【実施例】
【0021】
次に,この発明によるグリース基油拡散防止剤を配合したグリース組成物について,実施例1〜6及び比較例1〜3を参照して説明する。
【0022】
<実施例1>
グリース基油拡散防止剤として前記一般式(1)である構造式(1)で表される化合物(A−1)〔オムノバ社製のPolyFox PF656,平均分子量1490,Rfがパーフルオロエチ
ル基,
nが1,X+Yが6〕の1.0重量部と,増ちょう剤としてリチウムヒドロキシステアレートと基油としてポリアルファオレフィンとの比が3:97〜20:80からなるグリースの100重量部とを配合し,これらを均一に混合してグリース1を得た。
【0023】
<実施例2>
グリース基油拡散防止剤として前記構造式(1)で表される化合物(A−1)〔オムノバ社製のPolyFox PF656,平均分子量1490,Rfがパーフルオロエチ
ル基,
nが1,X+Yが6〕の1.0重量部と,増ちょう剤としてウレア化合物と基油としてポリアルファオレフィンとの比が3:97〜20:80からなるグリースの100重量部とを配合し,これらを均一に混合してグリース2を得た。
【0024】
<実施例3>
実施例1において,グリース基油拡散防止剤として用いる化合物(A−1)を,化合物(A−2)〔オムノバ社製のPolyFox PF6520,平均分子量4480,Rfがパーフルオ
ロエチル基,
nが1,X+Yが20〕に変更したこと以外は,実施例1と同様の条件で作製したグリース3を得た。
【0025】
<実施例4>
実施例2において,グリース基油拡散防止剤として用いる化合物(A−1)を,化合物(A−2)〔オムノバ社製のPolyFox PF6520,平均分子量4480,Rfがパーフルオ
ロエチル基,
nが1,X+Yが20〕に変更したこと以外は,実施例2と同様の条件で作製したグリース4を得た。
【0026】
<実施例5>
実施例1において,グリース基油拡散防止剤として用いる化合物(A−1)を,化合物(A−3)〔オムノバ社製のPolyFox PF7002,平均分子量1670,Rfがパーフルオロブチ
ル基,
nが2,X+Yが4又は5〕に変更したこと以外は,実施例1と同様の条件で作製したグリース5を得た。
【0027】
<実施例6>
実施例1において,グリース基油拡散防止剤として用いる化合物(A−1)を,化合物(A−3)〔オムノバ社製のPolyFox PF7002,平均分子量1670,Rfがパーフルオロブチ
ル基,
nが2,X+Yが4又は5〕に変更したこと以外は,実 施例2と同様の条件で作製したグリース6を得た。
【0028】
<比較例1>
グリース基油拡散防止剤として前記構造式(1)で表される化合物(A−4)〔オムノバ社製のPolyFox PF636,平均分子量1150,Rfがパーフルオロメチ
ル基,
nが1,X+Yが6〕の1.0重量部と,増ちょう剤としてリチウムヒドロキシステアレートと基油としてポリアルファオレフィンとの比が3:97〜20:80からなるグリースの100重量部とを配合し,これらを均一に混合してグリース7を得た。
【0029】
<比較例2>
前記化合物(A−4)を,サーフロンS−383B(セイミケミカル株式会社製のパーフルオロアルキル基含有ポリマー)に変更した以外は,比較例1と同様の条件で作製したグリース8を得た。
【0030】
<比較例3>
前記化合物(A−4)を,サーフロンKH−20(セイミケミカル株式会社製のパーフルオロ基含有ポリオキシエチレン系化合物)に変更した以外は,比較例1と同様の条件で作製したグリース9を得た。
【0031】
各実施例1〜6の試験例1〜6,及び比較例1〜3の試験例1〜3について
実施例1〜6で得られたグリース1〜6,及び比較例1〜3で得られたグリース7〜9を用いて,下記試験法によって,拡散性,蒸発量を評価し,その結果を表1に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
次に,
図1を参照して,上記の各実施例1〜6及び各比較例1〜3について試験した。 (1)基油拡散防止効果について
まず,グリースGを直径10mm,高さ0.2mmの円錐形になるようにポリエステルシート2(100mm×100mm)の上に塗布する。そして,25℃,24時間後の基油の拡散状態を評価した。即ち,円錐系に塗布したグリースGから基油が拡散した場合,
図1に示すようにポリエステルシート2の面に基油が拡散した拡散領域3が確認される。基油の拡散が全く確認されなかった場合を○,基油の拡散が確認された場合を×とした。ここで,
図1では,ポリエステルシート2上でグリースGが拡散した拡散領域3を示している。
(2)添加剤蒸発量(重量%)について
プラスチックシャーレに添加剤試料3gを秤量し,100℃の恒温槽中で16時間放置したあとの重量を測定した。その際の減量を,測定前の質量に対する重量%で表し,これを蒸発量とした。なお,この発明における好ましい蒸発量としては,5重量%以下,更に好ましくは3重量%以下である。
(3)パーフルオロオクタン酸とパーフルオロオクタンスルホン酸の使用及び発生
グリース基油拡散防止剤の製造工程中にパーフルオロオクタン酸及びパーフルオロオクタンスルホン酸を使用せず,また,熱分解した際にも同化合物が発生しない基油拡散防止剤を用いたものを「なし」,それ以外のものを「あり」とした。
【0034】
表1に示したように,この発明による実施例1〜6のグリース1〜6は,グリース基油拡散防止効果があり,添加剤の蒸発量が3重量%以下であり,尚且つパーフルオロオクタン酸及びパーフルオクタンスルホン酸を製造工程中で使用せず,また熱分解した際にも同化合物が発生しない組成物からなるものであった。
これに対して,比較例1のグリース7は,基油の拡散が確認された。比較例2,3のグリース8,9は,基油の拡散が確認されなかったが,熱分解した際に添加剤の蒸発が確認された。
【0035】
上記のとおり,この発明によるグリース基油拡散防止剤を配合したグリース組成物は,各種精密機器類の機械的な回転部や摺動部等や高温環境下において好適に用いることができることが確認できた。これに対して,比較例1〜3のグリース組成物は,各種精密機器類の機械的な回転部や摺動部等や高温環境下において用いるのに適していないことが確認された。