特許第6363924号(P6363924)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6363924
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】車両用ワイパ装置
(51)【国際特許分類】
   B60S 1/38 20060101AFI20180712BHJP
   B60S 1/46 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
   B60S1/38 B
   B60S1/46 D
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-200254(P2014-200254)
(22)【出願日】2014年9月30日
(65)【公開番号】特開2016-68770(P2016-68770A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2017年6月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】長澤 勇
(72)【発明者】
【氏名】神長 和宏
(72)【発明者】
【氏名】岩田 覚
【審査官】 神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭63−047969(JP,U)
【文献】 特開2014−012503(JP,A)
【文献】 特開昭52−121234(JP,A)
【文献】 特開平05−097017(JP,A)
【文献】 実開昭58−129258(JP,U)
【文献】 独国特許出願公開第02017740(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60S 1/00 − 1/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回動するアームの先端に設けられ、該アームの回動動作によってウインドウガラス上を移動し該ウインドウガラス表面の水や汚れを払拭するブレードと、前記ウインドウガラス上に洗浄液を噴射供給する洗浄液供給部と、を有する車両用ワイパ装置において、
前記ブレードの回動動作の半径方向外側の端部に設けられ、液体を吸収、保持可能な保水部を有し、
該保水部は、ブレード本体の端部からブレード伸長方向に離間した位置し配置されたことを特徴とする車両用ワイパ装置。
【請求項2】
前記保水部は、 前記ブレードの側辺から幅方向両側に突出して形成されたことを特徴とする請求項1に記載の車両用ワイパ装置。
【請求項3】
前記保水部は、 弾性を有する多孔性部材にて形成されたことを特徴とする請求項1又は2の何れか一方に記載の車両用ワイパ装置。
【請求項4】
前記保水部は、 ブラシ状部材にて形成されたことを特徴とする請求項1又は2の何れか一方に記載の車両用ワイパ装置。
【請求項5】
前記洗浄液供給部は、 前記ブレードに設けられていることを特徴とする請求項1からの何れか1項に記載の車両用ワイパ装置。
【請求項6】
前記保水部よりもさらに前記ブレードの前記半径方向外側に設けられ、前記ブレードの半径方向内側を向いた略くの字状であって幅方向の両端がブレード本体の両側辺から幅方向両外側に突出する羽根部を有することを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の車両用ワイパ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ワイパ装置、特に、ウインドウガラス上を回動移動してウインドウガラス表面を払拭清掃するブレードを備える車両用ワイパ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用ワイパ装置は、車両のウインドウガラス表面の雨水や汚れを払拭清掃するための装置として利用されており、回動動作するアームの移動端側にブレードを設け、これをウインドウガラス表面上で往復運動させて上記ウインドウの払拭清掃を行っている。
【0003】
また、払拭清掃をより効果的なものとするために、ウインドウガラスの表面に洗浄液を噴射供給する機構も設けられている。近年では、洗浄液をウインドウガラスのより適切な位置や領域に噴射させるためにブレード自体から洗浄液の噴射を行う構成も用いられている。
【0004】
