(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6363953
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】1,3−ブタジエンの製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 5/333 20060101AFI20180712BHJP
C07C 11/167 20060101ALI20180712BHJP
B01J 38/30 20060101ALI20180712BHJP
B01J 23/90 20060101ALI20180712BHJP
C07C 7/08 20060101ALI20180712BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20180712BHJP
【FI】
C07C5/333
C07C11/167
B01J38/30
B01J23/90 Z
C07C7/08
!C07B61/00 300
【請求項の数】16
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-549606(P2014-549606)
(86)(22)【出願日】2012年12月24日
(65)【公表番号】特表2015-508397(P2015-508397A)
(43)【公表日】2015年3月19日
(86)【国際出願番号】IB2012057689
(87)【国際公開番号】WO2013098760
(87)【国際公開日】20130704
【審査請求日】2015年12月16日
(31)【優先権主張番号】MI2011A002404
(32)【優先日】2011年12月28日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】512115977
【氏名又は名称】ヴェルサリス ソシエタ ペル アチオニ
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100162422
【弁理士】
【氏名又は名称】志村 将
(72)【発明者】
【氏名】デル セッピア アレッサンドロ
(72)【発明者】
【氏名】アッサンドリ ファビオ
(72)【発明者】
【氏名】ギラルド エレナ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェッラ カーメロ
【審査官】
水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭59−164730(JP,A)
【文献】
特開昭59−167525(JP,A)
【文献】
特開平01−252695(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 11/167
C07C 5/333
C07C 7/08
C07C 11/12
C07C 43/04
C07C 41/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,3−ブタジエンを製造する方法であって、以下の段階:
(a)鎖中に2〜10個の炭素原子を有する、飽和化合物及び不飽和化合物の混合物を抽出セクションに供給する段階、
(b)前記抽出セクションにおいて、抽出蒸留によって、1,3−ブタジエンを含有する最終生成物の流れと、ラフィネート生成物の流れとを抽出する段階、
(c)前記ラフィネート生成物を脱水素セクションに送る段階、
(d)前記ラフィネート生成物を、前記脱水素セクションにおいて、脱水素触媒及び不活性物質の存在下で脱水素して1,3−ブタジエンを含有する反応流出液を生成する段階、(e)前記1,3−ブタジエンを含有する反応流出液を、非凝縮性化合物の分離後に、直接前記抽出セクションに再循環させる段階、
を含み、前記反応流出液を、非凝縮性化合物の分離後に、1,3−ブタジエン富化流と、前記開始混合物の非反応飽和化合物及び非反応不飽和化合物を含有する流れとに分離し、かつ前記1,3−ブタジエン富化流を前記抽出セクションに再循環させるものである、前記方法。
【請求項2】
前記鎖中に2〜10個の炭素原子を有する、非反応飽和化合物及び非反応不飽和化合物含有流を前記脱水素セクションに再循環させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
