特許第6363939号(P6363939)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6363939アルデヒドを放出する窒素含有化合物を使用した組織試料の固定
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6363939
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】アルデヒドを放出する窒素含有化合物を使用した組織試料の固定
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/30 20060101AFI20180712BHJP
   G01N 33/48 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
   G01N1/30
   G01N33/48 P
【請求項の数】11
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-229907(P2014-229907)
(22)【出願日】2014年11月12日
(65)【公開番号】特開2015-96853(P2015-96853A)
(43)【公開日】2015年5月21日
【審査請求日】2017年11月7日
(31)【優先権主張番号】10 2013 223 384.1
(32)【優先日】2013年11月15日
(33)【優先権主張国】DE
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500113648
【氏名又は名称】ライカ ビオズュステムス ヌスロッホ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 潔人
(74)【代理人】
【識別番号】100119415
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 充
(72)【発明者】
【氏名】ヘルマン ウルブリッヒ
(72)【発明者】
【氏名】マルクス ベリベリッヒ
【審査官】 高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−043497(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0214195(US,A1)
【文献】 独国特許出願公開第03635599(DE,A1)
【文献】 特開平01−105159(JP,A)
【文献】 特開2004−037215(JP,A)
【文献】 特開2002−179501(JP,A)
【文献】 米国特許第04656047(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0177183(US,A1)
【文献】 特開2003−028769(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00− 1/44
G01N 33/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの組織試料(1)を固定するための方法であって、
該方法は組織処理装置(10)を使用して行われ、及び
該方法において、少なくとも1つの組織試料(1)が、少なくとも1つのアルデヒドの圧力及び/又は温度に依存的な放出が可能である少なくとも1つの窒素含有化合物を含む固定薬剤(2)に、第一の温度レベルで及び第一の圧力レベルで導入され、
少なくとも1つの組織試料(1)は、少なくとも固定時間の間、固定薬剤(2)中に置かれ、
固定薬剤(2)に導入された少なくとも1つの組織試料(1)を有する固定薬剤(2)は、固定時間の間において、第一の温度レベルを上回る第二の温度レベルに及び/又は第一の圧力レベルを上回る第二の圧力レベルにもたらされ;及び、
少なくとも1つのアルデヒドの圧力及び/又は温度に依存的な放出が可能である少なくとも1つの窒素含有化合物の、固定薬剤(2)中での濃度が、組織処理装置(10)の少なくとも1つの濃度測定装置(14)を使用して検出され、且つ、少なくとも1つの濃度測定装置(14)の測定された値に基づいて、シグナルが出力される
ことを特徴とする少なくとも1つの組織試料(1)を固定するための方法。
【請求項2】
第一の温度が室温及び/又は低温保存温度に対応し、及び、第二の温度が20から80℃であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第一の圧力レベルが高くとも大気圧に対応し、及び、第二の圧力レベルが、大気圧を上回るレベルに対応することを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1つのアルデヒドの圧力及び/又は温度に依存的な放出が可能である少なくとも1つの窒素含有化合物は、アンモニア及び少なくとも1つのアルデヒドの少なくとも1つの反応産物を含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つのアルデヒドが、ホルムアルデヒド及び/又はグルタルアルデヒドを含むことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1つのアルデヒドの圧力及び/又は温度に依存的な放出が可能である少なくとも1つの窒素含有化合物が、ウロトロピン、少なくとも1つのトリアジン、ジメチロールジヒドロキシエチレン尿素、モノ−、ジ−、トリ−、テトラ−、ペンタ−、及びヘキサメチロールメラミン、テトラメチロールアセチレンジ尿素、ジメチロールプロピレン尿素、アセトグアナミン、及び5,5−ジメチルヒダントインの1つ以上を含むことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
