(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、従来の補強体は、シャフトの内腔を大きく保つため、先端の断面積が小さく、先端が細く尖っているものを使用していた。しかしながら、このような補強体を使用したカテーテルは、カテーテルが湾曲した際、その補強体がシャフトを突き破って血管壁に刺さる虞がある。そのため、補強体の先端をシャフトに接合して固定することが考えられている。しかし、上述の補強体は、その先端が細いため、シャフトへの接合面積が十分に確保できず、補強体の先端がシャフトに固定されにくい。そのため、このような補強体では、その補強体がシャフトを突き破ることを効率的に防止することは困難である。
【0008】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、補強体がシャフト内に配置されたカテーテルにおいて、補強体がシャフトを突き破ることを効果的に防止することができるカテーテルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明は、中空状のシャフトと、前記シャフト内に配置された内管と、を備え、前記シャフトは、先端シャフトと、先端部が前記先端シャフトの基端部に接続され、前記先端シャフトとは剛性が異なる基端シャフトと、を有し、前記先端シャフト内及び前記基端シャフト内には補強体が配置されており、前記補強体は、前記先端シャフト及び前記基端シャフトに跨って延在する本体部と、前記本体部の先端部に設けられ、前記先端シャフトと前記内管との間に配置された先端拡大部とを有し、前記先端拡大部は、湾曲した細線要素によって立体的に形成されており、且つ、前記本体部の先端部よりも大径に構成さ
れ、前記先端拡大部では、前記細線要素が螺旋形状をなしており、前記先端拡大部の最先端部は、前記本体部側に湾曲している、ことを特徴とする。ここで、「先端拡大部は、湾曲した細線要素によって立体的に形成されている」とは、補強体の先端拡大部が一平面内に存在する平面的な形状ではなく、本体部の軸(X軸とする)に対して垂直な軸であって互いに直交するY軸及びZ軸の方向に拡がりをもつように細線要素が湾曲しており、これにより先端拡大部が補強体の本体部と同一平面上にないことをいう。なお、湾曲した細線要素とは、屈曲した細線要素も含む。
【0010】
上記のように構成されたカテーテルによれば、補強体に先端拡大部が設けられるため、補強体の先端部と、先端シャフト又は基端シャフトとの接触面積が増大する。これにより、補強体が先端シャフトを突き破ることを好適に抑制することができる。また、先端拡大部は、屈曲した細線要素であり、柔軟性を有するため、先端拡大部が配置された部分のカテーテルの柔軟性を好適に維持できる。
【0011】
上記のカテーテルにおいて、前記先端シャフトの先端に接続され、拡張用流体により拡張及び収縮が可能なバルーンを備え、前記先端シャフトの内腔及び前記基端シャフトの内腔は、前記拡張用流体の流路であり、前記先端拡大部は、前記先端拡大部の先端側と基端側とを連通する連通路を有してもよい。この構成によれば、先端拡大部が連通路を有するので、バルーンを拡張及び収縮させる際に、拡張用流体の流れを阻害することがない。すなわち、補強体は、先端拡大部に連通路を有するため、シャフトの断面において補強体を有しない空間を持ち、シャフトの内腔を大きく保つことができる。よって、バルーンの拡張及び収縮を支障なく行うことができる。
【0014】
上記のカテーテルにおいて、前記先端拡大部は、前記内管を囲むことなく前記内管と前記先端シャフトとの間に配置されていてもよい。
【0015】
また、本発明のカテーテルは、中空状のシャフトと、前記シャフト内に配置された内管と、を備え、前記シャフトは、先端シャフトと、先端部が前記先端シャフトの基端部に接続され、前記先端シャフトとは剛性が異なる基端シャフトと、を有し、前記先端シャフト内及び前記基端シャフト内には補強体が配置されており、前記補強体は、前記先端シャフト及び前記基端シャフトに跨って延在する本体部と、前記本体部の先端部に設けられ、前記先端シャフトと前記内管との間に配置された先端拡大部とを有し、前記先端拡大部は、湾曲した細線要素によって立体的に形成されており、且つ、前記本体部の先端部よりも大径に構成され、前記先端拡大部は、前記内管を囲んでい
る。
【0016】
上記のカテーテルにおいて、前記先端拡大部は、前記先端シャフトの内周面又は前記内管の外周面に接触していてもよい。これにより、先端拡大部を安定して配置することができる。
【0017】
上記のカテーテルにおいて、前記先端拡大部は、前記先端シャフトの内周面と前記内管の外周面の両方に接触していてもよい。これにより、先端拡大部を一層安定して配置することができる。