イソブテンを含有する前記ラフィネート生成物を、エタノール又はメタノールでのエーテル化に供し、エチルtert−ブチルエーテル又はメチルtert−ブチルエーテルと、続いて前記脱水素セクションに送られる精製流2とを得る、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ラフィネート2を1−ブテンの精製セクションに送り、1−ブテンの流れと、続いて脱水素されるラフィネート3の流れとを生成する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記脱水素触媒が触媒組成物であり、前記触媒組成物が、微小回転楕円体のアルミナと、ガリウム及び/又は酸化ガリウム、スズ及び/又は酸化スズ、白金及び/又は酸化白金並びにアルカリ金属の酸化物及び/又はアルカリ土類金属の酸化物を含む混合物を含有する活性成分とを含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
白金及び/又は酸化白金の量が500ppm未満である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
白金及び/又は酸化白金の量が99ppm未満である、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記脱水素触媒が、0.1〜33.6質量%のGa2O3と、1〜99ppmの白金と、0〜5質量%のアルカリ金属の酸化物及び/又はアルカリ土類金属の酸化物と、0.8〜3質量%のシリカで修飾したアルミナキャリアとを含有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記酸化ガリウムが、Ga2O3、Ga2O及びこれらの混合物から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記酸化スズが、SnO、SnO2及びこれらの混合物から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項11】
前記酸化白金が、PtO、PtO2及びこれらの混合物から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項12】
アルカリ金属の酸化物がK2Oである、請求項5に記載の方法。
【請求項13】
前記脱水素セクションが、少なくとも1基のリアクタと、前記脱水素触媒の少なくとも1基の再生装置とを備える、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記リアクタが、ファストライザタイプであり、気相の滞留時間が1分未満である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記飽和化合物及び不飽和化合物の混合物がブタン及びブテンを含む、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記脱水素セクションには、前記ラフィネート生成物、前記ラフィネート2若しくは前記ラフィネート3又はこれらの混合物が供給されることができる、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本明細書中ではC
2−C
10と記載する、鎖中に2〜10個の炭素原子を有する、飽和化合物及び不飽和化合物の混合物、好ましくは本明細書ではC
4と記載するブタン及びブテンの混合物から開始する1,3−ブタジエンの製造方法に関する。より具体的には、この方法及び装置を、独立型及び1,3−ブタジエンの選択抽出プラント又はC
4の全鎖アップグレードとの統合型の両方で、分解プラントで製造されたブタン/ブテン混合物に適用することができる。
【背景技術】
【0002】
自動車工業等の分野の拡大が招いた、世界市場でのエラストマー製品に対する需要の大きな増加は、その結果として、多種多様な合成ゴム(例えば、ポリブタジエン又はSBR、SBS、NB)及びポリマー樹脂(例えば、ABS、PEN)を製造するための原材料として使用される1,3−ブタジエンに対するかつてない需要増につながった。
【0003】
大部分の1,3−ブタジエンは現在、スチームクラッカーで製造されるC
