【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構委託研究「低炭素社会を実現する超低電圧デバイスプロジェクト」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(a1)半導体基板と、前記半導体基板上に形成された第1絶縁膜と、前記第1絶縁膜上に形成された半導体層とにより構成され、上面に第1領域を有するSOI基板を準備する工程、
(b1)前記第1領域の前記半導体層上に、酸化シリコンよりも高い誘電率を有する材料を含む第2絶縁膜と、P型の半導体膜を含む第1ゲート電極と、前記第1ゲート電極の上面を覆う第3絶縁膜とを順に積層した第1パターンを形成する工程、
(c1)前記第1ゲート電極の側壁を覆うように、第1サイドウォールを形成する工程、
(d1)前記第1ゲート電極の横において前記第1サイドウォールから露出する前記半導体層上に一対の第1エピタキシャル層を形成する工程、
(e1)前記第3絶縁膜をマスクとして用い、一対の前記第1エピタキシャル層にN型の不純物を打ち込むことで、一対の第1ソース・ドレイン領域を形成することにより、前記第1ゲート電極および一対の前記第1ソース・ドレイン領域を含むNチャネル型電界効果トランジスタを前記第1領域に形成する工程、
(f1)前記(e1)工程の後、前記第3絶縁膜および前記第1サイドウォールを除去することで、前記第1ゲート電極の上面を露出させる工程、
(g1)前記(f1)工程の後、前記第1ゲート電極の側壁を覆うように、第2サイドウォールを形成する工程、
(h1)前記(g1)工程の後、前記第1ゲート電極および一対の前記第1エピタキシャル層のそれぞれの上に複数のシリサイド層を形成する工程、
を有する、半導体装置の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なときを除き、同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0013】
また、本願では、半導体基板と、その上に順に積層したBOX膜および半導体層を含む基板をSOI基板と呼ぶ。また、BOX膜上の当該半導体層を、SOI層と呼ぶ場合がある。また、Nチャネル型MOSFET、およびPチャネル型MOSFETを、それぞれ単にNMOS、およびPMOSと呼ぶ場合がある。
【0014】
本実施の形態では、SOI基板上にCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)を形成する場合において、NMOSのゲート電極をP型の半導体膜により構成し、かつ、高誘電率膜を含むゲート絶縁膜を形成することで、MOSFET(MOS型電界効果トランジスタ)の性能を向上させることについて説明する。
【0015】
以下では、本実施の形態におけるSOI基板上のCMOSの構造を、
図1を用いて説明する。
図1は、本実施の形態の半導体装置を構成するCMOSの断面図である。
図1では、図の左側にNMOS領域(第1領域)1Aを示し、図の右側にPMOS領域(第2領域)1Bを示している。NMOS領域1AおよびPMOS領域1BはSOI基板の主面に沿って並ぶ2つの領域である。
【0016】
図1に示すように、本実施の形態の半導体装置は、支持基板である半導体基板SB、半導体基板SB上のBOX膜BX、およびBOX膜BX上の半導体層であるSOI層SLからなるSOI基板を有している。半導体基板SBは、例えば500μm〜700μm程度の厚さを有し、例えば750Ωcm以上の高い抵抗を有する単結晶シリコン基板である。
【0017】
BOX膜BXは、例えば酸化シリコン膜からなり、その膜厚は5〜100nmである。ここでは、BOX膜BXの膜厚は50nmである。SOI層SLは、単結晶シリコンからなる半導体層であり、その膜厚は3〜15nmである。ここでは、SOI層SLの膜厚は15nmである。半導体基板SBは、グランド電位に接続されていてもよい。なお、半導体基板SBには、NMOSQ1のソース電極またはPMOSQ2のソース電極とは別の電位が供給される。
【0018】
SOI基板上のNMOS領域1AにはNMOSQ1が形成されており、PMOS領域1BにはPMOSQ2が形成されている。NMOS領域1AとPMOS領域1Bとの境界のSOI基板の上面には溝が形成され、当該溝内には、NMOSQ1とPMOSQ2とを電気的に分離する素子分離領域STIが形成されている。NMOSQ1は、SOI層SL上にゲート絶縁膜GFを介して形成されたゲート電極G1を有している。ゲート絶縁膜GFは、SOI層SL上に順に積層された絶縁膜IFおよび高誘電率膜HKからなる。ゲート電極G1の両側の側壁のそれぞれは、オフセットスペーサOFを介して形成されたサイドウォールSWにより覆われている。
【0019】
絶縁膜IFは、例えば酸窒化シリコン(SiON)膜からなる。高誘電率膜HKは、酸化シリコン(SiO
2)膜および酸窒化シリコン膜よりも高い誘電率を有する絶縁膜であり、例えばHfO
2、HfONまたはHFSiONなどの誘電率の高い材料を含むhigh−k膜である。高誘電率膜HKの表面の単位面積当たりのHf(ハフニウム)の濃度は、例えば1×10
13〜5×10
14/cm
2である。ただし、高誘電率膜HKを構成する材料は、Hf(ハフニウム)およびAl(アルミニウム)の化合物ではない。
【0020】
ゲート電極G1は例えばポリシリコン(Si)膜からなるP型の半導体膜により構成されている。つまり、ゲート電極G1には、P型の不純物(例えばB(ホウ素))が導入されている。SOI基板の主面に対して垂直な方向におけるゲート電極G1の高さ、つまり、ゲート電極G1の膜厚は150nm以下である。ここでは、ゲート電極G1の高さは例えば100nmである。
【0021】
オフセットスペーサOFはゲート絶縁膜GFおよびゲート電極G1の側壁に接しており、例えば窒化シリコン(Si
3N
