(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6363914
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】ピボットヒンジ
(51)【国際特許分類】
E05D 7/02 20060101AFI20180712BHJP
【FI】
E05D7/02 B
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-175665(P2014-175665)
(22)【出願日】2014年8月29日
(65)【公開番号】特開2016-50410(P2016-50410A)
(43)【公開日】2016年4月11日
【審査請求日】2017年8月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000108708
【氏名又は名称】タキゲン製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081514
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 一
(74)【代理人】
【識別番号】100082692
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵合 正博
(72)【発明者】
【氏名】城添 昭彦
【審査官】
秋山 斉昭
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−264633(JP,A)
【文献】
特開2000−310082(JP,A)
【文献】
特開2009−275439(JP,A)
【文献】
特開昭57−123377(JP,A)
【文献】
特開2006−118264(JP,A)
【文献】
特開2004−76398(JP,A)
【文献】
米国特許第6283565(US,B1)
【文献】
西独国実用新案公開第07713654(DE,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05D 7/00−7/14
E05D 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状のヒンジベースと、
前記ヒンジベースの一方の面の一側にヒンジピンサポート部を介して上下方向に移動可能に支持され、かつばね部材により常態として上方向又は下方向に移動付勢されるヒンジピンと、
を備え、
前記ヒンジピンサポート部は、
前記ヒンジベースの一側の上下方向中央に設けられ、前記ヒンジピンを挿通支持可能な中間軸受と、
前記ヒンジベースの一側の上下にそれぞれ、前記中間軸受を中心に対称的に前記中間軸受に対向可能に形成され、前記ヒンジピンを挿通支持可能な上下一対の軸受と、
前記ヒンジベースの一側で前記中間軸受と前記上下の各軸受との間にそれぞれ、前記中間軸受を中心に対称的に前記ヒンジベースの一側の縁部から溝形に形成されてなる上下一対のストッパーと、
を有し、
前記ヒンジピンは、
略L字形に形成され、前記中間軸受と前記上軸受又は前記下軸受との間の距離よりも長い所定の長さを有するピボット部と、前記ピボット部の端部で折り曲げられ、前記下ストッパー又は前記上ストッパーに係合可能なストッパー係合部とを有し、
前記ピボット部は前記中間軸受と前記上軸受又は前記下軸受との間に挿通され、前記ストッパー係合部が前記中間軸受と前記下軸受又は前記上軸受との間に配置されて、
前記ストッパー係合部を前記ばね部材の付勢力に抗して下降又は上昇させ前記下ストッパー又は前記上ストッパーに係合させることにより、前記ピボット部が前記上軸受から上方に又は前記下軸受から下方にヒンジピンとして作用しない僅かな長さに突出される状態又はまったく突出されない状態に保持され、
前記下ストッパー又は前記上ストッパーから前記ストッパー係合部の係合を外すことにより、前記ピボット部が前記ばね部材の付勢力により前記上軸受から上方に又は前記下軸受から下方にヒンジピンとして作用する長さに突出される、
ことを特徴とするピボットヒンジ。
【請求項2】
ヒンジベースの他側に、ヒンジベース取付面に対する位置決めガイド及び取付ねじ挿通孔を有する請求項1に記載のピボットヒンジ。
【請求項3】
中間軸受は、ヒンジベースと別体で、前記ヒンジベースの一側の上下方向中央に形成される中間軸受取付部に着脱可能に設けられる請求項1又は2に記載のピボットヒンジ。
