特許第6363887号(P6363887)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6363887-共役ジエン系重合体の製造方法 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6363887
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】共役ジエン系重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 6/06 20060101AFI20180712BHJP
   C08C 2/04 20060101ALI20180712BHJP
   C08F 36/04 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
   C08F6/06
   C08C2/04
   C08F36/04
【請求項の数】5
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-135103(P2014-135103)
(22)【出願日】2014年6月30日
(65)【公開番号】特開2016-11405(P2016-11405A)
(43)【公開日】2016年1月21日
【審査請求日】2017年5月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000228109
【氏名又は名称】日本エラストマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】久保 伸明
(72)【発明者】
【氏名】山崎 英樹
【審査官】 岡山 太一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−192320(JP,A)
【文献】 特開平07−008772(JP,A)
【文献】 特開2013−241585(JP,A)
【文献】 特開平06−136034(JP,A)
【文献】 特開2003−40919(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 6/00−6/28
C08C 2/00−2/06
C08F 36/00−36/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(I)炭化水素溶媒中で、有機リチウム化合物を開始剤として重合反応を行い、共役ジエ
ン系重合体溶液を得る工程と、
(II)前記共役ジエン系重合体溶液に、当該共役ジエン系重合体溶液中の重合体100
質量部に対して、水を1〜150質量部、添加し、混合溶液とする工程と、
(III)前記混合溶液を、共役ジエン系重合体溶液の微分散状態が1分間以上継続する
状態とする工程と、
を、順次行い、
前記工程(I)で重合反応を完了させた後、アミン系化合物を、前記有機リチウム化合
物に対して0.3倍モル〜1.2倍モル添加する、共役ジエン系重合体の製造方法。
【請求項2】
(I)炭化水素溶媒中で、有機リチウム化合物を開始剤として重合反応を行い、共役ジエ
ン系重合体溶液を得る工程と、
(II)前記共役ジエン系重合体溶液に、当該共役ジエン系重合体溶液中の重合体100
質量部に対して、水を1〜150質量部、添加し、混合溶液とする工程と、
(III)前記混合溶液を、共役ジエン系重合体溶液の微分散状態が1分間以上継続する
状態とする工程と、
(IV)前記微分散状態を維持して、前記工程(III)の後、スチームストリッピングを行う工程と、
を、順次行い、
前記工程(II)後、前記工程(III)前に、有機系酸性化合物を、前記有機リチウ
ム化合物に対して0.1倍モル〜2.0倍モル添加する、共役ジエン系重合体の製造方法。
【請求項3】
前記工程(III)において、
上方及び下方に互いに連通する配管を具備するタンクを用い、
当該タンク内の前記混合溶液を、前記タンク下方から抜き出し、当該タンクの上方へと
移送し、前記タンク下方から抜き出した前記混合溶液を前記タンク上方から投入する操作
を行う、
請求項1又は2に記載の共役ジエン系重合体の製造方法。
【請求項4】
前記互いに連通する配管に配置された回転分散機によって、前記混合溶液をミキシング
しながら移送する、請求項に記載の共役ジエン系重合体の製造方法。
【請求項5】
前記工程(III)において、
前記混合溶液を、前記タンク内で撹拌する、
請求項3又は4に記載の共役ジエン系重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共役ジエン系重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
共役ジエンの重合体、又は共役ジエン類と他の単量体(例えば、共役ジエン類と共重合可能なスチレンのようなビニル芳香族単量体)との共重合体は、プラスチックの改質、アスファルト改質、粘接着分野等で広く利用されている。
さらに、これらの重合体や共重合体に水素添加した水添(共)重合体も、耐候性、耐熱性に優れていることから、医療や自動車分野で広く利用されている。
このような共役ジエン系重合体は、有機リチウム化合物を開始剤として利用したアニオン重合等により製造することができる。
しかしながら、このようにして得られた共役ジエン系重合体中には、リチウム化合物を主成分とする残存触媒(以下、リチウム残渣)が存在する。
【0003】
上述したように、リチウム残渣が共役ジエン系重合体中に多量に存在すると、共役ジエン系重合体が着色したり、さらには加熱処理や保存期間中に着色の度合いが大きくなったりするという問題を有している。
また、リチウム残渣から非溶融化物が生成すると、製造運転中に溶液フィルター詰まりの頻度が増加し、製造運転に支障を来すという問題を有している。
【0004】
すなわち、優れた特性を有する重合体でも、多量に存在するリチウム残渣を除去しないと、その特性を十分に発揮できない。
【0005】
上述したような問題に鑑みて、従来から、共役ジエン系重合体中のリチウム残渣を除去する方法が提案されている。
例えば、炭化水素溶媒中で有機リチウム化合物を開始剤として共役ジエンモノマーとビニル芳香族炭化水素モノマーを共重合させたリビング重合体を、脱揮前に有機系酸性化合物の水溶液を加えて油相と水相に2相分離し、その後脱揮回収する方法が提案されている(例えば特許文献1参照。)。
また、リビング重合体製造中脱揮後に高級脂肪酸を添加する方法が提案されている(例えば特許文献2参照)。
さらに、炭化水素溶媒中で有機リチウム化合物を開始剤として共重合させた共役ジエン系重合体を製造する際に、有機系酸性化合物を少量添加し、水を少量加え、その後フェノール系酸化防止剤を加えて後処理を行い、触媒を失活させて、その後に重合体溶液を脱揮させる方法が提案されている(例えば特許文献3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭50−98992号公報
【特許文献2】特開昭60−231717号公報
