(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも2つの隣り合う前記コイルの一部を各々構成し、隣接しかつ並列する2つの前記表面導体の少なくとも一方は、前記長手方向に直交する方向に凸部または凹部を有する形状であることを特徴とする請求項1または2に記載のインダクタ部品。
前記ビア導体と前記表面導体を配置した後に、前記表面導体の一部を前記凸部または凹部を有する形状の導体もしくはIの字形状の導体のいずれかで置換することを特徴とする請求項9または10に記載のインダクタ部品の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の構成によれば、磁芯の表裏面を貫通するビアホールを設けた後に、コイルを構成するビア導体をビアホールに配し、その端部を磁芯の表裏面に夫々配した表面導体に接続してコイルを構成する。
【0006】
この構成を用いて、結合型平板インダクタを作製する場合、1次側コイルと2次側コイルの結合係数は、多くの場合、ビアホールに配されるビア導体の位置により決定される。しかしながら、ビアホールは磁芯に削孔して形成するものであり、削孔後の位置変更は量産に適さない。
【0007】
また、ビア導体の位置を変更した場合は、結合係数が大きく変わり、微調整には適さない。
【0008】
すなわち、従来の結合型平板インダクタでは、結合係数の調整が困難であるという問題があった。
【0009】
そこで本発明は、上記課題を解決したインダクタ部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述のインダクタ部品において、磁芯に直接形成されたコイルが発する磁束は、磁芯の内部を還流する。したがって、コイルを互いに磁気結合を有するよう複数設けることで、平板型結合インダクタが得られるが、コイル間の結合係数は、たとえばビア導体や表面導体といったコイルを構成する導体同士の距離や配置によって異なる。
【0011】
本発明は、位置の変更が困難なビア導体ではなく、磁芯の表裏面に配置されているために変更の自由度が比較的高い表面導体に着目してなされたものである。
【0012】
上記の課題を解決するために、本発明のインダクタ部品は、表面導体の形状を変更することで、実質的に、表面導体間の距離を変え、コイル間の結合係数を調整する構成とする。
【0013】
表面導体は、量産性を考慮すれば、板状で、いわゆるIの字形状、すなわち上面から見た形状が棒状、長楕円形、長円、長方形といった形状で、同じ大きさかつ同じ形状のものを用いるのが好ましいが、たとえば、その一部を他の形状の導体に替えることにより、表面導体間の距離を実質的に調整することができる。
【0014】
すなわち、異なるコイルを構成し、長手方向に略平行に隣接かつ並列して配置されている2つの表面導体の少なくとも一方を、表面導体の幅方向、つまり長手方向と直交する方向に、凸部または凹部を有する導体に替え、隣接するビア導体との接続点の間の距離よりも、表面導体のたとえば中央部近傍同士の距離が、近づくまたは遠ざかるように構成する。
【0015】
たとえば、並列する表面導体の双方がIの字形状の導体から構成されているとする。一方の表面導体をコの字形状の導体とし、他方を逆コの字形状の導体、すなわち、コの字形状の導体の表裏を反転させた形状の導体となるように替え、長手方向を上下位置にして並列させる。
【0016】
この場合、向かって左手にコの字形状の導体を配し、右手に逆コの字形状の導体を配すれば、少なくとも表面導体の中央部を含む部分は、表面導体の端部、すなわち、ビア導体との接続点近傍に比して接近した配置となる。
【0017】
また、向かって左手に逆コの字形状の導体を配し、右手にコの字形状の導体を配すれば、少なくとも表面導体の中央部を含む部分は、表面導体の端部、すなわち、ビア導体との接続点近傍に比して離間した配置となる。
【0018】
上記のように、隣接しかつ並列する表面導体の両方を変更すれば、結合係数の調整幅を大きくすることができる。
【0019】
なお、表面導体の一方のみを、コの字形状の導体もしくは、逆コの字形状の導体に替えても、同様に結合係数の調整ができる。
【0020】
すなわち、一方がIの字形状、他方がコの字形状もしくは逆コの字形状の導体との組み合わせとしてもよい。
【0021】
