特許第6363917号(P6363917)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社安藤・間の特許一覧

<>
  • 特許6363917-2点間相対変位表示装置 図000002
  • 特許6363917-2点間相対変位表示装置 図000003
  • 特許6363917-2点間相対変位表示装置 図000004
  • 特許6363917-2点間相対変位表示装置 図000005
  • 特許6363917-2点間相対変位表示装置 図000006
  • 特許6363917-2点間相対変位表示装置 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6363917
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】2点間相対変位表示装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 5/30 20060101AFI20180712BHJP
   G01D 7/00 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
   G01B5/30
   G01D7/00 Q
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-179000(P2014-179000)
(22)【出願日】2014年9月3日
(65)【公開番号】特開2016-53502(P2016-53502A)
(43)【公開日】2016年4月14日
【審査請求日】2017年5月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】303057365
【氏名又は名称】株式会社安藤・間
(74)【代理人】
【識別番号】100081514
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 一
(74)【代理人】
【識別番号】100082692
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵合 正博
(72)【発明者】
【氏名】松浦 恒久
【審査官】 八木 智規
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−309784(JP,A)
【文献】 特開2014−134421(JP,A)
【文献】 米国特許第5932810(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 5/00− 5/30
G01D 7/00− 7/12
G01H 1/00−17/00
G01M 13/00−13/04
G01M 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の外力による変形を計測するための所定の2点間に設置され、前記所定の2点間の相対変位量を計測し、構造物の変形の状態を表示する2点間相対変位表示装置であって、
構造物の任意の位置に設置され、電源との接続により作動し、構造物の変形の程度を報知するための表示装置と、
前記所定の2点の一方に一端を固定して前記所定の2点間に配置され、前記所定の2点間の相対変位に従動して、前記所定の2点間の相対変位量を測定する測定部材と、
筐体と、前記筐体内で直線的に移動可能に配設され、絶縁部と通電部とからなる可動部材と、前記筐体内に前記可動部材の移動により前記絶縁部又は前記通電部に接触可能に配設され、前記電源と前記表示装置とを電気的に接続するための電源側の接点及び表示装置側の接点とを有し、前記可動部材の先端を前記測定部材の他端に作動連結して前記所定の2点の他方に設置され、前記所定の2点間の相対変位量が所定の値を超えるレベルに達したときに前記所定の2点間で引張られる前記測定部材により作動し、前記電源と前記表示装置とを電気的に接続して、前記表示装置を作動させるスイッチと、
を備え、