例えば、特許文献1には、洗浄液をガラス面に向かって吹き付ける構造を有するワイパブレードが開示されている。この技術によれば、ブレード本体に相当するブレードラバーに通常設けられるパッキング部材自体に洗浄液の供給通路を形成している。これにより、別途チューブや吹き付け用のノズルを設ける必要がなく、構造の簡略化、製造の容易化が図られている。
【0005】
また、回動するブレードによって払拭された洗浄液等が、遠心力によりブレードの遊端側先端部から外方向に流れ出るのを防ぐための構造を有するブレードも用いられている。
【0006】
例えば、特許文献2には、ウインドウパネル(ウインドウガラス)の表面上でリップ部(ブレード)を摺接移動させてウインドウガラスを払拭させる機構が開示され、特に、ブレードの遊端側先端部の側面に、ブレードの長手方向に交差する方向に伸びる凸状の雨水受け部が設けられた構造が示されている。この雨水受け部の内側表面は、その基部から先端部に向かって、凹状に湾曲して形成されている。
【0007】
この構成により、ブレードによって払拭されて集まった洗浄液等が、雨水受け部、すなわち、ブレードの遊端側先端部で側方から突出する凸状部でせき止められ、ブレードの回動による遠心力で外方向に流れ出るのを防止することができる。したがって、ブレードの動作範囲の外側に流れ出てしまった洗浄液等による視界の悪化の防止が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平5−97017号公報
【特許文献2】特開2014−12503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献1に係る技術においては、ブレード自体から洗浄液の噴射を行う機能を有する場合、ウインドウガラスに対して広範囲で適切な位置にかつ比較的均等に洗浄液の噴射を行うことが可能となる。しかし、一方でブレードは通常その進行方向前方に常に相当量の洗浄液が存在する状況で略円運動で移動することから、洗浄液はその移動に伴う遠心力の作用によってブレードの移動領域の半径方向の外側方向に飛び出す傾向にある。
【0010】
この様な状況を、図9に基づいて説明する。この車両用ワイパ装置には、ウインドウガラス100の中央上部領域を含む領域E1を払拭する第1のブレード12と、上記中央上部領域の下方の領域をその移動する領域E2として含む第2のブレード14が設けられている。各ブレード12、14はそれぞれ洗浄液の噴射手段を備えている。
【0011】
第2のブレード14は、噴射した洗浄液(矢印200で示した)をその移動動作中に遠心力でウインドウガラスの中央上部領域(矢印300方向)に押し出してしまう。そして、ウインドウガラス100の中央上部領域に押し出された洗浄液は、もはや当該第2のブレード14では払拭することができない(届かない)。したがって、ウインドウガラス100の中央上部領域をその移動領域として含む第1のブレード12が次に払拭動作を行うまで残存することとなる。
【0012】
この様にウインドウガラス100の中央上部領域に洗浄液等の液滴Lが残存する状況は、後に下方に垂れて来ることもあり、前方の視界を良好に確保する上で好ましい状況ではない。
【0013】
また、特に近年実用されている前方の状況を撮像し、このデータに基づいた種々の運転の補助を行う車両においては、上記ウインドウガラスの中央上部領域にカメラなどの1対の撮像装置16−1,16−2が設置されることから、上記洗浄液の残存状態は撮像装置16−1,16−2の機能に悪影響を与えることとなる。
【0014】
一方、上記特許文献2に係る技術においては、回動するウインドワイパーによって払拭された洗浄液等が、遠心力によりウインドワイパーの遊端側先端部から外方向に流れ出るのを防ぐことができる。
【0015】
しかしながら、雨水受け部がリップ部の遊端側先端部の側面に設けられているので、ウインドワイパー本体が横向きになった状態では、リップ部の下側側面付近の雨水等は、重力によって落ちるが、リップ部の上側側面に溜まった雨水等は、雨水受け部が壁となって、リップ部上から流れ落ちることなく溜まったまま次の往動作が行われることとなる。
【0016】
この様に、リップ部上から十分に雨水等が排水されない状態でウインドワイパーが回動動作をすると、次に噴射される洗浄液を的確に受け止めるとができなくなり、雨水受け部としての機能が低下するとともに、ウインドウガラスの前方の視界を良好に確保する上で好ましい状況ではない。
【0017】