【請求項4】
中間軸受は、ヒンジベースの中間軸受取付部に当接される固定部と、前記固定部の一端から直角に立ち上げられ、ヒンジピン挿通孔を有する受け部とからなり、前記受け部を上軸受側又は下軸受側に配置して、前記固定部が前記中間軸受取付部にねじを介して取り付けられる請求項3に記載のピボットヒンジ。
【請求項5】
中間軸受の固定部又はヒンジベースの中間軸受取付部の一方に前記中間軸受を前記中間軸受取付部に位置決めするための位置決め凸部を有し、他方に前記位置決め凸部に係合可能な位置決め凹部を有する請求項3又は4に記載のピボットヒンジ。
【請求項6】
上軸受は、ヒンジベースの一側の上端部から上方向に延びる上部延長部と、前記上部延長部の上端から前記上部延長部に対して直角に前記ヒンジベースの一方の面側に向けて延びる、ヒンジピン挿通孔を有する上部受け部とからなり、下軸受は、前記ヒンジベースの一側の下端部から下方向に延びる下部延長部と、前記下部延長部の下端から前記下部延長部に対して直角に前記ヒンジベースの一方の面側に向けて延びる、ヒンジピン挿通孔を有する下部受け部とからなる請求項1乃至5のいずれかに記載のピボットヒンジ。
【請求項7】
上ストッパーは、ヒンジベースの一側で中間軸受と上軸受との間に形成され、前記ヒンジベースの一側から他側に向けて延びるガイド溝、及び前記ガイド溝の前記中間軸受に対応する位置から当該中間軸受に向けて延びるロック溝からなり、下ストッパーは、前記ヒンジベースの一側で前記中間軸受と下軸受との間に形成され、前記ヒンジベースの一側から他側に向けて延びるガイド溝、及び前記ガイド溝の前記中間軸受に対応する位置から当該中間軸受に向けて延びるロック溝からなる請求項1乃至6のいずれかに記載のピボットヒンジ。
【請求項8】
ばね部材はコイルスプリングからなり、前記コイルスプリングは、中間軸受と上軸受又は下軸受との間で、ヒンジピンのピボット部に巻き付けられ、一端が前記ピボットに固定されるストッパーに係合され、他端が前記中間軸受に係合されて、前記ヒンジピンを常態として上方向又は下方向に移動付勢する請求項1乃至7のいずれかに記載のピボットヒンジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピボットヒンジに関し、特に、制御機械などのケース本体に扉を開閉可能にかつ取り外し自在に取り付けるためのピボットヒンジに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の扉用のヒンジは、羽根と呼ばれる取付片と筒状軸受部を有する一側の部材と、取付片と筒状軸受部を有する他側の部材と、一側の部材の筒状軸受部と他側の部材の筒状軸受部とに嵌挿される軸とからなり、一側の部材の取付片を扉の一側部にビス止めにより取り付け、他側の部材の取付片をケース本体の取付開口枠の一方の側部にビス止めにより取り付け、各部材の筒状軸受部を上下に同芯的に配置して、軸を上下部の各筒状軸受部に通し、一側の部材と他側の部材とを枢着連結することにより、扉を取付開口枠に取り付けるようになっている。
しかしながら、このような従来のヒンジでは、一側の部材を扉にビス止めし、他側の部材をケース本体にビス止めしなければならず、ビス止め箇所が多く、その取り付けに多くの手間を要していた。
【0003】
そこで、ビス止めなどの取り付け箇所を少なくし、取り付け作業を容易に行い得るヒンジが提案され、これが特許文献1により開示されている。
この文献1のヒンジの、ケース本体のヒンジ取付面の上部側に取り付けられる上部側の一方は、羽根板状のヒンジ本体と、ヒンジ本体に軸受を介して上下動自在に取り付けられ、下端にL型の曲がり部を有する支持軸と、支持軸を上方に付勢するばねと、ヒンジ本体の下端に形成され、支持軸を下降させた状態で曲がり部を係合させる係合凹部とを備え、支持軸を下降させ支持軸の曲がり部を係合凹部に係合させた状態からこの支持軸の曲がり部の係合を外すことにより、支持軸がばねにより付勢されて上方に持ち上げられ、ヒンジ本体から上方に大きく突出する構造になっている。
このヒンジは、ヒンジ本体をケース本体のヒンジ取付面にビス止めして、ケース本体に取り付ける。このとき、支持軸の折り曲げ部を係合凹部に係合させて支持軸の上端を上方に大きく突出させないでおく。そして、この状態で扉をケース本体に近づけ、支持軸の上端に扉の上部の軸受孔を合わせて、係合凹部から支持軸の折り曲げ部の係合を外すと、ばねによって支持軸は上方に押し上げられて扉の軸受孔に嵌入され、これにより扉の上部がケース本体に支持される。