したがって、あらかじめ、コの字形状の導体を少なくとも1種類用意しておけば、Iの字形状の導体のみを用いた場合を含み、5段階に結合係数を調整することができる。
【0022】
本発明のインダクタ部品は、軟磁性を有する扁平な金属粉末とバインダ成分を含む磁性体を用いた磁芯と、磁芯の対向する2つの面を貫通するビアホールに挿入されてなるビア導体と、磁芯の対向する2つの面の各々でビア導体と接続されてなる表面導体を備えたコイルを含み、コイルを互いに磁気結合を有するように複数配したインダクタ部品であって、少なくとも2つの隣り合うコイルの一部を各々構成し、隣接しかつ並列する2つの表面導体は、隣り合うビア導体との接続点の間の距離と、ビア導体との接続点以外における長手方向に直交する方向の距離が異なるように配置しうる形状であることを特徴とする。
【0023】
本発明のインダクタ部品は、軟磁性を有する扁平な金属粉末とバインダ成分を含む磁性体を用いた磁芯と、磁芯の対向する2つの面を貫通するビアホールに挿入されてなるビア導体と、磁芯の対向する2つの面の各々でビア導体と接続されてなる表面導体を備えたコイルを含み、コイルを互いに磁気結合を有するように複数配したインダクタ部品であって、少なくとも2つの隣り合うコイルの一部を各々構成し、隣接しかつ並列する2つの表面導体は、隣り合うビア導体との接続点の間の距離と、長手方向中央部の距離が異なるように配置しうる形状であることを特徴とする。
【0024】
本発明のインダクタ部品は、少なくとも2つの隣り合うコイルの一部を各々構成し、隣接しかつ並列する2つの表面導体の少なくとも一方は、長手方向に直交する方向に凸部または凹部を有する形状であることを特徴とする。
【0025】
本発明のインダクタ部品は、長手方向に直交する方向に凸部または凹部を有する形状が、コの字形状であることを特徴とする。
【0026】
本発明のインダクタ部品は、長手方向に直交する方向に凸部または凹部を有する形状以外の表面導体は、Iの字形状であることを特徴とする。
【0027】
本発明のインダクタ部品は、磁芯の空孔率が、5体積%以上20体積%以下であることを特徴とする。
【0028】
本発明のインダクタ部品は、磁芯に含まれるバインダ成分の体積率が、10体積%以上20体積%以下であることを特徴とする。
【0029】
本発明のインダクタ部品は、磁芯に含まれる金属粉末の体積率が、65%以上85%以下であることを特徴とする。
【0030】
本発明のインダクタ部品の製造方法は、軟磁性を有する扁平な金属粉末とバインダ成分を含む磁性体を用いた磁芯と、磁芯の対向する2つの面を貫通するビアホールに挿入されてなるビア導体と、磁芯の対向する2つの面の各々でビア導体と接続されてなる表面導体を備えたコイルを含み、コイルを互いに磁気結合を有するように複数配したインダクタ部品の製造方法であって、表面導体は、長手方向に直交する方向に凸部または凹部を有する形状の導体を含み、少なくとも2つの隣り合うコイルの一部を各々構成し、隣接しかつ並列する2つの表面導体として長手方向に直交する方向に凸部または凹部を有する形状の導体を用い、隣り合う前記ビア導体との接続点の間の距離と、前記ビア導体との接続点以外における長手方向に直交する方向の距離が異なるように配置して、少なくとも2つの隣り合うコイルの結合係数を調整することを特徴とする。
【0031】
本発明のインダクタ部品の製造方法は、軟磁性を有する扁平な金属粉末とバインダ成分を含む磁性体を用いた磁芯と、磁芯の対向する2つの面を貫通するビアホールに挿入されてなるビア導体と、磁芯の対向する2つの面の各々でビア導体と接続されてなる表面導体を備えたコイルを含み、コイルを互いに磁気結合を有するように複数配したインダクタ部品の製造方法であって、表面導体は、Iの字形状を有する導体および長手方向に直交する方向に凸部または凹部を有する形状の導体を含み、少なくとも2つの隣り合うコイルの一部を各々構成し、隣接しかつ並列する2つの表面導体としてIの字形状を有する導体と、長手方向に直交する方向に凸部または凹部を有する形状の導体を用いて、少なくとも2つの隣り合うコイルの結合係数を調整することを特徴とする。
【0032】
本発明のインダクタ部品の製造方法は、ビア導体と表面導体を配置した後に、表面導体の一部を長手方向に直交する方向に凸部または凹部を有する形状の導体もしくはIの字形状の導体のいずれかで置換することを特徴とする。
【0033】
