(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これらの手法は、動脈を閉塞する血栓物の少なくとも一部を除去するために使用することができるものの、かかる除去方法では、多くの場合、遠位部の塞栓や血栓破片の放出の危険性が増加しうる。さらに、装置が血管内の壁と接触すると、血管組織への創傷および突発的血管痙攣が引き起こされうる。
【0008】
したがって、生体管、特に脳血管から血栓物を除去することができる一方、前記制限のない血栓除去装置があると極めて有利である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によると、閉塞した生体管内で使用するための装置であって、伸長本体(elongated body)と、前記伸長本体の遠位部分の周囲に配置された複数の突起部とを備え、前記伸長本体は前記複数の突起部を生体管の中に送り出すように構成され、前記複数の突起部はそれぞれ、葉状構造(leaf structure)と、前記葉状構造よりも高い軸方向の剛性を有する、前記葉状構造に結合されたステム部とを含む、前記装置が提供される。
【0010】
以下に説明される本発明の好ましい実施形態のさらなる特徴によると、前記突起部は、前記伸長本体の近位端に向かって傾斜している。
【0011】
記載された好ましい実施形態のさらなる他の特徴によると、前記突起部は、前記生体管内で閉塞を通って遠位方向に進むとき、前記装置の本体に対して折り畳むことができる。
【0012】
記載された好ましい実施形態のさらなる他の特徴によると、前記ステム部は、前記ステム部の前記軸方向の剛性を高めるための突出部を含みうる。
【0013】
記載された好ましい実施形態のさらなる他の特徴によると、前記突起部は、前記装置が前記生体管内の閉塞内に位置決めされ、近位方向に引かれるとき半径方向外側へ広がる。
【0014】
記載された好ましい実施形態のさらなる他の特徴によると、前記突起部のそれぞれの前記ステム部は、前記突起部への抗力を増加させるための突出部を含みうる(前記抗力は、開いた前記突起部により主に生成され、それによって前記突起部の半径方向外側への広がりを容易にする)。
【0015】
記載された好ましい実施形態のさらなる他の特徴によると、前記突起部の前記葉状構造は凹面形であり、これにより前記葉状構造を外科用さじとして機能させることができる。
【0016】
記載された好ましい実施形態のさらなる他の特徴によると、前記突起部は、前記遠位部分に沿って、単独、対またはそれ以上として構成される。
【0017】
記載された好ましい実施形態のさらなる他の特徴によると、前記突起部は、スイベルもしくは固定したコネクタを介して、またはモールディングを介して前記伸長本体に結合される。
【0018】
記載された好ましい実施形態のさらなる他の特徴によると、前記突起部は、前記突起部の隣接する対から0〜180°回転した角度で前記伸長本体に固定される。
【0019】
記載された好ましい実施形態のさらなる他の特徴によると、前記伸長本体および前記突起部は、血管内で位置決めするように構成される。
【0020】
記載された好ましい実施形態のさらなる他の特徴によると、前記突起部は、前記伸長本体に対して折り畳まれるとき、血栓物内で押されて前記血栓物内に埋め込まれうる。
【0021】
記載された好ましい実施形態のさらなる他の特徴によると、前記突起部は、前記突起部が前記血栓内に埋め込まれ、かつ、前記伸長本体が近位方向に引かれるとき、前記血栓物と係合しおよび/または前記血栓物を固定し、前記血栓物を遊離および/または収集することができる。
【0022】
記載された好ましい実施形態のさらなる他の特徴によると、前記装置は、1.5〜22Fのシースを通って前記生体管内に送り出し可能である。
【0023】
記載された好ましい実施形態のさらなる他の特徴によると、前記葉状構造および前記ステム部は、熱可塑性のエラストマー(TPE)やシリコーン、その他プラスチックなどのエラストマー材料、もしくは、ニチノールなどの金属合金、または、これらの材料の組み合わせから共成形される。
【0024】
記載された好ましい実施形態のさらなる他の特徴によると、前記ステム部は、前記ステム部の剛性を高めるための要素または構造を含む。
【0025】
記載された好ましい実施形態のさらなる他の特徴によると、前記要素は、厚肉領域または支柱である。
【0026】
記載された好ましい実施形態のさらなる他の特徴によると、前記支柱は、ニチノール支柱、より厚い態様、または強化構造である。