なお、この文献1のヒンジの下部側の他方は、上部側のヒンジを上下逆にした構成となる。
このヒンジは、かかる構造により、従来のような2枚の羽根板を備えるものではなく、ヒンジ本体が1つで、このヒンジ本体をケース本体側に取り付ければよく、ケース本体に取り付けられる扉に対して支持軸の突出端を扉の軸受孔に嵌入させればよいので、従来に比べて取り付け作業性を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−264633公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のヒンジ(特許文献1のヒンジ)の構造では、扉をケース本体の取付開口枠に取り付けるために、既述のように、上下を逆にした構成の上部用と下部用の2種類のヒンジを必要とし、その分だけ部品点数が増え、製作コストが増大し、また、部品管理も煩雑になる、という問題がある。
また他面で、この種のヒンジは、制御機械などの扉の取り付けに使用されており、制御機械の場合、機械内部のメンテナンスの際に、扉が邪魔になるため、扉を取り外すことが多く、扉の取り付け、取り外しを容易に行えることが要求され、これに対応できることが望ましい。
【0006】
本発明は、このような従来の問題を解決するもので、上下兼用、左右兼用として部品を共通化し、部品点数の削減、製作コストの低減、及び部品管理の効率化を図ることができ、かつ扉の取り付け、取り外しを容易に行うことのできるピボットヒンジを提供すること、を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明のピボットヒンジは、平板状のヒンジベースと、前記ヒンジベースの一方の面の一側にヒンジピンサポート部を介して上下方向に移動可能に支持され、かつばね部材により常態として上方向又は下方向に移動付勢されるヒンジピンとを備え、前記ヒンジピンサポート部は、前記ヒンジベースの一側の上下方向中央に設けられ、前記ヒンジピンを挿通支持可能な中間軸受と、前記ヒンジベースの一側の上下にそれぞれ、前記中間軸受を中心に対称的に前記中間軸受に対向可能に形成され、前記ヒンジピンを挿通支持可能な上下一対の軸受と、前記ヒンジベースの一側で前記中間軸受と前記上下の各軸受との間にそれぞれ、前記中間軸受を中心に対称的に前記ヒンジベースの一側の縁部から溝形に形成されてなる上下一対のストッパーとを有し、前記ヒンジピンは、略L字形に形成され、前記中間軸受と前記上軸受又は前記下軸受との間の距離よりも長い所定の長さを有するピボット部と、前記ピボット部の端部で折り曲げられ、前記下ストッパー又は前記上ストッパーに係合可能なストッパー係合部とを有し、前記ピボット部は前記中間軸受と前記上軸受又は前記下軸受との間に挿通され、前記ストッパー係合部が前記中間軸受と前記下軸受又は前記上軸受との間に配置されて、前記ストッパー係合部を前記ばね部材の付勢力に抗して下降又は上昇させ前記下ストッパー又は前記上ストッパーに係合させることにより、前記ピボット部が前記上軸受から上方に又は前記下軸受から下方にヒンジピンとして作用しない僅かな長さに突出される状態又はまったく突出されない状態に保持され、前記下ストッパー又は前記上ストッパーから前記ストッパー係合部の係合を外すことにより、前記ピボット部が前記ばね部材の付勢力により前記上軸受から上方に又は前記下軸受から下方にヒンジピンとして作用する長さに突出される、ことを要旨とする。
また、このピボットヒンジは、各部に次のような構成を備えることが好ましい。
(1)ヒンジベースの他側に、ヒンジベース取付面に対する位置決めガイド及び取付ねじ挿通孔を有する。
(2)中間軸受は、ヒンジベースと別体で、前記ヒンジベースの一側の上下方向中央に形成される中間軸受取付部に着脱可能に設けられる。
この場合、中間軸受は、ヒンジベースの中間軸受取付部に当接される固定部と、前記固定部の一端から直角に立ち上げられ、ヒンジピン挿通孔を有する受け部とからなり、前記受け部を上軸受側又は下軸受側に配置して、前記固定部が前記中間軸受取付部にねじを介して取り付けられる。
また、この場合、中間軸受の固定部又はヒンジベースの中間軸受取付部の一方に前記中間軸受を前記中間軸受取付部に位置決めするための位置決め凸部を有し、他方に前記位置決め凸部に係合可能な位置決め凹部を有する。
