特許第6363968号(P6363968)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日立ハイテクファインシステムズの特許一覧

<>
  • 特許6363968-検査装置 図000002
  • 特許6363968-検査装置 図000003
  • 特許6363968-検査装置 図000004
  • 特許6363968-検査装置 図000005
  • 特許6363968-検査装置 図000006
  • 特許6363968-検査装置 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6363968
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】検査装置
(51)【国際特許分類】
   H02G 1/02 20060101AFI20180712BHJP
【FI】
   H02G1/02
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-68633(P2015-68633)
(22)【出願日】2015年3月30日
(65)【公開番号】特開2016-189661(P2016-189661A)
(43)【公開日】2016年11月4日
【審査請求日】2017年9月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】504007202
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテクファインシステムズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】特許業務法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】磯崎 智治
(72)【発明者】
【氏名】松山 勝章
(72)【発明者】
【氏名】神田 宏幸
(72)【発明者】
【氏名】徳村 吉紀
(72)【発明者】
【氏名】志澤 礼健
【審査官】 北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−115063(JP,A)
【文献】 特開2004−242476(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブル又はワイヤーの上を走行しつつ、前記ケーブル又はワイヤーを検査する検査装置であって、
環状溝部が前記ケーブル又はワイヤーに係合する回転体と、前記回転体と前記ケーブル又はワイヤーを挟んで対向する位置に設けられた落下防止部とを備え、
前記落下防止部は、
前記回転体から離れた開放位置から、前記ケーブル又はワイヤーを挟んで前記回転体に対向する落下防止位置に移動可能な押え部材と、
前記押え部材を移動させる駆動力を発生する駆動部と、
前記駆動部と前記押え部材との間に設けられる第1接続部材と第2接続部材とを備え、
前記第1接続部材は、前記駆動部と前記第2接続部材とに接続され、前記第2接続部材は前記第1接続部材と前記押え部材とに接続され、前記押え部材が落下防止位置にある時に、前記第1接続部材と前記第2接続部材との接続部の回転中心が、前記駆動部の回転中心と前記第2接続部材と前記押え部材との接続部の回転中心との2点を結ぶ直線のほぼ延長線上に配置される構成である
検査装置。
【請求項2】
前記押え部材はローラ部材を備え、前記回転体と前記ローラ部材とで、前記ケーブル又はワイヤーを挟持する
請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記押え部材は、落下防止位置にあるときに前記ケーブル又はワイヤーと対向する面に、前記ケーブル又はワイヤーとの接触時の緩衝材として機能する素材の部材を備える
請求項1又は2に記載の検査装置。
【請求項4】
前記押え部材の前記ケーブル又はワイヤーと対向した箇所は、前記ケーブル又はワイヤーと近接した湾曲形状とした
請求項1〜3のいずれか1項に記載の検査装置。
【請求項5】
前記押え部材が前記落下防止位置であるとき、前記第1接続部材と前記第2接続部材の少なくともいずれか一方の動きを規制するストッパを配置した
請求項1〜4のいずれか1項に記載の検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架空電線などのケーブルやワイヤーの検査を行う検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