【特許文献3】特開2001−131220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した従来提案されている方法においては、いずれも共役ジエン系重合体中のリチウムの低減化が不十分であり、そのリチウム残渣が影響する重合体の着色の問題や、リチウム残渣由来の非溶融化物生成に伴う、製造運転に支障をきたす溶液フィルター詰まりの問題を同時に解決するには至っていない。
【0008】
そこで本発明は、上述した従来技術の問題点に鑑み、共役ジエン系重合体中のリチウム残渣を操作容易な方法で低減し、重合体の着色の問題や、さらには樹脂の製造運転に支障をきたす溶液フィルター詰まりの問題を解決することができる共役ジエン系重合体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上述した従来技術の問題を解決するため鋭意研究した結果、共役ジエン系重合体の重合に際して、その重合体溶液と水とが二相とならない微分散状態にする方法が極めて有用であることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は以下の通りである。
【0010】
〔1〕
(I)炭化水素溶媒中で、有機リチウム化合物を開始剤として重合反応を行い、共役ジエ
ン系重合体溶液を得る工程と、
(II)前記共役ジエン系重合体溶液に、当該共役ジエン系重合体溶液中の重合体100
質量部に対して、水を1〜150質量部、添加し、混合溶液とする工程と、
(III)前記混合溶液を、共役ジエン系重合体溶液の微分散状態が1分間以上継続する
状態とする工程と、
を、順次行い、
前記工程(I)で重合反応を完了させた後、アミン系化合物を、前記有機リチウム化合
物に対して0.3倍モル〜1.2倍モル添加する、共役ジエン系重合体の製造方法。
〔2〕
(I)炭化水素溶媒中で、有機リチウム化合物を開始剤として重合反応を行い、共役ジエ
ン系重合体溶液を得る工程と、
(II)前記共役ジエン系重合体溶液に、当該共役ジエン系重合体溶液中の重合体100
質量部に対して、水を1〜150質量部、添加し、混合溶液とする工程と、
(III)前記混合溶液を、共役ジエン系重合体溶液の微分散状態が1分間以上継続する
状態とする工程と、
(IV)前記微分散状態を維持して、前記工程(III)の後、スチームストリッピングを行う工程と、
を、順次行い、
前記工程(II)後、前記工程(III)前に、有機系酸性化合物を、前記有機リチウ
ム化合物に対して0.1倍モル〜2.0倍モル添加する、共役ジエン系重合体の製造方法。
〔3〕
前記工程(III)において、
上方及び下方に互いに連通する配管を具備するタンクを用い、
当該タンク内の前記混合溶液を、前記タンク下方から抜き出し、当該タンクの上方へと
移送し、前記タンク下方から抜き出した前記混合溶液を前記タンク上方から投入する操作
を行う、前記〔1〕又は〔2〕に記載の共役ジエン系重合体の製造方法。
〔4〕
前記互いに連通する配管に配置された回転分散機によって、前記混合溶液をミキシング
しながら移送する、前記〔3〕に記載の共役ジエン系重合体の製造方法。
〔5〕
前記工程(III)において、前記混合溶液を前記タンク内で撹拌する、前記〔3〕又は〔4〕に記載の共役ジエン系重合体の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、共役ジエン系重合体中に存在するリチウム残渣を操作容易な方法で低減することができ、当該リチウム残渣が影響する重合体の着色を抑制し、かつリチウム残渣由来の非溶融化物生成に伴う、製造運転に支障をきたす溶液フィルター詰まりの問題を解決できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の共役ジエン系重合体の製造方法を実施する工程のフロー図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について、図を参照して詳細に説明する。なお本発明は以下の記載に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
図面中、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置に基づくものとし、さらに図面の寸法比率は、図示の比率に限定されるものではない。
【0014】
〔共役ジエン系重合体の製造方法〕
以下、本実施形態の共役ジエン系重合体の製造方法について、図1を参照して説明する。
本実施形態の共役ジエン系重合体の製造方法においては、
(I)炭化水素溶媒中で、有機リチウム化合物を開始剤として重合反応を行い、共役ジエン系重合体溶液を得る工程と、
(II)前記共役ジエン系重合体溶液に、当該共役ジエン系重合体溶液中の重合体100質量部に対して、水を1〜150質量部、添加し、混合溶液とする工程と、
(III)前記混合溶液を、共役ジエン系重合体溶液の微分散状態が1分間以上継続する状態とする工程と、
を順次行う。
【0015】
以下、順次工程を説明する。
〔(I)炭化水素溶媒中で、有機リチウム化合物を開始剤として重合反応を行い、共役ジエン系重合体を得る工程〕
この共役ジエン系重合体の重合工程(I)においては、所定の重合槽を用い、後述する単量体と炭化水素溶媒とを混合し、有機リチウム化合物を開始剤として添加し、撹拌することにより重合反応を行い、共役ジエン系重合体のリビング重合体溶液を得る。
さらにこの溶液に所定の重合停止剤を加え、重合反応を完了させる。
図1に、本実施形態の共役ジエン系重合体の製造方法を実施する工程のフロー図を示す。
図1においては、重合工程(I)を実施する重合槽とタンクとが所定の配管で連結されており、当該配管には、所定のミキサーM1、M2が配置されている。
重合槽は所定の撹拌翼を具備しており、当該撹拌翼により、単量体、重合溶媒、及び開始剤の混合が行われる。
【0016】
重合工程(I)において得られる共役ジエン系重合体溶液中の共役ジエン系重合体の含有量は、10〜20質量%程度に調整することが好ましい。
共役ジエン系重合体の含有量が10質量%以上であることにより、脱溶媒工程において実用上十分な脱溶媒効率を確保できる。20質量%以下であることにより、重合反応工程において溶液粘度の上昇を抑制でき、良好な撹拌効率を確保できる。
また、重合停止剤を加えて重合反応を完了させた後、後述する工程(II)、(III)において、リチウム残渣をより効果的に除去することができるため、アミン系化合物を添加することが好ましい。
【0017】
前記アミン系化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、テトラメチルエチレンジアミン、ジピペリジノエタン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、キヌクリジン等の3級アミン化合物が挙げられる。
アミン系化合物の添加量は、前記開始剤である有機リチウム化合物に対して0.3倍モル〜2.0倍モルであることが好ましく、より好ましくは0.4倍モル〜1.5倍モルであり、0.5倍モル〜1.2倍モルがさらに好ましい。