4)膜からなる。素子分離領域STIは、例えばSTI(Shallow Trench Isolation)構造を有し、例えば主に酸化シリコン膜により構成されている。素子分離領域STIはSOI層SLの上面から半導体基板SBの途中深さまで達している。なお、素子分離領域STIのSOI層SLの上面からの形成深さは、BOX膜BXの上面までであってもよい。
【0022】
サイドウォールSWはゲート電極G1の横に自己整合的に形成された絶縁膜であり、例えば酸化シリコン膜O1と、その上の窒化シリコン膜N2との積層膜により構成されている。つまり、サイドウォールSWを構成する酸化シリコン膜O1は、オフセットスペーサOFの側壁とSOI層SLの上面とのそれぞれに接して延在している。つまり、酸化シリコン膜O1は、オフセットスペーサOFの側壁に沿う部分と、SOI層SLの上面に沿う部分とが一体となった膜であり、L字型の断面を有する膜である。酸化シリコン膜O1の膜厚は例えば5nmであり、SOI基板の上面に沿う方向、つまり横方向における窒化シリコン膜N2の膜厚は例えば40nmである。つまり、横方向におけるサイドウォールSWの厚さは例えば45nmである。
【0023】
ゲート電極G1の直下のSOI層SL、つまりシリコン層は、NMOSQ1の駆動時に電流が流れるチャネル領域を含むチャネル層である。当該チャネル領域を挟むように、ゲート電極G1の横のSOI層SL内には一対のソース・ドレイン領域が形成されている。一対のソース・ドレイン領域のそれぞれは、N型の半導体領域であり比較的不純物濃度が低いエクステンション領域EX1と、N型の半導体領域でありエクステンション領域EX1よりも不純物濃度が高い拡散領域D1とを有している。このようにソース・ドレイン領域は、高濃度および低濃度の不純物拡散領域を含むLDD(Lightly Doped Drain)構造を有している。
【0024】
エクステンション領域EX1および拡散領域D1にはN型、つまり第2導電型の不純物(例えばP(リン)またはAs(ヒ素))が打ち込まれている。エクステンション領域EX1は拡散領域D1よりも上記チャネル領域に近い位置に形成されている。つまり、エクステンション領域EX1の形成位置は、拡散領域D1の形成位置よりもゲート電極G1に近い。ゲート電極G1の下において、対向するエクステンション領域EX1の相互間に挟まれた領域のSOI層SL内には、N型またはP型の不純物は殆ど導入されてない。すなわち、SOI層SLは真性半導体層である。SOI層SL内にP型の不純物が導入されていたとしても、その不純物濃度は、1×10
17/cm
3以下である。
【0025】
なお、
図1ではエクステンション領域EX1がSOI層SLの上面から下面まで達して形成されている。つまり、
図1に示すNMOSQ1およびPMOSQ2のそれぞれは、完全空乏型のMOSFETである。これに対し、エクステンション領域EX1の形成深さは、SOI層SLの途中深さまでであってもよい。同様に、
図1では拡散領域D1がSOI層SLの下面まで達して形成されているが、拡散領域D1の形成深さは、SOI層SLの途中深さまでであってもよい。
【0026】
ゲート絶縁膜GF、ゲート電極G1、オフセットスペーサOF、サイドウォールSWおよび素子分離領域STIから露出するSOI層SL上には、エピタキシャル成長法により積上げられたエピタキシャル層EPが、ゲート電極G1を挟んで一対形成されている。エピタキシャル層EP内にも、高濃度のN型不純物が打ち込まれて拡散領域D1が形成されている。また、エピタキシャル層EPの上面およびゲート電極G1の上面にはシリサイド層S1が形成されている。シリサイド層S1は例えばCoSi(コバルトシリサイド)からなる。
【0027】
つまり、エピタキシャル層EPはNMOSQ1のソース・ドレイン領域を構成している。エピタキシャル層EPを形成している目的は、例えばソース・ドレイン領域の上面にシリサイド層S1を形成する際に、薄いSOI層SLの全膜厚がシリサイド化されることを防ぐことにある。SOI基板の上面に対して垂直な方向における、SOI層SLの上面からエピタキシャル層EPの上面までの距離、つまりエピタキシャル層EPの高さは、例えば20〜40nmである。
【0028】
NMOS領域1Aにおいて、高誘電率膜HKを含むゲート絶縁膜GFと、ゲート電極と、上記ソース・ドレイン領域と、チャンネル領域となるSOI層SLとは、Nチャネル型のMOSFET、つまりNMOSQ1を構成している。
【0029】
また、PMOS領域1Bに形成されたPチャネル型のMOSFET、つまりPMOSQ2も、上記NMOSQ1とほぼ同様の構造を有している。ただし、PMOSQ2はN型とは異なるP型のMOSFETであるから、そのソース・ドレイン領域はP型、つまり第1導電型の半導体領域により構成されている。
【0030】
つまり、PMOS領域1Bにおいては、真性半導体層であるSOI層SL上に、高誘電率膜HKを含むゲート絶縁膜GFが形成されており、ゲート絶縁膜GF上には、P型の不純物(例えばB(ホウ素))が導入された半導体膜であるゲート電極G2が形成されている。ゲート電極G2の膜厚は150nm以下であり、ゲート電極G2は、例えば100nmの膜厚を有している。
【0031】
ゲート電極G2の両側のそれぞれには、順にオフセットスペーサOFおよびサイドウォールSWが形成されている。また、ゲート電極G2の下のSOI層SL内には、ゲート電極G2の直下のSOI層SL内の領域、つまりチャネル領域を挟むように、一対のP型の半導体領域であるエクステンション領域EX2が形成されている。また、PMOS領域1Bにおいて、ゲート絶縁膜GF、オフセットスペーサOF、サイドウォールSWおよび素子分離領域STIから露出するSOI層SL上にはエピタキシャル層EPが、ゲート電極G2を挟んで一対形成されている。エピタキシャル層EP内およびその直下のSOI層SL内には、P型の半導体領域である拡散領域D2が形成されている。
【0032】
