特許第6363954号(P6363954)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6363954抗スクレロスチン抗体の使用による歯槽骨消失の治療方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6363954
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】抗スクレロスチン抗体の使用による歯槽骨消失の治療方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20180712BHJP
   A61K 31/65 20060101ALI20180712BHJP
   A61K 38/22 20060101ALI20180712BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20180712BHJP
   A61P 19/08 20060101ALI20180712BHJP
   C07K 16/18 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
   A61K39/395 N
   A61K39/395 D
   A61K31/65
   A61K38/22
   A61P1/02
   A61P19/08
   C07K16/18ZNA
【請求項の数】14
【全頁数】46
(21)【出願番号】特願2014-550316(P2014-550316)
(86)(22)【出願日】2012年12月11日
(65)【公表番号】特表2015-504887(P2015-504887A)
(43)【公表日】2015年2月16日
(86)【国際出願番号】US2012068975
(87)【国際公開番号】WO2013101451
(87)【国際公開日】20130704
【審査請求日】2015年12月11日
【審判番号】不服2017-6687(P2017-6687/J1)
【審判請求日】2017年5月10日
(31)【優先権主張番号】61/580,964
(32)【優先日】2011年12月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500049716
【氏名又は名称】アムジエン・インコーポレーテツド
(73)【特許権者】
【識別番号】507238218
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ ミシガン
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ケ,ファ,ツー
(72)【発明者】
【氏名】リュウ,ミン
(72)【発明者】
【氏名】ジャンノービレ,ウィリアム,ブイ.
【合議体】
【審判長】 田村 聖子
【審判官】 冨永 みどり
【審判官】 阪野 誠司
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−539726(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/128424(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/100179(WO,A1)
【文献】 特表2013−525294(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0226928(US,A1)
【文献】 特表2008−502714(JP,A)
【文献】 特開昭60−061524(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/00-39/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯槽骨の消失を患っている対象において歯槽骨の高さを増加させるための、抗スクレロスチン抗体を含む組成物であって、該抗スクレロスチン抗体は、配列番号245のCDR‐H1、配列番号246のCDR‐H2、配列番号247のCDR‐H3、配列番号78のCDR‐L1、配列番号79のCDR‐L2、および配列番号80のCDR‐L3を含む、組成物。
【請求項2】
対象の歯槽骨の密度が治療開始後6週間までに治療前の歯槽骨の密度と比べて少なくとも10%増加する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
歯槽骨の体積率が治療開始後6週間までに治療前の骨体積率と比べて少なくとも10%上昇する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
投与当たり約5mgから約1,000mgまでの用量で前記抗スクレロスチン抗体を投与するための、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
約120から270mgの用量で前記抗スクレロスチン抗体を投与するための、請求項に記載の組成物。
【請求項6】
週に2回投与するための、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
対象の病変歯肉部または病変歯周ポケットへ局所的に投与するための、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記抗スクレロスチン抗体の投与前にペリオスタット(Periostat)(登録商標)または化学修飾テトラサイクリン‐3(CMT‐3)からなる群より選択される標準ケア治療薬を投与することを含む治療方法に用いるための、請求項1〜のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記抗スクレロスチン抗体を投与することに加えて、副甲状腺ホルモン、テリパラチド、ビスホスホネート、RANKL抗体およびDKK‐1抗体からなる群より選択される第2骨強化治療薬を投与することをさらに含む治療方法に用いるための、請求項1〜のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記治療方法において、前記抗スクレロスチン抗体を用いる治療期間が終了した後に前記第2骨強化治療薬が投与される、請求項に記載の組成物。
【請求項11】
前記抗スクレロスチン抗体を投与することに加えて、歯槽骨の維持のために少なくとも12週間の維持期間にわたって前記抗スクレロスチン抗体を投与することを含む治療方法に用いるための、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記抗スクレロスチン抗体が重鎖と軽鎖を含む免疫グロブリンである、請求項1またはに記載の組成物。
【請求項13】
前記抗スクレロスチン抗体が配列番号1のスクレロスチンに対する1×10−9M以下の結合親和性を示す抗体またはその断片である、請求項1、または12に記載の組成物。
【請求項14】
抗スクレロスチン抗体が、配列番号378に示されるアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号376に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項1に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2011年12月28日に提出された米国特許仮出願第61/580,964号の優先権の利益を主張する。その優先出願の開示はその全体の参照により組み込まれる。
【0002】
本発明の技術分野
本発明は概して歯槽骨の消失を治療するためにスクレロスチン阻害剤を使用する方法に関する。
【0003】
電子的に提出された資料の参照による引用
本願と同時に提出され、次のように特定化されるコンピューター読み込み可能なヌクレオチド/アミノ酸配列表がその全体の参照により組み込まれる:2012年12月7日に作成された805,989バイトの「46570_SeqListing.txt」という名称のASCII(テキスト)ファイル。
【0004】
参照による引用
次の出願はそれらの全体の参照によりここに組み込まれる:2006年4月17日に提出された米国特許仮出願第60/792,645号、2006年3月13日に提出された米国特許仮出願第60/782,244号、2006年2月24日に提出された米国特許仮出願第60/776,847号、および2005年5月3日に提出された米国特許仮出願第60/677,583号に対する優先権を主張する2006年4月25日に提出された米国特許出願第11/410,540号、ならびに2006年4月17日に提出された米国特許仮出願第60/792,645号、2006年3月13日に提出された米国特許仮出願第60/782,244号、2006年2月24日に提出された米国特許仮出願第60/776,847号、および2005年5月3日に提出された米国特許仮出願第60/677,583号に対する優先権を主張する2006年4月25日に提出された米国特許出願第11/411,003号(米国特許第7,592,429号として登録)。次の出願も参照によりここに組み込まれる:2007年9月17日に提出された米国特許仮出願第60/973,024号に対する優先権を主張する2008年9月17日に提出された米国特許出願第12/212,327号、および2007年12月14日に提出された米国特許仮出願第61/013,917号に対する優先権を主張する2008年12月15日に提出された国際特許出願第PCT/US08/86864号の米国特許法第371条に従う米国国内段階出願である2010年6月29日に提出された米国特許出願第12/811,171号。
【背景技術】
【0005】
歯周の感染症と歯肉の炎症は歯周病の主な原因であることが知られている。両方とも慢性炎症性疾患であり、それらが進行すると歯周組織が破壊され、骨吸収のため歯槽骨が減少し、いくつかの事例では歯の支持の喪失を引き起こす。加えて、歯槽骨は外科治療により生じた孔または虫歯の進行による根尖病巣が原因で欠損し得る。
【発明の概要】
【0006】
本発明は歯槽骨を強化するためのスクレロスチン阻害剤の使用方法を対象とする。1つの態様では、本明細書は、対象における歯槽骨の消失を治療する方法であって、セメントエナメル境と歯槽骨頂の間の距離を減少させるのに有効な量のスクレロスチン阻害剤(例えば、抗スクレロスチン抗体または抗体断片)を所望により週に約5mgから約1,000mgまでの用量で投与することを含む方法を記載する。1つの実施形態では、そのスクレロスチン阻害剤は治療期間の最中に週に2回投与される。別の実施形態では、そのスクレロスチン阻害剤は治療期間の最中に週に1回投与される。
【0007】
治療期間は少なくとも約1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、12週間、3か月、13週間、14週間、15週間、16週間、4か月、17週間、18週間、19週間、20週間、5か月、21週間、22週間、23週間、24週間、6か月、25週間、26週間、27週間28週間、7か月、29週間、30週間、31週間またはそれ以上(例えば、8か月、9か月、10か月、11か月、1年、15か月、18か月またはそれ以上)であり得る。いくつかの実施形態では、治療期間は約6〜12週間である。いくつかの実施形態では、治療期間は4〜12週間、または約1〜3か月である。いくつかの実施形態では、治療期間は約12〜20週間、または約3〜5か月である。いくつかの実施形態では、治療期間は約20〜32週間、または約5〜8か月である。いくつかの実施形態では、治療期間は約24〜36週間、または約6〜9か月である。いくつかの実施形態では、治療期間はわずか約28週間である。いくつかの実施形態では、治療期間は約1年である。いくつかの、または、どの実施形態においても、治療期間はわずか約18か月である。
【0008】
いくつかの、または、どの実施形態においても、セメントエナメル境と歯槽骨頂の間の距離は治療開始後6週間までに治療前の距離と比べて少なくとも10%(例えば、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、またはそれ以上)減少する。いくつかの、または、どの実施形態においても、セメントエナメル境と歯槽骨頂の間の距離は治療開始後6週間までに対照被検者(すなわち、スクレロスチン阻害剤を用いる治療を受けなかった進行した歯周病を有する対象)と比べて少なくとも10%(例えば、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、またはそれ以上)減少する。いくつかの実施形態では、セメントエナメル境と歯槽骨頂の間の距離は治療開始後6週間までに病気に罹る前の状態に回復する。いくつかの実施形態では、セメントエナメル境と歯槽骨頂の間の距離は治療開始後6週間までに約2mm(例えば、約2mm、約1.9mm、約1.8mm、約1.7mm、約1.6mm、約1.5mm、約1.4mm、約1.3mm、約1.2mm、約1.1mmまたは約1mm)以下である。
【0009】
いくつかの、または、どの実施形態においても、歯槽骨の高さは治療開始後6週間までに治療前の歯槽骨の高さと比べて少なくとも10%(例えば、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、またはそれ以上)増加する。いくつかの、または、どの実施形態においても、歯槽骨の高さは治療開始後6週間までに対照被検者(すなわち、スクレロスチン阻害剤を用いる治療を受けなかった進行した歯周病を有する対象)と比べて少なくとも10%(例えば、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、またはそれ以上)増加する。いくつかの実施形態では、歯槽骨の高さは治療開始後6週間までに病気に罹る前の状態の歯槽骨の高さに回復する。
【0010】
いくつかの、または、どの実施形態においても、歯槽骨の高さは治療開始後6週間までに治療前の歯槽骨の高さと比べて、または対照被検者(すなわち、スクレロスチン阻害剤を用いる治療を受けなかった進行した歯周病を有する対象)と比べて少なくとも0.1mm以上(例えば、少なくとも約0.1mm、約0.2mm、約0.3mm、約0.4mm、約0.5mm、約0.6mm、約0.7mm、約0.8mm、約0.9mm、約1mm、約1.5mm、約2mm、約2.5mm、約3mm、約3.5mm、約4mm、約4.5mm、約5mm、約5.5mm、約6mm、約6.5mm、約7mm、約7.5mm、約8mm、約8.5mm、約9mm、約9.5、または約10mm)増加する。
【0011】
いくつかの、または、どの実施形態においても、歯槽骨の密度は治療開始後6週間までに治療前の歯槽骨の密度と比べて、または対照被検者(すなわち、スクレロスチン阻害剤を用いる治療を受けなかった進行した歯周病を有する対象)と比べて少なくとも10%(例えば、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、またはそれ以上)増加する。いくつかの実施形態では、歯槽骨の密度は治療開始後6週間までに病気に罹る前の状態に回復する。
【0012】
いくつかの、または、どの実施形態においても、歯槽骨の体積率(BVF)は治療開始後6週間までに治療前の歯槽BVFと比べて、または対照被検者(すなわち、スクレロスチン阻害剤を用いる治療を受けなかった進行した歯周病を有する対象)と比べて少なくとも10%(例えば、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、またはそれ以上)上昇する。
【0013】
いくつかの、または、どの実施形態においても、本明細書に記載される方法は、スクレロスチン阻害剤を用いる治療を必要とする対象を特定するためにスクレロスチン阻害剤(例えば、抗スクレロスチン抗体または抗体断片)の投与前に歯槽骨の骨ミネラル密度を測定することをさらに含み得る。約750ハウンスフィールド単位以下(例えば、約750HU、約700HU、約650HU、約600HU、約550HU、約500HU、約450HU、約400HU、またはそれ以下)の歯槽骨密度の測定値を提示する対象は抗スクレロスチン抗体または抗体断片を用いる治療を必要とする対象として特定される。
【0014】
本明細書に記載される方法による治療を受ける歯槽骨の消失には、歯周炎(例えば、進行した歯周病)、歯の脱落、抜歯、義歯の装着、口腔外科手術、骨髄炎、放射線性骨壊死、発育性変性(例えば、歯、顔面骨、または顎の欠損部などの誕生時の欠損)、副鼻腔の欠損、歯列誤配列、または外傷(例えば、脱落歯または顎骨折)に伴う歯槽骨の消失が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、治療を受ける対象は進行した歯周炎を患っている。
【0015】
いくつかの実施形態では、歯槽骨の消失は、腫瘍(例えば、良性腫瘍)を含有する骨の部分を除去することにより生じる。例となる良性骨腫瘍には骨腫、類骨骨腫、骨芽細胞腫、骨軟骨腫、内軟骨腫、軟骨粘液様線維腫、脈瘤性骨嚢胞、単房骨嚢胞、線維性骨異形成、および骨巨細胞腫が含まれるが、これらに限定されない。
【0016】
いくつかの、または、どの実施形態においても、スクレロスチン阻害剤(例えば、抗スクレロスチン抗体または抗体断片)は、骨移植片、骨粉、骨片、脱ミネラル化骨基質、骨スキャフォールド、人工器官、金属製安定器、または重合体、セラミックス、セメントおよびリン酸カルシウム系の骨移植片代用物のうちの1つ以上を含む骨スキャフォールド物質などの骨の再生を支援する材料の使用と組み合わせて投与される。多種多様なそのような材料が当技術分野において知られている。
【0017】
いくつかの、または、どの実施形態においても、本方法は、スクレロスチン阻害剤(例えば、抗スクレロスチン抗体または抗体断片)の投与前に歯周病治療のための標準治療法を対象に実施することを含む。例えば、いくつかの実施形態では、歯周病治療のためのその標準治療法は、ペリオスタット(Periostat)(登録商標)および/または化学修飾テトラサイクリン‐3(CMT‐3)を含むが、これらに限定されない治療薬である。いくつかの実施形態では、その標準治療法は口腔洗浄および/または歯石除去ならびに対象の患部の歯肉縁上および/または歯肉下の創面切除(例えば、微生物性プラークおよび歯石の除去)を含む。いくつかの実施形態では、その標準治療はスクレロスチン阻害剤の投与前にペリオスタットおよび/またはCMT‐3と組合せて口腔洗浄および/または歯石除去および患部の創面切除を実施することを含む。いくつかの実施形態では、その方法はスクレロスチン阻害剤の投与と同時に標準治療法を実施することを含む。他の実施形態では、標準治療法は順次実施される。例えば、標準治療法は対象へのスクレロスチン阻害剤の投与の1日、2日、3日、4日、5日、6日、1週間、2週間、3週間、4週間、6週間、8週間、10週間、12週間、またはそれ以上前に実施され得る。好ましい実施形態では、対象における歯周病の進行をスクレロスチン阻害剤の投与の前に遅らせる、停止させる、または反転させる。
【0018】
いくつかの、または、どの実施形態においても、その方法は、抗生物質、例えばアモキシシリン、テトラサイクリン塩酸、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、アジスロマイシン、ロキシスロマイシン、モキシフロキサシン、シプロフロキサシンおよびメトロニダゾールからなる群より選択される抗生物質を投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、その方法は、スクレロスチン阻害剤の対象への投与の前、または投与の後にその抗生物質を対象に投与することを含む。他の実施形態では、その方法は、スクレロスチン阻害剤の投与と同時にその抗生物質を対象に投与することを含む。
【0019】