固定薬剤が、6.4未満のpK値を有する少なくとも1つの酸を含むこと、及び/又は2から4のpHを有することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
固定薬剤が、5から50%の少なくとも1つのアルコールを含むことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
固定薬剤(2)に導入された少なくとも1つの組織試料(1)を有する固定薬剤(2)が、組織処理装置(10)の処理チャンバ(12)に、固定時間の間において少なくとも一時的に導入され、及び、その中で第二の温度レベル及び/又は第二の圧力レベルにもたらされることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
固定薬剤(2)に導入された少なくとも1つの組織試料(1)を有する試料容器(11)を受け取るように構成される少なくとも1つの処理チャンバ(12)を有し、
固定薬剤(2)が、少なくとも1つのアルデヒドの圧力及び/又は温度に依存的な放出が可能である少なくとも1つの窒素含有化合物を含む、組織処理装置であって、
請求項1から9のいずれか1項に記載の方法を行うように構成され、且つ、少なくとも1つの濃度測定装置(14)を含む手段(13から16)が設けられており、
前記少なくとも1つの濃度測定装置(14)が、少なくとも1つのアルデヒドの圧力及び/又は温度に依存的な放出が可能である少なくとも1つの窒素含有化合物の、固定薬剤(2)中での濃度を検出するように、且つ、少なくとも1つの濃度測定装置(14)の測定された値に基づいてシグナルを出力するように構成される、
ことを特徴とする組織処理装置。
【請求項11】
少なくとも1つの処理チャンバ(12)へ圧力及び/又は温度を適用するように構成される手段(15、16)を含む請求項10に記載の組織処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の記載]
本出願は、2013年11月15日出願のドイツ特許出願第10 2013 223 384.1号のパリ条約による優先権主張に基づくものであり、同出願の全記載内容は、引用をもって本明細書に組み込み記載されているものとする。
【0002】
本発明は、独立した請求項の前置部(プリアンブル、上位概念部)に従う、組織試料を固定するための方法および組織処理装置に関する。
【背景技術】
【0003】
水性のホルムアルデヒド溶液を使用して組織試料を固定するための方法は、以前から知られている。
【0004】
37重量パーセントのホルムアルデヒド、又は40体積パーセントのホルムアルデヒドを有する飽和水性ホルムアルデヒド溶液は、「ホルマリン」とも称される。組織試料を固定するために使用されるホルムアルデヒド溶液の濃度に関する表現は、典型的にこのように称する。例えば、「10−パーセントホルマリン」溶液は、4体積パーセントのホルムアルデヒドを含む。
【0005】
水性溶液ホルムアルデヒドは、迅速にメチレングリコールに水和し、メチレングリコールは、固定される組織におけるタンパク質及びグリコタンパク質のようなマクロ分子と反応する。最初に生じることは、とりわけ適切なアミン、アミド、及び活性アルコール基などのヒドロキシメチル基の形成(formation)である。より長い固定時間によってのみ、これらは無視できない量で架橋を形成する。
【0006】
ホルムアルデヒドはまた、細胞核においてタンパク質と反応し、そしてその結果、核酸のタンパク質の覆い(protein sheath)を安定化する。不飽和脂肪酸における二重結合及びチオール基と同様に、核酸自体の遊離アミノ基もまた、ホルムアルデヒドと反応することができる。一方、純粋な炭水化物は通常、ホルムアルデヒドと反応しない。
【0007】
メチレングリコールともっとも激しく反応する(そして、ホルムアルデヒド固定にもっとも良く対応する)ペプチド及びタンパク質の反応基は、リシン、システイン、ヒスチジン、アルギニン、及びチロシンのアミン基及びセリン及びトレオニンのヒドロキシル基である。いわゆる「過固定(over-fixing)」(タンニング、tanning)と称されるものは、リシンの架橋(crosslinking)及びタンパク質骨格のアミドの架橋をもたらす。その様な反応は、最近典型的に使用される、より短い固定時間のためにほとんど生じない。
【0008】
ホルムアルデヒドは、良好な固定特性を有するが、健康に高度に有害であり、そして、暴露の際に、アレルギー及び皮膚、気道及び、目の炎症の原因となり得る。ホルムアルデヒドは、更には、発がん性があるとされている。それ故、組織試料の固定に関して、ホルムアルデヒドをより害の少ない化合物と交換させようとする努力がなされている。同じことが、グルタルアルデヒド及び四酸化オスミウムのような他の固定薬剤についてもあてはまる。
【0009】