【0027】
記載された好ましい実施形態のさらなる他の特徴によると、前記葉状構造および前記ステム部は、熱可塑性エラストマー(TPE)やシリコーン、その他プラスチックなどのエラストマー材料、または、ニチノールなどの金属合金から構成され、さらに前記ステム部は、より剛性の高い材料、異なる材料、または材料の組み合わせから構成される。
【0028】
記載された好ましい実施形態のさらなる他の特徴によると、前記突起部の前記葉状構造は、内側に曲がった遠位先端部を含む。
【0029】
記載された好ましい実施形態のさらなる他の特徴によると、内側に曲がった遠位先端部は、伸長本体が近位の方向に引かれるときに、血栓物中で引っかかることが可能である。
【0030】
記載された好ましい実施形態のさらなる他の特徴によると、前記内側に曲がった遠位先端部は、前記装置が前記生体管内を遠位方向または近位方向に進むとき前記生体管の壁への創傷を最小限にするように構成される。
【0031】
記載された好ましい実施形態のさらなる他の特徴によると、前記装置は、少なくとも1つの画像マーカーをさらに備える。
【0032】
記載された好ましい実施形態のさらなる他の特徴によると、前記装置は、2つの画像マーカーをさら備え、少なくとも一方の画像マーカーは、前記伸長本体から半径方向外側に延在するアームを介して前記伸長本体に装着される。
【0033】
記載された好ましい実施形態のさらなる他の特徴によると、前記装置は、前記装置の遠位端と近位部分との間に延在する管腔をさらに備え、前記管腔は、前記血管内の前記閉塞の周囲で血液が流れるのを可能にする。
【0034】
本発明の別の態様によると、血管から血栓を除去するための方法であって、(a)複数の突起部を含む装置を前記血管内で位置決めするステップであって、前記複数の突起部はそれぞれ、葉状構造と、前記葉状構造よりも軸方向の剛性が高い、前記葉状構造に結合されたステム部とを含むステップと、(b)前記複数の突起部を遠位方向に血栓物の中に進めるステップと、(c)前記突起部を近位方向に引くことにより、前記血栓物内に侵入・係合し前記血栓物を遊離・収集するステップとを含む方法が提供される。
【0035】
本発明は、血管などの管内の閉塞を、外傷を与えないように効果的に除去するための装置を提供することにより、既知の構成の欠点を解消するものである。
【0036】
別段に定義されない限り、本明細書において使用される技術的・科学的な用語は全て、一般に、本発明が属する技術分野の当業者により通常理解されるのと同じ意味を有する。本明細書で説明するのと同様のまたは均等な方法および材料は、本発明の実施または試験に使用することができるが、適切な方法および材料は以下に説明される。コンフリクトがある場合、定義を含め特許明細書が優先する。さらに、材料、方法および例は、例示のためだけであり限定的でないものとする。
【0037】
本発明は、添付の図面を参照して例示のみを目的として本明細書において説明される。次に特に図面を詳細に参照すると、図示された項目は例示として示され、かつ、本発明の好ましい実施形態の例示的説明のみを目的としており、最も有益ですぐに理解できると考えられる本発明の原理および概念的態様の説明を提供するために提示される。この点に関して、添付の図面は、本発明、および、本発明の複数の形態が如何に実施されうるかを図面とともに当業者に明らかにする記載の基本的な理解に必要以上に、本発明の構造上の詳細を示そうとするものではない。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明は、生体管からの閉塞の除去に使用することができる装置の発明である。本発明は、特に閉塞した脳内動脈の障害物の除去に有用である。
【0040】
本発明の原理および作用は、図面およびその記載を参照して、より理解することができる。
【0041】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その適用が以下の記載により説明されまたは実施例によって例証される詳細に限られないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態が可能、つまり様々な方法で実施もしくは実行することができる。また、本明細書において使用される専門語および用語は、説明のためであり限定的とみなされるべきではないことを理解されたい。
【0042】
動脈から閉塞を効果的に除去するために、血栓物は、血管壁に対する刺激/損傷が最小限でありながら、微粒子を血液循環に放出することなく、効果的に侵入・係合/固定、血管から遊離及び回収されなくてはならない。