いくつかの、または、どの実施形態においても、その方法は、骨ミネラル密度の低下または骨折の治療のための第2骨強化治療薬を投与することをさらに含む。この種類の多くの治療薬が当技術分野において知られている。いくつかの実施形態では、その骨強化治療薬は、骨吸収抑制薬、骨形成剤、エストロゲン受容体修飾因子(限定されないが、ラロキシフェン、バゼドキシフェンおよびラソフォキシフェンを含む)および破骨細胞に対して阻害性効果を有する薬品からなる群より選択される。いくつかの実施形態では、その第2骨強化薬剤は、ビスホスホネート(限定されないが、アレンドロン酸ナトリウム(フォサマックス(登録商標))、リセドロン酸、イバンドン酸ナトリウム(ボニバ(登録商標))およびゾレドロン酸(リクラスト(登録商標))を含む)、エストロゲンまたはエストロゲン類似体、カルシウム供給源、チボロン、カルシトニン、カルシトリオールおよびホルモン補充療法薬からなる群より選択される。いくつかの実施形態では、その第2骨強化薬剤には副甲状腺ホルモン(PTH)またはそのペプチド断片、PTH関連タンパク質(PTHrp)、骨形成タンパク質、オステオゲニン、NaF、PGEアゴニスト、スタチン、抗DKK1抗体または阻害剤、抗RANKリガンド(RANKL)抗体(例えば、プロリア(登録商標))またはRANKL阻害剤、ラネル酸ストロンチウム、ビタミンD、またはビタミンD誘導体またはその模倣物が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、その第2骨強化薬剤はフォルテオ(登録商標)(テリパラチド、または組換えヒト副甲状腺ホルモン類似体(1〜34))またはプレオタクト(登録商標)(副甲状腺ホルモン)である。いくつかの、または、どの実施形態においても、その骨強化薬剤はプロテロス(登録商標)である。
【0020】
いくつかの実施形態では、その第2骨強化薬剤は(例えば、治療期間内の相当の期間に)スクレロスチン阻害剤と同時に投与される。他の実施形態では、その第2骨強化薬剤は、スクレロスチン阻害剤が終了した治療期間内の相当の期間に(すなわち、維持期間に)投与される。そのような実施形態では、その第2骨強化薬剤は約1週間から約5年の維持期間に投与される。
【0021】
その方法は、治療期間が終了した後に骨ミネラル密度の維持に有効な1回量以上のスクレロスチン阻害剤を所望により少なくとも約12週間、6か月、1年、2年、3年、4年、5年またはそれ以上の(例えば、対象の生存時間にわたる)維持期間に後で投与することをさらに含み得る。
【0022】
歯周病治療の計画は能動治療が完了した後の対症的継続治療も含み得る。対症的継続治療には機械的創面切除、口腔衛生の強化(例えば、定期的な専門家によるクリーニング、日々のブラッシングとデンタルフロスによる掃除)および抗生物質の投与が含まれるが、これらに限定されない。
【0023】
本明細書において開示される実施形態のいずれにおいても、スクレロスチン阻害剤は所望によりスクレロスチン結合剤(例えば、抗スクレロスチン抗体または抗体断片)である。本明細書において開示される方法のいずれかにおける米国特許出願公開第2007/0110747号において開示されるスクレロスチン阻害剤の使用、または本明細書において開示される方法のいずれかに従う投与用の医薬の調製のためのそのスクレロスチン阻害剤の使用が具体的に企図されている。1用量以上のスクレロスチン阻害剤が歯槽骨の消失の治療に有効な量および期間で投与される。様々な実施形態において、約50ミリグラムから約1,000ミリグラムまでのスクレロスチン阻害剤を含む1用量以上が週当たりに対象(例えば、ヒト対象)へ投与される。例えば、スクレロスチン阻害剤(例えば、抗スクレロスチン抗体または抗体断片)の用量は少なくとも約5mg、15mg、25mg、50mg、約60mg、約70mg、約80mg、約90mg、約100mg、約120mg、約150mg、約200mg、約240mg、約250mg、約280mg、約300mg、約350mg、約400mg、約420mg、約450mg、約500mg、約550mg、約600mg、約650mg、約700mg、約750mg、約800mg、約850mg、約900mg、約950mgまたは最大で約1,000mgのスクレロスチン阻害剤を含み得る。ありとあらゆるこれらの終止点の間の範囲、例えば、約50mg〜約80mg、約70mg〜約140mg、約75mg〜約100mg、約100mg〜約150mg、約140mg〜約210mg、または約150mg〜約200mg、または約280〜約410mgも企図されている。その用量はどのような間隔でも投与され、例えば週に複数回(例えば、週に2回または3回)、1週間に1回、2週間に1回、3週間に1回、または4週間に1回投与される。いくつかの、または、どの実施形態においても、約120mgから約210mgまでの範囲の用量のスクレロスチン阻害剤(例えば、抗スクレロスチン抗体または抗体断片)が週に2回投与される。いくつかの、または、どの実施形態においても、約140mgの用量のスクレロスチン阻害剤(例えば、抗スクレロスチン抗体または抗体断片)が週に2回投与される。
【0024】
いくつかの実施形態では、1用量以上のスクレロスチン阻害剤は体重キログラム当たり約0.1から約50ミリグラムの間(例えば、約5と約50ミリグラムの間)、または約1から約100ミリグラムの間のスクレロスチン阻害剤(mg/kg)を含み得る。例えば、スクレロスチン阻害剤(例えば、抗スクレロスチン抗体または抗体断片)の用量は少なくとも約0.1mg/kg、0.5mg/kg、1mg/kg、約2mg/kg、約3mg/kg、約4mg/kg、約5mg/kg、約6mg/kg、約7mg/kg、約8mg/kg、約9mg/kg、約10mg/kg、約20mg/kg、約25mg/kg、約26mg/kg、約27mg/kg、約28mg/kg、約29mg/kg、約30mg/kg、約31mg/kg、約32mg/kg、約33mg/kg、約34mg/kg、約35mg/kg、約36mg/kg、約37mg/kg、約38mg/kg、約39mg/kg、約40mg/kg、約41mg/kg、約42mg/kg、約43mg/kg、約44mg/kg、約45mg/kg、約46mg/kg、約47mg/kg、約48mg/kg、または約49mg/kg、または約50mg/kg、約55mg/kg、約60mg/kg、約65mg/kg、約70mg/kg、約75mg/kg、約80mg/kg、約85mg/kg、約90mg/kg、約95mg/kg、または最大で約100mg/kgを含み得る。ありとあらゆるこれらの終止点の間の範囲、例えば、約1mg/kg〜約3mg/kg、約1mg/kg〜約5mg/kg、約1mg/kg〜約10mg/kg、約1mg/kg〜約20mg/kg、約1mg/kg〜約40mg/kg、約5mg/kg〜約30mg/kg、または約5mg/kg〜約20mg/kgも企図されている。
【0025】
本明細書は、対象における歯槽骨の消失の治療のための有効量、例えば、週に約50mgから約1,000mgまでなど、上記の量のうちのいずれかの抗スクレロスチン阻害剤の使用法であって、そのスクレロスチン結合剤の1回以上の投与が少なくとも1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、12週間、3か月、13週間、14週間、15週間、16週間、4か月、17週間、18週間、19週間、20週間、5か月、21週間、22週間、23週間、24週間、6か月、25週間、26週間、27週間、28週間、7か月、29週間、30週間、31週間、またはそれ以上(例えば、8か月、9か月、10か月、11か月、1年、15か月、18か月、またはそれ以上)続く治療期間にわたって実施される使用法も記載する。
【0026】
いくつかの、または、どの実施形態においても、スクレロスチン阻害剤は皮下投与される。他の実施形態では、スクレロスチン阻害剤は対象の顎に局所投与される。いくつかの、または、どの実施形態においても、スクレロスチン阻害剤は対象の病変歯肉部に局所投与される。いくつかの、または、どの実施形態においても、スクレロスチン阻害剤は対象の歯周ポケットに投与される。
【0027】
スクレロスチン阻害剤(例えば、抗スクレロスチン抗体または抗体断片)は、本明細書に記載される投与計画および/またはタイミング計画のいずれかを用いて、歯槽骨の消失を有する対象に投与するための医薬の調製においても使用され得る。したがって、本発明は、本明細書に記載される投与計画および/またはタイミング計画のいずれかに従って使用されるスクレロスチン阻害剤も企図する。所望により、スクレロスチン阻害剤は、単一用量または複数用量バイアルまたはシリンジなどの容器の中に提供される。本発明は、本明細書に記載される投与計画および/またはタイミング計画のいずれかに従って歯槽骨の消失を治療するための抗スクレロスチン抗体またはその断片を含む容器およびその抗体またはその断片の投与についての指示書を含む。
【0028】
様々な実施形態において、スクレロスチン阻害剤はスクレロスチン結合剤、例えば、抗スクレロスチン抗体または抗体断片である。所望により、その抗スクレロスチン抗体または抗体断片は抗体Ab‐A、Ab‐B、Ab‐C、Ab‐D、Ab‐1、Ab‐2、Ab‐3、Ab‐4、Ab‐5、Ab‐6、Ab‐7、Ab‐8、Ab‐9、Ab‐10、Ab‐11、Ab‐12、Ab‐13、Ab‐14、Ab‐15、Ab‐16、Ab‐17、Ab‐18、Ab‐19、Ab‐20、Ab‐21、Ab‐22、Ab‐23、およびAb‐24のうちの少なくとも1つのスクレロスチンへの結合を交差妨害する、および/または抗体Ab‐A、Ab‐B、Ab‐C、Ab‐D、Ab‐1、Ab‐2、Ab‐3、Ab‐4、Ab‐5、Ab‐6、Ab‐7、Ab‐8、Ab‐9、Ab‐10、Ab‐11、Ab‐12、Ab‐13、Ab‐14、Ab‐15、Ab‐16、Ab‐17、Ab‐18、Ab‐19、Ab‐20、Ab‐21、Ab‐22、Ab‐23、およびAb‐24のうちの少なくとも1つによってその抗スクレロスチン抗体または抗体断片のスクレロスチンへの結合が交差妨害される。
【0029】
いくつかの実施形態では、抗スクレロスチン抗体は配列番号245のCDR‐H1、配列番号246のCDR‐H2、配列番号247のCDR‐H3、配列番号78のCDR‐L1、配列番号79のCDR‐L2、および配列番号80のCDR‐L3を含む。
【0030】
1つの実施形態では、抗スクレロスチン抗体は配列番号378を含む重鎖と配列番号376を含む軽鎖を含む。別の実施形態では、抗スクレロスチン抗体は配列番号145または配列番号392の重鎖と配列番号141の軽鎖を有する。
【0031】
別の実施形態では、抗スクレロスチン抗体は国際特許公開第2008/115732号の配列番号20〜25のCDR(配列番号416〜421)、国際特許公開第2008/115732号の配列番号26〜31のCDR(配列番号422〜427)、国際特許公開第2008/115732号の配列番号32〜37のCDR(配列番号428〜433)、または国際特許公開第2009/047356号の配列番号4、15、26、37、48、および59のCDR(それぞれ配列番号443、454、465、476、487、および498)を含む。さらに別の実施形態では、抗スクレロスチン抗体は国際特許公開第2010/130830号の配列番号135〜143、153〜161、または171〜179(それぞれ配列番号745〜753、763〜771、781〜789)のうちの少なくとも1つのアミノ酸配列を含む。
【0032】
本明細書に記載される抗スクレロスチン抗体(または抗体断片)を含む歯科インプラント、マトリックス、ゲルおよび創傷包帯も企図される。いくつかの実施形態では、それらの歯科インプラント、マトリックス、ゲルおよび創傷包帯は抗スクレロスチン抗体(または抗体断片)で被覆される。他の実施形態では、抗スクレロスチン抗体(または抗体断片)は本明細書に記載される担体と共に製剤化され、そして、所望により歯科インプラント、マトリックスまたは創傷包帯の適用の前(または後)に標的領域(すなわち、対象の病変歯肉部または病変歯周ポケット)に適用される。抗スクレロスチン抗体(または抗体断片)は当技術分野において公知のどの手段によっても適用され得る。いくつかの実施形態では、スクレロスチン抗体(または抗体断片)はその歯科インプラント、マトリックスまたは創傷包帯の適用前に皮下注射により標的領域に投与される。他の実施形態では、スクレロスチン抗体(または抗体断片)はその歯科インプラント、マトリックスまたは創傷包帯の適用前に患部をブラッシングする、他の場合では患部を被覆することによりその患部に投与される。
【0033】
加えて、本明細書において開示される方法のいずれかにおける抗スクレロスチン抗体(または抗体断片)の使用、または本明細書において開示される方法のいずれかに従う投与用の医薬の調製のための抗スクレロスチン抗体(または抗体断片)の使用が具体的に企図されている。この点で、本発明は、対象における歯槽骨の消失を治療する方法であって、セメントエナメル境と歯槽骨頂の間の距離を減少させるのに有効な量の抗スクレロスチン抗体(または抗体断片)を所望により週に約5mgから約1,000mgまでの用量で投与することを含む方法において使用される抗スクレロスチン抗体を含む。
【0034】
本発明は、セメントエナメル境と歯槽骨頂の間の距離を減少させるのに有効な量の抗スクレロスチン抗体(または抗体断片)であって、所望により週に約5mgから約1,000mgまでの用量である抗スクレロスチン抗体(または抗体断片)の対象における歯槽骨の消失を治療するための医薬の調製における使用も含む。
【0035】
前述の概要は本発明の全ての態様を定義するものとされてはおらず、追加の態様が他の節、例えば、発明を実施するための形態に記載されている。本文書全体は統一的な開示として関連付けられるものとし、たとえ本文書の同じ文、または同じ段落、または同じ節に一緒に見いだされなくとも、本明細書に記載される特徴のあらゆる組合せが企図されていると理解されるべきである。「a」または「an」を用いて記載または請求された本発明の態様に関して、これらの用語は、文脈がより限定された意味を明確に必要としない限り、「1つ以上」を意味すると理解されるべきである。「or」という用語は、別途文脈が明確に必要としない限り、どちらか選択された一方の項目、または両方の項目を包含すると理解されるべきである。本発明の態様がある特徴を「含む(comprising)」と記載される場合、実施形態はその特徴「からなる(consisting of)」または「から基本的になる(consisting essentially of)」と考えられてもいる。
本発明はまた、以下に関する。
[項目1]
対象における歯槽骨の消失を治療するための方法であって、セメントエナメル境と歯槽骨頂の間の距離を減少させるのに有効な量の抗スクレロスチン抗体を週に約5mgから約1,000mgまでの用量で前記対象に投与することを含む、前記方法。
[項目2]
セメントエナメル境と歯槽骨頂の間の距離が治療開始後6週間までに治療前の距離と比べて少なくとも10%減少する、項目1に記載の方法。
[項目3]
歯槽骨の高さが治療開始後6週間までに治療前の歯槽骨の高さと比べて少なくとも10%増加する、項目1に記載の方法。
[項目4]
前記対象の歯槽骨の高さが治療開始後6週間までに治療前の歯槽骨の高さと比べて少なくとも1mm増加する、項目1に記載の方法。
[項目5]
前記対象の歯槽骨の密度が治療開始後6週間までに治療前の歯槽骨の密度と比べて少なくとも10%増加する、項目1に記載の方法。
[項目6]
歯槽骨の体積率が治療開始後6週間までに治療前の骨体積率と比べて少なくとも10%上昇する、項目1に記載の方法。
[項目7]
前記抗体が約120から270mgまでの量で投与される、項目1に記載の方法。
[項目8]
前記抗スクレロスチン抗体が週に2回投与される、項目1に記載の方法。
[項目9]
前記抗スクレロスチン抗体が前記対象の病変歯肉部または病変歯周ポケットへ局所的に投与される、項目1に記載の方法。
[項目10]
前記方法が、前記抗スクレロスチン抗体の投与前にペリオスタット(Periostat)(登録商標)または化学修飾テトラサイクリン‐3(CMT‐3)からなる群より選択される標準ケア治療薬を投与することを含む、項目1〜9のいずれか一項に記載の方法。
[項目11]
副甲状腺ホルモン、テリパラチド、ビスホスホネート、RANKL抗体およびDKK‐1抗体からなる群より選択される第2骨強化治療薬を投与することをさらに含む、項目1〜10のいずれか一項に記載の方法。
[項目12]
前記抗スクレロスチン抗体を用いる治療期間が終了した後に前記第2骨強化治療薬が投与される、項目10に記載の方法。
[項目13]
第2期間に歯槽骨の維持に充分な量の前記抗スクレロスチン抗体を投与することを所望により含む、項目1に記載の方法。
[項目14]
前記抗スクレロスチン抗体が重鎖と軽鎖を含む免疫グロブリンである、項目1〜13のいずれか一項に記載の方法。
[項目15]
前記抗スクレロスチン抗体が配列番号1のスクレロスチンに対する1×10−9M以下の結合親和性を示す抗体またはその断片である、項目1〜13のいずれか一項に記載の方法。
[項目16]
MC3T3細胞ベースのミネラル化アッセイにおいて、ウェル当たりのスクレロスチンのモル数と比べてウェル当たり6倍過剰よりも少ないモル数のスクレロスチン結合部位が存在するとき、前記抗スクレロスチン抗体がヒトスクレロスチンを中和する、項目1〜15のいずれか一項に記載の方法。
[項目17]
前記抗スクレロスチン抗体が抗体Ab‐A、Ab‐B、Ab‐C、Ab‐D、Ab‐1、Ab‐2、Ab‐3、Ab‐4、Ab‐5、Ab‐6、Ab‐7、Ab‐8、Ab‐9、Ab‐10、Ab‐11、Ab‐12、Ab‐13、Ab‐14、Ab‐15、Ab‐16、Ab‐17、Ab‐18、Ab‐19、Ab‐20、Ab‐21、Ab‐22、Ab‐23、およびAb‐24のうちの少なくとも1つのスクレロスチンへの結合を交差妨害する、および/または抗体Ab‐A、Ab‐B、Ab‐C、Ab‐D、Ab‐1、Ab‐2、Ab‐3、Ab‐4、Ab‐5、Ab‐6、Ab‐7、Ab‐8、Ab‐9、Ab‐10、Ab‐11、Ab‐12、Ab‐13、Ab‐14、Ab‐15、Ab‐16、Ab‐17、Ab‐18、Ab‐19、Ab‐20、Ab‐21、Ab‐22、Ab‐23、およびAb‐24のうちの少なくとも1つによって前記抗スクレロスチン抗体のスクレロスチンへの結合が交差妨害される、項目1〜13のいずれか一項に記載の方法。
[項目18]
前記抗スクレロスチン抗体が配列番号245のCDR‐H1、配列番号246のCDR‐H2、配列番号247のCDR‐H3、配列番号78のCDR‐L1、配列番号79のCDR‐L2、および配列番号80のCDR‐L3を含む、項目1〜13のいずれか一項に記載の方法。
[項目19]
抗スクレロスチン抗体が、配列番号378を含む重鎖および配列番号376を含む軽鎖を含む、項目18に記載の方法。
[項目20]
配列番号1に示されるアミノ酸配列を含むスクレロスチンポリペプチドに結合する抗スクレロスチン抗体であって、配列番号1のスクレロスチンに対する1×10−9M以下の結合親和性を示す前記抗スクレロスチン抗体を含む歯科インプラント。
[項目21]
配列番号1に示されるアミノ酸配列を含むスクレロスチンポリペプチドに結合する抗スクレロスチン抗体であって、配列番号1のスクレロスチンに対する1×10−9M以下の結合親和性を示す前記抗スクレロスチン抗体を含むゲルまたはマトリックス。
[項目22]
対象における歯槽骨の消失を治療する方法であって、セメントエナメル境と歯槽骨頂の間の距離を減少させるのに有効な量の抗スクレロスチン抗体を所望により週に約5mgから約1,000mgまでの用量で投与することを含む前記方法において使用される抗スクレロスチン抗体。
[項目23]
前記の歯槽骨の消失を治療する方法が、副甲状腺ホルモン、テリパラチド、ビスホスホネート、RANKL抗体およびDKK‐1抗体からなる群より選択される第2骨強化治療薬を投与することをさらに含む、項目22に記載の抗スクレロスチン抗体。
[項目24]
前記抗スクレロスチン抗体を用いる治療期間が終了した後に前記第2骨強化治療薬が投与される、項目23に記載の抗スクレロスチン抗体。
[項目25]
前記の歯槽骨の消失を治療する方法が第2期間に歯槽骨の維持に充分な量の前記抗スクレロスチン抗体を投与することを所望によりさらに含む、項目22に記載の抗スクレロスチン抗体。