このことから、適切なアルデヒド、特にホルムアルデヒドを放出する化合物を使用することができる。その1つの例が、ウロトロピン(urotropin)である。そのような化合物の使用は、例えば、EP 1 895 287 B1 (DE 10 2006 040 315 B4、US 7,915,007 B2)により知られる。これらはまた、それぞれのアルデヒドの「リリーサー(releasers)」又は「ドナー(donors)」と称される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】EP 1 895 287 B1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
アルデヒド放出化合物(aldehyde-releasing compounds)の使用は、平衡反応において、それらが、組織試料との反応により消費されるアルデヒドの量のみを通常放出するという点で不利である。固定のスピードはそれ故、ホルムアルデヒド(又はその水和産物メチレングリコール)が過剰に存在する従来のホルマリン溶液と比較して比較的遅い。対応するドナーを使用する固定法はそれ故、より単純な利用及び健康被害の減少にもかかわらず、不利な点を示す。
【0012】
それ故、特に、アルデヒドを放出する化合物を使用する組織試料の固定に関する加速し
た能力について、改良の必要性が存在する。すなわち、本発明は、アルデヒドを放出する化合物を使用する組織試料の固定方法において、加速した固定を可能とする固定法、処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記を踏まえて、本発明は、各独立請求項の特徴を有する組織試料を固定するための方法及び組織処理装置を提案する。
【0014】
本発明の第一の視点によれば、少なくとも1つの組織試料を固定するための方法であって、
該方法は組織処理装置を使用して行われ、及び
該方法において、少なくとも1つの組織試料が、少なくとも1つのアルデヒドの圧力及び/又は温度に依存的な放出が可能である少なくとも1つの窒素含有化合物を含む固定薬剤に、第一の温度レベルで及び第一の圧力レベルで導入され、
少なくとも1つの組織試料は、少なくとも固定時間の間、固定薬剤中に置かれ、
固定薬剤に導入された少なくとも1つの組織試料を有する固定薬剤は、固定時間の間において、第一の温度レベルを上回る第二の温度レベルに及び/又は第一の圧力レベルを上回る第二の圧力レベルにもたらされ;及び、
少なくとも1つのアルデヒドの圧力及び/又は温度に依存的な放出が可能である少なくとも1つの窒素含有化合物の、固定薬剤中での濃度が、組織処理装置の少なくとも1つの濃度測定装置を使用して検出され、且つ、少なくとも1つの濃度測定装置の測定された値に基づいて、シグナルが出力される
ことを特徴とする少なくとも1つの組織試料を固定するための方法が提供される。
【0015】
本発明の第二の視点によれば、固定薬剤に導入された少なくとも1つの組織試料を有する試料容器を受け取るように構成される少なくとも1つの処理チャンバを有し、
固定薬剤が、少なくとも1つのアルデヒドの圧力及び/又は温度に依存的な放出が可能である少なくとも1つの窒素含有化合物を含む、組織処理装置であって、
第一の視点に記載の方法を行うように構成され、且つ、少なくとも1つの濃度測定装置を含む手段が設けられており、
前記少なくとも1つの濃度測定装置が、少なくとも1つのアルデヒドの圧力及び/又は温度に依存的な放出が可能である少なくとも1つの窒素含有化合物の、固定薬剤中での濃度を検出するように、且つ、少なくとも1つの濃度測定装置の測定された値に基づいてシグナルを出力するように構成される、
ことを特徴とする組織処理装置が提供される。
尚、本願の特許請求項の範囲に付記されている図面参照符号は、専ら本発明の理解の容易化のためのものであり、図示の形態への限定を意図するものではないことを付言する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の効果の1つは、アルデヒドを放出する化合物を使用する組織試料の固定方法において、加速した固定を可能とすることである。またそのような組織処理装置が提供される。
【0017】
本発明は、例示的な実施形態に基づいて図面において以下に概略的に描写され、そして、図面に関連して以下に詳細に記載されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、簡略化された概略的なフローチャートの形態で、本発明の実施形態に従う方法を例示する。
図2図2は、簡略化された概略的な描写において、本発明の実施形態に従う組織処理装置を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
好ましい実施形態は、従属請求項及び次の記載の個々の主題である。
【0020】
本発明により以下の形態が可能である。
(形態1)
第一の視点に記載の組織試料の固定方法のとおり、すなわち、少なくとも1つの組織試料を固定するための方法。
該方法は組織処理装置を使用して行われる。
該方法において、少なくとも1つの組織試料が、少なくとも1つのアルデヒドの圧力及び/又は温度に依存的な放出が可能である少なくとも1つの窒素含有化合物を含む固定薬剤に、第一の温度レベルで及び第一の圧力レベルで導入される。
少なくとも1つの組織試料は、少なくとも固定時間の間、固定薬剤中に置かれる。
