特許第6363970号(P6363970)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6363970
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】車両用除雪装置及び案内軌条式鉄道車両
(51)【国際特許分類】
   E01H 8/10 20060101AFI20180712BHJP
   B61B 13/00 20060101ALI20180712BHJP
   B61F 19/00 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
   E01H8/10
   B61B13/00 D
   B61F19/00
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-109865(P2015-109865)
(22)【出願日】2015年5月29日
(65)【公開番号】特開2016-223147(P2016-223147A)
(43)【公開日】2016年12月28日
【審査請求日】2016年6月27日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】503132257
【氏名又は名称】新潟トランシス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118267
【弁理士】
【氏名又は名称】越前 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】今井 駿
(72)【発明者】
【氏名】橋本 和明
(72)【発明者】
【氏名】本多 和博
【審査官】 亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭59−187912(JP,A)
【文献】 特開2000−120037(JP,A)
【文献】 特開2010−241312(JP,A)
【文献】 特開2002−317420(JP,A)
【文献】 実開昭52−061807(JP,U)
【文献】 特開平10−252030(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/010196(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01H 1/00、5/06
E01H 8/02、8/04、8/10
B61F 19/00
B61B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行軌道上を走行する車輪を備えた車両の前方に配置され前記走行軌道上の雪を排除する車両用除雪装置において、
前記走行軌道上の左右各々に対して前記車両の前方に配置された一対の除雪ブラシを備え、
前記除雪ブラシの各々は、相対的に前方に配置された第一除雪ブラシと、相対的に後方に配置された第二除雪ブラシと、を含み、
前記第一除雪ブラシは、底面視で前記車両の進行方向に垂直な方向に対して傾斜角度αを有し、前記第二除雪ブラシは、底面視で前記車両の進行方向に垂直な方向に対して傾斜角度βを有し、前記傾斜角度βは前記傾斜角度αよりも大きく設定されている、
ことを特徴とする車両用除雪装置。
【請求項2】
前記傾斜角度βが40〜50°に設定され、前記傾斜角度αが20〜30°の範囲に設定されている、ことを特徴とする請求項1に記載の車両用除雪装置。
【請求項3】
走行軌道上を走行する車輪を備えた案内軌条式鉄道車両において、
前記案内軌条式鉄道車両の前方に配置された一対の除雪ブラシを備え、該除雪ブラシにより前記走行軌道上の雪を排除する車両用除雪装置を備え、該車両用除雪装置は、請求項1又は2に記載の車両用除雪装置である、ことを特徴とする案内軌条式鉄道車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用除雪装置及び案内軌条式鉄道車両に関し、特に、除雪効果に優れた車両用除雪装置及び該車両用除雪装置を備えた案内軌条式鉄道車両に関する。
【背景技術】
【0002】