4留分の抽出蒸留で工業的に製造され、残りはCB&I Lummus Technology社のCatadiene(商標)法に従ったブタン又はPetro−Tex社、現在のTexas Petrochemicals社のOxo−D(商標)法に従ったC
4オレフィンの脱水素とそれに続く得られた流出液の抽出蒸留で製造されている。言及した様々な技術についての説明は、Perp Report Nexant Chem Systems Butadiene/Butylenes 09/10−5に見つけることができる。
【0004】
抽出蒸留による1,3−ブタジエンの製造には、ナフサ供給原料の気体へのシフトに続いて徐々により限られてくるであろうと予測される、分解炉から来るC
4供給原料の利用度という本質的な制約があり、C
4パラフィン及び/又はオレフィンから開始する脱水素技法には、分解によるC
4留分の選択的抽出に対する競争力がない。
【0005】
特に、反応セクション及び下流の必要な抽出プラントに要する多額の投資費用によりCatadiene(商標)法の工業的な利用には限界があり、Oxo−D(商標)技法の工業的な魅力もまた、特には小容量の場合のその適用を危うくする既に多額の投資費用に加え、この方法のまさに性質に関係した重大な安全性の問題もあることから大きく制限される。
【0006】
米国特許第6187985号明細書には、C
2−C
22パラフィン(鎖中に2〜22個の炭素原子を有する)の脱水素法が記載されおり、C
5生成物の脱水素を、低沸点脂肪族炭化水素、例えばペンタン及びイソペンタンのアップグレードに使用することができ、これらは水蒸気分解及び接触分解工程のC
5留分からの不飽和化合物の抽出後に回収される。
【0007】
米国特許出願公開第2010/0168493号明細書には、軽質パラフィンの脱水素法が記載されており、脱水素を、ペンタン、イソペンタン等の低沸点脂肪族炭化水素のアップグレードに使用することができ、これらは水蒸気分解及び接触分解工程のC
5留分からの不飽和化合物の抽出後に回収される。
【0008】
ここで、出願人は、好ましくはブタン及びブテンの混合物である、鎖中に2〜10個の炭素原子を有する飽和及び不飽和化合物の混合物から開始して1,3−ブタジエンを製造するための、既存の又は新たに製造された、1,3−ブタジエンの選択抽出のための従来のプラントに潜在的に適用可能な革新的な方法を発見した。この革新的な方法の主な利点は、1,3−ブタジエンの抽出収率を上昇させることができる点である。
【発明の概要】
【0009】
したがって、本発明の目的は1,3−ブタジエンを製造する方法に関し、この方法は、以下の段階:
(a)抽出セクションにおいて、抽出蒸留によって、鎖中に2〜10個の炭素原子を有する飽和化合物及び不飽和化合物の混合物から開始して、1,3−ブタジエンを含有する最終生成物とラフィネート生成物とを抽出する段階、
(b)精製した抽出生成物を脱水素セクションに送る段階、
(c)ラフィネート生成物を、脱水素セクションにおいて、脱水素触媒及び不活性物質の存在下で脱水素して1,3−ブタジエンを含有する反応流出液を生成する段階、
(d)1,3−ブタジエンを含有する反応流出液を、非凝縮性化合物の分離後に、直接、抽出セクションに再循環させる段階
を含む。
【0010】
本発明の目的であるこの革新的且つ強化されたこの方法の構成は、同じC
4混合物供給流を想定した場合に、ラフィネート生成物又は抽出蒸留生成物の脱水素セクションを追加して従来の抽出プラントからの1,3−ブタジエンの回収率を上昇させることで、上述したような現在商業化されている1,3−ブタジエンの供給方法に関連した制約を取り除く。
【0011】
最新技術で利用されているある比較用の方法では、ラフィネート生成物をパラフィンへと完全に水素化し、これらを必要とされる全ナフサ供給原料の対応するアリコートの代わりに共分解にリサイクルすることでラフィネート生成物をアップグレードし、また供給される同じ新鮮なナフサでのプラントの潜在能力を上昇させる。本発明の目的である方法では、水蒸気分解における新鮮なナフサの消費量の少なさ又は代替案としての分解生成物の範囲内の産物の増加から1,3−ブタジエンの製造における増加へと利点をシフトさせることで、C
4流からのこの成分の回収率を特異的に最大化することができる。
【0012】
したがって、本発明は、投資費用の観点からより要求が厳しく、また安全性及び操業管理の見地からより重要な、脱水素によるブタジエン製造のための独立型のプラントの設置に頼ることなく、分解で得られるC