[項目26]
前記抗スクレロスチン抗体が重鎖と軽鎖を含む免疫グロブリンである、項目22〜25のいずれか一項に記載の抗スクレロスチン抗体。
[項目27]
前記抗スクレロスチン抗体が配列番号1のスクレロスチンに対する1×10−9M以下の結合親和性を示す抗体またはその断片である、項目22〜26のいずれか一項に記載の抗スクレロスチン抗体。
[項目28]
MC3T3細胞ベースのミネラル化アッセイにおいて、ウェル当たりのスクレロスチンのモル数と比べてウェル当たり6倍過剰よりも少ないモル数のスクレロスチン結合部位が存在するとき、前記抗スクレロスチン抗体がヒトスクレロスチンを中和する、項目22〜27のいずれか一項に記載の抗スクレロスチン抗体。
[項目29]
前記抗スクレロスチン抗体が抗体Ab‐A、Ab‐B、Ab‐C、Ab‐D、Ab‐1、Ab‐2、Ab‐3、Ab‐4、Ab‐5、Ab‐6、Ab‐7、Ab‐8、Ab‐9、Ab‐10、Ab‐11、Ab‐12、Ab‐13、Ab‐14、Ab‐15、Ab‐16、Ab‐17、Ab‐18、Ab‐19、Ab‐20、Ab‐21、Ab‐22、Ab‐23、およびAb‐24のうちの少なくとも1つのスクレロスチンへの結合を交差妨害する、および/または抗体Ab‐A、Ab‐B、Ab‐C、Ab‐D、Ab‐1、Ab‐2、Ab‐3、Ab‐4、Ab‐5、Ab‐6、Ab‐7、Ab‐8、Ab‐9、Ab‐10、Ab‐11、Ab‐12、Ab‐13、Ab‐14、Ab‐15、Ab‐16、Ab‐17、Ab‐18、Ab‐19、Ab‐20、Ab‐21、Ab‐22、Ab‐23、およびAb‐24のうちの少なくとも1つによって前記抗スクレロスチン抗体のスクレロスチンへの結合が交差妨害される、項目22〜28のいずれか一項に記載の抗スクレロスチン抗体。
[項目30]
前記抗スクレロスチン抗体が配列番号245のCDR‐H1、配列番号246のCDR‐H2、配列番号247のCDR‐H3、配列番号78のCDR‐L1、配列番号79のCDR‐L2、および配列番号80のCDR‐L3を含む、項目22〜29のいずれか一項に記載の抗スクレロスチン抗体。
[項目31]
抗スクレロスチン抗体が、配列番号378を含む重鎖および配列番号376を含む軽鎖を含む、項目30に記載の抗スクレロスチン抗体。
[項目32]
セメントエナメル境と歯槽骨頂の間の距離を減少させるのに有効な量の抗スクレロスチン抗体であって、所望により週に約5mgから約1,000mgまでの用量である前記抗スクレロスチン抗体の対象における歯槽骨の消失を治療するための医薬の調製における使用。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1-1】図1は、本明細書に記載される様々な抗スクレロスチン抗体のアミノ酸配列のアミノ酸配列と配列識別子を記載する表である。それらの配列識別子は本明細書と共に提出された配列表において提供されるアミノ酸配列を指す。それらのアミノ酸配列は、参照によりここに組み込まれる米国特許出願公開第2007/0110747号または国際特許出願公開第2008/115732号、第2009/047356号、または第2010/130830号にも示されている。
図1-2】同上。
図1-3】同上。
図1-4】同上。
図1-5】同上。
図1-6】同上。
図1-7】同上。
図1-8】同上。
図1-9】同上。
図1-10】同上。
図2A図2Aおよび2Bは、実験的歯周炎期間における骨体積率(図2A)および骨ミネラル密度(図2B)に対する抗スクレロスチン抗体の全身投与の(2週間および4週間の試験エンドポイントで測定された)効果を示すグラフである。
図2B】同上。
図3A図3Aおよび3Bは、実験的歯周炎の誘導後の骨体積率(図3A)および骨ミネラル密度(図3B)に対する抗スクレロスチン抗体の全身投与の(4週間、7週間、および10週間の試験エンドポイントで測定された)効果を示すグラフである。
図3B】同上。
図4A図4A〜4Cは、実験的歯周炎の誘導後のセメントエナメル境と歯槽骨頂の間の距離(図4A)、および上顎第二臼歯の7週間(図4B)と10週間(図4C)における部位特異的な測定値に対する抗スクレロスチン抗体の効果を示すグラフである。
図4B】同上。
図4C】同上。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明は、少なくとも部分的に、スクレロスチン阻害剤が、例えば、歯周病に伴う歯槽骨の消失を治療することができるという発見に基づいている。この点で、本発明は歯槽骨の消失を治療する方法を提供する。方法は、1用量以上のスクレロスチン結合剤(例えば、抗スクレロスチン抗体または抗体断片)などのスクレロスチン阻害剤を、セメントエナメル境と歯槽骨頂の間の距離を減少させるのに有効な量で治療期間中に対象(例えば、哺乳類動物、例えばヒト)に投与することを含む。本発明の材料と方法は、対象の歯槽骨を病気に罹る前の状態(例えば、高さおよび/または密度および/または三次元骨量)に回復させるための侵襲的な外科的方法(例えば、骨移植片)に治療効力が左右される既存の治療法よりも優れている。
【0038】
本明細書に記載される方法による治療を受ける歯槽骨の消失には、歯周炎、歯の脱落、抜歯、義歯の装着、口腔外科手術、骨髄炎、放射線性骨壊死、発育性変性(例えば、歯、顔面骨、または顎の欠損部などの誕生時の欠損)、副鼻腔の欠損、歯列誤配列または外傷(例えば、脱落歯または顎骨折)に伴う歯槽骨の消失が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、治療を受ける対象は進行した歯周炎を患っている。
【0039】
「歯周病」という用語は、本明細書において使用される場合、一連の臨床状態を包含すると意図されている。歯周病の臨床診断は歯周組織の視覚的評価およびX線撮影評価ならびに歯と歯肉の間隔の測定値に基づく。ヒトでは、これらの間隔は通常1〜3mmの深さであり、支持結合組織と骨が失われるにつれて深まる。総合的な臨床検査の間に歯周ポケットの深さと組織支持が全ての歯の周りの様々な位置(例えば、4〜6か所)で測定され、プラークの量、歯石、歯肉の出血および浸出物が記録される。歯科X線写真が歯を支持する骨の量を評価するために日常的に用いられている。
【0040】
歯周病の重症度は、通常、セメントエナメル境または歯冠境から測定された臨床的付着喪失(CAL)に基づき、軽度(1〜2mm)、中程度(3〜4mm)、または重症(5mm以上)と認められ得る。「臨床的付着喪失」(CAL)という用語は、ミリメーター単位で測定されたセメントエナメル境(すなわち、歯冠境)から歯肉縁の先端までの距離を指す。歯周病は歯周ポケットの深さによって特徴づけられることもあり得、軽度の疾患は約4〜5mmの歯周ポケットの深さを特徴とし、中程度の疾患は約6〜7mmの歯周ポケットの深さを特徴とし、重症の疾患は約8mm以上の歯周ポケットの深さを特徴とする。歯周「ポケットの深さ」(PPD)という用語は、ミリメーター単位で測定されたセメントエナメル境(すなわち、歯冠境)から歯槽骨頂までの距離を指す。PPDとCALの両方の測定は、歯周探針を用いて各歯の周りの様々な部位、例えば、近心面頬面部位または中央頬面部位で実施される。それらは歯周病の重症度の基準を提供する。あるいは、PPDとCALの両方を標準的なデジタルX線撮影からいくつかの解剖学的な目印を用いて得ることができる。
【0041】
歯周病にはプラーク誘導性および非プラーク誘導性の歯肉疾患、慢性歯周炎(軽度(1〜2mmのCAL)、中程度(3〜4mmのCAL)、または重症(5mm以上)の全体的または限局的な病変と分類される)、侵襲性歯周炎((1〜2mmのCAL)、中程度(3〜4mmのCAL)、または重症(5mm以上)の全体的または限局的な病変と分類される)、血液学的障害および遺伝的障害と関連する全身性疾患の兆候としての歯周炎、壊死性潰瘍性歯肉炎および壊死性潰瘍性歯周炎を含む壊死性歯周病、歯肉性、歯周性および周歯冠性膿瘍を含む歯周組織の膿瘍、歯内病変に伴う歯周炎、および発育性または後天性の変性と健康状態、例えば、プラーク誘導性歯肉疾患または歯周炎を緩和する、またはそれらに罹りやすくする限局的歯関連要因、歯の周りの歯肉歯槽粘膜の変性と健康状態、および無歯顎堤による健康状態および咬合性外傷が含まれるが、これらに限定されない。これらの健康状態の全てが1本の、または少数の特定の歯に限局されることがあり得、またはより全体化される(すなわち、歯の部位のうち30%超が関わる)ことがあり得る。
【0042】
「進行した歯周病」という用語は、本明細書において使用される場合、5mm以上のCALまたは8mm以上の歯周のPPDを提示する対象を指す。歯肉退縮、歯の移動、歯の動揺および化膿は、歯槽骨の進行性の破壊に起因する進行した歯周病と多くの場合関連する兆候である。
【0043】
いくつかの実施形態では、歯槽骨の消失は良性腫瘍を含有する骨の部分を除去することにより生じる。例となる良性骨腫瘍には骨腫、類骨骨腫、骨芽細胞腫、骨軟骨腫、内軟骨腫、軟骨粘液様線維腫、脈瘤性骨嚢胞、単房骨嚢胞、線維性骨異形成および骨巨細胞腫が含まれるが、これらに限定されない。
【0044】
スクレロスチン阻害剤の投与は歯槽骨の1つ以上のパラメータ(例えば、歯槽骨高さ、歯槽骨量、歯槽骨の密度、歯槽骨の体積、歯槽骨のミネラル含有量、および歯の安定性の改善のうちの1つ以上)を上昇させる。この点で、歯槽骨の消失を「治療すること」は、例えば、歯槽骨高さ、歯槽骨量、および歯槽骨の密度のどのような増加も含み、ならびに、歯槽骨の修復の促進を含む。同様に、歯槽骨の消失を「治療すること」は、スクレロスチン阻害剤を投与されていない対象(例えば、哺乳類動物、例えばヒト)(すなわち、対照被検者)において経験された歯槽骨の修復レベルを超える(すなわち、それよりも上の)歯槽骨の朱副レベルを調節することを含む。歯槽骨の修復には、例えば、治療前の次のパラメータと比べた歯槽骨の高さの増加、歯槽骨の体積の増加、歯槽骨のミネラル含有量および密度の増加、歯の安定性の上昇または患者による患部の使用の改善が証拠となる。歯槽骨のいずれか1つ以上のパラメータの上昇は測定されたパラメータの、例えば、(a)基線レベル(例えば、疾患の発症前のレベル)、(b)当技術分野において使用される標準データベースまたは臨床基準において提供される値、または(c)反対側の機能レベルへの、例えば、全体的または部分的な復帰(例えば、対象の病気に罹っていない歯槽骨の機能への、例えば、全体的または部分的な復帰)であり得る。いくつかの場合では、その上昇は基線レベルを超える改善であり得る。所望であれば、1用量以上のスクレロスチン阻害剤を投与された対象における測定されたパラメータは、本明細書に記載される方法の有効性をさらに解析するために、スクレロスチン阻害剤を投与されていない歯槽骨の消失を提示する(所望により年齢と性別を一致させた)他の対象における同じパラメータと比較され得る。
【0045】
歯槽骨パラメータ(例えば、歯槽骨の高さ、歯槽骨量および/または歯槽骨の密度)はX線撮影(例えば、X線撮影吸収測定法)、単一および/または二重エネルギーX線吸収測定法、定量的コンピューター断層撮影法(QCT)、超音波診断法、X線撮影(例えば、X線撮影吸収測定法)、および核磁気共鳴画像法を用いて測定され得る。いくつかの実施形態では、消失した歯槽骨の量は歯周ポケットの深さの測定により特定化および/または定量化される。
【0046】
いくつかの実施形態では、スクレロスチン阻害剤(例えば、抗スクレロスチン抗体または抗体断片)は、セメントエナメル境と歯槽骨頂の間の距離を治療開始後6週間までに治療前の距離または対照被検者(すなわち、スクレロスチン阻害剤を用いる治療を受けなかった、同様の疾患状態を有する対象)と比べて少なくとも10%(例えば、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%またはそれ以上)減少させるのに有効な用量と期間で投与される。いくつかの実施形態では、セメントエナメル境と歯槽骨頂の間の距離が治療開始後6週間までに病気に罹る前の状態に回復する。いくつかの実施形態では、セメントエナメル境と歯槽骨頂の間の距離は治療開始後6週間までに約2mm(例えば、約2mm、約1.9mm、約1.8mm、約1.7mm、約1.6mm、約1.5mm、約1.4mm、約1.3mm、約1.2mm、約1.1mmまたは約1mm)以下である。いくつかの、または、どの実施形態においても、セメントエナメル境と歯槽骨頂の間の距離は治療開始後6週間までに対象の口の病気に罹っていない領域(例えば、隣接する、または反対側の歯)における距離と同等である。
【0047】
いくつかの実施形態では、スクレロスチン阻害剤(例えば、抗スクレロスチン抗体または抗体断片)は、歯槽骨の高さを治療開始後6週間までに治療前の歯槽骨の高さまたは対照被検者(すなわち、スクレロスチン阻害剤を用いる治療を受けなかった進行した歯周病を有する対象)と比べて少なくとも10%(例えば、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%またはそれ以上)増加させるのに有効な用量と期間で投与される。いくつかの実施形態では、歯槽骨の高さは治療開始後6週間までに病気に罹る前の状態の歯槽骨の高さに回復する。いくつかの実施形態では、歯槽骨の高さは治療開始後6週間までに治療前の歯槽骨の高さと比べて少なくとも0.1mm以上(例えば、少なくとも約0.1mm、約0.2mm、約0.3mm、約0.4mm、約0.5mm、約0.6mm、約0.7mm、約0.8mm、約0.9mm、約1mm、約1.5mm、約2mm、約2.5mm、約3mm、約3.5mm、約4mm、約4.5mm、約5mm、約5.5mm、約6mm、約6.5mm、約7mm、約7.5mm、約8mm、約8.5mm、約9mm、約9.5約10mm)増加する。いくつかの、または、どの実施形態においても、歯槽骨の高さは治療開始後6週間までに対象の口の病気に罹っていない領域(例えば、隣接する、または反対側の歯)における距離と同等である。
【0048】
いくつかの実施形態では、スクレロスチン阻害剤(例えば、抗スクレロスチン抗体または抗体断片)は、歯槽骨の密度を治療開始後6週間までに治療前の歯槽骨の密度または対照被検者(すなわち、スクレロスチン阻害剤を用いる治療を受けなかった進行した歯周病を有する対象)と比べて少なくとも10%(例えば、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%またはそれ以上)増加させるのに有効な用量と期間で投与される。いくつかの実施形態では、歯槽骨の密度は治療開始後6週間までに病気に罹る前の状態歯槽骨の密度(例えば、対象の口の非病変歯肉部に匹敵する密度)に回復する。ヒトでは、骨ミネラル密度は多くの場合、二重X線吸収測定法(DXA)を用いて臨床的に決定される。他の技術には定量的コンピューター断層撮影法(QCT)、超音波診断法、単一エネルギーX線吸収測定法(SXA)、核磁気共鳴画像法、X線撮影、およびX線撮影吸収測定法が含まれる。米国医師会は、BMD技術は通常、超音波診断法を除いて、X線の使用を伴っており、放射線の減衰が放射線の通り路にある組織の厚みと組成に左右されるという原理に基づいていることに言及している。多くの場合、技術は結果の標準データベースへの比較を伴う。
【0049】
スクレロスチン阻害剤を用いる治療の成功を評価するのに有用な別のパラメータは歯槽骨体積率(BVF)である。「骨体積率」という用語は、本明細書において使用される場合、骨試料の単位体積当たりのミネラル化骨の体積(BV/TV、%)を指し、例えば、マイクロコンピューター断層撮影法(マイクロCT)によって測定され得る。いくつかの、または、どの実施形態においても、歯槽BVFは治療開始後6週間までに治療前の歯槽BVFと比べて、または対照被検者(すなわち、スクレロスチン阻害剤を用いる治療を受けなかった進行した歯周病を有する対象)と比べて少なくとも10%(例えば、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%またはそれ以上)上昇する。いくつかの、または、どの実施形態においても、歯槽BVFは治療開始後6週間までに対象の口の病気に罹っていない領域(例えば、隣接する、または反対側の歯)における歯槽BVFと同等である。
【0050】
歯槽骨の高さ、歯槽骨量、歯槽骨の密度、および歯槽骨体積率のうちのいずれか1つ以上の上昇および/またはセメントエナメル境と歯槽骨頂の間の距離の減少(または他のいずれかの歯槽骨パラメータの改善)はスクレロスチン阻害剤の初回投与後1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間またはそれ以上の時点で決定され得る。あるいは、歯槽骨の高さ、歯槽骨量、歯槽骨体積率および歯槽骨の密度のうちのいずれか1つ以上の上昇(および/またはセメントエナメル境と歯槽骨頂の間の距離の減少)は治療期間の終了後に(例えば、治療期間の終了から1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、12週間、13週間、14週間、15週間、16週間、5か月、6か月、7か月、8か月、9か月、10か月、11か月または1年の後に)決定され得る。1つの態様では、その方法は、所望のレベルの歯槽骨の高さ、歯槽骨量、歯槽骨の密度および/または歯槽骨体積率および/またはセメントエナメル境と歯槽骨頂の間の距離の減少、例えば、スクレロスチン阻害剤を受容していない年齢と性別が一致する患者と比べた歯槽骨の高さ、歯槽骨量もしくは歯槽骨の密度および/もしくは歯槽骨体積率のあらゆるパーセントの上昇ならびに/または本明細書に記載されるセメントエナメル境と歯槽骨頂の間の距離を確立するのに必要とされる時間を減少させ、それにより対象の回復時間を減少させる。例えば、1つの実施形態では、スクレロスチン阻害剤は、スクレロスチン阻害剤を受容していない対象と比べた歯槽骨の高さ、歯槽骨量、歯槽骨の密度および/もしくは歯槽骨体積率の、ならびに/またはセメントエナメル境と歯槽骨頂の間の距離の少なくとも約10%(例えば、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、または少なくとも約50%)の上昇ならびに/または減少のために必要とされる時間を減少させる。
【0051】
歯槽骨の強化を示す機能的クオリティ・オブ・ライフ・パラメータには歯の脱落のリスクの低下、歯肉の出血の減少、歯周ポケットの深さの減少、歯肉組織の付着レベルの上昇、発音の改善、味覚の改善、ある特定の食物を食べる能力の向上、緊張の減少、食事の改善、および短気の減少が含まれるが、これらに限定されない。1用量以上のスクレロスチン阻害剤の投与は、本明細書に記載されるように、歯槽骨の消失に伴う機能的クオリティ・オブ・ライフ・パラメータの改善を試験された患者集団において統計学的に有意に促進する。
【0052】
いくつかの実施形態では、1用量以上のスクレロスチン阻害剤、例えばスクレロスチン結合剤(例えば、抗スクレロスチン抗体または抗体断片)は1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、12週間、13週間、14週間、15週間、16週間、17週間、18週間、19週間、20週間、21週間、22週間、23週間、24週間、25週間、26週間、27週間、28週間、29週間、31週間、8か月、9か月、10か月、11か月、1年、18か月またはそれ以上を含む治療期間にわたってヒトに投与される。「治療期間」は初回用量のスクレロスチン阻害剤(例えば、抗スクレロスチン抗体または抗体断片)が投与されると開始され、最終用量のスクレロスチン阻害剤が投与されると終了する。治療期間中にあらゆる回数のスクレロスチン阻害剤の投与が企図される。例えば、1用量または投与、2用量または投与、3用量または投与、4用量または投与、5用量または投与、6用量または投与、7用量または投与、8用量または投与、9用量または投与、10用量または投与、11用量または投与、12用量または投与、13用量または投与、14用量または投与、15用量または投与、16用量または投与、17用量または投与、18用量または投与、19用量または投与、20用量または投与のスクレロスチン阻害剤が治療期間にわたって対象に提供される。1つの実施形態では、治療期間は少なくとも6週間を含む。いくつかの実施形態では、治療期間は少なくとも28週間続く。他の実施形態では、治療期間は少なくとも1年続く。代替的に、または加えて、治療期間はわずか18か月続く。実際に、スクレロスチン阻害剤を含む医薬組成物の1回以上の投与は、わずか18か月、1年未満、わずか8か月、わずか28週間、またはわずか20週間続く処置期間または治療期間にわたって実施され得る。1つの実施形態では、治療期間は約28週間であり、歯槽骨の消失を有する未処置対象と比べて歯槽骨パラメータ、例えば(限定されないが)歯槽骨の高さ、歯槽骨量、歯槽骨体積率および歯槽骨の密度に有意な改善を生じる。