【0018】
上記のカテーテルにおいて、前記先端拡大部は、前記先端シャフトの内周面と前記内管の内周面の少なくとも一方に固着されていてもよい。補強体は先端拡大部において先端シャフトの内周面又は内管の内周面との接触面積が増加されているため、先端拡大部を先端シャフト又は内管に対して安定して固定することができる。
【0019】
上記のカテーテルにおいて、前記先端シャフト又は前記内管の少なくとも一方には、前記先端拡大部に係合するストッパが設けられていてもよい。この構成により、先端拡大部を先端シャフト内の所定位置に容易に位置決めすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のカテーテルによれば、補強体がシャフトを突き破ることを効果的に防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係るカテーテルについて好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態に係るカテーテル10の構成を示す一部省略概略図である。
図2は、カテーテル10の先端側部分の模式的断面図である。カテーテル10は、長尺なシャフト12を生体器官、例えば冠動脈に挿通させ、その先端側に設けられたバルーン14を狭窄部(病変部)で拡張させることで該狭窄部を押し広げて治療する、いわゆるPTCA(Percutaneous Transluminal Coronary Angioplasty:経皮的冠動脈形成術)拡張カテーテルである。
【0024】
本発明は、PTCA拡張カテーテル以外のもの、例えば、他の血管、胆管、気管、食道、尿道、その他の臓器等の生体器官内に形成された病変部の改善のためのカテーテル10にも適用可能である。
【0025】
図1(及び
図2)に示すように、カテーテル10は、細径で長尺なシャフト12と、シャフト12の先端に接合されたバルーン14と、シャフト12及びバルーン14に挿通された内管16と、シャフト12内に配置された補強体18と、バルーン14の先端に接合された先端チップ20と、シャフト12の基端側に設けられたハブ22とを備える。
【0026】
本実施形態ではカテーテル10は、シャフト12の長手方向の途中部分にガイドワイヤ21が導出される開口部23を設けた、いわゆる「ラピッドエクスチェンジタイプ」のカテーテル10として構成されている。別の実施形態において、カテーテル10は、ガイドワイヤルーメンがカテーテル10の全長に渡って形成され、ガイドワイヤ21がハブ22の基端から導出される「オーバーザワイヤタイプ」のカテーテルとして構成されてもよい。
【0027】
シャフト12は、軸方向の両端が開口した長尺で細径の可撓性チューブであり、バルーン14の後端からハブ22の先端まで延びている。
図2に示すように、シャフト12は、先端から開口部23までの部位は内管16とともに二重管を構成し、開口部23からハブ22までの部位は一重管である。シャフト12の中空部は、バルーン14の拡張用流体を供給するための拡張用ルーメン12aを形成している。
【0028】
シャフト12は、ハブ22に設けられるルアーテーパー22a(
図1参照)等を介して接続される図示しないインデフレータ等の圧力印加装置から圧送される拡張用流体をバルーン14まで送液可能となっている。例えば、拡張用流体は、造影剤や生理食塩水、あるいはその混合物である。
【0029】
シャフト12は、先端部がバルーン14の基端部に液密に接続された中空状の先端シャフト24と、先端部が先端シャフト24の基端部に液密に接続され、基端部がハブ22の先端部に接続された中空状の基端シャフト26とを有する。先端シャフト24の内腔24aと、基端シャフト26の内腔26aとは、互いに連通しており、内腔24aと内腔26aとにより拡張用ルーメン12aが構成されている。
【0030】
図2に示すように、開口部23は、先端シャフト24に設けられている。本実施形態の場合、基端シャフト26の先端部が先端シャフト24の基端部内に配置されている。基端シャフト26の最先端部は、開口部23よりも基端側に位置している。基端シャフト26は、先端シャフト24よりも高い剛性を有する。すなわち、基端シャフト26は、先端シャフト24よりも曲げ荷重に対する強度が高い。なお、先端シャフト24は、先端がバルーン14の基端部に接続された第1先端シャフトと、先端部が第1先端シャフトの基端部に接続され基端部が基端シャフト26の先端部に接続された第2先端シャフトとを有してもよい。このような第2先端シャフトは、第1先端シャフトと基端シャフト26との間に存在し、第1先端シャフトよりも剛性が高く且つ基端シャフト26よりも剛性が低い中間シャフトとして構成される。この場合、開口部23は、中間シャフトに設けられている。このように構成することにより、基端シャフト26から先端シャフト24に向かって、よりなだらかな剛性の変化を形成することができる。