4留分の利用度によって強いられる潜在的な制約を取り除くものである。抽出セクションの容量を増大させるのに要し且つスケールファクターによって保証される投資における限定的な増加は、脱水素ユニットだけの限定的な投資費用と共に、本発明の目的である方法解決策の、小規模の場合も含めた、経済的な便益を保証する。
【0013】
本発明の更なる目的及び利点は、純粋に例示的で、非限定的な目的で提供される以下の説明及び添付の図からより明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態を図示する。Aは1,3−ブタジエンの抽出蒸留セクションであり、Bはラフィネート生成物の脱水素セクションであり、1は飽和及び不飽和C
4化合物を含有する混合物であり、2は1,3−ブタジエンを含有する最終生成物であり、3はラフィネート生成物であり、4はラフィネート生成物の考えられ得るパージ流であり、5はブタン及びブテンに富むリサイクル流であり、6は1,3−ブタジエンに富むリサイクル流である。
【
図2】本発明の実施形態を図示する。
図1のものと同じ要素及び流れに加えて、Cはエーテル化セクションであり、7はラフィネート2流であり、8はエチル−tert−ブチル−エーテル流である。
【
図3】本発明の実施形態を図示する。
図1及び
図2のものと同じ要素及び流れに加えて、Dは1−ブテンの精製セクションであり、9は精製後の1−ブテン流であり、10はラフィネート3である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
ある実施形態において、本発明は1,3−ブタジエンの製造方法に関し、この方法は、以下の段階:
(a)抽出セクションにおいて、抽出蒸留によって、鎖中に2〜10個の炭素原子を有する、飽和化合物及び不飽和化合物の混合物から開始して、1,3−ブタジエンを含有する最終生成物とラフィネート生成物とを抽出する段階、
(b)ラフィネート生成物を脱水素セクションに送る段階、
(c)ラフィネート生成物を、脱水素セクションにおいて、脱水素触媒及び不活性物質の存在下で脱水素して1,3−ブタジエンを含有する反応流出液を生成する段階、
(d)1,3−ブタジエンを含有する反応流出液を、非凝縮性化合物の分離後に、直接抽出セクションに再循環させる段階
を含む。
【0016】
本発明の更なる実施形態において、非凝縮性生成物の分離後、脱水素反応の1,3−ブタジエン富化流出液を例えば慣用の蒸留により1,3−ブタジエンに富む流れ(stream rich in 1,3-butadiene)と、鎖中に2〜10個の炭素原子を有する、非反応飽和化合物及び非反応不飽和化合物含有流とに分離する。この場合、1,3−ブタジエンに富む流れは、リサイクル生成物として抽出セクションに戻される。分離後、鎖中に2〜10個の炭素原子を有する、非反応飽和化合物及び非反応不飽和化合物含有流を好ましくは脱水素セクションに再循環させる。
【0017】
本明細書ではC
2−C
10と記載する、好ましくはブタンとブテンとの混合物である、鎖中に2〜10個の炭素原子を有する飽和及び不飽和化合物の混合物を抽出蒸留セクションに送り、そこで1,3−ブタジエンを含有する最終生成物と、飽和及び不飽和C
2−C
10化合物、好ましくはブタン及びブテンを含有するラフィネート生成物が得られる。
【0018】
このラフィネート生成物を続いて接触脱水素セクションに送り、1,3−ブタジエン並びに2〜10個の炭素原子を有する飽和及び不飽和化合物を含有する反応流出液を生成する。この流出液を好ましくは分離して、1,3−ブタジエンに富む生成物と、非反応飽和化合物及び非反応不飽和化合物に富む流れとを得る。
【0019】
この時点で、濃縮された、すなわち1,3−ブタジエンに富む生成物を抽出セクションに送ることで、抽出セクションへの、必要とされる容量における増大という観点での考えられ得る全体的な影響を最小限に抑える。実際、脱水素セクションから来る全反応流出液を処理するための必要な容量を有していない場合もある抽出セクションに過度な負担を強いらないことが好ましい。
【0020】
好ましくは非反応ブタン及びブテン等の飽和及び不飽和化合物に富む混合物を、リサイクル生成物として脱水素セクションに送る。
【0021】
好ましくは、本発明の目的である方法は、抽出段階に続いて、脱水素段階に先行するエーテル化段階も含み得る。