送電線などの架空電線は、経年変化による腐食や、落雷,アーク放電などによる損傷などがあるため、定期的に検査する必要がある。
近年、架空電線上を走行しながら架空電線を検査する装置(以下「架空電線検査装置」という)によって、架空電線を検査することが提案され、実用化されつつある。架空電線検査装置を利用した検査は、例えば、人が実際に架空電線に乗って検査を行うよりも、より簡便であり、かつ安全である。
【0003】
架空電線検査装置は、架空電線の上に、電線の形状に対応して鼓状に湾曲した走行車輪を係合させて、走行させるものが一般的であるが、検査中に突風が発生するなどして、装置がバランスを崩す可能性がある。このため、架空電線検査装置が架空電線の上を走行中に、何らかの要因でバランスを崩しても、架空電線検査装置が落下することがないように、落下防止機構を設けることが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−115063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の落下防止機構は、モータによりウォームギヤを作動させて軸部材を回転させ、落下防止部材としてのアームを回転させて、アームを落下防止位置とする機構である。
このように従来から提案されている落下防止部材は、走行用車輪が載った架空電線の下側に、アーム状の部材を配置することで、万一、検査装置がバランスを崩したときにも、アーム状の部材が架空電線に係合し、落下を防止するというものである。
【0006】
この従来から提案されている落下防止機構は、比較的簡単な機構であり、検査装置そのものが軽量であれば、落下防止として有効に機能する。しかしながら、検査装置は重量がある場合、検査装置の落下時には、検査装置自体の重量で、落下防止機構そのものが損傷してしまう可能性があった。
【0007】
また、検査装置が落下した場合に、アーム状の部材などの落下防止機構が架空電線を挟んだ状態になるが、このとき、架空電線を損傷させることを極力防止する必要がある。しかしながら、従来の落下防止機構では、架空電線の保護に関してまでは開示されていなかった。
【0008】
本発明は、装置そのものがバランスを崩した場合でも、検査装置やケーブルを損傷させることなく、確実に落下を防止できる検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の検査装置は、ケーブル又はワイヤーの上を走行しつつ、ケーブル又はワイヤーを検査する検査装置であり、環状溝部がケーブル又はワイヤーに係合する回転体と、この回転体とケーブル又はワイヤーを挟んで対向する位置に設けられた落下防止部とを備える。
落下防止部は、回転体から離れた位置から、ケーブル又はワイヤーを挟んで回転体に対向する落下防止位置に移動可能な押え部材と、押え部材を移動させる駆動力を発生する駆動部と、駆動部と押え部材との間に設けられる第1接続部材と第2接続部材とを備える。
第1接続部材は、駆動部と第2接続部材とに接続され、第2接続部材は第1接続部材と押え部材とに接続される。そして、押え部材が落下防止位置にある時に、第1接続部材と第2接続部材との接続部の回転中心が、駆動部の回転中心と第2接続部材と押え部材との接続部の回転中心との2点を結ぶ直線のほぼ延長線上に配置される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、落下防止部の押え部材が第1部材及び第2部材を介して駆動部に接続されることで、万一装置がバランスを崩して、押え部材がケーブル又はワイヤーと接触した場合でも、押え部材を開く方向に力が働かないようになり、落下防止位置が維持される。また、このときには、押え部材に接続された各部材に分散して力が加わるようになる。したがって、押え部材が落下防止位置で維持されると共に、その押え部材を保持した1点に大きな力が加わることがなく、落下防止部の損傷を効果的に防止しながら、検査装置の落下を確実に阻止できる効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施の形態例による検査装置の全体構成例を示す斜視図である。
図2】本発明の一実施の形態例による検査装置の一部を拡大して示す斜視図である。
図3】本発明の一実施の形態例による検査装置の落下防止部を示す平面図である。
図4】本発明の一実施の形態例による落下防止部の押え部材の回転状態の例を示す説明図である。
図5】本発明の一実施の形態例による落下防止部の動きを押え部材の正面から見た平面図である。
図6】本発明の一実施の形態例による検査装置の落下防止部の変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施の形態例(以下、「本例」と称する。)を、添付図面を参照して説明する。
