特許第6363963号(P6363963)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6363963射出成形用金型およびそれを用いる樹脂成形品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6363963
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】射出成形用金型およびそれを用いる樹脂成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/33 20060101AFI20180712BHJP
【FI】
   B29C45/33
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-23484(P2015-23484)
(22)【出願日】2015年2月9日
(65)【公開番号】特開2016-144916(P2016-144916A)
(43)【公開日】2016年8月12日
【審査請求日】2017年6月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】平野 透
【審査官】 中山 基志
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−216198(JP,A)
【文献】 特開2003−127183(JP,A)
【文献】 特開平11−277584(JP,A)
【文献】 特開昭53−141365(JP,A)
【文献】 特開昭63−270114(JP,A)
【文献】 特開2010−214779(JP,A)
【文献】 特開2003−159721(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C33/00−33/76
B29C45/00−45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定側型板と、当該固定側型板に対応する可動側型板と、当該可動側型板に設けられ、可動側型板の移動に伴ってスライドするスライドコアを備える射出成形用金型であって、
前記スライドコアは、分割した複数のスライド駒で構成され、前記各々のスライド駒は前進方向あるいは後退方向にそれぞれ移動可能に構成し
前記1つ若しくは複数のスライド駒を後退させることで、隣のスライド駒を順次時間差を付けて後退させるように構成した射出成形用金型。
【請求項2】
請求項に記載の射出成形用金型において、
前記それぞれのスライド駒は、スライド方向に伸びるツバまたは当該ツバが収まる溝を備え、前記ツバの長さと前記溝の長さの差により、隣のスライド駒を順次時間差を付けて後退させるように構成したことを特徴とする射出成形用金型。
【請求項3】
請求項1または2に記載の射出成形用金型において、
前記スライド駒は、樹脂成形品に格子形状を形成するための複数の突形状を備えることを特徴とする射出成形用金型。
【請求項4】
請求項1〜の何れか一つに記載の射出成形用金型において、
前記分割した複数のスライド駒で構成されるスライドコアが、四方に設けられていることを特徴とする射出成形用金型。
【請求項5】
固定側型板と、当該固定側型板に対応する可動側型板と、当該可動側型板に設けられ、可動側型板の移動に伴ってスライドするスライドコアを備え、前記スライドコアは分割した複数のスライド駒で構成される射出成形用金型を用いる樹脂成形品の製造方法であって、
前記複数のスライド駒を前進させて前記射出成形用金型を用いて樹脂成形を行う工程と、
前記1つ若しくは複数のスライド駒を後退させることで、隣のスライド駒を順次時間差を付けて後退させる工程とを備える樹脂成形品の製造方法。
【請求項6】
請求項に記載の樹脂成形品の製造方法において、
前記それぞれのスライド駒は、スライド方向に伸びるツバまたは当該ツバが収まる溝を備え、前記ツバの長さと前記溝の長さの差により、隣のスライド駒を順次時間差を付けて後退させるように構成したことを特徴とする樹脂成形品の製造方法。
【請求項7】
請求項またはに記載の樹脂成形品の製造方法において、