【0022】
このやり方では、ラフィネート生成物を、エタノール又はメタノールでのイソブテンのエーテル化に供することでエチル−tert−ブチル−エーテル(ETBE)又はメチル−tert−ブチル−エーテル(MTBE)と、本明細書においてラフィネート2と記載する留分とを得ることができ、ラフィネート2を脱水素セクションに送って1,3−ブタジエンに富む中間生成物を得ることができる。あるいは、更なる精製セクションに送ることで1−ブテンをラフィネート3と称される留分から分離することができる。この後者の実施形態においては、ラフィネート3を脱水素セクションに送ることで1,3−ブタジエン濃縮中間生成物を得ることができる。本発明の目的である脱水素セクションには、ラフィネート生成物、ラフィネート2、ラフィネート3又はこれらの混合物から選択される流れを送ることができる。
【0023】
好ましい脱水素触媒は、微小回転楕円体の(microspheroidal)アルミナと、ガリウム及び/又は酸化ガリウム、スズ及び/又は酸化スズ、白金及び/又は酸化白金並びにアルカリ金属の酸化物及び/又はアルカリ土類金属の酸化物を含む混合物を含有する活性成分とを含む触媒組成物である。
【0024】
微小回転楕円体のアルミナキャリアを好ましくは、流動層又は「ファストライザ(fast riser)」脱水素リアクタに特に適したシリカで修飾する。酸化ガリウムはより好ましくはGa
2O
3、Ga
2O又はこれらの混合物から選択され、酸化スズはより好ましくはSnO、SnO
2又はこれらの混合物から選択され、酸化白金はより好ましくはPtO、PtO
2又はこれらの混合物から選択され、最後に、より好ましくは、アルカリ金属の酸化物はK
2Oである。
【0025】
前記触媒組成物は驚くべきことに1,3−ブタジエンの収率を最大化することができ、同時に本発明の目的であるプラント構成(装置)に関連した投資費用を削減する。これはこの触媒組成物の活性が極めて高く、また選択的だからである。
【0026】
ガリウム及び/又は酸化ガリウムの量は、触媒組成物の総質量に対して、好ましくは0.1〜34質量%、より好ましくは0.2〜3.8質量%である。
【0027】
アルカリ及び/又はアルカリ土類金属の量は、触媒組成物の総質量に対して、好ましくは0.05〜5質量%、より好ましくは0.2〜3.8質量%である。
【0028】
スズ及び/又は酸化スズの量は、触媒組成物の総質量に対して、好ましくは0.001〜1質量%、より好ましくは0.05〜0.4質量%である。
【0029】
白金の濃度は、触媒組成物の総質量に対して、好ましくは1〜500質量ppm、好ましくは1〜99質量ppm、より一層好ましくは1〜50ppmである。
【0030】
キャリア中に存在するシリカの量は、触媒組成物の総質量に対して、0.05〜5質量%、より好ましくは0.03〜3質量%であり、残りはアルミナである。好ましくは、微小回転楕円体のアルミナの表面積は150m
2/g以下である。
【0031】
より好ましくは、Ga
2O
3の濃度は、触媒組成物の総質量に対して、0.1〜34質量%、より好ましくは0.2〜3.8質量%である。
【0032】
より好ましくは、K
2Oの量は、触媒組成物の総質量に対して、0.05〜5質量%、より好ましくは0.1〜3質量%である。
【0033】
より好ましくは、SnOの質量は、触媒組成物の総質量に対して、0.001〜1質量%、より好ましくは0.05〜0.4質量%である。
【0034】
白金の量は、触媒組成物の総質量に対して、好ましくは1〜500質量ppm、好ましくは1〜99質量ppm、より好ましくは1〜50ppmである。
【0035】
更に好ましい脱水素触媒は、0.1〜33.6質量%のGa
2O
3、1〜99ppmの白金、0〜5質量%のアルカリ金属の酸化物及び/又はアルカリ土類金属の酸化物並びに0.08〜3質量%のシリカで修飾したアルミナキャリアを含有する。
【0036】
脱水素セクションは、少なくとも1基の流動層脱水素リアクタと、それとは別に脱水素触媒、好ましくは本明細書で説明及び請求する触媒組成物の少なくとも一部の活性を回復させるための少なくとも1基の再生装置とを備える。脱水素触媒は、リアクタと再生装置との間で循環状態で維持され、一旦再生されたら、脱水素セクションに再循環させることができる。
【0037】