[1.検査装置の全体構成]
図1は、本例の検査装置100の全体構成を示す。図1に示す検査装置100は、平行に配設された2本の架空電線11,12に載せられた状態を示す。
検査装置100は、回転体である4個の走行用プーリ101,102,103,104を備える。それぞれの走行用プーリ101,102,103,104は環状溝部を備え、この環状溝部が架空電線11,12に係合することで、各走行用プーリ101,102,103,104が架空電線11,12の上に搭載される。図1では、走行用プーリ101,103が一方の架空電線11の上に載せられ、走行用プーリ102,104が他方の架空電線12の上に載せられた状態を示す。なお、図1では検査装置100は左上から右下の方向に走行する。以下の説明で述べる前及び後は、この走行方向から見た前及び後を示す(図1の矢印参照)。また、左及び右は、前方から検査装置100を見たときの左右の方向を示す。
【0013】
走行用プーリ101,102は、車軸111に取り付けられる。車軸111は、前輪モータ113により回転駆動される。
また、走行用プーリ103,104は、車軸112に取り付けられる。車軸112は、後輪モータ114により回転駆動される。これらの走行用プーリ101〜104と前輪モータ113及び後輪モータ114は、検査装置100の走行部を構成する。
車軸111と車軸112とは、本体部131により連結される。本体部131は、走行用プーリ102に近接した箇所に、第1ポールカメラ141を備え、走行用プーリ104に近接した箇所に、第2ポールカメラ142を備える。これらの第1ポールカメラ141及び第2ポールカメラ142は、架空電線12の上に載せられた各走行用プーリ102,104を撮影する。
【0014】
前方の車軸111には、検査部120が取り付けられている。検査部120は、架空電線11を検査する第1検査機構部121と、架空電線12を検査する第2検査機構部122とを備える。図1では、第1検査機構部121及び第2検査機構部122は、それぞれの架空電線11,12を検査する際の配置状態を示す。検査装置100が架空電線11,12に取り付けられた碍子などの障害物を乗り越える際には、第1検査機構部121及び第2検査機構部122が架空電線11,12の上方の退避位置に移動して、架空電線11,12から離れる。
【0015】
また、検査装置100は、走行用プーリ102,104と架空電線12を挟んで下側になる位置に、落下防止部150,160を備える。この落下防止部150,160は、検査装置100の落下防止機構として機能するものであり、閉状態となったフック状の押え部材151(図2参照)が、架空電線12の近傍に配置される。この落下防止部150,160は、検査装置100を架空電線11,12に載せたり降ろしたりする場合、あるいは架空電線11,12に取り付けられた障害物(碍子など)を回避するときに、開状態となる。そして、落下防止部150,160は、検査装置100が架空電線11,12の上を走行する際に、閉状態となる。
【0016】
また、本体部131には、吊り下げ部132を介して第1アーム133及び第2アーム134が取り付けられ、第2アーム134の先端には、バランスウェイト135が取り付けられている。第1アーム133は、吊り下げ部132の支持機構132aにより水平に回動する。また、第2アーム134は、第1アーム133の支持機構133aにより水平に回動する。そして第2アーム134の先端にバランスウェイト135が取り付けられているため、これら第1アーム133及び第2アーム134の回動位置を調整することにより、検査装置100の重量バランスが変化する。なお、第1アーム133のほぼ中央部には、アイカメラ143が取り付けられ、このアイカメラ143により架空電線11,12が撮影される。
【0017】
このような検査装置100の重量バランスの変化で、前方の走行用プーリ101,102を架空電線11,12から離れて浮き上がった状態にしたり、後方の走行用プーリ103,104を架空電線11,12から離れて浮き上がった状態とすることができる。これらの前方の走行用プーリ101,102又は後方の走行用プーリ103,104が浮き上がった状態に設定されるのは、架空電線11,12に取り付けられた碍子などの障害物(不図示)を乗り越えるためである。
【0018】
なお、検査装置100は、検査部120での検査動作や前輪モータ113及び後輪モータ114による走行動作を制御する制御部(不図示)を内蔵する。この制御部は、落下防止部150,160の開閉動作についても制御する。また、検査装置100はバッテリなどの電源を内蔵する。