【0053】
スクレロスチン結合剤(例えば、抗スクレロスチン抗体または抗体断片)は、歯槽骨の修復を促進、強化、または加速する量で投与される。どの実施形態においても、スクレロスチン阻害剤は週に約5ミリグラムから約1,000ミリグラムまでのスクレロスチン阻害剤の量で対象(例えば、ヒト対象)に投与され得る。例えば、スクレロスチン阻害剤(例えば、抗スクレロスチン抗体または抗体断片)の量は少なくとも約5mg、15mg、25mg、50mg、約60mg、約70mg、約80mg、約90mg、約100mg、約120mg、約140mg、約150mg、約170mg、約180mg、約200mg、約210mg、約240mg、約250mg、約270mg、約280mg、約300mg、約350mg、約400mg、約420mg、約450mg、約500mg、約550mg、約600mg、約650mg、約700mg、約750mg、約800mg、約850mg、約900mg、約950mgまたは最大で約1,000mgのスクレロスチン阻害剤を含み得る。ありとあらゆるこれらの終止点の間の範囲、例えば、約50mg〜約80mg、約70mg〜約140mg、約70mg〜約210mg、約75mg〜約100mg、約100mg〜約150mg、約120mg〜約270mg、約140mg〜約210mg、または約150mg〜約200mg、または約280〜約410mgが企図されている。用量はどのような間隔でも投与され、例えば、週に複数回(例えば、週に2回または3回)、1週間に1回、2週間に1回、3週間に1回、または4週間に1回投与される。いくつかの、または、どの実施形態においても、約120mgから約210mgまでの範囲のスクレロスチン阻害剤(例えば、抗スクレロスチン抗体または抗体断片)の用量が週に2回投与される。いくつかの、または、どの実施形態においても、約140mgの用量のスクレロスチン阻害剤(例えば、抗スクレロスチン抗体または抗体断片)が週に2回投与される。いくつかの、または、どの実施形態においても、治療期間は12週間であり、スクレロスチンは所望により約140mgの用量で治療期間の第2週、第6週、および第12週に投与される。本明細書に記載される用量のうちのいずれも分割された用量として投与され得る。例えば、140mgの用量のスクレロスチン阻害剤は歯科医への通院の間に70mgのスクレロスチン阻害剤の2回の注射、または20mgのスクレロスチン阻害剤の7回の注射として投与され得る。
【0054】
いくつかの実施形態では、対象(例えば、哺乳類動物、例えばヒト)に投与されるスクレロスチン結合剤の用量は約0.1mg/kg体重から約100mg/kg体重まで、または約10mg/kg体重から約50mg/kg体重の範囲であり得る。例えば、スクレロスチン阻害剤(例えば、スクレロスチン結合剤)の用量は約0.1mg/kg体重から、約0.5mg/kg体重、約1mg/kg体重、約2mg/kg、約3mg/kg体重、約4mg/kg約5mg/kg体重、約6mg/kg、約7mg/kg、約8mg/kg、約9mg/kg体重、約10mg/kg体重、約20mg/kg体重、約25mg/kg体重、約26mg/kg体重、約27mg/kg体重、約28mg/kg体重、約29mg/kg体重、約30mg/kg体重、約31mg/kg体重、約32mg/kg体重、約33mg/kg体重、約34mg/kg体重、約35mg/kg体重、約36mg/kg体重、約37mg/kg体重、約38mg/kg体重、約39mg/kg体重、約40mg/kg体重、約41mg/kg体重、約42mg/kg体重、約43mg/kg体重、約44mg/kg体重、約45mg/kg体重、約46mg/kg体重、約47mg/kg体重、約48mg/kg体重、約49mg/kg体重、または約50mg/kg体重、約55mg/kg体重、約60mg/kg体重、約65mg/kg体重、約70mg/kg体重、約75mg/kg体重、約80mg/kg体重、約85mg/kg体重、約90mg/kg体重、または約95mg/kg体重、最大で約100mg/kg体重までの範囲であり得る。
【0055】
加えて、特定の患者に対して選択される治療計画に応じて複数用量のスクレロスチン結合剤を投与すること、または用量の投与に間隔をあけることは有利であり得る。例えば、ある用量のスクレロスチン阻害剤が、患者の疾患状態の重症度、年齢および身体的健康などに応じて4週間に1回、3週間に1回、2週間に1回、1週間に1回、または週に複数回(例えば、週に2回、週に3回、週に4回、またはそれ以上)投与され得る。
【0056】
いくつかの実施形態では、本対象は所望により、進行した歯周病、軟骨発育不全症、閉経後骨量喪失、口腔骨量喪失、顎の骨壊死、および加齢に伴う顎骨の喪失からなる群より選択される骨関連障害を患う。所望により、本対象は口腔外科手術または顎顔面外科出術を受けている、または受けたことがある。
【0057】
いくつかの実施形態では、本対象は所望により、若年性ページェット病、蝋流骨症、代謝性骨疾患、肥満細胞症、鎌状赤血球貧血症/病、器官移植関連骨喪失、腎臓移植関連骨喪失、全身性エリテマトーデス、強直性脊椎炎、てんかん、若年性関節炎、サラセミア、ムコ多糖症、ファブリー病、ターナー症候群、ダウン症、クラインフェルター症候群、ハンセン病、ペルテス病、青年期特発性側弯症、幼児期発症性多臓器性炎症性疾患、ウィンチェスター症候群、メンケス病、ウィルソン病、虚血性骨疾患(例えば、レッグ・カルヴェ・ペルテス病および限局性移動性骨粗鬆症)、貧血状態、ステロイド原因性健康状態、グルココルチコイド誘導性骨喪失、ヘパリン誘導性骨喪失、骨髄障害、壊血病、栄養不良、カルシウム欠乏、骨粗鬆症、骨質減少、アルコール中毒症、慢性肝臓病、閉経後状態、慢性炎症性疾患、リウマチ性関節炎、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、炎症性大腸炎、クローン病、希発月経、無月経、妊娠、真性糖尿病、甲状腺機能亢進症、甲状腺障害、副甲状腺障害、クッシング病、先端巨大症、性腺機能不全症、運動抑制または活動停止、反射性交感神経性ジストロフィー症候群、限局性骨粗鬆症、骨軟化症、関節置換に伴う骨喪失、HIV関連骨喪失、成長ホルモン喪失に伴う骨喪失、嚢胞性線維症に伴う骨喪失、化学療法関連骨喪失、腫瘍誘導性骨喪失、癌関連骨喪失、ホルモン除去性骨喪失、多発性骨髄腫、薬物誘導性骨喪失、神経性無食欲症、疾患関連顔面骨喪失、疾患関連頭骨喪失、疾患関連顎骨喪失、疾患関連頭蓋骨喪失、加齢に伴う骨喪失、加齢に伴う顔面骨喪失、加齢に伴う頭骨喪失、鎖骨頭蓋異骨症、内軟骨膜症、線維性異形成症、ゴーシェ病、低リンパ血症性くる病、マルファン症候群、遺伝性多発性外骨腫、神経線維腫症、骨形成不全症、大理石骨病、骨斑症、硬化性病変、偽関節症、化膿性骨髄炎、歯周病、抗てんかん薬誘導性骨喪失、原発性および続発性副甲状腺機能亢進症、家族性副甲状腺機能亢進症候群、無重力誘導性骨喪失、男性骨粗鬆症、骨関節炎、腎性骨形成異常症、侵襲性骨障害、加齢に伴う頭蓋骨喪失、および宇宙旅行に伴う骨喪失からなる群より選択される続発性症状を患う。
【0058】
いくつかの実施形態では、対象は所望により癌を患う(または患ったことがある)。「癌」という用語は、制御されていない細胞増殖、抑制されていない細胞増殖、および細胞死/アポトーシスの減少に伴う増殖性障害を指す。癌には乳癌、前立腺癌、肺癌、腎臓癌、甲状腺癌、黒色腫、濾胞性リンパ腫、限定されないが、結腸癌、心臓腫瘍、膵臓癌、網膜芽細胞腫、神経膠芽腫、腸癌、精巣癌、胃癌、神経芽細胞腫、粘液腫、筋腫、リンパ腫、内皮腫、骨芽細胞腫、破骨細胞腫、骨肉腫、軟骨肉腫、腺腫、カポジ肉腫、卵巣癌、白血病(急性白血病(例えば、急性リンパ球性白血病、骨髄芽球性白血病、前骨髄球性白血病、骨髄単球性白血病、単球性白血病、および赤白血病を含む急性骨髄性白血病)を含む)および慢性白血病(例えば、慢性骨髄性(顆粒球性)白血病および慢性リンパ球性白血病)、骨髄異型性症候群真性多血症、リンパ腫(例えば、ホジキン病および非ホジキン病)、多発性骨髄腫、ワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症、重鎖病を含むp53突然変異による癌およびホルモン依存性腫瘍、ならびに、限定されないが、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、骨原性肉腫、軟骨腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原性癌、腎細胞癌、肝癌、胆管癌、絨毛癌、精上皮腫、胎生期癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸部癌、小細胞性肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫、希突起神経膠腫、および髄膜腫などの肉腫および癌を含む固形腫瘍が含まれるが、これらに限定されない。「転移」および「癌転移」という用語は、他の組織に拡がる癌細胞の能力を指すために本明細書において互換的に使用される。例えば、「骨への転移」は、限定されないが、乳癌、前立腺癌、肺癌、腎臓癌、甲状腺癌、および黒色腫を含むある特定の種類の癌の骨に転移する能力を指す。
【0059】
本明細書に記載される方法は、心血管系疾患、脳卒中、肺疾患、炎症性疾患および全身性エリテマトーデスなどの全身性障害に伴う歯周病、真性糖尿病などの代謝性障害に伴う歯周病、および、例えば、閉経に関連するホルモン変化に伴う歯周病を含む他の型の歯周病にも適用可能である。抗けいれん薬、カルシウムチャネル遮断薬、およびサイクロスポリンなどのある特定の薬品の使用は、例えば、HIVにより引き起こされた免疫系の障害を含むある特定の血液学的障害と同じように、歯肉の過形成または歯周病のリスクを上昇させることもあり得る。前述の障害を患っている対象、または患う危険がある対象の本明細書に記載されるスクレロスチン阻害剤による治療が具体的に企図されている。
【0060】
いくつかの実施形態では、本対象は所望により溶骨性障害を患う。「溶骨性障害」という用語は、本明細書において使用される場合、骨吸収に関与する細胞である破骨細胞の活性の上昇を引き起こすあらゆる病気を指す。「溶骨」および「溶骨性骨喪失」という用語は、破骨細胞介在性骨吸収または溶骨性障害に伴う骨喪失を指すために互換的に使用される。溶骨性障害は溶骨性障害を発生する傾向を有する対象において生じる、またはそれらは破骨細胞の活性を刺激することによって溶骨性障害を引き起こす、または溶骨性障害に寄与する疾患を有する対象において生じる。いくつかの実施形態では、溶骨性障害は溶骨性骨喪失である。他の実施形態では、溶骨性障害は癌転移誘導性溶骨性骨喪失である。さらなる実施形態では、溶骨性骨障害は、内分泌障害(例えば、副腎皮質ホルモン過剰症、性腺機能不全症、原発性または続発性副甲状腺機能亢進症、および甲状腺機能亢進症);くる病、骨軟化症、壊血病、および栄養不良を含むが、これらに限定されない食餌障害;骨粗鬆症;グルココルチコイド(グルココルチコイド誘導性骨粗鬆症)、ヘパリン、およびアルコールを含む薬物の使用;吸収不良症候群を含む慢性疾患;腎性骨形成異常症を含む慢性腎不全;肝性骨形成異常症を含む慢性肝臓病;骨形成不全症およびホモシスチン尿症を含む遺伝病;ならびに関節炎、リウマチ性関節炎、乾癬性関節炎、線維性異形成症、歯周病、およびページェット病に伴う骨炎を含むが、これらに限定されない代謝性骨疾患である。
【0061】
「転移誘導性溶骨性骨喪失」および「癌転移誘導性溶骨性骨喪失」という用語は、癌細胞の骨への転移により生じる溶骨または溶骨性骨喪失を指すために本明細書において互換的に使用される。「癌転移誘導性破骨細胞活性化」という用語は、破骨細胞の活性化を誘導する骨に転移した癌細胞の能力を指すために本明細書において使用される。
【0062】
本明細書に記載される方法は、ある量の「スクレロスチン阻害剤」を投与することを含む。本明細書において使用される場合、「スクレロスチン阻害剤」という用語は、骨のミネラル化、骨密度、骨の高さ、骨芽細胞および/または破骨細胞への効果、骨形成のマーカー、骨吸収のマーカー、骨芽細胞活性のマーカー、および/または破骨細胞活性のマーカーに対する変化によって測定される、スクレロスチンの骨に対する生物活性を阻害するあらゆる分子を意味する。そのような阻害剤はスクレロスチンまたはその受容体または結合相手への結合によって作用し得る。このカテゴリーの阻害剤には、例えば、抗体またはペプチド系の分子などの「スクレロスチン結合剤」が含まれる。「スクレロスチン阻害剤」は、スクレロスチンに結合し、その活性を阻害する所望により約1000ダルトン未満の分子量の小有機化学化合物も指す。阻害剤は、あるいは、スクレロスチンの発現を阻害することによって作用し得る。このカテゴリーの阻害剤には、限定されないが、アンチセンスオリゴヌクレオチド、阻害性RNA、DNA酵素(デオキシリボザイム)、リボザイム、アプタマー、またはスクレロスチンの発現を阻害する薬学的に許容可能なそれらの塩を含む、スクレロスチンDNAまたはmRNAに結合し、スクレロスチンの発現を阻害するポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドが含まれる。
【0063】
「スクレロスチン結合剤」は、ヒトスクレロスチンの1つ以上のリガンドへの結合を阻止または妨害するためにスクレロスチンまたはその部分に結合する。SOST遺伝子の産物であるスクレロスチンは、骨の過成長と高骨密度を特徴とする骨格性疾患である硬結性骨化症には存在しない(Brunkow et al., Am. J. Hum. Genet., 68:577-589 (2001)、 Balemans et al., Hum. Mol. Genet., 10:537-543 (2001))。ヒトスクレロスチンのアミノ酸配列はBrunkowらによって報告されており、米国特許出願公開第20070110747号に配列番号1として開示されている(その特許出願公開はそのスクレロスチン結合剤の記載と配列表について全体が組み込まれる)。組換えヒトスクレロスチン/SOSTはR&Dシステムズ社(米国、ミネソタ州、ミネアポリス;2006年版カタログ番号1406‐ST‐025)から市販されている。さらに、組換えマウススクレロスチン/SOSTはR&Dシステムズ社(米国、ミネソタ州、ミネアポリス;2006年版カタログ番号1589‐ST‐025)から市販されている。研究グレードのスクレロスチン結合モノクローナル抗体はR&Dシステムズ社(米国、ミネソタ州、ミネアポリス;マウスモノクローナル抗体:2006年版カタログ番号MAB1406;ラットモノクローナル抗体:2006年版カタログ番号MAB1589)から市販されている。米国特許第6,395,511号、および第6,803,453号、および米国特許出願公開第20040009535号、および第20050106683号は全般的に抗スクレロスチン抗体に言及する。本発明の内容での使用に適切なスクレロスチン結合剤の例は米国特許出願公開第20070110747号、および第20070072797号にも記載されており、それらの特許出願公開は参照によりここに組み込まれる。スクレロスチン結合剤を作製するための材料と方法に関するさらなる情報は米国特許出願公開第20040158045号(参照によりここに組み込まれる)に見出され得る。
【0064】
本発明のスクレロスチン結合剤は抗体であることが好ましい。「抗体」という用語は完全抗体またはその結合断片を指す。抗体は完全抗体(免疫グロブリン)分子(重鎖および/または軽鎖の全長を有するポリクローナル型、モノクローナル型、キメラ型、ヒト化型、および/またはヒト型を含む)を含み得る、またはその抗原結合断片を含み得る。抗体断片はF(ab’)断片、Fab断片、Fab’断片、Fv断片、Fc断片、およびFd断片を包含し、そして、単一ドメイン抗体(例えば、ナノボディ)、単鎖抗体、マキシボディ、ミニボディ、イントラボディ、ディアボディ、トリアボディ、テトラボディ、v‐NARおよびビス‐scFvに組み込まれ得る(例えば、 Hollinger and Hudson, Nature Biotechnology, 23(9):1126-1136 (2005)を参照のこと)。抗体ポリペプチドは、フィブロネクチンポリペプチドモノボディを含み、米国特許第6,703,199号にも開示されている。他の抗体ポリペプチドは米国特許出願公開第20050238646号に開示されている。米国特許第6,395,511号および第6,803,453号、および米国特許出願公開第20040009535号および第20050106683(それらの抗スクレロスチン抗体の開示について参照により全体が組み込まれる)は全般的に抗スクレロスチン抗体に言及する。ヒトスクレロスチンのアミノ酸配列は配列表の配列番号1に示されており、米国特許出願公開第20070110747号の配列番号1として提供されている(その特許出願公開はそのスクレロスチンおよびスクレロスチン結合剤および配列表の記載について全体が組み込まれる)。抗スクレロスチン抗体の作製についての材料と方法に関するさらなる情報は米国特許出願公開第20040158045号に見出され得る(全体の参照によりここに組み込まれる)。
【0065】
抗体断片は合成タンパク質、または遺伝子操作したタンパク質であり得る。例えば、抗体断片には軽鎖可変領域からなる単離断片、重鎖と軽鎖の可変領域からなる「Fv」断片、および軽鎖と重鎖の可変領域がペプチドリンカーによって連結されている組換え単鎖ポリペプチド分子(scFvタンパク質)が含まれる。
【0066】
別の方の抗体断片は抗体の1つ以上の相補性決定領域s(CDR)を含むペプチドである。CDR(「最少認識単位」または「超可変領域」とも呼ばれる)は、例えば、目的のCDRをコードするポリヌクレオチドを構築することによって得られる。そのようなポリヌクレオチドは、例えば、抗体産生細胞のmRNAを鋳型として使用してその可変領域を合成するためにポリメラーゼ連鎖反応使用することによって調製される(例えば、Larrick et al., Methods: A Companion to Methods in Enzymology, 2:106 (1991)、Monoclonal Antibodies Production, Engineering and Clinical Application, Ritter ら (編), 166頁内のCourtenay-Luck, "Genetic Manipulation of Monoclonal Antibodies," Cambridge University Press (1995)、およびMonoclonal Antibodies: Principles and Applications, Birch et al., (編), 137頁内のWard et al., "Genetic Manipulation and Expression of Antibodies," Wiley-Liss, Inc. (1995)を参照のこと)。
【0067】
抗スクレロスチン抗体は配列番号1のスクレロスチン、または天然のその変異体に1×10−7M以下、1×10−8M以下、1×10−9M以下、1×10−10M以下、1×10−11M以下、または1×10−12M以下の親和性(Kd)で結合し得る。親和性は様々な技法を用いて決定され、それらの技法の一例は親和性ELISAアッセイである。様々な実施形態において、親和性はBIAcoreアッセイによって決定される。様々な実施形態において、親和性は反応速度論的方法によって決定される。様々な実施形態において、親和性は平衡/濃度法によって決定される。米国特許出願公開第20070110747号はスクレロスチンへの抗体の親和性(Kd)を決定するために適切な親和性アッセイについてのさらなる記載を含有する。