つまり、PMOSQ2は一対のエクステンション領域EX2と、P型の不純物濃度がエクステンション領域EX2より大きい一対の拡散領域D2とを含むLDD構造を有している。なお、拡散領域D1、D2は、エピタキシャル層EP内のみに形成され、その直下のSOI層SL内に形成されていなくてもよい。また、エピタキシャル層EPの上面およびゲート電極G2の上面には、シリサイド層S1が形成されている。
【0033】
上記のように、NMOSQ1とPMOSQ2とは、ゲート絶縁膜GF内に高誘電率膜HKを含んでいる点を含めて、同じ形状を有している。また、ゲート電極G1、G2のそれぞれは、同じくP型の半導体膜からなる。つまり、エピタキシャル層EPおよび拡散領域D1にN型不純物が導入され、エピタキシャル層EPおよび拡散領域D2にP型不純物が導入されている点で、PMOSQ2はNMOSQ1と相違する。
【0034】
NMOSQ1およびPMOSQ2を覆うように、SOI基板上には、層間絶縁膜CLが形成されている。また、層間絶縁膜CLを貫通するように、複数のコンタクトホールが形成され、当該複数のコンタクトホールのそれぞれの内側には、コンタクトプラグCPが埋め込まれている。層間絶縁膜CLは例えば酸化シリコン膜からなり、その上面はコンタクトプラグCPの上面と同じ高さにおいて平坦化されている。
【0035】
コンタクトプラグCPは柱状の導体膜であり、例えば、コンタクトホール内の側壁および底面を覆うバリア導体膜と、コンタクトホール内に当該バリア導体膜を介して形成され、コンタクトホールを完全に埋め込む主導体膜とからなる。バリア導体膜は例えばTi(チタン)またはTiN(窒化チタン)を含み、主導体膜は例えばW(タングステン)からなる。
図1では、コンタクトプラグCPを構成するバリア導体膜と主導体膜とを区別して示していない。
図1に示すように、コンタクトプラグCPはいずれもシリサイド層S1を介して各MOSFETのソース・ドレイン領域に接続されている。なお、図示していない領域において、ゲート電極G1、G2のそれぞれの上面にも、シリサイド層S1を介して他のコンタクトプラグが接続されている。
【0036】
層間絶縁膜CLおよびコンタクトプラグCPの上には、例えばSiOCからなる層間絶縁膜ILが形成されている。層間絶縁膜ILには、複数のコンタクトプラグCPのそれぞれの上面を露出する複数の配線溝が形成されており、各配線溝内には配線M1が形成されている。配線M1は例えば配線溝内の側壁および底面を覆うバリア導体膜と、配線溝内に当該バリア導体膜を介して形成され、配線溝を完全に埋め込む主導体膜とからなる。このバリア導体膜は例えばTa(タンタル)またはTaN(窒化タンタル)を含み、主導体膜は例えばCu(銅)からなる。配線M1はコンタクトプラグCPに接続されている。
図1では、配線M1を構成するバリア導体膜と主導体膜とを区別して示していない。配線M1の上面と層間絶縁膜ILの上面とは同じ高さで平坦化されている。
【0037】
ここで、本実施の形態の半導体装置の特徴は、主に、NMOSQ1およびPMOSQ2のそれぞれのゲート電極G1、G2がともにP型の半導体膜からなること、NMOSQ1およびPMOSQ2のそれぞれのゲート絶縁膜GFが高誘電率膜HKを含むこと、および、NMOSQ1およびPMOSQ2のそれぞれのチャネル領域を構成するSOI層SLが真性半導体層であることにある。
【0038】
以下では、
図16に示す比較例の半導体装置と比較して、本実施の形態の半導体装置の効果について説明する。
図16は、比較例として示す半導体装置であるCMOSの断面図である。
【0039】
図16に示すように、比較例の半導体装置であるCMOSは、
図1に示す本実施の形態の半導体装置と似た構造を有する。つまり、当該CMOSはSOI基板上のNMOS領域1Aに形成されたNMOSQ3と、PMOS領域1Bに形成されたPMOSQ4とからなる。ただし、比較例の半導体装置は、NMOSQ3のゲート電極GNが、N型の不純物(例えばP(リン)またはAs(ヒ素))を含むN型の半導体膜により構成されている点と、NMOSQ3およびPMOSQ4のそれぞれのゲート絶縁膜GFSとが高誘電率膜HKを含んでいない点とにおいて、本実施の形態の半導体装置と差異がある。
【0040】
つまり、比較例のNMOSQ3のゲート電極GNは、NMOSQ3のソース・ドレイン領域と同じ導電型を有するN型のポリシリコン膜からなる。また、ゲート絶縁膜GFSは、酸窒化シリコン(SiON)膜により構成されている。なお、比較例のPMOSQ4のゲート電極GPは、P型のポリシリコン膜からなる。ここでNMOSQ3のゲート電極GNがNMOSQ3のソース・ドレイン領域と同じ導電型を有しているのは、NMOSQ3の製造中の当該ソース・ドレイン領域の形成工程においてイオン注入を行う際に、ゲート電極GNにもN型不純物が導入されたためである。
【0041】
ここで、BOX膜を含まないシリコン基板、つまりバルクシリコン基板上にMOSFETを形成する場合において、MOSFETの微細化を進めると、短チャネル特性が悪化し、パンチスルーが起こる問題がある。この場合、ソース領域とドレイン領域との間の空乏層が繋がることで、ソース領域とドレイン領域との間は導通状態となり、NMOSはスイッチング素子としての機能を果たさなくなる。これに対し、上記比較例の半導体装置は、SOI基板上にMOSFETを形成することで、MOSFETの微細化を実現し、かつ、パンチスルーを防ぎ、短チャネル特性を改善することを可能としている。
【0042】
ただし、比較例のSOI基板上に形成したCMOSを構成するNMOSQ3には、MOSFETのオフ状態において、ソース領域とドレイン領域との間のリーク電流、つまりオフリーク電流が流れやすい問題がある。これに対しては、NMOSのゲート電極を、P型の半導体膜により構成することで、ゲート電極の仕事関数を増大させることが考えられる。これにより、NMOSのしきい値電圧が上昇するため、オフリーク電流の発生を防ぐことが考えられる。これは、NMOSにおいてゲート電極の仕事関数が大きくなると、NMOSのしきい値電圧が大きくなり、オフ状態においてNMOSのソース領域とドレイン領域との間で電流が流れにくくなるためである。