【0043】
血栓物内への侵入および血栓物の遊離を最大限にするために、複数の個々の突起部を含む血餅回収ヘッドを有するカテーテルが開発されている(例えば、特許文献3〜9)。しかしながら、このようなカテーテルは、血栓物の回収や、血管壁への損傷を最小限とするには効果的でない場合がある。
【0044】
これらの従来のカテーテルの制限を解消するとともに血栓物内への侵入・係合、及び血栓物の遊離・回収に効果的なカテーテルを提供するために、本発明者は比較的剛性のあるステムに装着された比較的軟質な葉状構造を含むカテーテル突起部を考案した。本明細書でさらに説明するように、本カテーテルの突起部の独特な構造は、血栓との係合、血栓の遊離・回収を最大限にするとともに血管壁への創傷を最小限にする。
【0045】
したがって、本発明の一態様によると、生体管内の閉塞を除去するための装置が提供される。本明細書において、「生体管」という語句は、生体材料の流れを支持することができる任意の管を意味する。この管は、生来の管または体内に埋め込まれた合成の管とすることができる。管の例としては、静脈または動脈などの血管、リンパ管、尿道または尿管などの泌尿器系管、精管、唾液管、胆管およびそれ以上を挙げることができる。閉塞とは、アテローム硬化型材料、アテローム硬化型塞栓、移動性血餅、生物学的石等の局所的な蓄積によって引き起こされる管内の任意の流れを制限する障害物である。
【0046】
前記装置は、その遠位部分の周囲に配置された複数の突起部を生体管に送り出すための伸長本体を含む。前記装置は、血管からの血栓物の除去にガイドワイヤと共に使用するためのカテーテルとして構成することができる。カテーテルとして構成される場合、伸長本体はガイドワイヤ(例えば0.014インチ、0.018インチもしくは0.035インチまたは他のガイドワイヤ)を受け入れるような大きさに作られた長手方向の管腔(lumen)を含むことができる。管腔は、オーバーザワイヤ(over-the-wire)システム、または迅速交換システムに適合することができる。
【0047】
装置はまた、中空カテーテル/送り出し管(案内カテーテル)内で送り出すこともできる。そのような場合、カテーテル/送り出し管は、本装置の位置決めを可能にするためにガイドワイヤを用いて位置決めされ、このガイドワイヤはその後除去される。
【0048】
伸長本体は、閉じた構成(1.5〜22Fのシース内での送り出しに適切)では、長さが10〜200cm、幅が0.5〜7mmとすることができる。伸長本体は、シャフト(ロッドまたはチューブ)として形成されることが好ましく、また、例えば、ステンレススチール、ニチノールなどの合金、またはポリイミド(PI)、ポリエーテルブロックアミド(PEBA)−Pebax(登録商標)などのポリマーを含む、任意の生体適合性材料から作製される。伸長本体は、遠位部分(突起部を保持する)を閉塞の中へもぐり込ませることを容易にするために軸方向に剛直である一方、安全性を確保しながら、曲がりくねった管(例えば、脳内の血管)内の進行を容易にするのに十分可撓であることが好ましい。伸長本体(カテーテル)の剛性は、血管などの生体管内の進行に通常使用されるカテーテルと同じ範囲である。
【0049】
各突起部は葉状構造を含み、この葉状構造は、当該葉状構造よりも軸方向の剛性が高いステム部に結合されている。生体管、閉塞のサイズおよびタイプ、ならびに装置の機能に応じて、任意の数の突起部を伸長本体の上に担持することができる。突起部の典型的な数は、1〜20個またはそれ以上の範囲とすることができる。
【0050】
ステム部は、葉状構造を伸長本体に結合させ、該葉状構造が伸長本体から半径方向外側後側へ伸長本体の長手軸に対して0〜90°またはそれ以上の角度で突出するように向けられる。
【0051】
ステム部の軸方向の剛性は、閉塞の位置、閉塞のタイプおよびサイズ、葉状構造、ならびにステムが構成される材料に応じて、0.1〜100グラム(例えば、10〜90、20〜80、30〜70、40〜60)またはそれ以上とすることができることが好ましい。葉状構造の軸方向の剛性は、閉塞の位置、閉塞のタイプおよびサイズ、葉状構造、ならびに葉が構成される材料に応じて0.0〜50グラム(例えば、5〜40、10〜30、20〜25)またはそれ以上とすることができることが好ましい。
【0052】