【0068】
いくつかの、または、どの実施形態においても、抗スクレロスチン抗体または抗体断片は配列番号1に示されるアミノ酸配列を含むスクレロスチンポリペプチドに結合し、配列番号6(CGPARLLPNAIGRGKWWRPSGPDFRC;配列番号1のアミノ酸86〜111に対応する)の配列に結合する。代替的に、または加えて、抗スクレロスチン抗体は配列番号1のアミノ酸57〜146を含むスクレロスチンポリペプチドに結合する。代替的に、または加えて、抗スクレロスチン抗体は配列番号1のアミノ酸89〜103および/または配列番号1のアミノ酸137〜151を含むスクレロスチンポリペプチドに結合する。代替的に、または加えて、抗スクレロスチン抗体は配列番号1に示されるアミノ酸配列を含むスクレロスチンポリペプチドに結合し、配列番号1内の配列番号2(DVSEYSCRELHFTR;配列番号1のアミノ酸51〜64に対応する)、配列番号3(SAKPVTELVCSGQCGPAR;配列番号1のアミノ酸73〜90に対応する)、配列番号4(WWRPSGPDFRCIPDRYR;配列番号1のアミノ酸101〜117に対応する)、配列番号5(LVASCKCKRLTR;配列番号1のアミノ酸138〜149に対応する)、配列番号70(SAKPVTELVCSGQC;配列番号1のアミノ酸73〜86に対応する)、配列番号71(LVASCKC;配列番号1のアミノ酸138〜144に対応する)、配列番号72(C1RELHFTR;配列番号1のアミノ酸57〜64に対応する)、または配列番号73(CIPDRYR;配列番号1のアミノ酸111〜117に対応する)のうちの少なくとも1つの配列に結合する。例えば、1つの態様では、抗スクレロスチン抗体は配列番号2〜5(および/または配列番号70〜73)を含む配列番号1のスクレロスチンの、所望によりその天然の三次元構造を保つ小領域に結合する。所望により、抗スクレロスチン抗体は、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号70、配列番号71、配列番号72、または配列番号73のうちの1つ以上からなるペプチド(例えば、配列番号2、配列番号3、配列番号4および配列番号5からなるペプチド、または配列番号70、配列番号71、配列番号72および配列番号73からなるペプチド)に結合する。
【0069】
いくつかの、または、どの実施形態においても、抗スクレロスチン抗体は、配列番号2、配列番号3、配列番号4および配列番号5のアミノ酸配列を有し、配列番号2と4が配列番号1のアミノ酸位置57および111においてジスルフィド結合により連結されており、そして、配列番号3と5が(a)配列番号1のアミノ酸位置82および142におけるジスルフィド結合、および(b)配列番号1のアミノ酸位置86および144におけるジスルフィド結合のうちの少なくとも1つにより連結されているスクレロスチンポリペプチドであって、配列番号1のヒトスクレロスチンの対応するポリペプチド領域の三次構造を保持し得るスクレロスチンポリペプチドに結合する。代替的に、または加えて、スクレロスチン結合剤(例えば、抗スクレロスチン抗体)は、配列番号70、配列番号71、配列番号72および配列番号73のアミノ酸配列を有し、配列番号72と73が配列番号1のアミノ酸位置57および111におけるジスルフィド結合により連結されており、そして、配列番号70と71が(a)配列番号1のアミノ酸位置82および142におけるジスルフィド結合、および(b)配列番号1のアミノ酸位置86および144におけるジスルフィド結合のうちの少なくとも1つにより連結されているポリペプチドに結合する。
【0070】
所望により、抗スクレロスチン抗体は、配列番号2、配列番号3、配列番号4および配列番号5のアミノ酸配列から基本的になり、配列番号2と4が配列番号1のアミノ酸位置57および111においてジスルフィド結合により連結されており、そして、配列番号3と5が(a)配列番号1のアミノ酸位置82および142におけるジスルフィド結合、および(b)配列番号1のアミノ酸位置86および144におけるジスルフィド結合のうちの少なくとも1つにより連結されているペプチドに結合する。
【0071】
所望により、抗スクレロスチン抗体は、複数の箇所が切断された配列番号1のヒトスクレロスチンタンパク質から基本的になるポリペプチドであって、(a)配列番号1のアミノ酸1〜50、65〜72、91〜100、118〜137、および150〜190が前記ポリペプチドより欠如している、または(b)配列番号1のアミノ酸1〜56、65〜72、87〜110、118〜137、および145〜190が前記ポリペプチドより欠如しているポリペプチドに結合する。
【0072】
いくつかの、または、どの実施形態においても、抗スクレロスチン抗体は、配列番号70、配列番号71、配列番号72および配列番号73のアミノ酸配列を有するポリペプチドであって、配列番号72と73が配列番号1のアミノ酸位置57および111におけるジスルフィド結合により連結されており、そして、配列番号70と71が(a)配列番号1のアミノ酸位置82および142におけるジスルフィド結合、および(b)配列番号1のアミノ酸位置86および144におけるジスルフィド結合のうちの少なくとも1つによって連結されているポリペプチドに結合する。
【0073】
いくつかの、または、どの実施形態においても、そのポリペプチドは配列番号1のヒトスクレロスチンの対応するポリペプチド領域の三次構造を保持する。
【0074】
いくつかの、または、どの実施形態においても、抗スクレロスチン抗体は、
(i)配列番号1のアミノ酸51〜64、73〜90、101〜117、および138〜149を含むヒトスクレロスチンの部分であって:
(a)アミノ酸57と111の間のジスルフィド結合、
(b)アミノ酸82と142の間のジスルフィド結合、および
(c)アミノ酸86と144の間のジスルフィド結合、
のうちの少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てを有する前記部分、または
(ii)配列番号1のアミノ酸57〜64、73〜86、111〜117、および138〜144を含むヒトスクレロスチンの部分であって:
(a)アミノ酸57と111の間のジスルフィド結合、
(b)アミノ酸82と142の間のジスルフィド結合、および
(c)アミノ酸86と144の間のジスルフィド結合
のうちの少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てを有する前記部分に結合する。
【0075】
いくつかの、または、どの実施形態においても、抗スクレロスチン抗体配列番号6のエピトープにも結合する。
【0076】
本明細書に記載される方法において使用される抗スクレロスチン抗体は米国特許出願公開第2007/0110747号に記載される細胞系アッセイ法および/もしくは米国特許出願公開第20070110747号に記載されるインビボアッセイ法においてスクレロスチン機能を調節し、および/または米国特許出願公開第2007/0110747号に記載されるエピトープのうちの1つ以上に結合し、および/または米国特許出願公開第2007/0110747号に記載される抗体のうちの1つの結合を交差妨害し、および/または米国特許出願公開第2007/0110747号に記載される抗体のうちの1つによってスクレロスチンへの結合を交差阻止される(その全体の参照により、および、抗スクレロスチン抗体の特徴解析のためのアッセイ法のその記述について組み込まれる)ことが好ましい。
【0077】
様々な態様において、ウェル当たりのスクレロスチンのモル数と比べてウェル当たり6倍過剰よりも少ないモル数のスクレロスチン結合部位が存在するとき、抗スクレロスチン抗体はMC3T3細胞ベースのミネラル化アッセイにおいてヒトスクレロスチンを中和することができる。培養中の骨芽細胞系列細胞によるミネラル化は、初代細胞にしろ、細胞株にしろ、骨形成のインビトロモデルとして用いられる。例となる細胞系ミネラル化アッセイは米国特許出願公開第20070110747号中に、例えば、実施例8(参照によりここに組み込まれる)において記載されている。MC3T3‐E1細胞 (Sudo et al., J. Cell Biol., 96:191-198 (1983))および初代の細胞株のサブクローンは分化誘導剤の存在下で培養されると培養中にミネラルを形成することができる。そのようなサブクローンにはMC3T3‐E1‐BF (Smith et al., J. Biol. Chem., 275:19992-20001 (2000))が含まれる。MC3T3‐E1‐BFサブクローンならびに大元のMC3T3‐E1細胞の両方について、スクレロスチンは、最大でミネラル沈着まで至る、ミネラル沈着を含む一連の事象のうちの1つ以上を阻害することができる(すなわち、スクレロスチンがミネラル化を阻害する)。スクレロスチンの阻害性活性を中和することができる抗スクレロスチン抗体は、スクレロスチンの存在下で培養物のミネラル化を可能にし、その結果、スクレロスチンのみによる処置(すなわち、抗体で処置されていない)群において測定されたカルシウムの量と比べて、例えば、(カルシウムとして測定される)リン酸カルシウムの沈着の統計的に有意な増加が存在する。
【0078】
特定の抗スクレロスチン抗体(または他のスクレロスチン阻害剤)がスクレロスチンを中和化することができるか判定することを目標とするアッセイ法が実施されるとき、そのアッセイ法において使用されるスクレロスチンの量は、スクレロスチン無しの群において測定されたカルシウムの量と比べて少なくとも70%の、統計学的に有意な(カルシウムとして測定される)リン酸カルシウムの沈着の減少をスクレロスチンのみの群において引き起こすスクレロスチンの最少量であることが望ましい。抗スクレロスチン中和抗体は、スクレロスチンのみで処置された(すなわち、抗体で処置されていない)群において測定されたカルシウムの量と比べて(カルシウムとして測定される)リン酸カルシウムの沈着の統計学的に有意な増加を引き起こす抗体として定義される。抗スクレロスチン抗体が中和性であるかどうか判定するため、アッセイ法において用いられる抗スクレロスチン抗体の量は、ウェル当たりのスクレロスチンのモル数と比べてウェル当たり過剰モル数のスクレロスチン結合部位が存在するようなものである必要がある。その抗体の力価に応じて、その必要とされ得る過剰倍率は24倍、18倍、12倍、6倍、3倍、または1.5倍であり得、そして、当業者は1つよりも多い結合剤(抗体)の濃度の試験の日常的な実施について知っている。例えば、非常に強力な抗スクレロスチン中和抗体は、ウェル当たりのスクレロスチンのモル数と比べてウェル当たり6倍過剰よりも少ないモル数のスクレロスチン結合部位が存在するとき、スクレロスチンを中和する。あまり強力ではない抗スクレロスチン中和抗体は12倍、18倍または24倍過剰のときにのみスクレロスチンを中和する。
【0079】
抗スクレロスチン抗体は所望により骨特異的アルカリホスファターゼアッセイ法、例えば、国際特許公開第2008/115732号および米国特許第7,744,874号(アッセイ法と抗スクレロスチン抗体のその記載についてその全体の参照により本明細書に組み込まれる)に記載される骨特異的アルカリホスファターゼアッセイ法などの細胞系アッセイ法においてヒトスクレロスチンの中和について100nM以下、または75nM以下、または50nM以下、または25nM以下のIC50を有する。その骨特異的アルカリホスファターゼアッセイ法は、多分化性マウス細胞株C2C12においてBMP‐4およびWnt3a誘導性アルカリホスファターゼレベルを低下させるスクレロスチンの能力に基づく。国際公開第2008/115732号によれば、中和抗スクレロスチン抗体はこのアッセイにおいてアルカリホスファターゼ活性の用量依存的上昇を仲介する。例となる細胞系アッセイ法のプロトコルは実施例1において提供される。
【0080】
代替的に、または加えて、抗スクレロスチン抗体は、例えば、国際特許公開第2009/047356号(抗スクレロスチン抗体と細胞系アッセイ法についてのその考察について参照により組み込まれる)に記載される、STFレポーター遺伝子のWnt1介在性誘導を伴うWntアッセイ法などのHEK293細胞株における細胞系Wntシグナル伝達アッセイ法においてヒトスクレロスチンの中和について100nM以下(例えば、75nM以下、または50nM以下)のIC50を有する。代替的に、または加えて、抗スクレロスチン抗体は、例えば、国際特許公開第2009/047356号に記載されるミネラル化アッセイなどのMC3T3細胞におけるBMP2誘導性ミネラル化アッセイにおいてヒトスクレロスチンの中和について500nM以下(例えば、250nM以下、150nM以下、100nM以下、または50nM以下)のIC50を有する。例となるプロトコルは実施例1において提供される。
【0081】
本発明の内容での使用に適切な抗スクレロスチン抗体の例は米国特許出願公開第2007/0110747号および第2007/0072797号に記載されており、それらの特許出願公開は参照によりここに組み込まれる。本発明の1つの実施形態では、抗スクレロスチン抗体は抗体Ab‐A、Ab‐B、Ab‐C、Ab‐D、Ab‐1、Ab‐2、Ab‐3、Ab‐4、Ab‐5、Ab‐6、Ab‐7、Ab‐8、Ab‐9、Ab‐10、Ab‐11、Ab‐12、Ab‐13、Ab‐14、Ab‐15、Ab‐16、Ab‐17、Ab‐18、Ab‐19、Ab‐20、Ab‐21、Ab‐22、Ab‐23、およびAb‐24(それらの全てが米国特許出願公開第20070110747号に記載される)のうちの少なくとも1つのスクレロスチンへの結合を交差妨害する。代替的に、または加えて、抗体Ab‐A、Ab‐B、Ab‐C、Ab‐D、Ab‐1、Ab‐2、Ab‐3、Ab‐4、Ab‐5、Ab‐6、Ab‐7、Ab‐8、Ab‐9、Ab‐10、Ab‐11、Ab‐12、Ab‐13、Ab‐14、Ab‐15、Ab‐16、Ab‐17、Ab‐18、Ab‐19、Ab‐20、Ab‐21、Ab‐22、Ab‐23、およびAb‐24(それらの全てが米国特許出願公開第20070110747号に記載される)のうちの少なくとも1つによって抗スクレロスチン抗体のスクレロスチンへの結合が交差妨害される。「交差妨害する」、「交差妨害された」および「交差妨害している」という用語は、ある抗体の他の抗体のスクレロスチンへの結合を妨害する能力を意味するために本明細書において互換的に使用される。抗体が別の抗体のスクレロスチンへの結合を妨害することができ、そのため、交差妨害すると言われ得る、その妨害の程度は競合結合アッセイ法を用いて決定され得る。本発明のいくつかの態様では、交差妨害性抗体またはその断片は基準抗体のスクレロスチン結合を約40%と約100%の間、例えば約60%と約100%の間、具体的には70%と100%の間、およびより具体的には80%と100%の間減少させる。交差妨害を検出するための特に適切な定量的アッセイ法は、表面プラズモン共鳴技術を用いて相互作用の程度を測定するBiacore機械を使用する。別の適切な定量的交差妨害アッセイ法は、抗体間の競合をそれらのスクレロスチンへの結合に関して測定するELISA系アプローチを用いる。
【0082】
いくつかの、または、どの実施形態においても、抗スクレロスチン抗体は重鎖および軽鎖の全長を含む配列番号1のスクレロスチンに対する免疫グロブリンの結合を交差妨害し、および/または重鎖および軽鎖の全長を含む免疫グロブリンによって配列番号1のスクレロスチンへの抗スクレロスチン抗体の結合が交差妨害され、その中で重鎖および軽鎖の全長を含むその免疫グロブリンは本明細書において開示されるCDR配列、例えば次の3組のCDR配列のうちの1つを含む:(a)配列番号284のCDR‐L1、配列番号285のCDR‐L2、配列番号286のCDR‐L3、配列番号296のCDR‐H1、配列番号297のCDR‐H2、および配列番号298のCDR‐H3;(b)配列番号48のCDR‐L1、配列番号49のCDR‐L2、配列番号50のCDR‐L3、配列番号45のCDR‐H1、配列番号46のCDR‐H2、および配列番号47のCDR‐H3;または(c)配列番号42のCDR‐L1、配列番号43のCDR‐L2、配列番号44のCDR‐L3、配列番号39のCDR‐H1、配列番号40のCDR‐H2、および配列番号41のCDR‐H3。代替的に、または加えて、抗スクレロスチン抗体は重鎖および軽鎖の全長を含む配列番号1のスクレロスチンに対する免疫グロブリンの結合を交差妨害し、および/または重鎖および軽鎖の全長を含む免疫グロブリンによって配列番号1のスクレロスチンへの抗スクレロスチン抗体の結合が交差妨害され、その中で重鎖および軽鎖の全長を含むその免疫グロブリンは次のCDRを含む:配列番号245のCDR‐H1、配列番号246のCDR‐H2、配列番号247のCDR‐H3、配列番号78のCDR‐L1、配列番号79のCDR‐L2および配列番号80のCDR‐L3。
【0083】
代替的に、または加えて、抗スクレロスチン抗体は重鎖および軽鎖の全長を含む配列番号1のスクレロスチンに対する免疫グロブリンの結合を交差妨害し、および/または重鎖および軽鎖の全長を含む免疫グロブリンによって配列番号1のスクレロスチンへの抗スクレロスチン抗体の結合が交差妨害され、その中で重鎖および軽鎖の全長を含むその免疫グロブリンは次のCDRを含む:配列番号269のCDR‐H1、配列番号270のCDR‐H2、配列番号271のCDR‐H3、配列番号239のCDR‐L1、配列番号240のCDR‐L2および配列番号241のCDR‐L3。
【0084】
適切な抗スクレロスチン抗体およびそれらの断片の例には本明細書において具体的に開示され、米国特許出願公開第20070110747号において開示されるCDR‐H1、CDR‐H2、CDR‐H3、CDR‐L1、CDR‐L2およびCDR‐L3のうちの1つ以上を有する抗体および抗体断片が含まれる。CDR‐H1、CDR‐H2、CDR‐H3、CDR‐L1、CDR‐L2、およびCDR‐L3の領域のうちの少なくとも1つが、その抗体が非置換CDRの結合特異性を保持することを条件として少なくとも1つのアミノ酸置換を有し得る。例となる抗スクレロスチン抗体には米国特許出願公開第20070110747号のAb‐A、Ab‐B、Ab‐C、Ab‐D、Ab‐1、Ab‐2、Ab‐3、Ab‐4、Ab‐5、Ab‐6、Ab‐7、Ab‐8、Ab‐9、Ab‐10、Ab‐11、Ab‐12、Ab‐13、Ab‐14、Ab‐15、Ab‐16、Ab‐17、Ab‐18、Ab‐19、Ab‐20、Ab‐21、Ab‐22、Ab‐23、およびAb‐24が含まれるが、これらに限定されない。
【0085】