【0031】
内管16は、ガイドワイヤ21が挿通されるワイヤ用ルーメン16aを形成するガイドワイヤチューブである。内管16の先端は、先端チップ20の基端よりも先端側に位置する。内管16は、バルーン14内及び先端シャフト24内に延在し、その基端が先端シャフト24の中間部に形成された開口部23に液密に接合されている。従って、先端チップ20の先端開口部20aを入口として挿入されたガイドワイヤ21は、内管16のワイヤ用ルーメン16aを先端側から基端側へと挿通し、出口である開口部23から導出される。
【0032】
バルーン14内の内管16には、1以上の造影マーカー30が設けられているとよい。造影マーカー30は、X線(放射線)不透過性を有する材質(例えば、金、白金、タングステンあるいはこれらの混合物等)によって構成され、生体内でバルーン14の位置をX線造影下で視認するためのものである。造影マーカー30は、例えば筒状(リング状)に構成され得る。
【0033】
先端シャフト24、基端シャフト26及び内管16は、術者がカテーテル10の基端側を把持及び操作しながら、長尺なカテーテル10を血管等の生体器官内へと円滑に挿通させることができるために、適度な可撓性と適度な剛性を有する構造であることが好ましい。
【0034】
そこで、先端シャフト24及び内管16は、例えば、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、あるいはこれら二種以上の混合物等)、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー、ポリイミド、フッ素樹脂等の高分子材料あるいはこれらの混合物、あるいは上記2種以上の高分子材料の多層チューブ等で形成するとよい。一方、基端シャフト26は、比較的剛性が高く且つ可撓性を有する材質で形成されることが好ましく、例えば、Ni−Ti合金、真鍮、SUS、アルミニウム合金等で挙げられるが、勿論、ポリイミド、塩化ビニル、ポリカーボネート等の樹脂を用いてもよい。
【0035】
バルーン14は、内圧の変化により収縮及び拡張が可能である。バルーン14の先端部は内管16の先端部近傍に接合され、バルーン14の基端部は、先端シャフト24の先端部(細径部24b)に接合されている。バルーン14の内部空間は、拡張用ルーメン12aと連通する。
【0036】
拡張用ルーメン12aを介して、バルーン14への拡張用流体の流入(導入)、及びバルーン14からの拡張用流体の排出が可能となっている。バルーン14内に拡張用流体が導入されることに伴って、バルーン14は拡張する。
【0037】
バルーン14の構成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー等のポリオレフィン、さらにはこれらの架橋もしくは部分架橋物、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリエステルエラストマー、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー、ポリフェニレンサルファイド、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、フッ素樹脂等の高分子材料、シリコーンゴム、ラテックスゴム等が挙げられる。また、これらの2以上の混合物であってもよく、これらを適宜積層したフィルムであってもよい。
【0038】
バルーン14の先端側に設けられる先端チップ20は、カテーテル10の最先端として生体器官内での湾曲部や凹凸部等を柔軟に進むとともに、病変部(狭窄部)を貫通し、カテーテル10の円滑な挿通を先導するためのチューブ状部材であり、内管16及びシャフト12よりも柔軟に構成されている。先端チップ20は、内管16の先端及びバルーン14の先端に接合されている。先端チップ20の先端開口部20aは、内管16のワイヤ用ルーメン16aに連通し、ガイドワイヤ21の入口となっている。
【0039】
補強体18は、先端シャフト24内及び基端シャフト26内に配置されており、先端シャフト24と基端シャフト26との接合部での剛性変化を緩和して、カテーテル10(シャフト12)の耐キンク性を向上させるための可撓性を有する部材である。
【0040】
補強体18は、弾性変形可能なように適度の可撓性を有する材料で構成されるのがよく、例えば、上述した基端シャフト26の材料として例示した材料で構成され得る。具体的に、補強体18は、先端シャフト24及び基端シャフト26に跨って延在する本体部32と、本体部32の先端部32aに設けられ、先端シャフト24と基端シャフト26との間に配置された先端拡大部34とを有する。