【0019】
[2.検査装置の走行用プーリの近傍の構成]
図2は、検査装置100の前方の車軸111に取り付けられた走行用プーリ101,102の近傍の構成を拡大して示す。
車軸111には、検査部120が取り付けられている。検査部120は、架空電線11の上に配置される第1検査機構部121と、架空電線12の上に配置される第2検査機構部122とを備える。第1検査機構部121は架空電線11を検査し、第2検査機構部122は架空電線12を検査する。
【0020】
第1検査機構部121は、架空電線11の周囲を覆う第1カバー181を備える。第1カバー181内には、第1検査カメラ171と第2検査カメラ172が配置される。
【0021】
第2検査機構部122についても、第1検査機構部121と同じ構成である。すなわち、第2検査機構部122は、架空電線12の周囲を覆う第2カバー182を備える。第2カバー182内には、第3検査カメラ173と第4検査カメラ174が配置される。
これらの各検査カメラ171〜174が撮影した画像は、検査装置100内の記憶部(不図示)に記憶されると共に、地上の作業者などが所持するコントローラ(不図示)に無線伝送される。そして、コントローラが備える表示部に、撮影した画像が表示される。作業者は、この表示される画像から、架空電線11,12の状態を検査することができる。
【0022】
走行用プーリ102と対向する架空電線12の下側には、落下防止部150の押え部材151が配置される。すなわち、落下防止部150の押え部材151を閉状態(落下防止位置)としたときには、押え部材151が、架空電線12の下側に近接した状態となり、この押え部材151が検査装置100の架空電線12からの落下を防止する部材として機能する。図2では、この落下防止位置の押え部材151を示す。
押え部材151は、開状態(開放位置)としたときには、ほぼ90°回転して、架空電線12の真下から離れて、ほぼ直立した状態になる。
【0023】
[3.落下防止部の構成]
図3は、落下防止部150の構成を示す。図3は、架空電線12の長手方向から見た平面図である。なお、図3以降の図では、前方の車軸111に取り付けられた落下防止部150の構成を示すが、後方の車軸112に取り付けられた落下防止部160の構成についても、全く同じである。
【0024】
図3Aは、落下防止部150の押え部材151を閉状態(落下防止位置)としたときを示す。図3Bは、落下防止部150の押え部材151を開状態(開放位置)としたときを示す。
落下防止部150の押え部材151は、駆動部155により回転駆動される。駆動部155としては、各種モータなどのアクチュエータが適用可能である。この駆動部155が発生させた回転駆動力が、後述する第1接続部材157(図4)及び第2接続部材156(図3B及び図4)を介して押え部材151に伝達される。
駆動部155は、ベースプレート153に取り付けられる。ベースプレート153は、軸保持部材158で車軸111に保持される。
【0025】
押え部材151は、押え部材回転軸154を中心として回転する。この回転で、図3Aに示すように、閉状態(落下防止位置)のときには、押え部材151がほぼ水平に伸びた状態となる。押え部材151は、中央の上側が凹状に湾曲した湾曲部151aが形成され、この湾曲部151aが架空電線12の下端と近接する。この湾曲部151aを含む押え部材151の表面には、樹脂部152が配置されている。この樹脂部152は、架空電線12と接触する際に、架空電線12に傷が付着するのを防止する緩衝材として機能する。なお、押え部材151の樹脂部152以外の箇所は、強度が強い金属よりなる。
【0026】
また、図3Aに示すように、押え部材151の先端部151b(押え部材回転軸154から最も離れた側)は、閉状態で上側に突出した形状であり、走行用プーリ102と近接する。このような先端部151bの形状により、走行用プーリ102と押え部材151との間の隙間が、架空電線12の直径よりも狭くなり、架空電線12が走行用プーリ102から外れるのを確実に阻止することができる。
【0027】
図3Bに示すように、落下防止部150の押え部材151を開状態(開放位置)としたときには、架空電線12の下側が開放された状態となる。したがって、この開状態のときには、検査装置100を架空電線12から外すことが可能になる。
【0028】
図4は、図3に示す落下防止部150の内部の構成を示す。
図4Aは、押え部材151を閉状態(落下防止位置)としたときを示し、図4Bは、押え部材151を閉状態と開状態の中間位置のときを示し、図4Cは、押え部材151を開状態(開放位置)としたときを示す。