加えて、抗スクレロスチン抗体は、配列表において提供され、米国特許出願公開第20070110747号において開示される配列番号39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、78、79、80、81、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258、259、260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285、286、287、288、289、290、291、292、293、294、295、296、297、298、351、352、353、358、359、および360から選択されるCDRに対して少なくとも75%の同一性(例えば、100%の同一性)を有する少なくとも1つのCDR配列を含み得る。好ましくは、抗スクレロスチン抗体は、全て配列表において提供され、米国特許出願公開第20070110747号に記載される配列番号245、246、247、78、79、80、269、270、271、239、240、および241から選択されるCDRに対して少なくとも75%の同一性を有する少なくとも1つのCDR配列を含む。米国特許出願公開第20070110747号に記載されるように、抗スクレロスチン抗体は(a)配列番号54、55、および56からなるCDR配列ならびに配列番号51、52、および53からなるCDR配列;(b)配列番号60、61、および62からなるCDR配列ならびに配列番号57、58、および59からなるCDR配列;(c)配列番号48、49、および50からなるCDR配列ならびに配列番号45、46、および47からなるCDR配列;(d)配列番号42、43、および44からなるCDR配列ならびに配列番号39、40、および41からなるCDR配列;(e)配列番号275、276、および277からなるCDR配列ならびに配列番号287、288、および289からなるCDR配列;(f)配列番号278、279、および280からなるCDR配列ならびに配列番号290、291、および292からなるCDR配列;(g)配列番号78、79、および80からなるCDR配列ならびに配列番号245、246、および247からなるCDR配列;(h)配列番号81、99、および100からなるCDR配列ならびに配列番号248、249、および250からなるCDR配列;(i)配列番号101、102、および103からなるCDR配列ならびに配列番号251、252、および253からなるCDR配列;(j)配列番号104、105、および106からなるCDR配列ならびに配列番号254、255、および256からなるCDR配列;(k)配列番号107、108、および109からなるCDR配列ならびに配列番号257、258、および259からなるCDR配列;(l)配列番号110、111、および112からなるCDR配列ならびに配列番号260、261、および262からなるCDR配列;(m)配列番号281、282、および283からなるCDR配列ならびに配列番号293、294、および295からなるCDR配列;(n)配列番号113、114、および115からなるCDR配列ならびに配列番号263、264、および265からなるCDR配列;(o)配列番号284、285、および286からなるCDR配列ならびに配列番号296、297、および298からなるCDR配列;(p)配列番号116、237、および238からなるCDR配列ならびに配列番号266、267、および268からなるCDR配列;(q)配列番号239、240、および241からなるCDR配列ならびに配列番号269、270、および271からなるCDR配列、)配列番号242、243、および244からなるCDR配列ならびに配列番号272、273、および274からなるCDR配列;または(s)配列番号351、352、および353からなるCDR配列ならびに配列番号358、359、および360からなるCDR配列を含み得る。
【0086】
抗スクレロスチン抗体は、CDR‐H1、CDR‐H2、CDR‐H3、CDR‐L1、CDR‐L2、およびCDR‐L3から選択されるCDRに対して少なくとも75%の同一性を有する(例えば、100%同一である)少なくとも1つのCDR配列を含むことができ、その抗スクレロスチン抗体の中でCDR‐H1は配列番号245で示される配列を有し、CDR‐H2は配列番号246で示される配列を有し、CDR‐H3は配列番号247で示される配列を有し、CDR‐L1は配列番号78で示される配列を有し、CDR‐L2は配列番号79で示される配列を有し、そして、CDR‐L3は配列番号80で示される配列を有し、それらの全てが配列表において提供され、米国特許出願公開第20070110747号に記載される。様々な態様において、抗スクレロスチン抗体はそれらのCDRのうちの2つ、またはそれらのCDRのうちの6つを含む。所望により、抗スクレロスチン抗体は、配列番号378を含む重鎖(例えば、2本の重鎖)の全体または一部、および配列番号376を含む軽鎖(例えば、2本の軽鎖)の全体または一部を含む。
【0087】
抗スクレロスチン抗体は、CDR‐H1、CDR‐H2、CDR‐H3、CDR‐L1、CDR‐L2、およびCDR‐L3から選択されるCDRに対して少なくとも75%の同一性を有する(例えば、100%同一である)少なくとも1つのCDR配列を含むことができ、その抗スクレロスチン抗体の中でCDR‐H1は配列番号269で示される配列を有し、CDR‐H2は配列番号270で示される配列を有し、CDR‐H3は配列番号271で示される配列を有し、CDR‐L1は配列番号239で示される配列を有し、CDR‐L2は配列番号240で示される配列を有し、そして、CDR‐L3は配列番号241で示される配列を有し、それらの全てが配列表において提供され、米国特許出願公開第20070110747号に記載される。様々な態様において、抗スクレロスチン抗体は、それらのCDRのうちの少なくとも2つ、またはそれらのCDRのうちの6つを含む。所望により、抗スクレロスチン抗体は、配列番号366を含む重鎖(例えば、2本の重鎖)の全体または一部、および配列番号364を含む軽鎖(例えば、2本の軽鎖)の全体または一部を含む。
【0088】
あるいは、抗スクレロスチン抗体は、(米国特許出願公開第20070110747号に記載されるように)CDRのH1、H2、およびH3を含む重鎖であって、配列番号137、145、または392に提供される配列を有するポリペプチド、または中のCDRが配列番号245、246、および247に対してそれぞれ少なくとも75%同一である(例えば、100%同一である)そのポリペプチドの変異体を含む重鎖、ならびにCDRのL1、L2およびL3を含む軽鎖であって、配列番号133または141に提供される配列を有するポリペプチド、または中のCDRが配列番号78、79、および80に対してそれぞれ少なくとも75%同一である(例えば、100%同一である)そのポリペプチドの変異体を含む軽鎖を含み得る。
【0089】
抗スクレロスチン抗体は、(米国特許出願公開第20070110747号に記載されるように)CDRのH1、H2、およびH3を含む重鎖であって、配列番号335、331、345、または396に提供される配列を有するポリペプチド、または中のCDRが配列番号269、270、および271に対してそれぞれ少なくとも75%同一である(例えば、100%同一である)前述のいずれかの変異体を含む重鎖、ならびにCDRのL1、L2、およびL3を含む軽鎖であって、配列番号334または341に提供される配列を有するポリペプチド、または中のCDRが配列番号239、240、および241に対してそれぞれ少なくとも75%同一である(例えば、100%同一である)前述のいずれかの変異体を含む軽鎖を有し得る。重鎖配列および軽鎖配列の全ての組合せが企図される(例えば、配列番号335を含む重鎖および配列番号334を含む軽鎖、配列番号331を含む重鎖および配列番号334または341を含む軽鎖、ならびに配列番号345または396を含む重鎖および配列番号341を含む軽鎖)。
【0090】
あるいは、抗スクレロスチン抗体は(米国特許出願公開第20070110747号に記載されるように)配列番号137において提供される配列を有するポリペプチドを含む重鎖、および配列番号133において提供される配列を有するポリペプチドを含む軽鎖;配列番号145または392において提供される配列を有するポリペプチドを含む重鎖、および配列番号141に提供される配列を有するポリペプチドを含む軽鎖;配列番号335において提供される配列を有するポリペプチドを含む重鎖、および配列番号334において提供される配列を有するポリペプチドを含む軽鎖;配列番号331において提供される配列を有するポリペプチドを含む重鎖、および配列番号341において提供される配列を有するポリペプチドを含む軽鎖;または配列番号345もしくは396において提供される配列を有するポリペプチドを含む重鎖、および配列番号341において提供される配列を有するポリペプチドを含む軽鎖を有する。
【0091】
抗スクレロスチン抗体の例には、国際特許出願公開第2008/092894号、第2008/115732号、第2009/056634号、第2009/047356号、第2010/100200号、第2010/100179号、第2010/115932号、および第2010/130830号(それらの各々が本明細書におけるその全体の参照により組み込まれる)に開示される抗スクレロスチン抗体、例えば、国際特許公開第2008/115732号の配列番号20〜25のCDR(本明細書において配列番号416〜421)を含む抗スクレロスチン抗体、国際特許公開第2008/115732号の配列番号26〜31のCDR(本明細書において配列番号422〜427)を含む抗スクレロスチン抗体、国際特許公開第2008/115732号の配列番号32〜37のCDR(本明細書において配列番号428〜433)を含む抗スクレロスチン抗体、国際特許公開第2009/047356号の配列番号4、15、26、37、48、および59のCDR(本明細書において、それぞれ、配列番号443、454、465、476、487および498)を含む抗スクレロスチン抗体、または国際特許公開第2010/130830号の配列番号135〜143、153〜161、または171〜179(本明細書において、それぞれ、配列番号745〜753、763〜771、781〜789)のうちの少なくとも1つのアミノ酸配列を含む抗スクレロスチン抗体も含まれるが、これらに限定されない。
【0092】
あるいは、本明細書に記載される方法は抗スクレロスチン抗体以外のスクレロスチン阻害剤を投与することを含む。そのような薬剤は直接的または間接的にSOSTまたはスクレロスチンに作用し得る。本明細書に記載される方法において使用することが企図されているスクレロスチン阻害剤には米国特許出願公開第2003/0229041号に記載される阻害剤が含まれる(その全体の開示が、スクレロスチン阻害剤の記載に対して特に強調して参照によりここに組み込まれる)。例えば、SOST発現およびスクレロスチン活性の調節に有用な薬剤にはステロイド(例えば、米国特許出願公開第2003/0229041号の式1に対応するステロイド)、アルカロイド、テルペノイド、ペプトイド、および合成化学物質が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、そのSOSTアンタゴニストまたはアゴニストはグルココルチコイド受容体に結合し得る。例えば、デキサメタゾンはBMP‐4およびBMP‐6のSOST発現に対する促進性効果を消失させる傾向がある。グルココルチコイド類似体、胆汁塩(例えば、米国特許出願公開第2003/0229041号の式3に対応する胆汁塩)、およびプロスタグランジン(例えば、米国特許出願公開第2003/0229041号の式2に対応するプロスタグランジン)を含む他の化学物質も骨形成タンパク質のSOST発現に対する効果を調節し、そして、本明細書に記載される方法において使用することが企図されている。
【0093】
本明細書に記載される方法に従って使用され得るスクレロスチン発現阻害剤には薬学的に許容可能な阻害性核酸の塩、例えば、ナトリウム塩を含む阻害性核酸が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、本明細書の別の場所に記載される阻害性核酸は、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、外部ガイド配列(EGS)オリゴヌクレオチド、siRNA化合物、siRNA化合物などの一本鎖または二本鎖RNA干渉(RNAi)化合物、修飾塩基/ロックド核酸(LNA)、アンタゴmir、ペプチド核酸(PNA)、および標的核酸の少なくとも一部にハイブリダイズし、その機能を調節する他のオリゴマー化合物またはオリゴヌクレオチド模倣物からなる群より選択される。いくつかの実施形態では、その阻害剤核酸は一本鎖または二本鎖である。いくつかの実施形態では、その阻害性核酸はアンチセンスオリゴヌクレオチド、修飾塩基/ロックド核酸(LNA)、ペプチド核酸(PNA)、(例えば、PCT国際公開第99/67378号に記載される)アラビノ核酸(ANA);2’‐フルオロ‐D‐アラビノ核酸(FANA)(例えば、 Lon et al., Biochem., 41:3457-3467, 2002および Min et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 12:2651-2654, 2002に記載される。それらの文献の開示がそれらの全体の参照により組み込まれる);ホスホロジアミデートモルホリノオリゴマー(PMO)(例えば、 Iverson, Curr. Opin. Mol. Ther., 3:235-238, 2001、および Wang et al., J. Gene Med., 12:354-364, 2010に記載される。それらの文献の開示がそれらの全体の参照により組み込まれる);エチレン架橋核酸(例えば、国際特許公開第2005/042777号、Morita et al., Nucleic Acids Res., Suppl 1:241-242, 2001、 Surono et al., Hum. Gene Ther., 15:749-757, 2004、 Koizumi, Curr. Opin. Mol. Ther., 8:144-149, 2006 および Horie et al., Nucleic Acids Symp. Ser (Oxf), 49:171-172, 2005に記載される。それらの文献の開示がそれらの全体の参照により組み込まれる);2’‐O,4’‐C‐エチレン架橋核酸、リボザイム、外部ガイド配列(EGS)オリゴヌクレオチド、マイクロRNA(miRNA)、小分子一過性RNA(stRNA)、および一本鎖または二本鎖RNA干渉(RNAi)化合物またはsiRNAである。いくつかの実施形態では、その阻害性核酸は少なくとも1つのヌクレオチド修飾および/またはヌクレオシド修飾(例えば、修飾骨格または修飾糖部分を有するオリゴヌクレオチド)を含む。
【0094】
本明細書に記載される方法において使用される特定のスクレロスチン阻害剤、例えば、抗スクレロスチン抗体または抗体断片の活性は、骨ミネラル含量または骨密度の増加を検出するための上に記載された方法を含む様々な方法で測定され得る。骨量を調節するスクレロスチン阻害剤の能力は体重から、または他の方法を用いることにより計算され得る(Guinness-Hey, Metab. Bone Dis. Relat. Res., 5:177-181 (1984)を参照のこと)。動物および特定の動物モデルが、例えば、骨喪失、骨吸収、骨形成、骨強度、または骨のミネラル化からなるパラメータに対するそれらの医薬組成物と方法の効果の試験のために当技術分野において使用される。そのようなモデルの例には卵巣切除ラットモデル(Kalu, Bone and Mineral, 15:175-192 (1991)、 Frost and Jee, Bone and Mineral, 18:227-236 (1992)、および Jee and Yao, J. Musculoskel. Neuron. Interact., 1:193-207 (2001))が含まれる。本明細書に記載されるスクレロスチン結合剤活性の測定方法は他のスクレロスチン阻害剤の効力の判定のためにも用いられ得る。
【0095】
あるいは、スクレロスチン阻害剤は、骨マーカーレベルを調節するその能力に基づいて選択され得る。骨マーカーは、骨再形成過程の間に生じた産物であり、骨、骨芽細胞、および/または破骨細胞により放出される。骨吸収および/または骨形成「マーカー」レベルの変動は骨再形成/形成の変化を表す。国際骨粗鬆症財団(IOF)は骨密度治療をモニターするために骨マーカーを使用することを推奨している(例えば、参照により本明細書に組み込まれる、 Delmas et al., Osteoporos Int., Suppl. 6:S2-17 (2000)を参照のこと)。骨吸収(または破骨細胞活性)を表すマーカーには、例えば、C‐テロペプチド(例えば、1型コラーゲンのC末端テロペプチド(CTX)または血清架橋C‐テロペプチド)、N‐テロペプチド(1型コラーゲンのN末端テロペプチド(NTX))、デオキシピリジノリン(DPD)、ピリジノリン、尿中ヒドロキシプロリン、ガラクトシルヒドロキシリシン、および酒石酸耐性酸ホスファターゼ(例えば、血清酒石酸耐性酸ホスファターゼアイソフォーム5b)が含まれる。骨形成/ミネラル化マーカーには骨特異的アルカリホスファターゼ(BSAP)、I型プロコラーゲンのN末端伸長部およびC末端伸長部から切り離されるペプチド(P1NP、PICP)、およびオステオカルシン(OstCa)が含まれるが、これらに限定されない。臨床試料、例えば尿および血液の中のマーカーを検出および定量するためのいくつかのキットが市販されている。
【0096】
投与経路
スクレロスチン阻害剤は、生理的に許容可能な(例えば、医薬)組成物であって、担体、賦形剤、または希釈剤を含み得る組成物の形状で対象に投与されることが好ましい。本明細書に記載されるスクレロスチン阻害剤(例えば、抗スクレロスチン抗体または抗体断片)は、本明細書において開示される投薬量およびタイミング計画のいずれかを用いる投与のための医薬の調製において使用され得ることが理解される。医薬組成物および治療の方法が米国特許出願公開第20050106683号および第2007/110747号に開示されており、それらの特許出願公開は本明細書において参照により組み込まれる。「生理的に許容可能な」は、ヒトに投与されるとアレルギー反応または類似の不都合な反応を生じることがない分子および組成物を指す。加えて、対象に投与される組成物は1つより多くのスクレロスチン阻害剤(例えば、2つの抗スクレロスチン抗体、または1つのスクレロスチン結合剤と1つの合成化学スクレロスチン阻害剤)または異なる作用機序を有する1つ以上の治療薬と組み合わせたスクレロスチン阻害剤を含有し得る。
【0097】
例えば、皮下、経口、非経口、静脈内、鼻腔内、および筋肉内の投与と製剤を含む、様々な投与経路での使用に適切な組成物の開発は当技術分野においてよく知られており、そして、米国特許出願公開第2007/0110747号において考察される。例えば、ある特定の状況では、スクレロスチン結合剤を含む医薬組成物を皮下的に、非経口的に、静脈内的に、筋肉内的に、または腹腔内的にでも送達することが望ましい。そのようなアプローチは当業者によく知られており、それらのいくつかは、例えば、米国特許第5,543,158号、および第5,641,515号、および第5,399,363号にさらに記載されている。注射可能な使用法に適切な例示的な医薬形態には無菌水性溶液または分散体、および無菌注射可能溶液または分散体の即席の調製のための無菌粉剤(例えば、米国特許第5,466,468号を参照のこと)が含まれる。全ての事例において、その形態は無菌状態でなくてはならず、容易な注射可能性が存在する程度に液状でなくてはならない(すなわち、注射筒からの移動を妨げるように過度に粘性ではない)。
【0098】
1つの態様では、スクレロスチン阻害剤(例えば、抗スクレロスチン抗体または抗体断片)は全身投与される。水溶液の状態で非経口投与される1つの実施形態では、その溶液は、必要である場合、適切に緩衝されるべきであり、液体希釈剤は十分な生理食塩水またはグルコースで最初に等張にされるべきである。これらの特定の水溶液は静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、および腹腔内投与に特に適切である。例えば、1投与量を1mlの等張性NaCl溶液に溶解し、1000mlの皮下注入液に添加するか、または点滴の候補部位に注入することができる(例えば、 Remington’s Pharmaceutical Sciences, 第15版, Mack Pub. Co., ペンシルバニア州、イーストン、1035頁〜1038頁および1570頁〜1580頁を参照のこと)。投与量と投与頻度は、治療される対象の健康状態、その患者の年齢、伸長、体重、および健康全般、ならびにあらゆる副作用の存在に応じていくらか変えることができる。加えて、スクレロスチン結合剤を含む医薬組成物は、そのような医薬組成物の使用法に関する指示書を提供する包装材料と共に容器(例えば、バイアルまたは充填済み注射筒)の中に配置され得る。一般に、そのような指示書は試薬濃度、ならびにある特定の実施形態の範囲では賦形剤成分または医薬組成物の再構成に必要であり得る希釈剤(例えば、水、生理食塩水またはPBS)の相対量についての具体的な表現を含む。