本発明のインダクタ部品の製造方法は、空孔率が、5体積%以上20体積%以下である磁芯を用いることを特徴とする。
【0034】
本発明のインダクタ部品の製造方法は、バインダ成分の体積率が10体積%以上20体積%以下である磁芯を用いることを特徴とする。
【0035】
本発明のインダクタ部品の製造方法は、金属粉末の体積率が65%以上85%以下である磁芯を用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、ビアホール位置およびビアホールに配されるビア導体の位置を変更せずに、コイル間の結合係数の調整が可能な平板型のインダクタ部品およびその製造方法が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0039】
(第1の実施の形態)
図1は本発明のインダクタ部品における第1の実施の形態を示す説明図である。
【0040】
軟磁性を有する扁平な金属粉末と絶縁性を有するバインダ成分からなるシート状の磁性体を積層してなる磁芯13の内部に、第1のコイル11と第2のコイル12を互いに磁気結合を有するように配して、平板型結合タイプのインダクタ100を構成する。
【0041】
第1のコイル11は、磁芯13の表裏面を貫くように形成されたビアホールを貫通するように配されたビア導体114、115と、磁芯13の表面または裏面で、表面導体と接続し、端部に端子部116を有する。表面導体は、Iの字形状の導体113、112およびコの字形状の導体111からなる。
【0042】
第2のコイル12は、磁芯13の表裏面を貫くように形成されたビアホールを貫通するように配されたビア導体124、125と、磁芯13の表面または裏面で、表面導体と接続し、端部に端子部126を有する。表面導体は、Iの字形状の導体122、123およびコの字形状の導体121からなる。
【0043】
第1のコイル11と第2のコイル12に電流を流した際に発生する磁束は、互いに打消し合う方向に発生し、磁芯13の面内を還流する。
【0044】
表面導体として、はじめにIの字形状の導体のみを用いて仮組みし、結合係数を測定し、所要の結合係数を上回る場合に、第1のコイル11と第2のコイル12の各々を構成し、並列している2つの表面導体をIの字形状の導体から、コの字形状の導体111および121に代替する。
【0045】
コの字形状の導体111は、表裏を反転して、逆コの字形状の導体とし、コの字形状の導体121と並列させることにより、第1のコイル11と第2のコイル12における磁束の鎖交、すなわち磁気結合に寄与する、近接かつ並列する表面導体の間の距離を実質的に広げ、Iの字形状の導体を用いた場合に比べ離間するので、結合係数は減少する。
【0046】
開孔済みのビアホール位置すなわち第1のコイル11における、ビア導体114と、表面導体であるコの字形状の導体111の接続点と、第2のコイル12における、ビア導体124と、表面導体であるコの字形状の導体121の接続点の位置を変更する必要はない。
【0047】
すなわち、少なくとも2つの隣り合うコイルである、第1のコイル11と第2のコイル12の一部を各々構成し、並列する2つの表面導体は、隣り合うビア導体114、124との接続点の間の距離と、ビア導体114、124との接続点以外における長手方向に直交する方向の距離が異なるように、コの字形状の導体111、およびコの字形状の導体121を用いている。
【0048】
また、少なくとも2つの隣り合うコイルである、第1のコイル11と第2のコイル12の一部を各々構成し、並列する2つの表面導体は、隣り合うビア導体114、124との接続点の間の距離と、長手方向中央部の距離が異なるように配置しうる形状となるように、コの字形状の導体111、およびコの字形状の導体121を用いている。
【0049】
コの字形状の導体もしくはこれを表裏反転した逆コの字形状の導体は、長手方向に直交する方向に凸部または凹部を有する形状の導体の一例である。
【0050】
コの字形状の他に、半円状、くの字形状もしくはこれらの形状を一部に含む形状も、長手方向に直交する方向に凸部または凹部を有する形状の導体の一例である。凸部または凹部の深さは結合係数の調整幅や部品全体の大きさに応じて適宜決定してよい。
【0051】
上述は、異なるコイルの一部を各々構成し、結合係数に寄与する配置にある表面導体の一部を、ビアホール位置を変えることなく、表面導体の形状を変更することによって結合係数を調整し、インダクタ部品を製造する方法の一例である。