案内軌条式鉄道(いわゆる新交通システム)では、専用の走行軌道上に車輪を備えた車両を無人で自動走行させることが多い。かかる案内軌条式鉄道車両では、車輪としてゴムタイヤを使用することがあり、走行軌道上に雪が降り積もり、車両の走行によって雪が踏み固められると、車輪が走行軌道上でスリップして車両が立ち往生してしまうという問題がある。そこで、かかる案内軌条式鉄道では、車両の先頭に走行軌道上の雪を排除する除雪装置を設けることがある(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された除雪装置は、左右のタイヤの前方に除雪ブラシを平面ハ字状に配置したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−120037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたように、除雪装置はタイヤ(車輪)の位置よりも前方に位置していることから、カーブを曲がるときに除雪装置はタイヤよりも走行軌道上を大回りすることとなる。したがって、上述した除雪装置では、走行軌道の外側に配置された構造物と干渉しやすい、走行軌道の内側に掃き残し部分が生じやすい等の問題が生じる。
【0005】
本発明はかかる問題点に鑑み創案されたものであり、他の構造物との干渉を防止しつつ、掃き残し部分を低減することができる、車両用除雪装置及び案内軌条式鉄道車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、走行軌道上を走行する車輪を備えた車両の前方に配置され前記走行軌道上の雪を排除する車両用除雪装置において、前記走行軌道上の左右各々に対して前記車両の前方に配置された一対の除雪ブラシを備え、前記除雪ブラシの各々は、相対的に前方に配置された第一除雪ブラシと、相対的に後方に配置された第二除雪ブラシと、を含み、前記第一除雪ブラシは、底面視で前記車両の進行方向に垂直な方向に対して傾斜角度αを有し、前記第二除雪ブラシは、底面視で前記車両の進行方向に垂直な方向に対して傾斜角度βを有し、前記傾斜角度βは前記傾斜角度αよりも大きく設定されている、ことを特徴とする車両用除雪装置が提供される。
【0007】
また、本発明によれば、走行軌道上を走行する車輪を備えた案内軌条式鉄道車両において、前記案内軌条式鉄道車両の前方に配置され前記走行軌道上の雪を排除する車両用除雪装置を備え、該車両用除雪装置は、前記走行軌道上の左右各々に対して前記車両の前方に配置された一対の除雪ブラシを備え、前記除雪ブラシの各々が、相対的に前方に配置された第一除雪ブラシと、相対的に後方に配置された第二除雪ブラシと、を含み、前記第一除雪ブラシは、底面視で前記車両の進行方向に垂直な方向に対して傾斜角度αを有し、前記第二除雪ブラシは、底面視で前記車両の進行方向に垂直な方向に対して傾斜角度βを有し、前記傾斜角度βは前記傾斜角度αよりも大きく設定されている、ことを特徴とする案内軌条式鉄道車両が提供される。
【0008】
上述した車両用除雪装置及び案内軌条式鉄道車両において、前記傾斜角度βが40〜50°に設定され、前記傾斜角度αが20〜30°の範囲に設定されていてもよい。
【発明の効果】
【0011】
上述した本発明に係る車両用除雪装置及び案内軌条式鉄道車両によれば、除雪ブラシを複数の傾斜角度を形成するように構成したことから、車両限界内に車両用除雪装置を収めつつ、走行軌道上に配置される除雪ブラシの幅方向長さを長くすることができ、カーブ時の内輪側における除雪面積を拡大することができる。特に、除雪ブラシの内側の傾斜角度を小さくして外側の傾斜角度を大きく設定することにより、傾斜角度の小さい部分で雪を押し退け、傾斜角度の大きい部分で雪を走行軌道の外側に掃き出すことができる。したがって、本発明によれば、他の構造物との干渉を防止しつつ、掃き残し部分を低減することができ、除雪効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る案内軌条式鉄道車両を示す概略構成図である。
図2】本発明の一実施形態に係る車両用除雪装置を示す図であり、(A)は正面図、(B)は平面図、を示している。
図3】本発明の一実施形態に係る車両用除雪装置を示す図であり、(A)は図2(B)におけるC−C断面矢視図、(B)は図3(A)におけるD−D矢視断面図、を示している。
図4】本発明の一実施形態に係る車両用除雪装置に配置された除雪ブラシを示す図であり、(A)は底面概略図、(B)は正面概略図、である。
図5】車両用除雪装置の変形例を示す除雪ブラシの底面概略図であり、(A)は第一変形例、(B)は第二変形例、を示している。
図6】車両用除雪装置の変形例を示す除雪ブラシの底面概略図であり、(A)は第三変形例、(B)は第四変形例、(C)第五変形例、(D)第六変形例、を示している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図1図6(D)を用いて説明する。ここで、図1は、本発明の一実施形態に係る案内軌条式鉄道車両を示す概略構成図である。図2は、本発明の一実施形態に係る車両用除雪装置を示す図であり、(A)は正面図、(B)は平面図、を示している。図3は、本発明の一実施形態に係る車両用除雪装置を示す図であり、(A)は図2(B)におけるC−C断面矢視図、(B)は図3(A)におけるD−D矢視断面図、を示している。
【0014】