アミン系化合物が前記開始剤である有機リチウムに対して0.3倍モル以上であればリチウム残渣低減化効果が大きく、一方2.0倍モルを以下の場合、スチームストリッピング時の排水中にアミン系化合物が蓄積しないため好ましい。
【0018】
<炭化水素溶媒>
重合工程(I)で用いる炭化水素溶媒としては、従来公知の炭化水素溶剤を用いることができるが、その中でも、例えば飽和炭化水素が好ましい。
炭化水素溶媒としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ブタン、ペンタン、n−ヘキサン、イソペンタン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン及びキシレン等の芳香族炭化水素が挙げられ、これらの1種のみを単独で使用してもよく、二種以上を混合して使用してもよい。
また、これら飽和炭化水素中に、共役ジエン系重合体のビニル基を調節するために多用されるテトラヒドロフラン(THF)等の極性物質を少量存在させてもよい。
【0019】
<有機リチウム化合物>
開始剤である有機リチウム化合物とは、化合物分子の中に1個以上のリチウム原子を含む化合物である。
有機リチウム化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、エチルリチウム、n−プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n−ブチルリチウム、第二級ブチルリチウム、ヘキシルリチウム、シクロヘキシルリチウム、フェニルリチウム、フェニルメチルリチウム、ナフチルリチウム、第三級ブチルリチウム、トリメチレンジリチウム、テトラメチレンジリチウム、ブタジエンジリチウム、及びイソプレニルジリチウム等が挙げられる。これらは1種のみを単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0020】
<共役ジエン系重合体>
本実施形態共役ジエン系重合体の製造方法においては、共役ジエン系単量体を用いて重合を行う。共役ジエン系単量体とは、一対の二重結合を有するジオレフィン単量体である。
共役ジエン系単量体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−イソペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−イソペンタジエン、1,3−ヘキサジエンが挙げられる。
これらは1種のみを単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエンが好ましい。
なお、重合工程(I)により得られる共役ジエン系重合体とは、これら共役ジエン系単量体の重合体(BR;代表的にはポリブタジエンがある)、共役ジエン系単量体とビニル芳香族炭化水素単量体との共重合体(SBR)、共役ジエン系単量体重合ブロックとビニル芳香族炭化水素重合ブロックとが結合したブロック共重合体(SBS)等が含まれる。
前記共役ジエン系単量体とビニル芳香族炭化水素単量体との共重合体(SBR)、共役ジエン系単量体重合ブロックとビニル芳香族炭化水素重合体ブロックとが結合したブロック共重合体(SBS)を製造するために用いるビニル芳香族炭化水素単量体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、α−メチルスチレン等が挙げられ、これらは1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0021】
〔(II)前記共役ジエン系重合体溶液に、当該共役ジエン系重合体溶液中の重合体100質量部に対して、水を1〜150質量部添加し、混合溶液とする工程)〕
上述のようにして重合槽で得られた共役ジエン系重合体溶液に、当該共役ジエン系重合体溶液中の重合体100質量部に対して、1〜150質量部の水を添加する。
水を添加する方法としては例えば、図1に示すように、重合槽から所定の配管を介してタンク方向に移送する際、符号(1)の位置で水を添加する方法が挙げられる。
水の添加量は、上記のように共役ジエン系重合体100質量部に対して1〜150質量部であるものとし、好ましくは2〜145質量部、より好ましくは3〜140質量部である。
本実施形態においては、共役ジエン系重合体に対する水の添加量が、後述するように、共役ジエン系重合体溶液の白濁微分散状態を形成するために重要であり、その添加量が共役ジエン系重合体100質量部に対して1質量部以上とすることにより、白濁微分散状態を形成でき、水と共役ジエン系重合体溶液中のリチウム化合物との接触が十分に行われる。また、添加量を共役ジエン系重合体100質量部に対して150質量部以下とすることにより、共役ジエン系重合体溶液と水との良好な混合状態が実現でき、共役ジエン系重合体溶液中のリチウム化合物を水側に移行させることができる。
【0022】
〔(III)共役ジエン系重合体溶液と水との混合溶液を、共役ジエン系重合体溶液の微分散状態が1分間以上継続する状態とする工程〕
上述のように、共役ジエン系重合体溶液に水を添加し、混合溶液を得た後、混合溶液中の共役ジエン系重合体溶液が微分散した状態とする。
前記微分散状態とは、共役ジエン系重合体の重合体溶液に、水を添加した混合溶液を1分間静置した際に、水と共役ジエン系重合体溶液とに2相分離しない状態をいう。
具体的には、ミキシング等で微分散状態にする前の段階においては、抜き出し採取時あるいは1分間以内に相分離が生じる状態であるものとし、当該分離した相の内の一方の相がほとんど透明の共役ジエン系重合体溶液であり、ミキシング等を行った後の共役ジエン系重合体溶液と水との混合液は、1分間以上静置した場合においても、相分離が生じず、乳白色に近い白濁状態であるものとする。
この均一な白濁状態が1分間未満で消滅する場合は微分散状態となっていないものとする。白濁状態が1分間以上継続する場合には、後述するスチームストリッピングする工程においてリチウム化合物を効果的に除去することができ、リチウム残渣を十分に低減化できる。
【0023】
共役ジエン系重合体溶液と水との混合溶液を微分散状態にする方法としては、以下に限定されるものではないが、例えば、撹拌装置、循環装置等を用いてミキシングする方法、分散剤を添加する方法等が挙げられる。
具体的には、共役ジエン系重合体溶液と水の比重の差を利用する観点から、図1に示すように、工程(III)を、上方及び下方に互いに連結する配管を具備するタンクを用いて行い、当該タンク内の混合溶液を、前記タンクの下方から抜き出し、当該タンクの上方へと移送し、前記タンク下方から抜き出した前記混合溶液を前記タンク上方から投入する操作を行い、循環させることによりミキシングして、微分散状態とすることが好ましい。
【0024】
前記タンクを用いて混合溶液を移送する際は、例えば、図1に示すように、タンク内の共役ジエン系重合体溶液と水との混合溶液をタンク下部側のタンジェントライン(C)よりも下方に設置された抜き出し口から抜き出して、前記上方の配管と下方の配管との間に配置された循環ポンプ(P)によって移送し、その後、タンク内の溶液面よりも高い上面部又は側面部からタンク内に投入する方法等が好ましい方法として挙げられる。