【0052】
(第2の実施の形態)
図2は本発明の第2の実施の形態を示す説明図である。
【0053】
軟磁性を有する扁平な金属粉末と絶縁性を有するバインダ成分からなるシート状の磁性体を積層してなる磁芯23の内部に、第1のコイル21と第2のコイル22を互いに磁気結合を有するように配して、平板型結合タイプのインダクタ200を構成する。
【0054】
第1のコイル21は、磁芯23の表裏面を貫くように形成されたビアホールを貫通するように配されたビア導体214、215と、磁芯23の表面または裏面で、表面導体と接続し、端部に端子部216を有する。表面導体は、Iの字形状の導体213、212およびコの字形状の導体211からなる。
【0055】
第2のコイル22は、磁芯23の表裏面を貫くように形成されたビアホールを貫通するように配されたビア導体224、225と、磁芯23の表面または裏面で、表面導体と接続し、端部に端子部226を有する。表面導体は、Iの字形状の導体222、223およびコの字形状の導体221からなる。
【0056】
第1のコイル21と第2のコイル22に電流を流した際に発生する磁束は、互いに打消し合う方向に発生し、磁芯23の面内を還流する。
【0057】
表面導体として、はじめにIの字形状の導体のみを用いて仮組みし、結合係数を測定し、所要の結合係数を下回る場合に、第1のコイル21と第2のコイル22の各々を構成し、並列している2つの表面導体をIの字形状の導体から、コの字形状の導体211および221に代替する。
【0058】
コの字形状の導体221は、表裏を反転して、逆コの字形状の導体とし、コの字形状の導体211と並列させることにより、第1のコイル21と第2のコイル22における磁束の鎖交、すなわち磁気結合に寄与する、近接かつ並列する表面導体の間の距離を実質的に狭め、Iの字形状の導体を用いた場合に比べ近接するので、結合係数は増加する。
【0059】
開孔済みのビアホール位置すなわち第1のコイル21における、ビア導体214と、表面導体であるコの字形状の導体211の接続点と、第2のコイル22における、ビア導体224と、表面導体であるコの字形状の導体221の接続点の位置を変更する必要はない。
【0060】
すなわち、少なくとも2つの隣り合うコイルである、第1のコイル21と第2のコイル22の一部を各々構成し、並列する2つの表面導体は、隣り合うビア導体214、224との接続点の間の距離と、ビア導体214、224との接続点以外における長手方向に直交する方向の距離が異なるように、コの字形状の導体211、およびコの字形状の導体221を用いている。
【0061】
また、少なくとも2つの隣り合うコイルである、第1のコイル21と第2のコイル22の一部を各々構成し、並列する2つの表面導体は、隣り合うビア導体214、224との接続点の間の距離と、長手方向中央部の距離が異なるように配置しうる形状となるように、コの字形状の導体211、およびコの字形状の導体221を用いている。
【0062】
コの字形状の導体もしくはこれを表裏反転した逆コの字形状の導体は、長手方向に直交する方向に凸部または凹部を有する形状の導体の一例である。
【0063】
コの字形状の他に、半円状、くの字形状もしくはこれらの形状を一部に含む形状も、長手方向に直交する方向に凸部または凹部を有する形状の導体の一例である。凸部または凹部の深さは結合係数の調整幅や部品全体の大きさに応じて適宜決定してよい。
【0064】
上述は、異なるコイルの一部を各々構成し、結合係数に寄与する配置にある表面導体の一部を、ビアホール位置を変えることなく、表面導体の形状を変更することによって結合係数を調整し、インダクタ部品を製造する方法の一例である。
【0065】
磁芯を構成する軟磁性を有する扁平な金属粉末は公知の材料を用いてよいが、Fe−Al−Si合金、Fe−Ni合金、Fe族系金属またはこれを含む合金等を用いるのが好ましい。
【0066】
磁芯を構成するバインダ成分は、公知の材料を用いてよいが、熱硬化性の有機樹脂を用いるのが好ましい。
【0067】
磁芯は、軟磁性を有する扁平な金属粉末とバインダ成分を混合し、公知の手段で製造したものを用いてよいが、たとえばダイスロット法やドクターブレード法によって、面内方向に配向させてシート状に形成し、1枚もしくは複数枚を積層して、積層方向すなわち厚さ方向に加圧して得られた高密度成型体を用いるのが好ましい。