(3)上軸受は、ヒンジベースの一側の上端部から上方向に延びる上部延長部と、前記上部延長部の上端から前記上部延長部に対して直角に前記ヒンジベースの一方の面側に向けて延びる、ヒンジピン挿通孔を有する上部受け部とからなり、下軸受は、前記ヒンジベースの一側の下端部から下方向に延びる下部延長部と、前記下部延長部の下端から前記下部延長部に対して直角に前記ヒンジベースの一方の面側に向けて延びる、ヒンジピン挿通孔を有する下部受け部とからなる。
(4)上ストッパーは、ヒンジベースの一側で中間軸受と上軸受との間に形成され、前記ヒンジベースの一側から他側に向けて延びるガイド溝、及び前記ガイド溝の前記中間軸受に対応する位置から当該中間軸受に向けて延びるロック溝からなり、下ストッパーは、前記ヒンジベースの一側で前記中間軸受と下軸受との間に形成され、前記ヒンジベースの一側から他側に向けて延びるガイド溝、及び前記ガイド溝の前記中間軸受に対応する位置から当該中間軸受に向けて延びるロック溝からなる。
(5)ばね部材はコイルスプリングからなり、前記コイルスプリングは、中間軸受と上軸受又は下軸受との間で、ヒンジピンのピボット部に巻き付けられ、一端が前記ピボットに固定されるストッパーに係合され、他端が前記中間軸受に係合されて、前記ヒンジピンを常態として上方向又は下方向に移動付勢する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のピボットヒンジによれば、上記の構成により、ヒンジピンを除く各部が上下対称に形成されるので、ヒンジピンを上下の向きを反転させるだけで、上下兼用として使用することができ、ヒンジベースの一方の面と他方の面とを反転させれば、同様にして、左右兼用として使用することができ、上下兼用、左右兼用として部品を共通化し、部品点数の削減、製作コストの低減、及び部品管理の効率化を図ることができ、また、ヒンジピンのストッパー係合部をばね部材の付勢力に抗して下降又は上昇させ下ストッパー又は上ストッパーに係合させるだけで、ピボット部が上軸受から上方に又は下軸受から下方にヒンジピンとして作用しない僅かな長さに突出する状態又はまったく突出されない状態に保持され、下ストッパー又は上ストッパーからストッパー係合部の係合を外すだけで、ピボット部がばね部材の付勢力に上軸受から上方に又は下軸受から下方にヒンジピンとして作用する長さに突出されるので、扉の取り付け、取り外しを容易に行うことができる、という本発明独自の格別な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1a】本発明の一実施の形態におけるピボットヒンジの平面図
【
図1g】同ピボットヒンジの断面図(
図1cのA−A線断面図)
【
図1h】同ピボットヒンジの断面図(
図1cのB−B線断面図)
【
図2】同ピボットヒンジの特にヒンジベースを示す図((a)は平面図(b)正面断面図(c)は側面図)
【
図3】同ピボットヒンジの一部を分解して示す正面断面図
【
図4】同ピボットヒンジの使用例を示す図((a)は上部用のピボットヒンジとして示す図(b)は下部用のピボットヒンジとして示す図)
【
図5】同ピボットヒンジの使用例(同ピボットヒンジをケース本体の取付開口枠に取り付けた状態)を示す図
【
図6】同ピボットヒンジの使用例を示す図(同ピボットヒンジによる扉の開閉動作を示す図)
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、この発明を実施するための形態について図を用いて説明する。
図1乃至
図3にピボットヒンジの構成を示している。
図1に示すように、ピボットヒンジHは、ヒンジベース1と、ヒンジベース1の一方の面の一側にヒンジピンサポート部2を介して上下方向に移動可能に支持され、かつばね部材8により常態として上方向又は下方向に移動付勢されるヒンジピン9とを備える。
【0011】
ヒンジベース1は、
図2に示すように、鋼板により略矩形の平板状に形成される。ヒンジベース1の一方の面の一側に、既述のとおり、ヒンジピンサポート部2が設けられ、ヒンジベース1の他側に、(ピボットヒンジHの取付先の)ヒンジベース取付面に対する位置決めガイド11及び取付ねじ挿通孔12が設けられる。この場合、位置決めガイド11はヒンジベース1の他側の上下部にそれぞれ、他方の面から一方の面に向けてプレス加工により、他方の面が円形の凹形状に、一方の面が円形の凸形状に形成され、他方の面の円形の凹形状がヒンジベース取付面に予め形成された円形の凸状部に係合可能になっている。また、取付ねじ挿通孔12は上下の各位置決めガイド11の間に円形に穿たれ、この取付ねじ挿通孔12に取付用のねじが挿通され、ヒンジベース取付面に螺着されるようになっている。