葉状構造および随意選択のステムは、熱可塑性エラストマー(TPE)、シリコーン、他のプラスチックなどのエラストマー、またはニチノールなどの金属合金から作られる弾性的に変形可能であることが好ましい。弾性値は、装置が生体管内で遠位方向に閉塞(血栓)内部を進むとき、突起部が閉塞/血栓塊によって及ぼされる力に起因して伸長本体に対して折り畳むように選択される。これにより、血栓塊を横切ることまたは血栓塊の遠位外側に展開してその中にもぐり込むことなく、突起部が管の閉塞(例えば、血栓)に侵入することが可能になる。装置が近位方向に引かれるとき、閉塞(血栓)塊により及ぼされる抗力に起因して、突起部が外側に展開し(ステムまたは血管壁の制限により設定された角度で)、それによって装置が閉塞物に係合/固定し、閉塞物を血管壁から遊離・除去することが可能になる。
【0053】
葉状構造は、閉塞物を収集するのに適切な任意の形およびサイズとすることができる。葉状構造は、楕円形、矩形/多角形状、らせん形、単純形状またはフラクタル性を有する複雑な形状を含む、複数の形状の組み合わせとすることができる。
【0054】
葉上の突起部の典型的な寸法は、長さが0.2〜30ミリメートル、幅が0.05〜20ミリメートル、厚さが0.03〜3ミリメートルで、単一の側面表面積が0.01〜600ミリメートル
2とすることができる。
【0055】
ステム部は、長さが0.1〜20ミリメートル、幅が0.02〜20ミリメートル、厚さが0.03〜3ミリメートルとすることができる。
【0056】
葉状構造の内部表面(伸長本体の方に面する)は、その表面積、および血栓塊により内部表面に及ぼされる抗力/抵抗力を増大させるために凹面形であることが好ましい。そのような凹面構成はまた、突起部が閉塞物を収集する(すくう)能力を高める。葉状構造の外部表面は、突起部の管内での閉塞へ送出、および突起部の閉塞へもぐり込みを容易にするために凸面であることが好ましいが、その間、閉突起部が閉塞の中に進むとき閉塞物により葉状のものに及ぼされる抗力に起因して(矢のような)「近接構成」に折り畳まれる。そのような構成は好ましいが、代替の(例えば、両側面が平坦である)輪郭を有する内部表面および外部表面も本明細書において想定される。
【0057】
各葉状構造はまた、長手方向に閉塞物の中への侵入をさらに向上するために半分の長さに折り畳むことができる。
【0058】
突起部および葉状構造の折り畳みは、突起部に及ぼされる機械的な力にしたがって使用中に生じ、突起部の葉状部分の折り畳みは閉塞物および血管壁により生じる。
【0059】
葉状構造の内部表面は、表面積を増加させ、葉状構造と閉塞物との間の相互作用を強化するための突起部(高さがマイクロメートル〜ミリメートル)を含むことができる。そのような突起部は、単純な突出部または分岐、血栓物と接触している表面積を著しく増加させる「フラクタルのような」突出部とすることができる。これにより、従来のその場(in-situ)形式と同様の形およびサイズで血栓の一括回収を向上させることができ、血栓塊から「逃れる」微粒子に起因する塞栓形成の危険を最小限にすることができる。
【0060】
葉状構造の遠位部分(先端部)は、装置が血管内を進行する際の管への創傷/損傷を最小限にするために内側へ曲がっていることが好ましい。さらに管壁への創傷および刺激を減少させるために、先端部は極めて軟質な材料(残りの葉状構造よりも軟質)から作ることができる。
【0061】
内側に曲がった先端部はまた、突起部の閉塞物内部での引っかかりを容易にすることができる。
【0062】
本装置の突起部の独特の構成は、生体管内の閉塞を取り除くことにおいていくつかの利点を有する。
【0063】
(i)送り出しおよび閉塞物への侵入
本装置が遠位方向に前進するとき、外部表面の輪郭および葉状構造の弾性により突起部の折り畳みが可能になり、これにより装置の外形面積が減少するとともに、さらに折り畳まれた突起部の外面が流線型になる。これにより装置の送り出しが容易となるとともに閉塞の破壊(これにより塞栓微粒子が放出され得る)が最小限となる。
【0064】
(ii)閉塞物の係合/固定
本装置が近位方向に引かれるとき、抗力が葉状構造の内部表面に加わり突起部を開く。これにより装置の断面積を増加し、また閉塞との表面相互作用が増加する。さらに、内側に曲がった先端部が閉塞物に暴露することにより、突起部の閉塞物への侵入およびもぐり込みが増加する。ステム部は、突起部の反転を防止し、これによって装置のハンドル/近位部での引張力が効率的に係合/固定力へ変換されることを確保する。
【0065】
(iii)閉塞物の遊離