本発明は上記課題にかんがみてなされたものであり、その目的は、構造の複雑化を伴うことなく、ブレードの回動動作中におけるブレード動作領域外方への洗浄液等の流れ出しを有効に防止することのできる車両用ワイパ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を解決するための請求項1に係る車両用ワイパ装置は、回動するアームの先端に設けられ、該アームの回動動作によってウインドウガラス上を移動し該ウインドウガラス表面の水や汚れを払拭するブレードと、前記ウインドウガラス上に洗浄液を噴射供給する洗浄液供給部と、を有する車両用ワイパ装置において、前記ブレードの回動動作の半径方向外側の端部に設けられ、液体を吸収、保持可能な保水部を有し、該保水部は、ブレード本体の端部からブレード伸長方向に離間した位置し配置されたことを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、ブレードで押されて保水部に流れてきた洗浄液等は、この保水部で吸収され、保持される。したがって、ブレードの回動動作中に洗浄液等がブレードの動作領域の外側に飛び出すことを的確に防止することができる。これにより、ブレードによる払拭清掃機能がより向上する。また、この構成によれば、保水部はブレード本体の端部から離間した位置に配置されるので、ブレード本体と保水部との間には空間が存在する。この空間の存在により、ブレードが往復動作をして横方向に傾斜した状態、すなわち、戻り動作をしてウインドウガラスの下方位置に戻ってきた場合、その空間部分に溜まった洗浄液等は下方に落ちていくこととなる。したがって、再度、往復動作をするときにはその空間に洗浄液を保持することが可能であり、保水部の保水機能を補完することが可能である。
【0020】
請求項2に係る車両用ワイパ装置は、請求項1に記載の車両用ワイパ装置において、
前記保水部が、前記ブレードの側辺から幅方向両側に突出して形成されている。この構成によれば、ブレードの回動動作中にブレードに沿って外方に押し流されて来た洗浄液等をより広範囲に吸収することができる。すなわち、保水部の突出により、ブレードからやや離れた位置で流れる洗浄液等も吸収することが可能となる。また、吸収して維持する液体の量も増やすことが可能となり、ブレードによる洗浄液等の押し出しをより的確に防止することが可能となっている。
【0021】
請求項3に係る車両用ワイパ装置は、請求項1及び2に記載の車両用ワイパ装置において、
前記保水部は、弾性を有する多孔性部材にて形成されたことを特徴とする。この構成によれば、例えば、スポンジや発泡ゴムなどで保水部を簡単に構成することが可能であり、したがって、製造の困難性を伴うことなく、簡単な構造で、上記請求項1及び2の作用であるブレード先端部における洗浄液等の吸収、保持を達成することができる。
【0022】
なお、当該保水部は、ブレードの端部に取り付ける構造に限られず、ブレードの端部の構造自体を弾性を有する多孔性の構造とすることでも可能である。また、保水部による液体のせき止め作用を的確に確保するために、その下端部はウインドウガラスの表面に接触するか、近接した位置まで伸長する構成とするのが好適である。
【0023】
請求項4に係る車両用ワイパ装置は、請求項1から3の何れか1項に記載の車両用ワイパ装置において、
前記保水部は、ブラシ状部材にて形成されたことを特徴とする。この構成によれば、ブラシ状部材は液体の毛管現象や表面張力の現象によって液体の吸収、保持機能を有する。
【0024】
したがって、製造の困難性を伴うことなく、簡単な構造で、上記請求項1及び2の作用であるブレード先端部における洗浄液等の吸収、保持を達成することができる。なお、当該保水部は、ブレードの端部に取り付ける構造にしても良く、また、ブレードの端部の構造自体をブラシ状の構造とすることも可能であり、その下端部はウインドウガラスの表面に接触するか、近接した位置まで伸長する構成とするのが好適である。
【0027】
請求項に係る車両用ワイパ装置は、請求項1からの何れか1項に記載の車両用ワイパ装置において、前記洗浄液供給部は、前記ブレードに設けられていることを特徴とする。

【0028】
この構成によれば、ブレードが回動しているときに、ブレードの進行方向前方には常に相当量の洗浄液が存在する状況であり、よりブレードの回動動作中における洗浄液等の押し出しが予想されるが、ブレード先端部の保水部の存在によってこれを的確に吸収し、保持することが可能であり、上記洗浄液等のブレード移動領域外への押し出しが抑制される。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、ブレードの回動動作中にブレードに押されて先端部に流れてきた洗浄液等は、この保水部で吸収され、保持され、ブレードの回動動作中における洗浄液等のブレードの動作領域の外側への飛び出しを有効に防止することができる。これにより、ウインドウガラス上の洗浄液等の残存を的確に防止し、ブレードによるウインドウガラスの払拭清掃機能をより向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の実施の形態に係る車両用ワイパ装置の概略構成図である。