触媒組成物は常に、キャリアガスを使用して、反応セクションと再生装置との間、また再生装置と反応セクションとの間で再循環させられる。同じキャリアガスを、反応セクションの入り口での供給原料の希釈に使用することができる。供給原料を希釈するための不活性物質は、窒素、メタン又は最大水素含有量1質量%の別の燃料ガスから選択することができる。
【0038】
脱水素セクションは好ましくは、触媒、特には本明細書に記載の触媒組成物の性能を大幅に向上させることから、ファストライザタイプのリアクタの使用を必要とする。このタイプのリアクタは、同じ性能でありながら接触時間を短縮し、また反応体積の減少を大幅に減少させることを可能にする。
【0039】
脱水素段階は、450〜700℃の温度及び0.2〜2絶対気圧の圧力で行われる。
【0040】
脱水素をファストライザタイプのリアクタで行う場合、気相の滞留時間は1分未満、好ましくは0.2〜5秒である。
【0041】
脱水素触媒の再生を好ましくは、リアクタの作業温度より高い、好ましくは700℃より高い温度で流動層にて行う。再生装置の圧力は、気圧より若干高い。再生中の触媒の滞留時間は5〜60分、好ましくは20〜40分である。再生中、気相の毎時空間速度(触媒1リットルあたりの空気Nl/hでのGHSV)は1000〜5000h
-1、好ましくは2000〜3000h
-1である。
【実施例】
【0042】
実施例1
以下、1,3−ブタジエンの抽出蒸留プラントを備えた統合システムの1,3−ブタジエンの総収率を、後述され且つ
図1に図示のスキームに従って、スチームクラッカーからのC
4オレフィンとパラフィンとの混合物及び1,3−ブタジエンに富む脱水素流を抽出セクションにリサイクルすることで精製抽出生成物をアップグレードするための脱水素プラントから開始して求めた。
【0043】
スチームクラッカーで製造されたC
4オレフィンとパラフィンとの混合物を1,3−ブタジエンの抽出ユニットに送り、このセクションを出たラフィネート生成物を続いて接触脱水素ユニットに送り、そこで抽出ユニットにリサイクルするブタジエンに富む流れと、脱水素リアクタにリサイクルする非反応ブタン/ブテン流が得られる。ただし、適度なC
5+化合物パージ流は除く。
【0044】
プラントへの供給流中のC
4混合物は33.8トン/時間であり、流れの組成を表1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
独立型、すなわち下流の脱水素セクションを有さないブタジエン抽出プラントの場合、工業的に応用された技術に典型的な収率でもって、16.5トン/時間の1,3−ブタジエン流が、16.3トン/時間のラフィネート生成物流と共に製造される。
【0047】
他方で、ブタジエン抽出ユニットをラフィネート1の脱水素ユニットと統合する場合(
図1を参照のこと)、28.3トン/時間の1,3−ブタジエンが得られ、これはラフィネート1の脱水素がなく、同じC
4混合物を送った場合と比較して+71.5%のプラント総収率増加に相当する。
【0048】
実施例2
以下、1,3−ブタジエンの抽出蒸留プラントを備えた統合システムの1,3−ブタジエンの総収率を、後述され且つ
図3に図示のスキームに従って、スチームクラッカーからのC
4パラフィンとオレフィンとの混合物、抽出蒸留を後にしたラフィネート生成物及びメタノール(又はエタノール)から開始するメチル−tert−ブチル−エーテルMTBE(又はエチル−tert−ブチル−エーテルETBE)製造用プラント、ラフィネート2から開始する1−ブテンの回収プラント並びに1,3−ブタジエンに富む脱水素流を抽出セクションにリサイクルすることでラフィネート3をアップグレードするための脱水素プラントから開始して求めた。
【0049】
スチームクラッカーで製造されたC
4オレフィンとパラフィンとの混合物を1,3−ブタジエンの抽出ユニットに送り、このセクションを後にしたラフィネート生成物を続いて、メタノール(又はエタノール)との反応によるMTBE(又はETBE)製造ユニットに送り、そこでラフィネート2流が得られ、このラフィネート流2は1−ブテンを回収するための次のセクションに送られる。1−ブテンの回収セクションを出たラフィネート3流を脱水素セクションに送り、抽出ユニットにリサイクルするブタジエンに富む流と、脱水素リアクタにリサイクルする非反応ブタン及びブタン流を製造する。ただし、適度なC
5+化合物パージ流は除く。
【0050】
表1に示す流れ組成を有するプラントへの供給原料中のC