前記スライド駒は、樹脂成形品に格子形状を形成するための複数の突形状を備えることを特徴とする樹脂成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モールド樹脂成形品の成形を行う射出成形用金型およびそれを用いる樹脂成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各分野におけるケース、カバー等のモールド製品において、その側面には放熱や意匠性を考えた格子形状が設けられることが多い。これらモールド製品の多くは金型で射出成形を行うが、側面に設けられた格子形状は金型からの成形品突き出し方向に対し抜けない形状であるアンダーカット形状となる為、一般にスライドコアを採用しアンダーカット処理する金型構造としている。成形時の金型動作工程にて、金型内に溶融樹脂が充填後、冷却、型開き工程に移るが、ほぼ同じタイミングでスライドコアが後退し、格子部から離型される。そのスライドコア格子形状形成部から成形品格子形状部が離型の際、離型抵抗が発生する。その抵抗の大きさによっては成形品の変形やちぎれを引き起こし、二度押しによる成形トラブル、金型駒破損などの問題を引き起こすことも少なくない。その離型抵抗の大きさは格子の形状、大きさ、深さ、格子形状の占める面積等、さまざまな条件によって異なる。この離型抵抗を小さくする為、一般的にスライドコアが後退する抜け方向の抜き角度を大きくしたり、部分的に格子形状のない部分を設ける等で対応しているが、十分な離型性改善の効果が得られず、製品形状の変更により外観が損なわれる問題があり、これを解決する為の金型技術を必要としていた。
【0003】
開型のときに樹脂成形品を傷めることなくスライドコアから抜き取ることが可能な射出成形用金型の従来技術として、特許文献1には、「固定型と、この固定型に対応する可動型と、この可動型に設けられ、それぞれ独立にスライド可能で互いに隣接配置された複数のコア構成部を有するスライドコアと、前記複数のコア構成部のうちの少なくとも1つのコア構成部を他のコア構成部よりも遅く又は早く射出成形品から離れる方向へスライドさせるスライドタイミング制御手段とを備えていることを特徴とする射出成形用金型。(請求項1)」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−127183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
成形品の格子形状部をスライドコアにより離型させた場合、後退するスライドコアに成形品の格子部が食付き、成形品の変形やちぎれが発生する恐れがある。これに伴い、成形トラブルや金型破損に繋がってしまう。
【0006】
特許文献1には、それぞれ独立にスライド可能で互いに隣接配置された複数のコア構成部を有するスライドコアを設け、複数のコア構成部のうちの少なくとも1つのコア構成部を他のコア構成部よりも早く射出成形品から離れる方向へスライドさせることが記載されているが、成形品が格子形状部を有するものではなく、また、複数のコア構成部をスライドさせる構造が複雑である。
【0007】
本発明は、製品形状を変更することなく、スライドコアへの離型抵抗を小さくし、食付きを防止できるスライド構造を備える射出成形用金型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決する為に、スライドコアを分割した複数のスライド駒で構成し、分割されたスライド駒が各々時間差を持って摺動するように構成する。
【0009】
本発明の代表的な「射出成形用金型」の一例を挙げるならば、固定側型板と、当該固定側型板に対応する可動側型板と、当該可動側型板に設けられ、可動側型板の移動に伴ってスライドするスライドコアを備える射出成形用金型であって、前記スライドコアは、分割した複数のスライド駒で構成され、前記各々のスライド駒は前進方向あるいは後退方向にそれぞれ移動可能に構成し、前記1つ若しくは複数のスライド駒を後退させることで、隣のスライド駒を順次時間差を付けて後退させるように構成したものである。

【0010】
また、本発明の代表的な「樹脂成形品の製造方法」の一例を挙げるならば、固定側型板と、当該固定側型板に対応する可動側型板と、当該可動側型板に設けられ、可動側型板の移動に伴ってスライドするスライドコアを備え、前記スライドコアは分割した複数のスライド駒で構成される射出成形用金型を用いる樹脂成形品の製造方法であって、前記複数のスライド駒を前進させて前記射出成形用金型を用いて樹脂成形を行う工程と、前記1つ若しくは複数のスライド駒を後退させることで、隣のスライド駒を順次時間差を付けて後退させる工程とを備えるものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、成形品の格子形状部等の食付きによって発生するスライドコア離型抵抗を分割した複数のスライド駒で分散できるため、離型時の成形品の変形やちぎれの発生を防ぐことができ、成形トラブルや金型破損防止による金型メンテナンス費用が削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施例1の、複数のスライド駒で各々独立構成したスライドコアの斜視図である。