図2】発泡樹脂を用いた保水部の実施の形態を示す説明図である。
図3図2の実施の形態の保水部の幅方向の大きさを変えた例を示す説明図である。
図4】保水部をブレード先端外方に取り付ける形態とした実施の形態を示す説明図である。
図5図4の実施の形態の作用を説明するための説明図である。
図6】ブラシ状部材を用いた保水部の実施の形態を示す説明図である。
図7】ブラシ状部材の毛の伸長方向を変えた実施の形態を示す説明図である。
図8】ブレードの端部に、保水部に加えて羽根部を設けた実施の形態を示す説明図である。
図9】従来の2つのブレードを備える車両用ワイパ装置の問題点の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明に係る車両用ワイパ装置の実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0032】
図1は、本発明の車両用ワイパ装置10の概略構成図であり、右ハンドル車両のフロントのウインドウガラス100を外方から視た図である。図示の様に、ウインドウガラス100上には、図上右側の助手席側に第1のブレード12が、左側の運転席側に第2のブレード14が設けられている。なお、左ハンドル車の場合には左右反転した構成となるが、以下説明を省略する。
【0033】
各ブレード12、14は、図示していない回動アームの先端に取り付けられており、回動アームの動作によって、所定範囲を往復回動する。第1のブレード12の動作領域E1はウインドウガラス12の中央上部領域を含む領域であり、第2のブレード14の動作領域E2はウインドウガラス100の中央上部領域の下方の領域を含む領域となっており、一部において重複している。
【0034】
また、ウインドウガラス100の内側には、前方の状況を確認するための撮像装置としての1対のカメラ16−1、16−2が設置されており、図上2点鎖線で示した領域(符号18)は、カメラ16−1,16−2の撮影範囲である画角である。そして、この領域がブレード等を制御する対象領域としての特定領域18とされる(後述する)。第1のブレード12の動作領域E1にこの特定領域18は含まれており、第2のブレード14の動作領域E2は、この特定領域18の下方に位置している。
【0035】
なお、カメラ16で取得した画像情報は、前方の物体等の存在や距離の認識、判定を行い、車両の運転の補助制御を行うために用いられる。
【0036】
また、本実施の形態の車両用ワイパ装置10では、ブレード自体に洗浄液噴射部(図示せず)が形成されており、図上矢印200で示した方向に洗浄液が噴射される。この洗浄液の噴射は、制御部20によって制御される噴射ポンプ22a、22bによって各ブレード12、14に噴射液を供給することによって行われる。
【0037】
上述の各ブレード12、14を稼働させるための図示しない回動アームの回動動作は、同じく制御部20によって制御される駆動するモータ24a、24bによって行われる。すなわち、各ブレード12、14は、それぞれ独立して回動動作の制御が行われ、また、洗浄液の噴射も独立して行われる。例えば、モータ22a、22bの出力をそれぞれ変えることでブレード12、14の動作速度の制御が可能であり、噴射ポンプ22a、22bの圧力をそれぞれ変えることで洗浄液の噴射量を調整することも可能である。
【0038】
なお、制御部24は、CPUやROM等を用いて構成され、上述の様に第1のブレード12と第2のブレード14を、それぞれ独立に又は同期して制御することが可能に構成されている。
【0039】
本発明において特徴的なことは、ブレードの先端部の構造にあり(図上ハッチングを施している)、図2は、実施の形態に係る第2のブレード14の先端部の拡大図(一部省略)を示している。図示のように、第2のブレード14自体の基本的な構成は一般的なものであり、ウインドウガラス表面に接触しながら往復移動するブレードラバー14aの上部にはブレードラバー14aを保持する保持材30がブレードの長手方向に伸長して設けられ、両端部と所定箇所に係止部30aが設けられ、この係止部30aでブレードラバー14aを安定的に保持している。
【0040】
そして、図示しないアーム部がこの保持材30に結合され、車両の所定位置軸着されたアーム部の回動動作によって、この第2のブレード14も回動動作するものである。
【0041】