【0041】
本体部32は、全体的に細長い部材であり、先端方向に向かって細くなる先細りテーパ状に形成されており、先端部32aが開口部23よりも先端側に配置され、基端部32bが基端シャフト26の最先端部よりも基端側に配置されている。このような本体部32の構成により、シャフト12において、基端側から先端側に向かって柔軟性が増す傾斜剛性を好適に付与することができる。なお、本体部32の形状は、特に限定されず、例えば、先端から基端まで同じ外径で形成されていてもよい。
【0042】
本体部32の基端部32bは、基端シャフト26の先端内周部に、適宜の固定手段(溶接、接着等)により固定されている。なお、先端拡大部34、又は本体部32のうち基端シャフト26から先端方向に突出する部分が、先端シャフト24と内管16の少なくとも一方に固定されている場合には、本体部32の基端部32bは基端シャフト26に固定されていなくてもよい。
【0043】
先端拡大部34は、屈曲した細線要素35によって本体部32の先端部32aよりも大径に(太く)構成されている。先端拡大部34は、1本の線状部材(補強体18の素材)の先端部分を曲げ加工して形成されたものであり、本体部32と先端拡大部34とは継ぎ目なく連続している。すなわち、本体部32と先端拡大部34は、1本の線状部材から作製される。なお、別々に作製された本体部32と先端拡大部34とを溶接等により接合することにより、補強体18が形成されてもよい。
【0044】
先端拡大部34は、本体部32のような直線状の要素(一次元的形状)ではなく、細線要素35が規則的、不規則的、あるいは無秩序に、曲がったり、折れたりすることによって、立体的形状として形成されている。このような先端拡大部34は、細線要素35同士の間に隙間が形成されていることによって、適度な柔軟性を有し、且つ先端拡大部34の先端側と基端側とを連通する連通路36を有する。
【0045】
先端拡大部34は、内管16を囲むことなく内管16と先端シャフト24との間に配置されていてもよく、内管16の全周を囲んで配置されていてもよい。
【0046】
また、先端拡大部34は、内管16の外周面17のみに接触していてもよく、先端シャフト24の内周面25のみに接触していてもよく、あるいは、内管16の外周面17と先端シャフト24の内周面25の両方に接触していてもよい。
【0047】
この場合、先端拡大部34は、先端シャフト24の内周面25と内管16の外周面17の少なくとも一方又は両方に接合(固着)されているとよい。先端拡大部34は本体部32の先端部32aよりも大径であることから、接合面積を増加させることができ、先端シャフト24の内周面25及び/又は内管16の外周面17への固定が容易であり、先端拡大部34を安定して固定することができる。なお、先端拡大部34と、先端シャフト24の内周面25及び/又は内管16の外周面17とを接合する手段は、接着剤による接着でもよく、あるいは融着(熱融着、超音波融着等)であってもよい。
【0048】
先端拡大部34の長さ(シャフト12の長手方向に沿った長さ)は本体部32の長さよりも短いとよい。先端拡大部34の長さは、例えば、5〜50mmであり、好ましくは、50〜10mmである。先端拡大部34を構成する細線要素35の線径(外径)は、例えば、50〜200μmであり、好ましくは、10〜150μmである。
【0049】
先端拡大部34は、様々な形態をとることができる。以下、先端拡大部34が採り得るいくつかの形態を例示する。
【0050】
図3Aは、第1構成例に係る先端拡大部34A及びその周辺部位の模式的断面図である。この先端拡大部34Aでは、細線要素35がランダムに屈曲したランダム構造となっている。すなわち、細線要素35は、ランダムに曲がりくねっており、多数の湾曲部分あるいは折れ曲がり部分が繋がって、全体として本体部32の先端部32aより大径に形成されている。なお、先端拡大部34において湾曲部分の間に1以上の直線部分が存在してもよい。
【0051】
図3Aの場合、先端拡大部34Aは、内管16を囲むことなく内管16と先端シャフト24との間に配置されている。すなわち、内管16と先端シャフト24との間に先端拡大部34Aが配置された状態で、先端拡大部34Aの外径は、先端シャフト24の内周面25と内管16の外周面17との間隔と同じか、それ以下であり、内管16の周方向の一部の側方のみに先端拡大部34Aが配置されている。
【0052】
図3Bは、第2構成例に係る先端拡大部34B及びその周辺部位の模式的断面図である。この先端拡大部34Bでは、細線要素35が屈曲して螺旋形状(コイル形状)を成しており、全体として本体部32の先端部32aより大径に形成されている。先端拡大部34Bは、その中空部分(螺旋の内側)が、先端拡大部34Bの先端側と基端側とを連通する連通路36を形成している。