このとき、ポンプ(P)の吐出量がタンク内の混合溶液全容量分を1回以上循環する量を循環させて、ミキシングする操作を継続して行い、微分散状態とすることが好ましい。
また、ここでいう回数はタンク内の混合溶液全容量分が循環するタイミングを一回とする。
循環する速度は設備の規模によって異なるが、実用上の操作性の観点から、1L/min〜1000L/minが好ましい。
【0025】
さらに前記(II)の、共役ジエン系重合体溶液に水を添加する工程から、(III)の工程の間において、移送時に、例えば移送管内で、一般的なスタティックミキサーや、回転分散機(図示せず)等によりミキシングすることにより微分散化を一層促進できる。
また、タンクに混合溶液を送液する前段階として、図1中の(M1)や(M2)において、流動抵抗の少ない動力回転翼を有しない静止スタティックミキサーや、攪拌機付きのミキサー、前記回転分散機等、ミキシング装置を設けてミキシングを施すことも好ましい。
【0026】
さらにまた、工程(III)においては、タンク内の混合溶液を、タンク内にある所定の攪拌機、例えば回転羽根を具備する回転攪拌機(A)により撹拌することが好ましい。これにより、一層効果的に微分散状態を形成することができる。
【0027】
またさらに、混合溶液を、前記タンクの上方及び下方に互いに連通する配管に配置された回転分散機(R)でミキシングしながらタンクの下方から上方へと移送し、前記タンクの下方から抜き出した混合溶液を前記タンク上方から投入する操作を繰り返し行うことが好ましい。これにより、一層効果的に微分散状態を維持できる。
回転分散機(R)としては、以下に限定されるものではないが、例えば、特開平6−136034号公報に記載されているような噛み合せ構造を有する回転分散機を用いることにより、効果的にリチウム残渣を除去することができるので好ましい。
【0028】
また、本実施形態の共役ジエン系重合体の製造方法においては、前記工程(II)の後、工程(III)前段階において、混合溶液に有機系酸性化合物を添加し、共役ジエン系重合体を中和することが好ましい。これにより、リチウム残渣を効果的に除去することができる。
有機系酸性化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ペンタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ラウリン酸、牛脂系脂肪酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノレイン酸、ベヘン酸、ベルサチン酸、カプリン酸、酒石酸、乳酸、ピルビン酸、グルタル酸、クエン酸、リンゴ酸等が挙げられる。
有機系酸性化合物の添加量は、開始剤の有機リチウム化合物に対して0.1倍モル〜2.0倍モルであることが好ましい。より好ましくは0.15倍モル〜1.5倍モルであり、さらに好ましくは0.2倍モル〜1.0倍モルである。
有機系酸性化合物が0.1倍モル以上であれば、リチウム残渣低減化効果が大きく、一方2.0倍モル以下である場合、共役ジエン系重合体の熱安定性の低下を防止し、あるいは向上させることができる。
【0029】
本実施形態の共役ジエン系重合体の製造方法における、上述した(III)の工程、すなわち混合溶液を共役ジエン系重合体溶液の微分散状態とする工程は、前述したように、タンク内の共役ジエン系重合体溶液と水との混合液を、所定の送液ポンプで循環させて白濁状態になるまでミキシングするという極めて簡単な操作によって実施することができる。
なお、共役ジエン系重合体溶液の白濁状態は1分間以上維持され、かつ後述する(IV)スチームストリッピングする工程の段階まで維持されていることが好ましい。
【0030】
〔(IV)スチームストリッピングする工程)〕
本実施形態の共役ジエン系重合体の製造方法においては、上記(III)の工程の後、水蒸気蒸留(スチームストリッピング)を行うことが好ましい。
スチームストリッピングは、従来公知の方法を適用でき、溶媒を効率よく取り除ける条件で水蒸気を共役ジエン系重合体溶液に吹き込めばよい。
本実施形態の共役ジエン系重合体の製造方法においては、共役ジエン系重合体溶液と水とが微分散した状態の白濁状態で1分間以上維持されているため、スチームストリッピング時に熱水中に共役ジエン系重合体溶液中のリチウム化合物が移行しやすくなり、リチウム残渣を効果的に低減化できる。
【0031】
〔(V)乾燥工程〕
本実施形態の共役ジエン系共重合体の製造方法においては、上述した(IV)スチームストリッピングする工程の後、乾燥工程を行うことが好ましい。
(V)乾燥工程においては、所望の共役ジエン系重合体の形状(クラム状、粒状、ベール状等)に応じて乾燥条件を選択し、共役ジエン系重合体をほとんど変質させないで効率よく短時間で乾燥できる温度を調節選択して乾燥させる。
【0032】
〔共役ジエン系重合体の特性〕
上述した工程(I)〜(III)を行うことにより、リチウム含有量を当初の有機リチウム化合物の添加量に対して半量以下に低減化でき、リチウム残渣量が1〜70ppmである共役ジエン系重合体が得られる。
上述したように、最終的に得られる共役ジエン系重合体のリチウム残渣量は、先ず工程(I)で有機リチウム化合物の開始剤の量を調整して共役ジエン系重合体を得、さらには上述した工程(II)及び(III)を行うことにより制御できる。具体的には、有機リチウム化合物に由来するリチウム残渣量を70ppm以下に低減化することができる。
共役ジエン系重合体のリチウム残渣量を70ppm以下にすることにより、そのリチウム残渣が影響する重合体の着色の問題、樹脂の製造運転に支障をきたす溶液フィルター詰まりの問題を同時に解決できる。
【実施例】
【0033】
以下、具体的な実施例と比較例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0034】
〔共役ジエン系重合体の製造〕
後述する実施例及び比較例において使用する共役ジエン系重合体を、下記のようにして重合した。
(共役ジエン系重合体(BR1と略記)の重合)
内容積100リットルの、回転撹拌翼とジャケットを備えた重合槽を用い、100ppmの1,2−ブタジエンを含む1,3−ブタジエン100質量部と150ppmのテトラヒドロフランを含むシクロヘキサン溶液560質量部を重合槽に仕込み、0.12質量部の開始剤n−ブチルリチウムを添加して撹拌下で反応ピーキング温度90℃で重合を行い、リビングポリマー溶液を得た。
さらに、この溶液に、n−ブチルリチウムに対し0.27倍モルのテトラメトキシシランを加えてカップリング反応させ、共役ジエン系重合体(BR1)の重合を完了させた。
【0035】
(共役ジエン系重合体(SBR1と略記)の重合)
