特許第6363930号(P6363930)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6363930粘着剤付き光学フィルムおよびその製造方法、ならびに画像表示装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6363930
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】粘着剤付き光学フィルムおよびその製造方法、ならびに画像表示装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20180712BHJP
   C09J 133/04 20060101ALI20180712BHJP
   C09J 133/14 20060101ALI20180712BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20180712BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20180712BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20180712BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20180712BHJP
   G02F 1/1333 20060101ALI20180712BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
   G02B5/30
   C09J133/04
   C09J133/14
   C09J11/06
   B32B27/00 M
   B32B27/30 A
   G02F1/1335
   G02F1/1333
   C09J201/00
【請求項の数】15
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2014-209468(P2014-209468)
(22)【出願日】2014年10月10日
(65)【公開番号】特開2016-80773(P2016-80773A)
(43)【公開日】2016年5月16日
【審査請求日】2017年8月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152571
【弁理士】
【氏名又は名称】新宅 将人
(74)【代理人】
【識別番号】100141852
【弁理士】
【氏名又は名称】吉本 力
(72)【発明者】
【氏名】寳田 翔
(72)【発明者】
【氏名】水谷 昌紀
(72)【発明者】
【氏名】保井 淳
【審査官】 植野 孝郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−115468(JP,A)
【文献】 特開2001−288425(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/077727(WO,A1)
【文献】 特開2013−64079(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
B32B 1/00−43/00
C09J 7/02
C09J11/06
C09J113/04
C09J113/14
C09J201/00
G02F 1/1333
G02F 1/1335
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面透明板またはタッチパネルと画像表示セルとの間に配置して用いられる粘着剤付き光学フィルムであって、
偏光板を含む光学フィルム;前記光学フィルムの前面透明板またはタッチパネルと貼り合せられる側の面に付設された第一粘着剤層;および前記光学フィルムの画像表示セルと貼り合せられる側の面に付設された第二粘着剤層を備え、
前記第一粘着剤層は、厚みが30μm以上であり、端面の粘着剤の流動性が面内の中央部の粘着剤の流動性よりも小さいことを特徴とする、粘着剤付き光学フィルム。
【請求項2】
前記第一粘着剤層は、端面の粘着剤のゲル分率が、面内の中央部の粘着剤のゲル分率よりも5%以上大きい、請求項1に記載の粘着剤付き光学フィルム。
【請求項3】
前記第一粘着剤層は、端面の粘着剤のゲル分率が55%以上である、請求項2に記載の粘着剤付き光学フィルム。
【請求項4】
前記第一粘着剤層は、面内の中央部の粘着剤のゲル分率が55%未満である、請求項3に記載の粘着剤付き光学フィルム。
【請求項5】
前記第一粘着剤層の面内の中央部の粘着剤は、25℃における貯蔵弾性率が1×10Pa〜1×10Paである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の粘着剤付き光学フィルム。
【請求項6】
前記第一粘着剤層を構成する粘着剤組成物は、固形分全量に対するアクリル系ベースポリマーの含有量が50重量%以上であり、
前記アクリル系ベースポリマーは、モノマーユニットとしてヒドロキシ基含有モノマーユニットを含有し、構成モノマーユニット全量に対するヒドロキシ基含有モノマーユニットの含有量が3〜50重量%である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の粘着剤付き光学フィルム。
【請求項7】
前記第一粘着剤層は、ヘイズ1.0%以下であり、全光線透過率が90%以上である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の粘着剤付き光学フィルム。
【請求項8】
前記第一粘着剤層を構成する粘着剤組成物が、炭素‐炭素二重結合を有するラジカル重合性化合物を含有するか、炭素‐炭素二重結合を有するラジカル重合性化合物がベースポリマーに結合している、請求項1〜7のいずれか1項に記載の粘着剤付き光学フィルム。
【請求項9】
前記ラジカル重合性化合物が、1分子中に2以上の重合性官能基を有する多官能重合性化合物である、請求項8に記載の粘着剤付き光学フィルム。
【請求項10】
前記第一粘着剤層を構成する粘着剤組成物が、さらに光重合開始剤を含有する、請求項8または9に記載の粘着剤付き光学フィルム。
【請求項11】
前記第二粘着剤層の厚みが30μm以下である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の粘着剤付き光学フィルム。
【請求項12】
請求項10に記載の粘着剤付き光学フィルムを製造する方法であって、
第一粘着剤層および第二粘着剤層を付設後の粘着剤付き光学フィルムを所定サイズに切断する工程;および
切断後の粘着剤付き光学フィルムの側面から活性光線を照射することにより、前記第一粘着剤層の端面の粘着剤の流動性を低下させる端面処理工程
をこの順に有する、粘着剤付き光学フィルムの製造方法。
【請求項13】
視認側から、前面透明板またはタッチパネル、偏光板を含む光学フィルム、および画像表示セルがこの順に配置された画像表示装置を製造する方法であって、
請求項1〜11のいずれか1項に記載の粘着剤付き光学フィルムと画像表示セルとが前記第二粘着剤層を介して貼り合せられるセル側貼合工程;および
前記粘着剤付き光学フィルムと前面透明板またはタッチパネルとが前記第一粘着剤層を介して貼り合わせられる視認側貼合工程
を有する、画像表示装置の製造方法。
【請求項14】
視認側から、前面透明板またはタッチパネル;偏光板を含む光学フィルム;および画像表示セルがこの順に配置された画像表示装置を製造する方法であって、
請求項10に記載の粘着剤付き光学フィルムと画像表示セルとが第二粘着剤層を介して貼り合せられるセル側貼合工程;および
前記粘着剤付き光学フィルムと前面透明板またはタッチパネルとが第一粘着剤層を介して貼り合わせられる視認側貼合工程を有し、
さらに、前記視認側貼合工程の後に、前記前面透明板またはタッチパネル側から活性光線を照射することにより、前記第一粘着剤層が硬化される前面硬化工程
を有する、画像表示装置の製造方法。
【請求項15】
視認側から、前面透明板またはタッチパネル;偏光板を含む光学フィルム;および画像表示セルがこの順に配置された画像表示装置を製造する方法であって、
偏光板を含む光学フィルムの第一の主面上に第一粘着剤層が付設され、前記光学フィルムの第二の主面上に第二粘着剤層が付設された粘着剤付き光学フィルムを準備する工程;
前記粘着剤付き光学フィルムを所定サイズに切断する工程;
切断後の粘着剤付き光学フィルムの第一粘着剤層の端面の粘着剤の流動性を低下させる端面処理工程;
前記光学フィルムと画像表示セルとが前記第二粘着剤層を介して貼り合せられるセル側貼合工程;
前記光学フィルムと前面透明板またはタッチパネルとが前記第一粘着剤層を介して貼り合わせられる視認側貼合工程;および
前記視認側貼合工程の後に、前記前面透明板またはタッチパネル側から活性光線を照射することにより、前記第一粘着剤層が硬化される前面硬化工程
を有し、
前記第一粘着剤層は、厚みが30μm以上であり、炭素‐炭素二重結合を有するラジカル重合性化合物と光重合開始剤とを含有し、
前記端面処理工程において、粘着剤付き光学フィルムの側面から活性光線を照射することにより、前記第一粘着剤層の端面の粘着剤を硬化させ、端面の粘着剤の流動性を低下させることを特徴とする、画像表示装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示パネルの前面に透明板やタッチパネル等を備える画像表示装置の形成に用いられる粘着剤付き光学フィルムおよびその製造方法に関する。さらに、本発明は、当該粘着剤付き光学フィルムを用いた画像表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、カーナビゲーション装置、パソコン用モニタ、テレビ等の各種画像表示装置として、液晶表示装置や有機EL表示装置が広く用いられている。画像表示パネル(液晶パネルや有機ELパネル)の外表面からの衝撃による画像表示パネルの破損防止等を目的として、画像表示パネルの視認側に、透明樹脂板やガラス板等の前面透明板(「ウインドウ層」等とも称される)が設けられることがある。