【0068】
加えて、磁芯の絶縁性を向上させるため、軟磁性扁平金属粉末の表面に酸化処理を施す、または、ホウ珪酸系、ビスマス系、リン酸系及び酸化亜鉛系等の低融点ガラス、いわゆるガラスフリットをコーティングするのが好ましい。
【0069】
上述のように磁芯は絶縁性のバインダ成分によりコーティングされているために、第1のコイルおよび第2のコイルを構成する表面導体、ビア導体、端子部を、絶縁用の部材を用いることなく、直接磁芯に接触させて用いることができる。
【0070】
したがって、磁芯は、バインダ成分の体積率が10体積%以上20体積%以下であるものを用いるのが好ましい。
【0071】
磁芯は、軟磁性扁平金属粉末の体積率が65%以上85%以下であるものを用いるのが好ましい。
【0072】
磁芯は、空孔率が5体積%以上20体積%以下であるものを用いるのが好ましい。
【0073】
表面導体とビア導体、端子部の接続は、公知の手段を用いてよいが、抵抗溶接によるのがより好ましい。
【0074】
結合係数を調整する前の表面導体として、公知のどのような形状の導体を用いてもよいが、Iの字形状の導体を用いて結合係数を測定した後に、必要に応じて、結合係数に寄与する部分の表面導体の形状を、一つの導体毎に、長手方向に直交する方向に凸部または凹部を有する形状の導体に替えて、結合係数を調整するのがより好ましい。
【0075】
長手方向に直交する方向に凸部または凹部を有する形状の導体を1数種類以上用意し、さらに多段階に結合係数を調整するのも好ましい。
【0076】
上述の実施の形態では、1組のコイルを用いたインダクタを例示したが、複数のコイルを用いた場合も、同様の効果を奏する。
【実施例】
【0077】
第3図は従来のインダクタ部品を示す説明図である。
【0078】
従来のインダクタ部品として、第1の実施の形態および第2の実施の形態で説明したものと同様に、軟磁性を有する扁平な金属粉末と絶縁性を有するバインダ成分からなるシート状の磁性体を積層してなる磁芯33の内部に、第1のコイル31と第2のコイル32を互いに磁気結合を有するように配して、平板型結合タイプのインダクタ300を用意した。
【0079】
表面導体は、すべて、Iの字形状の導体311、312、313、321、322、323からなっている。
【0080】
以下、詳細に説明する。
【0081】
まず、原料粉末として、平均粒径D50が55μmのFe−Si−Al系合金(センダスト合金)のガスアトマイズ粉末を用意した。原料粉末をボールミルで8時間処理し、さらに、窒素雰囲気中で700℃、3時間の熱処理を加え、軟磁性を有する扁平な金属粉末を作製した。
【0082】
金属粉末の平均長径(Da)は60μm、平均最大厚さ(ta)は3μm、平均アスペクト比(Da/ta)は20であった。
【0083】
この金属粉末を、増粘剤、及び熱硬化性バインダ成分と混合してスラリーを作製した。溶媒はエタノールを、増粘剤はポリアクリル酸エステルを使用した。熱硬化性バインダ成分としては、メチル系シリコーンレジンを使用した。
【0084】
ダイスロット法によって、スラリーをPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム上に塗布した後、60℃の温度下で1時間乾燥して溶媒を除去し、シート状の予備成型体を得た。
【0085】
この予備成型体を、抜型を用いて、横13mm縦20mmの長方形にカットし、カットした4枚の予備成型体を積層して金型中に封入した。
【0086】
封入した予備成型体に、150℃、20kg/平方センチメートルの成型圧力にて1時間の加圧成型を施した。成型歪を取り除くために、予備成型体を窒素雰囲気中にて、350℃、1時間の条件で加熱処理し、厚さ(T)が2.2mm、幅(W)が13mm、長さ(L)20mmの成型体を得た。
【0087】
続いて、成型体の表裏面を貫く所定の位置に、ドリル切削にて直径1.0mmのビアホールを設け、窒素雰囲気中で600℃、1時間の条件で熱処理し、磁芯33を得た。
【0088】
磁芯33は、体積抵抗率として10kΩ・cm以上の値を有していた。また、密度は4.9g/ccであり、この密度から求めた金属成分の体積充填率は、約67%であった。
【0089】
直径1.2mm、長さ2.2mmを有する、絶縁皮膜を有しない銅線を作製し、ビアホールに挿入するビア導体314、315、324、325とした。
【0090】