内容積100リットルの、回転撹拌翼とジャケットを備えた重合槽を用い、100ppmの1,2−ブタジエンを含む1,3−ブタジエン85質量部と150ppmのテトラヒドロフランを含むシクロヘキサン溶液560質量部を重合槽に仕込み、0.095質量部の開始剤n−ブチルリチウムを添加して撹拌下で反応ピーキング温度90℃で重合を行い、そのピーキング温度に達してから2分後にスチレン15質量部を添加して重合を行った後、メタノールを開始剤n−ブチルリチウムの1.0倍モル添加して失活させることにより、共役ジエン系重合体(SBR1)の重合反応を完了させた。
【0036】
(共役ジエン系重合体(SBR2と略記)の重合)
内容積100リットルの、回転撹拌翼とジャケットを備えた重合槽を用い、100ppmの1,2−ブタジエンを含む1,3−ブタジエン75質量部とスチレン25質量部、および150ppmのテトラヒドロフランを含むシクロヘキサン溶液560質量部を重合槽に仕込み、0.095質量部の開始剤n−ブチルリチウムを添加して撹拌下で反応ピーキング温度90℃で重合を行った後、メタノールを開始剤n−ブチルリチウムの1.0倍モル添加して失活させることにより、共役ジエン系重合体(SBR2)の重合反応を完了させた。
【0037】
(共役ジエン系重合体(SBS1と略記)の重合)
内容積100リットルの、回転撹拌翼とジャケットを備えた重合槽を用い、スチレン20質量部、150ppmのテトラヒドロフランを含むシクロヘキサン溶液550質量部を重合槽に仕込み、0.13質量部の開始剤n−ブチルリチウムを添加して撹拌下で反応ピーキング温度55℃で重合を行い、そのピーキング温度に達してから2分後に50ppmの1,2−ブタジエンを含む1,3−ブタジエン60質量部を添加して、ピーキング温度95℃まで重合を行い、そのピーキング温度に達してから2分後にスチレン20質量部を添加して重合を行った後、メタノールを開始剤n−ブチルリチウムの1.0倍モル添加して失活させることにより、共役ジエン系重合体(SBS1)の重合反応を完了させた。
【0038】
(共役ジエン系重合体(SBS2と略記)の重合)
内容積100リットルの、回転撹拌翼とジャケットを備えた重合槽を用い、スチレン35質量部、150ppmのテトラヒドロフランを含むシクロヘキサン溶液550質量部を重合槽に仕込み、0.17質量部の開始剤n−ブチルリチウムを添加して撹拌下で反応ピーキング温度55℃で重合を行い、そのピーキング温度に達してから2分後に50ppmの1,2−ブタジエンを含む1,3−ブタジエン65質量部を添加して、ピーキング温度95℃まで重合を行い、リビングポリマー溶液を得た。
さらにこの溶液に、n−ブチルリチウムに対し0.15倍モルのジメトキシジメチルシランを加えてカップリング反応させ、共役ジエン系重合体(SBS2)の重合反応を完了させた。
【0039】
〔共役ジエン系重合体の特性〕
次に、後述する実施例、比較例において得られる共役ジエン系重合体の特性の測定方法について示す。
<(1)結合スチレン量>
測定用の試料(共役ジエン系重合体)をクロロホルム溶液とし、測定器として、JASCO製 V−550を用いて、スチレンのフェニル基による波長254nmの紫外線(UV)の吸収量を測定し、結合スチレン量(質量%)を測定した。
【0040】
<(2)5質量%スチレン溶液粘度:5%SV>
共役ジエン系重合体5質量部をスチレン95質量部に溶解して5質量%の溶液を調製し、測定温度25℃で、キャノンフェンスケ型粘度計を用いて測定した。
【0041】
<(3)ムーニー粘度>
JIS K 6300に従って、L型ローターを用い、100℃で1分間予熱を行い、4分間室温にて静置した後の粘度を測定した。
【0042】
<(4)メルトフローレート>
JIS K7210に従って、試験温度190℃、荷重2.16kgにて測定した。
【0043】
<(5)共役ジエン系重合体中のリチウム残渣>
前処理として、密閉容器中に共役ジエン系重合体0.25g、酸(96%硫酸5mL、60%硝酸3mL)を入れて、マイルストーン ゼネラル社製ETHOS1にて酸分解させ、分解液を純水で50mLにメスアップして分析試料とした。
分析試料を、島津製作所製ICP発光分析装置ICPS−7510を用いて、リチウムの波長670.85nmで発光度を測定し、あらかじめ作成した検量線から、共役ジエン系重合体中のリチウム残渣量を算出した。
【0044】
<(6)フィルター詰まりの簡易評価:5A濾紙による吸引濾過時間>
共役ジエン系重合体20gをトルエン600mLに溶解させた後、その共役ジエン系重合体溶液を、直径9cmの定量濾紙(5A濾紙:粒子保持能が20〜25μm)をビフネルロート(ブフナーロート)に敷き、吸引ポンプ(減圧吸引0.06MPa)で吸引濾過し、濾過時間を測定した。
【0045】
<(7)ベールb値>
実施例及び比較例で得た共役ジエン系重合体を用いて厚さ約0.6mmのシート状ベールを製造し、当該ベールを200℃×30分間加熱した後、b値を測定した。
測定には、日本電色工業社製SE6000を用いた。
【0046】
<(8)ペレットb値>
実施例及び比較例で得た共役ジエン系重合体を用いてサンプルペレットを製造し、160℃×30分間加熱処理した。当該サンプルペレットを50mLガラスセルに満たして試料台にセットし、b値を測定した。
測定には、スガ試験機(株)製MSC−CH型を用いた。
【0047】
〔実施例1〕
上述のようにして作製した共役ジエン系重合体(BR1)の重合体溶液を、図1に示すように、重合槽から所定の配管を介してタンク方向へ移送する工程において、下記表1に示す添加量の水を図1中符号(1)の位置で添加し、撹拌翼付き小型ミキサー(M1)でミキシングした後、牛脂系脂肪酸(花王製ルナックTH)を5質量%溶解させたシクロヘキサン溶液を図1中符号(2)の位置で添加し、タンクへ移送した。牛脂系脂肪酸の添加量(有機リチウム化合物1モルに対するモル量)を表1に示す。
タンクへ移送した共役ジエン系重合体溶液を、タンクに併設の循環ポンプ(P)にてタンク下部から抜き出して、矢印Bの循環方向へと移送し、タンク上部から投入して、共役ジエン系重合体の溶液全量を、2時間かけて2回循環させた。
循環後に、タンクから共役ジエン系重合体溶液を2L容器に採取し、共役ジエン系重合体溶液の白濁状態を確認した後、水と共役ジエン系重合体溶液が2相分離するまでの時間を測定し、微分散状態を評価した。
その後、共役ジエン系重合体溶液を、タンク内から次工程へ移送する際に、図1中符号(3)の位置で、熱安定剤として、共役ジエン系重合体100質量部あたりヒンダードフェノール系化合物(BASF社製イルガノックス、Irg.1076)を0.15質量部、硫黄含有フェノール化合物(BASF社製商品名イルガノックス、Irg.1520L)を0.15質量部添加し、さらに(4)の位置で炭酸ガスを添加して中和した。
その後、この共役ジエン系重合体溶液を、水に対して20ppmのジイソブチレン−無水マレイン酸共重合体ナトリウム塩と10ppmの硫酸マグネシウムを分散剤として添加した後、スチームにて85〜98℃に加熱した条件下でスチームストリッピングした。
溶媒除去後のクラムを回収し、クラムをステンレス板に挟んで30℃で圧縮して脱水した後、ロール温度110℃でクラムを乾燥して共役ジエン系重合体を得た。
【0048】
〔実施例2〕