【0012】
ヒンジピンサポート部2は、
図3に示すように、中間軸受3と、上下一対の軸受4,5と、上下一対のストッパー6,7とからなる。
【0013】
中間軸受3は、ヒンジベース1の一側の上下方向中央に設けられて、ヒンジピン9を挿通支持可能に形成される。この場合、中間軸受3は、ヒンジベース1と別体で、ヒンジベース1の一側の上下方向中央に形成される中間軸受取付部13に着脱可能に設けられる。この中間軸受3は、ヒンジベース1の中間軸受取付部13に当接可能に略矩形状に形成され、一端側にねじ挿通部30を有する固定部31と、固定部31の一端から直角に立ち上げられて形成され、突出端が略半円形に形成されてその半円形の中心にヒンジピン挿通孔32を有する受け部33とからなる。中間軸受取付部13は中心にねじ挿通部130が穿たれる。また、中間軸受3の固定部31又はヒンジベース1の中間軸受取付部13の一方に中間軸受3を中間軸受取付部13に位置決めするための位置決め凸部34を有し、他方にこの位置決め凸部34に係合可能な位置決め凹部35を有する。この場合、中間軸受3の固定部31の他端側に位置決め凸部34として円形の凸起が形成され、ヒンジベース1の中間軸受取付部13のねじ挿通部130の上下にそれぞれ位置決め凸部34が係合可能な位置決め凹部35として円形の穴が形成される。このようにして受け部33を上軸受4側又は下軸受5側に配置して、固定部31が中間軸受取付部13に位置決め凸部34と位置決め凹部35とを係合されてねじ36を介して取り付けられる。
【0014】
上下一対の軸受4,5はそれぞれ、ヒンジベース1の一側の上下に、中間軸受3を中心に対称的に中間軸受3の受け部33に対向可能にかつヒンジピン9を挿通支持可能に形成される。この場合、上軸受4は、ヒンジベース1に一体で、ヒンジベース1の一側の上端部から上方向に延びる略矩形状の上部延長部41と、上部延長部41の上端から上部延長部41に対して直角に折曲されてヒンジベース1の一方の面側に向けて延び、突出端が略半円形に形成されてその略半円形の中心にヒンジピン挿通孔42を有する上部受け部43とからなる。下軸受5は、ヒンジベース1に一体で、ヒンジベース1の一側の下端部から下方向に延びる略矩形状の下部延長部51と、下部延長部51の下端から下部延長部51に対して直角に折曲されてヒンジベース1の一方の面側に向けて延び、突出端が略半円形に形成されてその略半円形の中心にヒンジピン挿通孔52を有する下部受け部53とからなる。
【0015】
上下一対のストッパー6,7はそれぞれ、ヒンジベース1の一側で中間軸受3と上下の各軸受4,5との間に、中間軸受3を中心に対称的にヒンジベース1の一側の縁部から溝形に形成される。この場合、上ストッパー6は、ヒンジベース1の一側で中間軸受3と上軸受4との間に形成され、ヒンジベース1の一側から他側に向けて延びるガイド溝61、及びガイド溝61の中間軸受3に対応する位置から中間軸受3に向けて延びるロック溝62からなり、下ストッパー7は、ヒンジベース1の一側で中間軸受3と下軸受5との間に形成され、ヒンジベース1の一側から他側に向けて延びるガイド溝71、及びガイド溝71の中間軸受3に対応する位置から中間軸受3に向けて延びるロック溝72からなる。
【0016】
ヒンジピン9は、
図3に示すように、鋼棒(丸棒)により略L字形に形成され、中間軸受3と上軸受4又は下軸受5との間の距離よりも長い所定の長さを有するピボット部91と、ピボット部91の(下)端部で折り曲げられ、ピボット部91よりも短い所定の長さで下ストッパ7ー又は上ストッパー6に係合可能なストッパー係合部92とを有する。また、このヒンジピン9のピボット部91の周面には、上下方向中央よりも上端部側所定の位置に溝93が全周に形成され、この溝93にばね部材用のストッパー94としてEリングが取り付けられる。このようにしてヒンジピン9はピボット部91が中間軸受3と上軸受4又は下軸受5との間に挿通され、ストッパー係合部92が中間軸受3と下軸受5又は上軸受4との間に配置される。
【0017】
ばね部材8は、
図3に示すように、コイルスプリングからなる(以下、ばね部材8をコイルスプリング8という。)。このコイルスプリング8は、中間軸受3と上軸受4又は下軸受5との間で、ヒンジピン9のピボット部91に巻き付けられ、一端がピボット部91の溝93に取付固定されるストッパー(Eリング)94に係合され、他端が中間軸受3の受け部33に係合されて、ヒンジピン9を常態として上方向又は下方向に移動付勢する。