4混合物及び33.8トン/時間の流量を考慮すると、16.5トン/時間の1,3−ブタジエン、13トン/時間のMTBE、3.3トン/時間の1−ブテン及び4.5トン/時間のラフィネート3が、ラフィネート3の脱水素セクションとの統合なしに製造される。
【0051】
他方で、ブタジエン抽出ユニットをラフィネート3の脱水素ユニットと統合する場合(
図1Cを参照のこと)、18.8トン/時間の1,3−ブタジエン、13トン/時間のMTBE、4.4トン/時間の1−ブテンが得られ、これは同じC
4混合物を送った場合のプラントの収率における+13.5%の1,3−ブタジエン、+33%の1−ブテン増加に相当する。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕1,3−ブタジエンを製造する方法であって、以下の段階:
(a)抽出セクションにおいて、抽出蒸留によって、鎖中に2〜10個の炭素原子を有する、飽和化合物及び不飽和化合物の混合物から開始して、1,3−ブタジエンを含有する最終生成物とラフィネート生成物とを抽出する段階、
(b)前記ラフィネート生成物を脱水素セクションに送る段階、
(c)前記ラフィネート生成物を、前記脱水素セクションにおいて、脱水素触媒及び不活性物質の存在下で脱水素して1,3−ブタジエンを含有する反応流出液を生成する段階、(d)前記1,3−ブタジエンを含有する反応流出液を、非凝縮性化合物の分離後に、直接前記抽出セクションに再循環させる段階、
を含む、前記方法。
〔2〕前記非凝縮性化合物の分離後、前記反応流出液を、1,3−ブタジエン富化流と、鎖中に2〜10個の炭素原子を有する、非反応飽和化合物及び非反応不飽和化合物含有流とに分離する、前記〔1〕に記載の方法。
〔3〕前記1,3−ブタジエン富化流を前記抽出セクションに再循環させる、前記〔2〕に記載の方法。
〔4〕前記鎖中に2〜10個の炭素原子を有する、非反応飽和化合物及び非反応不飽和化合物含有流を前記脱水素セクションに再循環させる、前記〔2〕に記載の方法。
〔5〕イソブテンを含有するラフィネート生成物を、エタノール又はメタノールでのエーテル化に供することでエチルtert−ブチルエーテル又はメチルtert−ブチルエーテルと、続いて前記脱水素セクションに送られる精製流2とを得る、前記〔1〕または〔2〕に記載の方法。
〔6〕前記ラフィネート2を1−ブテンの精製セクションに送ることで、1−ブテン流と、続いて脱水素されるラフィネート3流とを得る、前記〔5〕に記載の方法。
〔7〕前記脱水素触媒が触媒組成物であり、前記触媒組成物が、微小回転楕円体のアルミナと、ガリウム及び/又は酸化ガリウム、スズ及び/又は酸化スズ、白金及び/又は酸化白金並びにアルカリ金属の酸化物及び/又はアルカリ土類金属の酸化物を含む混合物を含有する活性成分とを含む、前記〔1〕〜〔6〕のいずれか1項に記載の方法。
〔8〕白金及び/又は酸化白金の量が500ppm未満である、前記〔7〕に記載の方法。
〔9〕白金及び/又は酸化白金の量が99ppm未満である、前記〔7〕に記載の方法。
〔10〕前記脱水素触媒が、0.1〜33.6質量%のGa2O3と、1〜99ppmの白金と、0〜5質量%のアルカリ金属の酸化物及び/又はアルカリ土類金属の酸化物と、0.8〜3質量%のシリカで修飾したアルミナキャリアとを含有する、前記〔1〕〜〔6〕のいずれか1項に記載の方法。
〔11〕前記酸化ガリウムが、Ga2O3、Ga2O及びこれらの混合物から選択される、前記〔7〕に記載の方法。
〔12〕前記酸化スズが、SnO、SnO2及びこれらの混合物から選択される、前記〔7〕に記載の方法。
〔13〕前記酸化白金が、PtO、PtO2及びこれらの混合物から選択される、前記〔7〕に記載の方法。
〔14〕アルカリ金属の酸化物がK2Oである、前記〔7〕に記載の方法。
〔15〕前記脱水素セクションが、少なくとも1基のリアクタと、前記脱水素触媒の少なくとも1基の再生装置とを備える、前記〔1〕〜〔14〕のいずれか1項に記載の方法。
〔16〕前記リアクタが、「ファストライザ」タイプである、前記〔15〕に記載の方法。
〔17〕前記飽和化合物及び不飽和化合物の混合物がブタン及びブテンを含む、前記〔1〕〜〔16〕のいずれか1項に記載の方法。
〔18〕前記脱水素セクションには、前記ラフィネート生成物、前記ラフィネート2、前記ラフィネート3又はこれらの混合物が供給されることができる、前記〔1〕〜〔17〕のいずれか1項に記載の方法。