上述のようにして作製した共役ジエン系重合体(BR1)の重合体溶液を、図1に示すように、重合槽から所定の配管を介してタンク方向へ移送する工程において、下記表1に示す添加量の水を図1中符号(1)の位置で添加し、撹拌翼付き小型ミキサー(M1)でミキシングした後、牛脂系脂肪酸(花王製ルナックTH)を5質量%溶解させたシクロヘキサン溶液を図1中符号(2)の位置で添加し、撹拌翼付き小型ミキサー(M2)でのミキシングを経由してタンクへ移送した。牛脂系脂肪酸の添加量(有機リチウム化合物1モルに対するモル量)を表1に示す。
タンクへ移送した共役ジエン系重合体溶液を、タンク内の攪拌機(A)で撹拌するとともに、併設の循環ポンプ(P)にて、タンク内の共役ジエン系重合体溶液全量を、実施例1と同様に2時間かけて2回循環させた。
循環後に、タンクから共役ジエン系重合体溶液を2L容器に採取し、共役ジエン系重合体溶液の白濁状態を確認した後、水と共役ジエン系重合体溶液が2相分離するまでの時間を測定し、微分散状態を評価した。
その後、共役ジエン系重合体溶液を、タンク内から次工程へ移送する際に、図1中符号(3)の位置で、熱安定剤として、共役ジエン系重合体100質量部あたりヒンダードフェノール系化合物(BASF社製イルガノックス、Irg.1076)を0.15質量部、硫黄含有フェノール化合物(BASF社製商品名イルガノックス、Irg.1520L)を0.15質量部添加し、さらに(4)の位置で炭酸ガスを添加して中和した。
その後、この共役ジエン系重合体溶液を、水に対して20ppmのジイソブチレン−無水マレイン酸共重合体ナトリウム塩と10ppmの硫酸マグネシウムを分散剤として添加した後、スチームにて85〜98℃に加熱した条件下でスチームストリッピングした。
溶媒除去後のクラムを回収し、クラムをステンレス板に挟んで30℃で圧縮して脱水した後、ロール温度110℃でクラムを乾燥して共役ジエン系重合体を得た。
【0049】
〔実施例3〕
上述のようにして作製した共役ジエン系重合体(SBR1)の重合体溶液を、図1に示すように、重合槽から所定の配管を介してタンク方向へ移送する工程において、下記表1に示す添加量の水を図1中符号(1)の位置で添加し、撹拌翼付き小型ミキサー(M1)でミキシングした後、ステアリン酸(花王製ルナックS−90)を5質量%溶解させたシクロヘキサン溶液を図1中符号(2)の位置で添加し、撹拌翼付き小型ミキサー(M2)でのミキシングを経由してタンクへ移送した。ステアリン酸の添加量(有機リチウム化合物1モルに対するモル量)を表1に示す。
タンクへ移送した共役ジエン系重合体溶液を、タンク内の攪拌機(A)で撹拌するとともに、併設の循環ポンプ(P)にて、タンク内の共役ジエン系重合体溶液全量を、6時間かけて5回循環させた。
循環後に、タンクから共役ジエン系重合体溶液を2L容器に採取し、共役ジエン系重合体溶液の白濁状態を確認した後、水と共役ジエン系重合体溶液が2相分離するまでの時間を測定し、微分散状態を評価した。
その後、共役ジエン系重合体溶液を、タンク内から次工程へ移送する際に、図1中符号(3)の位置で、熱安定剤として、共役ジエン系重合体100質量部あたりヒンダードフェノール系化合物(BASF社製イルガノックス、Irg.1076)を0.1質量部、硫黄含有フェノール化合物(BASF社製商品名イルガノックス、Irg.1520L)を0.1質量部添加し、さらに(4)の位置で炭酸ガスを添加して中和した。
その後、この共役ジエン系重合体溶液を、水に対して10ppmのジイソブチレン−無水マレイン酸共重合体ナトリウム塩と5ppmの硫酸マグネシウムを分散剤として添加した後、スチームにて85〜98℃に加熱した条件下でスチームストリッピングした。
溶媒除去後のクラムを回収し、クラムをステンレス板に挟んで30℃で圧縮して脱水した後、ロール温度110℃でクラムを乾燥して共役ジエン系重合体を得た。
【0050】
〔実施例4〕
ステアリン酸をカプリン酸(日本油脂製 NAA−102)に変えた。その他の条件は、実施例3と同様に実施し、共役ジエン系重合体を得た。
【0051】
〔実施例5〕
上述のようにして作製した共役ジエン系重合体(SBR1)の重合体溶液を、図1に示すように、重合槽から所定の配管を介してタンク方向へ移送する工程において、下記表1に示す添加量の水を図1中符号(1)の位置で添加し、撹拌翼付き小型ミキサー(M1)でミキシングした後、牛脂系脂肪酸(花王製ルナックTH)を5質量%溶解させたシクロヘキサン溶液を図1中符号(2)の位置で添加し、タンクへ移送した。牛脂系脂肪酸の添加量(有機リチウム化合物1モルに対するモル量)を表1に示す。
タンクへ移送した共役ジエン系重合体溶液を、タンク内の攪拌機(A)で撹拌するとともに、併設の循環ポンプ(P)にて、タンク内の共役ジエン系重合体溶液全量を5回循環させた。
なお、循環ポンプ(P)にて共役ジエン系重合体溶液を循環させる際、回転分散機(R)(ユーロテック製キャビトロンCD1010型)を経由し混合した。
循環後に、タンクから共役ジエン系重合体溶液を2L容器に採取し、共役ジエン系重合体溶液の白濁状態を確認した後、水と共役ジエン系重合体溶液が2相分離するまでの時間を測定し、微分散状態を評価した。
その後、共役ジエン系重合体溶液を、タンク内から次工程へ移送する際に、図1中符号(3)の位置で、熱安定剤として、共役ジエン系重合体100質量部あたりヒンダードフェノール系化合物(BASF社製イルガノックス、Irg.1076)を0.1質量部、硫黄含有フェノール化合物(BASF社製商品名イルガノックス、Irg.1520L)を0.1質量部添加し、さらに(4)の位置で炭酸ガスを添加して中和した。
その後、この共役ジエン系重合体溶液を、水に対して10ppmのジイソブチレン−無水マレイン酸共重合体ナトリウム塩と5ppmの硫酸マグネシウムを分散剤として添加した後、スチームにて85〜98℃に加熱した条件下でスチームストリッピングした。
溶媒除去後のクラムを回収し、クラムをステンレス板に挟んで30℃で圧縮して脱水した後、ロール温度110℃でクラムを乾燥して共役ジエン系重合体を得た。
【0052】
〔実施例6〕
上述のようにして作製した共役ジエン系重合体(SBR1)の重合体溶液を、図1に示すように、重合槽から所定の配管を介してタンク方向へ移送する工程において、下記表1に示す添加量の水を図1中符号(1)の位置で添加し、撹拌翼付き小型ミキサー(M1)でミキシングした後、クエン酸を5質量%溶解させたシクロヘキサン溶液を図1中符号(2)の位置で添加し、タンクへ移送した。クエン酸の添加量(有機リチウム化合物1モルに対するモル量)を表1に示す。
タンクへ移送した共役ジエン系重合体溶液を、タンク内の攪拌機(A)で撹拌するとともに、併設の循環ポンプ(P)にて、タンク内の共役ジエン系重合体溶液全量を5回循環させた。
なお、循環ポンプ(P)にて共役ジエン系重合体溶液を循環させる際、回転分散機(R)(ユーロテック製キャビトロンCD1010型)を経由し混合した。
循環後に、タンクから共役ジエン系重合体溶液を2L容器に採取し、共役ジエン系重合体溶液の白濁状態を確認した後、水と共役ジエン系重合体溶液が2相分離するまでの時間を測定し、微分散状態を評価した。