また、図5Aは、図4Aに示す状態の落下防止部150を、正面(図4Aの左側)から見た図であり、図5Bは、図4Cに示す状態の落下防止部150を、正面(図4Cの左側)から見た図である。
【0029】
図4Aに示すように、駆動部回転軸157aは、第1接続部材157と第2接続部材156を介して押え部材151に接続される。すなわち、駆動部回転軸157aに、回転可能に第1接続部材157の一端が接続され、この第1接続部材157の他端の回転軸156aに、第2接続部材156の一端が回転可能に接続される。第2接続部材156は、第1接続部材157の約2倍の長さである。なお、回転軸156aは、各部材156,157の配置位置により位置が変化する。駆動部回転軸157aは、固定された位置に配置される。
【0030】
そして、第2接続部材156の他端が、回転軸156bを介して押え部材151に接続される。回転軸156bの配置箇所は、押え部材151の回転軸154に取り付けられた箇所から先端側に多少ずれた位置である。
また、閉状態(落下防止位置)のときの第1接続部材157に近接して、ストッパ153aが配置される。このストッパ153aを備えることで、第1接続部材157は、落下防止位置を越えて動かないように規制される。このストッパ153aは、例えばベースプレート153に取り付けられる。
【0031】
なお、図5A及び図5Bに示すように、ベースプレート153と第2接続部材156は2つの部材で構成される。すなわち、2枚のベースプレート153,153′の間に、第1接続部材157が配置され、その第1接続部材157を挟むように、2つの第2接続部材156,156′が配置される。さらに、2つの第2接続部材156,156′が、回転軸156bで押え部材151に接続される。
【0032】
図4Aに示すように、押え部材151が閉状態のときには、第1接続部材157と第2接続部材156とを接続する回転軸156aが、駆動部回転軸157aの中心と回転軸156bの中心との2点を結ぶ直線aよりも外側(図4Aでは右上側)に配置される。このような構成としたことで、万一、架空電線12から走行用プーリ102が外れて、押え部材151に荷重が加わったとしても、押え部材151が架空電線12を良好に保持することができる。
【0033】
すなわち、押え部材151が架空電線12と接触した際には、押え部材151には回転軸154を中心に矢印bの方向(押え部材151を保持する方向)とは反対の方向に回転する力が加わる。ここで、回転軸156aは、駆動部155(図3)の回転軸157aと回転軸156bとの2点を結ぶ直線のほぼ延長線上(回転軸154寄り)に位置する。ここでの回転軸154寄りとは、回転軸157aから見て、押え部材151の先端部151bとは反対側に、回転軸156aが位置していることを示す。
このため、回転軸156aに加わる力により、回転軸156aには矢印dの方向に回転する力が作用する。この回転軸156aが矢印dの方向に回転しようとする力は、押え部材151を開状態にする際の回転方向とは逆の方向である。
その結果、押え部材151を保持した回転軸154は、矢印bとは反対の開状態にする方向に回転できず、同様に回転軸156bについても、矢印cの方向とは反対の方向には回転できない。よって、押え部材151は、落下防止位置を保持することができ、検査装置100が架空電線12から落下することはない。
また、押え部材151が架空電線12と接触した場合でも、そのときに押え部材151に加わる力は、押え部材151に接続された各部材156,157と各軸154,156a,156b,157aに分散して力が加わるようになる。したがって、押え部材151が架空電線12に接触したとしても、落下防止部150が損傷することなく、良好に検査装置100の落下を防止できるようになる。
【0034】
また、図4Aに示すように閉状態(落下防止位置)のときの第1接続部材157に近接して、ストッパ153aが配置したことで、駆動部155及び回転軸157aに荷重が掛かるのを阻止できる。すなわち、検査装置100の落下で回転軸156aが矢印dの方向に移動したとしても、ストッパ153aにより第1接続部材157と第2接続部材156が確実に停止し、駆動部155及び回転軸157aに過大な荷重が掛かるのを阻止するように機能する。
【0035】
また、落下防止部150の押え部材151には、緩衝材として機能する樹脂部152を設けたことで、万一検査装置100が落下して、架空電線12が押え部材151と接触したとしても、樹脂部152と接触するため、架空電線12に傷が付着するのを効果的に防止することができる。
【0036】
[4.ローラを設ける例]