【0043】
しかし、上記のようにNMOSのゲート電極がP型半導体膜からなる場合は、NMOSのゲート電極がN型半導体膜からなる場合に比べて、NMOSのしきい値電圧が約1V程度上昇する。このように過度にしきい値電圧が上がると、NMOSを駆動するために高い電源電圧が必要になるため、半導体装置の消費電力が増大する。これを解決するために、NMOSのチャネル領域にN型不純物を導入してしきい値電圧を適正な値に調整することも考えられるが、このようにチャネル領域に不純物を導入すると、複数の素子同士の間において、素子の性能のばらつきが増大する。このため、MOSFETが正常に動作しなくなる問題が生じる。
【0044】
また、CMOSにおいては、ソース領域とドレイン領域との間のオフリーク電流の発生を防ぐため、NMOSのみならずPMOSについても、高いしきい値電圧を得ることが必要となる。
【0045】
そこで、本実施の形態の半導体装置では、
図1に示すように、SOI基板上のNMOSQ1のゲート電極G1をP型の半導体膜により構成し、かつ、ゲート絶縁膜GFの一部として高誘電率膜HKを設けており、また、チャネル領域を真性半導体により構成している。したがって、SOI基板上のNMOSQ1のゲート電極G1をP型の半導体膜により構成することで、ゲート電極G1の仕事関数を増大し、ゲート電極G1、G2のそれぞれの仕事関数は同じになる。このようにして、ゲート電極G1の仕事関数を大きくすることで、NMOSQ1のしきい値電圧が上昇するため、オフリーク電流の発生を防ぐことが可能となる。
【0046】
また、NMOSQ1およびPMOSQ2のそれぞれのゲート絶縁膜GF内に高誘電率膜HKを設けている。これにより、P型のゲート電極であるNMOSQ1のゲート電極G1およびPMOSQ2のゲート電極G2のそれぞれの仕事関数は小さくなる。NMOSのしきい値電圧は、NMOSのゲート電極の仕事関数が低下することで小さくなる特性を有し、PMOSのしきい値電圧は、PMOSのゲート電極の仕事関数が低下することで大きくなる特性を有している。したがって、各MOSFETに高誘電率膜HKを設けることにより、NMOSQ1のしきい値電圧を小さくし、PMOSQ2のしきい値電圧を大きくすることができる。
【0047】
具体的には、高誘電率膜HKを設けることで、P型のゲート電極G1、G2のそれぞれの仕事関数は0.3V程度小さくなる。上記比較例のように、P型のゲート電極を有し、高誘電率膜を備えないPMOSQ4では、しきい値電圧が0.2V程度であり、オフリーク電流の発生を防ぐことが困難であるが、
図1に示す本実施の形態の半導体装置のように、高誘電率膜HKを設けることで、チャネル領域に不純物を導入することなく、PMOSQ2のしきい値電圧を0.5V程度に大きくすることができる。これにより、NMOSQ1およびPMOSQ2について、適正なしきい値電圧を得ることができる。
【0048】
すなわち、PMOSQ2においては、高誘電率膜HKを形成することでPMOSQ2のしきい値電圧を大きくし、これによりオフリーク電流の発生を防ぐことができる。また、NMOSQ1においては高誘電率膜HKを形成することで、NMOSQ1のしきい値電圧を適切な値に下げることができる。したがって、NMOSQ1のしきい値電圧の過度な増大に起因して、半導体装置の消費電力が増大することを防ぐことができる。
【0049】
つまり、NMOSQ1のゲート電極G1をP型半導体膜により形成すると、ゲート電極G1の仕事関数が大きくなる結果、NMOSQ1のしきい値電圧が過度に大きくなる虞があるが、上記のように高誘電率膜HKを設けることで、NMOSQ1のしきい値電圧を適度に低減することができる。
【0050】
よって、NMOSQ1の仕事関数が過度に大きくなることに起因してNMOSQ1のしきい値電圧が増大することを抑制する目的で、SOI基板上のNMOSQ1のチャネル領域に、例えばP型の不純物(例えばB(ホウ素))を導入する必要がない。このため、NMOSQ1のチャネル領域が形成されるSOI層SL内に不純物を導入することに起因して、複数の素子同士の間で性能のばらつきが生じることを防ぐことができる。また、ここではSOI基板上にCMOSを設けているため、チャネル領域に不純物を導入することなく短チャネル特性の抑制が可能である。
【0051】
ここで、本発明者は、PMOSQ2のゲート絶縁膜GFの一部として形成する高誘電率膜HKの材料にHf(ハフニウム)およびAl(アルミニウム)の化合物を用いた場合、P型のゲート電極G2の仕事関数が大きくなることを見出した。ゲート電極G2の仕事関数が大きくなる場合、PMOSQ2のしきい値電圧は低下する。したがって、PMOSQ2の高誘電率膜HKの材料にHf(ハフニウム)およびAl(アルミニウム)の化合物を用いることは、PMOSQ2のしきい値電圧を高める観点から好ましくない。
【0052】
また、ゲート電極G1の仕事関数を大きくし、かつ、ゲート電極G2の仕事関数を小さくする観点から、各ゲート電極の下の高誘電率膜HKを構成するHf(ハフニウム)の濃度は高い方が好ましい。本発明者は、実験により、高誘電率膜HKの表面の単位面積当たりのHf(ハフニウム)の濃度が1×10
13以上であれば、P型半導体膜からなるゲート電極の仕事関数を小さくできることを見出した。
【0053】
次に、本実施の形態の半導体装置の製造方法について、
図2〜
図15を用いて説明する。
図2〜
図15は本実施の形態の半導体装置の製造方法を示す断面図であり、
図1と同じ位置の断面を示すものである。
図2〜
図15では、図の左側にNMOS領域(第1領域)1Aを示し、図の右側にPMOS領域(第2領域)1Bを示している。NMOS領域1AおよびPMOS領域1BはSOI基板の主面に沿って並ぶ2つの領域である。NMOS領域1AはNチャネル型のMOSFETを形成する領域であり、PMOS領域1BはPチャネル型のMOSFETを形成する領域である。