前記所定の値を超えるレベルは、構造物を調査することを必要とする調査レベルと、構造物の使用を禁止する構造物使用禁止レベルの少なくとも2段階に区分され、前記表示装置は、前記各レベルに応じた構造物の変形の程度を報知する少なくとも2つの表示形式を有し、前記測定部材は、長さの異なる少なくとも2本の線材からなり、短い線材は調査レベル用、長い線材は構造物使用禁止レベル用で、前記スイッチは前記各線材毎に設けられ、それぞれ、前記表示装置を前記各レベルに応じた表示形式に切り替え可能に、前記可動部材に1つの通電部が配置され、前記筐体内に1組の電源側の接点及び表示装置側の接点が配置されて構成され、
構造物が外力を受け、前記所定の2点間の相対変位量が前記所定の値を超えたときに、当該相対変位量に応じた構造物の変形の程度を報知する、
ことを特徴とする2点間相対変位表示装置。
【請求項2】
表示装置は、構造物の変形の程度を、有色光で報知する発光装置、又は音声若しくは警報音を含む音で報知する発音装置、又はその両方で報知する発光・発音装置から選択される請求項1に記載の2点間相対変位表示装置。
【請求項3】
多層構造物の層間変位を計測する層間変位計測装置として使用され、この場合、各階層の架構内の各対角間に各対角線上に沿って測定部材がスイッチとともに取り付けられ、各階層の任意の位置に表示装置が設置される請求項1又は2に記載の2点間相対変位表示装置。
【請求項4】
構造物と構造物との間に設置されて、前記各構造物間の相対変位量を計測する変位計測装置として使用され、この場合、前記各構造物の上部間に測定部材がスイッチとともに取り付けられ、前記各構造物間の任意の位置に表示装置が設置される請求項1又は2に記載の2点間相対変位表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震時の多層構造物の最大層間変位を測定し多層構造物の損傷の状態を表示するなど、2点間の相対変位を計測し、構造物の変形の状態を表示するのに使用する2点間相対変位表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数階の建物や多層の土木構造物などの多層構造物が大きな地震を受けた場合、当該多層構造物について安全性が維持されているか、また再使用が可能であるかどうかを確認する必要がある。多層構造物の安全性はその主体部分の骨組、筋交い、壁材などの構造部材の損傷の程度及び層間変位に基づいて判断することができ、従来より、多層構造物の安全性を地震発生後速やかにかつ簡単に確認できる層間変位検出装置が提案されており、これが例えば特許文献1により開示されている。
【0003】
この文献1の層間変位検出装置は、測定すべき層間に対向する上層床又は下層床に固定され、層間変位に応ずる径の円を有するスケールと、一端がスケールの中心の周辺と摺動自在に接するように他端をスケールと層間を隔てて対向する下層床又は上層床に固定される剛性支持柱と、この剛性支持柱の一端に取り付けられるペン又は鉛筆などの記録具とを備えて構成され、地震前に記録具をスケールの円の中心に位置決めし、地震後にスケール上の記録具による記録位置から層間変位を求めるようになっている。
【0004】
ところが、この層間変位検出装置では、地震時に、スケールが上層床又は下層床とともに移動し、剛性支持柱及び記録具が下層床又は上層床とともに移動して、記録具がスケール上を地震の開始から終了までの間継続して上層床及び下層床の動きに従って摺動し、スケール上に記録を残すので、スケール上に残された記録は複雑な記録線とならざるを得ず、この記録線から即座に、多層構造物の最大層間変位及び残留変位を求め、多層構造物の安全性を確認することは、専門の技術者でない限り、難しい。この場合、スケール上の記録から最大層間変位及び残留変位を求めるには、スケールを回収して、専門の技術者の分析による他ない。
【0005】
そこで、本願出願人は、従前、専門の技術者でなくても、地震時の多層構造物の最大層間変位を求め、多層構造物の損傷状態を把握して、その安全性を確認できること、鉄骨造(S造)、鉄筋コンクリート造(RC造)、鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)のどの構造形式の構造物にも適用できること、戸建て住宅などの建物にも適用できること、装置構成が簡単でメンテナンスを不要とすること、装置の小型化を図り、間仕切り壁内部にも設置可能にすることなど、を目的として、層間変位計測装置を創案し、これを特許文献2により提案している。