なお、図3に示す落下防止部150は、押え部材151が落下防止位置のとき、架空電線12とある程度の距離を持って近接するようにした。これに対して、例えば図6に示すように、押え部材151の湾曲部151aに、回転するローラ159を配置してもよい。そして、図6Aに示すように、押え部材151が落下防止位置のとき、このローラ159の表面が、架空電線12の下端と接するようにする。ローラ159は、回転駆動させるモータなどを備えず、架空電線12との接触で回転する。
図6Bは、押え部材151を開放位置としたときの例である。この開放位置のとき、押え部材151に取り付けられたローラ159についても、架空電線12から離れる。
【0037】
このようにローラ159を備えることで、押え部材151が落下防止位置にあるとき、架空電線12は、走行用プーリ102とローラ159とで挟まる状態になり、落下防止部150が、より確実に検査装置100の落下防止機構として機能するようになる。
なお、このローラ159を備える場合、通常時には、走行用プーリ102が直接押え部材151と接触することはないので、緩衝材として樹脂部152を設けない構成としてもよい。
【0038】
[5.変形例]
また、上述した実施の形態例の検査装置100は、2本の架空電線11,12の上を走行するようにした。これに対して、本発明は、1本の架空電線の上を走行する検査装置、あるいは3本以上の架空電線の上を走行する検査装置に適用することもできる。
【0039】
また、上述した実施の形態例では、2本の架空電線11,12の上を走行する検査装置100において、一方の架空電線12に載せられる走行用プーリ102,104に近接した位置に、落下防止部150,160を設けた例とした。これに対して、全ての走行用プーリ101〜104に個別に落下防止部を配置してもよい。
【0040】
また、上述した実施の形態例の検査装置100では、押え部材151の架空電線近接部に、緩衝材としての樹脂材を配置したが、この樹脂材の配置は省略してもよい。また、図3などに示す押え部材151の湾曲部151aなどの形状についても、一例を示すものであり、検査装置100の落下防止用として機能する形状であれば、その他の形状としてもよい。
【0041】
また、上述した実施の形態例の検査装置100では、第1接続部材157と近接する位置にストッパ153aを設けて、ストッパ153aが第1接続部材157の動きを規制するようにした。これに対して、第2接続部材156と近接する位置に、第2接続部材156が動く範囲を規制するストッパを設けるようにしてもよい。
また、図4に示すようなストッパ153aを配置せずに、第1接続部材157又は第2接続部材156の位置が、落下防止位置で定まる構成としてもよい。
【0042】
また、上述した実施の形態例では、検査装置100として、架空電線の検査を行うようにした。これに対して、検査装置100は、架空電線以外のケーブルや、橋梁などの各種構造物に設置されたワイヤーなどの検査を行うようにしてもよい。
【0043】
また、上述した実施の形態例の検査装置100の外形形状は、一例を示したものであり、その他の形状としてもよい。例えば、図1の検査装置100は、走行用プーリ101,102の前端に検査部120を配置する構成としたが、走行用プーリ103,104の後端などのその他の位置に検査部120を配置するようにしてもよい。
【0044】
さらに、本発明は上述した実施の形態例に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りその他種々の応用例、変形例を取り得ることは勿論である。
例えば、上述した実施の形態例は、本発明を分かりやすく説明するために装置の構成を詳細かつ具体的に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0045】
11,12…架空電線、100…検査装置、101〜104…走行用プーリ、111,112…車軸、113…前輪モータ、114…後輪モータ、120…検査部、121…第1検査機構部、122…第2検査機構部、131…本体部、132…吊り下げ部、133…第1アーム、134…第2アーム、135…バランスウェイト、141…第1ポールカメラ、142…第2ポールカメラ、143…アイカメラ、150,160…落下防止部、151…押え部材、152…樹脂部、153…ベースプレート、153a…ストッパ、154…押え部材回転軸、155…駆動部、156…第2接続部材、156a,156b…回転軸、157…第1接続部材、157a…駆動部回転軸、158…軸保持部材、159…ローラ、171…第1検査カメラ、172…第2検査カメラ、173…第3検査カメラ、174…第4検査カメラ、181…第1カバー、182…第2カバー
図1
図2
図3
図4
図5
図6