【0054】
まず、
図2に示すように、上方にBOX膜BXおよびSOI層SLが順に積層された半導体基板SBを準備する。半導体基板SBはSi(シリコン)からなる支持基板であり、半導体基板SB上のBOX膜BXは酸化シリコン膜であり、BOX膜BX上のSOI層SLは単結晶シリコンからなる層である。BOX膜BXの膜厚は5〜100nmである。ここでは、BOX膜BXの膜厚は例えば50nmである。SOI層SLは、P型またはN型の不純物が殆ど導入されていない真性半導体層である。SOI層SL内にP型の不純物が導入されていたとしても、その不純物濃度は、1×10
17/cm
3以下である。SOI層SLの膜厚は、3〜15nmである。ここでは、SOI層SLの膜厚は15nmである。
【0055】
半導体基板SB、BOX膜BXおよびSOI層SLからなるSOI基板はSIMOX(Silicon Implanted Oxide)法で形成することができる。つまり、Si(シリコン)からなる半導体基板SBの主面に高いエネルギーでO
2(酸素)をイオン注入し、その後の熱処理でSi(シリコン)と酸素とを結合させ、半導体基板の表面よりも少し深い位置に埋込み酸化膜(BOX膜)を形成することで、SOI基板を形成することができる。また、SOI基板は、表面に酸化膜を形成した半導体基板SBと、もう1枚のSi(シリコン)からなる半導体基板とを高熱および圧力を加えることで接着して貼り合わせた後、片側のシリコン層を研磨して薄膜化することで形成することもできる。
【0056】
次に、
図3に示すように、周知の方法を用いて素子分離領域STIを形成する。素子分離領域STIは、SOI基板の上面を開口する溝であって、BOX膜BXの上面または半導体基板SBの途中深さまで達する溝内に埋め込まれた絶縁膜からなる。素子分離領域STIは、例えばSTI構造を有し、主に酸化シリコン(SiO
2)膜により構成される。素子分離領域STIは、NMOS領域1AおよびPMOS領域1Bの境界においてSOI基板の上面に形成されている。
【0057】
続いて、フォトリソグラフィ技術を用い、NMOS領域1Aの半導体基板SBにP型の不純物(例えばB(ホウ素))をイオン注入法により比較的低い濃度で打ち込むことで、半導体基板SBの上面から半導体基板SBの比較的深い領域に亘ってPウエル(図示しない)を形成する。ここでは、PMOS領域1Bの半導体基板SB内にはPウエルを形成しない。続いて、フォトリソグラフィ技術を用い、PMOS領域1Bの半導体基板SB内にN型の不純物(例えばP(リン)またはAs(ヒ素))を低濃度で打ち込むことで、Nウエル(図示しない)を形成する。上記のPウエルおよびNウエルの形成工程では、SOI層SLに極力不純物が導入されないようにイオン注入を行う。
【0058】
続いて、SOI層SL上に例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法などを用いて、酸窒化シリコン(SiON)膜からなる絶縁膜IFを形成する。その後、前記絶縁膜IF上に、CVD法などを用いて、高誘電率膜HKおよびポリシリコン膜PSを順次形成する。高誘電率膜HKは、酸化シリコン(SiO
2)膜および酸窒化シリコン膜よりも高い誘電率を有する絶縁膜であり、例えばHfO
2、HfONまたはHFSiONなどの誘電率の高い材料を含むhigh−k膜である。高誘電率膜HKの表面の単位面積当たりのHf(ハフニウム)の濃度は、例えば1×10
13〜5×10
14/cm
2である。ただし、高誘電率膜HKを構成する材料は、Hf(ハフニウム)およびAl(アルミニウム)の化合物ではない。これは、上述したように、PMOSのゲート電極の仕事関数を小さくするためである。
【0059】
ポリシリコン膜PSの膜厚は150nm以下である。ここでは、ポリシリコン膜PSの膜厚は例えば100nmである。ポリシリコン膜PSは、成膜時に既に結晶質を有していてもよく、または、成膜時にはアモルファスシリコン膜であったものを、成膜後(イオン注入後)の熱処理により結晶化して形成してもよい。
【0060】
次に、
図4に示すように、例えばイオン注入法を用いて、NMOS領域1AおよびPMOS領域1Bの両方のポリシリコン膜PSに対しP型の不純物(例えばB(ホウ素))を比較的高い濃度で打ち込む。これにより、ポリシリコン膜PSをP型の半導体膜にする。また、上記イオン注入工程を行わず、
図3を用いて説明した成膜工程において、ポリシリコン膜PSの成膜時にポリシリコン膜PS内にP型の不純物(例えばB(ホウ素))を導入してもよい。
【0061】
次に、
図5に示すように、ポリシリコン膜PS上に例えばCVD法を用いて絶縁膜HMを形成する。絶縁膜HMは例えば窒化シリコン(Si
3N
4)膜からなる。絶縁膜HMの膜厚は例えば40nmである。
【0062】
次に、
図6に示すように、フォトリソグラフィ技術およびドライエッチング法を用いて絶縁膜HMをパターニングする。続いて、絶縁膜HMをハードマスクとして用い、ドライエッチング法によりポリシリコン膜PS、高誘電率膜HKおよび絶縁膜IFをパターニングする。これにより、NMOS領域1AのSOI層SL上に、高誘電率膜HKおよび絶縁膜IFからなるゲート絶縁膜GFを形成し、当該ゲート絶縁膜GF上にポリシリコン膜PSからなるゲート電極G1を形成する。また、絶縁膜HMをハードマスクとして用いた上記パターニング工程により、PMOS領域1BのSOI層SL上に、高誘電率膜HKおよび絶縁膜IFからなるゲート絶縁膜GFを形成し、当該ゲート絶縁膜GF上にポリシリコン膜PSからなるゲート電極G2を形成する。
【0063】
次に、
図7に示すように、ゲート電極G1、G2のそれぞれの側壁を覆う薄い絶縁膜からなるオフセットスペーサOFを形成する。オフセットスペーサOFは、例えば窒化シリコン(Si
3N