【0003】
画像表示パネルの前面に前面透明板を配置する方法として、粘着剤層を介して両者を貼り合わせる「層間充填構造」が採用されている。層間充填構造では、パネルと前面透明板との間が粘着剤で充填されるため、界面の屈折率差が減少し、反射や散乱に起因する視認性の低下が抑制される。偏光板等の光学フィルムの一方の面に画像表示パネルと貼り合わせるための粘着剤層を備え、他方の面に前面透明板と貼り合わせるための層間充填用粘着剤を備える両面粘着剤付きフィルムも提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0004】
前面透明板のパネル側の面の周縁部には、装飾や光遮蔽を目的とした着色層が印刷されている。透明板の周縁部に着色層が形成されると、10μm〜数十μm程度の印刷段差が生じる。層間充填剤としてシート状粘着剤を用いた際は、この印刷段差部周辺に気泡が生じ易い。また、粘着剤を介して、印刷段差部直下の画像表示パネルに圧力が付加され、画面端部に力学的な歪を生じるために、画面の周縁部に表示ムラが発生する等の不具合を生じる場合がある。
【0005】
このような、前面透明板の印刷段差に起因する問題を解決するために、柔らかく厚みの大きい粘着シートを前面透明板の貼り合わせに用い、印刷段差吸収性を付与することが行われている。例えば、特許文献1〜4では、光学フィルムと前面透明板との貼り合わせに用いられる粘着剤層の貯蔵弾性率を所定範囲とすることが記載されている。また、特許文献2では、光硬化型粘着剤を用い、貼り合わせ時の印刷段差付近で気泡発生を抑制しつつ、貼り合わせ後に光照射を行い粘着剤の弾性率を高めることにより、接着の長期信頼性が高められることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−237965号公報
【特許文献2】特開2014−115468号公報
【特許文献3】特開2011−74308号公報
【特許文献4】特開2010−189545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、柔らかく(貯蔵弾性率や残留応力が小さく)厚みの大きい粘着シートを用いれば、印刷段差付近での気泡や、画面周縁部の表示ムラの発生を抑制できる。しかしながら、柔らかい粘着剤は流動しやすいため、所定サイズに切り出された製品の端面に露出した粘着剤が端面からはみ出しやすく、異物の付着が生じたり、製品同士が合着する等の不具合を生じる場合がある。また、画像表示装置の形成過程において、貼り合わせ後の印刷段差部周辺での気泡(ディレイバブル)の発生を抑制する目的で、オートクレーブ処理等による加圧・加熱処理が行われることが多い。この際に、粘着剤の流動性が高いと、貼り合わせ端面から粘着剤がはみ出し、貼り合わせ装置内を汚染する場合がある。
【0008】
特に、画像表示装置の薄型化の要求が高まるにつれて、粘着剤の厚みを小さくすることが求められるため、表示ムラを抑制するためには粘着剤の流動性をさらに高める必要がある。これに伴って、端面からの粘着剤のはみ出しがより顕著となる傾向がある。
【0009】
粘着剤の端面からのはみ出しによる不具合を抑制するために、特許文献1では、粘着剤層の端面が光学フィルムの側面(切断面)よりも内側に存在するように、切断や加工を行う方法が開示されている。しかしながら、柔らかい粘着剤は流動しやすいため、粘着剤層の端面がフィルムの内側に存在する場合でも、保管時や輸送時等に経時的に端面からの粘着剤のはみ出しが発生しやすい。また、粘着剤層の端面とフィルムの端面との距離が大きすぎると、前面透明板の印刷段差付近で接着不良を生じやすく、距離が短すぎると端面からの粘着剤のはみ出しを抑制できない場合がある。
【0010】
上記に鑑み、本発明は、前面透明板と貼り合わせた際の段差追従性を有し、かつ端面からのはみ出しが少ない粘着剤層を備える粘着剤付き光学フィルムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
端面の粘着剤の流動性を面内の中央部粘着剤の流動性よりも小さくすることによって、上記課題を解決できる。本発明は、前面透明板またはタッチパネルと画像表示セルとの間に配置して用いられる粘着剤付き光学フィルムに関し、光学フィルムの第一の主面上に第一粘着剤層が付設されている。第一粘着剤層は、前面透明板またはタッチパネルと光学フィルムとの貼り合わせに用いられる。第一粘着剤層は、厚みが30μm以上であり、端面の粘着剤の流動性が面内の中央部の粘着剤の流動性よりも小さい。
【0012】
本発明の粘着剤付き光学フィルムは、さらに第二の主面側に第二粘着剤層が付設された両面粘着剤付き光学フィルムであってもよい。第二粘着剤層は、画像表示セルと光学フィルムとの貼り合わせに用いられる。第二粘着剤層の厚みは30μm以下であることが好ましい。
【0013】
第一粘着剤層を構成する粘着剤組成物は、炭素‐炭素二重結合を有するラジカル重合性の化合物を含有することが好ましい。粘着剤組成物中のラジカル重合性化合物は、モノマーまたはオリゴマーとして粘着剤組成物中に存在してもよく、ベースポリマーの官能基と結合していてもよい。ラジカル重合性化合物がベースポリマーと結合することにより、ベースポリマーにラジカル重合性官能基が導入される。粘着剤組成物中にラジカル重合性化合物をモノマーまたはオリゴマーとして存在させる場合、1分子中に2以上の重合性官能基を有する多官能重合性化合物が好ましく用いられる。
【0014】
第一粘着剤層を構成する粘着剤組成物は、さらに光重合開始剤を含有することが好ましい。粘着剤組成物がラジカル重合性化合物と光重合開始剤とを含有する光硬化型粘着剤である場合、画像表示装置の画面サイズにあわせた所定サイズに切断後の粘着剤付き光学フィルムの側面から紫外線等の活性光線を照射することにより、第一粘着剤層の端面の粘着剤の流動性を低下させることができる。
【0015】
第一粘着剤層は、端面の粘着剤のゲル分率が、面内の中央部の粘着剤のゲル分率よりも5%以上大きいことが好ましい。第一粘着剤層は、端面の粘着剤のゲル分率が55%以上であることが好ましい。第一粘着剤層は、面内の中央部の粘着剤のゲル分率が55%未満であることが好ましい。第一粘着剤層の面内の中央部の粘着剤は、25℃における貯蔵弾性率が1×10Pa〜1×10Paであることが好ましい。
【0016】
第一粘着剤層を構成する粘着剤組成物は、固形分全量に対してアクリル系ベースポリマーを50重量%以上含有することが好ましい。アクリル系ベースポリマーは、モノマーユニットとしてヒドロキシ基含有モノマーユニットを含有することが好ましく、構成モノマーユニット全量に対するヒドロキシ基含有モノマーユニットの含有量は3〜50重量%が好ましい。
【0017】
また、本発明は、視認側から、前面透明板またはタッチパネル、偏光板を含む光学フィルム、および画像表示セルがこの順に配置された画像表示装置の製造方法に関する。画像表示装置の製造においては、粘着剤付き光学フィルムと前面透明板またはタッチパネルとが、第一粘着剤層を介して貼り合わせられる(視認側貼合工程)。第一粘着剤層を構成する粘着剤組成物がラジカル重合性化合物と光重合開始剤とを含有する場合、視認側貼合工程後に、前面透明板またはタッチパネル側から活性光線を照射することにより、第一粘着剤層が硬化されることが好ましい。
【0018】
このように、前面透明板またはタッチパネルと光学フィルムとの貼り合わせに用いられる粘着剤として光重合性の粘着剤を用いれば、粘着剤付き光学フィルムの側面からの活性性光線照射により端面の粘着剤を選択的に光硬化させ、端面からの粘着剤のはみ出し等を抑制できる。また、面内の中央部の粘着剤を未硬化として高い流動性を維持した状態で、前面透明板またはタッチパネルと光学フィルムとの貼り合わせを行えば、印刷段差付近での気泡や、画面周縁部の表示ムラの発生を抑制できる。貼り合わせ後に、前面透明板またはタッチパネル側から活性光線を照射することにより、面内の中央部の粘着剤を硬化して、接着性を高めることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の粘着剤付き光学フィルムは、第一粘着剤層の端面の粘着剤の流動性が小さいため、端面からの粘着剤のはみ出しが小さい。そのため、貼り合わせ時等の粘着剤のはみ出しによる汚染や、保管時、輸送時等における製品の合着等を抑制できる。また、第一粘着剤層の面内の中央部は粘着剤の流動性が高いため、タッチパネルや前面透明板等の前面透明部材と貼り合わせた場合の印刷段差吸収性に優れ、画面周縁の表示ムラ等の印刷段差に起因する不具合を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】Aは粘着剤付き光学フィルムの一実施形態を模式的に表す平面図であり、BはAのB1‐B2線における断面を表す模式的断面図である。
図2】画像表示装置の一実施形態を模式的に表す断面図である。
図3】粘着剤層の硬化部分の幅Wの求め方を説明するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明の粘着剤付き光学フィルムの一形態を表す。図1Aは平面図であり、図1B図1AのB1‐B2線における断面図である。図2は、粘着剤付き光学フィルム55を用いて形成された画像表示装置100の一形態を模式的に表す断面図である。
【0022】
図1Bに示す粘着剤付き光学フィルム55は、光学フィルム10の一方の面(第一の主面)に第一粘着剤層21が付設されている。図1Bに示す形態では、第一粘着剤層21上に、保護シート31が剥離可能に貼着されている。第一粘着剤層21が付設された第一の主面は、画像表示装置形成時に視認側となる面である。第一粘着剤層21は、光学フィルム10と前面透明板やタッチパネル等の前面透明部材70との貼り合せに用いられる。