本発明において特徴的なことは、ブレード先端部であるブレードラバー14aの先端部に保水部が設けられていることであり、本実施の形態では保水部として発泡性部材であるスポンジ体32が設けられている。本例では、ブレードラバー14aの先端にブレードラバー14aの幅とほぼ同様の幅で所定長さ(数センチ)のスポンジが取り付けられている。例えば、ブレードラバー14aと接する面にて接着剤で固着され、上部で保持材30の係止部30aによって挟持されて安定した取り付け状態が保たれている。
【0042】
また、スポンジ体32の下端部は、本実施の形態ではブレードの稼働時においてウインドウガラス100の表面に接触する大きさに調整されている。なお、スポンジ体32の下端部は必ずしもウインドウガラス100の表面に接触する構成に限定されるものではなく、流れる洗浄液等を吸できれば、非接触で近接状態とする大きさとしても良い。また、保水部としてのスポンジ体は通常のスポンジ材の他、いわゆる発泡ゴム等で構成することも可能である。したがって、製造の困難性を伴うことない。
【0043】
発泡ゴムは、原料ゴムである天然ゴムや合成ゴムに有機発泡剤、架橋剤、軟化剤、補強材などを練りこみ、密閉された型内で加硫を行いつつ発泡剤の分解によって独立した気泡ゴムを作成することができる。なお、発泡ゴムの固さなどの特性は、原料ゴムの選択や配合剤の組み合わせによって、調整することができる。
【0044】
上記構成により、第2のブレード14の回動動作によって押されて保水部であるスポンジ体32の部分に流れてきた洗浄液等は、この保水部で吸収され、保持される。すなわち、ブレードの回動動作中の遠心力に抗して洗浄液等を保持することができ、洗浄液等が第2のブレード14の動作領域の外側に飛び出すことを的確に防止することができる。
【0045】
本実施の形態に係る機能を上記図9に示した撮像装置16−1、16−2を備える車両における課題の説明図及び図1の実施の形態の全体構成図に基づいて説明する。上述のように、第2のブレード14が往動作、戻り動作を行うことによって生じる液滴L(図9参照乞う)は、第2のブレード14の回動動作によって遠心力により第2のブレード14に沿って上方に移動するが、上記先端部の保水部であるスポンジ体32の部分に流れてきたとき吸収され、そのまま保持される。
【0046】
したがって、第2のブレード14の移動領域E2から液滴Lが飛び出して、撮像装置16−1、16−2の画角範囲である特定領域18に残存することを的確に防止することができる。これにより、撮像装置16−1、16−2によって取得される画像データが洗浄液などの存在により悪影響を受けることが防止される。
【0047】
図3に示した実施の形態は、保水部であるスポンジ体の幅方向のサイズを大きくしたスポンジ体34である。図示のように、スポンジ体34は14aの幅よりも幅方向の両方に所定量突出している。したがって、第2のブレード14の回動動作中に第2のブレード14に沿って外方に押し流されて来た洗浄液等をより広範囲に吸収することができる。すなわち、第2のブレード14からその幅方向にやや離れた位置で流れる洗浄液等も吸収することができる。そして、吸収、維持できる液体の量の増加だけでなく、スポンジ体34が洗浄液等を吸収して飽和状態になっている場合でも、その幅方向への突出構造により、流れてくる洗浄液等をせき止めることが可能であり、吸収とせき止めの両方の作用を奏することができる。
【0048】
図4は、取付け式の保水部の構成について示しており、本実施の形態において、図1図2に示した構成要素と同様の要素には同一の符合を付し、その説明を省略する(以下の図5についても同様)。本例では、スポンジ体34に1対の腕部からなる取付け部40を形成し、第2のブレード14の先端部に取り付けるように構成した例が示されている。例えば、取付け部40に芯材(図示せず)を設け、その外側にスポンジ体34を被覆装着することで構成することが可能である。
【0049】
そして、取付け部40にはネジ穴40aがそれぞれ設けられており、例えば第2のブレード14の保持材30の係止部30aに同じく形成したネジ穴31を用いて、ネジ35によって固定することで取り付けることが可能である。
【0050】
そして、重要なことは、図5に示したように、このスポンジ体34の取付状態において、スポンジ体34は、第2のブレード14の先端部から離間した位置に配置されるように取付け部40等の長さ調整が行われていることである。したがって、第2のブレード14の先端部とスポンジ体34との間に空間Gが確保されている。
【0051】