4)膜からなる。ここでは、例えばCVD法を用いてSOI基板上に窒化シリコン膜を堆積した後、ドライエッチング法を用いて当該窒化シリコン膜の一部を除去し、SOI層SLの上面を露出させることで、ゲート電極G1、G2のそれぞれの両側の側壁に接する当該窒化シリコン膜からなるオフセットスペーサOFを形成する。
【0064】
続いて、フォトリソグラフィ技術を用いて、NMOS領域1Aを露出し、PMOS領域1Bを覆うフォトレジスト膜PR1を形成する。つまりフォトレジスト膜PR1はPMOS領域1BのSOI層SLの上面を覆っている。
【0065】
その後、フォトレジスト膜PR1と、NMOS領域1AのオフセットスペーサOFおよび絶縁膜HMとをマスクとして用い、イオン注入法を用いてN型の不純物(例えばP(リン)またはAs(ヒ素))を比較的低い濃度でSOI層SLに打ち込む。これにより、ゲート電極G1およびゲート絶縁膜GFの横に露出しているSOI層SLの上面にエクステンション領域EX1を形成する。エクステンション領域EX1はゲート電極G1の直下のSOI層SLの上面の一部には形成されない。エクステンション領域EX1は、SOI層SLの下面に達していても達していなくてもよい。
【0066】
次に、
図8に示すように、フォトレジスト膜PR1を除去した後、SOI層SLの上面、絶縁膜HM、オフセットスペーサOF、ゲート電極G1、G2を覆うように、例えばCVD法を用いて、酸化シリコン膜O1および窒化シリコン膜N1を順に堆積して積層膜を形成する。その後、RIE(Reactive Ion Etching)法などにより異方性エッチングを行うことで酸化シリコン膜O1および窒化シリコン膜N1からなる当該積層膜を一部除去し、SOI層SLの上面および絶縁膜HMの上面を露出させる。これにより、ゲート電極G1、G2のそれぞれの側壁には、オフセットスペーサOFを介して、酸化シリコン膜O1および窒化シリコン膜N1からなるサイドウォールDSWが自己整合的に形成される。
【0067】
ここで、窒化シリコン膜N1は、後の工程でゲート電極から離間した位置にエピタキシャル層、つまり選択成長層を形成するために用いられるダミーのサイドウォールを構成する絶縁膜である。酸化シリコン膜O1は、後の工程で窒化シリコン膜N1を除去する際のエッチングストッパ膜としての役割を有する。なお、酸化シリコン膜O1の膜厚は5nmであり、窒化シリコン膜N1の膜厚は40nmである。
【0068】
次に、
図9に示すように、ゲート絶縁膜GF、オフセットスペーサOFおよびサイドウォールDSWから露出しているSOI層SLの上面に、エピタキシャル成長法を用いて、主にSi(シリコン)からなるエピタキシャル層EPを形成する。これにより、ゲート電極G1、G2のそれぞれの横の領域には、SOI層SLよりも上面の高さが高いシリコン層であるエピタキシャル層EPが形成される。エピタキシャル層EPは、不純物を含まない半導体層である。
【0069】
この工程において、NMOS領域1Aでは、ゲート電極G1を挟むように、ゲート電極G1の両側の側壁から離間した位置において、SOI層SL上に20〜40nmの膜厚で一対のエピタキシャル層EPが形成される。また、PMOS領域1Bでは、ゲート電極G2を挟むように、ゲート電極G2の両側の側壁から離間した位置において、SOI層SL上に20〜40nmの膜厚で一対のエピタキシャル層EPが形成される。
【0070】
なお、ゲート電極G1の横にエピタキシャル層EPを形成するのは、SOI層SLの膜厚が極端に薄いことに起因している。つまり、エピタキシャル層EPを形成する理由の一つは、シリサイド層を形成する際に、ソース・ドレイン領域を構成するSOI層SLの膜厚を補う必要があることにある。当該エピタキシャル成長工程において、絶縁膜HMは、ゲート電極G1、G2のそれぞれの上部にエピタキシャル層が形成されることを防ぐ役割を有する。
【0071】
次に、
図10に示すように、フォトリソグラフィ技術を用いて、NMOS領域1Aを露出し、PMOS領域1Bを覆うフォトレジスト膜PR2を形成する。つまりフォトレジスト膜PR2はPMOS領域1Bのエピタキシャル層EPを覆っている。
【0072】
その後、フォトレジスト膜PR2と、NMOS領域1AのオフセットスペーサOF、絶縁膜HMおよびサイドウォールDSWとをマスクとして用い、イオン注入法を用いてN型の不純物(例えばP(リン)またはAs(ヒ素))を比較的高い濃度で、SOI層SLの上方からSOI層SLに向かって打ち込む。これにより、ゲート電極G1の横に露出しているエピタキシャル層EP内および当該エピタキシャル層EPの直下のSOI層SL内に拡散領域D1を形成する。なお、拡散領域D1はエピタキシャル層EP内のみに形成され、その直下のSOI層SL内に形成されていなくてもよい。
【0073】
エクステンション領域EX1および拡散領域D1はソース・ドレイン領域を構成する半導体領域である。前記ソース・ドレイン領域は、不純物が高濃度で導入された拡散領域D1とゲート電極G1の直下のチャネル領域となるSOI層SLとの間に、低濃度の不純物を含むエクステンション領域EX1が設けられたLDD構造を有している。つまり、拡散領域D1の不純物濃度は、エクステンション領域EX1の不純物濃度よりも高い。このとき、ゲート電極G1の上面は絶縁膜HMにより覆われているため、上記イオン注入工程によりゲート電極G1にN型不純物は導入されない。よって、ゲート電極G1はP型の半導体膜のままである。
【0074】
以上により、ゲート電極G1と、エクステンション領域EX1および拡散領域D1からなるソース・ドレイン領域とを含むNチャネル型のMOSFETであるNMOSQ1をNMOS領域1Aに形成する。
【0075】
次に、