カテーテルのハンドル/近位部での引張力もカテーテル−閉塞複合体の近位の移動に効率的に変換される。突起部は、加えられた力がそれによって閉塞のタイプおよび位置に整合するように設計することができる。突起部により閉塞に加えられる力は、閉塞物、閉塞のサイズおよび性質、ならびに閉塞を取り囲む管の機能であるため、不要な力および血栓生来の構成の歪みを最小限にする。
【0066】
(iv)閉塞の除去
増加した表面領域、複数接触領域(複数の突起部による)、ならびに葉状構造の内部表面の独特の外科用さじ状形状により、遊離物の収集が容易になる。閉塞物は装置(突起部)により捕捉され、一体として除去することができるカテーテル−血栓複合体が形成される。
【0067】
以下、
図1〜
図4に示される実施形態を参照して本発明を詳細に説明する。
【0068】
図面を参照すると、
図1〜
図4は本明細書において装置10として参照される本発明の一実施形態を示す。
【0069】
装置10は、血栓物への侵入・係合/固定、及び、血管、特に脳の細い血管からの血栓物の遊離・収集に好適化される。
【0070】
装置10は、近位端16にハンドル14(使用者に係合する部分)を有する伸長本体12と、遠位部分20に装着された突起部18(12個が図示されている)とを含む。伸長本体12は、外傷を与えることなく装置を血管内部へ送り出すことを容易にするためのノーズコーン30を含み、また閉塞/血栓への侵入を可能にする。
【0071】
突起部18は、遠位部分20の周囲に、単独または対(3、4、5、6またはそれ以上の突起部を含む構成も可能)として配置されることが好ましく、各突起部18または対は、隣接する単一対から0〜180°回転される。
図4は、各対を回転角90°ずらして配置させた二対の突起部18を示す装置10の正面図である。
【0072】
図2〜
図3は、一対の突起部18をより詳細に示す。各突起部18は、葉状構造24に装着されたステム部22を含む。上述のとおり、ステム部22の軸方向の剛性は、葉状構造24の剛性よりも高い。ステム部22をより剛性の高い材料で形成するか、ステム部22を葉構造24よりも肉厚に形成するか、または、ステム部22に剛性を付与する支柱(strut)(例えば、ステム部22と共成形されたニチノール/ステンレススチール支柱)を設けることによって、軸方向の剛性を高くすることができる。
図1〜
図4に示す実施形態では、突起部18の外側方向への展開が部分26により設定されたプリセット角α(
図2)に限定されるように、ステム部22は、その剛性を高くすること、および伸長本体12の長手軸に対してステム部22の角度を限定することの両方に機能する厚肉部分26を含む。部分26はまた、突起部18が反転(遠位方向に傾斜)するのを防止するのに十分な剛性を有する。
【0073】
図2〜
図3に示すように、葉状構造24は、装置10が管内で押され引かれるとき、管壁への損傷または刺激を最小限にするための、内側に曲がった先端部34を含む。内側に曲がった先端部34はまた、装置10が近位の方向に引かれるとき、突起部18が閉塞物(例えば血栓物)にもぐり込むことを容易にするための機能を果たす。
【0074】
図3により詳細に示すように、葉状構造24はそれらの内部表面で凹面形(C)であり、反対側の表面で凸面(X)であることが好ましい。血栓塊に係合後に近位に移動するとき、内面の凹面形状により、より広い表面接触面積とより大きい抗力が得られる。さらに、葉状構造24は管壁から取り除かれた閉塞物をすくう。
【0075】
遠位に移動して血栓塊に侵入するとき、凸面形状が生成する抗力を小さい。凹面形状はまた、管および閉塞の中に送り出すために、突起部18がコンパクトなストリームライン構成に折り畳むことを可能にする。突起部18のさらなる水力学的ストリームライン化は、その外面に1つまたは複数のバンプ/突出部/チャネルなどを設けることにより行ってもよい。突起部18は、接着または機械的カップラを介して個々に伸長本体12に取り付けることができる。突起部18は、固定カップラもしくはスイベルカップラ、または成形により伸長本体12に装着されることが好ましい。例えば、2つのステム部22は円筒形のカップラ32(
図3)と共成形することが可能であり、カップラ32は伸長本体12の周りに嵌め合って伸長本体12に固定して装着され、つまり、スイベル回転可能とされる。次いで葉状の突起部はステム部22の遠位端に接着され、もしくは機械的に結合され、または単に同じ材料から一体成形される。
【0076】
突起部18は、単一の材料からまたは2つ以上の材料から作製することができる。例えば、
図1〜