本発明の一実施形態に係る案内軌条式鉄道車両1は、図1に示したように、走行軌道R上を走行する車輪11を備え、案内軌条式鉄道車両1の前方に配置され走行軌道R上の雪を排除する車両用除雪装置2を備え、車両用除雪装置2は、走行軌道Rの左右各々に対して外側に傾斜するように配置された複数の除雪ブラシ21を備え、除雪ブラシ21は、複数の傾斜角度を形成するように構成されている。
【0015】
案内軌条式鉄道車両1は、例えば、図1に示したように、側壁S及び床板Fにより区画された空間内に敷設された左右一対の走行軌道R上を走行する。案内軌条式鉄道車両1は、左右の走行軌道R上をそれぞれ転動可能な車輪11を有している。車輪11は、例えば、ゴム製のタイヤである。また、各車輪11の前後位置には案内輪12が配置されている。案内輪12は、側壁Sに敷設された案内軌条(図示せず)に沿って転動可能に構成されている。この案内輪12を案内軌条で受けることにより、案内軌条式鉄道車両1は車輪11が走行軌道Rから外れることなく進行方向に誘導される。
【0016】
図1において、車体については、一点鎖線でその外形のみを図示している。本実施形態において、車両用除雪装置2以外の構成は、案内軌条式鉄道(いわゆる新交通システム)において使用される一般的な車体と同じ構成を有していることから、ここでは詳細な説明を省略する。なお、図1では、説明の便宜上、走行軌道Rが単線で案内軌条式鉄道車両1が一車両である場合を図示しているが、かかる構成に限定されるものではない。通常、走行軌道Rは複線であり、案内軌条式鉄道車両1は複数車両が連結されて運行されている。複数の車両を有する案内軌条式鉄道では、先頭及び後尾の車両に車両用除雪装置2が配置される。
【0017】
車両用除雪装置2は、例えば、図2(A)〜図3(B)に示したように、走行軌道R上に押し付けられる除雪ブラシ21と、除雪ブラシ21が接続されるブラケット22と、ブラケット22を回動可能に支持するヒンジ部23と、除雪ブラシ21・ブラケット22・ヒンジ部23により構成されるブラシモジュールを上方に付勢する緩衝機構24と、緩衝機構24を車体側に固定する固定フレーム25と、ブラシモジュールを下方に押し付けるエアシリンダ26と、除雪ブラシ21の背面に配置されるストッパ27と、を有している。
【0018】
除雪ブラシ21は、例えば、図2(A)及び図3(A)に示したように、台座21aに多数の合成樹脂製の素線材を植え込んだ構成を有しており、スカート21bにより位置決めされた状態で結束バンド21cによってブロック状に束ねられている。除雪ブラシ21は、例えば、ボルト・ナット等の締結具によりブラケット22に接続される。
【0019】
なお、除雪ブラシ21の構成は、図示した構成に限定されるものではなく、除雪可能に素線材を平面状又はブロック状に束ねたものであればよい。また、除雪ブラシ21のブラケット22への固定方法は、ボルト・ナットに限定されるものではなく、スロット等に差し込んで固定する方法であってもよい。
【0020】
ブラケット22は、例えば、図2(A)及び図2(B)に示したように、除雪ブラシ21が接続される底板22aと、底板22a上に配置された縦板22bと、を有している。底板22aの外形は、接続される除雪ブラシ21の形状や配置によって任意に設計される。縦板22bは、底板22aに対して僅かに前方に倒れるように配置されていてもよい。また、縦板22bは、上下方向に長く形成された長孔22cを有しており、ブラケット22の高さ方向の取付位置を調整できるように構成されている。
【0021】
ヒンジ部23は、例えば、図2(B)及び図3(A)に示したように、縦板22bの背面に配置される背面板23aと、背面板23aに形成された一対の連結フレーム23bと、一端が連結フレーム23bに回動可能に接続されるリンク板23cと、リンク板23cの他端が接続される支持フレーム23dと、を有している。連結フレーム23bとリンク板23cとはピン結合されており、車両用除雪装置2のメンテナンス時や部品交換時等に、除雪ブラシ21を上方に回動させることができるように構成されている。
【0022】
そして、車両用除雪装置2の使用時には、重力によって除雪ブラシ21は下方に位置しており、除雪時には、除雪ブラシ21の先端が雪によって後方に押されることから、通常、使用時及び除雪時に除雪ブラシ21が上方に回動することはない。なお、ヒンジ部23の構成は、単なる一例であり、図示した構成に限定されるものではない。
【0023】
緩衝機構24は、上下に配置された天板24a及び底板24bと、天板24a及び底板24bに上下方向に延伸するように配置された軸部材24cと、を有しており、支持フレーム23dは軸部材24cに沿って上下方向に摺動可能に構成されている。また、底板24bと支持フレーム23dとの間には、軸部材24cに沿ってコイルバネ24dが挿入されている。かかるコイルバネ24dにより、支持フレーム23dは天板24aに向かって付勢される。