図11に示すようにフォトレジスト膜PR2を除去した後、NMOS領域1AおよびPMOS領域1Bにおいて露出している窒化シリコン膜を除去する。すなわち、サイドウォールDSWを構成する窒化シリコン膜N1と、ゲート電極G1、G2の上面よりも上に形成されたオフセットスペーサOFおよび絶縁膜HMを除去する。これにより、酸化シリコン膜O1が露出し、また、ゲート電極G1、G2のそれぞれの上面が露出する。なお、ここではエクステンション領域EX1を、窒化シリコン膜N1の除去前に形成する製造方法について説明するが、エクステンション領域EX1は窒化シリコン膜N1の除去後に形成しても構わない。
【0076】
続いて、フォトリソグラフィ技術を用いて、PMOS領域1Bを露出し、NMOS領域1Aを覆うフォトレジスト膜PR3を形成する。
【0077】
その後、フォトレジスト膜PR3と、PMOS領域1BのオフセットスペーサOFおよびゲート電極G2とをマスクとして用い、イオン注入法を用いてP型の不純物(例えばB(ホウ素))を比較的高い濃度でSOI層SLに打ち込む。これにより、ゲート電極G2およびゲート絶縁膜GFの横のSOI層SLの上面にエクステンション領域EX2を形成する。エクステンション領域EX2はゲート電極G2の直下のSOI層SLの上面の一部には形成されない。エクステンション領域EX2は、SOI層SLの下面に達していても達していなくてもよい。
【0078】
この工程では、打ち込まれたP型不純物イオンは、酸化シリコン膜O1を貫通してSOI層SL内に達する。ここでは、エピタキシャル層EP内にも当該不純物が導入されるが、それによりエピタキシャル層EP内に形成されるP型半導体領域の図示は省略している。
【0079】
次に、
図12に示すように、フォトレジスト膜PR3を除去した後、例えばCVD法を用いて、ゲート電極G1、G2、酸化シリコン膜O1およびエピタキシャル層EPのそれぞれを覆うように、窒化シリコン膜N2を形成する。その後、RIE法などにより異方性エッチングを行うことで窒化シリコン膜N2を一部除去し、ゲート電極G1、G2およびエピタキシャル層EPのそれぞれの上面を露出させる。これにより、ゲート電極G1の両側の側壁およびゲート電極G2の両側の側壁には、オフセットスペーサOFおよび酸化シリコン膜O1を介して、窒化シリコン膜N2が自己整合的に形成される。よって、オフセットスペーサOFの側壁に接して、酸化シリコン膜O1および窒化シリコン膜N2からなるサイドウォールSWが形成される。
【0080】
続いて、フォトリソグラフィ技術を用いて、PMOS領域1Bを露出し、NMOS領域1Aを覆うフォトレジスト膜PR4を形成する。
【0081】
その後、フォトレジスト膜PR4と、PMOS領域1BのオフセットスペーサOF、ゲート電極G2およびサイドウォールSWとをマスクとして用い、イオン注入法を用いてP型の不純物(例えばB(ホウ素))を比較的高い濃度で、SOI層SLの上方からSOI層SLに向かって打ち込む。これにより、ゲート電極G2の横に露出しているエピタキシャル層EP内および当該エピタキシャル層EPの直下のSOI層SL内に拡散領域D2を形成する。なお、拡散領域D2はエピタキシャル層EP内のみに形成され、その直下のSOI層SL内に形成されていなくてもよい。
【0082】
拡散領域D2の形成工程は、上記のように絶縁膜HMの除去工程(
図11参照)の後であって、窒化シリコン膜N2を形成する工程、つまりサイドウォールSWのつけ直し工程(
図12参照)の後に行ってもよい。これに対し、拡散領域D2の形成工程は、エピタキシャル層EPの形成工程(
図9参照)の後であって、ハードマスクである絶縁膜HMの除去工程(
図11参照)の前に行ってもよい。PMOSのソース・ドレイン領域を形成するイオン注入工程において、ハードマスクに覆われていないゲート電極G2にP型不純物が導入されても問題ないためである。
【0083】
エクステンション領域EX2および拡散領域D2はソース・ドレイン領域を構成する半導体領域である。前記ソース・ドレイン領域は、不純物が高濃度で導入された拡散領域D2とゲート電極G2の直下のチャネル領域となるSOI層SLとの間に、低濃度の不純物を含むエクステンション領域EX2が設けられたLDD構造を有している。つまり、拡散領域D2の不純物濃度は、エクステンション領域EX2の不純物濃度よりも高い。このとき、ゲート電極G2の上面は露出しているため、上記イオン注入工程によりゲート電極G2にP型不純物が導入される。よって、ゲート電極G2はP型の半導体膜のままである。
【0084】
以上により、ゲート電極G2と、エクステンション領域EX2および拡散領域D2からなるソース・ドレイン領域とを含むPチャネル型のMOSFETであるPMOSQ2をPMOS領域1Bに形成する。
【0085】
次に、
図13に示すように、フォトレジスト膜PR4を除去した後、ゲート電極G1、G2およびエピタキシャル層EP上に、周知のサリサイド技術を用いてシリサイド層S1を形成する。シリサイド層S1は例えばCoSi(コバルトシリサイド)からなる。
【0086】
次に、
図14に示すように、ゲート電極G1、G2およびエピタキシャル層EP上に、例えばCVD法などを用いて層間絶縁膜CLを形成する。層間絶縁膜CLは、例えば酸化シリコン膜からなる。その後、層間絶縁膜CLの上面を例えばCMP(Chemical Mechanical Polishing)法などにより研磨して平坦化する。これにより、NMOSQ1およびPMOSQ2のそれぞれを層間絶縁膜CLにより覆う。
【0087】
続いて、フォトリソグラフィ技術およびドライエッチング法を用いて層間絶縁膜CLを開口することで、シリサイド層S1の上面を露出する複数のコンタクトホールを形成する。その後、例えばTi(チタン)またはTiN(窒化チタン)を含むバリア導体膜と、例えばW(タングステン)からなる主導体膜とを、例えばスパッタリング法を用いて順次形成することで、各コンタクトホールを完全に埋め込む。続いて、例えばCMP法によりバリア導体膜と主導体膜とを研磨して層間絶縁膜CLの上面を露出させることで、複数のコンタクトホールのそれぞれの内側に埋め込まれたバリア導体膜および主導体膜からなるコンタクトプラグCPを形成する。
【0088】