【0053】
先端拡大部34Bは、内管16を囲むことなく内管16と先端シャフト24との間に配置されている。すなわち、内管16と先端シャフト24との間に先端拡大部34Bが配置された状態で、先端拡大部34Bの外径は、先端シャフト24の内周面25と内管16の外周面17との間隔と同じか、それ以下であり、内管16の周方向の一部の側方のみに先端拡大部34Bが配置されている。
【0054】
図3Cは、第3構成例に係る先端拡大部34C及びその周辺部位の模式的断面図である。この先端拡大部34Cは、細線要素35が屈曲して螺旋形状を成しており、全体として本体部32の先端部32aより大径に形成されており、先端拡大部34Cの先端側と基端側とを連通する連通路36を有する点で、
図3Bの先端拡大部34Cと同じである。一方、先端拡大部34Cは、
図3Bの先端拡大部34Bと異なり、内管16の全周を囲んでいる。すなわち、螺旋形状の先端拡大部34Cの内側に、内管16が挿通されている。先端拡大部34Cは、その外周部において先端シャフト24の内周面25に接触しており、内管16の外周面17には接触していない。
【0055】
図4Aは、第4構成例に係る先端拡大部34D及びその周辺部位の模式的断面図であり、
図4Bは、第5構成例に係る先端拡大部34E及びその周辺部位の模式的断面図である。先端拡大部34Dは、
図3Bの先端拡大部34Bに対する変形例であり、先端拡大部34Eは、
図3Cの先端拡大部34Cに対する変形例である。
図4A及び
図4Bの構成では、先端拡大部34の最先端部34aが本体部32側に湾曲しており、これにより最先端部34aが、例えば、先端拡大部34が形成する立体形状の内側に位置する。この構成により、先端拡大部34の先端が鋭利でなくなるため、補強体18の最先端がシャフト12を突き破るリスクをさらに抑制することができる。
【0056】
さらに別の構成例として、先端拡大部34は、細線要素35がランダムに屈曲したランダム構造に構成され、且つ内管16の全周を囲んでいてもよい。この場合、先端拡大部34は、先端シャフト24の内周面25のみに接触していてもよく、内管16の外周面17のみに接触していてもよく、あるいは先端シャフト24の内周面25と内管16の外周面17の両方に接触していてもよい。
【0057】
図3A〜
図4Bの構成において、先端シャフト24と内管16の間への先端拡大部34の配置の前後で、先端拡大部34の大きさ(外径)は変化しない。あるいは、
図3A、
図3B及び
図4Aの構成では、先端拡大部34の外径は、先端シャフト24と内管16の間への配置前は、先端シャフト24の内周面25と内管16の外周面17との間隔よりも大きいが、先端シャフト24と内管16の間に配置されると、弾性圧縮変形によって先端シャフト24の内周面25と内管16の外周面17との間隔と同じになってもよい。また、
図3C及び
図4Bの構成では、先端拡大部34の外径は、先端シャフト24と内管16の間への配置前は、先端シャフト24の内径よりも大きいが、先端シャフト24内に配置されると、弾性圧縮変形によって先端シャフト24の内径と同じになってもよい。
【0058】
本実施形態に係るカテーテル10は、基本的には以上のように構成されるものであり、以下、その作用及び効果について説明する。
【0059】
カテーテル10を用いた治療は、例えば、以下のように行う。まず、セルジンガー法によりイントロデューサーシースを動脈に穿刺し、そのイントロデューサーシースの内腔にカテーテル10を挿入する。この際、カテーテル10の内管16には、先端チップ20の先端開口部20aから内管16のワイヤ用ルーメン16aを挿通させて開口部23へと予めガイドワイヤ21を挿入しておく。そして、このガイドワイヤ21を先行させつつ、カテーテル10を血管内に挿入する。なお、カテーテル10を血管内に挿入する前に、血管内に発生した病変部(狭窄部)の形態を、血管内造影法や血管内超音波診断法により特定してもよい。
【0060】
次に、X線透視下で、ガイドワイヤ21を目的とする病変部へ進め、その病変部を通過させて留置するとともに、カテーテル10をガイドワイヤ21に沿って進行させる。カテーテル10の先端チップ20が病変部を通過すると、バルーン14が病変部に位置する。そして、ハブ22側から拡張用ルーメン12a内へと拡張用流体(例えば、造影剤)を圧送することにより、バルーン14が拡張して病変部が押し広げられ、これにより病変部の治療を行うことができる。
【0061】
次に、拡張用流体をバルーン14内から拡張用ルーメン12aを通ってハブ22側へと吸引し、バルーン14を再収縮させる。生体管腔内の別の箇所に治療を要する他の病変部がある場合には、バルーン14を当該他の病変部へ送達し、上記と同様にバルーン14を拡張及び収縮させる。治療対象のすべての病変部に対する処置を終えたら、カテーテル10を体外へと抜去する。