この文献2の層間変位計測装置は、上階層に固定される目盛りを有するスケールと、スケール上に摺動可能に配設され、スケールの目盛りを指し示すためのポインタと、下階層に固定され、階層間の相対変位とともに移動して、スケール上のポインタを計測基点から階層間の相対変位量だけ押し移動する層間変位伝達部材とを備え、ポインタの停止位置と目盛りとにより最大層間変位量を計測し、層間変位伝達部材の停止位置と目盛りとにより残留変位量を計測するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−201703号公報
【特許文献2】特開2010−249711公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の層間変位計測装置では、次のような問題がある。
(1)層間変位を正確に計測するために、層間変位計測装置を支持するための治具に十分な剛性を確保する必要があり、このため、装置全体の小型化には限界ある。
(2)梁に層間変位計測装置を支持するための治具を取り付けるために、その取付位置によっては、地震時の梁の変形の影響を受けて、正確な層間変位を計測できない恐れがある。
【0008】
また、近時の大震災の結果を受けて、大地震の発生時に被災地の建物や被災者や帰宅困難者を受け入れる各施設などでは、当該建物や施設が安全であるか否かを早期に確認することが求められており、この種の層間変位計測装置では、建物、施設の安全性を早期にしかも専門の技術者でなくても簡易に確認、判断できることが重要である。
【0009】
本発明は、このような従来の問題を解決するものであり、この種の層間変位計測装置として、専門の技術者でなくても、地震時の多層構造物の最大変形(最大層間変位)を求め、多層構造物の損傷状況、及びその安全性を簡易に確認、判断できること、計測値の精度の向上を図ること、装置構成が簡単でメンテナンスを不要又は容易にすること、装置の小型、軽量化を図り、間仕切り壁内部などにも設置可能とすること、鉄骨造(S造)、鉄筋コンクリート造(RC造)、鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)のどの構造形式の構造物にも適用できること、戸建て住宅などの建物にも適用できること、新築でも既存の建物でも簡易に設置できること、さらに、用途を拡大し、地震や強風による仮設足場などの転倒の危険性を簡易に把握できる機器としても利用できることなど、を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の2点間相対変位表示装置は、
構造物の外力による変形を計測するための所定の2点間に設置され、前記所定の2点間の相対変位量を計測し、構造物の変形の状態を表示する2点間相対変位表示装置であって、
構造物の任意の位置に設置され、電源との接続により作動し、構造物の変形の程度を報知するための表示装置と、
前記所定の2点の一方に一端を固定して前記所定の2点間に配置され、前記所定の2点間の相対変位に従動して、前記所定の2点間の相対変位量を測定する測定部材と、
筐体と、前記筐体内で直線的に移動可能に配設され、絶縁部と通電部とからなる可動部材と、前記筐体内に前記可動部材の移動により前記絶縁部又は前記通電部に接触可能に配設され、前記電源と前記表示装置とを電気的に接続するための電源側の接点及び表示装置側の接点とを有し、前記可動部材の先端を前記測定部材の他端に作動連結して前記所定の2点の他方に設置され、前記所定の2点間の相対変位量が所定の値を超えるレベルに達したときに前記所定の2点間で引張られる前記測定部材により作動し、前記電源と前記表示装置とを電気的に接続して、前記表示装置を作動させるスイッチと
を備え、
前記所定の値を超えるレベルは、構造物を調査することを必要とする調査レベルと、構造物の使用を禁止する構造物使用禁止レベルの少なくとも2段階に区分され、前記表示装置は、前記各レベルに応じた構造物の変形の程度を報知する少なくとも2つの表示形式を有し、前記測定部材は、長さの異なる少なくとも2本の線材からなり、短い線材は調査レベル用、長い線材は構造物使用禁止レベル用で、前記スイッチは前記各線材毎に設けられ、それぞれ、前記表示装置を前記各レベルに応じた表示形式に切り替え可能に、前記可動部材に1つの通電部が配置され、前記筐体内に1組の電源側の接点及び表示装置側の接点が配置されて構成され、