図4に示す実施形態では、突起部は単一の材料(例えばシリコーン、テフロン(登録商標)、ナイロンおよび他の任意のエラストマー、ニチノールなどの金属合金、またはニチノールなどの金属合金と組み合わされたエラストマー)から成形され;剛性差は、(例えば、ステム部22を異なる構造またはより高いショアA値を有するシリコーンで成形したり、厚肉化したり、あるいは、異なる材料もしくは異なる材料の組み合わせを使用して成形して)材料のジュロメータを変化させることにより付与される。
【0077】
装置10は、突起部18間に置かれたウェブ状要素をさらに含むことができる。そのような要素は、装置10の、遊離した閉塞物を捕獲/採取する能力を補うことができる。
【0078】
上述のとおり、
図1〜
図4の装置10の実施形態は、血管、好ましくは直径が0.5〜7ミリメートルの細い脳動脈内の障害物を取り除くのに使用するように構成されている。したがって、装置10の伸長本体12は、閉じた構成では長さが10〜200センチメートル、直径が0.5〜7ミリメートルであることが好ましく、一方、突起部18は、長さが0.2〜30mmであることが好ましい。葉状構造の長さは0.1〜30mmであることが好ましく、幅は(最も広いところで)0.05〜20mmであることが好ましい。ステム部22は、長さが0.1〜20mm、幅(基部で)が0.02〜20mmであることが好ましい。
【0079】
突起部18は、伸長本体12に対して折り畳まれて、全体の直径が0.5〜7ミリメートルとすることができる。折り畳まれると、装置10はアクセス部位を通る送り出しに対して1.5〜22Fのシースに詰めることが可能である。シースから押し出されると、突起部18は外側へステム部22(または管壁)により拘束された位置に折り畳まれ、一方遠位部分20は閉塞部位に進む。葉状構造24は非外傷性の先端部34を含むので、装置10を遠位方向(閉塞に向かって)に進めることにより管壁を傷つけ、または刺激しない。適所では、ハンドル/近位のカテーテル部分14を引くと、突起部18が、ステム部22または管壁により限定されるような角度αに展開される。展開位置では、管壁への創傷および刺激を除去するために、葉状構造24は、先端部34が内側に傾斜し、壁にほぼ接触するかまたは接触して、伸長本体12の長手軸から最大90°まで(またはそれ以上)変位される(ステム部22によって限定される)。
【0080】
葉状構造の可撓性により、装置10は、装置10が位置する血管の内径に自動的に適合することができる。
【0081】
ステム部22および/または葉状構造24はまた、伸長本体12に対して折り畳まれると、葉状構造24の長手軸が伸長本体12の長手軸(
図6A〜
図6B)に対して傾斜するように構成することができる。これにより内部表面の、管内の生物学的流体および閉塞物への暴露が増加し、また装置10が近位の方向に引かれる際の抗力の発生および葉状構造24の展開の可能性が増大する。
【0082】
図6A〜
図6Bは突起部18の代替の配置角度を示す。
図6Aに示すように、突起部18は、装置の主長軸(ヨー)に対して横方向に(角度範囲0〜90°)傾斜することができる。これにより閉じた構成および後方への(近位)移動のとき、完全対称性および葉の重なり合いが防止される。対称性の欠如により、葉状構造24の内面領域が閉塞に暴露されて突起部18が開き始める。そのような突起部18を有する装置10が
図7Aに示される。
【0083】
各葉状構造24が、運動ベクトル(角度範囲0〜90°)、すなわち装置10の移動に対する葉状構造24の前方縁部に対して「迎角」(
図6B)を有するようにロール角も加えることができる。前方移動での迎え角は(装置10が閉塞の方へ押されるとき)、血栓構造に最適に侵入し血栓構造を最小限に破壊できることを確保する水力学的特徴および曲線設計を有する。装置が近位方向に引かれるとき、各葉状構造24への血栓の最適な抗力が可能になりそれにより突起部18の開きを確保するために、迎え角(反対側の縁部)をより鋭形の曲線構造に形づくることができる。突起部18はまた、
図7Bの例に示すように伸長本体12の周りでらせん状になるように構成することができる。
【0084】
突起部18のサイズ形状および特性は、血管および閉塞特性に応じて構成することができる。血栓閉塞には2つのタイプ、すなわち、「赤」血栓(新しい急性の全血液栓)および「白」血栓(コレステロールおよびカルシウムが埋没した比較的慢性なもの)がある。装置10の突起部18は、血栓の粘性範囲に整合する範囲で剛性特性を有する。
【0085】