固定薬剤に導入された少なくとも1つの組織試料を有する固定薬剤は、固定時間の間において、第一の温度レベルを上回る第二の温度レベルに及び/又は第一の圧力レベルを上回る第二の圧力レベルにもたらされる。
少なくとも1つのアルデヒドの圧力及び/又は温度に依存的な放出が可能である少なくとも1つの窒素含有化合物の、固定薬剤中での濃度が、組織処理装置の少なくとも1つの濃度測定装置を使用して検出され、且つ、少なくとも1つの濃度測定装置の測定された値に基づいて、シグナルが出力される。
(形態2)
第一の温度が室温及び/又は低温保存温度に対応し、及び、第二の温度が20から80℃であることが好ましい。
(形態3)
第一の圧力レベルが高くとも大気圧に対応し、及び、第二の圧力レベルが、大気圧を上回るレベルに対応することが好ましい。
(形態4)
少なくとも1つのアルデヒドの圧力及び/又は温度に依存的な放出が可能である少なくとも1つの窒素含有化合物は、アンモニア及び少なくとも1つのアルデヒドの少なくとも1つの反応産物を含むことが好ましい。
(形態5)
少なくとも1つのアルデヒドが、ホルムアルデヒド及び/又はグルタルアルデヒドを含むことが好ましい。
(形態6)
少なくとも1つのアルデヒドの圧力及び/又は温度に依存的な放出が可能である少なくとも1つの窒素含有化合物が、ウロトロピン、少なくとも1つのトリアジン、ジメチロールジヒドロキシエチレン尿素、モノ−、ジ−、トリ−、テトラ−、ペンタ−、及びヘキサメチロールメラミン、テトラメチロールアセチレンジ尿素、ジメチロールプロピレン尿素、アセトグアナミン、及び5,5−ジメチルヒダントインの1つ以上を含むことが好ましい。
(形態7)
固定薬剤が、6.4未満のpK値を有する少なくとも1つの酸を含むこと、及び/又は2から4のpHを有することが好ましい。
(形態8)
固定薬剤が、5から50%の少なくとも1つのアルコールを含むことが好ましい。
(形態9)
固定薬剤に導入された少なくとも1つの組織試料を有する固定薬剤が、組織処理装置の処理チャンバに、固定時間の間において少なくとも一時的に導入され、及び、その中で第二の温度レベル及び/又は第二の圧力レベルにもたらされることが好ましい。
(形態10)
第二の視点に記載の組織処理装置のとおり、すなわち、組織処理装置は、
固定薬剤に導入された少なくとも1つの組織試料を有する試料容器を受け取るように構成される少なくとも1つの処理チャンバを有する。
固定薬剤は、少なくとも1つのアルデヒドの圧力及び/又は温度に依存的な放出が可能である少なくとも1つの窒素含有化合物を含む。
形態1から9のいずれか1に記載の方法を行うように構成され、且つ、少なくとも1つの濃度測定装置を含む手段が設けられている。
前記少なくとも1つの濃度測定装置が、少なくとも1つのアルデヒドの圧力及び/又は温度に依存的な放出が可能である少なくとも1つの窒素含有化合物の、固定薬剤中での濃度を検出するように、且つ、少なくとも1つの濃度測定装置の測定された値に基づいてシグナルを出力するように構成される。
(形態11)
少なくとも1つの処理チャンバへ圧力及び/又は温度を適用するように構成される手段を含むことが好ましい。
【0021】
本発明の特徴及び有利な点の説明の前に、使用されるその原理及び専門用語を説明する。
【0022】
圧力及び温度を特徴づける目的で、本発明は、用語「圧力レベル」及び「温度レベル」を使用し、対応する圧力及び温度が、発明の概念を実施するために、発明の枠内における正確な圧力値又は温度値の形態でそれぞれ使用される必要はないという事実を示すことが意図される。その様な圧力及び温度は、それどころか、例えば、平均より、1%、5%、10%、20%、又はむしろ50%より高く又はより低くできる特別な範囲内を典型的に上下する。圧力レベルは特に、例えば冷却効果の結果の避けられない、又は起こり得る圧力の喪失(ないし低下)を例えば含む。同じことが、温度レベルについてあてはまる。kPaでここで示される圧力は、大気圧を上回る圧力である。
【0023】
「少なくとも1つのアルデヒドの圧力及び/又は温度に依存的な放出が可能である化合物」は、適切な溶媒において及びその溶媒との相互作用(coaction)において、特に平衡反応において、少なくとも1つのアルデヒドを産物として形成する化合物としてここで理解される。少なくとも1つのアルデヒドの圧力及び/又は温度に依存的な放出が可能である化合物は、対応する平衡反応の遊離体を表す。対応する平衡反応が、(すなわち、少なくとも1つのアルデヒド自体の圧力及び/又は温度に依存的な放出が可能である化合物の)遊離体側にあるこれらの化合物は、本発明の枠内において特に使用される。その様な化合物は常に、反応系から除かれた量のみ少なくとも1つのアルデヒドを溶媒において形成する。先に述べたように、対応する反応は、基本的に、組織試料の固定に関して知られている。
【0024】
前述の平衡及び/又は反応速度(ないし割合、rate)の中心点が、圧力及び/又は温度の変化によって生産物又は遊離体に向けて影響され得る場合、放出は圧力及び/又は温度に依存的である。本発明の枠内における目的の化合物は、特に、少なくとも1つのアルデヒドの形成が温度及び/又は圧力の上昇により加速され又は増加することに関するものである。
【0025】
更に下記でも説明するように、対応する窒素含有化合物は、アンモニアと対応する少なくとも1つのアルデヒドとの複合体の形成により特に形成される。これらは、それ故、対応するアルデヒドの純粋な縮合産物(condensation products)及び/又は水和産物(hydration products)ではない。特に、メチレングリコールのような水和(hydration)又は、パラホルムアルデヒドのような重合物(polymerizates)により形成される化合物は、従って包含されない。