【0099】
別の態様では、スクレロスチン阻害剤は対象に局所投与される。いくつかの、または、どの実施形態においても、スクレロスチン阻害剤(例えば、抗スクレロスチン抗体または抗体断片)は病気によって病気の歯肉領域、骨領域または歯領域に投与される。この点で、スクレロスチン阻害剤(例えば、抗スクレロスチン抗体または抗体断片)は所望により歯肉組織に直接注射される、および/または例えば、スクレロスチン阻害剤および適切な担体を含有する注射筒により歯周ポケットに塗布される。
【0100】
局所投与態様(例えば、対象の病変歯肉部または病変歯周ポケットへの直接的なスクレロスチン阻害剤の皮下注射)について、スクレロスチン阻害剤は所望により約0.1mgから約20mgの量で対象に投与される。いくつかの実施形態では、スクレロスチン阻害剤は約0.1mg、0.5mg、1mg、2mg、3mg、4mg、5mg、6mg、7mg、8mg、9mg、10mg、11mg、12mg、13mg、14mg、15mg、16mg、17mg、18mg、19、または約20mgの量で病変領域に直接的に投与される。その用量はあらゆる間隔、例えば、週に複数回(例えば、週に2回または3回)、1週間に1回、2週間に1回、3週間に1回、または4週間に1回で投与される。いくつかの、または、どの実施形態においても、約0.1mgから約20mgまでの範囲のスクレロスチン阻害剤(例えば、抗スクレロスチン抗体または抗体断片)の用量が週に2回投与される。その阻害剤の量は所望により、例えば、病変領域の部分に沿った複数回の注射を用いて分割された用量として投与される。
【0101】
いくつかの、または、どの実施形態においても、スクレロスチン阻害剤(例えば、抗スクレロスチン抗体または抗体断片)はゲル、メッシュ、マトリックスまたはコラーゲンスポンジに組み込まれ、歯科インプラントまたは骨移植片に封入され、または移植物に被覆される。その移植物は(例えば、外傷により失われた)対象自身の歯からなる再移植物または(例えば、プラスチック、セラミック、金属、または国際公開第2004/074464号に記載されるように幹細胞からできている)人工装具移植物であり得る。
【0102】
「メッシュ」という用語は、例えば、結ばれた、束ねられた、押し出された、型打ちした、編まれた、織られた、不織の、または他の形状を含むあらゆる形状のあらゆる材料を意味し、実質的に規則的および/または不規則的なパターンを有する材料を含み得る。電気紡績を含む不織メッシュの例が使用され得る(調製電気紡績ナノファイバー材料に関する概説についてはZheng-Ming Huang et al, Composites Science and Technology, 2003, 63:2223-2253を参照のこと)。メッシュは、限定されないが、架橋ファイバーメッシュ、ナノファイバーメッシュ、メッシュ生地、生物分解性高分子メッシュ、または前述のもののいずれかよりなる組合せであり得る。メッシュは非分解性、分解性または生物分解性であり得る。分解性メッシュは、非生物学的手段(例えば、加水分解または光分解)を介して分解され得るメッシュであり得る。様々な実施形態において、生物分解性メッシュは、細胞もしくは分解酵素の作用を通して、または生体分子による酸化を介して生物系により分解され得る種類のメッシュである。
【0103】
抗体の経口送達のための例となるゲル製剤は国際公開第2010/1004179号に記載されており、その国際公開の開示は参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態では、そのゲルは合成または天然起源の高分子量生体適合性エラストマー重合体からできているヒドロゲルである。ヒドロゲルの望ましい特質はヒトの身体において機械的応力、特に剪断と負荷に対して急速に反応する能力である。天然起源から得られるヒドロゲルは生物分解性であり、インビボ適用にとって生体適合性である可能性が高いので、それらが企図されている。適切なヒドロゲルには、例えば、ゼラチン、コラーゲン、絹、エラスチン、フィブリンおよび多糖誘導重合体、グルコマンナンゲル、ヒアルロン酸、架橋カルボキシル含有多糖類などの多糖類、またはそれらの組合せなどの天然ヒドロゲルが含まれる。合成ヒドロゲルには、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸およびポリ(アクリロニトリル‐アクリル酸)共重合体などのアクリルアミド、ポリウレタン、ポリエチレングリコール(例えば、PEG3350、PEG4500、PEG8000)、シリコン、ポリイソブチレンおよびポリイソプレンなどのポリオレフィン、シリコンとポリウレタンの共重合体、ネオプレン、ニトリル、加硫ゴム、ポリ(N‐ビニル‐2‐ピロリドン)、ポリ(2‐ヒドロキシエチルメタクリレート)およびアクリレートとN‐ビニルピロリドンとの共重合体などのアクリレート、N‐ビニルラクタム、ポリアクリロニトリル、またはそれらの組合せから形成される合成ヒドロゲルが含まれるが、これらに限定されない。それらのヒドロゲル材料は、必要に応じてさらなる強度を提供するためにさらに架橋され得る。異なる種類のポリウレタンの例には熱可塑性または熱硬化性のポリウレタン、脂肪族または芳香族のポリウレタン、ポリエーテルウレタン、ポリカーボネート‐ウレタン共重合体またはシリコンポリエーテル‐ウレタン共重合体、またはそれらの組合せが含まれる。
【0104】
様々な実施形態において、スクレロスチン阻害剤をゲルに直接的に混合するよりもむしろ、スクレロスチン阻害剤が負荷されているミクロスフィアをゲル内に分散することができる。1つの実施形態では、それらのミクロスフィアはスクレロスチン阻害剤の徐放をもたらす。さらに別の実施形態では、生物分解性であるゲルはそれらのミクロスフィアがスクレロスチン阻害剤を放出することを防ぎ、それらのミクロスフィアは、したがって、そのゲルからそれらが放出されて初めてスクレロスチン阻害剤を放出する。例えば、ゲルは標的組織部位(例えば、歯槽堤)の周りに配置され得る。
【0105】
本発明は、スクレロスチン阻害剤の分散を制限するための吸着性ゲルの使用も企図する。それらのゲルは、例えば、歯周ポケット、歯、歯槽骨または周辺歯肉組織に配置され得る。
【0106】
いくつかの、または、どの実施形態においても、スクレロスチン阻害剤はペースト、バーム、ワックス、ローション、すすぎ液、膨化剤を含む/含まない乾燥粉末、および当技術分野において公知の局所投与のための他の様々な形式に製剤される。スクレロスチン阻害剤はスプレー粉末もしくは液、またはうがい液の形状で局所的に送達されることもあり得る。あるいは、スクレロスチン阻害剤は創傷包帯、パッド、ガーゼ、または目的の病変領域(例えば、病変歯肉部または歯周ポケット)に適用される他の手段に組み込まれ、それらからその目的の領域にスクレロスチン阻害剤が転写される。
【0107】
併用療法
同じ病原体または生化学的経路を標的とする2つ以上の薬剤を組み合わせることによる病変の治療は、時に各薬剤単独の治療上適切な容量を使用することと比べてより高い効力と副作用の減少を引き起こすことがある。いくつかの場合ではその薬品の組合せの効力は相加的であるが(その組合せの効力が各薬品単独の効果の合計とおよそ等しい)、他の場合ではその効果は相乗的であり得る(その組合せの効力が投与される各薬品単独の効果の合計よりも高い)。本明細書において使用される場合、「併用療法」という用語は、2つの化合物が同時、例えば、一斉に送達され得ること、またはそれらの化合物のうちの1つが最初に投与され、続いて2つ目の薬剤が、例えば、順次投与されることを意味する。その所望の結果は対象の1つ以上の症状の軽減か、またはその投与量の受容者における客観的に確認できる改善であり得る。
【0108】
いくつかの実施形態では、スクレロスチン阻害剤(例えば、抗スクレロスチン抗体または抗体断片)は、骨移植片、骨粉、骨片、脱ミネラル化骨基質、骨スキャフォールド、人工器官、金属製安定器、または重合体、セラミックス、セメントおよびリン酸カルシウム系の骨移植片代用物のうちの1つ以上を含む骨スキャフォールド物質などの骨の再生を支援する材料の使用と組み合わせて投与される。多種多様なそのような材料が当技術分野において知られている。
【0109】
いくつかの、または、どの実施形態においても、本明細書に記載される方法または使用法は、スクレロスチン阻害剤(例えば、抗スクレロスチン抗体または抗体断片)の投与前に歯周病治療のための標準治療法を対象に実施することを含む。例えば、いくつかの実施形態では、歯周病治療のためのその標準治療法は、ペリオスタット(登録商標)および化学修飾テトラサイクリン‐3(CMT‐3)からなる群より選択される治療薬である。いくつかの実施形態では、その標準治療法は口腔洗浄および/または歯石除去ならびに対象の患部の歯肉縁上および/または歯肉下の創面切除(例えば、微生物性プラークおよび歯石の除去)を含む。いくつかの実施形態では、その標準治療はスクレロスチン阻害剤の投与前にペリオスタットおよび/またはCMT‐3と組合せて口腔洗浄および/または歯石除去および患部の創面切除を実施することを含む。いくつかの実施形態では、その方法はスクレロスチン阻害剤の投与と同時に標準治療法を実施することを含む。他の実施形態では、標準治療法は順次実施される。例えば、標準治療法は対象へのスクレロスチン阻害剤の投与の1日、2日、3日、4日、5日、6日、1週間、2週間、3週間、4週間、6週間、8週間、10週間、12週間、またはそれ以上前に実施され得る。好ましい実施形態では、対象における歯周病の進行をスクレロスチン阻害剤の投与の前に遅らせる、停止させる、または反転させる。
【0110】
いくつかの、または、どの実施形態においても、本明細書に記載される方法または使用法は、抗生物質、例えばアモキシシリン、テトラサイクリン塩酸、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、アジスロマイシン、ロキシスロマイシン、モキシフロキサシン、シプロフロキサシンおよびメトロニダゾールからなる群より選択される抗生物質を投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、その方法または使用法は、スクレロスチン阻害剤の対象への投与の前にその抗生物質を対象に投与することを含む。他の実施形態では、その方法または使用法は、スクレロスチン阻害剤の投与と同時にその抗生物質を対象に投与することを含む。
【0111】
いくつかの実施形態では、スクレロスチン阻害剤(例えば、抗スクレロスチン抗体または抗体断片)は骨ミネラル密度の低下または骨欠損の治療に有用な第2骨強化治療薬と共に投与される。いくつかの実施形態では、その骨強化治療薬は、骨吸収抑制薬、骨形成剤、エストロゲン受容体修飾因子(限定されないが、ラロキシフェン、バゼドキシフェンおよびラソフォキシフェンを含む)および破骨細胞に対して阻害性効果を有する薬品からなる群より選択される。いくつかの実施形態では、その第2骨強化薬剤は、ビスホスホネート(限定されないが、アレンドロン酸ナトリウム(フォサマックス(登録商標))、リセドロン酸、イバンドン酸ナトリウム(ボニバ(登録商標))およびゾレドロン酸(リクラスト(登録商標))を含む)、エストロゲンまたはエストロゲン類似体、抗RANKリガンド(RANKL)抗体(例えば、プロリア(登録商標))またはRANKL阻害剤、ビタミンD、またはビタミンD誘導体またはその模倣物、カルシウム供給源、チボロン、カルシトニン、カルシトリオール、およびホルモン補充療法薬からなる群より選択される。いくつかの実施形態では、その第2骨強化薬剤には副甲状腺ホルモン(PTH)またはそのペプチド断片、PTH関連タンパク質(PTHrp)、骨形成タンパク質、オステオゲニン、NaF、PGEアゴニスト、スタチン、ラネル酸ストロンチウム、抗DKK1抗体または阻害剤が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、その第2骨強化薬剤はフォルテオ(登録商標)(テリパラチド)、プレオタクト(登録商標)、またはプロテロス(登録商標)である。
【0112】
様々な実施形態において、歯周病治療計画にはスクレロスチン阻害剤を用いる能動的治療が完了した後の定期的な支持継続治療が含まれる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法または使用法は、所望により、機械的創面切除、口腔衛生の強化(例えば、定期的な(すなわち、6か月毎の)専門家によるクリーニング、日々のブラッシングとデンタルフロスによる掃除)および抗生物質の投与からなる群より選択される支持継続治療の実施を含む。
【0113】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるスクレロスチン阻害剤を使用する併用療法は数分から数週間の範囲の間隔で追加的な治療薬(例えば、抗生物質または第2骨強化薬剤)の投与に先んじることができる、またはその投与に続くことができる。例えば、別個の治療法が互いに約24時間以内、例えば、互いに約6〜12時間以内、または互いに約1〜2時間以内、または互いに約10〜30分以内に実施される。いくつかの状況では、異なる治療法のそれぞれの実施の間に数日(2日、3日、4日、5日、6日または7日)から数週間(1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間または8週間)が経過する場合、治療期間を著しく延長することが望ましいことがあり得る。併用療法の一方または両方の薬剤/治療法を用いる反復治療が具体的に企図されている。
【0114】
維持治療計画
歯槽骨の次のパラメータのうちの1つ以上の喪失を防ぐ、または遅らせるために、維持治療計画における第2骨強化薬剤および/またはスクレロスチン阻害剤の使用も企図されている:骨ミネラル密度、歯槽骨の高さ、歯槽骨量、歯槽骨の体積および歯槽骨のミネラル含有量。この点で、本明細書に記載される方法または使用法は、所望により、スクレロスチン抗体を用いる治療期間が終了した後の約1週間から約5年の維持期間に骨ミネラル密度、歯槽骨の高さ、歯槽骨量、歯槽骨の体積および歯槽骨のミネラル含有量を維持するのに有効な1つ以上の量の第2骨強化薬剤を投与することを含む。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法または使用法は少なくとも約1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、12週間、3か月、13週間、14週間、15週間、16週間、4か月、17週間、18週間、19週間、20週間、5か月、21週間、22週間、23週間、24週間、6か月、25週間、26週間、27週間28週間、7か月、29週間、30週間、31週間またはそれ以上(例えば、8か月、9か月、10か月、11か月、1年、15か月、18か月、2年、3年、4年、5年またはそれ以上の(例えば、対象の生存時間にわたる)維持期間に対象へ第2骨強化薬剤を投与することを含む。いくつかの実施形態では、その維持期間は約6〜12週間である。いくつかの実施形態では、その維持期間は約4〜12週間、または約1〜3か月である。いくつかの実施形態では、その維持期間は約12〜20週間、または約3〜5か月である。いくつかの実施形態では、その維持期間は約20〜32週間、または約5〜8か月である。いくつかの実施形態では、その維持期間は約24〜36週間、または約6〜9か月である。いくつかの実施形態では、その維持期間は約1年、約2年、約3年、約4年、約5年またはそれ以上である。歯槽骨の「維持」にはスクレロスチン阻害剤治療を受けた対象において経験された類似レベルの歯槽骨パラメータの維持が含まれる。
【0115】
同様に、本明細書に記載される方法または使用法は、所望により、治療期間が終了した後の少なくとも約1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、12週間、3か月、13週間、14週間、15週間、16週間、4か月、17週間、18週間、19週間、20週間、5か月、21週間、22週間、23週間、24週間、6か月、1年、2年、3年、4年、5年またはそれ以上の(例えば、対象の生存時間にわたる)維持期間に骨ミネラル密度、歯槽骨の高さ、歯槽骨量、歯槽骨の体積および歯槽骨のミネラル含有量にとって有効な1つ以上の量のスクレロスチン阻害剤を続いて投与することを含む。いくつかの実施形態では、その維持期間は約6〜12週間である。いくつかの実施形態では、その維持期間は約4〜12週間、または約1〜3か月である。いくつかの実施形態では、その維持期間は約12〜20週間、または約3〜5か月である。いくつかの実施形態では、その維持期間は約20〜32週間、または約5〜8か月である。いくつかの実施形態では、その維持期間は約24〜36週間、または約6〜9か月である。いくつかの実施形態では、その維持期間は約1年、約2年、約3年、約4年、約5年またはそれ以上である。
【0116】
キット
スクレロスチン阻害剤(例えば、抗スクレロスチン抗体または抗体断片)を含む医薬組成物はそのような医薬組成物の使用法に関する指示書を提供する包装材料と共に容器(例えば、バイアルまたは注射筒)の中に配置され得る。一般に、そのような指示書はスクレロスチン阻害剤の濃度、ならびにある特定の実施形態の範囲では賦形剤成分または医薬組成物の再構成に必要であり得る希釈剤(例えば、水、生理食塩水またはPBS)の相対量を記載する具体的な表現を含む。
【0117】
本発明は次の実施例においてさらに説明される。次の実施例は本発明を例示するためにのみ役立ち、多少なりとも本発明の範囲を限定するものと意図されてはいない。
実施例
【実施例1】
【0118】
この実施例は抗スクレロスチン抗体の中和活性の特徴解析に有用な様々な細胞系中和アッセイ法について説明する。
【0119】
MC3T3細胞ベースのミネラル化アッセイ
アスコルビン酸とB‐グリセロリン酸が、ミネラル沈着を生じるMC3T3‐E1‐BF細胞の分化を誘導するために使用される。96ウェル形式における例となるスクリーニングプロトコルには第1日での細胞播種とそれに続く12日の期間にわたる7回の培地交換が含まれ、ミネラル沈着の大半が最後の18時間に起こる。ミネラル沈着の特定のタイミングと程度は使用される特定のロット番号の血清に部分的に応じて変化し得る。全般的に細胞培養の技術分野においてよく知られるように、対照実験によりそのような変化を説明することが可能になる。統計分析(MS ExcelとJMPを使用する)について、一元配置ANOVAとそれに続くダネット比較を用いて群間の差異を決定することができる。各データセットについての群の平均はP値が0.05未満(P<0.05)であるとき有意差があるとみなされる。
【0120】
MC3T3‐E1‐BF細胞の増殖のための細胞培養を次のように実施する。細胞培養は37℃および5%COで実施する。スクレロスチン中和抗体のスクリーニングを目的として細胞バンクを作製することができる。1本のバイアルの凍結MC3T3‐E1‐BF細胞を37℃の水槽の中で撹拌することにより融かす。その融解した細胞を50mlのチューブ中の10mlの増殖培地(α‐MEM/10%FBS/ペニシリン・ストレプトマイシン・グルタミン酸)に入れ、穏やかに5分間遠心して沈殿させる。次に、それらの細胞を4mlのα‐MEM/10%FBS/ペニシリン・ストレプトマイシン・グルタミン酸に再懸濁する。トリパンブルーと血球計算板を用いて細胞数を決定した後、1×10個の細胞を1本のT175フラスコの中の50mlのα‐MEM/10%FBS/ペニシリン・ストレプトマイシン・グルタミン酸培地中に蒔く。
【0121】