この構成によれば、図示のように第2のブレード14が往動作をした際には、スポンジ体34によって洗浄液等は吸収され、保持されるが、その他に、空間Gにおいても洗浄液が保持される。ワイパの長時間の使用によりスポンジ体34の吸水機能が飽和状態になった場合でもこの空間Gの部分で洗浄液等を保持することが可能である。そして、第2のブレード14が戻り動作をしてウインドウガラス100の下方位置に戻り、横方向に傾斜した状態となった時(同図右側の図)、空間Gに溜まった洗浄液等は下方に落ちていくこととなる。
【0052】
したがって、再度、往復動作をするときには空間Gに洗浄液を保持することが可能な状態となる。すなわち、スポンジ体34が幅方向に突出していることによる補完的せき止め機能に加えて、さらに空間Gによる補完的保水機能が発揮される。
【0053】
次に、図6及び図7は、さらに他の実施の形態を示している。図示のように、保水部の構成をブラシ体60及び70の構成としたものである。図6は、毛の伸長方向がブレードの幅方となるように構成されたものであり、図7は毛の伸長方向が下方に向くように構成されたものである。なお、本実施の形態において、図1図2に示した構成要素と同様の要素には同一の符合を付し、その説明を省略する。
【0054】
この様にブラシ状の構成とすることによっても、上述したスポンジ体32、34による構成と同様の液体に対する吸収、保持機能を奏することが可能である。また、毛の伸長方向を下方とした図7の構成の場合、ブラシ体70の下端部は、ウインドウガラス100にしっかりと接触した状態となる構成とすることによって、その部分のウインドウガラス表面の払拭機能が向上し、また、洗浄液の飛ばし防止作用もより的確なものとなる。
【0055】
図8は、さらに他の実施の形態を示しており、図2に示した保水部(スポンジ体32)を備えた第2のブレード14の先端部にさらに羽根部80を設ける構成である。なお、本実施の形態において、図1図2に示した構成要素と同様の要素には同一の符合を付し、その説明を省略する。
【0056】
図示のように、羽根部80は、取り付けのための1対の腕部82−1、82−2を有しており、それぞれの腕部82−1、82−2にはネジ穴82aが形成されている。そして、係止部30aに設けられたネジ穴33にネジ穴82aを合わせてネジ84で固定取付するものである。
【0057】
羽根部80は取付状態でその幅方向の両端は、ブレードの幅よりも外方に突出している。また、その下端部は、ウインドウガラス100の表面に近接する大きさを有している。
【0058】
また、羽根部80は、図示のように中央部で屈曲しブレード本体方向に閉じる方向にやや角度付されている。また、その取付状態において、羽根部80とスポンジ体32との間には空間が存在する。この空間の作用効果については、上述した図5における空間Gの作用効果と同様であり、その説明を省略する。
【0059】
この構成により、スポンジ体32による洗浄液等の吸収、保持作用に加えて、さらにその外側で羽根部によるせき止め作用も発揮され、洗浄液等のブレード移動領域外方への流れだし、飛び出しの抑制効果はより的確なものとなる。なお、本実施の形態において、保水部の構成は上述した各図の例、さらに他の構成への変更が可能であり、羽根部80の形状も種々変更が可能である。
【0060】
本発明は上記各実施の形態の構成に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。例えば、保水部は、スポンジ体32、34、ブラシ体60、70の2種類のみを示したが、これに限られるものではなく、洗浄液等を有効に吸収し保持できる部材であれば他の部材を用いることも可能である。
【0061】
また、上記実施の形態では、主として第2のブレード14について適用した場合の作用を述べたが、第1のブレード12に上記各実施の形態を適用した場合でも同様に第1ブレード12の往復移動範囲外への洗浄液等の飛び散りを有効に防止することができ、ウインドウガラスの上部や側部の洗浄液等の残存を防止することができる。
【0062】
また、保水部の下端部については、ウインドウガラス表面に接触する例としない例を示しているが、洗浄液等は泡状になって、ウインドウガラスの表面に存在するので、必ずしも下端部が接触状態になくとも洗浄液等の吸収、保持機能は奏することができるものである。
【符号の説明】
【0063】
10 本発明に係る車両用ワイパ装置
12 第1のブレード
14 第2のブレード
E1 第1のブレードの往復移動領域
E2 第2のブレードの往復移動領域
16−1、16−2 撮像装置
18 特定領域(撮像装置の画角範囲)
32、34 保水部としてのスポンジ体
40 取付け部としての腕部
60、70 保水部としてのブラシ体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9