【0026】
少なくとも1つの組織試料を固定するための方法であり、その方法は組織処理装置を使用して行われ、そしてその方法において、少なくとも1つの組織試料が第一の温度レベル及び第一の圧力レベルで固定薬剤に導入される方法から本発明は出発する。固定薬剤は、前に説明されるように、少なくとも1つのアルデヒドの圧力及び/又は温度に依存的な放出が可能である少なくとも1つの窒素含有化合物を含む。ここでは従来の固定法の場合においてもそうであるように、少なくとも1つの組織試料が、少なくとも固定時間の間、固定薬剤中に置かれる。
【0027】
本発明に従って、固定薬剤に導入された少なくとも1つの組織試料を有する固定薬剤が、固定時間の間において、第一の温度レベルを上回る第二の温度レベル及び/又は第一の圧力レベルを上回る第二の圧力レベルにもたらされる。本発明によれば更に、少なくとも1つのアルデヒドの圧力及び/又は温度に依存的な放出が可能である少なくとも1つの窒素含有化合物の固定薬剤中での濃度が、組織処理装置の少なくとも1つの濃度測定装置を使用して検出され、そして少なくとも1つの濃度測定装置の測定された値に基づいてシグナルが、出力される。
【0028】
本発明の核心(ないしエッセンス)は、従って、圧力及び/又は温度の適用により対応するドナーから制御された仕方で、少なくとも1つのアルデヒドが放出される方法である。既知の技術と比較して本発明の実質的に有利な点は、例えば組織処理装置の閉鎖された反応チャンバ内の制御された環境下で、対応するアルデヒドの制御可能な放出である。圧力及び/又は温度の対応する適用の下において、対応する化合物は、少なくとも1つのアルデヒドをより増加して放出する。例えば、1つ以上の中間体を介して、化合物が少なくとも1つのアルデヒド及びアンモニアに分解する。
【0029】
対応する(ないし相応な)圧力及び/又は温度の適用無しで、少なくとも1つのアルデヒドは、定量的に放出されず、そして少なくとも1つのアルデヒドの圧力及び/又は温度に依存的な放出が可能である窒素含有化合物の分子構造は、大いに安定である。対応する化合物は、せいぜい、少なくとも1つのアルデヒドが、少なくとも1つの組織試料により消費される程度分解される。
【0030】
対応する圧力及び/又は温度の適用無しの場合、固定スピードはそれ故、前に説明したように、従来のホルマリン溶液と比較して比較的遅い。従来のホルマリン固定に対応する反応スピード又は固定スピードは、圧力及び/又は温度の適用による放出の結果によってのみ達成される。これは、更に、アルデヒドを放出することが可能である窒素含有化合物が使用される既知の従来の技術の実質的に不利な点を取り除く。その様な従来の方法において、固定が遅すぎる場合、いわゆる「固定の不足(under-fixing)」のリスクがあり、自己分解(autolysis)をもたらし得る。
【0031】
ホルマリン固定に関する従来の方法と比較して、本発明に従って提案される方法は、アルデヒド固定に使用する場合の前述の健康リスクをはっきりと減少させるのに更に適する。ホルムアルデヒドを放出することが可能である窒素含有化合物が、本発明に従って、固定薬剤において使用される場合、従来のホルマリン固定方法の実質的な部分は、提案される方法により再現(reproduce)することができる。本発明に従って行われる少なくとも1つのアルデヒドの制御される放出はまた、好ましくは可逆的であり、すなわち、第二の温度レベルを下回る、及び/又は第二の圧力レベルを下回る、より低い圧力及びより低い温度で、少なくとも1つのアルデヒドの圧力及び/又は温度に依存的な放出が可能である少なくとも1つの窒素含有化合物が再び形成され得る。遊離アルデヒドの濃度は、平衡反応におけるシフトにより減少する。これは、オペレータの健康へのリスクなしで、組織処理装置における及び/又は保存容器における、対応する固定薬剤の保存が可能であり、これを固定後経済的に再発生させることができる。
【0032】
前述したように、メチレングリコールは、ホルムアルデヒドを放出する水和産物である。メチレングリコールが対応して形成される従来のホルマリン固定においては、ホルムアルデヒドは、ガスとして水に直接導入される。本発明の枠内において使用される少なくとも1つのアルデヒドの圧力及び/又は温度に依存的な放出が可能である窒素含有化合物は、しかしながら、塩様物質として水に導入されるが、さしあたり、とても小さいアルデヒド放出効果を有するか又はその効果が無い。ユーザとの関連で初めて、特に低いpHでアルデヒドが放出され、そして水において例えばメチレングリコールを形成する。対応する水和産物は、従って、二次的な態様において製造される。その結果、本発明の枠内において有利に少なくとも2つの平衡反応(中間体の反応を含まない)が合わされ、最後のもののみが従来のホルマリンの態様における固定を保証する。
【0033】
少なくとも1つのアルデヒドの圧力及び/又は温度に依存的な放出が可能である窒素含有化合物がそれ故、圧力及び温度によって初めて中間体と最終産物に分けられる。加えて、温度及び圧力の増加は、実際のホルマリン固定を有利に促進し又は影響を与えることができる。約20℃を下回ると、メチレングリコールは、部分的な電荷を伴わないで存在する。この形態において、電荷された形態よりも容易に組織に浸透できる。20℃を上回ると、電荷された形態がより優勢となる。後者の形態においてのみ、タンパク質との反応が無視できない量(ないし有意の量)で生じる。