【0023】
図1Bに示すように、光学フィルム10の他方の面(第二の主面)には、第二粘着剤層22が付設されていてもよい。図1Bに示す形態では、第二粘着剤層22上に、保護シート32が剥離可能に貼着されている。画像表示装置形成時に、第二粘着剤層22が付設された第二の主面側が、液晶セルや有機ELセル等の画像表示セル61側に配置される。第二粘着剤層22は、光学フィルム10と画像表示セル61との貼り合せに用いられる。
【0024】
[光学フィルム]
光学フィルム10は偏光板を含む。偏光板としては、偏光子の片面または両面に、必要に応じて適宜の透明保護フィルムが貼り合せられたものが一般に用いられる。偏光子は、特に限定されず、各種のものを使用できる。偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等のポリエン系配向フィルム等が挙げられる。
【0025】
偏光子の保護フィルムとしての透明保護フィルムには、セルロース系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、フェニルマレイミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等の、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性および光学等方性に優れるものが好ましく用いられる。なお、偏光子の両面に透明保護フィルムが設けられる場合、その表裏で同じポリマー材料からなる保護フィルムが用いられてもよく、異なるポリマー材料等からなる保護フィルムが用いられてもよい。また、液晶セルの光学補償や視野角拡大等を目的として、位相差板(延伸フィルム)等の光学異方性フィルムを偏光子の保護フィルムとして用いることもできる。
【0026】
光学フィルム10は、偏光板のみからなるものでもよく、偏光板の一方または両方の面に、必要に応じて適宜の接着剤層や粘着剤層を介して、他のフィルムが積層されていてもよい。このようなフィルムとしては、位相差板、視野角拡大フィルム、視野角制限(覗き見防止)フィルム、輝度向上フィルム等の画像表示装置の形成に用いられるものが使用され、その種類は特に制限されない。例えば、液晶表示装置では、液晶セルから視認側に射出される光の偏光状態を適宜に変換して、視野角特性を向上させる等の目的で、画像表示セル(液晶セル)と偏光板との間に光学補償フィルムが用いられる場合がある。有機EL表示装置では、外光が金属電極層で反射して鏡面のように視認されることを抑制するために、セルと偏光板との間に1/4波長板が配置される場合がある。また、偏光板の視認側に1/4波長板を配置して、出射光を円偏光とすることにより、偏光サングラスを装着した視認者に対しても、適切な画像表示を視認させることができる。
【0027】
光学フィルム10の表面には、ハードコート層や反射防止処理、スティッキング防止や、拡散ないしアンチグレアを目的とした処理が施されていてもよい。また、光学フィルム10の表面には、粘着剤層21,22を付設する前に、接着性向上等を目的として表面改質処理が行われてもよい。具体的な処理としては、コロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理、オゾン処理、プライマー処理、グロー処理、ケン化処理、カップリング剤による処理等が挙げられる。また適宜に帯電防止層を形成することもできる。
【0028】
[第一粘着剤層]
光学フィルム10の一方の面に付設された第一粘着剤層21は、前面透明板やタッチパネル等の前面透明部材70との貼り合せに用いられる。光学フィルム10上に予め粘着剤層21が付設された粘着剤付き光学フィルムを用いれば、前面透明部材70の貼り合せ時に、光学フィルム上に液状接着剤や別途のシート状粘着剤を付設する工程を省略でき、画像表示装置の製造工程を簡略化できる。
【0029】
粘着剤層21の厚さは、30μm以上が好ましく、50μm以上より好ましく、70以上がさらに好ましい。粘着剤層の厚みが上記範囲であれば、粘着剤に段差追従性を付与できるため、印刷段差付近での気泡の発生や、画像表示装置の周縁領域における表示ムラの発生を抑制できる。前面透明部材70が周縁部に印刷部76等の非平坦領域を有す場合、粘着剤層21の厚みは、非平坦領域(印刷部)76の厚みの1.2倍以上が好ましく、1.5倍以上がより好ましく、2.0倍以上がさらに好ましい。粘着剤層21の厚さの上限は特に限定されないが、画像表示装置の軽量化・薄型化の観点や、粘着剤層形成の容易性、ハンドリング性等を勘案すると、300μm以下が好ましく、250μm以下がさらに好ましい。
【0030】
段差追従性を持たせるためには、柔らかく流動性の高い粘着剤が好ましく用いられる。粘着剤の流動性の指標としては、貯蔵弾性率や残留応力等が挙げられる。貯蔵弾性率が同等であっても、貯蔵弾性率G’と損失弾性率G”との比である損失正接tanδ=G”/G’が大きいほど、粘性が高く流動性が高い。
【0031】
粘着剤に段差追従性を持たせ気泡や表示ムラを抑制するために、第一粘着剤層の25℃における貯蔵弾性率G’は、1×10Pa以下が好ましく、5×10Pa以下がより好ましく、3×10Pa以下がさらに好ましい。粘着剤付き光学フィルムを所望サイズにカットする際のカット刃等への粘着剤の付着を低減するために、第一粘着剤層の25℃における貯蔵弾性率G’は、1×10Pa以上が好ましく、2×10Pa以上がより好ましく、3×10Pa以上がさらに好ましい。
【0032】
タッチパネルや前面透明板等の前面透明部材と光学フィルムとを粘着剤層を介して貼り合せる際には、気泡の除去等を目的として、加熱環境下で貼り合せが行われた後、オートクレーブ処理等により、加圧・加熱処理が行われることが多い。第一粘着剤層21は、前面透明部材との貼り合せ時に高い流動性を有することが好ましい。そのため、第一粘着剤層の80℃における貯蔵弾性率G’80℃は、1×10Pa以下が好ましく、5×10Pa以下がより好ましく、3×10Pa以下がさらに好ましく、1×10Pa以下が特に好ましい。
【0033】
本明細書において、貯蔵弾性率G’は、JIS K7244−1「プラスチック−動的機械特性の試験方法」に記載の方法に準拠して、周波数1Hzの条件で、−50〜150℃の範囲で昇温速度5℃/分で測定した際の、所定温度における値を読み取ることにより求められる。粘着剤のように粘弾性を示す物質の弾性率は、貯蔵弾性率G’と損失弾性率G”で表さる。一般に、損失弾性率G”は粘性の程度を表す指標であるのに対して、貯蔵弾性率G’は硬さの程度を表す指標として用いられる。
【0034】
粘着剤に段差追従性を持たせ気泡や表示ムラを抑制するために、第一粘着剤層の25℃における残留応力は、6N/cm以下が好ましく、5.5N/cm以下がより好ましく、5N/cm以下がさらに好ましい。残留応力は、0.1N/cm以上が好ましい。本明細書における残留応力は、25℃、歪み300%の条件の引張応力緩和試験により測定される180秒後の残留応力である。具体的には、残留応力は、引張試験機により、引張速度200mm/分で歪み300%(元長の4倍)となるまで変形させた後、180秒間経過後の応力(引張応力)である。残留応力は、貯蔵弾性率との相関が高く、貯蔵弾性率が大きいほど、残留応力も大きくなる傾向がある。
【0035】
上記のように、光学フィルム10の第一の主面上に付設される第一粘着剤層としては、前面透明部材70の印刷部76の段差に起因する気泡や表示ムラを抑制するために、貯蔵弾性率や残留応力が小さく、流動性の高いものが用いられる。一方、粘着剤の流動性が大きいと、粘着剤付き光学フィルムの端面から、粘着剤がはみ出し易くなる。画像表示装置の画面サイズにあわせて所定サイズに切り出された粘着剤付き光学フィルムの端面から粘着剤がはみ出すと、保管時や輸送時に、端面への異物の付着や、重ね合わせられた製品同士の合着等の不具合を生じ易い。また、前面透明部材との貼り合せの際の加圧により、端面から粘着剤がはみ出すと、ラミネータやオートクレーブ等の装置内の汚染を生じる。
【0036】
本発明においては、第一粘着剤層21の面内中央部の粘着剤21cに上記のような高い流動性を持たせたまま、端面の粘着剤21eの流動性を小さくすることにより、端面からの粘着剤のはみ出しを抑制できる。図1Aに示すように、粘着剤付き光学フィルムの端面全体にわたって、粘着剤の流動性を小さくすることが好ましい。例えば、粘着剤付き光学フィルムが矩形に切り出されている場合、矩形の4辺全てにおいて、面内中央部の粘着剤の流動性に比べて端面の粘着剤の流動性が小さいことが好ましい。
【0037】
端面の粘着剤の流動性を小さくする方法は特に限定されない。例えば、端面近辺に流動性の小さい粘着剤を付設し、面内中央部には流動性の高い粘着剤を付設すれば、端面の粘着剤を選択的に低流動性とすることができる。生産性および加工性の観点からは、光学フィルム上の全面に硬化性の粘着剤層21を付設し、端面の粘着剤21eを選択的に硬化させ架橋度を高める方法等が好ましい。
【0038】
硬化性の粘着剤は、ベースポリマーと重合性化合物を含有し、光や熱により重合性化合物がベースポリマーを架橋することにより粘着剤のゲル分率(架橋度)を高め、流動性を低下させることができる。重合性化合物としては、炭素‐炭素二重結合(C=C結合)を有するラジカル重合性化合物(エチレン性不飽和化合物)が好ましく用いられる。ラジカル重合性化合物は、モノマーまたはオリゴマーとして粘着剤組成物中に存在してもよく、ベースポリマーのヒドロキシ基等の官能基と結合していてもよい。硬化性の粘着剤は、重合開始剤(光重合開始剤や熱重合開始剤)を含むものが好ましい。
【0039】