構造物が外力を受け、前記所定の2点間の相対変位量が前記所定の値を超えたときに、当該相対変位量に応じた構造物の変形の程度を報知する、
ことを要旨とする。
【0011】
また、この2点間相対変位表示装置は各部が次のように具体化される。
(1)表示装置は、構造物の変形の程度を、有色光で報知する発光装置、又は音声若しくは警報音を含む音で報知する発音装置、又はその両方で報知する発光・発音装置から選択される。
)多層構造物の層間変位を計測する層間変位計測装置として使用され、この場合、各階層の架構内の各対角間に各対角線上に沿って測定部材がスイッチとともに取り付けられ、各階層の任意の位置に表示装置が設置される。
)構造物と構造物との間に設置されて、前記各構造物間の相対変位量を計測する変位計測装置として使用され、この場合、前記各構造物の上部間に測定部材がスイッチとともに取り付けられ、前記各構造間の任意の位置に表示装置が設置される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の2点間相対変位表示装置では、上記の各構成により、次のような格別な効果を奏する。
(1)この装置では、構造物が外力を受け、構造物の変形を計測するための所定の2点間の相対変位量が所定の値を超えたとき、少なくとも構造物を調査することを必要とする調査レベル、構造物の使用を禁止する構造物使用禁止レベルに達したときに、所定の2点間で引張られる測定部材によりスイッチを作動して電源と表示装置とを電気的に接続し、表示装置を作動させて、当該相対変位量に応じた構造物の変形の程度を報知するようにしたので、この報知により、専門の技術者でなくても、地震時の構造物の変形(層間変位)を求め、構造物の損傷状況、及びその安全性を簡易に確認、判断することができる。
(2)この装置は、構造物の外力による変形を生じた所定の2点間を直接計測できるので、計測値の精度の向上を図ることができる。
(3)この装置は、光、音を発生する表示装置、線材からなる測定部材、筐体、絶縁部及び通電部を有する可動部材、電源側の接点及び表示装置側の接点からなるスイッチにより構成されるので、装置構成が簡単で、メンテナンスを不要又は容易にすることができる。
(4)この装置は、光、音を発生する表示装置、線材からなる測定部材、測定部材の端部に取り付けられるスイッチからなり、構造物の外力による変形を生じる所定の2点間に測定部材をスイッチとともに取り付け、発光装置は任意の位置に設置するので、特に大きな支持部材を不要とし、装置全体の小型、軽量化を図ることができ、間仕切り壁内部などにも設置することができる。
(5)この装置では、構造物の外力による変形を生じる所定の2点間に線材からなる測定部材をスイッチとともに取り付け、表示装置は任意の位置に設置するので、鉄骨造(S造)、鉄筋コンクリート造(RC造)、鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)のどの構造形式の構造物にも適用することができる。
(6)この装置では、構造物の外力による変形を生じる所定の2点間に線材からなる測定部材をスイッチとともに取り付け、表示装置は任意の位置に設置するので、戸建て住宅などの建物にも適用することができる。
(7)この装置では、構造物の外力による変形を生じる所定の2点間に線材からなる測定部材をスイッチとともに取り付け、表示装置は任意の位置に設置するので、新築でも既存の建物でも簡易に設置することができる。
(8)さらに、この装置は、用途を拡大し、地震や強風による仮設足場の転倒の危険性を簡易に把握できる機器としても利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施の形態における2点間相対変位表示装置及び本装置の適用例を示す正面図
図2】同装置の特にスイッチの概略構成を示す正面図
図3】同装置が適用される多層構造物(建物)の層間変位と多層構造物(建物)のの変形の程度を示す図
図4】同装置を一部変更して示す正面図
図5】同装置の他の適用例を示す図
図6図5の要部(A部)を拡大して示す図