【0034】
少なくとも1つの組織試料の均質な(homogeneous)固定は、固定薬剤による少なくとも1つの組織試料の完全な浸透により達成される。この浸透は、第二の圧力レベル及び/又は温度レベルの必要な圧力及び/又は必要な温度の適用の前に又はその間に達成され得る。ここで有利には例えば1時間の最大の時間を使用するが、その他の場合は自己分解が生じ得るためである。
【0035】
本発明に従った方法は、有利に3つのステップの固定を可能にする。少なくとも1つの組織試料の組織は、まず全体的に又は部分的に浸透される。少なくとも1つのアルデヒドは、次に、圧力及び/又は温度の適用により放出され、そして固定が生じる。固定の後、固定薬剤は取り除かれ、そして、例えば、保存容器にポンプにより戻され、ここでこれは、例えば冷却され及び/又は減圧され、そしてその結果、再度無害となる。
【0036】
少なくとも1つのアルデヒドの消費は、固定薬剤が時間と共に消耗される原因となり、その結果、その固定効果は減少する。従来のホルマリン溶液においては、ホルムアルデヒドの放出(outgassing)が更に認められ、及び/又はホルムアルデヒドは、大気の酸素により、ギ酸に酸化される。ホルムアルデヒドの放出(outgassing)は、さらに、ユーザへの潜在的な危険をもたらす。これはまた、発明に従ってアルデヒドを放出する窒素含有化合物の場合にもあり得るが、しかし、明らかに小さい量のみである。ホルムアルデヒド濃度は、従って、固定反応がない状態でも続いて減少する。
【0037】
なぜなら、本発明の枠内において、固定薬剤に含有される、少なくとも1つのアルデヒドの圧力及び/又は温度に依存的な放出が可能である少なくとも1つの窒素含有化合物の特定の部分のみが固定の際に制御された態様で放出されるので、固定薬剤は、とりわけ有利に、繰り返し使用され得る。本発明に従って提供されるその様な化合物の濃度(すなわち、固定薬剤中での濃度)を検出することはとりわけ有利である。なぜならこれは、化合物が、更なる固定操作のための十分な濃度で依然として存在するかどうかについて信頼できる確認を可能にするからである。正しくない固定(すなわち前で説明したような過固定又は固定の不足)がその結果、確実に回避され得る。
【0038】
濃度は、固定の前、その間、又はその後に検出され得る。少なくとも1つのアルデヒドの圧力及び/又は温度に依存的な放出が可能である少なくとも1つの窒素含有化合物を含む固定薬剤又はその構成要素を供給するために、例えば、明確な識別標識(unequivocal identification features)を含む、組織処理装置に特別に適合されるリザーバ容器(カートリッジ又はレトルト)を使用することが可能である。対応する識別標識がまた、取り扱いミスのない形態(mishandling-proof fashion)で(例えば、RFID又はNFDチップの暗号化されたコード又はバーコードを使用して)具体化され得るその様なリザーバ容器は、組織処理装置に導入される。組織処理装置において、識別標識に基づいて、対応する濃度がリザーバ容器内ですでに一度検出されているかどうかを確認することができる。もしそうであるならば、組織処理装置は、固定薬剤がまだ更なる固定に適しているかどうかを「知る」。対応する容器が、初めに使用される場合、特別な組織処理装置への、その容器の明確な割り当てがまた達成され得、その結果、容器を他の組織処理装置で使用することはもはや不可能である。意図的な又は意図的でない取り扱いミス又は正しくない操作は、従って回避され得、そして確実な固定が保証される。
【0039】
対応する容器はまた、例えば書き込み可能な記憶チップの形態の記憶手段を例えば含むことができ、組織処理装置により検出される、少なくとも1つのアルデヒドの圧力及び/又は温度に依存的な放出が可能である少なくとも1つの化合物の濃度(のデータ)が保存されることを可能にする。組織処理装置は、この濃度を、例えば固定操作の最後に、検出することができ、そしてそれを容器の記憶手段に保存することができる。対応する容器はまた、従って、同様に記憶手段を読み出すことが可能な他の組織処理装置で使用することができる。
【0040】
少なくとも1つのアルデヒドの圧力及び/又は温度に依存的な放出が可能である少なくとも1つの窒素含有化合物の濃度を検出することはまた特に有利である。なぜなら、検出される濃度に依存して、例えば、固定時間及び/又は本発明に従う固定操作において使用される圧力及び/又は本発明に従う固定操作において使用される温度がそれに適合され得るからである。例えば、固定薬剤の繰り返しの使用の後、対応する化合物の濃度は低下されることがあり、[この際]より長い固定時間が必要であり及び/又は対応する圧力値及び/又は温度値の変化が必要である。仮に濃度が固定操作の前に検出される場合、又は、説明したように、仮に、例えば前の固定操作からそれが既知の場合(例えば、リザーバ容器に割り当てられている、又は対応するリザーバ容器の記憶手段に保存されている)、対応する適合は特に簡単にすることができる。
【0041】
固定の間において、少なくとも1つのアルデヒドの圧力及び/又は温度に依存的な放出が可能である少なくとも1つの窒素含有化合物の濃度を検出することは特に有利である。なぜなら、各ケースにおいて消費される化合物を介して、固定操作自体の成功との結論を導出することができるからである。例えば、固定は、予め定められた値だけ濃度の減少が観察されるまで行われ得る。これは、少なくとも1つのアルデヒドの特定の量が放出されている、及びその結果、固定される試料に少なくとも一部が伝わっているという結論の導出を可能にする。