図2】本発明の実施例1の、複数のスライド駒で各々独立構成したスライドコアの断面図である。
図3】本発明の実施例1のスライドコアの動作を示す図である。
図4】本発明のスライドコア構造を必要とするモールド製品例を示す図である。
図5】本発明のスライドコア構造を必要とする他のモールド製品例を示す図である。
図6】本発明の実施例2のスライドコアの動作を示す図である。
図7】従来の射出成形用金型の一例を示す図である。
図8】従来のスライドコアの動作を示す図である。
図9】従来のスライドコアの動作で生じる課題を示す図である。
図10】従来のスライドコアの離型技術の一例を示す図である。
図11】従来のスライドコアの離型技術の他の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態の説明に先立って、従来の射出成形用金型の一例を説明する。射出成形用金型は、例えば特許文献1に示されるように、固定側型板と、この固定側型板に対応する可動側型板と、この可動側型板に設けられ、可動側型板の移動に伴ってスライドするスライドコアを備えている。
【0014】
図7に、側面に格子形状を設けたケース等をモールド成形するための従来の射出成形用金型の一例の概略図を示す。図7(a)は可動側型板にスライドコアを配置した図であり、図7(b)はスライドコアを示す図である。図7(a)に示されるように、射出成形用金型は可動側型板1と固定側型板2を備え、可動側型板1の中心部にはコア4が設けられ、コア4を取り囲むように四方にスライドコア3が配置されている。図は、モールド成形後の状態を示しており、符号5はモールド製品を表す。図7(b)は1つのスライドコア3を表しており、成形品の側面に格子形状を形成するために複数の突形状7が設けられている。符号8はアンギュラピン(図示せず)が挿入されるアンギュラピン挿入穴であり、アンギュラピンが挿入され、固定側型板2に対して可動側型板1が移動することにより、スライドコア3がスライドする。
【0015】
図8に、図7のスライドコアの動作図を示す。モールド成形後の型開き前の状態から、固定側型板2に対して可動側型板1を離れる方向に移動させることにより、型開きと同時にアンギュラピンによりそれぞれのスライドコア3が後退し、格子形状が離型される(型開き後の状態)。そして、モールド製品5を取り出すことができる。
【0016】
図9に、従来のスライドコア3とそのスライド動作による格子部の離型抵抗で生じた成形品5の変形不具合を示す。多くの格子形状が一斉に離型される為、離型抵抗が大きくなり成形品が引っ張られ変形を引き起こす。そして、場合によっては成形品のちぎれを発生させることもある。
【0017】
図10は、従来のスライドコア格子形状部の離型技術の一例を示す。スライドコア3に設けた格子形状を形成する凸形状7には、スライド後退方向に成形品が抜け易くするために抜き角度を設ける。抜き角度を大きくすることでより効果上げることができる。しかし、十分な離型性改善の効果は得られず、また、製品形状の変更により外観が損なわれるという問題がある。
【0018】
図11は、従来のスライドコア格子形状部の離型技術の他の一例を示す。製品形状の変更を行い、格子形状の無い部分13を設け、その部分をコア4’で形成させる。スライドコア3が後退してもコア4’は可動側型板1に組込み固定されており、成形品5がスライド方向に引っ張られても押さえとなる。しかし、コア4’により成形品の変形は防ぐことができるが、製品形状の変更が必要となる。
【0019】
本発明は、製品形状を変更することなく、スライドコアへの離型抵抗を小さくし、食付きを防止できるスライド構造を提供する。
【0020】
以下に、本発明の実施例を図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0021】