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、この発明を実施するための形態について図を用いて説明する。図1及び図2に2点間相対変位表示装置を示している。図1及び図2に示すように、2点間相対変位表示装置Mは、多層構造物の外力による変形を計測するための所定の2点間に設置され、この所定の2点間の相対変位量を計測し、多層構造物の変形の状態を表示するもので、多層構造物の任意の位置に設置され、電源B1、B2との接続により作動し、多層構造物の変形の程度を報知するための表示装置1と、所定の2点の一方に一端を固定して所定の2点間に配置され、所定の2点間の相対変位に従動して、所定の2点間の相対変位量を測定する測定部材2と、測定部材2の他端に作動連結して所定の2点の他方に設置され、所定の2点間の相対変位量が所定の値を超えるレベルに達したときに所定の2点間で引張られる測定部材2により作動し、電源B1又はB2と表示装置1とを電気的に接続して、表示装置1を作動させるスイッチ3とを備え、これら表示装置1、測定部材2、及びスイッチ3により、多層構造物が外力を受け、所定の2点間の相対変位量が所定の値を超えたときに、当該相対変位量に応じた多層構造物の変形の程度を報知するようになっている。
【0015】
この装置Mにおいて、表示装置1は、多層構造物の変形の程度を、有色光で報知する発光装置、又は音声若しくは警報音を含む音で報知する発音装置、又はその両方で報知する発光・発音装置から選択され、この場合、発光装置(以下、発光装置1という。)が採用される。
また、この場合、所定の2点間の相対変位量が所定の値を超えるレベルに達したときの「所定の値を超えるレベル」は、多層構造物を調査することを必要とするレベルの「調査レベル」と、多層構造物の使用を禁止するレベルの「構造物使用禁止レベル」の少なくとも2段階に区分されて、発光装置1は、各レベルに応じた多層構造物の変形の程度を報知する少なくとも2つの表示形式を有し、この場合、「調査レベル」を報知するための黄色の光を発する黄色発光部11及びこれを作動させるための電源B1と、「構造物使用禁止レベル」を報知するための赤色の光を発する赤色発光部12及びこれを作動させるための電源B2により構成され、スイッチ3により、黄色発光部11と電源B1が接続されることにより黄色発光部11から黄色の光を発光し、赤色発光部12と電源B2が接続されることにより赤色発光部12から赤色の光を発光するようになっている。
【0016】
この装置Mにおいて、測定部材2は線材からなり、この場合、ワイヤーが採用される。このワイヤーは所定の2点間の長さ、スイッチ3の大きさやスイッチ3の動作範囲などを考慮して適宜の長さに形成される。
また、この場合、既述のとおり、「所定の値を超えるレベル」が、多層構造物を調査することを必要とする「調査レベル」と、多層構造物の使用を禁止する「構造物使用禁止レベル」の少なくとも2段階に区分されていて、測定部材2は1本のワイヤー(線材)からなり、一端が所定の2点間の一方に固定され、他端がスイッチ3を介して所定の2点間の他方に連結されて、所定の2点間に配置され、所定の2点間の相対変位に従動し引張られて、所定の2点間の相対変位量を測定するようになっている。
【0017】
この装置Mにおいて、スイッチ3は、筐体30と、筐体30内で直線的に移動可能に配設され、絶縁部と通電部とからなる可動部材31と、筐体30内に可動部材31の移動により可動部材31の絶縁部又は通電部に接触可能に配設され、電源B1又はB2と発光装置1とを電気的に接続するための電源側の接点321、322及び発光装置側の接点323、324とを備えて構成される。
また、この場合、既述のとおり、「所定の値を超えるレベル」が、多層構造物を調査することを必要とする「調査レベル」と、多層構造物の使用を禁止する「構造物使用禁止レベル」の少なくとも2段階に区分されていて、スイッチ3は、発光装置1を各レベルに応じた発光形式(表示形式)に切り替え可能に、可動部材31に少なくとも2つの通電部b1、b2が可動部材31の移動方向に所定の間隔で配置され(この場合、可動部材31は例えば(丸)棒材からなるピンで、先端から後端方向に順に、絶縁体の帯からなる絶縁部a1、導体の帯からなる第1通電部b1、絶縁体の帯からなる絶縁部a2、導体の帯からなる第2通電部b2、絶縁体の帯からなる絶縁部a3がそれぞれ所定の長さに設けられ)、所定の筐体30内に少なくとも2組の電源側の接点321、322及び発光装置側の接点323、324が可動部材31の移動方向に所定の間隔で配置されて(この場合、筐体30内の可動部材31の移動経路上で先端側の所定の位置に第1の電源側の接点321及び発光装置側の接点323、中間所定の位置に第2の電源側の接点322及び発光装置側の接点324がそれぞれ設置されて)構成され、このスイッチ3の可動部材31の先端に測定部材2が作動連結される。