【0018】
このようにしてピボットヒンジHは、
図1に示すように、ヒンジピン9のストッパー係合部92をコイルスプリング8の付勢力に抗して下降又は上昇させ下ストッパー7又は上ストッパー6に係合させることにより、ピボット部91が上軸受4から上方に又は下軸受5から下方にヒンジピン9として作用しない僅かな長さに突出する状態又はまったく突出されない状態に保持され、下ストッパー7又は上ストッパー6からヒンジピン9のストッパー係合部92の係合を外すことにより、ピボット部91がコイルスプリング8の付勢力により上軸受4から上方に又は下軸受5から下方にヒンジピン9として作用する長さに突出されるようになっている。
【0019】
図4、
図5及び
図6にこのピボットヒンジHの使用例を示している。
なお、
図5中及び
図6中、Cは制御機械などのケース本体、Dはケース本体Cの取付開口枠C1に取り付けられる扉で、扉Dを上下2つのピボットヒンジHで取付開口枠C1に取り付ける場合を例示している。
【0020】
図4に示すように、まず、上下2つのピボットヒンジH1,H2を準備する。この場合、まったく同じ部品構成の2つのピボットヒンジHを使用する。上部用のピボットヒンジH1の場合、
図4(a)に示すように、まず、中間軸受3の受け部33を上軸受4側に配置して中間軸受3をヒンジベース1の中間軸受取付部13に取り付ける。続いて、ヒンジピン9のストッパー係合部92を下にしてヒンジピン9のピボット部91を中間軸受3の受け部33(のヒンジピン挿通孔32)に下から通し、このピボット部91の周囲にコイルスプリング8を巻き付けてピボット部91の溝93にストッパー94を取り付け、ピボット部91の周囲にコイルスプリング8を装着する。このようにしてこのピボット部91を中間軸受3から上軸受4の受け部43(のヒンジピン挿通孔42)に挿通し、ストッパー係合部92を中間軸受3と下軸受5との間に配置する。そして、ストッパー係合部92をコイルスプリング8の付勢力に抗して下降させ下ストッパー7のロック溝72に係合させることにより、ピボット部91を上軸受4から上方にヒンジピン9として作用しない僅かな長さに突出する状態又はまったく突出されない状態に保持しておく。下部用のピボットヒンジH2の場合、
図4(b)に示すように、まず、中間軸受3の受け部33を下軸受5側に配置して中間軸受3をヒンジベース1の中間軸受取付部13に取り付ける。続いて、ヒンジピン9のストッパー係合部92を上にしてヒンジピン9のピボット部91を中間軸受3の受け部33(のヒンジピン挿通孔32)に上から通し、このピボット部91の周囲にコイルスプリング8を巻き付けてピボット部91の溝93にストッパー94を取り付け、ピボット部91の周囲にコイルスプリング8を装着する。このようにしてこのピボット部91を中間軸受3から下軸受5の受け部53(のヒンジピン挿通孔52)に挿通し、ストッパー係合部92を中間軸受3と上軸受4との間に配置する。そして、ストッパー係合部92をコイルスプリング8の付勢力に抗して上昇させ上ストッパー6のロック溝62に係合させることにより、ピボット部91を下軸受5から下方にヒンジピン9として作用しない僅かな長さに突出する状態又はまったく突出されない状態に保持しておく。
【0021】
次に、
図5に示すように、これら上下のピボットヒンジH1,H2をそれぞれ、ケース本体Cの取付開口枠C1の上部、下部に取り付ける。上部用のピボットヒンジH1の場合、ヒンジベース1の他側の位置決めガイド(他方の面の円形の凹形状)11と取付開口枠C1の上部側に予め形成された円形の凸状部とを係合させて取付開口枠C1の上部所定の位置に位置決めし、この状態から、ヒンジベース1の他側の取付ねじ挿通孔12から取付用のねじ14を挿通し取付開口枠C1に螺着して、ヒンジベース1を取付開口枠C1の上部に固定する。下部用のピボットヒンジH2の場合、ヒンジベース1の他側の位置決めガイド(他方の面の円形の凹形状)11と取付開口枠C1の下部側に予め形成された円形の凸状部とを係合させて取付開口枠C1の下部所定の位置に位置決めし、この状態から、ヒンジベース1の他側の取付ねじ挿通孔12から取付用のねじ14を挿通し取付開口枠C1に螺着して、ヒンジベース1を取付開口枠C1の下部に固定する。
【0022】
そして、