幅1.2mm、厚さ0.3mmを有する、絶縁皮膜を有しない銅板を、所定の長さとなるように切断し、Iの字形状の導体311、312、313、321、322、323とした。
【0091】
幅2.5mm、厚さ0.3mmを有する、絶縁皮膜を有しない銅板を、所定の長さとなるように切断し、端子部316、326とした。
【0092】
磁芯33に、ビア導体314、315、324、325を挿入し、端部に導電性ペーストを塗布した。
【0093】
Iの字形状の導体311、312、313、321、322、323および端子部316、326を、各々ビア導体314、315、324、325と接合するように配置した後、ステンレス製の板にはさみ、5kgfの加圧を施して仮接合し、比較例たるインダクタ300を得た。
【0094】
次に実施例として本発明品に用いるコの字形状の導体を作製した。
【0095】
上述の比較例に用いたものと同じ材料からなる、幅1.7mm、厚さ0.3mmの絶縁皮膜を有しない銅板から、比較例のIの字形状の導体と同じ長さと幅を有する、コの字形状の導体を打ち抜き加工により得た。
【0096】
すなわち、幅1.2mmで、両端を結んだ長手方向の直線に直交する方向に0.5mmの凹部または凸部を有するコの字形状の導体を作製した。
【0097】
はじめに、表面導体としてIの字形状の導体を用いて仮接合し、第3図に示す比較例たるインダクタ300を構成して結合係数を測定した。
【0098】
次に、実施の形態で説明したように、Iの字形状の導体311と321を、順にコの字形状導体に替えて本発明品たるインダクタを構成し、結合係数を測定した。
【0099】
すなわち、表面導体間の距離が近い順に、第2の実施の形態に示したインダクタ200(1)、Iの字形状とコの字形状のインダクタ(2)、コの字形状を逆コの字形状に替えて(2)のインダクタよりも離間させたインダクタ(3)、第1の実施の形態に示したインダクタ100(4)の4種類とし、表面導体を置換する毎に結合係数を測定した。
【0100】
測定装置は、ヒューレットパッカード社(現アジレントテクノロジー社)のLCRメーターHP4284Aを用い、オープンショート法を用いて第1のコイルと第2のコイルの自己インダクタンスと相互インダクタンスとを求め、結合係数を得た。
【0101】
本発明品および比較例の結合係数の測定結果を表1に示す。なお、結合係数は、比較例の結合係数0.2に対する相対的な値をΔk(%)として示している。
【0102】
【表1】
【0103】
測定の結果、表面導体間の距離を±1.0mm変えると結合係数は−0.8%〜+1.0%変化した。
【0104】
図3に示した比較例の構成で、ビアホールの位置そのものを変えることにより、ビア導体314とビア導体324の距離を変えた場合には、距離がおよそ±0.5mm変化すると結合係数は−20%〜+30%変化する。
【0105】
第1のコイル31および第2のコイル32に通電した際に生じる磁束を、ビア導体314、315、324、325に流れる電流から生じる磁束成分と、表面導体であるIの字形状の導体311、312、313、321、322、323に流れる電流から生じる磁束成分とに分けて考えると、ビア導体は外周全てが磁性体で囲まれていることから、その磁束成分が大きく、互いのコイルに面する側のビア導体314とビア導体324の距離に応じて、結合係数の変化は大きい。
【0106】
一方、表面導体は、磁性体がその外周の一部分にしか存在せず、発生する磁束成分は小さいので、互いのコイルに面する側の表面導体間の距離を変えることにより、微小な結合係数の調整が可能となる。
【0107】
ビアホールの位置そのものを変えた場合は、打抜き加工の一般公差である±0.05mm程度位置が変化しただけで、結合係数は約2.5%変化してしまうが、本実施例においては、表面導体の形状を変化させることで、−0.8%〜+1.0%程度の微調整が可能となった。
【0108】
上記より、ビアホールに配されるビア導体の位置を変更せずに、複数のコイル間の結合係数の調整が可能な平板型のインダクタ部品およびその製造方法が得られた。
【0109】
以上、本発明の実施の形態および実施例を説明したが、本発明は、上記に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の変更や修正が可能である。すなわち、当業者であれば成し得る各種変形、修正もまた本発明に含まれる。