ベースポリマーの官能基と結合可能な官能基とラジカル重合性官能基とを有するラジカル重合性化合物を、ベースポリマーと混合することにより、ベースポリマーにラジカル重合性官能基を導入し、粘着剤組成物を硬化型粘着剤とすることができる。ベースポリマーの官能基と結合可能な官能基としては、イソシアネート基が好ましい。イソシアネート基は、ベースポリマーのヒドロキシ基とウレタン結合を形成するため、ベースポリマーへのラジカル重合性官能基の導入を容易に行い得る。イソシアネート基と重合性官能基とを含有するラジカル重合性化合物としては、(メタ)アクリロイルイソシアネート、2‐(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、m‐イソプロペニル‐α,α‐ジメチルベンジルイソシアネート等が挙げられる。ラジカル重合性化合物が、ベースポリマーの官能基と結合可能な官能基を有する場合、ラジカル重合性化合物は、1分子中のラジカル重合性官能基の数が1個でもよく、2個以上でもよい。1分子中に複数のラジカル重合性官能基を有するイソシアネート化合物としては、1,1‐(ビス(メタ)アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネートが例示できる。
【0040】
粘着剤組成物中にラジカル重合性化合物がモノマーまたはオリゴマーとして存在する場合、1分子中に2以上の重合性官能基を有する多官能重合性化合物が好ましく用いられる。多官能重合性化合物としては、1分子中に2個以上のC=C結合を有する化合物や、1個のC=C結合と、エポキシ、アジリジン、オキサゾリン、ヒドラジン、メチロール等の重合性官能基とを有する化合物等が挙げられる。中でも、多官能アクリレートのように、1分子中に2個以上のC=C結合を有する多官能重合性化合物が好ましい。多官能重合性化合物の具体例としては、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAプロピレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、アルカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート、ペンタエリストールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリストールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリストールポリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリストールヘキサ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ブタジエン(メタ)アクリレート、イソプレン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0041】
大面積の粘着剤付き光学フィルムから、画像表示の画面サイズにあわせた所定サイズに切り出す場合、粘着剤の硬化は切断の前後いずれに行ってもよい。例えば、切断を行う部分(切断予定位置)への位置選択的な光照射や加熱を行い、粘着剤を硬化後に、硬化部分を切断することにより、端面の粘着剤21eが硬化された粘着剤付き光学フィルムが得られる。また、所定サイズへの切り出し後の端面の加熱や光照射により、端面の粘着剤21eを硬化することもできる。
【0042】
粘着剤の流動性が小さい領域は、粘着剤の流動性による端面からの粘着剤のはみだしを抑制可能な程度の大きさであればよい。粘着剤の流動性が小さい領域の端面からの幅Wは、粘着剤の流動性や組成等に応じて調整できる。Wは、例えば、10μm程度あるいはそれ以上であればよい。粘着剤の流動性が小さい領域の幅Wは、30μm以上が好ましく、50μm以上がより好ましい。一方、Wが大きくなると、前面透明部材70との貼り合わせの際に、印刷部76の周辺の粘着剤の流動性が小さく、気泡や表示ムラの原因となる。そのため、Wは3000μm以下が好ましく、2000μm以下がより好ましく、1000μm以下がさらに好ましい。また、Wは、前面透明部材70の印刷部76の幅Wよりも小さいことが好ましい。印刷段差に起因する気泡や表示ムラを抑制するためには、Wは、Wの0.8倍以下がより好ましく、0.6倍以下がさらに好ましい。
【0043】
粘着剤の流動性が小さい領域の幅Wを上記範囲に調整するためには、所定サイズに切り出した後に、切断面(端面)から紫外線等の活性光線を照射することにより、端面の粘着剤21eを光硬化する方法が好ましい。そのため、第一粘着剤層21の硬化型粘着剤は、ラジカル重合性化合物および光重合開始剤を含有することが好ましい。端面から活性光線を照射する場合、照射光の波長や積算光量等を調整することにより、粘着剤の流動性が小さい領域の幅Wを調整できる。
【0044】
図3は、端面からの活性光線照射により光硬化を行った粘着剤における、端面からの距離Wと粘着剤層中のC=C結合含有量Cとの関係を模式的に表すグラフである。例えば、顕微赤外分光法により、C=C結合由来の1640cm−1付近の吸光度を測定することにより、距離Wに対するC=C結合含有量の変化を求めることができる。図3に示すように、距離Wが0の地点(すなわち端面)では、硬化が最も進んでおり、C=C結合含有量Cは0に近い値となる。一方、端面から離れた中央部では硬化がほとんど進んでおらず、未反応のC=C結合含有量Cは、端面からの活性光線照射前のC=C結合含有量にほぼ等しい。このように、端面からの距離によって硬化の進行が異なる場合は、C=C結合含有量が、端面の粘着剤のC=C結合含有量Cと面内中央の粘着剤のC=C結合含有量Cの平均値(C+C)/2となる位置までの距離を、粘着剤の流動性が小さい領域の幅Wと定義することができる。なお、粘着剤層の面内の中央部とは、粘着剤の流動性が小さい領域に囲まれた領域であり、端面近傍に比して粘着剤の流動性の高い領域である。
【0045】
端面を硬化することにより、第一粘着剤層21は、端面の粘着剤21eのゲル分率が、面内中央の粘着剤21cのゲル分率よりも大きくなる。端面の粘着剤のゲル分率は、面内中央よりも5%以上大きいことが好ましく、8%以上大きいことが好ましく、10%以上大きいことがさらに好ましい。
【0046】
粘着剤のゲル分率は、溶媒への不溶分として求めることができ、具体的には、粘着剤を溶媒中に23℃で7日間浸漬した後の不溶成分の、浸漬前の試料に対する重量分率(単位:重量%)として求められる。粘着剤がアクリル系粘着剤である場合、溶媒としては酢酸エチルが用いられる。端面の粘着剤のゲル分率を測定する場合は、端面から200μm以内の領域から採取した粘着剤を用いる。一般に、ポリマーのゲル分率は架橋度に等しく、ポリマー中に架橋された部分が多いほど、ゲル分率が大きくなる。粘着剤の組成が同一であれば、ゲル分率が大きいほど流動性は小さくなる。
【0047】
端面および面内中央の粘着剤のゲル分率は、粘着剤の組成等によりその最適値が異なる。端面からの粘着剤のはみ出しを抑制するためには、端面の粘着剤21eのゲル分率は55%以上が好ましく、58%以上がより好ましく、60%以上がさらに好ましい。一方、前面透明板の印刷段差に対する追従性を持たせるためには、面内中央の粘着剤21cのゲル分率は55%未満が好ましく、52%以下がより好ましく、50%以下がさらに好ましい。
【0048】
硬化後の端面の粘着剤21eの25℃における残留応力は1.5N/cm以上が好ましく、2.0N/cm以上がより好ましく、2.2N/cm以上がさらに好ましい。硬化後の端面の粘着剤21eの25℃における貯蔵弾性率は5×10Pa以上が好ましく、7×10Pa以上がより好ましく、8×10Pa以上がさらに好ましく、9×10Pa以上が特に好ましい。なお、側面からの光照射による粘着剤の硬化領域は、幅(面積)が小さいため、端面の粘着剤の残留応力や貯蔵弾性率を直接測定することは困難である。同一組成の硬化型粘着剤を用いて、ゲル分率と残留応力あるいは貯蔵弾性との関係を別途求めることにより、端面の粘着剤のゲル分率の測定値から、貯蔵弾性率や残留応力を算出できる。ゲル分率が大きくなるにしたがって、残留応力および貯蔵弾性率は大きくなる。一般に、ゲル分率の増加に伴って、残留応力は線型的に増大する傾向がある。
【0049】
第一粘着剤層21を構成する粘着剤の組成は特に限定されず、アクリル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルエーテル、酢酸ビニル/塩化ビニルコポリマー、変性ポリオレフィン、エポキシ系、フッ素系、天然ゴム、合成ゴム等のゴム系等のポリマーをベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。第一粘着剤層21は、画像表示装置に用いられる粘着剤であるため、光学的透明性に優れるものが好ましく用いられる。具体的には、第一粘着剤層21は、ヘイズが1.0%以下であり、全光線透過率が90%以上であることが好ましい。また、第二粘着剤層22も、ヘイズが1.0%以下であり、全光線透過率が90%以上であることが好ましい。
【0050】
光学的透明性および接着性に優れた粘着剤としては、アクリル系ポリマーをベースポリマーとするアクリル系粘着剤が好ましく用いられる。アクリル系粘着剤は、粘着剤組成物の固形分全量に対するアクリル系ベースポリマーの含有量が50重量%以上であることが好ましく、70重量%以上であることがより好ましく、80重量%以上であることがさらに好ましい。
【0051】
アクリル系ポリマーとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルのモノマー単位を主骨格とするものが好適に用いられる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリルおよび/またはメタクリルを意味する。
