に並んで平行に形成されているが、第2のバレル13の内面130に形成される線状部141の数は、特に限定されない。また、線状部141が形成される向きも特に限定されず、例えば、線状部141が図4中のX軸方向に沿って延在するように形成してもよい。なお、線状部141を省略してセレーション14を構成してもよいが、第2のバレル13と電線2の導体部分21との接続安定性向上の観点から、線状部141を設けることが好ましい。
【0027】
この線状部141は、図5に示すように、第2のバレル13の内面130に凹部として形成されている。なお、島状部142も同様に、第2のバレル13の内面130に凹部として形成されている。こうした凹部は、例えば、圧着端子1を製造する際に用いる板材(金属材料)に対してプレス加工を施すことにより形成することができる。本実施形態では、線状部141を形成する凹部の深さと、島状部142を形成する凹部の深さと、は略等しくなっているが、特にこれに限定されず、それらの凹部の深さがそれぞれ異なっていてもよい。
【0028】
島状部142は、図4に示すように、線状部141同士の間に形成されており、当該線状部141の延在方向に沿って略等間隔で並んで配置されている。なお、島状部142の配置は特にこれに限定されない。
【0029】
例えば、1つの線状部141の一方側に形成された島状部142同士の間隔と、当該線状部141の他方側に形成された島状部142同士の間隔と、が互いに異なっていてもよい。また、本実施形態では、隣り合う線状部141同士の間には1列に並んで配置された島状部142が形成されているが、隣り合う線状部141同士の間に複数列に並んで配置された島状部142が形成されていてもよい。また、1列に並んで配置された島状部142同士の間に複数の線状部141が形成されていてもよい。
【0030】
島状部142の外縁形状(内面130の平面視における縁部分144(図5参照)の形状)は、図6に示すように、4つの円弧A1〜A4が連なって構成されている。円弧A1〜A4は、島状部142の中心Cに対して外側に向かう凸状にそれぞれ形成されている。
【0031】
具体的には、第1の円弧A1は、図6中の+Y方向に向かって突出する凸状に形成されており、当該第1の円弧A1の左端は第2の円弧A2の右端に連結されている。第2の円弧A2は、図6中の−X方向に向かって突出する凸状に形成されており、当該第2の円弧A2の左端は第3の円弧A3の右端に連結されている。第3の円弧A3は、図6中の−Y方向に向かって突出する凸状に形成されており、当該第3の円弧A3の左端は第4の円弧A4の右端に連結されている。そして、第4の円弧A4は、図6中の+X方向に向かって突出する凸状に形成されており、当該第4の円弧A4の左端は第1の円弧A1の右端に連結されている。
【0032】
本実施形態では、第1〜第4の円弧A1〜A4はそれぞれ半径r/2の半真円形状となっている。このため、島状部142の外縁形状を内包する内包円15は真円となる。因みに、図6において、X軸及びY軸に沿って描かれた破線Lは、島状部142の外縁形状の把握を容易とするための仮想の方眼(幅r/2の正方形状の升目)である。
【0033】
なお、本実施形態における「内包円」とは、島状部142を構成する全ての円弧A1〜A4に点接触する最小の仮想円である。例えば、島状部142を構成する円弧の半径が異なるような場合には、この内包円は楕円となる。本実施形態では、上記のように、島状部142を構成する全ての円弧A1〜A4は半真円形状であるため、内包円15は真円となっている。本実施形態における内包円15が、本発明の「外縁形状を内包する最小の円」の一例に相当する。
【0034】
また、本実施形態では、図6中の右側の引き出し拡大図のように、島状部142の外縁形状を構成する第1の円弧A1と第4の円弧A4との連結部分143aには、島状部142の中心Cに向かって凸状となるアール形状Rが形成されている。このアール形状Rにより、第1の円弧A1の仮想の延長線A1bと、第4の円弧A4の仮想の延長線A4bと、の交点Tよりも僅かに中心C側から外側に離れて連結部分143aは位置している。
【0035】
本実施形態では、第1の円弧A1と第2の円弧A2との連結部分143b、第2の円弧A2と第3の円弧A3との連結部分143c、及び、第3の円弧A3と第4の円弧A4との連結部分143dについても、連結部分143aと同様にアール形状Rが形成されている。これにより、島状部142の外縁形状における縁部分144の全長に対して、当該島状部142に形成されたアール形状Rが占める縁部分144の長さの割合は、5%以下となっている。なお、連結部分143a〜143dを、円弧A1〜A4同士が交わる頂点(交点T)としてもよいが、当該連結部分143a〜143dをアール形状Rとすることによりセレーション14の加工が容易となる。
【0036】
本実施形態では、図4に示すように、第2のバレル13の内面130に形成された全ての島状部142は同一の向きに配置されている。即ち、それぞれの島状部142の外縁形状を構成する4つの円弧A1〜A4のうち、第2の円弧A2及び第4の円弧A4はY軸を挟んで互いに対向するようにX軸方向に沿って配置されている。一方、それぞれの島状部142の外縁形状を構成する4つの円弧A1〜A4のうち、第1の円弧A1及び第3の円弧A3は、図6中のX軸を挟んで互いに対向するようにY軸方向に沿って配置されている。
【0037】
なお、第2のバレル13の内面130に形成される島状部142の配置(向き)は、特に上記に限定されない。例えば、それぞれの島状部142が、図4に示した配置(向き)に対して所定角度(例えば45°)回転した配置(向き)としてもよい。また、第2のバレル13の内面130に形成される個々の島状部142が、それぞれ異なる配置(向き)であってもよい。
【0038】
また、島状部142の形状も特に上記に限定されない。図7(A)〜図7(C)は、本実施形態におけるセレーションの島状部の変形例を示す平面図である。
【0039】