NMOSQ1の一対のソース・ドレイン領域を構成する拡散領域D1には、シリサイド層S1を介してコンタクトプラグCPが接続され、PMOSQ2の一対のソース・ドレイン領域を構成する拡散領域D2には、シリサイド層S1を介してコンタクトプラグCPが接続される。また、図示していない領域において、ゲート電極G1、G2のそれぞれの上面にも、シリサイド層S1を介して他のコンタクトプラグが接続される。
【0089】
次に、
図15に示すように、層間絶縁膜CL上に層間絶縁膜ILおよび配線M1を形成する。層間絶縁膜ILは例えばSiOCからなり、例えばCVD法により形成される。配線M1を形成する際には、まず層間絶縁膜ILをフォトリソグラフィ技術およびドライエッチング法を用いて開口することで、複数のコンタクトプラグCPの上面を露出する複数の配線溝を形成する。その後、例えばTa(タンタル)またはTaN(窒化タンタル)を含むバリア導体膜と、例えばCu(銅)からなる主導体膜とを、例えばスパッタリング法を用いて順次形成することで、各配線溝を完全に埋め込む。
【0090】
その後、例えばCMP法によりバリア導体膜と主導体膜とを研磨して層間絶縁膜ILの上面を露出させることで、複数の配線溝内に埋め込まれたバリア導体膜および主導体膜からなる配線M1を形成する。以上の工程により、NMOSQ1およびPMOSQ2を含むCMOSを有する本実施の形態の半導体装置が完成する。
【0091】
本実施の形態の半導体装置は、
図1および
図16を用いて説明したように、P型のゲート電極G1を有するNMOSQ1のゲート絶縁膜GF内に高誘電率膜HKを設けることで、SOI層SL内のチャネル領域に不純物を導入することなく、NMOSQ1のしきい値電圧の過度な増大を抑制し、適正なしきい値電圧を得ることを可能とするものである。
【0092】
ここで、
図16を用いて説明した比較例の半導体装置の製造工程においては、ゲート電極GN、GPを形成する加工工程で、
図6に示すように、ハードマスクとして絶縁膜HMを用いることが考えられる。しかし、このハードマスクはゲート電極G1、G2およびゲート絶縁膜GFSを加工すること、およびエピタキシャル層EPの形成工程において、ゲート電極GN、GPのそれぞれの上部にエピタキシャル層が形成されることを防ぐ目的で形成されているものである。このため、比較例の製造工程においては、当該ハードマスクはエピタキシャル層EPの形成工程、つまり
図9に対応する工程の直後に除去される。
【0093】
比較例ではその後、NMOSQ3のソース・ドレイン領域を構成する拡散領域D1を形成するためのイオン注入工程を行う。このとき、ゲート電極GNの上面は上記ハードマスクにより覆われていないため、ゲート電極GNにも当該イオン注入工程によりN型不純物が打ち込まれる。したがって、比較例のゲート電極GNはN型の半導体膜となる。
【0094】
MOSFETの微細化を進めた場合、ゲート電極GNの高さは低くなることが考えられる。特に、ゲート電極GNの高さが200nmよりも低くなると、ソース・ドレイン領域を形成するための上記イオン注入工程により、ゲート電極GN内の下部までN型不純物イオンが達しやすくなるため、上記比較例の製造方法では、ゲート電極GNの導電型をP型に保つことは困難となる。
【0095】
上記のような理由により、比較例のようにNMOSQ3のゲート電極GNがN型半導体膜により構成されている場合、NMOSQ3のしきい値電圧が低いため、オフリーク電流が流れやすい問題がある。これに対し、本実施の形態の半導体装置の製造方法では、
図9を用いて説明したエピタキシャル層EPの形成工程の後も、ハードマスクである絶縁膜HMを残し、その状態でNMOS領域1Aにおけるエクステンション領域EX1の形成工程(
図7参照)および拡散領域D1の形成工程(
図10参照)を行っている。これにより、絶縁膜HMに覆われたゲート電極G1の導電型をP型に保つことができるため、ゲート電極G1の仕事関数を増大させることができる。したがって、NMOSQ1のしきい値電圧が上昇するため、オフリーク電流の発生を防ぐことができる。
【0096】
また、ゲート絶縁膜GFの一部として高誘電率膜HKを設けているため、P型のゲート電極G1の仕事関数は、高誘電率膜HKを形成しない場合に比べて低下し、これによりNMOSQ1のしきい値電圧は低下する。これにより、NMOSのチャネル領域にN型不純物を導入することなく、NMOSQ1のしきい値電圧の過度な増大を防ぎ、NMOSQ1のしきい値電圧を適正な値に調整することができる。よって、NMOSのチャネル領域にN型不純物を導入することに起因して、複数の素子同士の間での素子の性能にばらつきが生じることを防ぎつつ、NMOSQ1のしきい値電圧を抑えてNMOSQ1の省電力化を可能としている。また、ここではSOI基板上にCMOSを設けているため、チャネル領域に不純物を導入することなく短チャネル特性の抑制が可能である。
【0097】
また、PMOSQ2においても、ゲート絶縁膜GF内に高誘電率膜HKを設けることで、ゲート電極G2の仕事関数を小さくしている。これにより、PMOSQ2はより高いしきい値電圧を得ることができるため、PMOSQ2におけるオフリーク電流の発生を防ぐことができる。
【0098】
また、本実施の形態の半導体装置の製造方法では、エクステンション領域EX1の形成工程(
図7参照)および拡散領域D1の形成工程(
図10参照)において、ゲート電極G1の上面を絶縁膜HMにより覆っている。このため、MOSFETの微細化が進み、ゲート電極G1の高さが200nmよりも低くなった場合であっても、ソース・ドレイン領域を形成するための上記イオン注入工程によりゲート電極G1にN型不純物が導入されることを防ぐことができる。したがって、ゲート電極G1の導電型をP型に保つことが容易となるため、NMOSQ1のしきい値電圧を高め、かつ、半導体装置を微細化することが可能となる。
【0099】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。