図5に示すように、扉Dを取付開口枠C1に上下の各ピボットヒンジH1,H2を介して取り付ける。この場合、扉Dを取付開口枠C1に近づけ、扉Dの上下端の各軸受孔D1,D2を上下の各ピボットヒンジH1,H2の各ピボット部91,91上に位置合わせして、この状態から、上部用のピボットヒンジH1において下ストッパー7からヒンジピン9のストッパー係合部92の係合を外すことにより、ピボット部91をコイルスプリング8の付勢力により上軸受4から上方にヒンジピン9として作用する長さに突出させて、扉Dの軸受孔D1に嵌入し、下部用のピボットヒンジH2において上ストッパー6からヒンジピン9のストッパー係合部92の係合を外すことにより、ピボット部91をコイルスプリング8の付勢力により下軸受5から下方にヒンジピン9として作用する長さに突出させて、扉Dの軸受孔D2に嵌入する。これにより、扉Dは、
図6に示すように、取付開口枠C1に上下の各ピボットヒンジH1,H2を介して開閉可能に取り付けられる。
【0023】
このようにして取り付けられた扉Dは、上部用のピボットヒンジH1において、ストッパー係合部92をコイルスプリング8の付勢力に抗して下降させ下ストッパー7に係合させることにより、ピボット部91が上軸受4から上方にヒンジピン9として作用しない僅かな長さに突出する状態又はまったく突出されない状態に保持され、下部用のピボットヒンジH2において、ストッパー係合部92をコイルスプリング8の付勢力に抗して上降させ上ストッパー6に係合させることにより、ピボット部91が下軸受5から下方にヒンジピン9として作用しない僅かな長さに突出する状態又はまったく突出されない状態に保持されるので、この状態にすることにより、扉Dを取付開口枠C1から引き離すだけで、扉Dを簡単に取り外すことができる。
また、この扉Dの取り外し後、再び扉Dを取付開口枠C1に取り付ける場合は、扉Dを取付開口枠C1に近づけ、扉Dの上下端の各軸受孔D1,D2を上下の各ピボットヒンジH1,H2の各ピボット部91,91上に位置合わせして、この状態から、上部用のピボットヒンジH1において下ストッパー7からストッパー係合部92の係合を外せば、ピボット部91がコイルスプリング8の付勢力により上軸受4から上方にヒンジピン9として作用する長さに突出されて、扉Dの軸受孔D1に嵌入し、下部用のピボットヒンジH2において上ストッパー7からストッパー係合部92の係合を外せば、ピボット部91がコイルスプリング8の付勢力により下軸受5から下方にヒンジピン9として作用する長さに突出されて、扉Dの軸受孔D2に嵌入し、扉Dを取付開口枠C1に簡単に取り付けることができる。
【0024】
以上説明したように、このピボットヒンジHによれば、既述のとおり、中間軸受3、ヒンジピン9を除く各部が上下対称に形成されているので、ヒンジピン9を中間軸受3とともに上下の向きを反転させてヒンジベース1に取り付けるだけで、上下兼用として使用することができ、上下兼用として部品を共通化し、部品点数の削減、製作コストの低減、及び部品管理の効率化を図ることができる。
また、このピボットヒンジHでは、ヒンジピン9のストッパー係合部92をコイルスプリング8の付勢力に抗して下降又は上昇させ下ストッパー7又は上ストッパー6に係合させるだけで、ピボット部91は上軸受4から上方に又は下軸受5から下方にヒンジピン9として作用しない僅かな長さに突出する状態又はまったく突出されない状態に保持され、下ストッパー7又は上ストッパー6からストッパー係合部92の係合を外すだけで、ピボット部91がコイルスプリング8の付勢力により上軸受4から上方に又は下軸受5から下方にヒンジピン9として作用する長さに突出されるので、扉の取り付け、取り外しを容易に行うことができる。
【0025】
なお、このピボットヒンジHは、既述の構成により、中間軸受3、ヒンジピン9を除く各部が上下対称に形成されるので、ヒンジベース1の一方の面と他方の面とを反転させれば、同様にして、左右兼用として使用することができ、左右兼用として部品を共通化し、部品点数の削減、製作コストの低減、及び部品管理の効率化を図ることができ、この場合も、ストッパー係合部92をコイルスプリング8の付勢力に抗して下降又は上昇させ下ストッパー7又は上ストッパー6に係合させるだけで、ピボット部91を上軸受4から上方に又は下軸受5から下方にヒンジピン9として作用しない僅かな長さに突出する状態又はまったく突出されない状態に保持し、下ストッパー7又は上ストッパー6からストッパー係合部92の係合を外すだけで、ピボット部91がコイルスプリング8の付勢力により上軸受4から上方に又は下軸受5から下方にヒンジピン9として作用する長さに突出されるので、扉の取り付け、取り外しを容易に行うことができる。