【0024】
固定フレーム25は、例えば、図1に示したように、ブラケット28を介して車体側に固定される。この固定フレーム25には、緩衝機構24が固定されている。緩衝機構24に対して支持フレーム23dは上下方向に摺動可能に配置されていることから、緩衝機構24により除雪ブラシ21は上下方向に移動可能に構成されていることとなる。
【0025】
エアシリンダ26は、支持フレーム23dをコイルバネ24dに対して抗力を発生させて、支持フレーム23dを下方に押し下げる機能を有する。例えば、図3(B)に示したように、エアシリンダ26により上下移動されるヘッド26aは、連結部材26bを介して支持フレーム23dに接続されている。なお、エアシリンダ26は、支持フレーム23dを下方に移動させることができれば、いわゆるエアシリンダに限定されるものではなく、油圧シリンダであってもよいし、ラック・ピニオン機構等であってもよい。
【0026】
ストッパ27は、除雪ブラシ21の先端の背面に配置される部品であって、除雪時における除雪ブラシ21の後方への移動を抑制する機能を有している。例えば、図3(A)に示したように、ストッパ27は、除雪ブラシ21の幅方向に渡って配置されるパイプ27aと、パイプ27aを支持する支持部材27bと、を有しており、支持部材27bは、固定フレーム25に前後位置を調整可能に固定されている。
【0027】
パイプ27aは、除雪ブラシ21の個数に対応した個数だけ配置してもよい。また、支持部材27bの固定フレーム25に対する前後方向位置を調整することにより、除雪ブラシ21に対する押付力を調整することができる。なお、ストッパ27の構成は、図示した構成に限定されるものではなく、除雪ブラシ21の後方への移動を抑制可能な構成であれば、他の構成を有していてもよい。
【0028】
次に、除雪ブラシ21の構成について、図4を参照しつつ詳述する。ここで、図4は、本発明の一実施形態に係る車両用除雪装置に配置された除雪ブラシを示す図であり、(A)は底面概略図、(B)は正面概略図、である。なお、各図において、説明の便宜上、除雪ブラシ21とブラケット22の底板22aのみを簡略化して図示している。
【0029】
本実施形態において、除雪ブラシ21は第一除雪ブラシ211及び第二除雪ブラシ212を備え、内側に配置された第一除雪ブラシ211の傾斜角度αよりも外側に配置された第二除雪ブラシ212の傾斜角度βが大きくなるように配置されている。また、第一除雪ブラシ211及び第二除雪ブラシ212は、案内軌条式鉄道車両1の進行方向(図中の白抜矢印方向)にラップするように配置されている。
【0030】
図示したように、第一除雪ブラシ211は、第二除雪ブラシ212よりも前方かつ内側に配置されており、案内軌条式鉄道車両1の進行方向に垂直な方向から傾斜角度αだけ傾斜するように配置されている。この傾斜角度αは、例えば、40〜50°の範囲に設定され、好ましくは45°に設定される。
【0031】
また、第二除雪ブラシ212は、第一除雪ブラシ211よりも後方かつ外側に配置されており、案内軌条式鉄道車両1の進行方向に垂直な方向から傾斜角度βだけ傾斜するように配置されている。この傾斜角度βは、例えば、20〜30°の範囲に設定され、好ましくは25°に設定される。すなわち、除雪ブラシ21は、複数の傾斜角度α,βを形成するように構成されている。なお、第二除雪ブラシ212は、第一除雪ブラシ211と同一の形状を有しており、部品の共通化を図るようにしている。
【0032】
図4(A)及び図4(B)において、車両限界を二点鎖線Lで図示している。ここで、「車両限界」とは、車両が超えてはいけない限界を意味し、この限界を超えると走行軌道Rの内側及び外側に配置された他の構造物と干渉を生じる可能性がある。したがって、本実施形態における車両用除雪装置2においても、この車両限界内に除雪ブラシ21を配置する必要がある。
【0033】
このように、異なる傾斜角度α,βを有する除雪ブラシ21(第一除雪ブラシ211及び第二除雪ブラシ212)を配置することにより、第一除雪ブラシ211のみ又は第二除雪ブラシ212のみを配置した場合と比較して、例えば、図の左側にカーブする際に、第一除雪ブラシ211の外側に掃き残し部分が生じた場合であっても、第二除雪ブラシ212により掃き残し部分の雪を除雪することができる。また、本実施形態のように第一除雪ブラシ211の傾斜角度αを小さくして第二除雪ブラシ212の傾斜角度βを大きく設定することにより、第一除雪ブラシ211で雪を押し退け、第二除雪ブラシ212で雪を走行軌道Rの外側に掃き出すことができる。
【0034】