その後、共役ジエン系重合体溶液を、タンク内から次工程へ移送する際に、図1中符号(3)の位置で、熱安定剤として、共役ジエン系重合体100質量部あたりヒンダードフェノール系化合物(BASF社製イルガノックス、Irg.1076)を0.1質量部、硫黄含有フェノール化合物(BASF社製商品名イルガノックス、Irg.1520L)を0.1質量部添加し、さらに(4)の位置で炭酸ガスを添加して中和した。
その後、この共役ジエン系重合体溶液を、水に対して10ppmのジイソブチレン−無水マレイン酸共重合体ナトリウム塩と5ppmの硫酸マグネシウムを分散剤として添加した後、スチームにて85〜98℃に加熱した条件下でスチームストリッピングした。
溶媒除去後のクラムを回収し、クラムをステンレス板に挟んで30℃で圧縮して脱水した後、ロール温度110℃でクラムを乾燥して共役ジエン系重合体を得た。
【0053】
〔実施例7〕
上述のようにして作製した共役ジエン系重合体(SBR1)の重合体溶液に、テトラメ
チルエチレンジアミンを開始剤n−ブチルリチウムの0.6倍モル添加した。
その後、図1に示すように、重合槽から所定の配管を介してタンク方向へ移送する工程
において、下記表1に示す添加量の水を図1中符号(1)の位置で添加し、撹拌翼付き小型ミキサー(M1)でミキシングした後、タンクへ移送した。
タンクへ移送した共役ジエン系重合体溶液を、タンク内の攪拌機(A)で撹拌するとともに、併設の循環ポンプ(P)にて、タンク内の共役ジエン系重合体溶液全量を5回循環
させた。
なお、循環ポンプ(P)にて共役ジエン系重合体溶液を循環させる際、回転分散機(R)(ユーロテック製キャビトロンCD1010型)を経由し混合した。
循環後に、タンクから共役ジエン系重合体溶液を2L容器に採取し、共役ジエン系重合
体溶液の白濁状態を確認した後、水と共役ジエン系重合体溶液が2相分離するまでの時間
を測定し、微分散状態を評価した。
その後、共役ジエン系重合体溶液を、タンク内から次工程へ移送する際に、図1中符号
(3)の位置で、熱安定剤として、共役ジエン系重合体100質量部あたりヒンダードフ
ェノール系化合物(BASF社製イルガノックス、Irg.1076)を0.1質量部、
硫黄含有フェノール化合物(BASF社製商品名イルガノックス、Irg.1520L)
を0.1質量部添加し、さらに(4)の位置で炭酸ガスを添加して中和した。
その後、この共役ジエン系重合体溶液を、水に対して10ppmのジイソブチレン−無
水マレイン酸共重合体ナトリウム塩と5ppmの硫酸マグネシウムを分散剤として添加し
た後、スチームにて85〜98℃に加熱した条件下でスチームストリッピングした。
溶媒除去後のクラムを回収し、クラムをステンレス板に挟んで30℃で圧縮して脱水し
た後、ロール温度110℃でクラムを乾燥して共役ジエン系重合体を得た。
【0054】
〔実施例8〕
上述のようにして作製した共役ジエン系重合体(SBR2)の重合体溶液を、図1に示すように、重合槽から所定の配管を介してタンク方向へ移送する工程において、下記表1に示す添加量の水を図1中符号(1)の位置で添加し、撹拌翼付き小型ミキサー(M1)でミキシングした後、ラウリン酸(日本油脂社製NAA−122)を5質量%溶解させたシクロヘキサン溶液を図1中符号(2)の位置で添加し、撹拌翼付き小型ミキサー(M2)でのミキシングを経由してタンクへ移送した。ラウリン酸の添加量(有機リチウム化合物1モルに対するモル量)を表1に示す。
タンクへ移送した共役ジエン系重合体溶液を、タンク内の攪拌機(A)で撹拌するとともに、併設の循環ポンプ(P)にて、タンク内の共役ジエン系重合体溶液全量を6時間かけて5回循環させた。
循環後に、タンクから共役ジエン系重合体溶液を2L容器に採取し、共役ジエン系重合体溶液の白濁状態を確認した後、水と共役ジエン系重合体溶液が2相分離するまでの時間を測定し、微分散状態を評価した。
その後、共役ジエン系重合体溶液を、タンク内から次工程へ移送する際に、図1中符号(3)の位置で、熱安定剤として、共役ジエン系重合体100質量部あたり、硫黄含有フェノール化合物(BASF社製商品名イルガノックス、Irg.1520L)を0.2質量部添加し、さらに(4)の位置で炭酸ガスを添加して中和した。
その後、共役ジエン系重合体溶液を、水に対して10ppmのジイソブチレン−無水マレイン酸共重合体ナトリウム塩と5ppmの硫酸マグネシウムを分散剤として添加した後、スチームにて85〜98℃に加熱した条件下でスチームストリッピングした。
溶媒除去後のクラムを回収し、クラムをステンレス板に挟んで30℃で圧縮して脱水した後、ロール温度110℃でクラムを乾燥して共役ジエン系重合体を得た。
【0055】
〔実施例9〕
上述のようにして作製した共役ジエン系重合体(SBS1)の重合体溶液を、図1に示すように、重合槽から所定の配管を介してタンク方向へ移送する工程において、下記表1に示す添加量の水を図1中符号(1)の位置で添加し、撹拌翼付き小型ミキサー(M1)でミキシングした後、ステアリン酸(花王社製ルナックS−90)を5質量%溶解させたシクロヘキサン溶液を図1中符号(2)の位置で添加し、タンクへ移送した。ステアリン酸の添加量(有機リチウム化合物1モルに対するモル量)を表1に示す。
タンクへ移送した共役ジエン系重合体溶液を、タンク内の攪拌機(A)で撹拌するとともに、併設の循環ポンプ(P)にて、タンク内の共役ジエン系重合体溶液全量を8時間かけて7回循環させた。
循環後に、タンクから共役ジエン系重合体溶液を2L容器に採取し、共役ジエン系重合体溶液の白濁状態を確認した後、水と共役ジエン系重合体溶液が2相分離するまでの時間を測定し、微分散状態を評価した。
その後、共役ジエン系重合体溶液を、タンク内から次工程へ移送する際に、図1中符号(3)の位置で、熱安定剤として、共役ジエン系重合体100質量部あたりヒンダードフェノール系化合物(BASF社製イルガノックス、Irg.1076)を0.2質量部、硫黄含有フェノール化合物(BASF社製商品名イルガノックス、Irg.1520L)を0.08質量部添加し、さらに炭酸ガスを添加して中和した。
その後、共役ジエン系重合体溶液を、水に対して20ppmのスチレン−無水マレイン酸共重合体ナトリウム塩と5ppmの硫酸マグネシウムを分散剤として添加し、スチームにて85〜98℃に加熱した条件下でスチームストリッピングした。
溶媒除去後のクラムを回収し、ロール温度140℃でクラムを乾燥して共役ジエン系重合体を得た後、2軸押出機を用いて180℃でペレタイズした。
【0056】
〔実施例10、11〕
上述のようにして作製した共役ジエン系重合体(SBS2)の重合体溶液を、図1に示すように、重合槽から所定の配管を介してタンク方向へ移送する工程において、下記表1に示す添加量の水を図1中符号(1)の位置で添加し、撹拌翼付き小型ミキサー(M1)でミキシングした後、ステアリン酸(花王社製ルナックS−90)を5質量%溶解させたシクロヘキサン溶液を、図1中(2)の位置で添加し、タンクへ移送した。ステアリン酸の添加量(有機リチウム化合物1モルに対するモル量)を表1に示す。
タンクへ移送した共役ジエン系重合体溶液を、タンク内の攪拌機(A)で撹拌するとともに、併設の循環ポンプ(P)にて、タンク内の共役ジエン系重合体溶液全量を5回循環させた。