【0052】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アルキル基の炭素数が1〜20である(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好適に用いられる。例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s‐ブチル、(メタ)アクリル酸t‐ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸2‐エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸イソトリドデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸イソテトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸セチル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸イソオクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸アラキル等が挙げられる。
【0053】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量は、ベースポリマーを構成するモノマー成分全量に対して40重量%以上であることが好ましく、50重量%以上がより好ましく、60重量%以上がさらに好ましい。
【0054】
アクリル系ベースポリマーは、複数の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの共重合体であってもよい。構成モノマー単位の並びはランダムであっても、ブロックであってもよい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、アルキル基が分枝を有していてもよい。分枝を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを用いることにより、粘着剤に柔軟性を持たせることができる。上記例示のモノマーの中で、分枝アルキル(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸2‐エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸イソテトラデシル、(メタ)アクリル酸イソオクタデシル等が好適に用いられる。なお、分枝アルキル(メタ)アクリル酸エステルは2種以上を併用することもできる。また、これらの分枝アルキル(メタ)アクリル酸エステルは、直鎖アルキル(メタ)アクリル酸エステルと併用して用いられてもよい。
【0055】
アクリル系ベースポリマーは、共重合成分として、架橋可能な官能基を有するアクリル系モノマー単位を含有することが好ましい。ベースポリマーが架橋可能な官能基を有する場合、ベースポリマーの熱架橋や光硬化等による粘着剤のゲル分率の上昇を容易に行い得る。架橋可能な官能基を有するアクリル系モノマーとしてはヒドロキシ基含有モノマーや、カルボキシ基含有モノマーが挙げられる。中でも、ベースポリマーの共重合成分として、ヒドロキシ基含有モノマーを含有することが好ましい。ベースポリマーが、モノマーユニットとしてヒドロキシ基含有モノマーを有する場合、ベースポリマーの架橋性が高められるとともに、高温高湿環境下での粘着剤の白濁が抑制される傾向があり、透明性の高い粘着剤が得られる。
【0056】
ヒドロキシ基含有モノマーとしては、(メタ)アクリル酸2‐ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2‐ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4‐ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6‐ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8‐ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10‐ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12‐ヒドロキシラウリルや(4‐ヒドロキシメチルシクロヘキシル)‐メチルアクリレート等が挙げられる。ヒドロキシ基含有モノマーユニットの含有量は、ベースポリマーの構成モノマーユニット全量に対して、3〜50重量%が好ましく、5〜40重量%がより好ましく、7〜30重量%がさらに好ましい。
【0057】
アクリル系ベースポリマーは、上記の(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよびヒドロキシ基含有モノマーユニットに加えて、窒素含有モノマー等の極性の高いモノマーユニットを含有することが好ましい。ヒドロキシ基含有モノマーユニットに加えて、窒素含有モノマーユニット等の高極性モノマーユニットを含有することにより、粘着剤が高い接着性と保持力を有するとともに、高温高湿環境下での白濁が抑制される。
【0058】
窒素含有モノマーとしては、N‐ビニルピロリドン、メチルビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルピペリドン、ビニルピリミジン、ビニルピペラジン、ビニルピラジン、ビニルピロール、ビニルイミダゾール、ビニルオキサゾール、ビニルモルホリン、(メタ)アクリロイルモルホリン、N‐ビニルカルボン酸アミド類、N‐ビニルカプロラクタム等のビニル系モノマーや、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアノアクリレート系モノマー等が挙げられる。中でも、N‐ビニルピロリドンおよび(メタ)アクリロイルモルホリンが好ましく用いられる。窒素含有モノマーユニットの含有量は、ベースポリマーの構成モノマーユニット全量に対して、3〜50重量%が好ましく、5〜40重量%がより好ましく、7〜30重量%がさらに好ましい。
【0059】
上記以外に、共重合モノマー成分として、酸無水物基含有モノマー、アクリル酸のカプロラクトン付加物、スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー等を用いることもできる。アクリル系ポリマー中の共重合モノマー成分の割合は、特に制限されないが、例えば架橋点を導入する目的で共重合モノマー成分としてヒロドキシル基含有モノマーを用いる場合、その含有量は、全構成モノマーの重量比率において、3〜50%程度が好ましく、5〜30%程度がより好ましい。
【0060】
ベースポリマーとしてのアクリル系ポリマーは、上記モノマー成分を、溶液重合、乳化重合、塊状重合等の各種公知の方法により重合することによって得られる。粘着剤の接着力、保持力等の特性のバランスや、コスト等の観点から、溶液重合法が好適である。溶液重合の溶媒としては一般に酢酸エチル、トルエン等が用いられる。溶液濃度は通常20〜80重量%程度である。重合開始剤としては、アゾ系開始剤、過酸化物系開始剤、過酸化物と還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤(例えば、過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムの組み合わせ、過酸化物とアスコルビン酸ナトリウムの組み合わせ)等の熱重合開始剤が好ましく用いられる。重合開始剤の使用量は特に制限はされないが、例えば、ベースポリマーを形成するモノマー成分全量100重量部に対して、0.005〜5重量部程度が好ましく、0.02〜3重量部程度がより好ましい。
【0061】
また、ベースポリマーの分子量を調整するために、連鎖移動剤が用いられていてもよい。連鎖移動剤は、成長ポリマー鎖からラジカルを受け取ってポリマーの伸長を停止させるとともに、ラジカルを受け取った連鎖移動剤がモノマーを攻撃して再び重合を開始させることができる。そのため、連鎖移動剤が用いられることにより、反応系中のラジカル濃度を低下させることなく、ベースポリマーの分子量の増大が抑止され、流動性の高い粘着剤が得られる。連鎖移動剤としては、例えば、α‐チオグリセロール、ラウリルメルカプタン、グリシジルメルカプタン、メルカプト酢酸、2‐メルカプトエタノール、チオグリコール酸、チオグルコール酸2‐エチルヘキシル、2,3‐ジメルカプト‐1‐プロパノール等のチオール類が好適に用いられる。連鎖移動剤の使用量は特に制限はされないが、例えば、ベースポリマーを構成するモノマー成分全量100重量部に対して、2重量部以下が好ましく、1重量部以下がより好ましい。
【0062】
第一粘着剤層21の粘着剤は、架橋構造を有していてもよい。架橋構造の形成は、例えば、ベースポリマーの重合後に架橋剤を添加し、加熱することにより行われる。架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、金属キレート系架橋剤等の一般に用いられているものを使用できる。これらの架橋剤は、ベースポリマー中に導入されたヒドロキシ基等の官能基と反応して架橋構造を形成し得る。架橋剤の含有量は、ベースポリマー100重量部に対して、通常、10重量部以下であり、好ましくは5重量部以下、より好ましくは3重量部以下である。架橋剤の含有量が多すぎると、粘着剤の柔軟性(流動性)が低下するため、被着体への密着性が低下したり、前面透明板の印刷段差に起因する気泡の混入や表示ムラを生じる場合がある。
【0063】
粘着剤組成物中には、接着力の調整を目的として、シランカップリング剤を添加することもできる。シランカップリング剤は、1種を単独で、あるいはは2種以上を併用して用いることができる。粘着剤組成物がシランカップリング剤を含有する場合、その含有量は、ベースポリマー100重量部に対し通常0.01〜5.0重量部程度であり、0.03〜2.0重量部程度であることが好ましい。
【0064】
粘着剤組成物には、必要に応じて粘着付与剤を用いることができる。粘着付与剤としては、例えば、テルペン系粘着付与剤、スチレン系粘着付与剤、フェノール系粘着付与剤、ロジン系粘着付与剤、エポキシ系粘着付与剤、ジシクロペンタジエン系粘着付与剤、ポリアミド系粘着付与剤、ケトン系粘着付与剤、エラストマー系粘着付与剤等を用いることができる。粘着剤組成物が粘着付与剤を含有する場合、その含有量は、ベースポリマー100重量部に対して、5〜300重量部程度が好ましく、10〜150重量部程度がより好ましい。