【0042】
対応する組織処理装置は、本発明の枠内で、取り扱いミスのない態様で不変に定められる閾値で又は予め定義可能な閾値で操作可能である。少なくとも1つのアルデヒドの圧力及び/又は温度に依存的な放出が可能である少なくとも1つの窒素含有化合物の濃度がその様な閾値を下回る場合、組織処理装置はもはや固定を行わず、そしてユーザは、それにより、固定薬剤又は対応する構成要素を交換することが促されることが例えば提供され得る。
【0043】
組織処理装置はまた、本発明に従って出力されるシグナルに基づいて、例えばモニターのような出力ユニット上に、ユーザに情報を提供するように構成され得、その結果、ユーザは、例えば、現在の濃度、及び/又は、何時までの固定操作の時間及び/又は何回の固定操作の回数分、固定薬剤がまだ足りるかを常に知っている。
【0044】
室温(すなわち、例えば、20から25℃の温度)及び/又は低温保存温度(cold-storage temperature)(すなわち、例えば、0℃から10℃又は−25から−15℃)を第一の温度レベルとして使用すること、及び、対応する温度を上回る温度、特に室温を上回る温度、例えば20から80℃の温度を第二の温度レベルとして使用することが発明の枠内において提案される。少なくとも1つのアルデヒドの圧力及び/又は温度に依存的な放出が可能である窒素含有化合物にそれぞれ適合される対応する温度レベル又はその逆、の使用により、対応する固定薬剤を安全に扱うことが可能である。
【0045】
本発明に従って有利に使用される圧力レベルにも同様にあてはまる。例えば、第一の圧力レベルは、特に大気圧又は、より低い圧力であり、後者は例えば、組織試料の真空浸潤に関する[ものである];そして第二の圧力レベルは大気圧を上回るレベルに相当する。例えば、5から1000kPaゲージの圧力(例えば、5から20、20から50、50から100、100から500、又は500から1000kPaゲージの圧力)は、大気圧を上回るレベルとして使用され得る。上昇する温度及び圧力で、本発明の枠内で使用され、及び、少なくとも1つのアルデヒドの圧力及び/又は温度に依存的な放出が可能である窒素含有化合物についての化学平衡は、それぞれのアルデヒドの側にある。
【0046】
アンモニア及び少なくとも1つのアルデヒドの反応産物は、少なくとも1つのアルデヒドの圧力及び/又は温度に依存的な放出が可能である窒素含有化合物として、本発明の枠内において特に使用される。少なくとも1つのアルデヒドは、ホルムアルデヒド及び/又はグルタルアルデヒド又は他のアルデヒドである。ウロトロピン、トリアジン(複数)、ジメチロールジヒドロキシエチレン尿素、モノ−、ジ−、トリ−、テトラ−、ペンタ−、及びヘキサメチロールメラミン、テトラメチロールアセチレンジ尿素、ジメチロールプロピレン尿素、アセトグアナミン、及び/又は5,5−ジメチルヒダントインのような化合物は、本発明の枠内において提案されるような方法に特に適する。これらは、いわゆるホルムアルデヒドリリーサー(放出物質)と称される。
【0047】
ホルムアルデヒド放出は、ウロトロピン(ヘキサメチレンテトラミン)の例を使用して以下に例示されるだろう、しかしながら、それは、更なる化合物に対応して適用できる。より高い温度で、以下に示される式(equation)における化学平衡は、ホルムアルデヒド+アンモニア側(反応矢印の左側)にある。この結果、ウロトロピン(反応矢印の右側)が中間体の形成を伴い分解し、そして消費される。
【0048】
ホルムアルデヒド放出は、約3のpHで弱酸性水性溶液において促進される。様々なカルボン酸、例えば、クエン酸、酢酸、及びシュウ酸、のみならず、ホウ酸及びリン酸のような鉱酸はホルムアルデヒドの放出を促進する。
【0049】
比較的低い酸強度(すなわちpK値が6.4を下回る)は、固定される組織試料の組織を保護するのに重要である。この種の酸は、加えて固定を加速させる。適切なpHは2から4の範囲であり得る。
【0050】
対応する組織試料の浸潤を助けるために、5から50%の少なくとも1つのアルコール(例えばエタノール)を含む固定薬剤を使用することは有利である。アルコールの利用は、固定薬剤の表面張力及びその粘性を減少させる。
【0051】
仮に前に説明された方法が、組織処理装置を使用して行われ、固定薬剤に導入された少なくとも1つの組織試料を有する固定薬剤が、組織処理装置の処理チャンバに、固定時間の間において少なくとも一時的(zeitweise)に導入され、そしてその中で第二の温度レベル及び/又は第二の圧力レベルにもたらされる場合、本発明の枠内において特に有利である。説明されるように、組織処理装置の使用は、閉鎖された空間における固定を許容し、そしてそれにより、人員へのリスクを避ける。
【0052】
前の説明は、同じ仕方で、本発明に従って提案される組織処理装置に適応され、固定薬剤に導入された少なくとも1つの組織試料を有する試料容器を受け取るように構成される少なくとも1つの処理チャンバを含み、固定薬剤は、繰り返し説明したように、少なくとも1つのアルデヒドの圧力及び/又は温度に依存的な放出が可能である少なくとも1つの窒素含有化合物を含む。この種の組織処理装置は、前に説明されるような方法を行うことを可能とする手段が本発明に従って備え付けられる。組織処理装置は、少なくとも1つのアルデヒドの圧力及び/又は温度に依存的な放出が可能である少なくとも1つの窒素含有化合物の固定薬剤における濃度を検出するように且つ、これに基づき対応するシグナルを出力するように構成される少なくとも1つの濃度測定装置を含む。