【0026】
また、このピボットヒンジHでは、上下一対のストッパー6,7をそれぞれ、ヒンジベース1の一側から他側に向けて延びるガイド溝61,71と、ガイド溝61,71の中間軸受3に対応する位置から中間軸受3に向けて延びるロック溝62,72とにより、全体として断面略凸字形(若しくは断面略ハット形)又は断面略逆凸字形(若しくは断面略逆ハット形)に形成しているので、ヒンジピン9のストッパー係合部92をコイルスプリング8の付勢力に抗して下降又は上昇させ下ストッパー7のロック溝72又は上ストッパー6のロック溝62に係合させることにより、ピボット部91が上軸受4から上方に又は下軸受5から下方にヒンジピン9として作用しない僅かな長さに突出する状態に保持され、このストッパー係合部92を下降又は上昇させ下ストッパー7のガイド溝71の奥側端又は上ストッパー6のガイド溝61の奥側端に第2のロック溝として係合させることにより、ピボット部91が上軸受4から上方に又は下軸受5から下方にまったく突出されない状態に保持されるようにしてもよい。このようにすると、扉を取付開口枠に取り付ける際に、ピボット部91を上軸受4から上方に又は下軸受5から下方にヒンジピン9として作用しない僅かな長さだけ突出させておくことで、扉の軸受孔とピボット部91の位置との位置合わせがしやすくなって、扉を取付開口枠により容易に取り付けることができ、また、扉を取付開口枠から取り外す際に、ピボット部91を上軸受4から上方に又は下軸受5から下方にまったく突出させないようにすることで、扉の軸受孔とピボット部91が外れやすくなって、扉を取付開口枠からより容易に取り外しすることができる、という利点がある。この場合、ガイド溝61,71の奥側端に第2のロック溝としてロック溝62,72と平行にロック溝62,72より浅い溝を形成してもよく、このようにすることで、ヒンジピン9のストッパー係合部92と第2のロック溝との係合を確実にすることができ、ストッパー係合部92が第2のロック溝から滑って離脱することがない。
【0027】
さらに、このピボットヒンジHでは、中間軸受3を、ヒンジベース1の中間軸受取付部13に当接される固定部31と、固定部31の一端から直角に立ち上げられ、ヒンジピン挿通孔32を有する受け部33とにより構成し、受け部33を上軸受4側又は下軸受5側に配置して、固定部31を中間軸受取付部13にねじ止めにより着脱可能に取り付けているが、この中間軸受を、ヒンジベースの中間軸受取付部に当接される固定部と、固定部の上下方向中間(中央)に直角に立ち上げられ、ヒンジピン挿通孔を有する受け部とにより構成して、受け部を上軸受と下軸受との中間(中央)に配置して、固定部を中間軸受取付部にねじ止めにより又は溶接により取り付けて、中間軸受をヒンジベースに一体的に固定してもよい。
また、ばね部材としてコイルスプリング8を採用し、コイルスプリング8を、中間軸受3と上軸受4又は下軸受5との間で、ヒンジピン9のピボット部91に巻き付け、一端をピボット部91のストッパー94に係合させ、他端を中間軸受3に係合させて、ヒンジピン9を常態として上方向又は下方向に移動付勢するようにしたが、ヒンジピンを常態として上方向又は下方向に移動付勢する構造であれば、他のばね手段、ばね機構を用いてもかまわない。
このようにしても上記ピボットヒンジHと同様の作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0028】
H ピボットヒンジ
H1 上部用のピボットヒンジ
H2 下部用のピボットヒンジ
1 ヒンジベース
11 位置決めガイド
12 取付ねじ挿通孔
13 中間軸受取付部
130 ねじ挿通部
14 取付用のねじ
2 ヒンジピンサポート部
3 中間軸受
30 ねじ挿通部
31 固定部
32 ヒンジピン挿通孔
33 受け部
34 位置決め凸部
35 位置決め凹部
36 ねじ
4 上軸受
41 上部延長部
42 ヒンジピン挿通孔
43 上部受け部
5 下軸受
51 下部延長部
52 ヒンジピン挿通孔
53 下部受け部
6 上ストッパー
61 ガイド溝
62 ロック溝
7 下ストッパー
71 ガイド溝
72 ロック溝
8 ばね部材(コイルスプリング)
9 ヒンジピン
91 ピボット部
92 ストッパー係合部
93 溝
94 ストッパー
C ケース本体
C1 取付開口枠
D 扉
D1 軸受孔
D2 軸受孔