【0065】
上記例示の各成分の他、可塑剤、軟化剤、劣化防止剤、充填剤、着色剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、界面活性剤、帯電防止剤等の添加剤を、本発明の特性を損なわない範囲で用いることができる。
【0066】
前述のごとく、粘着剤付き光学フィルムの端面の流動性を低下させるために、第一粘着剤層21を構成する粘着剤は、光硬化型または熱硬化型であることが好ましい。光硬化型または熱硬化型の粘着剤は、ベースポリマーおよび架橋剤に加えて、ラジカル重合性化合物を含有する。ラジカル重合性化合物としては、前述のように、ベースポリマーの官能基と結合可能な官能基とラジカル重合性官能基とを有する化合物や、多官能重合性化合物が好ましく用いられる。また、これらの化合物を併用してもよい。ラジカル重合性化合物の含有量は、ベースポリマー100重量部に対して、0.5〜30重量部が好ましく、1〜20重量部がより好ましい。ラジカル重合性化合物の含有量を上記範囲とすることで、硬化前、硬化後の粘着剤の流動性を好ましい範囲に調整することができる。
【0067】
ラジカル重合性化合物をベースポリマーと結合させるためには、ベースポリマーを重合後にラジカル重合性化合物が添加されることが好ましい。ラジカル重合性化合物を粘着剤組成物中にモノマーまたはオリゴマーとして存在させるためには、ベースポリマーを重合後、必要に応じて架橋が行われた後に、ラジカル重合性化合物が添加されることが好ましい。
【0068】
第一粘着剤層21が光硬化型粘着剤である場合、粘着剤組成物中に光重合開始剤を含有することが好ましい。光重合開始剤としては、1個または複数のラジカル発生点を分子中に有する化合物が用いられ、例えば、ヒドロキシケトン類、ベンジルジメチルケタール類、アミノケトン類、アシルフォスフィンオキサイド系、ベンゾフェノン系、トリクロロメチル基含有トリアジン誘導体等が挙げられる。これらの中でも、300nm以下の短波長の光照射によりラジカルを発生可能なものが好ましく用いられる。短波長の光は回り込みが生じ難いため、粘着剤層の端面(側面)から光照射を行った場合に、端面近辺を選択的に硬化できる。そのため、粘着剤の流動性が小さい領域の幅Wの制御が容易となり、端面からの粘着剤のはみ出しを抑制できると共に、印刷段差付近の粘着剤の過度の硬化が抑制されるために、気泡や表示ムラの発生を抑制できる。光重合開始剤の含有量は、ベースポリマー100重量部に対して、0.01〜5重量部が好ましく、0.05〜3重量部がより好ましい。
【0069】
[第二粘着剤層]
図1Bに示すように、粘着剤付き光学フィルムは、光学フィルム10の第二の主面(画像表示セル61側の面)に、第二粘着剤層22が付設されていることが好ましい。第二粘着剤層22の厚さは、3μm〜30μmが好ましく、5μm〜27μmがより好ましく、10μm〜25μmがさらに好ましい。第粘着剤層の厚みが上記範囲であれば、耐久性に優れると共に、気泡の混入等の不具合を抑制することができる。
【0070】
第二粘着剤層としては、光学フィルムと画像表示セルとの貼り合わせに用いられる各種の粘着剤を用いることができる。第二粘着剤層を構成する粘着剤としては、アクリル系粘着剤が好ましく用いられる。第二粘着剤層には、第一粘着剤層よりも流動性の低い粘着剤が好ましく用いられる。
【0071】
第二粘着剤層22は、25℃における貯蔵弾性率G’が、1×10Pa〜1.0×10Paであることが好ましく、3×10Pa〜5.0×10Paであることがより好ましく、5.0×10Pa〜1.0×10Paであることがさらに好ましい。第二粘着剤層の貯蔵弾性率が上記範囲であれば、適度の接着性を示す。また、第一粘着剤層21を介して光学フィルム10と前面透明部材70との貼り合せのために加熱が行わる際に、第二粘着剤層の流動が抑制されるため、他の部材や貼り合わせ装置内の汚染を抑制できる。
【0072】
[光学フィルムへの粘着剤層の形成]
光学フィルム10に第一粘着剤層21および第二粘着剤層22を付設する方法としては、例えば、粘着剤組成物を剥離処理したセパレータ等に塗布し、溶媒等を乾燥除去して、必要に応じて架橋処理を行って粘着剤層を形成した後に、光学フィルム10上に転写する方法;または光学フィルム10に前記粘着剤組成物を塗布し、溶媒等を乾燥除去して、粘着剤層を光学フィルム上に形成する方法、等が挙げられる。
【0073】
粘着剤層の形成方法としては、各種方法が用いられる。具体的には、例えば、ロールコート、キスロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、ディップロールコート、バーコート、ナイフコート、エアーナイフコート、カーテンコート、リップコート、ダイコーター等による押出しコート法等の方法が挙げられる。これらの中でも、ダイコーターを使用することが好ましく、特にファウンテンダイ、スロットダイを用いるダイコーターを使用することがより好ましい。
【0074】
塗布後の粘着剤を乾燥させる方法としては、目的に応じて、適宜、適切な方法が採用され得る。加熱乾燥温度は、好ましくは40℃〜200℃、より好ましくは50℃〜180℃、さらに好ましくは70℃〜170℃である。乾燥時間は、好ましくは5秒〜20分、より好ましくは5秒〜15分、さらに好ましくは10秒〜10分である。
【0075】
粘着剤組成物が架橋剤を含有する場合、基材上への塗布後に、加熱による架橋が行われてもよい。加熱温度や加熱時間は、使用する架橋剤の種類によって適宜設定されるが、通常、20℃〜160℃の範囲で、1分から7日程度の加熱により架橋が行われる。塗布後の粘着剤を乾燥させるための加熱が、架橋のための加熱を兼ねていてもよい。
【0076】
粘着剤層21,22上には、必要に応じて保護シート31,32が剥離可能に貼着される。保護シートは、粘着剤が被着体との貼り合わせに用いられるまでの間、粘着剤の露出面を保護する目的で用いられる。粘着剤層21,22の形成(塗布)時に用いられた基材を、そのまま粘着剤層の保護シートとして用いてもよい。
【0077】
保護シーの構成材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステルフィルム等のプラスチックフィルムが好ましく用いられる。保護シート31,32の厚みは、通常5〜200μm、好ましくは10〜150μm程度である。保護シートは、必要に応じて、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系もしくは脂肪酸アミド系の離型剤、シリカ粉等による離型および防汚処理や、塗布型、練り込み型、蒸着型等の帯電防止処理もすることもできる。特に、保護シートの表面にシリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理等の剥離処理を適宜おこなうことにより、実用に供する際に、粘着剤からの剥離性をより高めることができる。
【0078】
[粘着剤付き光学フィルムの切断]
粘着剤付き光学フィルムは、画像表示装置のサイズ(画面サイズ)と合致する製品サイズに切り出される。切断方法としては、トムソン刃等を用いて打ち抜く方法や、丸刃や皿刃等のカッターを用いる方法や、レーザー光、水圧を利用する方法等が挙げられる。
【0079】
[端面の硬化]
本発明においては、粘着剤付き光学フィルムを所定サイズに切断後、第一粘着剤層21の端面の粘着剤21eの流動性を低下させるために、端面を硬化する処理(端面処理)が行われることが好ましい。硬化方法としては、前述のように熱硬化あるいは光硬化が挙げられる。中でも、粘着剤付き光学フィルムの側面から、紫外線等の活性光線を照射して光硬化を行うことが好ましい。
【0080】
側面からの光硬化を行う場合、粘着剤の流動性が小さい領域の幅Wが前述の範囲となるように、照射光の強度や照射時間等を調整することが好ましい。最適な積算照射量は、粘着剤の組成等により異なるが、例えば50mJ/cm〜5000mJ/cm程度である。
【0081】
このように、第一粘着剤層21の端面の粘着剤21eが硬化された粘着剤付き光学フィルムは、端面の流動性が小さいために、粘着剤のはみ出しが抑制される。また、端面の粘着剤21eの硬化後も、面内中央部の粘着剤21cは高い流動性を維持しているため、前面透明部材と貼り合わせた際の、印刷段差付近での気泡や表示ムラの発生を抑制できる。
【0082】
[画像表示装置]
粘着剤付き光学フィルム55は、図2に模式的に示すように、偏光板を含む光学フィルム10の一方の面(視認側)にタッチパネルや前面透明板等の前面透明部材70を備え、他方の面に液晶セルや有機ELセル等の画像表示セル61を備える画像表示装置100の形成に好適に用いられる。
【0083】
前面透明部材70としては、前面透明板(ウインドウ層)やタッチパネル等が挙げられる。前面透明板としては、適宜の機械強度および厚みを有する透明板が用いられる。このような透明板としては、例えばアクリル系樹脂やポリカーボネート系樹脂のような透明樹脂板、あるいはガラス板等が用いられる。タッチパネルとしては、抵抗膜方式、静電容量方式、光学方式、超音波方式等、任意の方式のタッチパネルが用いられる。
【0084】
画像表示装置の形成において、画像表示セル61と粘着剤付き光学フィルム55との貼り合せ方法、および前面透明部材70と粘着剤付き光学フィルム55との貼り合せ方法は特に限定されず、第一粘着剤層21および第二粘着剤層22のそれぞれの表面に貼着された保護シート31,32を剥離した後、各種公知の方法により貼り合せることができる。
【0085】