【実施例】
【0053】
図1において、本発明の実施形態に従う方法は、その全てが、概略的なフローチャート及びラベルされた100の形態で描写される。前に説明したように、方法は、3つのステップの固定操作の形で行われ、ステップ110、120、及び130を含む。
【0054】
ステップ110において、以前に繰り返し説明されたように、少なくとも1つの組織試料が固定薬剤に導入される。ステップ110において、有利に、固定薬剤での少なくとも1つの組織試料の浸潤が、例えば真空浸潤により行われる。すでにステップ110において、適切な容器中の固定薬剤中の組織試料は、組織処理装置に導入され得る。ステップ110において、少なくとも1つの組織試料は、固定薬剤において第一の温度レベル及び第一の圧力レベルにある。
【0055】
ステップ110に続くステップ120において、少なくとも1つの組織試料は、少なくとも固定時間の間固定薬剤中に置かれる。ステップ120において、固定薬剤に導入された少なくとも1つの組織試料を有する固定薬剤は、特に、前述した固定時間の間において、例えば、組織処理装置の固定チャンバにおいて、第一の温度レベルを上回る第二の温度レベルに及び/又は第一の圧力レベルを上回る第二の圧力レベルにもたらされる。前に説明した反応原理に基づく組織試料の実際の固定は、それ故、ステップ120において生ずる。
【0056】
ステップ120に続くステップ130において、固定は終結する。前に規定された第二の温度レベル及び/又は前に規定された第二の圧力レベルは、例えば、ステップ110に表される第一の温度レベル及び/又は圧力レベルに減少される。固定薬剤からの少なくとも1つのアルデヒドの放出及び、含有する少なくとも1つのアルデヒドの圧力及び/又は温度に依存的な放出が可能である窒素含有化合物からの少なくとも1つのアルデヒドの放出は、従って、終結する。ステップ130において、存在するであろう任意のガス状のアルデヒドは、方法100において使用される組織処理装置の固定チャンバから抜き出すことができる。少なくとも1つのアルデヒドの更なる放出が現在無視できない量で生じていない固定薬剤は、現在、ポンプで取り出され得、そして、例えば、リザーバタンクに移動され得る。
【0057】
前に言及したステップの前、その間、及び/又はその後に、少なくとも1つのアルデヒドの圧力及び/又は温度に依存的な放出が可能である少なくとも1つの窒素含有化合物の固定薬剤中での濃度は、使用される組織処理装置の少なくとも1つの濃度測定装置を使用して検出され得、そしてシグナルは、少なくとも1つの濃度測定装置の測定された値に基づいて出力され得る。
【0058】
図2において、本発明の実施形態に従う組織処理装置は、概略的に描写されそして、10とラベルされる。描写される例において、組織処理装置10は、図2に描写されるように、4つの組織試料1(一部分のみラベルされる)が固定薬剤2に導入される試料容器11を含む。ポンプを有する適切な液体ライン11a及び11b(それぞれ、ラベルされていない)は、試料容器11への、及び試料容器11からの、固定薬剤の導入及び除去のために備え付けられる。ライン11a及び11bは、リザーバ容器13に接続される。
【0059】
例えば分光光度法を使用して、少なくとも1つのアルデヒドの圧力及び/又は温度に依存的な放出が可能である少なくとも1つの窒素含有化合物の固定薬剤2中での濃度を検出するように構成される濃度測定装置14は、リザーバ容器13に配設される。濃度測定装置14の手段により、シグナルは、例えば組織処理装置10を操作するように構成されるユーザインターフェース20に出力され得る。
【0060】
組織処理装置10は、試料容器11が導入され得る処理チャンバ12を含む。少なくとも1つのアルデヒドがおそらく放出されるであろう、繰り返し述べられる固定時間の間にユーザに害がないように、処理チャンバ12は、有利に遮断される。処理チャンバ12はまた、吸引装置(図示されていない)に接続され得る。
【0061】
組織処理装置10は更に、例えば圧力ポンプ15及び加熱コイル16のような、処理チャンバ12への圧力及び/又は温度の適用のために構成される手段15及び16を含む。
【0062】
上記特許文献の全開示内容はここにおいて参照として取り入れられる。例示的実施例の変形および修正が、本発明の全開示内容(請求項を含む)の範囲内で、本発明の基本的技術概念に基づいて可能である。種々の開示要素(各請求項、実施例、図面等における要素)の種々の組合せおよび選択が、本発明の請求項の枠内で可能である。すなわち、本発明はもちろん種々の変形と修正を含み、それらは当業者によって、請求項および技術概念を含む全開示内容にしたがってなすことができるであろう。とりわけ、ここに開示されたいずれの数値範囲も、特に詳細に示されていなくても開示された範囲内における任意の中間値またはサブレンジであると解釈すべきである。
【符号の説明】
【0063】
1: 組織試料
2: 固定薬剤
10:組織処理装置
11:試料容器
11a、11b:液体ライン
12:処理チャンバ
13:リザーバ容器
14:濃度測定装置
15:圧力ポンプ
16:加熱コイル
20:ユーザインターフェース
図1
図2