例えば、図7(A)に示す島状部142Bのように、当該島状部142Bを構成する4つの円弧A1〜A4がそれぞれ楕円の一部に相当する円弧であってもよい。また、特に図示しないが、真円の一部に相当する円弧と、楕円の一部に相当する円弧とが混在してもよい。
【0040】
また、この図7(A)に示す例の場合には、島状部142Bを内包する内包円15が楕円状となる。なお、このように、内包円15が楕円状となる場合には、第2のバレル13と電線2の導体部分21との接続安定性向上の観点から、当該楕円の長軸方向が図4におけるX軸方向に沿うように当該島状部142Bが配置されることが好ましい。
【0041】
また、島状部を構成する円弧の数も特に限定されない。例えば、図7(B)に示す島状部142Cのように、合計3つの円弧A1〜A3から島状部142Cが構成されてもよく、図7(C)に示す島状部142Dのように、合計6つの円弧A1〜A6から島状部142Dが構成されてもよい。
【0042】
また、上述の例において、島状部は線対称の外縁形状であるが、特にこれに限定されず、非線対称の外縁形状であってもよい。
【0043】
次に、本実施形態における圧着端子1の作用について説明する。
【0044】
導体部分にアルミニウム又はアルミニウム合金を用いた電線を圧着端子に接続する場合、当該導体部分の表面には、通常、電気的に抵抗値の高い酸化被膜が生成されている。このため、圧着接続に際しては、当該酸化被膜を削りながら圧着端子と電線の導体部分との間の接触導通を図る必要がある。
【0045】
凹状のセレーションが形成されたバレルを備えた圧着端子では、バレルが電線の導体部分に圧着された際、導体部分の表面の酸化被膜がセレーションの縁部分によって削られることによって圧着端子と電線の導体部分との電気的接続が図られる。このため、圧着端子と電線の導体部分との間の接続信頼性を向上するためには、バレルに形成されるセレーションが長い外縁を有する形状であることが好ましい。
【0046】
この点、セレーションの外縁形状が円形状(真円形状又は楕円形状)である場合には、当該セレーションの縁部分が短いため、外縁形状の占有面積を拡大化して当該縁部分の全長を増加させる必要がある。しかしながら、外縁形状の占有面積が拡大すると、セレーションの加工を施すために要するエネルギーが増大してしまう。この際、セレーションの深さ(凹形状の深さ)を小さくする構成によって、当該セレーションの加工を施すために要するエネルギーの増大を抑制することが可能ではある。しかしながら、この場合には、セレーションの縁部分が電線の導体部分の酸化被膜を削る効率が低下し、結果として圧着端子と電線の導体部分との間の接続信頼性が低下するため、この様な構成を採用することはできない。
【0047】
これに対し、本実施形態では、第2のバレル13の内面130に形成されたセレーション14の島状部142の外縁形状は、図6に示すように、複数の円弧(本例では、第1〜第4の円弧A1〜A4)が連なって構成されている。このため、島状部142の外縁形状の占有面積に対して当該セレーション14の外縁を長くすることができる。
【0048】
具体的には、図6において、島状部142の縁部分144の全長および当該島状部142の外縁形状を内包する内包円15の円周長は、何れも2πrである。一方、島状部142の外縁形状の占有面積はr+πr/2であるのに対し、内包円15の面積はπrであり、島状部142の外縁形状の占有面積は内包円15の面積に比べて小さい。このため、島状部142の外縁形状の占有面積と同じ面積を有する円16の円周長は、内包円15の円周長(=島状部142の円周長)に比べて小さくなる。つまり、島状部142の円周長は、当該島状部142の外縁形状の占有面積と同じ面積を有する円16の円周長に比べて大きくなる。
【0049】
これにより、本実施形態における圧着端子1では、セレーション14の加工に要するエネルギーの増大を抑えつつ、圧着端子1と電線2の導体部分21との接続信頼性を向上することができる。また、図6に示すように、島状部142の外縁形状を内包する内包円15が真円である場合には、当該島状部142の外縁形状の占有面積と同じ面積を有する円16の円周長に比べて、島状部142の円周長を効果的に増加できるため、圧着端子1と電線2の導体部分21との接続信頼性を一層向上することができる。
【0050】
因みに、第2のバレル13の内面130に錫メッキが施されている場合には、電線2との接続を行う際、当該電線2の導体部分21を構成する細線211に錫の新生面が凝着しながら各細線211の間の隙間を埋めることにより、ガスタイト構造が得られる。このため、圧着端子1と電線2の導体部分21との接続信頼性をより一層高めることができる。
【0051】
また、本実施形態において島状部142の外縁形状は、4つの円弧A1〜A4が連なって構成されている。これにより、第2のバレル13の内面130に最密に島状部142を配置することが可能となるため、圧着端子1と電線2の導体部分21との接続信頼性をより一層向上することができると共に、圧着端子1と電線2との間の電気的抵抗値の増大を抑制することができる。この効果は、3つの円弧A1〜A3によって外縁形状が構成された島状部142C(図7(B)参照)や、6つの円弧A1〜A6によって外縁形状が構成された島状部142D(図7(C)参照)の場合においても、同様に奏することができる。
【0052】
なお、以上に説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【符号の説明】
【0053】
1・・・圧着端子
11・・・接続部
12・・・第1のバレル
13・・・第2のバレル
130・・・内面(圧着面)
131・・・底部
132・・・側部
14・・・セレーション
141・・・線状部
142・・・島状部
143a〜143d・・・連結部分
144・・・縁部分
15・・・内包円
2・・・電線
21・・・導体部分
22・・・被覆部分
A1〜A6・・・円弧
R・・・アール形状
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7