カテーテルとして構成される場合、装置10は開口部36で終端する管腔35を含む。管腔35は、装置10を管内の対象の閉塞に案内するためのガイドワイヤを受け入れるように構成される。管腔35は、伸長本体12の全長を横切って、伸長本体の近位端のガイドワイヤ入口開口部まで延在しうる(オーバーザワイヤ・システムで使用する場合)。あるいは、管腔35は、伸長本体12の一部分を横切って、伸長本体12の長さ方向の側壁におけるガイドワイヤ入口開口部にまで延在しうる(迅速交換システムで使用する場合)。
【0086】
管腔35はまた、突起部18に近位の伸長本体の部分に沿った1つまたは複数の穴または他の開口部を含む。そのような穴は、先端部30で開口部と流体連通することができ、したがって突起部18が閉塞に侵入し、先端部30が閉塞を横切ってその遠位側に位置決めされると、血液が閉塞塊の周囲を流れることが可能になる。
【0087】
これにより、遠位に位置する虚血性脳組織が、閉塞部位へ再灌流できるようになる。(カテーテルを通る)血液の流れが比較的少ない場合、ペナンブラ脳組織内の流量は少なく制御され再灌流は低圧力であるが、ペナンブラ脳組織は、代謝の「停止」状態にあるため高圧力の収縮期性血液の流れに対して脆弱でありうる。よって、これにより血栓除去に続く完全な流れの回復に組織を備えさせる。
【0088】
送り出しがカテーテルまたは案内管(ガイドカテーテル)によって行われる場合、装置10の送り出しおよび進行は、ガイドワイヤなしで行うことができる。いずれにしても、ハンドル14(または伸長本体12の近位の部分)を使用して、装置10を、管を通って案内し(ワイヤ上またはそうでなくても)、遠位部分20を閉塞部位に位置決めする。
【0089】
装置10を血管内の血栓の取り除きに使用することが、
図5A〜
図5Dを参照して以下により詳細に説明される。
【0090】
装置10はまた、伸長本体12の遠位端(先端部30の近く)に装着された放射線不透過性マーカー(例えば、金、白金、イリジウム、またはポリマーそれ自体もしくは他の放射線不透過性マーカーと組み合わされて)を含むことができる。
【0091】
マーカーは、伸長本体12から半径方向外側に延在する折り畳み可能のアーム(例えば、ニチノール、白金、他の金属合金またはポリマーワイヤ)の端部に装着することができる。遠位部分20が閉塞の外側に位置決めされるとき、マーカーアームは広がり、したがって可視化(蛍光透視法)されるとマーカーは所定の距離だけ離れている(例えば、数ミリメートル)。遠位部分20が閉塞の内側に位置決めされるとき、マーカーアームは伸長本体12に対して折り畳み、したがって可視化(蛍光透視法)されるとマーカー間の距離が減少する。
【0092】
代替として、マーカーうちの1つを、伸長本体12から半径方向外側に延在する折り畳み式アームに装着することができ、他方、第2のマーカーを伸長本体12に装着することができる。遠位部分20が閉塞の内側に位置決めされるとき、マーカーアームは、伸長本体12に対して折り畳まれて第2のマーカーに接近する状態にされる。マーカー間の距離を可視化(蛍光透視法)してアームの折り畳みの範囲を決定することができる。
【0093】
さらなる代替として、1つまたは複数のマーカーは、遠位部分20が閉塞内に位置決めされるとき、マーカーを保持する突起部(1つまたは複数)18の折り畳みが、先端部30と伸長本体12との間の距離、または一対の先端部30間の距離を決定するのに使用することができるように、1つまたは複数の先端部30に固定することができる。
【0094】
マーカー材料(例えば、イリジウムまたは白金)はまた、外科医によるそれらの識別を容易にするために、突起部18または葉状構造24を作製するのに使用される材料に含めることができる。
【0095】
いずれにしても、マーカーは、臨床医が血管内で装置10の適切な位置を決定するのを支援し、遠位部分20が閉塞に入り、突起部18がその中にもぐり込むときを表示する。
【0096】
葉状構造24が閉塞物を収集する能力を高めるために、その内部表面は閉塞物を結合することができる物質により被覆することができる。例えば、血栓閉塞の場合、葉状構造24の内部表面は、フィブリンで被覆することができる。
【0097】
本発明の装置10は、任意の管の任意のタイプの閉塞を取り除くのに使用することができる。
図5A〜
図5Dは、動脈内の血栓の取り除きにおける装置10の使用法を示している。
【0098】
案内カテーテルまたはガイドワイヤは、アクセス部位(例えば、大腿動脈)から血管造影中の頸動脈に進められる。次いで、装置10は、ワイヤ上でまたは案内カテーテルによって挿入され、血栓部位(