貼り合せの順序は特に限定されず、画像表示セル61と粘着剤付き光学フィルム55の第二粘着剤層22との貼り合せが先に行われてもよく、前面透明部材70と粘着剤付き光学フィルム55の第一粘着剤層21との貼り合せが先に行われてもよい。また、両者の貼り合せを同時に行うこともできる。貼り合せの作業性や、光学フィルムの軸精度を高める観点からは、第二粘着剤層22の表面から保護シート32を剥離後、光学フィルム10と画像表示セル61とが第二粘着剤層を介して貼り合せられるセル側貼合工程が行われ、その後に、第一粘着剤層21の表面から保護シート31を剥離し、光学フィルム10と前面透明部材70とが第一粘着剤層21を介して貼り合せられる視認側貼合工程が行われることが好ましい。
【0086】
光学フィルムと前面透明部材とが貼り合せられた後には、第一粘着剤層21と前面透明部材70との界面や、前面透明部材70の印刷部76等の非平坦部近辺の気泡を除去するための脱泡が行われることが好ましい。脱泡方法としては、加熱、加圧、減圧等の適宜の方法が採用され得る。例えば、減圧・加熱下で気泡の混入を抑制しながら貼り合わせが行われ、その後、ディレイバブルの抑制等を目的として、オートクレーブ処理等により、加熱と同時に加圧が行われることが好ましい。
【0087】
第一粘着剤層21を構成する粘着剤が、硬化性化合物を含有する硬化性粘着剤である場合、光学フィルム10と前面透明部材70との貼り合せが行われた後、第一粘着剤層の硬化(前面硬化工程)が行われることが好ましい。第一粘着剤層が硬化されることによって、画像表示装置における光学フィルム10と前面透明部材70との接着の信頼性を高めることができる。光学フィルムと前面透明部材との貼り合せ後に、気泡除去等の目的で加熱や加圧が行われる場合、第一粘着剤層の硬化は、気泡除去の後に行われることが好ましい。気泡除去後に第一粘着剤層の硬化が行われることによって、ディレイバブルの発生が抑制される。
【0088】
第一粘着剤層の硬化方法は特に限定されない。光硬化が行われる場合は、前面透明部材70を通して紫外線等の活性光線を照射する方法が好ましい。前面透明部材70が印刷部76のような不透明部を有している場合、印刷部の直下には活性光線が照射されないため、硬化が不十分となる場合がある。光が照射された部分で発生したラジカルの移動等によって、非照射部分においても粘着剤の硬化はある程度進行するが、一般には、粘着剤の端面に近いほど、硬化が不十分となりやすい。これに対して、本発明では、前面透明部材との貼り合わせ前に、端面側からの光照射等により端面の粘着剤21eが硬化されているため、印刷部直下の粘着剤が未硬化となることを防止できる。そのため、印刷部直下での粘着剤の剥がれ等が抑制され、光学フィルム10と前面透明部材70との接着信頼性に優れる画像表示装置が得られる。
【実施例】
【0089】
以下に実施例および比較例を挙げて、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0090】
[偏光板]
以下の各実施例および比較例では、光学フィルムとして、ヨウ素が含浸された厚み25μmの延伸ポリビニルアルコールフィルムからなる偏光子の両面に透明保護フィルムが貼り合せられた偏光板を用いた。偏光子の一方の面(画像表示セル側)の透明保護フィルムは、厚さ40μmのアクリル系フィルムであり、他方の面(視認側)の透明保護フィルムは、厚さ60μmのトリアセチルセルロースフィルムであった。
【0091】
[セル側粘着シートの作製]
(ベースポリマーの調製)
温度計、攪拌機、冷却器および窒素ガス導入管を備える反応容器内に、モノマー成分として、ブチルアクリレート(BA):97重量部およびアクリル酸(AA):3重量部、ならびに熱重合開始剤として、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN):0.2重量部を、酢酸エチル233重量部とともに投入し、23℃の窒素雰囲気下で1時間撹拌し、窒素置換を行った。その後、60℃で5時間反応させ、重量平均分子量(Mw)が110万のアクリル系ベースポリマーを得た。
【0092】
(粘着剤組成物の調製)
上記で得られたアクリル系ベースポリマー溶液に、ベースポリマー100重量部に対して、イソシアネート系架橋剤としてトリメチロールプロパントリレンジイソシアネート(商品名:コロネートL,日本ポリウレタン工業社製):0.8重量部、およびシランカップリング剤(商品名:KBM−403,信越化学社製):0.1部を添加した後、均一に混合して粘着剤組成物(溶液)を調製した(以下、この粘着剤組成物を「粘着剤X」とする)。
【0093】
(粘着シートの作製および架橋)
厚み38μmのセパレータ(表面が離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム)の離型処理面上に、上記の粘着剤組成物を、乾燥後の厚みが20μmとなるように塗布し、100℃で3分間乾燥させて溶媒を除去して、粘着シートを得た。その後、50℃で48時間加熱して、架橋処理を行った(以下、この粘着シートを「粘着シートX」と称する)。
【0094】
[視認側粘着シートの作製]
<粘着シートA>
(ベースポリマーの調製)
温度計、攪拌機、冷却器および窒素ガス導入管を備える反応容器内に、モノマー成分として、2‐エチルヘキシルアクリレート(2EHA):40重量部、イソステアリルアクリレート(ISA):40重量部、N‐ビニルピロリドン(NVP):10重量部、および4‐ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA):10重量部、ならびに熱重合開始剤としてAIBN:0.2重量部を、酢酸エチル233重量部とともに投入し、23℃の窒素雰囲気下で1時間撹拌し、窒素置換を行った。その後、65℃で5時間反応させ、続けて70℃で2時間反応させて、アクリル系ベースポリマー溶液を調製した。
【0095】
(光硬化型粘着剤組成物の調製)
上記で得られたアクリル系ベースポリマー溶液に、ベースポリマー100重量部に対して、エーテル結合を有する二官能アクリレートとして、ポリプロピレングリコール(#700)ジアクリレート(商品名:NKエステルAPG‐700,新中村化学工業社製):7重量部;イソシアネート系架橋剤として、キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物(商品名:タケネートD110N,三井化学社製):0.1重量部;および光重合開始剤として、2,2‐ジメトキシ‐1,2‐ジフェニルエタン‐1‐オン(商品名:イルガキュア651,BASF社製):0.1重量部を添加した後、均一に混合して、紫外線硬化型粘着剤組成物を調製した(以下、この粘着剤組成物を「粘着剤A」とする)。
【0096】
(粘着シートの作製)
厚み75μmのセパレータの離型処理面上に、上記の粘着剤Aを乾燥後の厚みが150μmとなるように塗布し、100℃で3分間乾燥させて溶媒を除去後、25℃の雰囲気下での3日間のエージング処理により架橋を行い、粘着シートを得た。
【0097】
<粘着シートB>
上記粘着剤Aと同様に調製したベースポリマー溶液に、ベースポリマー100重量部に対して、イソシアネート基を有するアクリルモノマーとして、2‐アクリロイルオキシエチルイソシアネート(商品名:カレンズAOI、昭和電工社製):1重量部を添加し、50℃で24時間撹拌して、ベースポリマーのヒドロキシ基とイソシアネートを結合させることにより、ベースポリマーに二重結合を導入した。その後、タケネートD110N:0.05重量部;およびイルガキュア651:0.1重量部を添加し、均一に混合して、紫外線硬化型粘着剤を調製した(以下、この粘着剤組成物を「粘着剤B」とする)。粘着剤Bをセパレータ上に塗布し、上記の粘着シートAの形成と同様にして、粘着シートを得た。
【0098】
<粘着シートC>
(ベースポリマーの調製)
温度計、攪拌機、冷却器および窒素ガス導入管を備える反応容器内に、モノマー成分として、2EHA:60重量部、メチルメタクリレート(MMA):10重量部;NVP:15重量部、およびヒドロキシエチルアクリレート(HEA):15重量部、ならびにAIBN:0.2重量部を、酢酸エチル233重量部とともに投入し、23℃の窒素雰囲気下で1時間撹拌し、窒素置換を行った。その後、65℃で5時間反応させ、続けて70℃で2時間反応させて、アクリル系ベースポリマー溶液を調製した。
【0099】
(光硬化型粘着剤の調製および粘着シートの作製)
上記で得られたアクリル系ベースポリマー溶液に、ベースポリマー100重量部に対して、NKエステルAPG‐700:13重量部;タケネートD110N:0.2重量部;およびイルガキュア651:0.1重量部を添加した後、均一に混合して、紫外線硬化型粘着剤を調製した(以下、この粘着剤組成物を「粘着剤C」とする)。粘着剤Cをセパレータ上に塗布し、上記の粘着シートAの形成と同様にして、粘着シートを得た。
【0100】
<粘着シートD>
上記粘着剤Cと同様に調製したベースポリマー溶液に、ベースポリマー100重量部に対して、カレンズAOI:1重量部を添加し、50℃で24時間撹拌して、ベースポリマーのヒドロキシ基とカレンズAOIのイソシアネートを結合させることにより、ベースポリマーに二重結合を導入した。その後、タケネートD110N:0.05重量部;およびイルガキュア651:0.1重量部を添加し、均一に混合して、紫外線硬化型粘着剤を調製した(以下、この粘着剤組成物を「粘着剤D」とする)。粘着剤Dをセパレータ上に塗布し、上記の粘着シートAの形成と同様にして、粘着シートを得た。
【0101】
<粘着シートE>
上記粘着剤Cと同様に調製したベースポリマー溶液に、ベースポリマー100重量部に対して、タケネートD110N:0.1重量部を添加した後、均一に混合して、粘着剤を調製した(以下、この粘着剤組成物を「粘着剤E」とする)。粘着剤Eをセパレータ上に塗布し、上記の粘着シートAの形成と同様にして、粘着シートを得た。
【0102】
<粘着シートF,G>
ベースポリマー100重量部に対するタケネートD110Nの添加量を、それぞれ、0.2重量部(粘着剤F)および0.3重量部(粘着剤G)に変更した。それ以外は、上記粘着シートEの作製と同様にして、粘着剤組成物の調製(調製された粘着剤組成物を、それぞれ「粘着剤F」および「粘着剤G」とする)、および粘着シートの形成を行った。