このようにして可動部材31が通常筐体30内に保持され、可動部材31の各絶縁部a1、a2がそれぞれ第1の電源側の接点321及び発光装置側の接点323、第2の電源側の接点322及び発光装置側の接点324に接触して非通電状態となり、この状態から、多層構造物が外力により変形して所定の2点間が相対変位すると、可動部材31が測定部材2により引張られて移動し、所定の2点間の相対変位量が所定の値を超え、「調査レベル」又は「構造物使用禁止レベル」の領域に達すると、可動部材31の所定量の移動により可動部材31の第1の通電部b1が第1の電源側の接点321及び発光装置側の接点323間に、又は第2の通電部b2が第2の電源側の接点322及び発光装置側の接点324間に接触して、発光装置1の黄色発光部11と電源B1、又は赤色発光部12と電源B2とを電気的に接続するようになっている。
【0018】
このようにこの2点間相対変位表示装置Mでは、多層構造物が外力を受け、多層構造物の変形を計測するための所定の2点間の相対変位量が所定の値を超えたときに、所定の2点間で引張られる測定部材2によりスイッチ3が作動し、筐体30内で可動部材31が移動して、可動部材31の第1の通電部b1が第1の電源側の接点321及び発光装置側の接点323間に、又は第2の通電部b2が第2の電源側の接点322及び発光装置側の接点324間に接触して通電状態となり、発光装置1の黄色発光部11と電源B1、又は赤色発光部12と電源B2が電気的に接続されて、黄色発光部11又は赤色発光部12が作動し、黄色発光部11又は赤色発光部12から黄色の光又は赤色の光を発して、所定の2点間の相対変位量に応じた多層構造物の変形の程度、すなわち「調査レベル」又は「構造物使用禁止レベル」を報知する。
【0019】
図1はまたこの2点間相対変位表示装置Mを多層構造の建物A1の層間変位を計測表示する層間変位表示装置として使用する場合を併せて示している。このような多層構造の建物A1にあっては、各階層の架構内の各対角間を建物A1の変形を計測するための所定の2点間とし、各対角間(つまり、上階の梁下面の角部とこれに対向する下階の梁上面の角部との間)に各対角線に沿って測定部材2がスイッチ3とともに取り付けられ、各階層の任意の位置、この場合、一方の柱付近に発光装置1が設置される。なお、測定部材2は架構内の対角線の長さ、スイッチ3の大きさ(可動部材31の長さなど)やスイッチ3の動作範囲(可動部材31の移動範囲)などを考慮して適宜の長さに形成される。
また、この場合、この建物A1では、地震などの外力を受けると、図3(a)に示すように、層間変形角θ0で、一方の対角間の対角線の長さLが所定の値δ0増加し、この範囲内の増加であれば、建物A1の継続使用が可能であり、図3(b)に示すように、層間変形角θ1で、一方の対角間の対角線の長さLが所定の値δ0を超えてδ1増加し、「調査レベル」の領域に達して、建物A1の調査が必要となり、図3(c)に示すように、層間変形角θ2で、一方の対角間の対角線の長さLが所定の値δ0を超えてδ1+δ2増加し、「建物使用禁止レベル」の領域に達して、建物A1の使用が禁止とされる。