図5A)へ進行される。次いで、外科医は、装置10の遠位端が血栓の遠位端に届くまで装置10の遠位端を血栓の中に進める(
図5B)(上述の放射線不透過性マーカーにより可視化される)。次いで、外科医は適度の引張力を装置10に加えて突起部18を開き、血栓内に突起部をもぐり込ませ、係合/固定する。次いで装置は、捕捉された血栓と共に引かれる(
図5C)。
【0099】
本明細書において、「約」という用語は、±10%を意味する。
【0100】
本発明のさらなる目的・利点・新規な特徴は、以下の非限定な実施例を精査することにより当業者に明らかになる。
【実施例】
【0101】
次に、上述の説明とあわせて、本発明を非限定的に示す以下の実施例を参照する。
【0102】
プロトタイプのベンチテスト
長さ30mm、幅8mmの4対のシリコーン突起部(ステム部10mmおよび葉状構造20mm)を直径1ミリメートルのステンレス鋼製のロッドに装着することによって本発明の装置のプロトタイプをいくつか作製した。2つのタイプの突起部、すなわち70ショアのシリコーンから作製された「軟質」突起部(
図8B)と、70ショアのシリコーンから作製され、ステム部および各突起部の葉状構造の部分に固定された20mmのプラスチック支柱を含む強化突起部(
図8A)とを試験した。2つの突起部構成、すなわち、突起部対を回転角90°ずらした配置と、突起部対を回転角45°ずらした配置とを試験した。
【0103】
装置の全直径は、突起部が開いた構成のとき25mmであり(
図8A)、閉じた構成のとき10mmであった(
図8B)。
【0104】
装置のプロトタイプが管から血餅を取り除く能力について試験した。
【0105】
新鮮なヒト静脈の血液が肘のフォッサ静脈から引き出し、10秒間ヒトトロンビン(BioPharm Laboratories, LLC, Bluffdale, Utah, USA)と、10ML全血液に対して25IUの比で混合し、60分間室温で以下の寸法を有する円筒形の透明な管の内側でインキュベートした:
(i)長さが100ミリメートル;内径が25ミリメートル、
(ii)長さが100ミリメートル;内径が20ミリメートル。
【0106】
生じた血餅は以下の寸法であった:
(i)長さが40ミリメートル;直径が25ミリメートル、
(ii)長さが60ミリメートル;直径が20ミリメートル。
【0107】
全体として、6つの血餅閉塞を調製した(上述の管のそれぞれに3つ)。
【0108】
各装置のプロトタイプ(
図9)は、装置の遠位先端部が血餅塊の遠位(端部)に達するまで、管の中に進めて近位の血餅塊内に侵入させた(
図10)。
【0109】
全体で、6つの血餅への侵入を行った:
(i)4つの「強化」カテーテルのプロトタイプ:血栓直径25ミリメートルが3つ、血栓直径20ミリメートルが1つ、
(ii)2つの「軟質」カテーテルのプロトタイプ:血栓直径20ミリメートルが2つ。
血餅塊に侵入している間、突起部が密着充填構成に折り畳むことが観察された(
図11)。
【0110】
次いで装置プロトタイプを近位方向に引いて、血餅塊を遊離し、管から体外へ収集した(
図12)。
【0111】
装置の近位方向への移動により突起部を中心ロッドから外側へ開き、それによって血餅材料のすくいが容易になることが観察された。
【0112】
全部で6つの試験(2つのタイプの管、2つの装置プロトタイプ)において装置プロトタイプが血餅塊全体を1回のパスで収集した。
【0113】
明確にするために別々の実施形態の文脈において説明された本発明のいくつかの特徴は、単一の実施形態において組み合わせとして提供されてもよいことを理解されたい。逆に、簡潔にするために、単一の実施形態の文脈で説明されている本発明の様々な特徴は、別々にまたは任意の適切な下位の組み合わせで提供されてもよい。
【0114】
本発明がその特有の実施形態に関連して説明されたが、多くの代替、修正および変形が当業者にとって明らかであることは明白である。したがって、添付の特許請求の範囲の精神および広い範囲に入るこのような全ての代替、修正および変形を包含することを目的とする。本明細書で言及された全ての刊行物、特許および特許出願は、その全体が明細書への参照により、個々の刊行物、特許または特許出願が、特に、個々に、参照により本明細書に組み込まれるように指示されたと同じ程度に、本明細書に援用される。さらに、本出願における参照の引用または確認は、そのような参照が本発明に対する従来技術として利用できることを承認するものと解釈されないものとする。