図1に、本発明の実施例1のスライドコアの外観図を示す。図に示すように、スライドコア3は複数のスライド駒3a,3b,3c,3d,3eに分割され各々独立構成されている。実施例1では、中央のスライド駒3aのみにアンギュラピン挿入孔8が設けられている。図において、符号7は格子形状を形成するための突形状を示し、また、符号12はスライドコア2が移動するためのスライドレールを示す。
【0022】
図2は、実施例1のスライドコア3の断面図であり、図2(a)はスライドコアを正面から見た断面図(図1のA方向)であり、図2(b)はスライドコアを上側から見た断面図(図1のB方向)である。図2(b)に示すように、各々のスライド駒3a〜3eにはツバ9または溝10を設け、溝10にツバ9を嵌め込むことにより、型開き方向には外れない構造となっている。アンギュラピン挿入穴8が設けられたスライド駒3aを1個後退させることで、時間遅れをもってツバ9が溝10の壁に当接し時間差でスライド駒3b,3cを動かすことができ、さらに時間差でスライド駒3d,3eを動かすことができる。スライド方向に伸びるツバ9の長さとツバが収まる溝10の長さの差よりできる距離11,11’によって各々のスライド駒が後退するタイミングをずらすことが可能である。
【0023】
図3は、実施例1のスライドコア構造の動作を示す。金型成形の成形部に溶融樹脂が充填・冷却され、金型が開き始めるとアンギュラピン挿入穴8に挿入されていたアンギュラピンにより、スライド駒3aが後退を開始すると同時に格子形状部の離型が行われる。その後、スライド駒3aに引かれてスライド駒3b,3cはツバ9および溝10のスライド方向の長さの差によってできる距離11分だけ遅れて後退を開始し、その後、スライド駒3b,3cに引かれてスライド駒3d,3eが後退する。各々のスライド駒をどのくらい時間を遅らせて後退させるかは、ツバ9と溝10のスライド方向の長さの差によってできる距離11により自由に決めることが可能である。
【0024】
図4および図5に、スライド構造を必要とする格子形状を備えたモールド製品例を示す。図4は、モールド製品5であるケースの側面に、複数の縦方向のスリットが一段入った例である。また、図5は、モールド製品6であるケースの側面に、複数の縦方向のスリットが三段入った例である。図のモールド製品は、内側へ貫通するスリットを設けたものであるが、内側までは貫通しない凹部を設けても良い。
【0025】
本実施例によれば、成形品の格子形状部等の食付きによって発生するスライドコア離型抵抗を分割した複数のスライド駒で分散できるため、離型時の成形品の変形やちぎれの発生を防ぐことができ、成形トラブルや金型破損防止による金型メンテナンス費用を削減できる。また、スライド駒の合せ面から樹脂ガスの逃がしが可能となり、樹脂ガスによる未充填等の成形品の品質も向上する。以上により、連続成形性の向上による生産性が向上する。また、格子部離型対策の為に製品形状を変更する必要もなく、外観を損うことがない。
【0026】
なお、本実施例のスライド構造のスライド駒へも、図10に示されるように、突形状に抜き角度を設けると、より高い効果を発揮することができる。
【実施例2】
【0027】
図6に、本発明の実施例2のスライドコア構造の動作を示す。実施例2は、アンギュラピンを2本使用したものである。
【0028】
図6(a)に示すように、2つのスライド駒3b、3cにアンギュラピン挿入穴8が設けられている。図6(b)に示すように、金型が開き始めるとアンギュラピン挿入穴8に挿入されていたアンギュラピンにより、先ずスライド駒3b,3cが後退を開始する。次に、スライド駒3b,3cに引かれてスライド駒3a,3d,3eが後退する。
【0029】
本実施例によれば、実施例1の効果に加えて、アンギュラピンを複数とすることにより、スライド駒を多数に分割した場合でも、型開き時間を短くすることができる。アンギュラピンの数は、2本に限らず、さらに増やしても良い。
【符号の説明】
【0030】
1 可動側型板
2 固定側型板
3 スライドコア
3a〜3e スライド駒
4 コア1
4’ コア2
5 格子形状を備えたモールド製品(例1)
5a 格子形状
6 格子形状を備えたモールド製品(例2)
6a 格子形状
7 格子形状を形成する突形状
8 アンギュラピンが挿入される穴
9 スライド駒のツバ
10 スライド駒の溝
11,11’ スライド駒のツバと溝のスライド方向各々の長さの差によってできる距離
12 ガイドレール
13 格子形状の無い部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11