次に、上述した除雪ブラシ21の変形例について、図5(A)〜図6(D)を参照しつつ説明する。ここで、図5は、車両用除雪装置の変形例を示す除雪ブラシの底面概略図であり、(A)は第一変形例、(B)は第二変形例、を示している。図6は、車両用除雪装置の変形例を示す除雪ブラシの底面概略図であり、(A)は第三変形例、(B)は第四変形例、(C)第五変形例、(D)第六変形例、を示している。なお、各図において、説明の便宜上、除雪ブラシ21とブラケット22の底板22aのみを簡略化して図示している。
【0035】
図5(A)に示した第一変形例は、単数の除雪ブラシ21を有し、内側の傾斜角度αよりも外側の傾斜角度βが大きくなるように除雪ブラシ21を屈曲させたものである。このように、屈曲した単数の除雪ブラシ21を使用することにより、部品交換時に一回の処理で済ますことができ、メンテナンス時間を短縮することができる。また、第一変形例に係る除雪ブラシ21によれば、図4(A)に示した除雪ブラシ21よりも前後方向幅dを小さくすることができ、省スペース化を図ることができる。
【0036】
ここで、除雪ブラシ21の左右方向幅をWとし、内側を基準点0とすれば、屈曲点は、例えば、W/4〜3W/4の範囲内に設定され、好ましくは中間点(W/2)付近に設定される。屈曲点の位置は、例えば、案内軌条式鉄道車両1が走行する走行軌道Rの最大曲率の大きさ等の条件に応じて任意に設計される。
【0037】
図5(B)に示した第二変形例は、単数の除雪ブラシ21を有し、内側の傾斜角度αよりも外側の傾斜角度βが大きくなるように除雪ブラシ21を湾曲させたものである。図示したように、除雪ブラシ21の最も内側の部分における接線により傾斜角度αが規定され、除雪ブラシ21の最も外側の部分における接線により傾斜角度βが規定される。このとき、除雪ブラシ21の傾斜角度は、傾斜角度αから傾斜角度βまで徐々に大きくなるように設定されている。
【0038】
上述した第一変形例及び第二変形例に係る車両用除雪装置2によっても、他の構造物との干渉を防止しつつ、掃き残し部分を低減することができ、除雪効率の向上を図ることができる。特に、除雪ブラシ21の内側の傾斜角度αを小さくして外側の傾斜角度βを大きく設定したことにより、傾斜角度の小さい部分(傾斜角度αの部分)で雪を押し退け、傾斜角度の大きい部分(傾斜角度βの部分)で雪を走行軌道Rの外側に掃き出すことができる。
【0039】
図6(A)に示した第三変形例は、図4(A)に示した除雪ブラシ21に第三除雪ブラシ213を配置したものである。第三除雪ブラシ213は、第二除雪ブラシ212よりも後方に配置されており、傾斜角度は約90°に設定されている。すなわち、第三変形例に係る除雪ブラシ21は、傾斜角度を三段階に変化させたものである。
【0040】
図6(B)に示した第四変形例は、図5(A)に示した第一変形例に係る除雪ブラシ21において、屈曲点を追加したものである。かかる第四変形例は、単数の除雪ブラシ21で傾斜角度を三段階に変化させたものである。ここでは、最も外側の傾斜角度を約90°に設定しているが、かかる構成に限定されるものではなく、図5(A)に示した傾斜角度βよりも大きければよい。
【0041】
図6(C)に示した第五変形例は、図4(A)に示した除雪ブラシ21において、除雪ブラシ21の背面に後方に向かって延設された補助ブラシ214を配置したものである。かかる補助ブラシ214を配置することにより、例えば、図の右側にカーブする際に生じる掃き残し部分の雪を補助ブラシ214によって除雪することができる。補助ブラシ214の傾斜角度は、車両限界内に収まるように設定され、例えば、90°程度に設定される。
【0042】
図6(D)に示した第六変形例は、図5(A)に示した第一変形例に係る除雪ブラシ21において、補助ブラシ214を配置したものである。補助ブラシ214の傾斜角度は、車両限界内に収まる範囲内であれば、図示したように、90°よりも大きく設定するようにしてもよい。なお、図示しないが、図5(B)に示した第二変形例に係る除雪ブラシ21に補助ブラシ214を配置するようにしてもよい。
【0043】
本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0044】
1 案内軌条式鉄道車両
2 車両用除雪装置
11 車輪
12 案内輪
21 除雪ブラシ
21a 台座
21b スカート
21c 結束バンド
22 ブラケット
22a 底板
22b 縦板
22c 長孔
23 ヒンジ部
23a 背面板
23b 連結フレーム
23c リンク板
23d 支持フレーム
24 緩衝機構
24a 天板
24b 底板
24c 軸部材
24d コイルバネ
25 固定フレーム
26 エアシリンダ
26a ヘッド
26b 連結部材
27 ストッパ
27a パイプ
27b 支持部材
28 ブラケット
211 第一除雪ブラシ
212 第二除雪ブラシ
213 第三除雪ブラシ
214 補助ブラシ


図1
図2
図3
図4
図5
図6