なお、循環ポンプ(P)にて共役ジエン系重合体溶液を循環させる際、回転分散機(R)(ユーロテック製キャビトロンCD1010型)を経由し混合した。
循環後に、タンクから共役ジエン系重合体溶液を2L容器に採取し、共役ジエン系重合体溶液の白濁状態を確認した後、水と共役ジエン系重合体溶液が2相分離するまでの時間を測定し、微分散状態を評価した。
その後、共役ジエン系重合体溶液を、タンク内から次工程へ移送する際に、図1中符号(3)の位置で、熱安定剤として、共役ジエン系重合体100質量部あたりヒンダードフェノール系化合物(BASF社製イルガノックス、Irg.1076)を0.2質量部、硫黄含有フェノール化合物(BASF社製商品名イルガノックス、Irg.1520L)を0.08質量部添加し、さらに炭酸ガスを添加して中和した。
その後、共役ジエン系重合体溶液を、水に対して20ppmのスチレン−無水マレイン酸共重合体ナトリウム塩と5ppmの硫酸マグネシウムを分散剤として添加し、スチームにて85〜98℃に加熱した条件下でスチームストリッピングした。
溶媒除去後のクラムを回収し、ロール温度140℃でクラムを乾燥して共役ジエン系重合体を得た後、2軸押出機を用いて180℃でペレタイズした。
【0057】
〔比較例1〕
上述のようにして作製した共役ジエン系重合体(BR1)の重合体溶液を、図1に示すように、重合槽から所定の配管を介してタンク方向へ移送する工程において、下記表1に示す添加量の水を図1中符号(1)の位置で添加し、撹拌翼付き小型ミキサー(M1)でミキシングした後、牛脂系脂肪酸(花王製ルナックTH)を5質量%溶解させたシクロヘキサン溶液を図1中符号(2)の位置で添加し、タンクへ移送した。牛脂系脂肪酸の添加量(有機リチウム化合物1モルに対するモル量)を表1に示す。
タンクへ移送した共役ジエン系重合体溶液を、タンク内の攪拌機(A)で3時間撹拌した。
撹拌後に、タンクから共役ジエン系重合体溶液を2L容器に採取し、共役ジエン系重合体溶液の白濁状態を確認した後、水と共役ジエン系重合体溶液が2相分離するまでの時間を測定し、微分散状態を評価した。
その後、共役ジエン系重合体溶液を、タンク内から次工程へ移送する際に、図1中符号(3)の位置で、熱安定剤として、共役ジエン系重合体100質量部あたりヒンダードフェノール系化合物(BASF社製イルガノックス、Irg.1076)を0.15質量部、硫黄含有フェノール化合物(BASF社製商品名イルガノックス、Irg.1520L)を0.15質量部添加し、さらに(4)の位置で炭酸ガスを添加して中和した。
その後、この共役ジエン系重合体溶液を、水に対して20ppmのジイソブチレン−無水マレイン酸共重合体ナトリウム塩と10ppmの硫酸マグネシウムを分散剤として添加し、スチームにて85〜98℃に加熱した条件下でスチームストリッピングした。
溶媒除去後のクラムを回収し、クラムをステンレス板に挟んで30℃で圧縮して脱水した後、ロール温度110℃でクラムを乾燥して共役ジエン系重合体を得た。
【0058】
〔比較例2〕
水の添加量を重合体100質量部に対して0.07質量部とした。その他の条件は、実施例3と同様に実施し、共役ジエン系重合体を得た。
【0059】
〔比較例3〕
タンク併設の循環ポンプ(P)を作動させず、ポンプによる循環を行わなかった。その他の条件は実施例3と同様に実施し、共役ジエン系重合体を得た。
【0060】
〔比較例4〕
タンク併設の循環ポンプ(P)を作動させず、ポンプによる循環を行わなかった。その他の条件は実施例8と同様に実施し、共役ジエン系重合体を得た。
【0061】
〔比較例5〕
上述のようにして作製した共役ジエン系重合体(SBS2)の重合体溶液を、図1に示すように、重合槽から所定の配管を介してタンク方向へ移送する工程において、下記表1に示す添加量の水を図1中符号(1)の位置で添加し、撹拌翼付き小型ミキサー(M1)でミキシングした後、ステアリン酸(花王社製ルナックS−90)を5質量%溶解させたシクロヘキサン溶液を図1中符号(2)の位置で添加し、タンクへ移送した。ステアリン酸の添加量(有機リチウム化合物1モルに対するモル量)を表1に示す。
タンクへ移送した共役ジエン系重合体溶液を、タンク内の攪拌機(A)で撹拌するとともに、併設の循環ポンプ(P)にて、タンク内の共役ジエン系重合体溶液全量を5回循環させた。
循環後に、タンクから共役ジエン系重合体溶液を2L容器に採取し、共役ジエン系重合体溶液の白濁状態を確認した後、水と共役ジエン系重合体溶液が2相分離するまでの時間を測定し、微分散状態を評価した。
その後、共役ジエン系重合体溶液を、タンク内から次工程へ移送する際に、図1中符号(3)の位置で、熱安定剤として、共役ジエン系重合体100質量部あたりヒンダードフェノール系化合物(BASF社製イルガノックス、Irg.1076)を0.2質量部、硫黄含有フェノール化合物(BASF社製商品名イルガノックス、Irg.1520L)を0.08質量部添加し、さらに炭酸ガスを添加して中和した。
その後、共役ジエン系重合体溶液を、水に対して20ppmのスチレン−無水マレイン酸共重合体ナトリウム塩と5ppmの硫酸マグネシウムを分散剤として添加し、スチームにて85〜98℃に加熱した条件下でスチームストリッピングした。
溶媒除去後のクラムを回収し、ロール温度140℃でクラムを乾燥して共役ジエン系重合体を得た後、2軸押出機を用いて180℃でペレタイズした。
【0062】
実施例1〜11及び比較例1〜5の共役ジエン系重合体の特性、共役ジエン系重合体中のリチウム残渣量、フィルター詰まりの簡易評価、及びベール、ペレットの加熱着色性の評価結果を表1に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
実施例1〜11においては、リチウム残差量の低減化が図られ、また、フィルター詰まりの評価の結果も良好であり、ポリマーの着色の数値も小さく結果が良好であった。
比較例1、3、4においては、添加剤の添加工程での小型ミキサーでのラインミキシングや、タンクでの撹拌だけでは、十分な微分散状態とすることができず、十分にリチウム残渣量を低減化できなかった。
また、比較例2においては、循環ポンプでのミキシングを行ったが、水の添加量が少ないため、十分にリチウム残渣量を低減化できなかった。
さらに比較例5においては、水の添加量が過多であるため、共役ジエン系重合体溶液と水とが十分に微分散状態とならず、すぐに2相分離してしまい、十分にリチウム残渣量を低減化できなかった。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の共役ジエン系重合体の製造方法は、各種成形品の材料、各種熱可塑性樹脂の改質材、履物の素材、粘着剤・接着剤の素材、アスファルトの改質剤、電線ケーブルの素材、加硫ゴムの改質剤、家電製品・自動車部品・工業用品・家庭用品・玩具等の素材等の製造方法として好適に利用できる。
【符号の説明】
【0066】
(1) 水添加位置
(2) 有機系酸性化合物添加位置
(3) 熱安定剤添加位置
(4) 炭酸ガス添加位置
(M1) 小型ミキサー
(M2) 小型ミキサー
(P) 送液ポンプ
(A) 回転攪拌機
(R) 回転分散機
B 上方循環方向
C 下部側のタンジェントライン
図1