この継代が集密になったとき(約7日)、それらの細胞をトリプシン/EDTA(0.05%トリプシン、0.53mM EDTA)でトリプシン処理し、穏やかに5分間遠心して沈殿させ、次に5mlのα‐MEM/10%FBS/ペニシリン・ストレプトマイシン・グルタミン酸に再懸濁する。トリパンブルーと血球計算板を用いて細胞数を決定した後、1本のT175フラスコ当たり50mlのα‐MEM/10%FBS/ペニシリン・ストレプトマイシン・グルタミン酸培地中に1×10細胞の割合で細胞を蒔く。この時点で播種に使用されたT175フラスコの数は利用可能な総細胞数と次の継代に利用される予定である所望の数のフラスコに左右される。
【0122】
この継代が集密になったとき(約3〜4日)、それらの細胞をトリプシン/EDTA(0.05%トリプシン、0.53mM EDTA)でトリプシン処理し、穏やかに5分間遠心して沈殿させ、次に5mlのα‐MEM/10%FBS/ペニシリン・ストレプトマイシン・グルタミン酸に再懸濁する。トリパンブルーと血球計算板を用いて細胞数を決定した後、1本のT175フラスコ当たり50mlのα‐MEM/10%FBS/ペニシリン・ストレプトマイシン・グルタミン酸培地中に1×10細胞の割合で細胞を蒔く。この時点で播種に使用されたT175フラスコの数は利用可能な総細胞数と次の継代に利用される予定であった所望の数のフラスコに左右される。
【0123】
この継代が集密になったとき(約3〜4日)、それらの細胞をトリプシン/EDTA(0.05%トリプシン、0.53mM EDTA)でトリプシン処理し、穏やかに5分間遠心して沈殿させ、次に5mlのα‐MEM/10%FBS/ペニシリン・ストレプトマイシン・グルタミン酸に再懸濁する。トリパンブルーと血球計算板を用いて細胞数を決定した後、1本のT175フラスコ当たり50mlのα‐MEM/10%FBS/ペニシリン・ストレプトマイシン・グルタミン酸培地中に1×10細胞の割合で細胞を蒔く。この時点で播種に使用されたT175フラスコの数は利用可能な総細胞数と次の継代に利用される予定であった所望の数のフラスコに左右される。余分な細胞を90%FBS/10%DMSO中に1〜2×10生細胞/mlの割合で凍結する。
【0124】
この継代が集密になったとき(約3〜4日)、それらの細胞をトリプシン/EDTA(0.05%トリプシン、0.53mM EDTA)でトリプシン処理し、穏やかに5分間遠心して沈殿させ、次に5mlのα‐MEM/10%FBS/ペニシリン・ストレプトマイシン・グルタミン酸に再懸濁した。トリパンブルーと血球計算板を用いて細胞数を決定した後、それらの細胞を90%FBS/10%DMSO中に1〜2×10生細胞/mlの割合で凍結する。この「最終継代」凍結細胞がスクリーニングアッセイに使用される継代である。
【0125】
MC3T3‐E1‐BF細胞をミネラル化するための細胞培養を次のように実施する。細胞培養は37℃および5%COで実施する。ミネラル化細胞培養法の最中に温度とCOの%濃度の変動を最小化することが望ましい。上に記載されたように調製された適切な数の「最終継代」バイアルを37℃の水槽の中で撹拌することにより融かす。その融解した細胞を50mlのチューブ中の10mlの増殖培地(α‐MEM/10%FBS/ペニシリン・ストレプトマイシン・グルタミン酸)に入れ、穏やかに5分間遠心して沈殿させる。次に、それらの細胞を4mlのα‐MEM/10%FBS/ペニシリン・ストレプトマイシン・グルタミン酸に再懸濁する。トリパンブルーと血球計算板を用いて細胞数を決定した後、2500個の細胞をコラーゲンI被覆96ウェルプレート(Becton Dickinson Labware社、カタログ番号354407)上のウェル当たり200マイクロリッターの増殖培地中に蒔いた。
【0126】
例となる細胞培養法は次の通りである。細胞播種のための開始日は水曜日であることが示されている。週の異なる曜日を細胞播種のための開始日として用いる場合、その日が下に示される過程全体の間の培地の除去と添加についての日課を開始させる。例えば、それらの細胞が火曜日に播種される場合、培地は最初の金曜日および土曜日、または2番目の金曜日および土曜日に除去および添加されるべきではない。火曜日の開始であれば、最後の日曜日にカルシウムアッセイのためにプレートを調製するだろう。細胞は200μlの増殖培地中に2500細胞の割合で水曜日に播種される。木曜日に増殖培地の全てを除去し、200μlの分化培地を添加する。金曜日に100μlの培地を除去し、100μlの新しい分化培地を添加する。月曜日に100μlの培地を除去し、100μlの新しい分化培地を添加する。火曜日に100μlの培地を除去し、100μlの新しい分化培地を添加する。水曜日に100μlの培地を除去し、100μlの新しい分化培地を添加する。木曜日に100μlの培地を除去し、100μlの新しい分化培地を添加する。金曜日に100μlの培地を除去し、100μlの新しい分化培地を添加する。次の月曜日にカルシウムアッセイのためにプレートを次のように調製する:プレートをpH7〜8の10mMトリス塩酸で1回洗浄する。ドラフト下で作業してウェル毎に200μlの0.5N塩酸を添加する。次にプレートを−80℃で凍結する。ちょうどカルシウムを測定する前にそれらのプレートを2回凍結融解し、次に、マルチチャンネルピペットでの研和を用いてプレートの内容物を分散させる。次に、プレートの内容物を4℃で30分間静置し、その時点で適切な量の上清を、市販のカルシウムキットを使用するカルシウムの測定のために取り除く。例となる、非限定的なキットはテキサス州、ベルネのStanbio Laboratory社のカルシウム(CPC)Liquicolor、カタログ番号0150‐250である。
【0127】
この細胞系アッセイ法では、スクレロスチンは、最大でミネラル沈着まで至る、ミネラル沈着を含む一連の事象のうちの1つ以上を阻害する(すなわち、スクレロスチンがミネラル化を阻害する)。したがって、特定の細胞培養実験にスクレロスチンが含まれる実験では、最初の木曜日に開始してその後の栄養供給日毎に組換えスクレロスチンを培地に添加する。抗スクレロスチン抗体がスクレロスチンを中和する能力、すなわち、ミネラル化を阻害するスクレロスチンの能力を中和することによりミネラル化を可能にする能力について試験されている事例では、最初の木曜日に開始してその後の栄養供給日毎にその抗体を培地に添加する。その抗体を組換えスクレロスチンと共に分化培地中において37℃で45〜60分間前保温し、次にこの培地を用いて細胞に栄養供給する。
【0128】
MC3T3‐E1‐BF細胞に対する12日間のミネラル化プロトコルが上に記載されている。大元のMC3T3‐E1細胞のミネラル化を組換えスクレロスチンにより阻害し、そして、抗スクレロスチン中和抗体、例えば、配列番号245〜247および78〜80のCDRを含む抗スクレロスチン抗体を用いてこの阻害を妨害する。その細胞系中和アッセイ法は米国特許公報第7,592,429号中に、例えば、実施例8においてさらに記載される(その細胞系中和アッセイ法の記載について参照によりここに組み込まれる)。
【0129】
骨特異的アルカリホスファターゼアッセイ法
例となる骨特異的アルカリホスファターゼアッセイ法が国際特許公開第2008/115732号および米国特許第7,744,874号に記載されている(その細胞系中和アッセイ法の記載について参照によりここに組み込まれる)。例となるプロトコルは次の通りである。C2C12細胞(ATCC、CRL1772)を96ウェル組織培養プレート内の5%胎児ウシ血清を添加したMEM培地中に3000〜5000細胞/ウェルの割合で蒔く。そのプレートを5%CO中において37℃で一晩保温する。抗体を(国際公開第2008/115732号に記載されるように調製した)0.5×Wnt3a条件培地中に様々な終濃度まで希釈する。培地をプレートに蒔いた細胞から取り除き、事前混合した抗体‐BMP4‐スクレロスチン溶液(ヒトまたはカニクイザル)を添加し(150μl)、30μg/mlから0.5μg/mlの終濃度の抗体、25ng/mlの終濃度のBMP‐4、1.0μg/mlの終濃度のスクレロスチンタンパク質を提供し、そして、条件培地の濃度は0.5×である。次に、そのプレートを5%CO中において37℃で72時間保温する。培地をそれらの細胞から取り除き、それらの細胞をPBSで1回洗浄し、そして、−80℃と37℃の間を繰り返して3回凍結融解する。アルカリホスファターゼ活性はアルカリホスファターゼ基質(1ステップPNPP、Pierce社番号37621)(150μl/ウェル)を添加することにより測定される。細胞を有するプレートを室温で60分間保温し、その時点で光学密度(OD)を405nmで測定してアルカリホスファターゼ活性を決定する。IC50の計算は、例えば、SigmaPlot回帰ウィザードをSigmoid4パラメータフィット方程式と共に用いて実施され得る。
【0130】
BMP2誘導性MC3T3細胞ミネラル化アッセイ
MC3T3細胞における例となるBMP2誘導性ミネラル化アッセイが国際特許公開第2009/047356号に記載されている(その細胞系中和アッセイ法の記載について参照によりここに組み込まれる)。簡単に説明すると、MC3T31b細胞を96ウェルプレート(例えば、6×10細胞/ウェルまたは2×10細胞/ウェル)内の100μlのアッセイ用培養培地(G418を含まない維持培養培地)に蒔き、集密に達するまで3日間培養する。そのアッセイ用培養培地を交換し、そして、試験化合物を10mMのb‐グリセロリン酸および50μMのアスコルビン酸と共に添加する。細胞への添加の前にスクレロスチンと候補抗体を別々のプレート上において室温で2時間前保温する。アッセイ用96ウェルプレートに2.1または2.8nMのBMP‐2(R&Dシステムズ社、カタログ番号355‐BM‐010)を適用した後にスクレロスチン‐抗体混合物を適用する。細胞を14日間培養する。その培養の最後に細胞をウェル当たり200μlのPBSで2回洗浄し、50μlの0.5M塩酸を各ウェルに添加し、そして、プレートを−20℃で最低でも24時間凍結する。プレートを試験のために室温で2時間融解する。各ウェルの10μlを新しいプレートに移し、カルシウム作業溶液(1:5)(200μl)に曝露する。595nmの光学密度を5〜30分の保温期間の後にマイクロプレートリーダーで測定する。吸光度を検量線に従ってカルシウムのマイクログラム量に変換し、BMP‐2誘導性ミネラル化の程度を決定させる。
【0131】
細胞系Wntシグナル伝達アッセイ法
スーパー・トップ・フラッシュ(STF)レポータータンパク質を使用する例となる細胞系シグナル伝達アッセイ法が国際特許公開第2009/047356号に記載されている。HEK293細胞を対照ウェルについてpcDNA3+(480ng)、スーパー・トップ・フラッシュ(STF)(20ng)、およびphRL‐CMV(0.5ng)で形質移入し、Wnt1処置ウェルについてpcDNA‐wnt1(20ng)、pcDNA3+(460ng)、スーパー・トップ・フラッシュ(STF)(20ng)、およびphRL‐CMV(0.5ng)で形質移入する。それらのプラスミドを50μlのOptiMEM(登録商標)に希釈した1.6μlのリポフェクタミン2000と混合し、細胞への適用の前に室温で30分間保温する。適用された後、それらの細胞を5%CO中において37℃で5時間培養する。
【0132】
抗体をSOSTと事前混合して一連の希釈物を作製する。各希釈物について1mlの培地を調製し、そして、形質移入ミックスを除去した後に450μlを各ウェルに添加する。それらの細胞を抗体‐SOST混合物と共に18〜20時間培養する。その培養の最後に媒体を除去し、300μlの1×Passive溶解緩衝液(Promega社、カタログ番号E194A)を添加して細胞を溶解する。その後、Dual‐Gloルシフェラーゼシステム(Promega社、カタログ番号E2940)を30μlの溶解物とともに2つ組で用いてルシフェラーゼ活性を測定する。典型的には、30μlのDual‐Glo・ルシフェラーゼ(ホタルルシフェラーゼ;STF用)と30μlのDual‐Glo・ストップ・アンド・Glo(ウミシイタケルシフェラーゼ;形質移入効率対照用)基質を使用する。生物発光シグナルをMithras LB940機器(Berthold Technologies社)を用いて測定する。ウミシイタケルシフェラーゼに対するホタルルシフェラーゼの比率を計算する。最終結果は、SOSTを用いないときのWnt1の値を1と設定することにより表される。そのアッセイ法についてのさらなる詳細は国際特許公開第2009/047356号において提供される。
【実施例2】
【0133】
次の実施例はラット歯周病モデルにおける歯槽骨修復を増強するスクレロスチン阻害剤、すなわち抗スクレロスチンモノクローナル抗体(Scl‐Ab)の能力を例示する。
【0134】
ラット歯周炎モデル:実験的歯周病は以前に記載されたように結紮糸配置によりラットにおいて誘導された(Jin Q, et al., 2007. J Periodontol 78:1300-1308、 Graves, DT, et al., 2008. J Clin Periodontol 35:89-105; それらの文献の開示がそれらの全体の参照により組み込まれる)。簡単に説明すると、オスSprague Dawleyラット(約300〜350gの体重、Harlan Laboratory社、インディアナ州)をケタミンとキシラジン(83対17の比率)で麻酔した。その後、正常な咀嚼を可能にするために上顎の片方側の臼歯の頸部(歯肉のすぐ上)の周りに木綿縫合糸(3.0)を固定した。結紮糸を週に3回診断し、歯肉溝へと頂端方向にそっとずらして歯肉縁下位置を確保し、そして、必要な時には交換した。
【0135】
マイクロコンピューター断層撮影(μCT)走査および分析:ラットを所定の時点で殺処理した。上顎を解剖し、10%中性緩衝ホルマリン中に48〜72時間静置した。固定された非脱ミネラル化ラット上顎をコーンビームマイクロCTシステム(GE Healthcare BioSciences社)により70%エタノール中で走査した。線分析と容量分析は以前に開発した方法(Park CH, et al., 2007. J Periodontol 78:273-281)を基にした。簡単に説明すると、μCTシステムを用いて各上顎標本を走査し、そして、18×18×18μmのボクセルに再構成した。三次元(3D)体積ビューアーおよびアナライザーソフトウェア(Microview Analysis、GE Healthcare社)を3Dおよび2Dの視覚化と定量の両方のための道具として使用した。縦方向の線形の骨喪失は、上顎第二臼歯のセメントエナメル境(CEJ)から歯槽骨頂(ABC)までの距離を測定することにより特定された。容量分析に関して、第一臼歯の最近心根(m‐M1)、第三臼歯の最遠心根(d‐M3)、分岐部の頂部、およびM1〜M3の歯根尖を上顎歯槽骨の評価のための再現性がある目印として用いた。二次元の目的領域(ROI)が冠状視野上に等間隔で描かれ(平均8データスライス)、そして、3D構造として再構成されて容量パラメータ、骨体積率(BVF)、および骨ミネラル密度(BMD;mg/cc)が定量された。
【0136】
統計分析:GraphPad Prism(バージョン5.01)を使用して統計分析を実施した。線および容量に関する骨測定値についての群間の差異は一元配置分散分析(ANOVA)とテューキーの多重比較事後検定(post hoc test)により統計学的に評価された。データは平均+SEとして報告され、そして、有意性のレベルはP≦0.05として設定された。
【0137】
試験計画:10〜12週齢のオスSprague‐Dawley(SD)ラットが、上に記載される結紮糸配置により誘導される実験的歯周炎を起こした。1つの試験形式において、結紮糸配置の3日前に生理食塩水ベヒクルかScl‐Ab(25mg/kgの用量レベル)のどちらかを動物(n=10/群)に1回皮下注射した。結紮糸配置の直後に結紮された動物またはそれらの正常無損傷対照を生理食塩水ベヒクルまたはScl‐Abで処置した。Scl‐Ab(25mg/kgの用量レベル)とそのベヒクル対照の両方に皮下注射を週に2回実施した。剖検を疾患誘導後2週目と4週目にそれぞれ実施した。
【0138】
別の試験形式において、4週間の結紮誘導性実験的歯周炎の後にその結紮を取り除き、その直後に治療を開始した。実験的歯周炎を有する動物(n=10/群)またはそれらの正常無損傷対照に生理食塩水ベヒクルかScl‐Ab(25mg/kgの用量レベル)のどちらかを週に2回皮下注射した。治療は疾患誘導の休止後3週間または6週間続き、総計で7週間または10週間の試験期間になった。体重の測定値を本試験の終了までScl‐Ab投与前に毎週得た。剖検を疾患誘導後7週目と10週目にそれぞれ実施した。全血(血清分析のため)、上顎および大腿骨を収集した。本試験はミシガン大学動物実験委員会により認可された。
【0139】
結果
上顎歯槽骨:支持歯槽骨の体積と密度のマイクロCT測定値が図2および3に示されている。試験を通じて(2週間と4週間)結紮が配置された試験形式において、正常無損傷動物群における全身性Scl‐Ab投与は、治療開始後2週間と4週間の時点でベヒクル注射を受容した正常無損傷動物と比べると、骨体積率(BVF)と骨ミネラル密度(BMD)の両方に統計学的に有意な上昇を引き起こした。さらに、全身性Scl‐Ab注射を受けた結紮誘導性歯周病群は、第2週と第4週の時点でベヒクル注射を受けた疾患群よりも(統計学的には有意ではなかったが)上昇したBVFとBMDを示した(図2Aおよび2B)。
【0140】
結紮糸が配置後4週目および治療開始直前に取り除かれる試験形式において、疾患誘導期の間にBVFとBMDの両方が正常無損傷動物群と比べて実験的歯周炎群において統計学的に有意な低下を示した。疾患誘導の休止後3週間の間にベヒクル処置群においてBVFとBMDがはね返り、その後、試験終了まで安定した。実験的歯周炎の誘導後にScl‐Ab処置を受けた結紮動物はベヒクル注射を受けた動物群と比べて向上した骨修復(すなわち、より高い骨容積値および密度値)を、6週間の治療期間を通して示した。最も重要なことに、6週間の治療の後、BVFとBMDはベヒクル処置動物群よりもScl‐Ab処置動物において統計学的に高かった。さらに、10週間の試験の最後の時点でScl‐Ab処置疾患動物とベヒクル処置正常無損傷動物の間で骨体積率と骨密度に統計学的な差異は見いだされなかった。このことは、Scl‐Abが歯周病の後に健康な正常レベルまで歯槽骨の再生を支援し得ることを示している。
【0141】
線形骨測定:歯槽骨の高さは、マイクロCT評価を用いて第二臼歯の歯槽骨頂からセメントエナメル境まで測定された(図4)。結紮が配置後4週目および治療開始直前に取り除かれる試験形式において、Scl‐Ab投与は線形骨修復に対するいくつかの効果(すなわち、歯槽骨の高さの増加)を示した。3週間の治療の後、結紮された第二臼歯部位においてScl‐Ab処置群とベヒクル群の間に線形骨測定値の統計学的有意性は観察されなかった。しかしながら、治療後6週間の時点でScl‐Ab処置は線形骨修復の増大を示した。結紮された第二臼歯部位において統計学的に有意な差異はベヒクルおよびScl‐Ab処置群とベヒクル群の間で明らかである(図4A〜4C)。
【0142】
実験的歯周炎の誘導後の6週間のScl‐Abの全身性投与によりベヒクル処置とくらべて統計学的に高いBVF値とBMD値が生じ、ならびに正常無損傷群と統計学的に類似の骨測定値が生じた。したがって、全身性Scl‐Ab投与はBVFとBMDにより判断されるように歯槽骨の再生に寄与する。Scl‐Abは口腔骨再生を増大および/または促進する治療薬として有望であり得る。
【0143】
好ましい実施形態を強調して本発明を説明してきたが、それらの好ましい化合物と方法の変化を用いてよいこと、および、本発明は本明細書に具体的に記載されるのと違うやり方で実施され得ることは、当業者にとって明らかである。したがって、本発明は以下の特許請求の範囲によって限定される本発明の精神と範囲の内に包含されるあらゆる改変を含む。
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図1-4】
図1-5】
図1-6】
図1-7】
図1-8】
図1-9】
図1-10】
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]