このような建物A1が地震などの外力を受けて、層間変形角θ0まで変位し、一方の対角間の対角線の長さLが所定の値δ0まで増加すると、この対角間で引張られる測定部材2によりスイッチ3が作動し、筐体30内で可動部材31がδ0移動するが、この場合、可動部材31の絶縁部a1が第1の電源側の接点321及び発光装置側の接点323間に接触し、絶縁部a2が第2の電源側の接点322及び発光装置側の接点324間に接触したままで、非通電状態であり、発光装置1の黄色発光部11、赤色発光部12はいずれも電源B1、B2と電気的に接続されず作動しない。そして、建物A1が層間変形角θ1まで変位し、一方の対角間の対角線の長さLが所定の値δ0を超えて増加量がδ1の範囲内で増加すると、この対角間で引張られる測定部材2によりスイッチ3が作動し、筐体30内で可動部材31がδ0+増加量(δ1以下)移動し、可動部材31の第1の通電部b1が第1の電源側の接点321及び発光装置側の接点323間に接触して通電状態となり(可動部材31の第2の通電部b2は第2の電源側の接点322及び発光装置側の接点324間から離れて非通電状態で)、発光装置1の黄色発光部11と電源B1が電気的に接続されて黄色発光部11が作動し、黄色発光部11から黄色の光を発して、所定の2点間の相対変位量に応じた多層構造物の変形の程度、すなわち「調査レベル」を報知する。また、建物A1が層間変形角θ2まで変位し、一方の対角間の対角線の長さLが所定の値δ0を超えてδ1+増加量がδ2の範囲内で増加すると、この対角間で引張られる測定部材2によりスイッチ3が作動し、筐体30内で可動部材31がδ0+δ1+増加量(δ2以下)移動し、(可動部材31の第1の通電部b1は第1の電源側の接点321及び発光装置側の接点323間から離れて非通電状態で)可動部材31の第2の通電部b2が第2の電源側の接点322及び発光装置側の接点324間に接触して通電状態となり、発光装置1の赤色発光部12と電源B2が電気的に接続されて赤色発光部12が作動し、赤色発光部12から赤色の光を発して、所定の2点間の相対変位量に応じた建物の変形の程度、すなわち「建物使用禁止レベル」を報知する。
【0020】
以上説明したように、この2点間相対変位表示装置Mでは、多層構造物(建物A1)が外力を受けて、多層構造物(建物A1)の変形を計測するための所定の2点間の相対変位量が所定の値を超えたときに、所定の2点間で引張られる測定部材2によりスイッチ3を作動して電源B1又はB2と発光装置1、この場合、異なる2色の発光部11又は12とを電気的に接続し、この発光装置1を作動させて、当該相対変位量に応じた多層構造物(建物)の変形の程度を報知、この場合、異なる2色の発光で表示するようにしたので、この報知により、専門の技術者でなくても、地震時の多層構造物(建物A1)の変形(層間変位)を求め、多層構造物(建物A1)の損傷状況、及びその安全性を簡易に確認、判断することができる。
【0021】
また、この装置Mはさらに次のような利点を有する。
(1)この装置Mでは、多層構造物(建物A1)の外力による変形を生じる所定の2点間、この場合、多層構造物(建物A1)の架構の対角間を直接計測できるので、梁の変形などの影響を受けることがなく、計測値の精度の向上を図ることができる。
(2)この装置Mは、発光装置1、ワイヤーからなる測定部材2、筐体30、絶縁部a1,a2,a3及び通電部b1,b2を有する可動部材31、電源側の接点321,322及び発光装置側の接点323,324からなるスイッチ3により構成されるので、装置構成が簡単で、メンテナンスを不要又は容易とすることができる。
(3)この装置Mは、発光装置1、ワイヤーからなる測定部材2、測定部材2の端部に取り付けられるスイッチ3からなり、多層構造物(建物A1)の外力による変形を生じる所定の2点間、この場合、多層構造物(建物A1)の架構の対角間に測定部材2をスイッチ3とともに取り付け、発光装置1は任意の位置に設置するので、特に大きな支持部材を不要として、装置全体の小型、軽量化を図ることができ、間仕切り壁内部などにも設置することができる。
(4)この装置Mでは、多層構造物(建物A1)の外力による変形を生じる所定の2点間、この場合、多層構造物(建物A1)の架構の対角間に測定部材2をスイッチ3とともに取り付け、発光装置1は任意の位置に設置するので、鉄骨造(S造)、鉄筋コンクリート造(RC造)、鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)のどの構造形式の構造物(建物)にも適用することができ、また、戸建て住宅などの建物でも適用することができ、さらに、新築でも既存の建物でも簡易に設置することができる。
【0022】