【0062】
この場合、本実施形態に係るカテーテル10によれば、補強体18に先端拡大部34が設けられるため、補強体18の先端部と、先端シャフト24又は基端シャフト26との接触面積が増大する。これにより、補強体18が先端シャフト24を突き破ることを好適に抑制することができる。また、先端拡大部34は、屈曲した細線要素35であり、柔軟性を有するため、先端拡大部34が配置された部分のカテーテル10の柔軟性を好適に維持できる。
【0063】
また、本実施形態の場合、先端拡大部34は、先端拡大部34の先端側と基端側とを連通する連通路36を有するので、バルーン14を拡張及び収縮させる際に、拡張用流体の流れを阻害することがない。よって、バルーン14の拡張及び収縮を支障なく行うことができる。
【0064】
本実施形態の場合、先端拡大部34が先端シャフト24の内周面25又は内管16の外周面17の少なくとも一方に接触していることにより、先端拡大部34を安定して配置することができるので、補強体18が先端シャフト24を突き破ることを効果的に抑制することができる。特に、先端拡大部34が先端シャフト24の内周面25と内管16の外周面17の両方に接触していると、先端拡大部34を一層安定して配置することができ、補強体18の突き破りを一層効果的に抑制することができる。
【0065】
本実施形態の場合、先端拡大部34は、先端シャフト24の内周面25と内管16の外周面17の少なくとも一方に固着されている。これにより、補強体18は先端拡大部34において先端シャフト24の内周面25又は内管16の外周面17との接触面積が増加されているため、先端拡大部34を先端シャフト24又は内管16に対して好適に固定することができる。
【0066】
シャフト12において、先端拡大部34に係合するストッパが設けられてもよい。以下、ストッパについて、いくつかの形態を例示する。
【0067】
図5Aに示すように、第1構成例に係るストッパ40は、先端シャフト24の内周面25から径方向内方(内管16側)に向かって突出する突起部41である。この構成により、製造工程において、先端シャフト24内に補強体18が挿入される際、ストッパ40として機能する突起部41が先端拡大部34に係合するので、先端拡大部34をシャフト12内の所定位置に容易に位置決めすることができる。
【0068】
なお、先端シャフト24の内周面25に設けるストッパ40に代えて、あるいは、先端シャフト24の内周面25に設けるストッパ40に加えて、
図5Aにおいて仮想線で示すように、内管16の外周面17から径方向外方(先端シャフト24側)に突出するストッパ42が設けられてもよい。
【0069】
図5Bのように、第2構成例に係るストッパ44は、先端シャフト24に形成される段差部45(縮径部24cの基端側に形成される段差部45)によって構成されている。この構成によっても、製造工程において、先端シャフト24内に補強体18が挿入される際、ストッパ44として機能する段差部45が先端拡大部34に係合するので、先端拡大部34をシャフト12内の所定位置に容易に位置決めすることができる。
【0070】
なお、
図5Bのストッパ44に対する変形例として、内管16に拡径部が設けられ、当該拡径部の基端側に形成される段差部によってストッパが構成されてもよい。
【0071】
図5Cのように、第3構成例に係るストッパ46は、熱による変形部47によって構成されている。製造工程において、先端シャフト24内に補強体18を挿入し、先端拡大部34を所定位置に配置した状態で、先端シャフト24を加熱して、溶融・軟化させるとともに、先端シャフト24のうち先端拡大部34に対向する箇所24dを内方に(内管16に向けて)押圧する。そうすると、先端シャフト24の押圧された箇所24dが内方へと変位して、先端拡大部34と接触し融着する。これにより、先端拡大部34が先端シャフト24の内周面25に固定(固着)される。
【0072】
図5A〜
図5Cの構成では、ランダム構造の先端拡大部34を例示したが、螺旋形状の先端拡大部34(
図3B及び
図3C)が適用されてもよい。
【0073】
なお、
図5A又は
図5Bの構成とするために、変形前の直線状の細線要素35を備えた補強体18を、先端シャフト24と内管16との間に基端側から挿入し、細線要素35をストッパ40又はストッパ44に突き当てて押し込むことにより、細線要素35をランダム構造、螺旋形状等の三次元形状に形成してもよい。
【0074】
上記において、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能なことは言うまでもない。