【0103】
[実施例1]
<両面粘着剤付き偏光板の作製>
偏光板の一方の面にセル側粘着剤層として粘着シートXを貼り合せた。その後、偏光板の他方の面に視認側粘着剤層として粘着シートAを貼り合わせた。このようにして、偏光板の一方の面に、厚み20μmの粘着シートX、他方の面に厚み150μmの粘着シートAが貼り合せられ、各粘着シート上にセパレータが剥離可能に貼着された両面粘着剤付き偏光板を得た。この両面粘着剤付き偏光板を、50mm×80mmのサイズにトムソン刃で打ち抜いた。打抜き後の両面粘着剤付き偏光板を50枚積み重ね、ハンディ型UVランプ(UVAのエネルギー密度:300mW/cm)を用いて、偏光板の側面から積算光量約1000mJ/cmの紫外線を照射して、視認側粘着剤層の端面の粘着剤を硬化させた。
【0104】
<画像表示装置の作製>
任天堂3DSの交換用上部液晶パネルから、バックライト部分を取り外し、液晶パネルのバックライトと反対側の偏光板を取り外した後、エタノールを染みこませた清浄な布を用いて、セル表面の粘着剤を除去した。両面粘着剤付き光学フィルムのセル側粘着シート上のセパレータを剥離し、セル表面の中央部にセル側粘着シート面を重ね合わせ、ハンドローラーを用いて加圧して貼り合せた。
【0105】
その後、視認側粘着シート上のセパレータを剥離し、黒色インクが周縁部に枠状に印刷されたガラス板(0.7mm×50mm×80mm、インク印刷厚み=15μm、両短辺(長辺方向)のインク印刷幅:各15mm、両長辺(短辺方向)のインク印刷幅:各5mm)の印刷面を、粘着剤の露出面上に載置し、真空熱圧着装置で貼り合せを行った(温度25℃、装置内圧力50Pa、圧力0.3MPa、圧力保持時間10秒)。その後、オートクレーブ処理(50℃、0.5MPa、15分)を行った。オートクレーブ処理後に、視認側のガラス板を介して、高圧水銀ランプ(10mW/cm)を用いて、積算光量3000mJ/cmの紫外線を照射し、光硬化型粘着剤の硬化を行った。このようにして得られた評価用パネルを、任天堂3DS本体の画像表示パネルと交換して、電気接続を行い、評価用画像表示装置を作製した。
【0106】
[実施例2〜4]
視認側粘着剤層として粘着シートB〜Dを用いたこと以外は、実施例1と同様にして両面粘着剤付き偏光板を作製し、実施例1と同様に画像表示装置を作製した。
【0107】
[比較例1〜3]
視認側粘着剤層として粘着シートE〜Gを用い、打抜き後の端面の粘着剤の硬化を行わなかったこと、およびオートクレーブ処理後の紫外線による硬化を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして、両面粘着剤付き偏光板の作製および画像表示装置の作製を行った。
【0108】
[比較例4,5]
視認側粘着剤層として粘着シートA,Cを用い、打抜き後の端面の粘着剤の硬化を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして両面粘着剤付き偏光板を作製し、実施例1と同様に画像表示装置を作製した。
【0109】
[評価]
<粘着剤のゲル分率>
両面粘着剤付き偏光板の粘着剤のゲル分率の測定には、偏光板の中央部を40mm×40mmのサイズに切り出し、セパレータを剥離して表面に露出した粘着剤を1g〜2g採取したものを試料として用いた。両面粘着剤付き偏光板の端面の粘着剤のゲル分率の測定には、粘着剤層の端面(0.2mm以内の範囲)から削り取って採取した粘着剤1g〜2gを試料として用いた。画像表示装置の粘着剤のゲル分率の測定には、画像表示装置から前面透明板を剥離して、表面に露出した粘着剤を、画面中央部から1g〜2g採取したものを試料として用いた。
【0110】
100mm×100mmのサイズに切り出した多孔質ポリテトラフルオロエチレン膜(日東電工社製、商品名「NTF−1122」、厚さ:85μm)で包み、包んだ口をタコ糸(太さ:1.5mm×長さ100mm)で縛った。この試料の重量から、予め測定しておいた多孔質ポリテトラフルオロエチレン膜及びタコ糸の重量の合計(A)を差し引いて、粘着剤試料の重量(B)を算出した。多孔質ポリテトラフルオロエチレン膜で包まれた粘着剤試料を、約50mLの酢酸エチル中に、23℃で7日間浸漬し、粘着剤のゾル成分を多孔質ポリテトラフルオロエチレン膜外へ溶出させた。浸漬後、多孔質ポリテトラフルオロエチレン膜で包まれた粘着剤を取出し、130℃で2時間乾燥させ、約20分間放冷した後、乾燥重量(C)を測定した。粘着剤のゲル分率は、次式により算出した。
ゲル分率(%)=100×(C−A)/B
【0111】
<粘着シートの貯蔵弾性率
粘着シートを積層して、厚さ約1.5mmとしたものを測定用サンプルとした。Rheometric Scientific社製「Advanced Rheometric Expansion System (ARES)」を用いて、以下の条件により、動的粘弾性測定を行い、測定結果から、サンプルの25℃における貯蔵弾性率を読み取った。
(測定条件)
変形モード:ねじり
測定周波数:1Hz
昇温速度:5℃/分
測定温度:−50〜150℃の範囲
形状:パラレルプレート 8.0mmφ
【0112】
<粘着シートの残留応力>
粘着シートから、40mm×40mmのシート片を切り出し、円柱状に丸めて測定試料とした。引張試験機にてチャック間距離を20mmに合わせて、上記測定試料をセットし、引張速度200mm/分、測定温度25℃で、歪み300%(チャック間距離は80mm)まで引っ張り、チャック位置を固定し、180秒間経過後の応力(引張応力)を残留応力とした。粘着剤A〜Dについては、粘着シートへの光照射量を変更することにより、ゲル分率の異なる試料を作成し、ゲル分率と残留応力との関係をプロットして線形近似を行った。得られた関係式と、端面硬化後のゲル分率の実測値から、実施例1〜4の偏光板の端部の粘着剤の残留応力を算出した。
【0113】
<粘着シートのヘイズおよび全光線透過率>
粘着シートを無アルカリガラス(厚さ0.8〜1.0mm、全光線透過率92%、ヘイズ0.4%)に貼り合わせた試験片を用い、ヘイズメータ(村上色彩技術研究所製、装置名「HM−150」)を用いて、ヘイズおよび全光線透過率を測定した。測定値から無アルカリガラスのヘイズ(0.4%)を差引いた値を粘着シートのヘイズとした。全光線透過率は、測定値をそのまま採用した。粘着シートA〜G,およびXは、いずれもヘイズが0.4〜0.5%の範囲内であり、全光線透過率は92%であった。
【0114】
<粘着剤の端面からのはみ出し>
両面粘着剤付き光学フィルムの端面を、ポリエチレンテレフタレートフィルムで擦り、ポリエチレンテレフタレートフィルム表面に付着した粘着剤の有無を目視にて確認した。粘着剤汚れが確認されなかったものを〇、粘着剤汚れが確認されたものを×とした。
【0115】
<画像表示装置の表示ムラ>
評価用画像表示装置のパネルを白黒表示として、周縁の印刷枠付近での表示ムラの有無を目視で確認した。表示ムラがないものを○、表示ムラが有るものを×とした。
【0116】
[評価結果]
上記各実施例、比較例の両面粘着剤付き偏光板の視認側粘着剤層における粘着剤の組成および物性、両面粘着剤付き光学フィルム作製時の端面硬化(側面からのUV照射)の有無、視認側粘着剤の中央部および端部のゲル分率、視認側粘着剤の中央部および端部の残留応力視認側粘着剤の中央部の貯蔵弾性率、端部からの粘着剤のはみ出し(粘着剤汚れ)の評価結果、画像表示装置の表示ムラの有無、ならびに画像表示装置の視認側粘着剤(実施例1〜4および比較例4,5は紫外線照射による硬化後)の中央部のゲル分率、残留応力および貯蔵弾性率の評価結果を表1に示す。
【0117】
なお、表1において、各成分は以下の略称により記載されている。
2EHA: 2‐エチルヘキシルアクリレート
ISA: イソステアリルアクリレート
MMA: メチルメタクリレート
NVP: N‐ビニルピロリドン
4HBA: 4‐ヒドロキシブチルアクリレート
HEA: ヒドロキシエチルアクリレート
Irg651:イルガキュア651
【0118】
【表1】
【0119】
表1に示すように、実施例1〜4では、側面からの光照射により粘着シートの端面が硬化され、ゲル分率が高いため、端面からの粘着剤のはみ出しが無いことが分かる。また、面内中央部の粘着剤層が硬化されていない状態で貼り合わせが行われるため、画像表示装置の画面周縁(印刷枠付近)での表示ムラの発生が抑制されていることが分かる。
【0120】
比較例4および比較例5では、実施例1および実施例3と同一組成の粘着剤が用いられたため、表示ムラは抑制されている。しかしながら、端面硬化が行われていないため、端面からの粘着剤のはみ出しが生じていた。
【0121】
比較例1〜3では、粘着剤中の架橋剤の含有量を変化させることにより、ゲル分率(架橋度)を変化させている。比較例1では、粘着剤のゲル分率が小さく、流動性が高いため表示ムラは発生していなかったが、端面からの粘着剤のはみ出しが発生していた。一方、比較例2および比較例3では、粘着剤のゲル分率が大きく流動性が低いため、端面からの粘着剤のはみ出しは抑制されていたが、画像表示装置に表示ムラが発生していた。
【0122】
上記比較例1〜5の結果から、ゲル分率が小さく流動性の高い粘着剤を用いた場合は、表示ムラは抑制されるものの粘着剤付き光学フィルムの端面からの粘着剤のはみ出しが生じ、ゲル分率が大きく流動性の低い粘着剤を用いた場合は、端面からの粘着剤のはみ出しは抑制されるものの表示ムラが発生する傾向があることが分かる。これに対して、端面硬化を行うことにより、端面の粘着剤のゲル分率が高められ、表示ムラの発生を抑制しつつ、端面からの粘着剤のはみ出しも抑制できることがわかる。
【符号の説明】
【0123】
10 光学フィルム
21,22 粘着剤層
31,32 保護シート
50,55 粘着剤付き光学フィルム
61 画像表示セル
70 前面透明部材
71 板状透明部材
76 印刷部
100 画像表示装置
図1
図2
図3