なお、この実施の形態では、所定の値を超えるレベルは、多層構造物(建物A1)を調査することを必要とする「調査レベル」と、多層構造物(建物A1)の使用を禁止する「構造物(建物)使用禁止レベル」の少なくとも2段階に区分され、発光装置1は、各レベルに応じた多層構造物(建物A1)の変形の程度を報知する少なくとも異なる2色の発光形式(表示形式)を有し、測定部材2は1本の線材(ワイヤー)からなり、スイッチ3は、発光装置1を各レベルに応じた発光形式に切り替え可能に、可動部材31に少なくとも2つの通電部b1、b2が可動部材31の移動方向に所定の間隔で配置され、筐体30内に少なくとも2組の電源側の接点321、322及び発光装置側の接点323、324が可動部材31の移動方向に所定の間隔で配置されて構成され、所定の2点間の相対変位量が所定の値を超えたときに、各レベルに応じた多層構造物(建物A1)の変形の程度を報知するようにしたが、これに代えて、図4に示すように、所定の値を超えるレベルは、同様に、多層構造物(建物A1)を調査することを必要とする「調査レベル」と、多層構造物(建物A1)の使用を禁止する「構造物(建物)使用禁止レベル」の少なくとも2段階に区分され、発光装置1は、同様に、各レベルに応じた多層構造物(建物A1)の変形の程度を報知する少なくとも2つの発光形式を有し、測定部材2に、特に長さの異なる少なくとも2本の線材(ワイヤー)を使用し、短い線材(ワイヤー)は調査レベル用、長い線材(ワイヤー)は構造物(建物)使用禁止レベル用で、スイッチ3は長さの異なる各測定部材2毎に設けられ、それぞれ、発光装置1を各レベルに応じた発光形式に切り替え可能に、可動部材に1つの通電部が配置され、筐体内に1組の電源側の接点及び発光装置側の接点が配置されて構成され、所定の2点間の相対変位量が所定の値を超えたときに、各レベルに応じた多層構造物(建物)の変形の程度を報知するようにしてもよく、このようにしても上記と同様の作用効果を得ることができる。
【0023】
また、この2点間相対変位表示装置Mは、構造物と構造物との間に設置されて、各構造物間の相対変位量を計測する変位計測装置として使用することができ、その一例を図5及び図6に示している。この適用例では、一方の構造物は例えば多層構造の建物の躯体A2で、他方の構造物が例えば仮設足場A3であり、本装置Mは、地震や強風などの外力により仮設足場A3が傾き、転倒の危険性を簡易に把握するような場合に用いられる。
この場合、建物の躯体A2と仮設足場A3の上部間に測定部材2がスイッチ3とともに取り付けられ、建物の躯体A2と仮設足場A3との間の任意の位置に発光装置1が設置される。発光装置1、測定部材2、スイッチ3は既に説明したとおりである。
このようにして仮設足場A3が地震や強風などの外力により傾き、建物の躯体A2と仮設足場A3との間の距離(相対変位量)が所定の値を超えたときに、建物の躯体A2と仮設足場A3間で引張られる測定部材2によりスイッチ3を作動して電源B1又はB2と発光装置1、この場合、異なる2色の発光部11又は12とを電気的に接続し、この発光装置1を作動させて、当該相対変位量に応じた仮設足場A3の変形の程度を、異なる2色の発光で、この場合、黄色の発光により「(仮設足場の)調査レベル」を、赤色の発光により「仮設足場使用禁止レベル」を表示する。
このようにすることで、仮設足場A3が地震や強風などの外力により傾き、転倒の危険性を簡易に把握することができる。
【0024】
なお、上記各実施の形態では、特に表示装置に発光装置が採用される場合について説明したが、発光装置に代えて音声や警報音などの音で報知する発音装置を用い、又はこれら発光装置と発音装置とを組み合わせて使用して、構造物の変形の程度を、音声や警報などで報知してもよく、また、有色の光と音声や警報などを組み合わせて報知してもよく、このようにしても、上記各実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0025】
M 2点間相対変位表示装置
B1 電源
B2 電源
A1 建物
A2 建物の躯体
A3 仮設足場
1 表示装置(発光装置)
11 (黄色)発光部
12 (赤色)発光部
2 測定部材
3 スイッチ
30 筐体
31 可動部材
a1,a2,a3 絶縁部
b1 (第1)通電部
b2 (第2)通電部
321 (第1の)電源側の接点
322 (第1の)発光装置側の接点
323 (第2の)電源側の接点
324 (第2の)発光装置側の接点
図1
図2
図3
図4
図5
図6